(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記固定手段は、前記回転輪の軸線と平行に延びて前記懸架ブラケットおよび前記ケーシングを貫通するボルトを含む、請求項1〜3のいずれかに記載のインホイールモータ駆動装置。
前記固定手段は、車両前後方向に延びて前記懸架ブラケットおよび前記ケーシングを貫通するボルトを含む、請求項1〜4のいずれかに記載のインホイールモータ駆動装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき詳細に説明する。まず本発明の基本となるインホイールモータ駆動装置の内部構造について説明する。
図1は、インホイールモータ駆動装置を示す正面図である。
図2は、インホイールモータ駆動装置を模式的に示す横断面図である。
図1および
図2は、車幅方向外側からみた状態を表す。
図2中、減速部内部の各歯車は歯先円で表され、個々の歯を図略する。
図3は、インホイールモータ駆動装置を模式的に示す展開断面図である。
図3で表される切断面は、
図2に示す軸線Mおよび軸線Nfを含む平面と、軸線Nfおよび軸線Nlを含む平面と、軸線Nlおよび軸線Oを含む平面と、軸線Oおよび軸線Pを含む平面を、この順序で接続した展開平面である。
【0017】
インホイールモータ駆動装置10は、車輪ハブ軸受部11と、モータ部21と、モータ部21の回転を減速して車輪ハブ軸受部11に伝達する減速部31を備え、電動車両(図示せず)の車幅方向左右両側に対称配置される。このとき
図3に示すように、車輪ハブ軸受部11は車幅方向外側に配置され、モータ部21は車幅方向内側に配置される。
【0018】
インホイールモータ駆動装置10は、
図1に仮想線で表される車輪ホイールWの内空領域に配置されるとともに、
図3に仮想線で表される車輪ホイールWの中心と連結し、車輪の車輪ホイールWを駆動する。なお図示はしなかったが車輪ホイールWの外周にはタイヤが装着される。
【0019】
各インホイールモータ駆動装置10は、図示しないサスペンション装置を介して電動車両の車体と連結される。インホイールモータ駆動装置10は、公道で電動車両を時速0〜180km/hで走行させることができる。
【0020】
モータ部21および減速部31は、
図1および
図2に示すように車輪ハブ軸受部11の軸線Oと同軸に配置されず、
図3に示すように車輪ハブ軸受部11の軸線Oから直角方向にオフセットして配置される。つまりインホイールモータ駆動装置10は、詳しくは後述するが、車両の前向きに配置される部位と、車両の後ろ向きに配置される部位と、上方に配置される部位と、下方に配置される部位とを含む。
【0021】
車輪ハブ軸受部11は、
図3に示すように車輪ホイールWと結合する回転輪としての外輪12と、外輪12の中心孔に通される固定輪としての内側固定部材13と、外輪12と内側固定部材13との環状の径方向隙間に配置される複数の転動体14を有し、車軸を構成する。内側固定部材13は、非回転の固定軸15と、1対のインナーレース16と、抜け止めナット17とを含む。固定軸15は根元部15rが先端部15eよりも大径に形成される。インナーレース16は、根元部15rと先端部15eの間で、固定軸15の外周に嵌合する。抜け止めナット17は固定軸15の先端部15eに螺合して、抜け止めナット17と根元部15rの間にインナーレース16を固定する。
【0022】
固定軸15は軸線Oに沿って延び、車輪ハブ軸受部11および減速部31の外郭をなす本体ケーシング43を貫通する。固定軸15の先端部15eは、本体ケーシング43の正面部分43fに形成される開口43pを貫通し、正面部分43fよりも車幅方向外側へ突出する。固定軸15の根元部15rは、車幅方向内側から本体ケーシング43の背面部分43bに覆われる。なお正面部分43fと背面部分43bは軸線O方向に間隔を空けて互いに向き合うケーシング壁部分である。
【0023】
転動体14は、軸線O方向に離隔して複列に配置される。軸線O方向一方のインナーレース16の外周面は、第1列の転動体14の内側軌道面を構成し、外輪12の軸線O方向一方の内周面と対面する。軸線O方向他方のインナーレース16の外周面は、第2列の転動体14の内側軌道面を構成し、外輪12の軸線O方向他方の内周面と対面する。以下の説明において、車幅方向外側(アウトボード側)を軸線O方向一方ともいい、車幅方向内側(インボード側)を軸線O方向他方ともいう。
図3の紙面左右方向は、車幅方向に対応する。外輪12の内周面は転動体14の外側軌道面を構成する。
【0024】
外輪12の軸線O方向一方端は正面部分43fよりも車幅方向外側へ突出する。かかる軸線O方向一方端にはフランジ部12fが形成される。フランジ部12fはブレーキディスクBDおよび車輪ホイールWのスポーク部Wsと同軸に結合するための結合座部を構成する。外輪12はフランジ部12fでブレーキディスクBDおよび車輪ホイールWと結合して、車輪ホイールWと一体回転する。なお図示しない変形例として、フランジ部12fは周方向に間隔を空けて外径側へ突出する突出部であってもよい。
【0025】
モータ部21は
図3に示すように、モータ回転軸22、ロータ23、ステータ24、およびモータケーシング25を有し、この順序でモータ部21の軸線Mから外径側へ順次配置される。モータ部21は、インナーロータ、アウターステータ形式のラジアルギャップモータであるが、他の形式であってもよい。例えば図示しなかったがモータ部21はアキシャルギャップモータであってもよい。
【0026】
モータ回転軸22およびロータ23の回転中心になる軸線Mは、車輪ハブ軸受部11の軸線Oと平行に延びる。つまりモータ部21は、車輪ハブ軸受部11の軸線Oから離れるようオフセットして配置される。モータ回転軸22の先端部を除いたモータ部21の大部分の軸線方向位置は、
図3に示すように内側固定部材13の軸線O方向位置と重ならない。モータケーシング25は略円筒形状であり、軸線M方向一方端で本体ケーシング43の背面部分43bと結合し、軸線M方向他方端で椀状のモータケーシングカバー25vに封止される。モータ回転軸22の両端部は、転がり軸受27,28を介して、モータケーシング25およびに回転自在に支持される。モータ部21は外輪12を駆動する。
【0027】
減速部31は、入力軸32、入力歯車33、中間歯車34、中間軸35、中間歯車36、中間歯車37、中間軸38、中間歯車39、出力歯車40、出力軸41、および本体ケーシング43を有する。入力軸32は、モータ回転軸22の先端部22eよりも大径の筒状体であって、モータ部21の軸線Mに沿って延びる。先端部22eは入力軸32の軸線M方向他方端部の中心孔に受け入れられて、入力軸32はモータ回転軸22と同軸に結合する。入力軸32の両端は転がり軸受42a,42bを介して、本体ケーシング43に支持される。具体的には、入力軸32の軸線M方向一端が転がり軸受42aを介して正面部分43fに支持され、入力軸32の軸線M方向他端が転がり軸受42bを介して背面部分43bに支持される。入力歯車33は、モータ部21よりも小径の外歯歯車であり、入力軸32と同軸に結合する。具体的には入力歯車33は、入力軸32の軸線M方向中央部の外周に一体形成される。
【0028】
出力軸41は、外輪12よりも大径の筒状体であって、車輪ハブ軸受部11の軸線Oに沿って延びる。外輪12の軸線O方向他方端は、出力軸41の軸線O方向一方端の中心孔に受け入れられて、出力軸41は外輪12と同軸に結合する。具体的には、出力軸41の内周面にスプライン溝41sが形成され、外輪12の軸線O方向他方端の外周面にスプライン溝12sが形成され、これらスプライン溝41s,12sがスプライン嵌合する。かかるスプライン嵌合は、出力軸41および外輪12間のトルク伝達を実現するとともに、両者の相対移動を許容する。
【0029】
出力軸41の軸線O方向一方端は転がり軸受44を介して、本体ケーシング43に支持される。出力軸41の軸線O方向他方端は転がり軸受46を介して、固定軸15の根元部15rに支持される。出力歯車40は外歯歯車であり、出力軸41と同軸に結合する。具体的には出力歯車40は出力軸41の軸線O方向他方端の外周に一体形成される。
【0030】
2本の中間軸35,38は入力軸32および出力軸41と平行に延びる。つまり減速部31は四軸の平行軸歯車減速機であり、出力軸41の軸線Oと、中間軸35の軸線Nfと、中間軸38の軸線Nlと、入力軸32の軸線Mは互いに平行に延び、換言すると車幅方向に延びる。
【0031】
各軸の車両前後方向位置につき説明すると、
図2に示すように入力軸32の軸線Mは出力軸41の軸線Oよりも車両前方に配置される。また中間軸35の軸線Nfは入力軸32の軸線Mよりも車両前方に配置される。中間軸38の軸線Nlは出力軸41の軸線Oよりも車両前方かつ入力軸32の軸線Mよりも車両後方に配置される。図示しない変形例として入力軸32の軸線Mが軸線O周りで任意の位置に配置され、入力軸32と、中間軸35と、中間軸38と、出力軸41が、この順序で車両前後方向に配置されてもよい。この場合、各軸の上下方向位置はモータ部21の前後方向位置および上下方向位置によって決定される。なお各軸32,35,38,41はこの順序で駆動力の伝達順序を構成する。
【0032】
各軸の上下方向位置につき説明すると、入力軸32の軸線Mおよび出力軸41の軸線Oは略同じ上下方向位置に配置される。中間軸35の軸線Nfは入力軸32の軸線Mよりも上方に配置される。中間軸38の軸線Nlは中間軸35の軸線Nfよりも上方に配置される。なお複数の中間軸35,38は、入力軸32および出力軸41よりも上方に配置されれば足り、図示しない変形例として、中間軸35が中間軸38よりも上方に配置されてもよい。あるいは図示しない変形例として出力軸41が入力軸32よりも上方に配置されてもよい。また、入力軸32の軸線Mが軸線O周りで上述した任意の位置に配置される変形例では、入力軸32と、中間軸35と、中間軸38と、出力軸41の上下方向位置はモータの前後方向位置および上下方向位置によって決定される。
【0033】
中間歯車34および中間歯車36は外歯歯車であり、
図3に示すように中間軸35の軸線Nf方向中央部と同軸に結合する。中間軸35の両端部は、転がり軸受45a,45bを介して、本体ケーシング43に支持される。具体的には、中間軸35の軸線Nf方向一端が転がり軸受45aを介して正面部分43fに支持され、中間軸35の軸線Nf方向他端が転がり軸受45bを介して背面部分43bに支持される。中間歯車37および中間歯車39は外歯歯車であり、中間軸38の軸線Nl方向中央部と同軸に結合する。中間軸38の両端部は、転がり軸受48a,48bを介して、本体ケーシング43に支持される。具体的には、中間軸38の軸線Nl方向一端が転がり軸受48aを介して正面部分43fに支持され、中間軸38の軸線Nl方向他端が転がり軸受48bを介して背面部分43bに支持される。
【0034】
本体ケーシング43は、減速部31および車輪ハブ軸受部11の外郭をなし、筒状に形成されて、
図2に示すように互いに平行に延びる軸線O、Nf、Nl、Mを取り囲む。また本体ケーシング43は、車輪ホイールW(
図1)の内空領域に収容される。
図3に示すように車輪ホイールWの内空領域は、リム部Wrの内周面と、リム部Wrの軸線O方向一端と結合するスポーク部Wsとによって区画される。そして車輪ハブ軸受部11、減速部31、およびモータ部21の軸線方向一方領域が車輪ホイールWの内空領域に収容される。またモータ部21の軸線方向他方領域が車輪ホイールWから軸線方向他方へはみ出す。このように車輪ホイールWはインホイールモータ駆動装置10の大部分を収容する。
【0035】
図2を参照して本体ケーシング43は、出力歯車40の軸線Oから車両前後方向に離れた位置、具体的には入力歯車33の軸線Mの真下で、下方へ突出する。この突出部分はオイルタンク47を形成する。これに対し本体ケーシング43のうち軸線Oの真下部分43cと、リム部Wrの下部との間には、空間を確保する。空間には、車幅方向に延びるサスペンション部材(図示せず)が配置される。
【0036】
本体ケーシング43は、筒状であり、
図3に示すように入力軸32、入力歯車33、中間歯車34、中間軸35、中間歯車36、中間歯車37、中間軸38、中間歯車39、出力歯車40、および出力軸41を収容するとともに、車輪ハブ軸受部11の軸線O方向他方端を覆う。本体ケーシング43の内部には潤滑油が封入される。入力歯車33、中間歯車34、中間歯車36、中間歯車37、中間歯車39、出力歯車40ははすば歯車である。
【0037】
本体ケーシング43は、
図3に示すように減速部31の筒状部分の軸線方向一方側を覆う略平坦な正面部分43fと、減速部31の筒状部分の軸線方向他方側を覆う略平坦な背面部分43bを含む。背面部分43bは、モータケーシング25と結合する。また背面部分43bは、後述する懸架ブラケット61(
図4等)を介して、アームやダンパ等の図示しないサスペンション部材と結合する。これによりインホイールモータ駆動装置10は、サスペンション装置に連結される。なおサスペンション装置のアームやダンパ等は、説明される部材、ここではインホイールモータ駆動装置10、からみて車体側に取り付けられることから、車体側メンバともいう。本体ケーシング43、モータケーシング25、およびモータケーシングカバー25vは、懸架ブラケットを介して車体側メンバに連結されるため、車体側メンバから離隔する。
【0038】
正面部分43fには外輪12が貫通するための開口43pが形成される。開口43pには、外輪12との径方向隙間を封止するシール材43sが設けられる。このため回転体になる外輪12は、軸線O方向一方端部を除いて本体ケーシング43に収容される。
【0039】
小径の入力歯車33と大径の中間歯車34は、減速部31の軸線方向一方側(フランジ部12f側)に配置されて互いに噛合する。小径の中間歯車36と大径の中間歯車37は、減速部31の軸線方向他方側(モータ部21側)に配置されて互いに噛合する。小径の中間歯車39と大径の出力歯車40は、減速部31の軸線方向一方側(フランジ部12f側)に配置されて互いに噛合する。このようして入力歯車33と複数の中間歯車34、36,37,39と出力歯車40は、互いに噛合し、入力歯車33から複数の中間歯車34、36,37,39を経て出力歯車40に至る駆動伝達経路を構成する。そして上述した駆動側小径歯車および従動側大径歯車の噛合により、入力軸32の回転は中間軸35で減速され、中間軸35の回転は中間軸38で減速され、中間軸38の回転は出力軸41で減速される。これにより減速部31は減速比を十分に確保する。複数の中間歯車のうち中間歯車34は、駆動伝達経路の入力側に位置する第1中間歯車となる。複数の中間歯車のうち中間歯車39は、駆動伝達経路の出力側に位置する最終中間歯車となる。
【0040】
本実施形態によれば
図2に示すように、出力軸41、中間軸38、および入力軸32は、この順序で車両前後方向に間隔を空けて配置される。さらに中間軸35および中間軸38は、入力軸32および出力軸41よりも上方に配置される。かかる実施形態によれば、回転輪になる外輪12の上方に中間軸を配置し得て、外輪12の下方にオイルタンク47の配置スペースを確保したり、外輪12の真下に空間を確保したりすることができる。したがって上下方向に延びる転舵軸線を外輪12の真下空間に交差して設けることができ、車輪ホイールWおよびインホイールモータ駆動装置10を転舵軸線回りに好適に転舵させることができる。
【0041】
また本実施形態によれば、
図3に示すように入力軸32および出力軸41は車幅方向に延び、
図2に示すように入力歯車33および出力歯車40は上下方向に起立した姿勢にされ、出力歯車40の下縁40dが入力歯車33の下縁33bよりも下方に配置される。これにより高速回転する入力歯車33が、本体ケーシング43の内部で減速部31の下部に貯留する潤滑油に浸漬することがなく、入力歯車33の攪拌抵抗を回避できる。
【0042】
また本実施形態によれば、
図2に示すように複数の中間軸35,38は、入力軸32の上方に隣り合うよう配置されて入力軸32から駆動トルクを供給される最初の中間軸35、および出力軸41の上方に隣り合うよう配置されて出力軸41に駆動トルクを供給する最終の中間軸38を含み、入力軸32と最初の中間軸35と最終の中間軸38と出力軸41は、複数の中間軸35,38の軸線方向にみて、入力軸の中心(軸線M)と最初の中間軸35の中心(軸線Nf)と最終の中間軸38の中心(軸線Nl)と出力軸41の中心(軸線O)とを順次結ぶ基準線が逆U字を描くよう、配置される。これにより駆動伝達経路を構成する複数の軸および歯車の全体配置が小型化されて、複数の軸および歯車を車輪ホイールWの内部に収納することができる。
【0043】
また本実施形態によれば、
図3に示すように、回転輪になる外輪12は筒状体であり、車輪ハブ軸受部11は外輪12の中心孔に配置されて外輪12を回転自在に支持する固定軸15をさらに含む。これにより出力歯車40を外輪12の外径側に同軸に結合し得る。そして、外輪12からオフセットして配置される中間軸38から、外輪12へ駆動力を伝達することができる。
【0044】
本体ケーシング43は、
図3に示すようにポンプ軸51、転がり軸受52a,52b、ポンプギヤ53、およびオイルポンプ54をさらに収容する。ポンプ軸51の軸線Pは、出力軸41の軸線Oと平行に延びる。またポンプ軸51は、出力軸41から車両前後方向に離れて配置され、軸線P方向両側で、転がり軸受52a,52bを介して回転自在に支持され、軸線P方向中央部でポンプギヤ53と同軸に結合する。ポンプギヤ53は、外歯歯車であり、はすば歯車であり、出力歯車40と噛合して出力歯車40に駆動される。
【0045】
オイルポンプ54は、転がり軸受52bよりもさらに軸線P方向他方に配置され、ポンプ軸51の軸線P方向他方端に設けられる。オイルポンプ54は
図2に示す吸入油路59iおよび吐出油路59oと接続する(接続箇所図略)。吸入油路59iはオイルポンプから下方へ延びてオイルタンク47に達し、吸入油路59i下端の吸入口59jはオイルタンク47の底壁近傍に配置される。吐出油路59oはオイルポンプから上方へ延び、吐出油路59o上端の吐出口59pは中間歯車37よりも高い位置に配置される。
【0046】
オイルポンプ54が出力歯車40に駆動されることにより、オイルポンプ54は吸入口59jからオイルタンク47の潤滑油を吸入し、吸入した潤滑油を吐出口59pで吐出する。吐出口59pはすべての歯車(入力歯車33、中間歯車34,36,37,39、および出力歯車40)よりも高い位置にあり、上方からこれら歯車に潤滑油を供給する。また潤滑油は、吐出油路59oからモータ部21内部に噴射される。これによりモータ部21および減速部31は潤滑および冷却される。
【0047】
図2を参照して本実施形態のポンプ軸51は入力軸32の下方に配置され、オイルタンク47はポンプ軸51の下方に配置される。オイルポンプ54は、ポンプ軸51と略同軸に配置され、オイルタンク47に貯留した潤滑油を、オイルタンク47の直上へ汲み上げる。またポンプ軸51およびオイルタンク47は、出力軸41の車両前方に配置される。車輪ホイールWがインホイールモータ駆動装置10に駆動されて電動車両が走行すると、オイルタンク47は車両前方から走行風を受けて、空気冷却される。
【0048】
次にインホイールモータ駆動装置の懸架ブラケットにつき説明する。
【0049】
図4は本発明の第1実施形態になるインホイールモータ駆動装置をサスペンション装置とともに示す背面図であり、車幅方向内側からみた状態を表す。
図5は同実施形態をサスペンション装置とともに示す側面図であり、車両後方からみた状態を表す。
図6Aは同実施形態の一部を示す断面図であり、
図4中にS―Sで示す平面でインホイールモータ駆動装置を切断し、矢の方向にみた断面を表す。なお断面S―Sは軸線Oを含まないが、上下位置の理解を容易にするため軸線Oを示す。
図7は同実施形態から懸架ブラケットを取り出して示す斜視図である。
図4および
図5に示すように本実施形態の本体ケーシング43には懸架ブラケット61が附設される。軸線O方向位置に関し、車輪ハブ軸受部11と、減速部31と、懸架ブラケット61は、この順序で配置される。また懸架ブラケット61の軸線O方向位置は、モータ部21の軸線O方向位置と重なっている。車両前後方向位置に関し、モータ部21は前方に、懸架ブラケット61は後方に配置される。
【0050】
図7に示すように懸架ブラケット61は、上側連結座部62、下側連結座部64、および中間部分63を含む。
図5に示すように上側連結座部62は、懸架ブラケット61の上端部に設けられ、上側サスペンション部材、例えばストラット76の下端、と連結する。ストラット76は、ストラット式サスペンション装置の上側サスペンション部材を構成し、上下方向に延びるダンパと、当該ダンパに取り付けられるコイルスプリング(図示せず)とを含むショックアブソーバである。また、上側サスペンション部材は、他の実施例として、アッパアームや複数のリンクにて構成することもできる。
【0051】
下側連結座部64は、懸架ブラケット61の下端部に設けられ、下側サスペンション部材、例えばロアアーム71の車幅方向外側端、と連結する。ロアアーム71は、ストラット式サスペンション装置の下側サスペンション部材を構成するアームである。ロアアーム71は、車幅方向に延び、車幅方向内側端でサブフレーム等の車体側メンバに回動可能に連結され、車幅方向内側端を基端とし、車幅方向外側端を遊端として、上下方向に揺動可能である。 また、下側サスペンション部材は、他の実施例として、複数のリンクにて構成することもできる。
【0052】
中間部分63は、懸架ブラケット61の上下方向中央領域を占め、板状に延び、上側連結座部62と下側連結座部64を接続する。なお上側連結座部62、中間部分63、および下側連結座部64は一体形成される。
【0053】
中間部分63は、その板状面が本体ケーシング43の軸線O方向他方側の表面に沿うように取付固定される。車輪(車輪ホイールW)の直進走行状態において、軸線Oは車幅方向に延びる。板状の中間部分63は、板厚を貫通して延びる貫通孔65と、板材の縁を切り欠くように形成される凹部である切欠き部66を有する。
図4に示すように貫通孔65は中間部分63の上前部、上後部、下前部、および下後部にそれぞれ形成される。切欠き部66は、中間部分63の前縁を切り欠いて形成され、本体ケーシング43の背面部分43bに形成される凸部43eを受け入れる。このため
図4および
図7に示すように、中間部分63は日本語カタカナのコ字状、ないしアルファベットのC字状に形成される。換言すると懸架ブラケット61は略コ字状ないし略C字状に形成される。
【0054】
図6Aに示すように凸部43eの上縁および下縁には突起43gがそれぞれ形成される。上側の突起43gは上方へ突出し、下側の突起43gは下方へ突出する。突起43gの表面は車幅方向内側へ指向する。突起43gの裏面は車幅方向外側へ指向して、背面部分43bと対面する。各突起43gには、各貫通孔65に対応する貫通孔43hが形成される。
【0055】
図6Aに示すように各貫通孔43hには、車幅方向内側からボルト69を通される。各ボルト69の軸部は軸線Oと平行に延び、貫通孔43hと、貫通孔65を順次貫通して、突起43gの裏面から突出する。ボルト69の先端部は本体ケーシング43の
外部空間でナット70と螺合する。ボルト69およびナット70を互いに締結することによって、本体ケーシング43の突起43gおよび懸架ブラケット61の中間部分63がボルト69頭部およびナット70に挟圧される。これにより懸架ブラケット61は本体ケーシング43に確りと取付固定される。なお懸架ブラケット61の上側連結座部62および下側連結座部64は本体ケーシング43から離隔する。あるいは変形例として、上側連結座部62および/または下側連結座部64は本体ケーシング43の外側壁面に接触していてもよい。
【0056】
図4に示すように中間部分63は車両後方にあり、切欠き部66は車両前方にあるため、切欠き部66は車両前方へ開放している。そして
図6Aに示すように突起43gと背面部分43bとの間に中間部分63を合わせ、切欠き部66を車両後方から凸部43eへ差し込む。
【0057】
中間部分63の切欠き部66が本体ケーシング43の一部を受け入れて、切欠き部66の周囲に配置される中間部分63の貫通孔65が固定手段(ボルト69、ナット70)によって本体ケーシング43に取付固定されることにより、中間部分63は本体ケーシング43に密着して固定され、本体ケーシング43の剛性を補強する。
【0058】
本体ケーシング43は軽金属製であり、例えばアルミニウムを主成分とする鋳造物である。また懸架ブラケット61は鋼製であり、本体ケーシング43よりも剛性が大きい。本実施形態は、固定手段としてボルト69、ナット70、貫通孔43h,65を有し、貫通孔43h,65は雌ねじ孔ではなく、丸孔である。本実施形態によれば、本体ケーシング43に丸孔としての貫通孔43hを設けることから、本体ケーシング43に雌ねじ孔を設ける必要がない。また本実施形態によれば、懸架ブラケット61に丸孔としての貫通孔65を設けることから、懸架ブラケット61に雌ねじ孔を設ける必要がない。あるいは変形例として懸架ブラケット61は軽金属製であり、例えばアルミニウムを主成分とする鋳造物であってもよい。
【0059】
ここで附言すると、懸架ブラケット61を本体ケーシング43に取付固定する固定手段として、
図6Aに示す実施形態に代えて、
図6Bに示す変形例であってもよい。変形例の固定手段は、丸孔の貫通孔65に代えて、中間部分63に雌ねじ孔65mが形成される。各ボルト69は雌ねじ孔65mに螺合する。これによりナット70(
図6A)を省略することができる。
【0060】
図8は懸架ブラケットの上部を拡大して示す斜視図である。
図9は、懸架ブラケットの上部を示す断面図であり、
図5中にS―Sで示す平面でインホイールモータ駆動装置を切断し、矢の方向にみた状態を表す。なお煩雑を避けるため
図9ではストラットを図略する。懸架ブラケット61の上側連結座部62は、上方に開口する断面円形の貫通孔62cを有する。貫通孔62cを区画する円筒状の壁部は、周方向に開いたスリット(隙間)62dを伴って略C字断面に形成される。さらに上側連結座部62には、スリット62dを介して1列に延びるようにして、ボルト62eが通される貫通孔62fおよび雌ねじ孔62gが形成される。
【0061】
貫通孔62cにストラット76を通し、ボルト62eを締め付けることにより、スリット62dが狭くなり、ストラット76は上側連結座部62に確りと連結固定される。
【0062】
図8および
図9等に示す実施形態では、上側連結座部62が1部材であり、連結具(ボルト62e)を附設される。あるいは
図8および
図9等に示す実施形態の変形例として、上側連結座部62を2部材とし、さらに連結具を附設してもよい。
図10は懸架ブラケット上部の変形例を示す斜視図である。
図11は
図10の変形例を示す断面図である。
【0063】
変形例の上側連結座部62は、板状の基部61iと、断面C字状の連結部材62jを含む。基部61iは連結部材62jの周方向隙間に介挿される。前述した貫通孔62fおよび雌ねじ孔62gと同様、連結部材62jには、周方向隙間を介して1列に延びるようにして、ボルト62eが通される貫通孔および雌ねじ孔が形成される。基部61iにも、ボルト62eが通される貫通孔が形成される。
【0064】
連結部材62jの中心孔にストラット76を通し、ボルト62eを締め付けることにより、ストラット76は上側連結座部62に確りと連結固定される。
【0065】
図12は懸架ブラケットの下部を示す断面図であり、
図5中にCで示す丸囲み部分を拡大して表す。説明を第1実施形態に戻すと、懸架ブラケット61の下側連結座部64には、固定手段としてのボルト64bによってボールジョイント72のソケット72sが取り付けられる。ソケット72sは下向き開口とされる。ロアアーム71には、ボールジョイント72のボールスタッド72dが立設される。ボールスタッド72dは下端をロアアーム71の車幅方向外側端にナット止めされ、上端にボール部を有する。ボールスタッド72dのボール部はソケット72sに摺動可能に摺動される。これによりボールスタッド72dはソケット72sに方向自在に連結される。
図13は懸架ブラケットの下部の変形例を示す断面図である。
図12との相違点は、ボールジョイント72が上下逆に設けられる。
【0066】
懸架ブラケット61は、タイロッドアーム67をさらに含む。タイロッドアーム67は切欠き部66と反対側に配置され、中間部分63に一体形成される。懸架ブラケット61がインホイールモータ駆動装置10の車幅方向内側部分に取付固定されると、
図4に示すようにタイロッドアーム67は車両後方に延びる。タイロッドアーム67の先端には、ボールジョイントを受け入れる丸孔等、タイロッド連結座部が形成される。タイロッドアーム67先端のタイロッド連結座部には、図示しないタイロッドが連結される。
【0067】
タイロッドが図示しない操舵装置によって車幅方向に押し引きされると、懸架ブラケット61を含むインホイールモータ駆動装置10が車輪とともに転舵する。転舵の中心である転舵軸線Kは、ストラット76上端と、ボールジョイント72とを通過して上下方向に延びる直線である。
【0068】
次に第1変形例の懸架ブラケットを説明する。
図14は第1変形例の懸架ブラケットを示す斜視図である。この変形例につき、前述した実施形態と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成について以下に説明する。第1変形例の懸架ブラケット61は、タイロッドアームが省略される。その代わりにタイロッドアームは、例えば本体ケーシング43に一体形成される。
【0069】
次に第2変形例の懸架ブラケットを説明する。
図15は第2変形例の懸架ブラケットを示す斜視図である。この変形例につき、前述した実施形態と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成について以下に説明する。第2変形例の懸架ブラケット61は、2本のブレーキキャリパアーム68をさらに含む。各ブレーキキャリパアーム68は切欠き部66と反対側に配置され、中間部分63に一体形成される。
図4に示すように懸架ブラケット61がインホイールモータ駆動装置10の車幅方向内側部分に取付固定されると、1のブレーキキャリパアーム68は車両後方に延び、他のブレーキキャリパアーム68は上方に延びる。
【0070】
各ブレーキキャリパアーム68の先端には、ボルトを受け入れる雌ねじ穴(図示せず)等、ブレーキキャリパ連結座部が形成される。各ブレーキキャリパアーム68先端のブレーキキャリパ連結座部には図示しないブレーキキャリパが連結され、2本のブレーキキャリパアーム68は当該ブレーキキャリパを両持ち支持する。ブレーキキャリパはブレーキディスクBD(
図3)の外縁に沿って配置され、ブレーキディスクBDを挟圧することによって車輪(車輪ホイールW)を制動する。ブレーキキャリパは油圧で駆動されるものであってもよいし、あるいは電動アクチュエータで駆動されるものであってもよいし、機構を特に限定されない。
【0071】
次に第3変形例の懸架ブラケットを説明する。
図16は第3変形例の懸架ブラケットを示す斜視図である。この変形例につき、前述した実施形態と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成について以下に説明する。第3変形例の懸架ブラケット61は、前述した
図14に示す懸架ブラケット61に2本のブレーキキャリパアーム68を附設したものである。
【0072】
次に第2実施形態の懸架ブラケットを説明する。
図17は第2実施形態のインホイールモータ駆動装置をサスペンション装置とともに示す側面図であり、車両後方からみた状態を表す。
図18は第2実施形態の一部を示す断面図であり、
図17中にS―Sで示す平面でインホイールモータ駆動装置を切断し矢の方向にみた状態を表す。
図19は第2実施形態から懸架ブラケットを取り出して示す斜視図である。第2実施形態につき、前述した実施形態と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成について以下に説明する。第2実施形態の懸架ブラケット61´は、前述した中間部分63に代えて、異なる形状の中間部分63´を含む。中間部分63´は、上側連結座部62、下側連結座部64、およびタイロッドアーム67と一体形成される。
【0073】
図19に示すように中間部分63´は、タイロッドアーム67が立設される後面63rと、反対側の前面とを有する肉厚の板状であり、
図17に示すように本体ケーシング43の後部に沿って取付固定される。なお後部とは車両前後方向における後方をいう。
【0074】
上側連結座部62は、中間部分63´の前面から突出し、下側連結座部64も、中間部分63´の前面から突出する。このように上側連結座部62と中間部分63´の前面と下側連結座部64は三方を取り囲む凹部66´を構成する。
【0075】
図18Aに示すように本体ケーシング43の後部である円弧部分43aには、後方へ突出する凸部43iが形成される。円弧部分43aは、本体ケーシング43の一部であって、軸線Oを中心として円弧状に連なり、出力軸41を覆う。凸部43iは後方から上述の凹部66´に受け入れられる。凸部43iの上縁および下縁には突起43jがそれぞれ形成される。上側の突起43jは上方へ突出し、下側の突起43jは下方へ突出する。突起43jの表面は車両後方へ指向する。突起43jの裏面は車両前方へ指向して、本体ケーシング43の円弧部分43aと対面する。突起43jは後方から上述の凹部66´に受け入れられる。各突起43jには、各貫通孔65に対応する貫通孔43hが形成される。
【0076】
図18Aに示すように中間部分63´は後方から凸部43iおよび突起43jを覆う。中間部分63´の各貫通孔65と、本体ケーシング43の各貫通孔43hには、車両後方からボルト69を通される。各ボルト69の軸部は車両前方へ延び、貫通孔65と、貫通孔43hとを順次貫通して、突起43jの裏面から突出する。ボルト69の先端部は本体ケーシング43の内部空間でナット70と螺合する。ボルト69およびナット70を互いに締結することによって、本体ケーシング43の突起43jおよび懸架ブラケット61´の中間部分63´がボルト69頭部およびナット70に挟圧される。これにより懸架ブラケット61´は本体ケーシング43に確りと取付固定される。
【0077】
中間部分63´の凹部66´が本体ケーシング43の一部を受け入れて、凹部66´の周囲に配置される中間部分63´の貫通孔65が固定手段(ボルト69、ナット70)によって本体ケーシング43に取付固定されることにより、中間部分63´は本体ケーシング43の剛性を補強する。
【0078】
ここで附言すると、懸架ブラケット61´を本体ケーシング43に取付固定する固定手段として、
図18Aに示す実施形態に代えて、
図18Bに示す変形例であってもよい。変形例の固定手段は、突起43jに雌ねじ孔43mが形成される。各ボルト69は雌ねじ孔43mに螺合する。これによりナット70(
図18A)を省略することができる。
【0079】
次に第4変形例の懸架ブラケットを説明する。
図20は第4変形例の懸架ブラケットを示す斜視図である。この変形例につき、前述した実施形態と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成について以下に説明する。第4変形例の懸架ブラケット61´は、タイロッドアームが省略される。その代わりにタイロッドアームは、例えば本体ケーシング43に一体形成される。
【0080】
次に第5変形例の懸架ブラケットを説明する。
図21は第5変形例の懸架ブラケットを示す斜視図である。この変形例につき、前述した実施形態と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成について以下に説明する。第5変形例の懸架ブラケット61´は、2本のブレーキキャリパアーム68をさらに含む。各ブレーキキャリパアーム68は凹部66´と反対側に配置され、中間部分63´に一体形成される。
図4に示すように懸架ブラケット61´がインホイールモータ駆動装置10の後部に取付固定されると、1のブレーキキャリパアーム68は車両後方に延び、他のブレーキキャリパアーム68は上方に延びる。各ブレーキキャリパアーム68の先端には図示しないブレーキキャリパが連結され、当該ブレーキキャリパを両持ち支持する。ブレーキキャリパは
図4に示すブレーキディスクBDの外縁に沿って配置され、ブレーキディスクBDを挟圧することによって車輪(車輪ホイールW)を制動する。
【0081】
次に第6変形例の懸架ブラケットを説明する。
図22は第6変形例の懸架ブラケットを示す斜視図である。この変形例につき、前述した実施形態と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成について以下に説明する。第6変形例の懸架ブラケット61´は、前述した
図20に示す懸架ブラケット61´に2本のブレーキキャリパアーム68を附設したものである。
【0082】
次に第3実施形態の懸架ブラケットを説明する。
図23は第3実施形態のインホイールモータ駆動装置を示す背面図であり、車幅方向内側からみた状態を表す。
図24は第3実施形態の一部を示す断面図であり、
図23中にS―Sで示す平面で懸架ブラケットを切断し、矢の方向にみた状態を表す。
図25は第3実施形態の一部を示す断面図であり、軸線Oを含む上下方向に広がる平面で車輪ハブ軸受部11および本体ケーシング43を切断した断面を表す。第3実施形態につき、前述した実施形態と共通する構成については同一の符号を付して説明を適宜省略し、異なる構成について以下に説明する。
【0083】
第3実施形態の懸架ブラケット61は、前述した
図7に示す懸架ブラケット61と同様、本体ケーシング43の突起43gに連結固定される。懸架ブラケット61の中間部分63はケーシング取付座部として、雌ねじ孔65mおよび突き合わせ平面63tを有する。各突き合わせ面63tは軸線Oに対して直角である。軸線O,Mよりも上側の突き合わせ面63tと軸線O,Mよりも下側の突き合わせ面63tは面一であるが、互いに離隔する。各雌ねじ孔65mは、突き合わせ面63tに形成され、軸線O,Mと平行に延びる。
【0084】
モータ部21のモータケーシング25は本体ケーシング43から車幅方向内側へ突出し、円筒形状のステータ24を収容する。
図23〜
図25には、ステータ24のステータコアを破線で示す。ステータコアは軸線M方向に積み重なる積層鋼板である。ステータコアの軸線M方向一方端面24aは車幅方向外側(アウトボード側)へ指向し、ステータコアの軸線M方向他方端面24bは車幅方向内側(インボード側)へ指向する。
【0085】
図24に示すように車両前後方向にみて、ケーシング取付座部の突き合わせ面63tは軸線M方向一方端面24aから軸線M方向他方端面24bまでの範囲内に配置される。またケーシング取付座部(雌ねじ孔65m、突き合わせ面63t)はステータ24と重なるよう配置され、さらには軸線M方向一方端面24aから軸線M方向他方端面24bまでの範囲内に配置される。
【0086】
懸架ブラケット61のケーシング取付座部はボルト69で本体ケーシング43に結合される。
図24および
図25に示すように車両前後方向にみて、固定手段としてのボルト69と、貫通孔43hは、ステータ24と重なるよう配置され、さらには軸線M方向一方端面24aから軸線M方向他方端面24bまでの範囲内に配置される。なおここでいう車両前後方向とは軸線O,Mに対し直角方向であると理解されたい。
【0087】
図23には、出力歯車40の歯先円を破線で示す。車軸の軸線O方向にみて、ボルト69の少なくとも一部と出力歯車は重なって配置される。略コ字状ないし略C字状の懸架ブラケット61は、インホイールモータ駆動装置10の車両後方に配置される。軸線Oは、中間部分63に形成される切欠き部66を通過し、懸架ブラケット61と交差しない。中間部分63は軸線Oよりも車両後方に配置される。軸線Mも懸架ブラケット61と交差しない。
図23に示すように軸線O方向にみて懸架ブラケット61は、モータ部21よりも車両後方に配置され、モータ部21と交差しない。
【0088】
図25に示すように車両前後方向にみて、中間部分63は出力歯車40の軸線O方向他方端面40bから軸線M方向他方端面24bまでの範囲内に配置される。また車両前後方向にみて中間部分63は転舵軸線Kと重なる。ただし
図23に示すように中間部分63の大部分は転舵軸線Kよりも車両後方に配置される。なお軸線O方向他方端面40bとは、各歯の軸線O方向他方端をいうと理解されたい。
【0089】
図25に示すように車輪ハブ軸受部11は、内輪回転・外輪固定タイプであって、車輪と一体回転する回転輪としての内輪56、固定輪としての外輪57、これらの径方向隙間に介在する複数の転動体58を有する。外輪57の外周には外径方向に突出するハブアタッチメント57gが固定される。ハブアタッチメント57gは本体ケーシング43の正面部分43fに取付固定される。内輪56の軸線O方向一方端部は外輪57から突出しており、フランジ部56fが形成される。各フランジ部56fには図示しない車輪ホイールが連結される。内輪56の軸線O方向他方端部外周には内側軌道輪56rが嵌合する。内側軌道輪56rの外周面は転動体58が転走する内側軌道輪を構成する。
【0090】
転動体58は複列に配置される。第1列の転動体58は、内輪56の軸線O方向中央部外周面を転走する。第2列の転動体58は、内側軌道輪56rの外周面を転走する。第1列および第2列の転動体58は、正面合わせのアンギュラ玉軸受とされる。あるいは図示しない変形例として背面合わせであってもよい。
【0091】
減速部31につき補足説明すると、出力歯車40の出力軸55は、軸線Oに沿って延び、軸線O方向一方端で、内輪56の中心孔に差し込まれてスプライン嵌合する。出力軸55の軸線O方向他方端は転がり軸受55bを介して背面部分43bに回転自在に支持される。
【0092】
ところでこれまでに説明した実施形態によれば、車輪と一体回転する外輪12と、外輪12と径方向隙間を介して対面する内側固定部材13、および径方向隙間に介在する複数の転動体14を有する車輪ハブ軸受部11と、外輪12を駆動するモータ部21と、モータ部21のモータ回転軸22から外輪12までの回転伝達経路を収容する本体ケーシング43と、サスペンション装置のストラット76と連結可能な上側連結座部62、サスペンション装置のアーム71と連結可能な下側連結座部64、および上側連結座部62と下側連結座部64を接続する中間部分63を含む懸架ブラケット61と、懸架ブラケット61を本体ケーシング43の外側壁面に取付固定する固定手段(ボルト69)とを備える。かかる懸架ブラケット61により、
図4に示すようなストラット式サスペンション装置にインホイールモータ駆動装置10を連結することができる。
【0093】
これに対し、図示しない他のサスペンション装置、例えばサイズの異なるストラット式サスペンション装置や、ダブルウィッシュボーン式サスペンション装置といった他の形式のサスペンション装置に、インホイールモータ駆動装置10を連結する場合、
図4に示す懸架ブラケット61を他の適切な懸架ブラケットに交換するとよい。
【0094】
したがってこれまでに説明した実施形態によれば、異なる車種および異なるサスペンション装置にインホイールモータ駆動装置10を連結することが可能であり、インホイールモータ駆動装置10の汎用性が高くなる。また本体ケーシングは懸架ブラケット61によって補強され、剛性が大きくなる。
【0095】
これまでに説明した実施形態によれば、懸架ブラケット61は、操舵装置のタイロッドと連結するためのタイロッドアーム67をさらに含む。これにより異なる車種において、インホイールモータ駆動装置10を転舵させることができる。また異なる転舵輪用サスペンション装置において、インホイールモータ駆動装置10の汎用性が高くなる。また単一のインホイールモータ駆動装置10において、タイロッドの取り付けレイアウトの自由度が高くなる。
【0096】
これまでに説明した実施形態によれば、懸架ブラケット61は、ブレーキキャリパと連結するためのブレーキキャリパアーム68をさらに含む。これにより異なる車種において、インホイールモータ駆動装置10にブレーキキャリパを附設することができる。また単一のインホイールモータ駆動装置10において、ブレーキキャリパの取り付けレイアウトの自由度が高くなる。
【0097】
これまでに説明した実施形態によれば、懸架ブラケット61を本体ケーシング43に取付固定する固定手段として、
図6Aに示すように外輪12の軸線Oと平行に延びて懸架ブラケット61および本体ケーシング43に貫通するボルト69を含む。これにより本体ケーシング43の車幅方向内側部分に懸架ブラケット61を取り付けることができる。
【0098】
これまでに説明した実施形態によれば、懸架ブラケット61を本体ケーシング43に取付固定する固定手段として、
図18Aに示すように車輪の走行方向、つまり車両前後方向に延びて懸架ブラケット61´および本体ケーシング43を貫通するボルト69を含む。これにより本体ケーシング43の後部あるいは前部に懸架ブラケット61´を取り付けることができる。
【0099】
これまでに説明した実施形態によれば、本体ケーシング43に凸部43e,43iを設け、懸架ブラケット61,61´に切欠き部66や凹部66´を設ける。そして凹部が凸部を受け入れるように、懸架ブラケット61,61´を本体ケーシング43に取り付ける。これにより取り付け箇所の剛性が高くなる。また複雑な形状の本体ケーシング43において、本体ケーシング43の凸部43e,43iを利用して懸架ブラケット61,61´を強固に固定することができる。
【0100】
これまでに説明した実施形態によれば、本体ケーシング43の凸部43e,43iの縁に突起43g,43jを複数立設し、各突起43g,43jには貫通孔43hを形成する。また懸架ブラケット61にも、突起43g,43jと対応する箇所に貫通孔65を形成する。そして本体ケーシング43の貫通孔43hと懸架ブラケット61の貫通孔65を一致させてボルト69を通してボルト止めするとよい。これにより薄肉の本体ケーシング43において、突起43g,43jのみを厚肉にして取り付け剛性を高くすることができる。また本体ケーシング43に雌ねじ孔を設けることなく、ボルト69およびナット70の螺合によって懸架ブラケット61,61´を本体ケーシング43に取付固定することができる。
【0101】
以上、図面を参照してこの発明の実施の形態を説明したが、この発明は、図示した実施の形態のものに限定されない。図示した実施の形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。