特許第6823411号(P6823411)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6823411
(24)【登録日】2021年1月13日
(45)【発行日】2021年2月3日
(54)【発明の名称】電池パック
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/20 20210101AFI20210121BHJP
   H01M 50/572 20210101ALI20210121BHJP
【FI】
   H01M2/10 M
   H01M2/34 A
   H01M2/10 E
   H01M2/34 B
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-187748(P2016-187748)
(22)【出願日】2016年9月27日
(65)【公開番号】特開2018-55859(P2018-55859A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2019年3月26日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセルホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】山田 良太
【審査官】 馳平 憲一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−134027(JP,A)
【文献】 特開2009−059630(JP,A)
【文献】 特開2015−088380(JP,A)
【文献】 特開2014−011112(JP,A)
【文献】 特開2011−222518(JP,A)
【文献】 特開2014−175191(JP,A)
【文献】 特開2013−020770(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/10
H01M 2/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
素電池上に、インナーフレーム、過電流保護素子、回路基板がこの順に上下方向に搭載された電池パックであって、
前記過電流保護素子は、温度ヒューズとして機能する素子本体部と、前記素子本体部から導出された第1リード及び第2リードとを備え、
前記過電流保護素子は、前記第1リードが前記素電池側に且つ前記第2リードが前記回路基板側になるように配置されており、
前記第1リードとは異電位の回路が、前記第1リードに対して前記素電池とは反対側に、前記第1リードの先端上下方向に対向して配置されており、
前記インナーフレームは、前記第1リードの前記先端と前記異電位の回路との間に、前記第1リードの前記先端の上方に位置するように設けられたスペーサを備えることを特徴とする電池パック。
【請求項2】
前記異電位の回路は、前記第1リードが電気的に接続された前記素電池の第1端子とは異極の第2端子に電気的に接続された導電片または前記導電片が電気的に接続された前記回路基板の入力端子である請求項1に記載の電池パック。
【請求項3】
前記異電位の回路は、前記第2リードまたは前記第2リードが電気的に接続された前記回路基板の入力端子である請求項1に記載の電池パック。
【請求項4】
前記第1リードは前記素電池の負極端子に電気的に接続されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の電池パック。
【請求項5】
前記インナーフレームは、前記スペーサを含む全体が一部品として一体的に成形された射出成形品である請求項1〜4のいずれか一項に記載の電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過電流保護素子(PTC)を備えた電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、スマートフォン、携帯型コンピューター(例えばタブレット端末、ノート型パソコン等)、電子書籍端末、携帯型ゲーム機などの携帯型電子機器用の電源として、二次電池(一般に「素電池」と呼ばれる)を内蔵した電池パックが広範囲に利用されている。この電池パックでは、充電時の過電流を防止するために、一般に、過電流保護素子(以下、「PTC」という)が内蔵されている。
【0003】
PTCとして種々の仕様のものが上市されている。電池パックを設計する場合には、これらの中から所望の電気的特性を満たすPTCが選定される。ところが、選定したPTCの形状が、適用しようとする電池パックの構造に合致するとは限らない。
【0004】
このような場合、(1)電気的特性及び形状の両方を満足するPTCを新規に製造する、(2)PTCの形状が電池パックの構造に合致するように、電池パックの組立工程でPTCを加工する(例えば、PTCのリードを切断する)、(3)選定したPTCを加工することなく電池パックに組み込むことができるように、他の部材を追加する、などの方法が考えられる。特許文献3には、上記(3)の方法として、PTCの端子と、これより上方にある回路との絶縁を確保するために、両者間に絶縁テープを配置した電池パックが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−088380号公報(図2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記(1)の方法は、PTCを新たに設計することにともなう開発費が必要であるので、電池パックのコストが増大する。上記(2)の方法は、PTCを加工するための加工工数が必要であるので、電池パックの組立工数及びコストが増大する。上記(3)の方法は、電池パックに新たな部品を組み込む必要があるので、当該部品の費用や電池パックへの組み込み工数が発生し、電池パックのコストが増大する。
【0007】
本発明は、PTCの加工や新たな部品の追加を必要とすることなく、既存のPTCを用いて安価な電池パックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電池パックは、素電池上に、インナーフレーム、過電流保護素子、回路基板がこの順に上下方向に搭載されている。前記過電流保護素子は、温度ヒューズとして機能する素子本体部と、前記素子本体部から導出された第1リード及び第2リードとを備える。前記過電流保護素子は、前記第1リードが前記素電池側に且つ前記第2リードが前記回路基板側になるように配置されている。前記第1リードとは異電位の回路が、前記第1リードに対して前記素電池とは反対側に、前記第1リードの先端上下方向に対向して配置されている。前記インナーフレームは、前記第1リードの前記先端と前記異電位の回路との間に、前記第1リードの前記先端の上方に位置するように設けられたスペーサを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、インナーフレームに設けられたスペーサが、第1リードと、第1リードとは異電位の回路との間を確実に絶縁する。このため、過電流保護素子に加工を施したり、新たな部品を追加したりすることなく、既存の過電流保護素子を用いて安価な電池パックを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施形態にかかる電池パックの斜視図である。
図2図2は、本発明の一実施形態にかかる電池パックの分解斜視図である。
図3図3Aは、本発明の一実施形態にかかる電池パックを構成するインナーフレームの上方から見た斜視図である。図3Bは、インナーフレームの下方から見た斜視図である。
図4図4は、本発明の一実施形態にかかる電池パックにおいて、素電池に、インナーフレーム及び過電流保護素子が設けられた状態を示した斜視図である。
図5図5は、本発明の一実施形態にかかる電池パックの拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上記の本発明の電池パックにおいて、前記異電位の回路は、前記第1リードが電気的に接続された前記素電池の第1端子とは異極の第2端子に電気的に接続された導電片または前記導電片が電気的に接続された前記回路基板の入力端子であってもよい。かる構成によれば、第1端子に接続された第1リードと、第1端子とは異極の第2端子に接続された導電片又は入力端子とを、安価且つ容易に絶縁することができる。
【0012】
あるいは、前記異電位の回路は、前記第2リードまたは前記第2リードが電気的に接続された前記回路基板の入力端子であってもよい。かかる構成によれば、過電流保護素子のと第2リード(または第2リードが接続された入力端子)とを、安価且つ容易に絶縁することができる。
【0013】
前記第1リードは前記素電池の負極端子に電気的に接続されていてもよい。かかる構成によれば、従来から一般的な電池パックに本発明を容易に適用することができる。
【0014】
前記インナーフレームは、前記スペーサを含む全体が一部品として一体的に成形された射出成形品であってもよい。かかる構成は、インナーフレームを低コストで製造することが可能になるので、電池パックの低コスト化に有利である。
【0015】
以下に、本発明を好適な実施形態を示しながら詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されないことはいうまでもない。以下の説明において参照する各図は、説明の便宜上、本発明の実施形態を構成する主要部材を簡略化して示したものである。従って、本発明は以下の各図に示されていない任意の部材を備え得る。また、本発明の範囲内において、以下の各図に示された各部材を変更または省略し得る。本発明の実施形態を示す図面において、同一又は対応する部材には同じ符号が付してあり、そのような部材については、重複する説明を省略する。
【0016】
図1は本発明の一実施形態に係る電池パック1の斜視図、図2は電池パック1を構成する主要部材を示した分解斜視図である。以下の説明の便宜のため、図1及び図2の紙面の上側を電池パック1の「上側」、図1及び図2の紙面の下側を電池パック1の「下側」という。上側及び下側を結ぶ方向を「上下方向」といい、上下方向に垂直な方向を「水平方向」という。但し、この「上」、「下」、「上下方向」、「水平方向」は、電池パック1の実際の使用時での姿勢を意味するものではない。
【0017】
図1に示されているように、カバー16の天板から、外部配線15aが導出されている。外部配線15aの先端に設けられたコネクタ15bを介して、電池パック1に対して充放電を行うことができる。
【0018】
図2に示されているように、電池パック1は、上側に開口した金属製の電池ケース10aと、電池ケース10aの上側の開口を塞ぐ金属製の封口板10bとを有する素電池10を備える。素電池10は、充放電が可能な二次電池である。二次電池の種類は特に制限はないが、例えばリチウムイオン二次電池を用いることができる。素電池10は、上下方向寸法及び幅方向(封口板10bの長手方向)寸法に比べて、これら2方向に直交する方向(奥行き方向)の寸法が小さな扁平形状(薄板形状)を有している。素電池10内には、発電要素及び電解液(いずれも図示せず)が封入されている。発電要素は、シート状の正極集電体の片面又は両面に正極活物質を含む正極合剤層が塗布形成された正極と、シート状の負極集電体の片面又は両面に負極活物質を含む負極合剤層が塗布形成された負極とが、セパレータを介して巻回又は積層されてなる扁平状の電極体である。
【0019】
電池ケース10aは、例えば、アルミニウム又はその合金などからなる金属製の板材を深絞り加工することで形成することができる。封口板10bは、例えば、アルミニウム合金などからなる金属板をプレス加工して形成することができる。電池ケース10aの開口の周縁と封口板10bの周囲の端縁とは、例えばレーザ光を用いたシーム溶接によって液密に封止されている。
【0020】
封口板10bの長手方向の略中央位置には、負極端子10nが、上方に向かってわずかに突出して設けられている。負極端子10nは封口板10bを貫通し、電池ケース10a内に収納された発電要素の負極集電体と電気的に接続されている。負極端子10nと封口板10bとの間には、両者を絶縁するための絶縁パッキンが介在している。一方、負極端子10nからわずかに離れた封口板10b上の位置(即ち、封口板10bの長手方向の一端の近傍の位置)に、正極端子10pが、上方に向かってわずかに突出して設けられている。正極端子10pは、封口板10b、電池ケース10a、及び、素電池10内の発電要素の正極集電体と電気的に接続されている。
【0021】
素電池10の一端面を構成する封口板10bに、両面に粘着剤が塗布されたシート状の両面粘着テープ11を介してインナーフレーム12が固定される。
【0022】
図3Aはインナーフレーム12の上方から見た斜視図、図3Bはインナーフレーム12の下方から見た斜視図である。インナーフレーム12は、インナーフレーム12の外周端縁に沿って、上下方向に延びた周壁12dを備える。周壁12dよりも内側に、インナーフレーム12を上下方向に貫通する第1開口12a及び第2開口12bが設けられている。第1開口12aは、インナーフレーム12の長手方向の略中央に配置されている。第2開口12bは、インナーフレーム12の長手方向の一端の近傍に配置されている。第1開口12aに対して第2開口12bとは反対側に、底板12cが設けられている。隔壁12eが第1開口12aと第2開口12bとを隔てている。隔壁12eは上下方向に沿って延びている。スペーサ12fが、隔壁12eの上端又はその近傍から、第1開口12aの側に向かって、水平方向に沿って突出している。周壁12dの外面から爪12gが突出している。インナーフレーム12は、例えばポリカーボネート、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンなどの絶縁性を有する樹脂を射出成形することにより全体が一部品として一体的に形成された射出成形品である。
【0023】
図2に戻り、インナーフレーム12上に、過電流保護素子(以下「PTC」という)13、導電片14、回路基板15が配置される。
【0024】
PTC13は、温度ヒューズとして機能する薄板状の素子本体部13cを備える。第1リード13a及び第2リード13bが、素子本体部13cの下面及び上面から、素子本体部13cからはみ出すように導出されている。第1リード13a及び第2リード13bは、導電性を有する金属からなる短冊状の薄板である。本実施形態では、第1リード13a及び第2リード13bは、インナーフレーム12の長手方向と平行に、素子本体部13cに対して互いに逆向きに突出している。但し、素子本体部13cの上面から導出された第2リード13bは、その先端が素子本体部13cの上方に位置するように折り返されている。
【0025】
導電片14は、導電性を有する金属(例えばニッケル)からなる短冊状の薄板である。導電片14は、階段状(またはZ字状)になるように、2箇所で折り曲げられている。
【0026】
回路基板15は、保護回路(安全回路)を構成するFET素子等の電子部品を含み、任意に充電回路が形成されていてもよい。回路基板15の上面に設けられた端子(図示せず)に外部配線15aが半田15cを用いて接続されている。外部配線15aの先端には、コネクタ15bが設けられている。回路基板15の下面には、負極入力端子15n及び正極入力端子15p(後述する図5参照)が設けられている。
【0027】
インナーフレーム12、PTC13、導電片14、回路基板15などの封口板10b上に配される部品は、カバー16で覆われる。カバー16の周囲壁に設けられた係合孔16aにインナーフレーム12の爪12g(図3A及び図3B参照)を嵌入させることにより、カバー16がインナーフレーム12に固定される。但し、カバー30を固定する方法は本実施形態に限定されず、例えば、爪12g及び係合孔16a以外の任意の係合構造により固定する方法、ネジを用いて固定する方法、接着剤を用いて固定する方法、YAGレーザ等を用いてレーザ溶接する方法等を例示することができる。カバー16の周囲壁及び天板に設けられたスリット16bから外部配線15が導出される(図1参照)。カバー16は、インナーフレーム12と同様の絶縁性を有する樹脂を射出成形することにより全体が一部品として一体的に形成された射出成形品である。
【0028】
素電池10(電池ケース10a)の底面(下面)には、両面に粘着剤が塗布されたシート状の両面粘着テープ(図示せず)を介してボトムフレーム17が固定される。ボトムフレーム17は、インナーフレーム12と同様の絶縁性を有する樹脂を射出成形することにより全体が一部品として一体的に形成された射出成形品である。ボトムフレーム17を素電池10に固定する方法は、両面粘着テープに限定されず、例えば、接着剤を用いて固定する方法、YAGレーザ等を用いてレーザ溶接する方法などを用いることができる。
【0029】
素電池10が外界に露出しないように、電池ケース10aの外周面にシート状のラベル18が貼付される。図1に示されているように、上下方向においては、ラベル18は、カバー16及びボトムフレーム17にまで延びている。ラベル18の材料は任意であり、例えば絶縁性を有する樹脂又は紙などのシートを用いることができる。
【0030】
図4は、素電池10の封口板10b上に、両面粘着テープ11(図4では見えない)を介してインナーフレーム12及びPTC13を搭載した状態を示した斜視図である。図5は、電池パック1の、PTC13及びその近傍部分の拡大断面図である。図5の断面は、封口板10bの長手方向に平行且つ上下方向に平行である。図5では、図面を簡単化するために、素電池10、PTC13、回路基板15については、その内部構造の図示を省略している。
【0031】
上述したように、封口板10bに、両面粘着テープ11を介してインナーフレーム12が固定される。図5に示されているように、インナーフレーム12の第1開口12a及び第2開口12b内に、素電池の負極端子10n及び正極端子10pがそれぞれ配置される。インナーフレーム12の底板12cの上面と、正極端子10pの上面とは、略同一の平面を構成する。PTC13が、その素子本体部13cが底板12c上に載置され、且つ、第1リード13aが第1開口12a内の正極端子10n上に位置するように、インナーフレーム12上に載置される。第1リード13aは正極端子10nに溶接され、電気的に接続される。第1リード13aは、正極端子10nを越えて水平方向に延び、その先端はインナーフレーム12の隔壁12eの近傍にまで達している。隔壁12eから水平方向に突出したスペーサ12fが、第1リード13aの先端の上方に位置している。素子本体部13cの上面から導出された第2リード13bは、略U字状に折り返されている。
【0032】
階段状に折り曲げられた導電片14の一端は、インナーフレーム12の第2開口12b内の正極端子10p(図4参照)に溶接され、電気的に接続される。導電片14の他端は、インナーフレーム12のスペーサ12fの上方に位置している。即ち、PTC13の第1リード13a(特にその先端部分)と導電片14とが、スペーサ12fを挟んで上下方向に対向している。
【0033】
回路基板15が、インナーフレーム12の周壁12dの上端縁に載置される。回路基板15の下面に形成された負極入力端子15n及び正極入力端子15pは、PTC13の第2リード13b及び導電片14にそれぞれ電気的に接続される。
【0034】
以上のように、本発明によれば、素電池10の負極端子10nに接続されたPTC13の第1リード13aと、素電池10の正極端子10pに接続された導電片14とが、上下方向に対向する。スペーサ12fが、第1リード13aと導電片14との間に位置するように、インナーフレーム12に設けられている。このため、第1リード13aと導電片14との絶縁が確実に確保される。
【0035】
上述したように、PTC13としては種々の仕様のものが存在する。電気的特性を優先してPTC13を選定した場合、例えば図5に示したように、第1リード13aが必要以上に長く、そのため、正極端子10nを越えて延びるという事態が起こりうる。第1リード13aの正極端子10nよりも先端側の部分は、正極端子10nには溶接されていないから、上方に向かって跳ね上がるなど、自由に変位することができる。
【0036】
従来は、第1リード13aの余分な先端部分を切り落としたり、第1リード13aと導電片14との間に絶縁テープ(特許文献1参照)を設けたりすることによって、第1リード13aと、第1リード13aの上方に位置する導電片14とが接触する短絡事故の発生を防止していた。第1リード13aの先端部分を切り落とす方法は、第1リード13aを切断するための加工工数が必要である。また、絶縁テープを用いる方法は、絶縁テープの費用や、絶縁テープを配置するための工数が必要である。
【0037】
これに対して、本発明では、上下方向に対向する第1リード13aと導電片14との間にスペーサ12fが設けられる。スペーサ12fは、インナーフレーム12に一体的に設けられている。インナーフレーム12は、従来の電池パックにおいても使用されていた部品であるので、本発明の電池パック1を構成する部品数や電池パック1の組立工数は、従来のそれらと変わらない。インナーフレーム12にスペーサ12fを設けるためには、インナーフレーム12を成形するための金型を修正する必要がある。しかしながら、金型の修正は軽微であり、一旦金型を修正してしまえば、大量のインナーフレーム12を連続的に成形することができる。従って、全体としては、上述した従来のいずれの方法を用いた場合に比べても、安価な電池パック1を提供することができる。かくして、本発明によれば、PTC13に加工を施したり、新たな部品を追加したりすることなく、既存のPTC13を用いて安価な電池パック1を提供することができる。
【0038】
上記の実施形態は例示に過ぎない。本発明は上記の実施形態に限定されず、適宜変更することができる。
【0039】
スペーサ12fは、第1リード13aと、第1リード13aに対向し且つ第1リード13aとは異電位の回路との間に配されて、両者を短絡しないように離間させることができれば、その構成は任意に変更しうる。
【0040】
例えば、上記の実施形態では、スペーサ12fは、第1開口12aと第2開口12bとを隔てる隔壁12eに設けられていたが、スペーサを隔壁12e以外のインナーフレーム12の任意の箇所に設けてもよい。例えば、スペーサを、第1開口12aを挟んで水平方向に対向する周壁12dの内面(対向する周壁12dに対向する面)に設けることができる。一例として、スペーサを、対向する周壁12d間を架橋するように、水平方向に沿って設けることができる。別の例としては、片持ち支持構造のスペーサを、周壁12dの内面から水平方向に沿って突出するように設けることができる。
【0041】
スペーサの形状は、薄板形状、棒状、メッシュ状、など任意に変更しうる。また、スペーサの数も、1つあるいは複数であってもよい。
【0042】
スペーサは、第1リード13aと、第1リード13aに対向し且つ第1リード13aとは「異電位の回路」との間に設けられる。電池パックの構成等によっては、「異電位の回路」は導電片14に限定されない。例えば、異電位の回路は、導電片14が接続された回路基板15の正極入力端子15pであってもよい。あるいは、異電位の回路は、第2リード13b、または第2リード13bが接続された回路基板15の負極入力端子15nであってもよい。第1リード13aと第2リード13bとは、その間に素子本体部13cが介在しているために、厳密な意味において同電位ではない。従って、本発明において第1リード13bに対して「異電位の回路」とは、正極端子10pに電気的に接続された回路に限定されず、第2リード13b及びこれに電気的に接続された回路が含まれる。
【0043】
上記の実施形態では、PTC13の第2リード13bは、素子本体部13c側に略U字状に折り返されていたが、素子本体部13cの寸法等によっては、第2リード13bを折り返さずに、回路基板15の負極入力端子15nに接続されてもよい。
【0044】
上記の実施形態のPTC13では、第1リード13a及び第2リード13bが素子本体部13cに対して互いに反対向きに導出されていた。しかしながら、第1リード13a及び第2リード13bが、互いに対向するように、素子本体部13cに対して同じ向きに導出されたPTCが存在する。このようなPTCを用いて本発明の電池パックを構成してもよい。
【0045】
電池パック1を電子機器と接続するための構成は、外部配線15a及びコネクタ15bに限定されない。外部配線15a及びコネクタ15bを省略し、カバー15の天板に開口を設けて、当該開口を介して回路基板15の上面に設けられた端子を外界に露出させてもよい。この場合、当該端子が、電池パック1を電子機器と接続するための外部接続端子として機能する。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の利用分野は、制限はなく、二次電池を内蔵した電池パックとして広範囲に利用することができる。特に、携帯電話、スマートフォン、携帯型コンピューター(例えばタブレット端末、ノート型パソコン等)、電子書籍端末、携帯型ゲーム機などの携帯型電子機器に使用される電池パックとして好ましく利用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 電池パック
10 素電池
10n 負極端子(第1端子)
10p 正極端子(第2端子)
12 インナーフレーム
12f スペーサ
13 過電流保護素子(PTC)
13a 第1リード
13b 第2リード
13c 素子本体部
14 導電片
15 回路基板
15n 負極入力端子
15p 正極入力端子
図1
図2
図3
図4
図5