特許第6823401号(P6823401)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6823401低分子有機物含有水の処理方法および逆浸透膜の改質方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6823401
(24)【登録日】2021年1月13日
(45)【発行日】2021年2月3日
(54)【発明の名称】低分子有機物含有水の処理方法および逆浸透膜の改質方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/44 20060101AFI20210121BHJP
   B01D 61/10 20060101ALI20210121BHJP
   B01D 61/58 20060101ALI20210121BHJP
   B01D 61/14 20060101ALI20210121BHJP
   B01D 61/08 20060101ALI20210121BHJP
   B01D 71/56 20060101ALI20210121BHJP
   B01D 61/02 20060101ALI20210121BHJP
【FI】
   C02F1/44 H
   B01D61/10
   B01D61/58
   B01D61/14 500
   B01D61/08
   B01D71/56
   B01D61/02 500
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-162961(P2016-162961)
(22)【出願日】2016年8月23日
(65)【公開番号】特開2018-30073(P2018-30073A)
(43)【公開日】2018年3月1日
【審査請求日】2019年5月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高田 明広
(72)【発明者】
【氏名】中村 勇規
【審査官】 高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−073915(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/170495(WO,A1)
【文献】 特開2001−259388(JP,A)
【文献】 特開2014−226642(JP,A)
【文献】 特開2016−120457(JP,A)
【文献】 特許第6630562(JP,B2)
【文献】 特表2012−529496(JP,A)
【文献】 特開2013−215678(JP,A)
【文献】 特開2010−063998(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/005787(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/073170(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 61/00 − 71/82
C02F 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低分子有機物を含有する被処理水を逆浸透膜で処理する逆浸透膜処理工程を含み、
前記逆浸透膜は、臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物をポリアミド系の逆浸透膜に接触させて改質された膜であり、
前記ポリアミド系の逆浸透膜への前記安定化次亜臭素酸組成物の接触はpH3超、8未満の範囲で行われることを特徴とする低分子有機物含有水の処理方法。
【請求項2】
低分子有機物を含有する被処理水を逆浸透膜で処理する逆浸透膜処理工程を含み、
前記逆浸透膜は、臭素とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物をポリアミド系の逆浸透膜に接触させて改質された膜であり、
前記ポリアミド系の逆浸透膜への前記安定化次亜臭素酸組成物の接触はpH3超、8未満の範囲で行われることを特徴とする低分子有機物含有水の処理方法。
【請求項3】
請求項2に記載の低分子有機物含有水の処理方法であって、
前記安定化次亜臭素酸組成物は、水、アルカリおよびスルファミン酸化合物を含む混合液に臭素を不活性ガス雰囲気下で添加する工程を含む方法により得られたものであることを特徴とする低分子有機物含有水の処理方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の低分子有機物含有水の処理方法であって、
前記接触が、前記被処理水のpHより低いpHで行われることを特徴とする低分子有機物含有水の処理方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の低分子有機物含有水の処理方法であって、
前記逆浸透膜処理工程の被処理水について、脱気処理、イオン交換処理、UV殺菌処理のうちの少なくとも1つの処理を行うことを特徴とする低分子有機物含有水の処理方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の低分子有機物含有水の処理方法であって、
前記逆浸透膜処理工程が、前記被処理水を第1逆浸透膜で処理する第1逆浸透膜処理工程と、前記第1逆浸透膜処理工程の透過水を第2逆浸透膜で処理する第2逆浸透膜処理工程とを含み、
前記第1逆浸透膜および前記第2逆浸透膜のうちの少なくとも1つが、前記安定化次亜臭素酸組成物をポリアミド系の逆浸透膜に接触させて改質された膜であることを特徴とする低分子有機物含有水の処理方法。
【請求項7】
請求項6に記載の低分子有機物含有水の処理方法であって、
前記第1逆浸透膜処理工程の透過水および前記第2逆浸透膜処理工程の透過水のうちの少なくとも1つについて、イオン交換処理、電気式脱塩処理、UV殺菌処理、UV酸化処理、微粒子除去処理、第3逆浸透膜処理のうちの少なくとも1つの処理を行うことを特徴とする低分子有機物含有水の処理方法。
【請求項8】
低分子有機物を含有する被処理水を逆浸透膜で処理するための逆浸透膜の改質方法であって
素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物をポリアミド系の逆浸透膜に接触させて前記逆浸透膜を改質し、
前記ポリアミド系の逆浸透膜への前記安定化次亜臭素酸組成物の接触はpH3超、8未満の範囲で行われることを特徴とする逆浸透膜の改質方法
【請求項9】
低分子有機物を含有する被処理水を逆浸透膜で処理するための逆浸透膜の改質方法であって
素とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物をポリアミド系の逆浸透膜に接触させて前記逆浸透膜を改質し、
前記ポリアミド系の逆浸透膜への前記安定化次亜臭素酸組成物の接触はpH3超、8未満の範囲で行われることを特徴とする逆浸透膜の改質方法
【請求項10】
請求項9に記載の逆浸透膜の改質方法であって、
前記安定化次亜臭素酸組成物は、水、アルカリおよびスルファミン酸化合物を含む混合液に臭素を不活性ガス雰囲気下で添加する工程を含む方法により得られたものであることを特徴とする逆浸透膜の改質方法
【請求項11】
請求項8〜10のいずれか1項に記載の逆浸透膜の改質方法であって、
前記接触が、前記被処理水のpHより低いpHで行われることを特徴とする逆浸透膜の改質方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆浸透膜を用いる、低分子有機物を含有する低分子有機物含有水の処理方法および処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
逆浸透膜(RO膜)の透過水質改善等のための改質方法は数多く存在する。その中でも、逆浸透膜に臭素を含む遊離塩素を所定の時間接触させて性能を改善する方法がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、ポリアミドスキン層を有する逆浸透膜エレメントを搭載した膜分離装置において、逆浸透膜エレメントを膜分離装置内の圧力容器に充填した後、前記逆浸透膜エレメントに臭素を含む遊離塩素水溶液を接触させる逆浸透膜エレメントの処理方法が記載されている。
【0004】
しかし、特許文献1の方法では、一時的な水質改善はできるが、臭素を含む遊離塩素水溶液を長期的に通水すると、逆浸透膜が劣化し、水質が低下する。
【0005】
特に被処理水が低分子(例えば、分子量200以下)有機物を含む場合、逆浸透膜は低分子有機物の阻止率が低いため、高い阻止率で逆浸透膜処理することができる処理方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−088730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、低分子有機物を含有する被処理水を、高い阻止率で逆浸透膜処理することができる、低分子有機物含有水の処理方法および処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、低分子有機物を含有する被処理水を逆浸透膜で処理する逆浸透膜処理工程を含み、前記逆浸透膜は、臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物をポリアミド系の逆浸透膜に接触させて改質された膜であり、前記ポリアミド系の逆浸透膜への前記安定化次亜臭素酸組成物の接触はpH3超、8未満の範囲で行われる、低分子有機物含有水の処理方法である。
【0009】
また、本発明は、低分子有機物を含有する被処理水を逆浸透膜で処理する逆浸透膜処理工程を含み、前記逆浸透膜は、臭素とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物をポリアミド系の逆浸透膜に接触させて改質された膜であり、前記ポリアミド系の逆浸透膜への前記安定化次亜臭素酸組成物の接触はpH3超、8未満の範囲で行われる、低分子有機物含有水の処理方法である。
【0010】
前記低分子有機物含有水の処理方法において、前記安定化次亜臭素酸組成物は、水、アルカリおよびスルファミン酸化合物を含む混合液に臭素を不活性ガス雰囲気下で添加する工程を含む方法により得られたものであることが好ましい。
【0011】
前記低分子有機物含有水の処理方法において、前記接触が、前記被処理水のpHより低いpHで行われることが好ましい。
【0012】
前記低分子有機物含有水の処理方法において、前記逆浸透膜処理工程の被処理水について、脱気処理、イオン交換処理、UV殺菌処理のうちの少なくとも1つの処理を行うことが好ましい。
【0013】
前記低分子有機物含有水の処理方法において、前記逆浸透膜処理工程が、前記被処理水を第1逆浸透膜で処理する第1逆浸透膜処理工程と、前記第1逆浸透膜処理工程の透過水を第2逆浸透膜で処理する第2逆浸透膜処理工程とを含み、前記第1逆浸透膜および前記第2逆浸透膜のうちの少なくとも1つが、前記安定化次亜臭素酸組成物をポリアミド系の逆浸透膜に接触させて改質された膜であることが好ましい。
【0014】
前記低分子有機物含有水の処理方法において、前記第1逆浸透膜処理工程の透過水および前記第2逆浸透膜処理工程の透過水のうちの少なくとも1つについて、イオン交換処理、電気式脱塩処理、UV殺菌処理、UV酸化処理、微粒子除去処理、第3逆浸透膜処理のうちの少なくとも1つの処理を行うことが好ましい。
【0015】
本発明は、低分子有機物を含有する被処理水を逆浸透膜で処理するための逆浸透膜の改質方法であって、臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物をポリアミド系の逆浸透膜に接触させて前記逆浸透膜を改質し、前記ポリアミド系の逆浸透膜への前記安定化次亜臭素酸組成物の接触はpH3超、8未満の範囲で行われる、逆浸透膜の改質方法である。
【0016】
また、本発明は、低分子有機物を含有する被処理水を逆浸透膜で処理するための逆浸透膜の改質方法であって、臭素とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物をポリアミド系の逆浸透膜に接触させて前記逆浸透膜を改質し、前記ポリアミド系の逆浸透膜への前記安定化次亜臭素酸組成物の接触はpH3超、8未満の範囲で行われる、逆浸透膜の改質方法である。
【0017】
前記逆浸透膜の改質方法において、前記安定化次亜臭素酸組成物は、水、アルカリおよびスルファミン酸化合物を含む混合液に臭素を不活性ガス雰囲気下で添加する工程を含む方法により得られたものであることが好ましい。
【0018】
前記逆浸透膜の改質方法において、前記接触が、前記被処理水のpHより低いpHで行われることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、低分子有機物を含有する被処理水を、高い阻止率で逆浸透膜処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態に係る低分子有機物含有水の処理システムの一例を示す概略構成図である。
図2】本発明の実施形態に係る低分子有機物含有水の処理システムの他の例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0025】
本発明の実施形態に係る低分子有機物含有水の処理システムの一例の概略を図1に示し、その構成について説明する。図1の低分子有機物含有水の処理システム1は、臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物をポリアミド系の逆浸透膜に接触させて改質された逆浸透膜を有する逆浸透膜処理装置10を備える。
【0026】
図1の処理システム1において、被処理水配管12が逆浸透膜処理装置10の入口に接続されている。逆浸透膜処理装置10の透過水出口には透過水配管14が接続され、濃縮水出口には濃縮水配管16が接続されている。
【0027】
本実施形態に係る低分子有機物含有水の処理方法および低分子有機物含有水の処理システム1の動作について説明する。
【0028】
低分子有機物を含有する被処理水は、被処理水配管12を通して逆浸透膜処理装置10に供給され、逆浸透膜処理装置10において、改質された逆浸透膜を用いて被処理水の逆浸透膜処理が行われる(逆浸透膜処理工程)。逆浸透膜処理で得られた透過水は、透過水配管14を通して排出され、濃縮水は、濃縮水配管16を通して排出される。
【0029】
本発明の実施形態に係る低分子有機物含有水の処理システムの他の例の概略を図2に示す。図2の低分子有機物含有水の処理システム3は、第1逆浸透膜を有する第1逆浸透膜処理装置20と、第2逆浸透膜を有する第2逆浸透膜処理装置22とを備える。第1逆浸透膜および第2逆浸透膜のうちの少なくとも1つが、臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物をポリアミド系の逆浸透膜に接触させて改質された膜である。
【0030】
図2の処理システム3において、被処理水配管24が第1逆浸透膜処理装置20の入口に接続されている。第1逆浸透膜処理装置20の第1透過水出口と、第2逆浸透膜処理装置22の入口とは、第1透過水配管26により接続されている。第1逆浸透膜処理装置20の第1濃縮水出口には第1濃縮水配管28が接続されている。第2逆浸透膜処理装置22の第2透過水出口には第2透過水配管30が接続され、第2濃縮水出口には第2濃縮水配管32が接続されている。
【0031】
低分子有機物を含有する被処理水は、被処理水配管24を通して第1逆浸透膜処理装置20に供給され、第1逆浸透膜処理装置20において、第1逆浸透膜を用いて被処理水の逆浸透膜処理が行われる(第1逆浸透膜処理工程)。第1逆浸透膜処理で得られた第1濃縮水は、第1濃縮水配管28を通して排出される。第1逆浸透膜処理で得られた第1透過水は、第1透過水配管26を通して第2逆浸透膜処理装置22に供給され、第2逆浸透膜処理装置22において、第2逆浸透膜を用いて第1透過水の逆浸透膜処理が行われる(第2逆浸透膜処理工程)。第2逆浸透膜処理で得られた第2透過水は、第2透過水配管30を通して排出され、第2濃縮水は、第2濃縮水配管32を通して排出される。
【0032】
図1の処理システム1および図2の処理システム3において、臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物をポリアミド系の逆浸透膜に接触させて改質された逆浸透膜を用いることによって、低分子有機物を含有する被処理水を、高い阻止率で逆浸透膜処理することができる。この改質方法により、逆浸透膜の劣化を抑制しつつ、逆浸透膜の阻止率を向上させ、透過水質を改善することができる。安定化次亜臭素酸組成物がポリアミド系の逆浸透膜を劣化させることがほとんどないため、一時的な水質改善ではなく、安定化次亜臭素酸組成物を含む水を長期的にポリアミド系の逆浸透膜に通水して接触しても、逆浸透膜の劣化が抑制され、逆浸透膜の阻止率の低下、すなわち水質の低下が抑制される。
【0033】
上記の通り、本実施形態に係る低分子有機物含有水の処理方法および処理システムにおいて、臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物をポリアミド系の逆浸透膜に接触させて改質された膜を用いる。「臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物」は、「臭素系酸化剤」と「スルファミン酸化合物」との混合物を含む安定化次亜臭素酸組成物であってもよいし、「臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物との反応生成物」を含む安定化次亜臭素酸組成物であってもよい。ここで、本明細書における逆浸透膜の「改質」とは、透過水質の改善、すなわち阻止率の向上を指す。
【0034】
すなわち、本実施形態に係る低分子有機物含有水の処理方法および処理システムにおける逆浸透膜は、ポリアミド系の逆浸透膜への給水、洗浄水等の中に、改質剤として「臭素系酸化剤」と「スルファミン酸化合物」との混合物を存在させてポリアミド系の逆浸透膜に接触させる方法によって改質された膜である。これにより、給水等の中で、安定化次亜臭素酸組成物が生成すると考えられる。
【0035】
また、本実施形態に係る低分子有機物含有水の処理方法および処理システムにおける逆浸透膜は、ポリアミド系の逆浸透膜への給水、洗浄水等の中に、改質剤として「臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物との反応生成物」である安定化次亜臭素酸組成物を存在させてポリアミド系の逆浸透膜に接触させる方法によって改質された膜である。
【0036】
具体的には本実施形態に係る低分子有機物含有水の処理方法および処理システムにおける逆浸透膜は、ポリアミド系の逆浸透膜への給水等の中に、例えば、「臭素」、「塩化臭素」、「次亜臭素酸」または「臭化ナトリウムと次亜塩素酸との反応物」と、「スルファミン酸化合物」との混合物を存在させてポリアミド系の逆浸透膜に接触させる方法によって改質された膜である。
【0037】
また、本実施形態に係る低分子有機物含有水の処理方法および処理システムにおける逆浸透膜は、ポリアミド系の逆浸透膜への給水等の中に、例えば、「臭素とスルファミン酸化合物との反応生成物」、「塩化臭素とスルファミン酸化合物との反応生成物」、「次亜臭素酸とスルファミン酸化合物との反応生成物」、または「臭化ナトリウムと次亜塩素酸との反応物と、スルファミン酸化合物と、の反応生成物」である安定化次亜臭素酸組成物を存在させてポリアミド系の逆浸透膜に接触させる方法によって改質された膜である。
【0038】
本実施形態に係る低分子有機物含有水の処理方法および処理システムにおける逆浸透膜の改質は、例えば、ポリアミド系の逆浸透膜を備える逆浸透膜装置の運転の際に、逆浸透膜への給水等の中に、「臭素系酸化剤」と「スルファミン酸化合物」とを薬注ポンプ等により注入すればよい。「臭素系酸化剤」と「スルファミン酸化合物」とは別々に給水等の中に添加してもよく、または、原液同士で混合させてから給水等の中に添加してもよい。また、例えば、「臭素系酸化剤」と「スルファミン酸化合物」とを添加した水中に、ポリアミド系の逆浸透膜を所定の時間、浸漬して接触させてもよい。
【0039】
また、例えば、ポリアミド系の逆浸透膜への給水等の中に、「臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物との反応生成物」、または「臭素化合物と塩素系酸化剤との反応物と、スルファミン酸化合物と、の反応生成物」を薬注ポンプ等により注入してもよい。また、例えば、「臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物との反応生成物」、または「臭素化合物と塩素系酸化剤との反応物と、スルファミン酸化合物と、の反応生成物」を添加した水中に、ポリアミド系の逆浸透膜を所定の時間、浸漬して接触させてもよい。
【0040】
安定化次亜臭素酸組成物による改質は、例えば、ポリアミド系の逆浸透膜を備える逆浸透膜装置の運転の際に逆浸透膜への給水等の中に、上記安定化次亜臭素酸組成物を連続的または間欠的に添加してもよいし、逆浸透膜の阻止率が低下した場合に、逆浸透膜への給水等の中に上記安定化次亜臭素酸組成物を連続的または間欠的に添加したり、安定化次亜臭素酸組成物を含む水中に逆浸透膜を浸漬してもよい。
【0041】
逆浸透膜への安定化次亜臭素酸組成物の接触は、常圧条件下、加圧条件下または減圧条件下で行えばよいが、逆浸透膜装置を停止しなくても改質を行うことができる、逆浸透膜の改質を確実に行うことができる等の点から、加圧条件下で行うことが好ましい。逆浸透膜への安定化次亜臭素酸組成物の接触は、例えば、0.1MPa〜8.0MPaの範囲の加圧条件下で行うことが好ましい。
【0042】
逆浸透膜への安定化次亜臭素酸組成物の接触は、例えば、5℃〜35℃の範囲の温度条件下で行えばよい。
【0043】
「臭素系酸化剤」の当量に対する「スルファミン酸化合物」の当量の比は、1以上であることが好ましく、1以上2以下の範囲であることがより好ましい。「臭素系酸化剤」の当量に対する「スルファミン酸化合物」の当量の比が1未満であると、逆浸透膜を劣化させる可能性があり、2を超えると、製造コストが増加する場合がある。
【0044】
逆浸透膜に接触する全塩素濃度は有効塩素濃度換算で、0.01〜100mg/Lであることが好ましい。0.01mg/L未満であると、十分な改質効果を得ることができない場合があり、100mg/Lより多いと、逆浸透膜の劣化、配管等の腐食を引き起こす可能性がある。
【0045】
被処理水が、低分子の有機物を0.01mg/L以上含む場合、特に0.1mg/L以上100mg/L以下含む場合に、本実施形態に係る低分子有機物含有水の処理方法および処理システムをより好適に適用することができる。
【0046】
低分子の有機物とは、分子量が200以下の有機物を指し、例えば、分子量が200以下の、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール化合物、モノエタノールアミン、尿素等のアミン化合物、水酸化テトラメチルアンモニム等のテトラアルキルアンモニウム塩、酢酸等のカルボン酸等が挙げられる。
【0047】
臭素系酸化剤としては、臭素(液体臭素)、塩化臭素、臭素酸、臭素酸塩、次亜臭素酸等が挙げられる。次亜臭素酸は、臭化ナトリウム等の臭化物と次亜塩素酸等の塩素系酸化剤とを反応させて生成させたものであってもよい。
【0048】
これらのうち、臭素を用いた「臭素とスルファミン酸化合物(臭素とスルファミン酸化合物の混合物)」または「臭素とスルファミン酸化合物との反応生成物」の製剤は、「次亜塩素酸と臭素化合物とスルファミン酸」の製剤および「塩化臭素とスルファミン酸」の製剤等に比べて、塩化物イオンが少なく、ポリアミド系の逆浸透膜をより劣化させず、配管等の金属材料の腐食を引き起こす可能性が低いため、より好ましい。
【0049】
すなわち、本実施形態に係る低分子有機物含有水の処理方法および処理システムにおける逆浸透膜は、ポリアミド系の逆浸透膜に、臭素とスルファミン酸化合物とを接触させる(臭素とスルファミン酸化合物の混合物を接触させる)、または、臭素とスルファミン酸化合物との反応生成物を接触させる方法によって改質された膜であることが好ましい。
【0050】
臭素化合物としては、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化リチウム、臭化アンモニウムおよび臭化水素酸等が挙げられる。これらのうち、製剤コスト等の点から、臭化ナトリウムが好ましい。
【0051】
塩素系酸化剤としては、例えば、塩素ガス、二酸化塩素、次亜塩素酸またはその塩、亜塩素酸またはその塩、塩素酸またはその塩、過塩素酸またはその塩、塩素化イソシアヌル酸またはその塩等が挙げられる。これらのうち、塩としては、例えば、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム等の次亜塩素酸アルカリ金属塩、次亜塩素酸カルシウム、次亜塩素酸バリウム等の次亜塩素酸アルカリ土類金属塩、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウム等の亜塩素酸アルカリ金属塩、亜塩素酸バリウム等の亜塩素酸アルカリ土類金属塩、亜塩素酸ニッケル等の他の亜塩素酸金属塩、塩素酸アンモニウム、塩素酸ナトリウム、塩素酸カリウム等の塩素酸アルカリ金属塩、塩素酸カルシウム、塩素酸バリウム等の塩素酸アルカリ土類金属塩等が挙げられる。これらの塩素系酸化剤は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。塩素系酸化剤としては、取り扱い性等の点から、次亜塩素酸ナトリウムを用いるのが好ましい。
【0052】
スルファミン酸化合物は、以下の一般式(1)で示される化合物である。
NSOH (1)
(式中、Rは独立して水素原子または炭素数1〜8のアルキル基である。)
【0053】
スルファミン酸化合物としては、例えば、2個のR基の両方が水素原子であるスルファミン酸(アミド硫酸)の他に、N−メチルスルファミン酸、N−エチルスルファミン酸、N−プロピルスルファミン酸、N−イソプロピルスルファミン酸、N−ブチルスルファミン酸等の2個のR基の一方が水素原子であり、他方が炭素数1〜8のアルキル基であるスルファミン酸化合物、N,N−ジメチルスルファミン酸、N,N−ジエチルスルファミン酸、N,N−ジプロピルスルファミン酸、N,N−ジブチルスルファミン酸、N−メチル−N−エチルスルファミン酸、N−メチル−N−プロピルスルファミン酸等の2個のR基の両方が炭素数1〜8のアルキル基であるスルファミン酸化合物、N−フェニルスルファミン酸等の2個のR基の一方が水素原子であり、他方が炭素数6〜10のアリール基であるスルファミン酸化合物、またはこれらの塩等が挙げられる。スルファミン酸塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩等のアルカリ土類金属塩、マンガン塩、銅塩、亜鉛塩、鉄塩、コバルト塩、ニッケル塩等の他の金属塩、アンモニウム塩およびグアニジン塩等が挙げられる。スルファミン酸化合物およびこれらの塩は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。スルファミン酸化合物としては、環境負荷等の点から、スルファミン酸(アミド硫酸)を用いるのが好ましい。
【0054】
本実施形態に係る低分子有機物含有水の処理方法および処理システムにおける逆浸透膜の改質において、さらにアルカリを存在させてもよい。アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ等が挙げられる。低温時の製品安定性等の点から、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムとを併用してもよい。また、アルカリは、固形でなく、水溶液として用いてもよい。
【0055】
本実施形態に係る低分子有機物含有水の処理方法および処理システムにおける逆浸透膜の改質方法は、逆浸透膜として昨今主流であるポリアミド系高分子膜に適用することができる。ポリアミド系高分子膜は、酸化剤に対する耐性が比較的低く、遊離塩素等をポリアミド系高分子膜に連続的に接触させると、膜性能の著しい低下が起こる。しかしながら、安定化次亜臭素酸組成物を用いる逆浸透膜の改質方法ではポリアミド高分子膜においても、このような著しい膜性能の低下はほとんど起こらない。
【0056】
本実施形態に係る低分子有機物含有水の処理方法および処理システムにおける逆浸透膜の改質方法において、ポリアミド系の逆浸透膜への安定化次亜臭素酸組成物の接触が、被処理水のpHより低いpHで行われることが好ましい。逆浸透膜の改質後、被処理水の通水のときに安定化次亜臭素酸組成物をスライム抑制剤として連続添加した場合、被処理水のpHが改質のときのpHよりも高い(すなわち、改質のときのpHが被処理水のpHよりも低い)と、改質効果が維持され、被処理水の透過流量の変動を抑制することができる。逆浸透膜の改質後、被処理水の通水のときに安定化次亜臭素酸組成物をスライム抑制剤として連続添加した場合、被処理水のpHが改質のときのpHよりも低い(すなわち、改質のときのpHが被処理水のpHよりも高い)と、改質効果と被処理水の透過流量の変動が起こる場合がある。ポリアミド系の逆浸透膜への安定化次亜臭素酸組成物の接触は、例えば、pH3超、8未満の範囲で行われ、またはpH4〜6.5の範囲で行われる。安定化次亜臭素酸組成物の接触のときのpHが低いほど、膜の改質効果が高くなり、阻止率が向上し、透過水質を改善することができる。
【0057】
逆浸透膜装置において、逆浸透膜への給水のpH5.5以上でスケールが発生する場合には、スケール抑制のために分散剤を安定化次亜臭素酸組成物と併用してもよい。分散剤としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、ホスホン酸等が挙げられる。分散剤の給水への添加量は、例えば、RO濃縮水中の濃度として0.1〜1,000mg/Lの範囲である。
【0058】
また、分散剤を使用せずにスケールの発生を抑制するためには、例えば、RO濃縮水中のシリカ濃度を溶解度以下に、カルシウムスケールの指標であるランゲリア指数を0以下になるように、逆浸透膜装置の回収率等の運転条件を調整することが挙げられる。
【0059】
逆浸透膜装置の用途としては、例えば、純水製造、海水淡水化、排水回収等が挙げられる。
【0060】
本実施形態に係る低分子有機物含有水の処理方法および処理システム1において、逆浸透膜処理装置10の被処理水について処理を行う、脱気処理装置、イオン交換処理装置、UV殺菌処理装置のうちの少なくとも1つの装置を備え、逆浸透膜処理装置10(逆浸透膜処理工程)の被処理水について、脱気処理、イオン交換処理、UV殺菌処理のうちの少なくとも1つの処理を行ってもよい。
【0061】
本実施形態に係る低分子有機物含有水の処理方法および処理システム3において、第1逆浸透膜処理装置20の被処理水について処理を行う、脱気処理装置、イオン交換処理装置、UV殺菌処理装置のうちの少なくとも1つの装置を備え、第1逆浸透膜処理装置20(第1逆浸透膜処理工程)の被処理水について、脱気処理、イオン交換処理、UV殺菌処理のうちの少なくとも1つの処理を行ってもよい。
【0062】
また、本実施形態に係る低分子有機物含有水の処理方法および処理システム3において、第1逆浸透膜処理装置20の透過水および第2逆浸透膜処理装置22の透過水のうちの少なくとも1つについて処理を行う、イオン交換処理装置、電気式脱塩処理装置、UV殺菌処理装置、UV酸化処理装置、微粒子除去処理装置、第3逆浸透膜処理装置のうちの少なくとも1つの装置を備え、第1逆浸透膜処理装置20(第1逆浸透膜処理工程)の透過水および第2逆浸透膜処理装置22(第2逆浸透膜処理工程)の透過水のうちの少なくとも1つについて、イオン交換処理、電気式脱塩処理、UV殺菌処理、UV酸化処理、微粒子除去処理、第3逆浸透膜処理のうちの少なくとも1つの処理を行ってもよい。
【0063】
<ポリアミド系逆浸透膜用改質剤組成物>
本実施形態に係るポリアミド系逆浸透膜用改質剤組成物は、「臭素系酸化剤」と「スルファミン酸化合物」との混合物を含む安定化次亜臭素酸組成物を含有するものであり、さらにアルカリを含有してもよい。
【0064】
また、本実施形態に係るポリアミド系逆浸透膜用改質剤組成物は、「臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物との反応生成物」を含む安定化次亜臭素酸組成物を含有するものであり、さらにアルカリを含有してもよい。
【0065】
臭素系酸化剤、臭素化合物、塩素系酸化剤およびスルファミン酸化合物については、上述した通りである。
【0066】
本実施形態に係るポリアミド系逆浸透膜用改質剤組成物としては、ポリアミド系逆浸透膜をより劣化させず、RO透過水への有効ハロゲンのリーク量がより少ないため、臭素と、スルファミン酸化合物とを含有するもの(臭素とスルファミン酸化合物の混合物を含有するもの)、例えば、臭素とスルファミン酸化合物とアルカリと水との混合物、または、臭素とスルファミン酸化合物との反応生成物を含有するもの、例えば、臭素とスルファミン酸化合物との反応生成物と、アルカリと、水との混合物が好ましい。
【0067】
本実施形態に係るポリアミド系逆浸透膜用改質剤組成物は、次亜塩素酸や、臭素を含む遊離塩素等の改質剤と比較すると、ポリアミド系の逆浸透膜の改質効果を有しながらも、次亜塩素酸や、臭素を含む遊離塩素のような著しい膜劣化をほとんど引き起こすことがない。通常の使用濃度では、膜劣化への影響は実質的に無視することができる。このため、ポリアミド系の逆浸透膜の改質剤としては最適である。
【0068】
本実施形態に係るポリアミド系逆浸透膜用改質剤組成物は、次亜塩素酸や、臭素を含む遊離塩素等とは異なり、逆浸透膜をほとんど透過しないため、処理水水質への影響がほとんどない。また、次亜塩素酸等と同様に現場で濃度を測定することができるため、より正確な濃度管理が可能である。
【0069】
改質剤組成物のpHは、例えば、13.0超であり、13.2超であることがより好ましい。改質剤組成物のpHが13.0以下であると改質剤組成物中の有効ハロゲンが不安定になる場合がある。
【0070】
ポリアミド系逆浸透膜用改質剤組成物中の臭素酸濃度は、5mg/kg未満であることが好ましい。ポリアミド系逆浸透膜用改質剤組成物中の臭素酸濃度が5mg/kg以上であると、RO透過水の臭素酸イオンの濃度が高くなる場合がある。
【0071】
<ポリアミド系逆浸透膜用改質剤組成物の製造方法>
本実施形態に係るポリアミド系逆浸透膜用改質剤組成物は、臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを混合することにより得られ、さらにアルカリを混合してもよい。
【0072】
臭素とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物を含有する、逆浸透膜用改質剤組成物の製造方法としては、水、アルカリおよびスルファミン酸化合物を含む混合液に臭素を不活性ガス雰囲気下で添加して反応させる工程、または、水、アルカリおよびスルファミン酸化合物を含む混合液に臭素を不活性ガス雰囲気下で添加する工程を含むことが好ましい。不活性ガス雰囲気下で添加して反応させる、または、不活性ガス雰囲気下で添加することにより、改質剤組成物中の臭素酸イオン濃度が低くなり、RO透過水中の臭素酸イオン濃度が低くなる。
【0073】
用いる不活性ガスとしては限定されないが、製造等の面から窒素およびアルゴンのうち少なくとも1つが好ましく、特に製造コスト等の面から窒素が好ましい。
【0074】
臭素の添加の際の反応器内の酸素濃度は6%以下が好ましいが、4%以下がより好ましく、2%以下がさらに好ましく、1%以下が特に好ましい。臭素の反応の際の反応器内の酸素濃度が6%を超えると、反応系内の臭素酸の生成量が増加する場合がある。
【0075】
臭素の添加率は、改質剤組成物全体の量に対して25重量%以下であることが好ましく、1重量%以上20重量%以下であることがより好ましい。臭素の添加率が改質剤組成物全体の量に対して25重量%を超えると、反応系内の臭素酸の生成量が増加する場合がある。1重量%未満であると、改質効果が劣る場合がある。
【0076】
臭素添加の際の反応温度は、0℃以上25℃以下の範囲に制御することが好ましいが、製造コスト等の面から、0℃以上15℃以下の範囲に制御することがより好ましい。臭素添加の際の反応温度が25℃を超えると、反応系内の臭素酸の生成量が増加する場合があり、0℃未満であると、凍結する場合がある。
【実施例】
【0077】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0078】
[安定化次亜臭素酸組成物の調製]
窒素雰囲気下で、液体臭素:16.9重量%(wt%)、スルファミン酸:10.7重量%、水酸化ナトリウム:12.9重量%、水酸化カリウム:3.94重量%、水:残分を混合して、安定化次亜臭素酸組成物を調製した。安定化次亜臭素酸組成物のpHは14、有効ハロゲン濃度(有効塩素換算濃度)は7.5重量%であった。安定化次亜臭素酸組成物の詳細な調製方法は以下の通りである。
【0079】
反応容器内の酸素濃度が1%に維持されるように、窒素ガスの流量をマスフローコントローラでコントロールしながら連続注入で封入した2Lの4つ口フラスコに1436gの水、361gの水酸化ナトリウムを加え混合し、次いで300gのスルファミン酸を加え混合した後、反応液の温度が0〜15℃になるように冷却を維持しながら、473gの液体臭素を加え、さらに48%水酸化カリウム溶液230gを加え、組成物全体の量に対する重量比でスルファミン酸10.7%、臭素16.9%、臭素の当量に対するスルファミン酸の当量比が1.04である、目的の安定化次亜臭素酸組成物を得た。生じた溶液のpHは、ガラス電極法にて測定したところ、14であった。生じた溶液の臭素含有率は、臭素をヨウ化カリウムによりヨウ素に転換後、チオ硫酸ナトリウムを用いて酸化還元滴定する方法により測定したところ16.9%であり、理論含有率(16.9%)の100.0%であった。また、臭素反応の際の反応容器内の酸素濃度は、株式会社ジコー製の「酸素モニタJKO−02 LJDII」を用いて測定した。なお、臭素酸濃度は5mg/kg未満であった。
【0080】
なお、pHの測定は、以下の条件で行った。
電極タイプ:ガラス電極式
pH測定計:東亜ディーケーケー社製、IOL−30型
電極の校正:関東化学社製中性リン酸塩pH(6.86)標準液(第2種)、同社製ホウ酸塩pH(9.18)標準液(第2種)の2点校正で行った
測定温度:25℃
測定値:測定液に電極を浸漬し、安定後の値を測定値とし、3回測定の平均値
【0081】
<実施例1、比較例1,2>
上記で調製した安定化次亜臭素酸組成物(実施例1)、次亜塩素酸(比較例1)、次亜臭素酸(臭化ナトリウムと次亜塩素酸の混合物)(比較例2)を改質剤としてそれぞれ用いて、ポリアミド系高分子逆浸透膜(日東電工(株)製「SWC4+」、φ75mmの平膜、尿素阻止率=60%に低下させたもの)の改質を行った。改質は、この逆浸透膜を備える逆浸透膜装置に、操作圧1.0MPaで、上記改質剤を10ppm添加した水をpH=4、25±1℃で1時間通水して実施した。その後、操作圧1.0MPaで、尿素(分子量60)をTOC値として10ppmと、10ppmの上記改質剤とを添加した水を、pH=7、25±1℃でCT(Concentration Time)値=14000[ppm・h]となるまで連続通水した。原水および透過水のTOC濃度をTOC計によって測定し、下記の尿素阻止率を算出した。CT値は下記の通り算出した。結果を表1に示す。なお、比較例2では、改質剤として、臭化ナトリウム:15重量%、12%次亜塩素酸ナトリウム水溶液:42.4重量%を水中に別々に添加した。
尿素阻止率[%]=100−[透過水TOC濃度÷{(給水TOC濃度+濃縮水TOC濃度)÷2}×100]
CT値[ppm・h]=(遊離塩素濃度)×(接触時間)
【0082】
【表1】
【0083】
このように、実施例1の安定化次亜臭素酸組成物を改質剤として改質した膜を用いることにより、逆浸透膜の劣化を抑制しつつ、逆浸透膜の尿素の阻止率が向上した。低分子有機物を含有する低分子有機物含有水を、高い阻止率で逆浸透膜処理することができた。
【0084】
<実施例2>
上記で調整した安定化次亜臭素酸組成物として用いて、ポリアミド系高分子逆浸透膜(日東電工(株)製「SWC4+」、φ75mmの平膜、尿素阻止率=60%に低下させたもの)の改質を行った。改質は、この逆浸透膜を備える逆浸透膜装置に、操作圧1.0MPaで、上記改質剤を10ppm添加した水を25±1℃で1時間通水し、逆浸透膜への給水のpHの影響を調べた。
【0085】
【表2】
【0086】
このように、安定化次亜臭素酸組成物の接触のときのpHが低いほど、尿素阻止率の向上が大きいことがわかった。すなわち、安定化次亜臭素酸組成物の接触のときのpHが低いほど、膜の改質効果が高くなり、低分子有機物の阻止率が向上し、透過水質を改善することができることがわかった。
【符号の説明】
【0087】
1,3 処理システム、10 逆浸透膜処理装置、12,24 被処理水配管、14 透過水配管、16 濃縮水配管、20 第1逆浸透膜処理装置、22 第2逆浸透膜処理装置、26 第1透過水配管、28 第1濃縮水配管、30 第2透過水配管、32 第2濃縮水配管。
図1
図2