(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両のドアのドアハンドルとの間を連係するオープンワイヤ部材の係合端部が係合し、前記ドアハンドルが前記ドアを開放する方向に操作された場合に前記オープンワイヤ部材を介して常態位置から開放位置に移動するハンドルリンクレバーをハウジングの内部に回転可能に配設したドアロック装置であって、
前記ハウジングは、前記係合端部に係合される前の前記ハンドルリンクレバーを、前記常態位置を基準として前記開放位置と反対側の規制位置に配置することで該常態位置に回転することを規制する一方、前記ハンドルリンクレバーが前記係合端部に係合されるとともに該オープンワイヤ部材の前記係合端部と反対側の他端部が前記ドアハンドルに係合された場合には、該ハンドルリンクレバーが前記常態位置に配置されることを許容する規制部材を備えており、
前記ドアのロックノブとの間を連係するロッキングワイヤ部材の係合端部が係合し、前記ロックノブが操作された場合に前記ロッキングワイヤ部材を介して移動するロックレバーを前記ハウジングの内部に回転可能に配設し、
前記ハウジングは、前記ハンドルリンクレバー及び前記ロックレバーに対して外部からそれぞれのワイヤ部材の係合端部を係合可能とする操作用開口が形成されてなり、
前記ドアを構成するインナーパネルの車両内方側に設けられ、前記オープンワイヤ部材と前記ロッキングワイヤ部材とを互いに交差させることなく延在する態様で保持するとともに、前記インナーパネルの車両外方にて前記オープンワイヤ部材と前記ロッキングワイヤ部材とが交差することを許容する保持部材を備え、
前記ハウジングは、前記規制部材により前記ハンドルリンクレバーが前記規制位置に配置される場合に、該ハンドルリンクレバーの一部を外部に露出させる開口が形成されていることを特徴とするドアロック装置。
前記規制部材は、前記ハンドルリンクレバーが前記係合端部に係合されるとともに前記オープンワイヤ部材の他端部が前記ドアハンドルに係合された場合には、弾性変形することにより該ハンドルリンクレバーが前記規制位置から前記常態位置に移動することを許容する規制突部を備えたことを特徴とする請求項1に記載のドアロック装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照して、本発明に係るドアロック装置の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0016】
図1及び
図2は、それぞれ本発明の実施の形態であるドアロック装置を示す説明図である。ここで例示するドアロック装置は、車両の左右にそれぞれ前後2枚のサイドドアを備えた四輪自動車を適用対象とし、
図1では車両右側の後方に配置される前方ヒンジのリヤドアに取り付けられるものを例示し、
図2では車両右側の前方に配置される前方ヒンジのフロントドアに取り付けられるものを例示している。以下においては、
図1に示したリヤドアに取り付けられたドアロック装置(以下、リヤドアロック装置ともいう)10aについて先に説明する。
【0017】
リヤドアロック装置10aは、リヤドアロック機構20及びリヤワイヤ保持部材(保持部材)50を備えて構成してある。
【0018】
図3〜
図5は、それぞれ
図1に示したリヤドアロック装置10aのリヤドアロック機構20を中心に示したものである。それぞれの図中に記載した矢印は、リヤドアロック装置10aが閉じたリヤドアに取り付けられた状態において車両の上下前後を示すものであり、Uが車両上方、Lが車両下方、Fが車両前方、Rが車両後方を示している。
【0019】
リヤドアロック機構20は、
図1に示すように、リヤドアを構成するリヤインナーパネル1の車両外方側に取り付けられている。このリヤドアロック機構20では、メインケース21A及びメインケース21Aの車両内方を臨む部分を覆うサブケース21Bを備えてハウジング21が構成してある。メインケース21Aは、車両の前後方向に沿って延在するケース基部21Aaと、ケース基部21Aaの車両後方側において車両内方側に屈曲して延在するラッチ保持部(図示せず)とを一体に形成したものである。
【0020】
ラッチ保持部は、車両後方を臨む部位にラッチユニット23等を保持する部分である。ラッチユニット23は、ラッチ23a及びラチェット23b(
図6及び
図7参照)を備えた一般的なもので、ストライカ進入溝21Acが車両内外方向に沿って略水平に延在し、かつ車両内方に開口する姿勢でメインケース21Aのラッチ保持部に取り付けてある。
【0021】
このラッチユニット23においては、リヤドアを閉じることによって車両のストライカ(図示せず)がリヤインナーパネル1に形成された開口(図示せず)を通過してストライカ進入溝21Acに進入すると、ラッチ23aがラッチ状態となるとともに、ラッチ23aに係合するラチェット23bによってストライカの逸脱方向への移動が阻止され、リヤドアが閉じた状態に維持される。この状態からラチェット23bをアンラッチ方向に回転させると、ラッチ23aとの係合状態が解除され、ストライカの逸脱方向への移動が許容されるため、リヤドアを開くことが可能である。
【0022】
一方、メインケース21Aのケース基部21Aaには、
図6及び
図7に示すように、室内側を臨む面にインサイドハンドルリンクレバー(ハンドルリンクレバー)22及びロックレバー24が配設してある。これらインサイドハンドルリンクレバー22及びロックレバー24は、いずれもメインケース21Aとサブケース21Bとの間に構成されるハウジング21の収容空間に収容されている。
【0023】
インサイドハンドルリンクレバー22は、
図6に示すように、ケース基部21Aaの車両下方側に位置する部分に車両内外方向に沿った支軸22Aを介して回転可能に配設したもので、連係アーム部22a及び作用アーム部22bを有している。尚、インサイドハンドルリンクレバー22は、
図6に示す状態が常態位置であり、この常態位置から反時計回りに回転して開放位置に移動することが可能である。以下、この常態位置を基準としてインサイドハンドルリンクレバー22の説明を行う。
【0024】
インサイドハンドルリンクレバー22の連係アーム部22aは、支軸22Aから車両上方に向けて延在したものである。この連係アーム部22aには、延在端部にワンモーション押圧部22cが設けてあるとともに、ワンモーション押圧部22cよりも僅かに支軸22Aに近接した部分に装着孔(係合受部)22dが設けてある。
【0025】
ワンモーション押圧部22cは、連係アーム部22aから車両外側に向けて略直角に屈曲した部分である。このワンモーション押圧部22cは、連係アーム部22aよりも車両前方に突出した後、下方に向けて略U字状に湾曲している。
【0026】
装着孔22dは、後述するように第1リヤワイヤ部材(オープンワイヤ部材)30の第1係合端部31が装着されるものであり、車両内外方向に沿って連係アーム部22aを貫通している。
【0027】
インサイドハンドルリンクレバー22の作用アーム部22bは、
図6に示すように、連係アーム部22aにおいて支軸22Aと装着孔22dとの間に位置する部分から車両後方に向けて延在した後、後方に向けて下方に傾斜延在したもので、延在端部にリンク押圧部22eが設けてあるとともに、リンク押圧部22eよりも僅かに連係アーム部22aに近接した部分に規制片部22fが設けてある。
【0028】
リンク押圧部22eは、作用アーム部22bから車両内方に向けて略直角に屈曲した部分である。このリンク押圧部22eは、作用アーム部22bよりも車両上方に突出した後、車両の前方に向けて下方に湾曲している。
【0029】
規制片部22fは、リンク押圧部22eよりも僅かに連係アーム部22aに近接した部分において車両前方に向かうに連れて漸次車両下方に傾斜する態様で突出して形成した舌片状部分である。
【0030】
ここで、上記ケース基部21Aaにおけるインサイドハンドルリンクレバー22の近傍には、リヤ規制部材25が設けてある。リヤ規制部材25は、リヤ規制突部251及びリヤ規制突起部252を備えて構成してある。
【0031】
リヤ規制突部251は、ケース基部21Aaの車両下方側の縁部に連続して設けてあり、ケース基部21Aaより車両内方側に向けて突出する部分である。このリヤ規制突部251の車両上方側の端部には、車両後方側に向けて突出するリヤ規制作用部251aが設けてある。
【0032】
リヤ規制突起部252は、リヤ規制突部251よりも車両上方側において、ケース基部21Aaより車両内方側に向けて突出する部分である。
【0033】
このようなリヤ規制部材25では、第1リヤワイヤ部材30が装着される前のインサイドハンドルリンクレバー22を、次のようにして常態位置から時計回りに回転した規制位置に配置している。
【0034】
常態位置にあるインサイドハンドルリンクレバー22を時計回りに回転させると、該インサイドハンドルリンクレバー22の規制片部22fがリヤ規制突部251のリヤ規制作用部251aに当接して押圧することにより、リヤ規制作用部251aが弾性変形する。これにより、
図8に示すように規制片部22fがリヤ規制作用部251aの車両下方側に位置する。この場合において、インサイドハンドルリンクレバー22の一部がケース基部21Aaに形成された開口21Aa−1,21Aa−2を通じて外部に露出している。そして、インサイドハンドルリンクレバー22の作用アーム部22bの車両前方側の縁部の一部22b1がリヤ規制突起部252に当接しているので、インサイドハンドルリンクレバー22は、時計回りの方向への回転が規制されている。
【0035】
つまり、インサイドハンドルリンクレバー22は、規制片部22fがリヤ規制作用部251aの車両下方側に位置しているので反時計回りの方向への回転が規制されているとともに、作用アーム部22bの一部22b1がリヤ規制突起部252に当接して時計回りの方向への回転が規制されていることで、規制位置に配置されている。
【0036】
換言すると、リヤ規制部材25は、リヤ規制突部251によりインサイドハンドルリンクレバー22が反時計回りの方向に回転することを規制しつつ、リヤ規制突起部252によりインサイドハンドルリンクレバー22が時計回りの方向に回転することを規制して、インサイドハンドルリンクレバー22を、常態位置を基準として開放位置と反対側の規制位置に配置している。
【0037】
インサイドハンドルリンクレバー22の装着孔22dは、
図9に示すように、サブケース21Bに設けられたハンドルレバー操作用開口21B−1を通じてハウジング21の外部に露出されている。ここでハンドルレバー操作用開口21B−1は、インサイドハンドルリンクレバー22の連係アーム部22aにおいて装着孔22dを形成した部分をハウジング21の外部に露出させるための切欠である。
【0038】
第1リヤワイヤ部材30は、リヤドアのリヤインナーパネル1の車両内方側に設けたドアハンドル(
図1参照)2との間を連係するもので、
図10−1に示すように、外皮33によって覆われたワイヤ32の突出端部に第1係合端部31を備えている。上述したようにリヤドアロック機構20は、リヤインナーパネル1の車両外方に設けてあるので、第1リヤワイヤ部材30は、リヤインナーパネル1に形成した孔部4を通過している。
【0039】
第1係合端部31は、ワイヤ32よりも外径寸法を大きく構成した部分であり、クランク状に構成してある。すなわち、第1係合端部31は、ワイヤ32の端部に沿って延在した基部31aと、基部31aから略直角方向に延在する挿通部31bと、挿通部31bからワイヤ32の延在方向に沿って略直角方向に延在する挿入端部31cとを有して構成してある。挿通部31bは、連係アーム部22aに形成した装着孔22dに嵌合することのできる外径に形成してある。この第1係合端部31は、ワイヤ32の延在方向を適宜変更しながら挿入端部31cから順次連係アーム部22aの装着孔22dに挿入し、挿通部31bを装着孔22dに配置することにより、
図10−2に示すようにインサイドハンドルリンクレバー22の連係アーム部22aに係合した状態に維持される。
【0040】
このように第1リヤワイヤ部材30の第1係合端部31をインサイドハンドルリンクレバー22の連係アーム部22aに係合させた後、該第1リヤワイヤ部材30の他端部34(
図1参照)をドアハンドル2に係合させると、第1リヤワイヤ部材30の長さの関係により、インサイドハンドルリンクレバー22は規制位置から反時計回りに回転する。
【0041】
このことについて
図11を用いて詳細に説明する。第1リヤワイヤ部材30の他端部34をドアハンドル2に係合させて第1リヤワイヤ部材30の他端部34側の固定部36を所定の個所に固定させると、この固定部36と他端部34との長さL1は、第1リヤワイヤ部材30の第1係合端部31と第1リヤワイヤ部材30の第1係合端部31側の固定部35との長さL2よりも長くなる。そのため、インサイドハンドルリンクレバー22が引っ張られて規制位置から反時計回りに回転する。
【0042】
これにより、リヤ規制部材25は、リヤ規制作用部251aが規制片部22fに押圧されて弾性変形することで、インサイドハンドルリンクレバー22が常態位置に配置されることを許容する。つまり、インサイドハンドルリンクレバー22は、
図6に示す常態位置に配置されることになる。
【0043】
ロックレバー24は、インサイドハンドルリンクレバー22のワンモーション押圧部22cよりも車両上方、かつ車両後方となる部分に車両内外方向に沿った支軸24Aを介して回転可能に配設したもので、レバー基部24a及び連係アーム部24bを有している。尚、ロックレバー24は、
図7に示す状態が最も時計回りに回転したアンロック位置であり、このアンロック位置から反時計回りに回転してロック位置に移動することが可能である。以下、このアンロック位置を基準としてロックレバー24の説明を行う。
【0044】
ロックレバー24のレバー基部24aは、支軸24Aを中心として車両上方に展開する略扇形状を成すもので、ワンモーション受圧部24cを有している。
【0045】
ワンモーション受圧部24cは、レバー基部24aの車両前方側に位置する部分においてケース基部21Aaに対向する面に凹部を形成することによって構成したものである。このワンモーション受圧部24cは、ロックレバー24がアンロック位置に配置される場合、インサイドハンドルリンクレバー22が常態位置から開放位置に回転してもワンモーション押圧部22cに当接しない。一方、ワンモーション受圧部24cは、ロックレバー24がロック位置に配置される場合、インサイドハンドルリンクレバー22が常態位置から開放位置に回転した場合、ワンモーション押圧部22cに当接することができるように構成してある。
【0046】
ロックレバー24の連係アーム部24bは、
図7に示すように、支軸24Aから車両下方に向けて延在したもので、延在端部に係合受部24dを有している。係合受部24dは、第2リヤワイヤ部材(ロッキングワイヤ部材)40の第2係合端部41が装着される部分であり、車両内方に向けて開口する略半球状の凹状を成すとともに、開口縁部に円筒状の筒状突起24eを有したものである。係合受部24dの筒状突起24eには、車両前方となる部分に第2リヤワイヤ部材40のワイヤ42を通過させるための切欠が設けてある。図からも明らかなように、ロックレバー24の連係アーム部24bにおいて係合受部24dを設けた部分は、インサイドハンドルリンクレバー22の連係アーム部24bにおいて装着孔22dを設けた部分に対して車両内方に位置し、かつ係合受部24dは装着孔22dよりも車両下方に設けてある。
【0047】
ロックレバー24の係合受部24dは、
図9に示すように、サブケース21Bに設けられたロックレバー操作用開口21B−2を通じてハウジング21の外部に露出されている。ここでロックレバー操作用開口21B−2は、ロックレバー24の連係アーム部24bにおける係合受部24dをハウジング21の外部に露出させるための切欠である。
【0048】
第2リヤワイヤ部材40は、リヤドアのリヤインナーパネル1の車両内方であってドアハンドル2よりも車両上方に設けたロックノブ3(
図1参照)との間を連係するもので、
図12−1に示すように、外皮43によって覆われたワイヤ42の突出端部に第2係合端部41を備えている。上述したようにリヤドアロック機構20は、リヤインナーパネル1の車両外方に設けてあるので、第2リヤワイヤ部材40は、リヤインナーパネル1に形成した孔部4を通過している。
【0049】
第2係合端部41は、ワイヤ42よりも外形寸法を大きく構成した球体状部分であり、係合受部24dの内部に挿入した場合に容易に脱落しない外径を有するように形成してある。この第2係合端部41をロックレバー24の係合受部24dに挿入すれば、
図12−2に示すように、第2リヤワイヤ部材40が連係アーム部24bに係合した状態に維持される。
【0050】
図3〜
図5に示すように、サブケース21Bにおいてハンドルレバー操作用開口21B−1及びロックレバー操作用開口21B−2を設けた部分には、それぞれの車両前方側となる部分にリヤワイヤ部材30,40の外皮33,43を保持するための取付ステージ21B−3が設けてあるとともに、それぞれの操作用開口21B−1,21B−2及び取付ステージ21B−3を覆う部位にカバー部材21Cが設けてある。
【0051】
リヤワイヤ保持部材50は、
図1に示すように、リヤドアのリヤインナーパネル1の車両内方側に設けてある。このリヤワイヤ保持部材50は、例えばクリップ等により構成されるもので、ドアハンドル2及びロックノブ3と略同じ高さレベルに設けてある。このようなリヤワイヤ保持部材50は、ドアハンドル2及びロックノブ3と自身との間で第1リヤワイヤ部材30と第2リヤワイヤ部材40とを互いに交差させないで延在するよう略平行に保持している。
【0052】
上述したようにロックノブ3がドアハンドル2よりも車両上方に設けてあり、ロックレバー24の係合受部24dがインサイドハンドルリンクレバー22の装着孔22dを設けた部分よりも車両下方に設けてあることから、リヤワイヤ保持部材50が、ドアハンドル2及びロックノブ3と自身との間で第1リヤワイヤ部材30と第2リヤワイヤ部材40とを互いに交差させないで延在する態様で保持することで、第1リヤワイヤ部材30と第2リヤワイヤ部材40とをリヤインナーパネル1の車両外方で交差させている。
【0053】
以上説明したようなリヤドアロック装置10aにおいては、リヤドアが閉じた状態からドアハンドル22を操作すれば、第1リヤワイヤ部材30を介してインサイドハンドルリンクレバー22が支軸22Aを中心として常態位置から開放位置へ回転し、ロックレバー24がアンロック位置に配置されている場合、インサイドハンドルリンクレバー22の回転力が複数のレバー群を介してラッチユニット23に伝達されて該ラッチユニット23がアンラッチ操作されるため、リヤドアを開くことができる。
【0054】
一方、ロックノブ3を操作し、ロックレバー24をロック位置に移動させると、ドアハンドル22を操作してインサイドハンドルリンクレバー22が常態位置から開放位置へ回転しても、インサイドハンドルリンクレバー22の回転力が複数のレバー群を介してラッチユニット23に伝達されず、該ラッチユニット23がアンラッチ操作されることはない。そのため、ラッチユニット23がラッチ状態を継続し、リヤドアが閉じたままとなる。
【0055】
次に、
図2に示したフロントドアに取り付けられたドアロック装置(以下、フロントドアロック装置ともいう)10bについて説明する。
【0056】
フロントドアロック装置10bは、フロントドアロック機構60及びフロントワイヤ保持部材(保持部材)90を備えて構成してある。
【0057】
図13〜
図15は、それぞれ
図2に示したフロントドアロック装置10bのフロントドアロック機構60を中心に示したものである。それぞれの図中に記載した矢印は、フロントドアロック装置10bが閉じたフロントドアに取り付けられた状態において車両の上下前後を示すものであり、Uが車両上方、Lが車両下方、Fが車両前方、Rが車両後方を示している。
【0058】
フロントドアロック機構60は、
図2に示すように、フロントドアを構成するフロントインナーパネル5の車両外方側に取り付けられている。このフロントドアロック機構60では、メインケース61A及びメインケース61Aの車両内方を臨む部分を覆うサブケース61Bを備えてハウジング61が構成してある。メインケース61Aは、車両の前後方向に沿って延在するケース基部61Aaと、ケース基部61Aaの車両後方側において車両内方側に屈曲して延在するラッチ保持部(図示せず)とを一体に形成したものである。
【0059】
ラッチ保持部は、車両後方を臨む部位にラッチユニット63等を保持する部分である。ラッチユニット63は、ラッチ63a及びラチェット63b(
図16参照)を備えた一般的なもので、ストライカ進入溝61Acが車両内外方向に沿って略水平に延在し、かつ車両内方に開口する姿勢でメインケース61Aのラッチ保持部に取り付けてある。
【0060】
このラッチユニット63においては、フロントドアを閉じることによって車両のストライカ(図示せず)がフロントインナーパネル5に形成された開口(図示せず)を通過してストライカ進入溝61Acに進入すると、ラッチ63aがラッチ状態となるとともに、ラッチ63aに係合するラチェット63bによってストライカの逸脱方向への移動が阻止され、フロントドアが閉じた状態に維持される。この状態からラチェット63bをアンラッチ方向に回転させると、ラッチ63aとの係合状態が解除され、ストライカの逸脱方向への移動が許容されるため、フロントドアを開くことが可能である。
【0061】
一方、メインケース61Aのケース基部61Aaには、
図16に示すように、室内側を臨む面にインサイドハンドルリンクレバー(ハンドルリンクレバー)62及びロックレバー64が配設してある。これらインサイドハンドルリンクレバー62及びロックレバー64は、いずれもメインケース61Aとサブケース61Bとの間に構成されるハウジング61の収容空間に収容されている。
【0062】
ところで、
図16に示すインサイドハンドルリンクレバー62及びロックレバー64は、リヤドアロック装置10aを構成するインサイドハンドルリンクレバー22及びロックレバー24と形状等が異なるが、同一の機能を発揮するものである。従って、以下において、フロントドアロック装置10bのインサイドハンドルリンクレバー62及びロックレバー64についての構成については簡単に説明する。
【0063】
インサイドハンドルリンクレバー62は、
図16に示すように、ケース基部61Aaの車両下方側に位置する部分に車両内外方向に沿った支軸62Aを介して回転可能に配設したものである。尚、インサイドハンドルリンクレバー62は、
図16に示す状態が常態位置であり、この常態位置から時計回りに回転して開放位置に移動することが可能である。以下、この常態位置を基準としてインサイドハンドルリンクレバー62の説明を行う。
【0064】
インサイドハンドルリンクレバー62は、支軸62Aから車両下方、かつ車両前方に向けて延在した形状を成し、装着孔(係合受部)62a(
図17参照)及び規制片部62bが設けてある。
【0065】
装着孔62aは、後述するように第1フロントワイヤ部材(オープンワイヤ部材)70の第1係合端部71が装着されるものであり、車両内外方向に沿ってインサイドハンドルリンクレバー62を貫通している。
【0066】
規制片部62bは、装着孔62aよりも車両下方側の部分において、車両下方に向けて突出して形成した舌片状部分である。
【0067】
ここで、上記ケース基部61Aaにおけるインサイドハンドルリンクレバー62の近傍には、フロント規制部材65が設けてある。フロント規制部材65は、フロント規制突部651及びフロント規制突起部652を備えて構成してある。
【0068】
フロント規制突部651は、ケース基部61Aaの車両下方側の縁部に連続して設けてあり、ケース基部61Aaより車両内方側に向けて突出する部分である。このリヤ規制突部651の車両上方側の端部には、車両後方側に向けて突出するフロント規制作用部651aが設けてある。
【0069】
フロント規制突起部652は、フロント規制突部651よりも車両上方側かつ車両前方側において、ケース基部61Aaより車両内方側に向けて突出する部分である。
【0070】
このようなフロント規制部材65では、第1フロントワイヤ部材70が装着される前のインサイドハンドルリンクレバー62を、次のようにして常態位置から反時計回りに回転した規制位置に配置している。
【0071】
常態位置にあるインサイドハンドルリンクレバー62を反時計回りに回転させると、該インサイドハンドルリンクレバー62の規制片部62bがフロント規制突部651のフロント規制作用部651aに当接して押圧することにより、フロント規制作用部651aが弾性変形する。これにより、
図17に示すように規制片部62bがフロント規制作用部651aの車両後方側に位置する。この場合において、インサイドハンドルリンクレバー62の一部がケース基部61Aaに形成された開口61Aa−1を通じて外部に露出している。そして、インサイドハンドルリンクレバー62の車両下方側の縁部の一部62cがフロント規制突起部652に当接しているので、インサイドハンドルリンクレバー62は、反時計回りの方向への回転が規制されている。
【0072】
つまり、インサイドハンドルリンクレバー62は、規制片部62bがフロント規制作用部651aの車両後方側に位置しているので時計回りの方向への回転が規制されているとともに、一部62cがフロント規制突起部652に当接して反時計回りの方向への回転が規制されていることで、規制位置に配置されている。
【0073】
換言すると、フロント規制部材65は、フロント規制突部651によりインサイドハンドルリンクレバー62が時計回りの方向に回転することを規制しつつ、フロント規制突起部652によりインサイドハンドルリンクレバー62が反時計回りの方向に回転することを規制して、インサイドハンドルリンクレバー62を、常態位置を基準として開放位置と反対側の規制位置に配置している。
【0074】
インサイドハンドルリンクレバー62の装着孔62aは、
図14に示すように、サブケース61Bに設けられた操作用開口61B−1を通じてハウジング61の外部に露出されている。
【0075】
第1フロントワイヤ部材70は、フロントドアのフロントインナーパネル5の車両内方に設けたドアハンドル6(
図2参照)との間を連係するもので、外皮73によって覆われたワイヤ72の突出端部に第1係合端部71を備えている。上述したようにフロントドアロック機構60は、フロントインナーパネル5の車両外方に設けてあるので、第1フロントワイヤ部材70は、フロントインナーパネル5に形成した孔部8を通過している。
【0076】
第1係合端部71は、ワイヤ72よりも外径寸法を大きく構成した部分であり、クランク状に構成してある。この第1係合端部71は、ワイヤ72の延在方向を適宜変更しながら順次装着孔62aに挿入することにより、インサイドハンドルリンクレバー62に係合した状態に維持される。
【0077】
このように第1フロントワイヤ部材70の第1係合端部71をインサイドハンドルリンクレバー62に係合させた後、該第1フロントワイヤ部材70の他端部74(
図2参照)をドアハンドル6に係合させると、第1フロントワイヤ部材70の長さの関係により、インサイドハンドルリンクレバー62は規制位置から時計回りに回転する。
【0078】
これにより、フロント規制部材65は、フロント規制作用部651aが規制片部62bに押圧されて弾性変形することで、インサイドハンドルリンクレバー62が常態位置に配置されることを許容する。つまり、インサイドハンドルリンクレバー62は、
図16に示す常態位置に配置されることになる。
【0079】
ロックレバー64は、インサイドハンドルリンクレバー62よりも車両上方、かつ車両前方となる部分に車両内外方向に沿った支軸64Aを介して回転可能に配設したものである。このロックレバー64は、アンロック位置とロック位置との間で支軸64Aを中心として回転移動することが可能であり、係合受部64aを有している。
【0080】
係合受部64aは、第2フロントワイヤ部材(ロッキングワイヤ部材)80の第2係合端部81が装着される部分であり、車両内方に向けて開口する略半球状の凹状を成すとともに、開口縁部に円筒状の筒状突起64bを有したものである。係合受部64aの筒状突起64bには、車両前方となる部分に第2フロントワイヤ部材80のワイヤ82を通過させるための切欠が設けてある。
【0081】
ロックレバー64の係合受部64aは、装着孔62aと同様に上記操作用開口61B−1を通じてハウジング61の外部に露出されている。
【0082】
第2フロントワイヤ部材80は、フロントドアのフロントインナーパネル5の車両内方であってドアハンドル2よりも車両上方に設けたロックノブ7(
図2参照)との間を連係するもので、外皮83によって覆われたワイヤ82の突出端部に第2係合端部81を備えている。上述したようにフロントドアロック機構60は、フロントインナーパネル5の車両外方に設けてあるので、第2フロントワイヤ部材80は、フロントインナーパネル5に形成した孔部8を通過している。
【0083】
第2係合端部81は、ワイヤ82よりも外形寸法を大きく構成した球体状部分であり、係合受部64aの内部に挿入した場合に容易に脱落しない外径を有するように形成してある。この第2係合端部81をロックレバー64の係合受部64aに挿入すれば、第2フロントワイヤ部材80が連係アーム部24bに係合した状態に維持される。ここで、フロントドアロック機構60における第1フロントワイヤ部材70と第2フロントワイヤ部材80との位置関係であるが、第1フロントワイヤ部材70が第2フロントワイヤ部材80よりも車両上方側に位置している。
【0084】
図13〜
図15に示すように、サブケース61Bにおいて操作用開口61B−1を設けた部分には、それぞれの車両前方側となる部分にフロントワイヤ部材70,80の外皮73,83を保持するための取付ステージ61B−2が設けてあるとともに、操作用開口61B−1及び取付ステージ61B−2を覆う部位にカバー部材61Cが設けてある。
【0085】
フロントワイヤ保持部材90は、
図2に示すように、フロントドアのフロントインナーパネル5の車両内方側に設けてある。このフロントワイヤ保持部材90は、例えばクリップ等により構成されている。このようなフロントワイヤ保持部材90は、ドアハンドル6及びロックノブ7と自身との間で第1フロントワイヤ部材70と第2フロントワイヤ部材80とを互いに交差させないで延在する態様で保持している。
【0086】
上述したようにロックノブ7がドアハンドル6よりも車両上方に設けてあり、フロントドアロック機構60において第1フロントワイヤ部材70が第2フロントワイヤ部材80よりも車両上方側に位置していることから、フロントワイヤ保持部材90が、ドアハンドル6及びロックノブ7と自身との間で第1フロントワイヤ部材70と第2フロントワイヤ部材80とを互いに交差させないで延在する態様で保持することで、第1フロントワイヤ部材70と第2フロントワイヤ部材80とをフロントインナーパネル5の車両外方で交差させている。
【0087】
以上説明したようなフロントドアロック装置10bにおいては、フロントドアが閉じた状態からドアハンドル6を操作すれば、第1フロントワイヤ部材70を介してインサイドハンドルリンクレバー62が支軸62Aを中心として常態位置から開放位置へ回転し、ロックレバー64がアンロック位置に配置されている場合、インサイドハンドルリンクレバー62の回転力が複数のレバー群を介してラッチユニット63に伝達されて該ラッチユニット63がアンラッチ操作されるため、フロントドアを開くことができる。
【0088】
一方、ロックノブ7を操作し、ロックレバー64をロック位置に移動させると、ドアハンドル6を操作してインサイドハンドルリンクレバー62が常態位置から開放位置へ回転しても、インサイドハンドルリンクレバー62の回転力が複数のレバー群を介してラッチユニット63に伝達されず、該ラッチユニット63がアンラッチ操作されることはない。そのため、ラッチユニット63がラッチ状態を継続し、フロントドアが閉じたままとなる。
【0089】
上記の構成を有するドアロック装置(リヤドアロック装置10a及びフロントドアロック装置10b)によれば、ハウジング21,61に設けられた規制部材(リヤワイヤ規制部材50及びフロントワイヤ規制部材90)が、第1ワイヤ部材30,70の係合端部31,71に係合される前のインサイドハンドルリンクレバー22,62を規制位置に配置して常態位置に回転することを規制するので、インサイドハンドルリンクレバー22,62に第1ワイヤ部材30,70を装着する際には、インサイドハンドルリンクレバー22,62が回転することを規制することができる。そのため、第1ワイヤ部材30,70の係合端部31,71をインサイドハンドルリンクレバー22,62に容易に係合させることができ、組立作業の簡易化を図ることができる。特に図示せぬ自動機で第1ワイヤ部材30,70の係合端部31,71をインサイドハンドルリンクレバー22,62に係合させる場合には、組み付けスピードを向上させることができる。
【0090】
また上記ドアロック装置によれば、ドアを構成するインナーパネル1,5の車両内方側に設けられた保持部材50,90が、ドアハンドル2,6及びロックノブ3,7と自身との間で第1ワイヤ部材30,70と第2ワイヤ部材40,80とを互いに交差させないで延在する態様で保持するので、第1ワイヤ部材30,70と第2ワイヤ部材40,80とをインナーパネル1,5の車両外方で交差させることができ、インナーパネル1,5に対して車両内方側よりドアトリムを取り付ける際にこれら第1ワイヤ部材30,70と第2ワイヤ部材40,80とがドアトリムの取り付けを阻害する虞れがない。つまり、インナーパネル1,5に対してドアトリムを良好に取り付けることができる。
【0091】
以上、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。
【0092】
上述した実施の形態では、ハウジング21,61に設けられた規制部材(リヤワイヤ規制部材50及びフロントワイヤ規制部材90)がインサイドハンドルリンクレバー22,62の端部に押圧された場合に弾性変形していたが、本発明においては、規制部材は、ハウジングに例えば回転可能に設けられていて、回転することでハンドルリンクレバーを規制したり、常態位置に配置させたりするようにしてもよい。また、弾性変形だけに限られず、塑性変形するものであってもよい。