(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
液体流路を閉塞する底部と周壁部とを備え、弾性体が封入される円筒形状の口部と、前記口部の周壁部に被着され、天板と円周壁とを備えた冠体と、を有するスパウトにおいて、
前記口部は、前記周壁部の外面下端に全周に亘って形成された係合部と、前記周壁部に等間隔をおいて上端縁から軸方向に沿って切り込まれて形成された複数個のスリットと、該複数個のスリットの隣接するスリット間に位置し、前記口部に封入された弾性体を押圧する複数の周壁と、を備え、
前記冠体の円周壁には、軸方向に沿って等間隔に複数個のスリットが形成されるとともに、該スリットの位置に一致させて前記円周壁の内面の下端に周方向に沿って等間隔で複数個、中心軸に向けて突出して前記口部の係合部と係合可能な係合爪が形成されており、
前記冠体は、前記冠体の複数個のスリット及び複数個の係合爪が前記口部の複数個のスリットと縦方向で重なって位置合わせされた状態で口部に被着されているとともに、前記冠体の係合爪の数と口部のスリットの数は、冠体の被着状態で隣接する係合爪の間に1つの口部のスリットが存在するように形成されており、
前記口部の隣接するスリット間にある前記周壁の開口端の両側のコーナはカットされているとともに、前記周壁の両側の外面側のコーナはカットされており、
前記係合爪の周方向の幅は、前記口部のスリットの周方向の幅に対して、0.8〜1.4倍に形成されている、
ことを特徴とするスパウト。
【背景技術】
【0002】
従来、合成樹脂シートなどの比較的柔軟な材質で形成された収容体に、その内部の収容物を取り出すべく、スパウトを取着したスパウト付き収容体が知られている。通常、スパウトは、合成樹脂等によって一体形成されており、収容体を形成するシート間に配置されて熱溶着されることによって前記シート間に挟み込まれて取着されている。こうしたスパウト付き収容体は様々な分野で用いられており、その用途に応じてスパウトも様々な形態のものが開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されているように、口部に吸出し用の注出針を刺し込んで収容物を注出し、これを必要個所に供給する使用態様がある。この特許文献1に開示されたスパウトは、注出針を複数回抜き刺ししても収容物が漏れ出さないように、口部に弾性体を封入して口部に冠体(蓋体)を被せ、これにより弾性体に対して口部の周壁から中心に向けて押圧力を作用させている。このような構成によれば、弾性体に注出針を刺し込んだ後、引き抜いても、注出針による穿孔は塞がり、収容物が漏れ出すことは無い。
【0004】
上記した構成のスパウトにおいて、前記冠体には、中心軸方向に突設した係合爪が形成され、口部側には、係合爪が係合する係合部が形成されており、冠体を口部に対して軸方向に圧入して両者を組み付けた際、冠体の口部に対する装着状態が強固になるように構成されている。すなわち、冠体が口部に対して強固に一体化されることで、口部の周壁から弾性体に対して中心軸に向けて押圧力が作用するようになり、注出針を刺し込んだ後、引き抜いても、注出針による穿孔が塞がり、収容物が漏れ出さないようになっている。
【0005】
この場合、口部の周壁からの弾性体に作用する押圧力を大きくするために、例えば、特許文献2には、口部の周壁に一定間隔をおいてスリットを形成したスパウトが開示されている。このようなスリットを形成することで、スリット間の周壁が中心軸側に向けて撓み易くなり、冠体を口部に被着した際、弾性体に対して大きな押圧力を作用させることが可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記した構成のスパウトの組立は、口部に弾性体を封入する工程、及び、弾性体が封入された口部に冠体を圧入する工程を含んでいる。これらの工程は、機械によって自動的に行なうか、或いは、手作業によって行なうことが可能である。ただし、手作業による組立の場合、冠体の口部に対する圧入には、大きな押圧力が必要となるため、口部に弾性体を封入した後、冠体を口部に対して位置合わせして仮装着(口部に対して部分的に冠体を被着した装着状態を意味する)を行ない、その後、押圧機(プレス機)によって冠体を口部に押し込んで、冠体の係合爪を口部の係合部に係合させている。
【0008】
冠体と口部は、強固な接続が成されるように、冠体の周壁内面の下部に形成される係合爪は、全周に亘って連続した環状にすることが特許文献1に開示されているが(明細書の[0050]参照)、型成型することを考慮すると、製造が容易ではない。このため、特許文献2に開示されているように、冠体の天面に周方向に沿って所定の間隔で開口(この開口は側周壁に至るスリットでもよい)を形成しておき、その開口に対応して係合爪を形成することにより、容易に型成型することが可能となる(明細書の[0012]、
図3、
図4参照)。
【0009】
また、冠体と口部の強固な接続が成されるように、上記した係合爪の幅は大きくすることが望ましいが、係合幅が大きくなると、冠体を口部に仮装着する際、或いは、仮装着することなく機械的に一気にプレスする際に、両者の位置合わせが適切に成されない可能性が高まる。冠体と口部の位置合わせが適切でなければ、口部のスリット間の周壁がねじれた状態で弾性体を押圧したり、スリット部分のエッジが弾性体に食い込むなど、弾性体が傷付いたり、押圧力が弱まるなど、不良品の発生率が高まってしまう。すなわち、特許文献1及び2に開示されたスパウトは、冠体に形成される係合爪の幅、及び、口部の係合部に対する位置決め、更には、冠体と口部の組み付け時における係合部と口部に形成されるスリットとの位置関係については何等、考慮されておらず、製品を精度よく安定して製造する上で問題がある。
【0010】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、弾性体を封入した口部に冠体を装着したスパウトにおいて、安定した製品が得られる構造、及び組立方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した目的を達成するために、本発明に係るスパウトは、液体流路を閉塞する底部と周壁部とを備え、弾性体が封入される円筒形状の口部と、前記口部の周壁部に被着され、天板と円周壁とを備えた冠体と、を有しており、前記口部は、前記周壁部の外面下端に全周に亘って形成された係合部と、前記周壁部に等間隔をおいて軸方向に沿って形成された複数個のスリットと、を備え、前記冠体は、円周壁の内面の下端に周方向に沿って等間隔で複数個、中心軸に向けて突出形成され、前記係合部と係合可能な係合爪を備え、前記冠体は、前記複数個の係合爪と前記口部の複数個のスリットが縦方向で重なって位置合わせされた状態で口部に被着されているとともに、冠体の係合爪の数と口部のスリットの数は、冠体の被着状態で隣接する係合爪の間に少なくとも1つのスリットが存在するように形成されており、前記係合爪の周方向の幅は、前記スリットの周方向の幅に対して、0.8〜1.4倍に形成されていることを特徴とする。
【0012】
上記した構造のスパウトは、弾性体が封入されている口部に対して冠体を装着し(仮止め状態)、これを軸方向に押圧することで、冠体の複数個の係合爪が口部の係合部と係合し、両者は一体的な固定状態(被着状態)となる。この状態において、弾性体には、口部の周壁部から中心に向かう押圧力が作用するため、注出針を刺し込んで引き抜いた後、その開口は直ちに閉塞され、液漏れなどが生じることはない。
【0013】
この場合、冠体の複数個の係合爪は、口部の複数個のスリットが縦方向で重なって位置合わせされた状態で口部に被着されているとともに、冠体の係合爪の数と口部のスリットの数は、冠体の被着状態で隣接する係合爪の間に少なくとも1つのスリットが存在するように形成されているため、口部のスリット間の周壁は、冠体の押圧時に周方向に沿って変位することが可能であり、弾性体に対して、周壁のエッジが径方向に食い込むようにねじれて変形することが抑制される。すなわち、冠体を口部に対して装着固定した状態では、口部のスリット間の周壁のエッジによって、弾性体が傷付くことが防止される。
【0014】
また、冠体に形成されている係合爪の周方向の幅は、口部に形成されているスリットの周方向の幅に対して、0.8〜1.4倍に設定したことで、冠体と口部の装着固定時の力を低下させずに、かつ、上記した弾性体に対して傷が付くことを効果的に抑制することが可能となる。
【0015】
これについては、係合爪の周方向の幅を、スリットの周方向の幅よりも小さくすれば、両者の位置合わせ時においてスリットの範囲内に係合爪を位置合わせすることで、スリット間の周壁の変位を効果的に防止でき、好ましい装着固定状態が得られるものの、あまり小さくし過ぎる(0.8倍未満に設定する)と、冠体が周方向に変位する傾向となって固定力が弱くなるという問題が生じる。すなわち、係合爪の周方向の幅が小さくなることで、冠体の口部に対する固定力が弱まり、これに伴い弾性体に対する押圧力が弱まるという問題が生じる。その一方で、係合爪の幅をあまり大きくし過ぎると、スリットの部分に係合爪を位置合わしても、係合爪がスリットに対して周方向に大きくはみ出すようになり、この状態で冠体を押圧すると、スリット間の周壁が変位して弾性体を傷付ける可能性が高まってしまう。また、冠体の係合爪を口部の係合部に係合させるための冠体の押し込み力を大きくする必要があり作業性が低下する。
【0016】
すなわち、冠体に形成されている係合爪の周方向の幅を、口部に形成されているスリットの周方向の幅に対して1.4倍に設定するのが限界であり、これよりも大きくすることで不良品が発生する可能性が高まってしまう。なお、実際には、0.8〜1.0倍に設定すれば、係合爪をスリットの範囲内に位置合わし易くなり、不良品も発生しないことから最も好ましい範囲となるが、1.4倍以下であれば、両者の位置合わせは容易に行うことが可能である。
【0017】
また、上記したようなスパウトが得られるように、本発明は、前記弾性体を口部に収納する収納工程と、弾性体を収納した口部の開口上端部のスリットが形成されている領域に、前記冠体の係合爪の一つを位置合わせする位置合わせ工程と、前記位置合わせされた冠体を、前記各係合爪が対応するスリットに沿うように摺動下降させて、各係合爪を前記口部の係合部に固定させる冠体の押圧工程と、を有することを特徴とする。
【0018】
このような組立方法によれば、口部に封入されている弾性体を傷付けることなく、品質の良いスパウトが得られる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のスパウトによれば、弾性体を封入した口部に冠体を装着した構成において、弾性体に安定した弾性力が作用する製品を安定して得ることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1から
図5は、本発明に係るスパウトの一実施形態を示す図であり、
図1(a)〜(d)は、冠体の構成を示す図、
図2(a)〜(c)は、スパウトの本体を示す図、
図3は、
図1に示す冠体を、
図2に示す本体の口部に対して押圧しながら装着する状態を示すスリット形成位置の部分断面図、
図4は、
図1に示す冠体を、
図2に示す本体の口部に対して押圧しながら装着するに際して、冠体の係合爪が口部に形成されたスリット間の周壁に接した状態で押圧挿入される場合、口部に弾性体が収納されていないと想定したときの口部の周壁の変形状態を示す周壁位置の部分断面図、そして、
図5は、
図1に示す冠体を、
図2に示す本体の口部に対して装着固定した状態を示し、口部に形成されたスリット間の周壁部分を示す周壁位置の部分断面図である。
【0022】
本発明に係るスパウトSは、図示されていないシート状部材に介在して溶着される本体1と、本体1に形成される口部2に対して被着される(被着して押し付け固定される)冠体50とを備えており、
図5に示すような組み付け状態で使用される。このスパウトSの軸方向中心部分には、シート状部材の周囲を溶着することで形成された収容体内の収容物を注出する注出針が挿入されるようになっている。
以下、スパウトSを構成する本体1と冠体50について説明する。
【0023】
図2に示すように、本体1は、軸方向に延出する口部10と、一対のシート状部材が溶着されるように断面略舟型形状となる溶着部3と、口部10と溶着部との間に形成された平板状の鍔部5とを備えている。一対のシート状部材は、上縁が鍔部5に当て付けられた状態で溶着部3の外面に溶着される。なお、溶着部3は、単一の湾曲面によって構成されていても良いし、複数の平坦面で構成されていても良いく、その表面にシート材の溶着時のヒケ等を考慮して溝3aを形成する等、適宜変形することが可能である。
【0024】
前記口部10は、鍔部5から一方に向けて略円筒形状に突出形成されており、口部10を構成する周壁部(円周壁)11によって規定される円筒状の凹所12内にゴム等の弾性体70が収納されるようになっている。本実施形態の凹所12の底部12aは隔壁によって仕切られており、底部12aの下方は、シート状部材によって形成される収容部に連絡するように、液体流路(連通孔)12bが形成されている。この場合、底部12aは、最初は液体流路12bを閉塞しているが、使用時において、上方から刺し込まれた注出針を容易に通過させ、かつ収納される弾性体を支持する肉厚を備えている。なお、底部12aは、その中心部分に液体流路12bと連通するように開口を形成しておいても良い(底部に開口が形成されていても良い)。
【0025】
上記のように、口部に隔壁(底部12a)を設けることで、弾性体70に後述する押圧力が加わったときに弾性体が液体流路にはみ出して押圧力が低下することを防止でき、また、スパウトの内部の液体液路にゴミ、埃等の異物が侵入するのを防止することができる。更に、使用前の状態において、スパウトの口部に収容物が侵入したり、弾性体70に接触することを防止できる。
【0026】
前記口部10は、中間部分で拡径してそのまま上方に延出しており、この部分の円周段部10aが、冠体50に形成された係合爪と係合する係合部となる(以下、係合部10aと称する)。すなわち、係合部10aは、口部の周囲に360°に亘って形成されており、冠体50の係合爪は、冠体50を軸方向に押圧することで必ず係合部10aと係合し、冠体50は口部10に対して被着できるように構成されている。
【0027】
前記口部10の周壁部11には、周壁の上端縁から軸方向に沿って切り込まれた複数のスリット11aが周方向に所定間隔をおいて形成されている。このスリット11aの形成個数については、特に限定されることはないが、本実施形態では、等間隔で6箇所形成されている。したがって、周壁部11には、各スリット間に位置するように複数の周壁11bが存在する。また、形成されるスリット11aの周方向の幅Wは、冠体50に形成される係合爪の周方向の幅W1との間で後述する関係に設定されている。
【0028】
なお、上記した構成の本体1は、例えばポリプロピレン、ポリエチレン樹脂等の合成樹脂を型成型することによって、ワンピースとして一体形成することが可能である。
【0029】
次に、
図1を参照して前記口部に被着される冠体50について説明する。
冠体50は、円筒の蓋状に構成されており、前記口部10に被着できる程度の径を備えている。冠体50の周壁(円周壁)50aの内面の下端には、中心軸側に向けて突出する複数個の係合爪51が形成されている。本実施形態では、口部10が6個のスリット11aを備えていることに対応して、周方向に所定の間隔で3つの係合爪51が形成されており、冠体50を口部10に被着した際、隣接する係合爪51の間に1つのスリットが存在するように形成されている。また、各係合爪51には、冠体を口部に被着する際、冠体を下方向にスムーズに案内できるように傾斜部51aが形成されている(
図3の矢印参照)。
【0030】
前記冠体50に形成される各係合爪51の周方向の幅W1は、前記スリット11aの周方向の幅Wに対して、0.8〜1.4倍、好ましくは0.9〜1.3倍、より好ましくは0.9〜1.0倍となるように形成されている。また、周壁50aの内面には、
図1(d)に示すように、上方に向けて次第に内側に傾斜するテーパ面50bが形成されている。このため、冠体50は、上方に移行する(開口部位から天板部位に移行する)に従い、次第に厚肉化されている。
【0031】
前記冠体50の天面50cの中央領域には、下方に窪むように凹所50dが形成されており、その底部は薄膜状に形成されている(薄膜50d´)。また、前記天面50cには、係合爪51が形成される位置に応じて開口50eが形成されている。このような開口50eは、上記したように、周壁50aの下端部に中心軸側に向けて突出する係合爪51を形成するに際して、型を抜くために形成するものであり、このような開口を形成することで冠体51の型成型を容易にすることができる。
【0032】
前記周壁50aには、前記係合爪51が形成する位置に対応して軸方向に沿ってスリット50fを形成しておくことが好ましい。この場合、スリット50fは、周壁50aの開口端部を除いて天板に抜けるように(前記開口50eに繋がるように)形成しても良い。このようなスリット50fを形成することにより、後述するように、冠体50の口部10に対する位置合わせが容易に行えるとともに、冠体を口部に被着した後、スパウト側面から弾性体70を視認することができる。なお、このようなスリット50fを形成する場合、周壁が外側に弾性変形し易く口部の周壁部に対する押圧力が低下する可能性があるため、その強度及び押圧力が維持できるように、周壁50aには、円周状に厚肉化された1つ以上の円周リング50gを形成しておくことが好ましい。本実施形態では、天板部分及び略中間部分に、そのように厚肉化された2つの円周リング50gを形成している。
【0033】
上記した冠体50については、上記した本体1と同様、例えばポリプロピレン、ポリエチレン樹脂等の合成樹脂を型成型することによって、ワンピースとして一体形成することが可能である。
【0034】
次に、上記した冠体50を口部10に位置合わせして両者を一体的に固定してスパウトSを組み立てる手順(方法)について説明する。
まず、本体1の口部10の凹所12内に弾性体70を収納する。弾性体は、口部10の凹所12の形状に合せたものが用いられるが、その周壁部11の高さと同じか若干高いものが用いられる。また、その径についても、凹所12の径と略同じものが用いられ、全体として略円柱形状を成しており、後述するように冠体50が被着された際、冠体の凹所50dの底部である薄膜50d´によって押圧され、薄膜50d´との間、及び、周壁部11との間で密封性が高まるようになっている。すなわち、薄膜50d´は、凹所12に収納された弾性体70の上面を覆い、弾性体のはみ出しを防止して弾性体を上方から押圧する押圧手段としての効果を奏するとともに、弾性体の表面を保護し、ゴミ等の付着を防止する効果を奏する。なお、弾性体70の構成材料については、弾性変形可能ものであれば良いが、本実施形態では、弾性変形性、及び、耐内容物適性を考慮して、耐溶剤性に優れたフロロシリコンゴムが用いられる。また、弾性体70の口部10に対する収納操作は、機械的に行なっても良いし、手作業で行っても良い。
【0035】
次に、弾性体70が封入された口部10に対して冠体50が被着される。この被着に際しては、冠体50の係合爪51を、口部10のスリット11aに位置合わせしながら押し込むことで成される。この場合、冠体の係合爪51は、口部のスリットに対して位置合わせした状態、或いは、位置合わせされながら押し込みが成される。すなわち、係合爪51の位置がスリットの位置と一致していれば、冠体の押し込み時に抵抗が少なく、スムーズな被着操作が行えるようになる。ここで、最初の両者の位置決めが不十分であったとしても、
図4に示すように、係合爪51は周壁11bを径方向に強く倒し込むように押圧するが、係合爪の傾斜部51aが口部51の周壁11bの表面に沿って摺動下降するにしたがい、周壁11bが曲面となっていることでスリット側に沿って横滑りし易く、位置決めされるようになる。特に、冠体50の係合爪51の数と口部10のスリット11aの数は、冠体の被着状態で隣接する係合爪の間に少なくとも1つのスリットが存在するように形成されているため、冠体が摺動下降する際に、周壁11bが周方向に変位し易くなり、係合爪51はスリット側に横滑りし易い。
【0036】
また、冠体50に形成されている係合爪51の周方向の幅W1を、口部10に形成されているスリット11aの周方向の幅Wに対して、0.8〜1.4倍に設定したことで、上述したように、冠体50を口部10に載置したときにスリット11aの位置に合うように係合爪51を位置合わせし易くなり、その後の摺動下降の押し込みによる冠体の組み付け(押圧作業)が行い易くなる。
【0037】
なお、冠体50の被着を手作業で行なう場合、冠体を口部に位置合わせして仮装着を行ない、その後、押圧機にセットして冠体部分を押圧する。その仮装着を行なう際、作業者は、手の感覚で位置合わせすることが容易(冠体を口部に押し付けたときに大きな負荷が作用しない位置が位置合わせされた状態)となり、正確な位置で仮装着した状態で押圧機によって押圧することが可能となる。或いは、上記したように、冠体50に、係合爪51の位置に対応してスリット50fを形成しておけば、スリット50fの位置を口部のスリット11aに目視によって位置合わせすることが容易にでき、精度の高い仮装着を行なうことが可能となる。
【0038】
また、機械によって冠体50と口部10を位置合わせするに際しては、冠体50を口部10に対して相対回転可能な状態で軸方向に押し下げることが好ましい。すなわち、冠体50を回転しながら押し下げることで、最も抵抗が少ない位置である係合爪51とスリット11aの位置が一致した状態(
図3参照)で押圧することができ、スムーズな押し下げ操作ができるとともにスリット間の周壁11bが横方向にねじれた状態で弾性体を押圧することはない。
【0039】
上記したように、口部10に対して位置合わせされた冠体50を最後まで押し込むと、係合爪51が係合部10aと係合し、両者は強固に固定され、冠体50が口部に対して無理嵌め固定されたスパウト構造が得られる。そして、この固定状態では、冠体50の複数個の係合爪51と、口部10の複数個のスリット11aが縦方向で重なって位置合わせされた状態となっている。すなわち、スリット11aの幅の範囲内(W1が1.0倍以下)、或いは、幅の範囲から僅かにはみ出して(W1が1.0より大きい)位置合わせされた状態となっている。この場合、口部10には、全周に亘って係合部10aが形成されていることから、冠体50の係合爪51は確実に口部と係合しており、冠体50を強固に固定することができる(
図3〜
図5参照)。
【0040】
また、このような被着状態では、冠体50の凹所50dの底部は、薄膜となっていることから、弾性体70が収納されているか否かは、薄膜50d´が膨らんでいるか否かで目視により容易に判別することが可能である。
【0041】
さらに、本実施形態では、冠体50の周壁50aの内面に、上方に向けて次第に内側に傾斜するテーパ面50bを形成しているため、冠体50が被着された際には、
図5に示すように、周壁11bは、開口側に移行するに従い弾性体70に大きな押圧力をかけることができる。すなわち、注出針を抜いたときに、弾性体70の抜く側の押圧力が大きいことから、液漏れを確実に防止することができる。
【0042】
そして、冠体50の係合爪51が口部の係合部10aに係合した被着状態では、上記したように、両者は縦方向で重なって位置合わせされた状態となっているため、口部のスリット11a間の周壁11bがねじれた状態で弾性体70を押圧することが抑制され、弾性体に対する押圧力が弱い、或いは、弾性体が傷付く、等の不良品の発生を防止することができる。
【0043】
図6は、スパウトの本体の別の実施形態を示す図である。
この実施形態では、
図2に示した本体1の口部10に形成されるスリット部分を変形している。
具体的には、口部10の隣接するスリット11a間にある周壁11bの開口端の両側のコーナをカットして、その部分にスリット側に下降するように傾斜部11eを形成している。
【0044】
このようにスリット11a間の周壁11bの端部両側に傾斜部11eを形成することで、冠体50の係合爪51をスリット部分に位置合わせし易くなる。すなわち、冠体の係合爪が傾斜部に当接しながら下方向に移動し易くなり、特に、冠体50の装着時に冠体50を回転可能にして押し込むと、係合爪51は確実にスリット11a部分に案内されながら下方に摺動させることが可能となる。
【0045】
さらに、口部10の隣接するスリット11a間にある周壁11bの両側の外面側のコーナについても、カットしておくことが好ましい(面取り11fを形成する)。
このように面取り11fを形成することで、係合爪51の傾斜部51aが口部51の周壁11bの表面に沿って摺動下降した際、係合爪51の傾斜部51aが面取り11fに面接して位置決めされて下降し易くなる。
【0046】
上記したように冠体50が装着固定されたスパウトSについては、その大きさ、スリットや係合爪の数等、特に限定されることはないが、下記のような大きさの範囲で構成するのが好ましい。
口部10の直径については5〜20mmとし、スリット11aは4〜16本で周方向に等間隔で形成する。また、冠体50の係合爪51(スリット50f)については2〜8個で、係合爪51がスリット11aに位置合わせされた状態で隣接する係合爪の間に少なくとも1つのスリットが存在するように形成する。すなわち、隣接する係合爪の間に少なくとも1つのスリットが存在することで、弾性体70に傷を付けることが効果的に防止できる。なお、本実施形態では、上述したように、スリット11aは等間隔で6個、冠体50には等間隔で3個の係止爪51を形成している。
【0047】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。
例えば、
図7及び
図8に示すように、冠体50の周壁50aには、スリットを形成しなくても良い。この場合、
図7は、
図3に示した冠体のスリット50fを内面側から肉盛りしてスリットを無くした周壁部の構成を示しており、
図8は、
図3に示した冠体のスリット50fを外面側から肉盛りしてスリットを無くした周壁部の構成を示している。このように、冠体50にスリットを形成しなければ、内部をカバーして弾性体の損傷や、ゴミ等の侵入を確実に防止することができる。また、冠体50にスリットを形成しない構成であれば、円周リング50gについては形成しなくても良い。
【0048】
また、冠体50に形成される係合爪51や上記した円周リング50gについては、冠体とは別部材とし、その内面や外面に取着する構成であっても良い。このような構成によれば、口部10の径に応じて係合爪の大きさを変えることができ、冠体50の型を単一のものとすることができる。