【実施例】
【0031】
以下の原料を用いて表1の配合からなる各実施例及び各比較例の硬質ウレタン樹脂組成物を作成した。なお表1における各原料の配合量は重量部である。
・ポリオール化合物:水酸基価235〜265mgKOH/g、数平均分子量380、品名;ファントール6301、日立化成ポリマー社製
・整泡剤:シリコーン整泡剤、品名;SF−2937F、東レダウコーニング社製
・触媒:オクチル酸カリウム(三量化触媒)、品名;DabcoK−15、Air Products社製
・発泡剤1:水
・発泡剤2:1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン、品名;HFC245fa、セントラル硝子社製
・発泡剤3: 1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン、品名;HFC365mfc、日本ソルベイ社製
・イソシアネート:ポリメリックMDI、品名;MR200、日本ポリウレタン工業社製
・低温域難燃剤:モノリン酸エステル、トリス(クロロピル)ホスフェート(TMCPP、分解温度184℃、液体)、大八化学社製
・中温域難燃剤:縮合リン酸エステル、品名;PFR(分解温度383℃、液体)、ADEKA社製
・高温域難燃剤:赤リン、品名;ノーバエクセル140(分解温度490℃、粉体)、燐化学工業社製
・HALS(ヒンダードアミン系化合物):ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)=デカンジオアートとメチル=1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル=セバカートの混合物、品名;LA−72(分解温度274℃、液体)、ADEKA社製
【0032】
各実施例及び各比較例の硬質ウレタン樹脂組成物を次のように発泡させて硬質ウレタンフォームを作成した。
ポリオール化合物、低温域難燃、中温域難燃剤、高温域難燃剤及びHALS(ヒンダードアミン系化合物)をカップに計量し、室温にてラボミキサーで撹拌した。その後、整泡剤、触媒、発泡剤を加え、室温にてラボミキサーで撹拌した。さらに、イソシアネートを加え、室温にてラボミキサーで撹拌し、フリー発泡にて硬質ウレタンフォーム(イソシアヌレートフォーム)を作成した。
【0033】
作成した各実施例及び各比較例の硬質ウレタンフォームに対して、密度(JIS K7222)の測定、TG(熱重量測定)試験、コーンカロリーメーター試験、水平燃焼試験を行った。各試験結果を表1の下部に示す。
【0034】
TG試験は、加熱した時に試料の重量変化を連続的に測定する試験であり、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製 示差熱熱重量同時測定装置 Exstar TG/DTA 7200 を用い、昇温速度10℃/minで乾燥空気雰囲気下にて測定を行った。評価は、まず、350℃において重量減少率が23%以下の場合に「◎」、25%以下の場合には「〇」、25%よりも大きい場合に「×」で示した。さらに、600℃において重量減少率が70%以下の場合に「◎」、80%以下の場合には「〇」、80%よりも大きい場合に「×」で示した。そして、2種類の温度の評価において、2つ「◎」がある場合は「◎」、1つ以上「×」がある場合には「×」、その他の場合は「○」で示した。
【0035】
コーンカロリーメーター試験は、各実施例及び各比較例の硬質ウレタンフォームから、10cm×10cm×5cm厚の試験用サンプルを切り出し、ISO5660に準拠し、放射熱強度50kw/m
2にて20分間加熱したときの総発熱量を測定した。また、20分後のサンプルの状態を確認し、亀裂、貫通孔の有無を調べた。さらに燃焼時にサンプルが変形してサンプル上方に設定してある試験機のスパークプラグに接触しているか否かを確認した。評価は亀裂、貫通孔、プラグ接触について、それぞれ無い場合に[〇]で示し、有る場合に「×」で示した。
【0036】
水平燃焼試験は、各実施例及び各比較例の硬質ウレタンフォームから、5cm×15cm×13mm厚の試験用サンプルを切り出し、JIS A 9511B法に従い、着火時間と燃焼距離を測定した。着火時間が5秒未満の場合に[○]、5秒以上から10秒未満が[△]、10秒以上が[×]、燃焼距離が15mm未満の場合に[○]、15mm以上20mm未満が[△]、20mm以上が[×]とし、両評価で[○]が二つであれば[◎]、[×]が一つでもあれば[×]、他は[○]で評価を示した。
【0037】
総合判定は、TG試験の評価が「◎」、コーンカロリーメーター試験における総発熱量が10MJ/m
2以下、かつ亀裂及び貫通孔が無く、さらに粉体難燃剤の合計が3重量部以下の場合に「◎」で示した。また、TG試験の評価が「〇」、コーンカロリーメーター試験における総発熱量が10MJ/m
2以下、さらに粉体難燃剤の合計が3重量部以下の場合に「〇」で示した。一方、各評価が他の場合については総合判定を「×」で示した。総合判定が「◎」または「〇」の場合に合格とし、総合判定が「×」の場合を不合格とした。
【0038】
【表1】
【0039】
各実施例及び各比較例について、表1の測定結果を説明する。
実施例1は、低温域難燃剤が3.9重量部、中温域難燃剤が10.9重量部、高温域難燃剤が2.8重量部、粉体難燃剤が2.8重量部、HALSが0重量部の例であり、TG試験における350℃での重量減少率が23%、600℃の重量減少率が66.7%で評価が「◎」、コーンカロリーメーター試験における総発熱量が6.4MJ/m
2、亀裂と貫通孔及びプラグ接触の何れも無く、総合判定が「◎」であった。
【0040】
実施例2は、低温域難燃剤が3.9重量部、中温域難燃剤が7.4重量部、高温域難燃剤が2.8重量部、粉体難燃剤が2.8重量部、HALSが0.7重量部の例であり、TG試験における350℃での重量減少率は21.5%、600℃の重量減少率が69.8%で評価が「◎」、コーンカロリーメーター試験における総発熱量が8.9MJ/m
2、亀裂と貫通孔及びプラグ接触の何れも無く、総合判定が「◎」であった。
また、HALSを添加していない上記の実施例1に比べ、難燃剤の合計添加量が少なくても総合判定が「◎」であった。また、HALSを添加していない点だけが異なる下記の実施例3と比べると、TG試験における600℃の重量減少率およびプラグ接触において、HALSを添加した実施例2が形状保持に優れ、耐燃焼性にも優れる。
【0041】
実施例3は、低温域難燃剤が3.9重量部、中温域難燃剤が7.4重量部、高温域難燃剤が2.8重量部、粉体難燃剤が2.8重量部、HALSが0重量部の例であり、TG試験における350℃での重量減少率が22.9%、600℃の重量減少率が72.4%で評価が「〇」、コーンカロリーメーター試験における総発熱量が9.6MJ/m
2、亀裂と貫通孔が無く、プラグ接触が有りで、総合判定が「〇」であった。
【0042】
比較例1は、低温域難燃剤が10.5重量部、中温域難燃剤が0重量部、高温域難燃剤が0重量部、粉体難燃剤が0重量部、HALSが0重量部の例であり、TG試験における350℃での重量減少率が23.4%、600℃の重量減少率が92.3%で評価が「×」、コーンカロリーメーター試験における総発熱量が16.5MJ/m
2、亀裂と貫通孔が有り、プラグ接触については測定できず、総合判定が「×」であった。
【0043】
比較例2は、低温域難燃剤が0重量部、中温域難燃剤が0重量部、高温域難燃剤が7重量部、粉体難燃剤が7重量部、HALSが0重量部の例であり、TG試験における350℃での重量減少率が25.2%、600℃の重量減少率が58.3%で評価が「×」、コーンカロリーメーター試験における総発熱量が23.6MJ/m
2、亀裂と貫通孔が無く、プラグ接触が有りで、総合判定が「×」であった。
【0044】
比較例3は、低温域難燃剤が0重量部、中温域難燃剤が0重量部、高温域難燃剤が0重量部、粉体難燃剤が0重量部、HALSが10.5重量部の例であり、TG試験における350℃での重量減少率が28.3%、600℃の重量減少率が93.8%で評価が「×」、コーンカロリーメーター試験はTG評価が「×」のため実施せず、総合判定が「×」であった。
【0045】
比較例4は、低温域難燃剤が4.8重量部、中温域難燃剤が4.8重量部、高温域難燃剤が0重量部、粉体難燃剤が0重量部、HALSが0重量部の例であり、TG試験における350℃での重量減少率が23.7%、600℃の重量減少率が90.4%で評価が「×」、コーンカロリーメーター試験はTG評価が「×」のため実施せず、総合判定が「×」であった。
【0046】
比較例5は、低温域難燃剤が4.8重量部、中温域難燃剤が0重量部、高温域難燃剤が5重量部、粉体難燃剤が5重量部、HALSが0重量部の例であり、TG試験における350℃での重量減少率が21.9%、600℃の重量減少率が70.7%で評価が「〇」、コーンカロリーメーター試験における総発熱量は10.4MJ/m
2、亀裂と貫通孔が無く、プラグ接触が有りで、総合判定が「×」であった。
【0047】
比較例6は、低温域難燃剤が12重量部、中温域難燃剤が12重量部、高温域難燃剤が0重量部、粉体難燃剤が0重量部、HALSが0重量部の例であり、TG試験における350℃での重量減少率が23.9%、600℃での重量減少率が90.5%で評価が「×」、コーンカロリーメーター試験はTG評価が「×」のため実施せず、総合判定が「×」であった。
【0048】
比較例7は、低温域難燃剤が12重量部、中温域難燃剤が0重量部、高温域難燃剤が12重量部、粉体難燃剤が12重量部、HALSが0重量部の例であり、TG試験における350℃での重量減少率が26.1%、600℃での重量減少率が78.9%で評価が「×」、コーンカロリーメーター試験はTG評価が「×」のため実施せず、総合判定が「×」であった。
【0049】
このように、本発明の硬質ウレタン樹脂組成物は、低温域(250℃未満)で分解して難燃性を発揮する低温域難燃剤と、中温域(250℃以上400℃未満)で分解して難燃性を発揮する中温域難燃剤と、高温域(400℃以上)で分解して難燃性を発揮する高温域難燃剤を含む構成としたことにより、粉体難燃剤の添加量を減らしても良好な難燃性を発揮することができる。