(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
外槽と、該外槽内に回転可能に配設された内槽と、該外槽内に水を供給する給水部と、該内槽を回転駆動させる駆動部と、給水行程、排水行程及び脱水行程を少なくとも含む洗濯動作を行うように該給水部及び該駆動部を制御する制御部とを備えた洗濯機であって、
前記外槽内の水位を検出する水位検出部と、
前記給水行程又は前記排水行程における前記水位検出部の検出結果に基づいて、所定時間当たりの水位の変化量を示す水位変化率を演算する演算部と、
前記演算部で演算された前記給水行程中又は前記排水行程中の水位変化率に基づいて、異常振動の予兆の有無を判定する判定部とを備え、
前記制御部は、前記判定部の判定結果に基づいて、前記駆動部の動作を制御することを特徴とする洗濯機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1,2の発明のように、排水時間を計測しただけでは、防水性衣類の有無を正確に判定することができないという問題があった。
【0008】
具体的に、洗濯兼脱水槽内における防水性衣類の片寄り具合や姿勢などによって、排水に要する時間がそれぞれ変動することとなる。例えば、防水性衣類が水を溜め込んでいる場合には、その溜め込んでいる水の分だけ排水時間が短くなる。一方、防水性衣類が水抜孔を部分的に塞いでいる場合には、スムーズに排水が行われないため、その分だけ排水時間が長くなる。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、異常振動の予兆の有無を適切に判定するとともに、脱水行程において異常振動が発生しないように適切に制御することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、外槽と、該外槽内に回転可能に配設された内槽と、該外槽内に水を供給する給水部と、該内槽を回転駆動させる駆動部と、給水行程、排水行程及び脱水行程を少なくとも含む洗濯動作を行うように該給水部及び該駆動部を制御する制御部とを備えた洗濯機を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0011】
すなわち、第1の発明は、前記外槽内の水位を検出する水位検出部と、
前記給水行程又は前記排水行程における前記水位検出部の検出結果に基づいて、所定時間当たりの水位の変化量を示す水位変化率を演算する演算部と、
前記演算部で演算された前記給水行程中又は前記排水行程中の水位変化率に基づいて、異常振動の予兆の有無を判定する判定部とを備え、
前記制御部は、前記判定部の判定結果に基づいて、前記駆動部の動作を制御することを特徴とするものである。
【0012】
第1の発明では、給水行程又は排水行程における所定時間当たりの水位の変化量、つまり、水位変化率に基づいて、異常振動の予兆の有無(具体的には、防水性を有する洗濯物の有無)を判定している。以下、給水行程について説明する。
【0013】
具体的に、洗濯物の中に防水性衣類が含まれておらず、一般衣類のみであった場合には、一定の流量で給水を開始してから略一定の速度で水位が上昇して所定の設定水位に達するため、水位変化率は略一定となる。
【0014】
一方、洗濯物の中に防水性衣類が含まれている場合には、内槽の空間容積が防水性衣類によって仕切られることで減少した状態となるため、一定の流量で給水を開始してから略一定の速度で水位が上昇した後、内槽の空間容積が減少している位置まで水が達すると、水位変化率が急激に大きくなる。つまり、洗濯物の中に防水性衣類が含まれていると、水位変化率が急激に大きくなる変曲点が存在する。
【0015】
そこで、本発明では、この変曲点の存在を考慮して、変曲点よりも前の略一定の速度で水位が上昇するときの第1の水位変化率と、変曲点よりも後の急激に水位が大きくなる第2の水位変化率との比率が、所定の閾値よりも大きくなった場合に、異常振動の予兆有り、つまり、洗濯物の中に防水性衣類が含まれていると判定するようにしている。
【0016】
そして、判定部の判定結果に基づいて、駆動部の動作を適切に制御することで、防水性衣類が水を溜め込んでいたことに起因する脱水行程時の異常振動の発生を防止することができる。
【0017】
第2の発明は、第1の発明において、
前記制御部は、異常振動の予兆有りと前記判定部で判定された場合に、前記脱水行程において該内槽を所定の回転数以下で回転させるように前記駆動部の動作を制御することを特徴とするものである。
【0018】
第2の発明では、防水性を有する洗濯物が内槽に収容されており、異常振動の予兆有りと判定された場合には、脱水行程において内槽を所定の回転数以下で回転させるようにしている。具体的に、通常の脱水行程における内槽の最高回転数が1000rpm程度に設定されている場合、防水性を有する洗濯物が内槽に収容されていると判定されたときに、脱水行程における内槽の最高回転数を、例えば、300rpm程度に設定すればよい。
【0019】
これにより、防水性衣類が水を溜め込んでいたことに起因する脱水行程時の異常振動の発生を防止しながら、洗濯機の運転を停止させることなく、脱水行程を完了させることができる。
【0020】
第3の発明は、第1の発明において、
前記制御部は、異常振動の予兆有りと前記判定部で判定された場合に、前記駆動部の動作を停止させるように制御することを特徴とするものである。
【0021】
第3の発明では、防水性を有する洗濯物が内槽に収容されており、異常振動の予兆有りと判定された場合には、それ以降の洗濯行程を停止するようにしている。これにより、防水性衣類が水を溜め込んでいたことに起因する脱水行程時の異常振動の発生を防止することができる。
【0022】
第4の発明は、第1乃至3の発明のうち何れか1つにおいて、
前記演算部は、前記水位変化率の演算を、前記給水行程中又は前記排水行程中に異なるタイミングで少なくとも2回以上実施することを特徴とするものである。
【0023】
第4の発明では、給水行程中又は排水行程中に異なるタイミングで少なくとも2回以上、水位変化率を演算するようにしている。
【0024】
第5の発明は、第4の発明において、
前記判定部は、前記演算部において異なるタイミングで演算された2つの前記水位変化率の比率に基づいて、異常振動の予兆の有無を判定することを特徴とするものである。
【0025】
第5の発明では、異なるタイミングで演算された2つの水位変化率の比率に基づいて、異常振動の予兆の有無(具体的には、防水性を有する洗濯物の有無)を判定するようにしている。
【0026】
第6の発明は、第4又は第5の発明において、
前記演算部は、前記水位変化率の演算を、少なくとも1回は、水位が前記外槽の底部から前記内槽の底部の間、又はその隣接する領域にあるときに実施することを特徴とするものである。
【0027】
第6の発明では、水位が外槽の底部から内槽の底部の間、又はその隣接する領域にあるときに少なくとも1回、水位変化率を演算するようにしている。これにより、変曲点よりも前の水位変化率と、変曲点よりも後の水位変化率とが得られるようにしている。
【0028】
第7の発明は、第1乃至6の発明のうち何れか1つにおいて、
異常振動の予兆有りと前記判定部で判定された場合に、所定の報知動作を行う報知部を備えたことを特徴とするものである。
【0029】
第7の発明では、防水性を有する洗濯物が内槽に収容されており、異常振動の予兆有りと判定されると、報知部によって、その旨を示す所定の報知動作が行われる。例えば、表示パネルにエラーメッセージを表示したり、LEDを点灯させる等して、視覚的に外部に報知すればよい。また、報知ブザーを鳴らすことで、聴覚的に外部に報知してもよい。これにより、ユーザーに注意喚起をするとともに、安全に対する信頼性の高い洗濯機を提供することができる。
【0030】
第8の発明は、第7の発明において、
前記報知部は、通信機能を有する外部の端末装置に対して、前記判定部の判定結果を送信するように構成されていることを特徴とするものである。
【0031】
第8の発明では、判定部の判定結果が外部の端末装置に対して送信される。例えば、スマートフォンやタブレット等の端末装置に対して、防水性を有する洗濯物が内槽に収容されていることを示すメッセージを送信するようにすれば、ユーザーに注意喚起をすることができる。
【0032】
第9の発明は、第1乃至第8の発明のうち何れか1つにおいて、
前記外槽の振動を検出する振動センサを備え、
前記制御部は、
前記給水行程から前記脱水行程までを連続して行う場合に、前記判定部の判定結果に基づいて、前記駆動部の動作を制御する一方、
前記給水行程から前記脱水行程までの間に洗濯動作を一時停止させた場合に、該洗濯動作を再開させた後の該脱水行程において、前記振動センサに基づいて異常振動の予兆を検知して、前記駆動部の動作を制御することを特徴とするものである。
【0033】
第9の発明では、給水行程から脱水行程までの間に洗濯動作が一時停止したか否かによって、判定部の判定結果又は振動センサの検出結果のどちらに基づいて駆動部の動作を制御するかを決定するようにしている。
【0034】
具体的に、給水行程から脱水行程までを連続して行う場合には、判定部の判定結果に基づいて駆動部の動作を制御すればよい。しかしながら、例えば、給水行程の途中で一時停止した場合には、水位変化率を正確に演算することができなくなる。そこで、洗濯動作を一時停止させた場合には、振動センサの検出結果に基づいて駆動部の動作を制御すればよい。
【0035】
第10の発明は、第3の発明において、
洗濯物を出し入れする投入口を開閉可能に塞ぐ蓋と、
前記蓋の開閉状態を検知する開閉検知部と、
前記洗濯動作の停止中にユーザーが操作することで該洗濯動作を再開させる再開スイッチとを備え、
前記制御部は、前記洗濯動作の停止中に、前記蓋が開かれた後で再び閉じられたことが前記開閉検知部で検知された後で、前記再開スイッチが操作された場合に、前記脱水行程において前記内槽を通常の回転数で回転させるように前記駆動部の動作を制御することを特徴とするものである。
【0036】
第10の発明では、防水性を有する洗濯物が内槽に収容されていると判定された場合には、洗濯動作が停止する。そして、洗濯動作の停止中に、ユーザーが蓋を開いた後で再び蓋を閉じ、再開スイッチを操作した場合には、ユーザーが防水性衣類に溜まっている水を取り除いたものと判断して、脱水行程において内槽を通常の回転数で回転させるようにしている。これにより、脱水行程時の内槽を通常の回転数で回転させても、異常振動の発生を防止することができる。
【0037】
第11の発明は、第1の発明において、
前記駆動部に連結されて洗濯物を撹拌するパルセータを備え、
前記制御部は、異常振動の予兆有りと前記判定部で判定された場合に、前記給水行程の後で行われる洗濯行程又はすすぎ行程において、前記パルセータを所定の回転数以上で回転させるように前記駆動部の動作を制御することを特徴とするものである。
【0038】
第11の発明では、防水性を有する洗濯物が内槽に収容されており、異常振動の予兆有りと判定された場合には、洗濯行程又はすすぎ行程において、パルセータを所定の回転数以上で回転させるようにしている。これにより、防水性衣類に溜まっている水が、パルセータの高速回転によって取り除かれることとなり、脱水行程時の内槽を通常の回転数で回転させても、異常振動の発生を防止することができる。
【0039】
第12の発明は、第11の発明において、
前記駆動部は、環状のステータと、該ステータに対してそれぞれ独立に回転可能な第1ロータ及び第2ロータとを備え、
前記第1ロータ又は前記第2ロータの一方は、前記内槽に連結され、
前記第1ロータ又は前記第2ロータの他方は、前記パルセータに連結されていることを特徴とするものである。
【0040】
第12の発明では、ステータに対してそれぞれ独立に回転可能な第1ロータ及び第2ロータを備えた、いわゆるデュアルロータモータで駆動部を構成している。これにより、内槽とパルセータとを独立に回転駆動させ、防水性衣類に溜まっている水を、より取り除きやすくすることが可能となる。
【0041】
第13の発明は、第11又は第12の発明において、
前記外槽の振動を検出する振動センサを備え、
前記制御部は、前記脱水行程において、前記振動センサに基づいて異常振動の予兆を検知して、前記駆動部の動作を制御することを特徴とするものである。
【0042】
第13の発明では、洗濯行程又はすすぎ行程において、パルセータを所定の回転数以上で回転させた後、脱水行程において振動センサに基づいて異常振動の予兆を検知するようにしている。これにより、パルセータを高速回転させただけでは、防水性衣類に溜まっている水を取り除ききれなかった場合でも、振動センサの検出結果に基づいて駆動部の動作を適切に制御することで、異常振動の発生を防止することができる。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、給水行程中又は排水行程中の水位変化率に基づいて、異常振動の予兆の有無を適切に判定することができる。また、防水性を有する洗濯物が内槽に収容されており、異常振動の予兆有りと判定された場合に、駆動部の動作を適切に制御することで、防水性衣類が水を溜め込んでいたことに起因する脱水行程時の異常振動の発生を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0046】
《実施形態1》
図1及び
図2に示すように、洗濯機10は、矩形箱形の筐体11を備えている。筐体11の上部には、ユーザーが操作を行うための操作部12が設けられている。操作部12は、操作スイッチ13、表示パネル14、LED15等を有する(
図3参照)。洗濯機10では、操作スイッチ13を操作することにより、「給水」、「洗い」、「すすぎ」、「脱水」の各処理を連続して自動的に行うことができる。
【0047】
筐体11の内部には、外槽20や内槽30、駆動装置40、パルセータ45、バランサ35等が設置されている。
【0048】
外槽20は、上方に開口する有底円筒状の容器で構成され、筐体11の中央部に配置されている。外槽20は、筐体11の内部を自在に振れ回ることができるように、複数のサスペンション21を介して筐体11に吊り下げ支持されている。
【0049】
内槽30は、上方に開口する有底円筒状の容器で構成され、上方の投入口11aから洗濯物Cを出し入れ可能となっている。投入口11aは、蓋11bによって開閉可能に塞がれている。内槽30は、外槽20よりも一回り小さな容器で構成され、外槽20内に回転可能に配設されている。具体的に、内槽30は、外槽20の内側に双方の中心を縦軸Jに一致させた状態で外槽20に収容されており、駆動装置40の駆動により、略鉛直方向に延びる縦軸Jまわりに回転する。
【0050】
内槽30の周壁部には、内外に貫通する複数の水抜孔31が全周にわたって形成されている。
【0051】
駆動装置40は、外槽20の下部に設置されている。駆動装置40は、駆動モータ41と、動力伝達装置42とを備えている。動力伝達装置42は、外槽20の中心に位置する第1回転軸43及び第2回転軸44を有している。第1回転軸43は、外槽20の底部を貫通して内槽30に取り付けられている。第2回転軸44は、外槽20の底部及び内槽30の底部を貫通して内槽30の内部に突出し、パルセータ45に取り付けられている。
【0052】
動力伝達装置42は、駆動モータ41の駆動により、各処理に応じて切り替えながら第1回転軸43及び第2回転軸44を独立又は一体に正逆反転可能に回転させる。例えば、洗い行程やすすぎ行程では、第2回転軸44が駆動され、パルセータ45が一定の周期で正逆反転しながら回転する。脱水行程では、第1回転軸43が駆動され、内槽30が高速で回転する。
【0053】
外槽20の底部には、排水ホース22が接続されている。排水ホース22には、排水ポンプ23が接続されている。排水ポンプ23には、筐体11の外部に配索された機外ホース24が接続されている。排水ポンプ23は、各行程に対応して排水動作を行う。外槽20の上方位置には、各行程に対応して外槽20に水を供給する給水装置25が設けられている。
【0054】
また、外槽20には、気密室26が一体に設けられている。気密室26は、外槽20の外周壁の下側位置に設けられており、連通孔26aを介して外槽20の内部に連通している。気密室26の上部には、サブホース27が接続されている。サブホース27には、外槽20内の水位を検出する水位センサ28(水位検出部)が接続されている。水位センサ28は、筐体11の上部に設けられている。
【0055】
そして、給水装置25から外槽20内に水が供給されると、その一部が連通孔26aを介して気密室26にも流入する。外槽20内の水位が徐々に上昇することにより、外槽20に連通している気密室26内の空気圧も徐々に上昇する。気密室26と水位センサ28とは、サブホース27を介して気密に接続されているので、水位センサ28は、この空気圧の変化に応じた発振周波数を出力する。
【0056】
ここで、例えば、洗い行程やすすぎ行程の際には、排水ポンプ23が停止した状態で、給水装置25から内槽30に水が供給され、外槽20及び内槽30に水が貯留される。その状態でパルセータ45が回転することにより、洗濯物Cが水とともに攪拌され、洗い行程やすすぎ行程が行われる。
【0057】
また、中間脱水行程や脱水行程の際には、排水ポンプ23を動作させながら、内槽30を高速で回転させる。その結果、洗濯物Cに含まれている水は、遠心力の作用によって水抜孔31を通じて内槽30から放出される。内槽30から放出された水は、排水ホース22及び機外ホース24を通じて洗濯機10の外槽20及び内槽30の外に排水される。
【0058】
バランサ35は、内槽30の上方の開口部に設置されている。バランサ35は、円環状の部材であり、その内部に塩水等の高比重の液体が封入されている。バランサ35は、内槽30の回転時に洗濯物Cの偏りによって生じる重量バランスの不均衡を調整し、振動を抑制するために設置されている。なお、バランサ35は流体バランサに限らず、ボールバランサであってもよい。
【0059】
駆動装置40は、筐体11の上部に設けられた制御部50によって制御される。制御部50は、CPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)等を備え、CPUは、ROMに予め記憶されている制御プログラムを読み取って実行することにより、給水、洗い、中間脱水、すすぎ、排水、及び脱水の各行程を順次実行する。
【0060】
ところで、通常、内槽30に溜まる水の大部分は、水抜孔31等を通じて排水されるため、脱水行程時に内槽30に多量の水が残ることはない。しかしながら、防水性寝具やナイロンカバー、レインコート等の水を通さない衣類等が洗濯される場合、希に、防水性を有する洗濯物Cが広がり、すすぎ行程の終了後に内槽30内において、多量の水を抱え込んだ状態となる場合がある。
【0061】
このような状態が発生すると、脱水行程において、防水性の洗濯物Cが抱え込んだ水が瞬間的に移動したときに、バランサ35の流体がアンバランス負荷に追従できず、洗濯機10が異常振動を起こす場合がある。
【0062】
そこで、本実施形態では、防水性寝具等の防水性を有する洗濯物Cに起因して発生する異常振動を防止できるようにしている。
【0063】
具体的に、
図3に示すように、制御部50には、駆動モータ41、水位センサ28、操作部12等が接続されている。制御部50は、操作部12によって入力された各処理に対応して、CPUが制御プログラムを実行することにより実現するソフトウェア上の種々の手段を有している。
【0064】
すなわち、制御部50は、給水行程における水位センサ28の検出結果に基づいて、所定時間当たりの水位の変化量を示す水位変化率を演算する演算部51と、演算部51で演算された給水行程中の水位変化率に基づいて、防水性を有する洗濯物Cが内槽30に収容されているかを判定する判定部52と、駆動モータ41の回転を制御するモータ回転制御部53とを有している。また、制御部50は、各行程に対応して、排水ポンプ23や給水装置25等の動作を制御する。
【0065】
以下、給水行程中の水位変化率に基づいて、異常振動の予兆の有無、つまり、防水性を有する洗濯物Cの有無をどのように判定するのかについて説明する。なお、以下の説明では、防水性を有しない洗濯物を一般衣類C1、防水性を有する洗濯物を防水性衣類C2と呼ぶ。
【0066】
図4に示すように、給水装置25から内槽30に向かって水が供給されると、内槽30の水抜孔31等を通って外槽20にも水が貯留される。
図4では、防水性衣類C2が上方に開口する袋状となっており、その内部に一般衣類C1が収容された状態を示している。このとき、給水装置25から供給された水は、防水性衣類C2の上縁部に当たってそのまま外槽20に向かって流れるとともに、その一部が防水性衣類C2の内部に溜まることとなる。
【0067】
そして、
図5に示すように、内槽30の空間容積が防水性衣類C2によって仕切られることで減少している位置まで水が達すると、その後は、外槽20内の水位が急激に上昇することとなる。つまり、洗濯物の中に防水性衣類C2が含まれていると、水位変化率が急激に大きくなる変曲点が存在する。
【0068】
以下、変曲点水位について説明する。
図6に示すように、洗濯物の中に防水性衣類C2が含まれておらず、一般衣類C1のみであった場合には、一定の流量で給水を開始してから略一定の速度で水位が上昇して所定の設定水位に達するため、水位変化率は略一定となる。
【0069】
なお、水位変化率が略一定であるかは、給水行程において、給水開始から所定時間後に演算した第1の水位変化率Δ1と、第1の水位変化率Δ1よりも後で演算した第2の水位変化率Δ2との比率が、所定の閾値よりも大きいか否かで判定することができる。
【0070】
ここで、第1の水位変化率Δ1は、給水開始から水位S1に達するまでの時間t1と、水位S2に達するまでの時間t2とによって演算することができる。つまり、Δ1=(S2−S1)/(t2−t1)となる。
【0071】
また、第2の水位変化率Δ2も同様に、水位S3に達するまでの時間t3と、水位S4に達するまでの時間t4とによって演算することができる。つまり、Δ2=(S4−S3)/(t4−t3)となる。
【0072】
そして、
図6のグラフ図を見ても分かるように、一般衣類C1の場合には、第1の水位変化率Δ1と、第2の水位変化率Δ2とは、給水開始から設定水位に達するまでのどの区間を比較しても、略同じ傾きを示している。そのため、第1の水位変化率Δ1に対する第2の水位変化率Δ2の比率Δ2/Δ1は、ほぼ1となり、所定の閾値(例えば、3〜6)よりも小さいために、判定部52において防水性衣類C2が含まれていないと判定される。
【0073】
一方、洗濯物の中に防水性衣類C2が含まれている場合には、一定の流量で給水を開始してから略一定の速度で水位が上昇した後、変曲点水位を超えたところで、水位変化率が急激に大きくなる。
【0074】
そこで、第1の水位変化率Δ1は、給水開始から変曲点水位よりも低い水位S1に達するまでの時間T1と、水位S2に達するまでの時間T2とによって演算すればよい。つまり、Δ1=(S2−S1)/(T2−T1)となる。
【0075】
また、第2の水位変化率Δ2は、変曲点水位よりも高い水位S3に達するまでの時間T3と、水位S4に達するまでの時間T4とによって演算すればよい。つまり、Δ2=(S4−S3)/(T4−T3)となる。
【0076】
そして、
図6のグラフ図を見ても分かるように、防水性衣類C2の場合には、変曲点水位の前後で、水位変化率が急激に変化している。そのため、第1の水位変化率Δ1に対する第2の水位変化率Δ2の比率Δ2/Δ1は、例えば、10程度となり、所定の閾値(例えば、3〜6)よりも大きいために、判定部52において防水性衣類C2が含まれていると判定される。
【0077】
そして、防水性衣類C2が内槽30に収容されていると判定された場合に、制御部50は、中間脱水行程や最終の脱水行程において内槽30を所定の回転数以下で回転させるように、駆動モータ41の回転を制御する。
【0078】
具体的に、通常の脱水行程における内槽30の最高回転数が1000rpm程度に設定されている場合であれば、防水性衣類C2が内槽30に収容されていると判定されたときに、脱水行程における内槽30の最高回転数を、例えば、300rpm程度に設定すればよい。
【0079】
これにより、防水性衣類C2が水を溜め込んでいたことに起因する脱水行程時の異常振動の発生を防止しながら、洗濯機10の運転を停止させることなく、脱水行程を完了させることができる。
【0080】
また、
図3に示すように、制御部50には、報知ブザー16(報知部)が接続されている。防水性衣類C2が内槽30に収容されていると判定部52で判定された場合に、報知ブザー16を鳴らすことで、聴覚的に外部に報知して、ユーザーに注意喚起をすることができる。また、表示パネル14やLED15を報知部として利用して、表示パネル14にエラーメッセージを表示したり、LED15を点灯させることにより、視覚的に外部に報知してもよい。
【0081】
図7は、防水性衣類の有無を判定するためのフローチャート図である。
図7に示すように、まず、ステップS101では、洗濯行程を行うのにあたって、給水装置25から外槽20内に水を供給して、ステップS102に進む。
【0082】
ステップS102では、給水を開始してからの経過時間Tと、経過時間Tにおける外槽20内の水位Sとを取得して、ステップS103に進む。なお、経過時間Tと水位Sとは、給水開始から設定水位に達するまでの間、逐次取得するものとする。
【0083】
ステップS103では、給水開始から所定の水位S1に達するまでの時間T1と、水位S2に達するまでの時間T2とに基づいて、第1の水位変化率Δ1を演算し、ステップS104に進む。つまり、Δ1=(S2−S1)/(T2−T1)となる。
【0084】
ステップS104では、水位S2よりも高い水位S3に達するまでの時間T3と、水位S4に達するまでの時間T4とに基づいて、第2の水位変化率Δ2を演算し、ステップS105に進む。つまり、Δ2=(S4−S3)/(T4−T3)となる。
【0085】
ステップS105では、第1の水位変化率Δ1に対する第2の水位変化率Δ2の比率Δ2/Δ1が、所定の閾値よりも大きいかを判定する。ステップS105での判定が「YES」の場合には、ステップS109に分岐する。ステップS105での判定が「NO」の場合には、ステップS106に分岐する。
【0086】
ステップS106では、外槽20内の水位が設定水位に達したかを判定する。ステップS106での判定が「YES」の場合には、ステップS107に分岐する。ステップS106での判定が「NO」の場合には、ステップS104に分岐して、第2の水位変化率Δ2を再度演算する。なお、この再演算時には、水位S3,S4は、前回よりも高い水位に更新されて、第2の水位変化率Δ2が演算される。
【0087】
ステップS107では、給水開始から設定水位に達するまでの間に、Δ2/Δ1が所定の閾値よりも大きくなることはなかったので、洗濯物の中に防水性衣類C2が含まれていなかったと判断し、ステップS108に進む。
【0088】
ステップS108では、中間脱水行程や最終の脱水行程において、内槽30を通常の回転数(例えば、1000rpm)で回転させるように、駆動モータ41の回転数を設定して、処理を終了する。
【0089】
ステップS109では、給水開始から設定水位に達するまでの間に、Δ2/Δ1が所定の閾値よりも大きくなっているので、洗濯物の中に防水性衣類C2が含まれていると判断し、ステップS110に進む。
【0090】
ステップ110では、中間脱水行程や最終の脱水行程において、内槽30を所定の回転数以下(例えば、300rpm)で回転させるように、駆動モータ41の回転数を設定して、処理を終了する。
【0091】
なお、本実施形態では、給水行程中に水位変化率を演算するようにしているが、排水行程中に水位変化率を演算することも可能である。具体的に、排水行程では、
図6のグラフ図を反転させたような、時間の経過とともに水位が下がるように変化するグラフ図となる。
【0092】
ここで、洗濯物の中に防水性衣類C2が含まれておらず、一般衣類C1のみであった場合には、設定水位まで水が溜まっている状態で、一定の流量で排水を開始してから略一定の速度で水位が下降して排水が終了するため、水位変化率は略一定となる。
【0093】
一方、洗濯物の中に防水性衣類C2が含まれている場合には、設定水位まで水が溜まっている状態で、一定の流量で排水を開始してから略一定の速度で水位が下降した後、変曲点水位を下回ったところで、水位変化率が急激に小さくなる。
【0094】
このように、排水行程においても、洗濯物の中に防水性衣類C2が含まれている場合には、変曲点水位の前後で、水位変化率が急激に変化していることから、判定部52において防水性衣類C2の有無を判定することが可能となる。
【0095】
《実施形態2》
図8は、本実施形態2に係る洗濯機の制御動作を説明するブロック図である。以下、前記実施形態1と同じ部分については同じ符号を付し、相違点についてのみ説明する。
【0096】
図8に示すように、制御部50には、駆動モータ41、水位センサ28、操作部12、報知ブザー16の他にも、振動センサ36、開閉センサ37(開閉検知部)、及び通信部38(報知部)が接続されている。
【0097】
振動センサ36は、洗濯機10の外槽20に設けられ、外槽20の振動を検出する。
【0098】
開閉センサ37は、蓋11bの開閉状態を検知するものであり、近接センサや磁気センサで構成されている。開閉センサ37は、筐体11における投入口11aの周縁部に設けられている。蓋11bには、開閉センサ37に対応する位置に永久磁石(図示省略)が設けられており、蓋11bが閉じられた状態では、開閉センサ37と永久磁石とが対向する。一方、蓋11bが開かれた状態では、開閉センサ37から永久磁石が離れることとなる。これにより、蓋11bの開閉状態を開閉センサ37で検知することができる。
【0099】
通信部38は、通信機能を有する外部の端末装置60に対して、防水性を有する洗濯物Cが内槽30に収容されていることを示すメッセージを送信する。端末装置60は、例えば、スマートフォンやタブレット等であり、端末装置60の表示モニタにエラーメッセージが表示されることで、ユーザーに注意喚起をすることができる。
【0100】
ここで、制御部50は、給水行程から脱水行程までの間に洗濯動作が一時停止したか否かによって、駆動モータ41の動作を変更するようにしている。具体的に、給水行程から脱水行程までが連続して行われる場合には、判定部52により、水位変化率に基づいて、防水性衣類C2が内槽30に収容されていると判定されたときに、制御部50は、中間脱水行程や最終の脱水行程において内槽30を所定の回転数以下で回転させるように、駆動モータ41の回転を制御する。
【0101】
しかしながら、例えば、給水行程の途中で一時停止した場合には、水位変化率を正確に演算することができなくなる。そこで、給水行程から脱水行程までの間に洗濯動作を一時停止させた場合には、洗濯動作を再開させた後の中間脱水行程や最終の脱水行程において、振動センサ36に基づいて異常振動の予兆を検知するようにしている。そして、制御部50は、振動センサ36の検出結果に基づいて、駆動モータ41の回転を停止するように制御する。
【0102】
以下、異常振動の予兆検知について説明する。制御部50は、演算部51、判定部52、モータ回転制御部53の他にも、内槽30の異常振動の予兆検知に用いられる律動検知部55及び変化率検知部56と、内槽30内の洗濯物Cのアンバランス状態を検知するアンバランス検知部57とを有している。
【0103】
ここで、本願発明者らは、洗濯機10の運転中に振動センサ36の出力を解析し、異常振動発生直前に振動センサ36の出力信号において特有の挙動を示すことを見出した。具体的には、異常振動発生前に、振動センサ36の出力信号に内槽30の回転周期よりも長い周期の律動成分に由来するパラメータが特に大となることを見出した。
【0104】
律動検知部55は、この知見に基づいて設けられたものであって、洗濯機10の脱水行程中に振動センサ36の出力信号を取得し、この出力信号から内槽30の回転周期よりも長い周期の律動成分を抽出し、この律動成分に所定の信号処理を施して洗濯機10の異常振動の予兆を検知するための律動に由来するパラメータRを算出し、このパラメータR値が予め設定された第1の閾値Th1を超えている場合に異常振動の予兆が有ると判定する。なお、第1の閾値Th1は、固定値である。ここで、パラメータRは例えば振動センサ36で取得される振動成分をFFT等により分解し、所定の周波数の振動成分の強度を算出したものである。なお、強度以外の値であっても構わない。
【0105】
また、本願発明者らは、異常振動発生前に、内槽30の振動振幅が急激に変化していることを見出した。変化率検知部56は、この知見に基づいて設けられたものであって、振動センサ36の出力信号を取得し、この出力信号に所定の信号処理を施して振動振幅の変化率RVを算出し、この変化率RVが予め設定された第2の閾値Th2を超えている場合に異常振動の予兆があると判定する。
【0106】
アンバランス検知部57は、振動センサ36の他に、機械的スイッチまたは赤外線センサ等を用いて内槽30内の洗濯物のアンバランス状態を検知するものである。
【0107】
モータ回転制御部53は、アンバランス検知部57の検知結果、律動検知部55の判定結果及び変化率検知部56の判定結果に基づいて駆動モータ41の回転を制御する。
【0108】
−異常振動の予兆検知−
次に、制御部50が実行する、脱水行程における異常振動の予兆を検知する異常振動予兆検知処理について、
図9及び
図10を参照して説明する。
図9は、律動成分に基づく異常振動の予兆検知を行うフローチャート図であり、
図10は、振動振幅に基づく異常振動の予兆検知を行うフローチャート図である。
【0109】
《律動に基づく予兆検知》
律動成分に基づく異常振動の予兆検知について説明する。この異常振動の予兆検知は、洗濯行程及びすすぎ行程後の脱水行程中に実行するものである。
【0110】
まず、ステップS201では、制御部50は、振動センサ36から送信される、外槽20の振動状態を示す出力信号を取得し、ステップS202に進む。
【0111】
ステップS202では、取得した出力信号に所定の信号処理を施して、内槽30の回転周期よりも長い周期の律動成分を抽出し、ステップS203に進む。ここで、制御部50は、内槽30の回転数に応じて抽出する律動成分を変更している。すなわち、内槽30の内側にビニール袋を敷き詰めて大型防水布が存在するとともにアンバランスを付加した状態で異常振動を発生させる模擬実験を本願発明者らが行った結果、異常振動の発生前に検出された律動成分のうち最も強度が大きい周波数(ピーク周波数)は、内槽30の回転数が大きくなるにつれて、その周波数も大きくなる傾向があった。つまり、内槽30の回転数と異常振動発生直前に検出された律動成分のピーク周波数との間には概略一次関数で表すことができる関係が存在する。
【0112】
ステップS203では、制御部50は、抽出した律動成分から異常振動の予兆を検知するための律動に由来するパラメータRを計算し、ステップS204に進む。
【0113】
ステップS204では、このパラメータR値が、予め設定された第1の閾値Th1よりも大きいかを判定する。ステップS204での判定が「YES」の場合には、ステップS205に分岐する。ステップS204での判定が「NO」の場合には、制御部50は、異常振動の予兆無しと判定し、処理をステップS201に戻す。
【0114】
ステップS205では、制御部50は、異常振動の予兆有りと判定して駆動モータ41の回転を停止し、処理を終了する。ここで、制御部50により検知される律動成分は、内槽30の回転周期よりも長い周期のものを主に抽出している。
【0115】
《振動振幅の変化率に基づく予兆検知》
次に、振動振幅の変化率に基づく異常振動の予兆検知について説明する。この異常振動の予兆検知も、洗濯行程及びすすぎ行程後の脱水行程中に実行するものである。
【0116】
まず、ステップS301では、制御部50は、振動センサ36から送信され、外槽20の振動状態を示す出力信号を取得し、ステップS302に進む。
【0117】
ステップS302では、制御部50は、取得した出力信号に所定の信号処理を施して、外槽20の振動振幅の変化率RVを算出し、ステップS303に進む。
【0118】
ステップS303では、この算出した振動振幅の変化率RVが、予め設定された第2の閾値Th2よりも大きいかを判定する。ステップS303での判定が「YES」の場合には、ステップS304に分岐する。ステップS303での判定が「NO」の場合には、制御部50は、異常振動の予兆無しと判定し、処理をステップS301に戻す。
【0119】
ステップS304では、制御部50は、異常振動の予兆有りと判定して駆動モータ41の回転を停止し、処理を終了する。
【0120】
異常振動の予兆検知によれば、振動センサ36の出力に基づいて内槽30における異常振動の予兆の有無を判定するようにした。具体的には、振動センサ36の出力信号に所定の信号処理を施して、内槽30の回転周期の所定整数分の1周期の律動成分を抽出し、この律動成分から異常振動の予兆を検知するためのパラメータRを求め、このパラメータRに基づいて異常振動の予兆の有無を判定し、異常振動の予兆有りと判定した場合に内槽30の回転を停止するようにした。これにより、異常振動を未然に防止することができる。
【0121】
また、異常振動の予兆検知によれば、外槽20の振動振幅の変化率RVが第2の閾値Th2を超えた場合に異常振動の予兆であると判定し、内槽30の回転を停止するようにした。これにより、異常振動を未然に防止することができる。さらに、この振動振幅の急激な変化と律動成分とは別個に発生しているため、この律動成分の検知と合わせることにより、より確度高く異常振動の予兆を検知することができる。
【0122】
ところで、本実施形態では、異常振動の予兆有りと判定した場合に内槽30の回転を停止するようにしている。このとき、報知ブザー16を鳴らしたり、端末装置60に対してエラーメッセージが送信される等して、ユーザーに注意喚起が行われる。
【0123】
そして、洗濯機10において洗濯動作が停止したことに気付いたユーザーは、洗濯動作を再開させるために、まず、蓋11bを開き、防水性衣類C2に溜まっている水を取り除いた後で、再び蓋11bを閉じる。このような蓋11bの開閉状態は、開閉センサ37で検知される。そして、ユーザーは、再開スイッチ17を操作することで、洗濯動作を再開させる。
【0124】
制御部50は、洗濯動作の停止中に、ユーザーが蓋11bを開いた後で再び蓋11bを閉じ、再開スイッチ17を操作した場合には、ユーザーが防水性衣類C2に溜まっている水を取り除いたものと判断して、脱水行程において内槽30を通常の回転数で回転させるように、駆動モータ41の駆動を制御する。これにより、脱水行程時の内槽30を通常の回転数で回転させても、異常振動の発生を防止することができる。
【0125】
なお、本実施形態では、防水性を有する洗濯物Cが内槽30に収容されていると判定部52で判定された場合に、中間脱水行程や最終の脱水行程において内槽30を所定の回転数以下で回転させるように駆動モータ41の動作を制御するようにしたが、この形態に限定するものではない。
【0126】
例えば、防水性を有する洗濯物Cが内槽30に収容されていると判定部52で判定された場合に、それ以降の洗濯行程を中止するために、駆動モータ41の動作を停止するように制御してもよい。その後、ユーザーが洗濯動作を再開させる際には、上述した手順と同様に、蓋11bの開閉状態や再開スイッチ17の操作に基づいて、脱水行程において内槽30を通常の回転数で回転させるようにすればよい。
【0127】
《実施形態3》
本実施形態3に係る洗濯機10では、内槽30とパルセータ45とを独立に回転駆動させることが可能なように、駆動モータ41を、いわゆるデュアルロータモータで構成している。
【0128】
図11に示すように、駆動モータ41は、アウターロータ46(第2ロータ)、インナーロータ47(第1ロータ)、インナーシャフト43(第1回転軸)、アウターシャフト44(第2回転軸)、環状のステータ48などで構成されている。すなわち、この駆動モータ41は、1つのステータ48の径方向外方及び内方にアウターロータ46及びインナーロータ47を備えた、いわゆるデュアルロータモータである。
【0129】
そして、アウターロータ46及びインナーロータ47が、クラッチや加減速機などを介在することなくパルセータ45や内槽30に連結されていて、これらを直接駆動するように構成されている。
【0130】
アウターロータ46及びインナーロータ47は、ステータ48のコイルを共用しており、コイルに電流を供給することにより、この駆動モータ41は、アウターロータ46及びインナーロータ47の各々を独立して回転駆動できるようになっている。ステータ48は、外槽20の底面に設けられた軸受ブラケット70に取り付けられている。
【0131】
アウターロータ46は、扁平な有底円筒状の部材であり、中心部分が開口した底壁部46aと、底壁部46aの周縁に立設されたロータヨーク46bと、円弧形状の永久磁石からなる複数のアウターマグネット46cとを有している。
【0132】
インナーロータ47は、アウターロータ46よりも外径が小さい扁平な有底円筒状の部材であり、中心部分が開口した内側底壁部47aと、内側底壁部47aの周囲に立設された内側周壁部47bと、矩形板状の永久磁石からなる複数のインナーマグネット47cとを有している。
【0133】
インナーシャフト43は、円柱状の軸部材であり、インナー軸受73、アウターシャフト44、及びボールベアリング71,72を介して軸受ブラケット70に回転自在に支持されている。インナーシャフト43の下端部は、アウターロータ46に連結されている。インナーシャフト43の上端部は、パルセータ45に連結されている。
【0134】
アウターシャフト44は、インナーシャフト43よりも短く、インナーシャフト43の外径よりも大きな内径を有する円筒状の軸部材であり、上下のインナー軸受73,73、インナーシャフト43、及びボールベアリング71,72を介して軸受ブラケット70に回転自在に支持されている。アウターシャフト44の下端部は、インナーロータ47に連結されている。アウターシャフト44の上端部は、内槽30に連結されている。
【0135】
ステータ48は、アウターロータ46の内径よりも外径が小さくてインナーロータ47の外径よりも内径が大きい円環状の部材で形成されている。ステータ48は、複数のティース48aやコイルなどが、樹脂に埋設された状態で備えられている。
【0136】
このように構成された駆動モータ41では、内槽30とパルセータ45とを独立に回転駆動させることが可能となっている。そこで、本実施形態では、防水性を有する洗濯物Cが内槽30に収容されていると判定された場合に、防水性衣類C2に溜まっている水を取り除くための制御を行うようにしている。
【0137】
具体的に、制御部50は、防水性を有する洗濯物Cが内槽30に収容されていると判定部52で判定された場合に、給水行程の後で行われる洗濯行程又はすすぎ行程において、パルセータ45と内槽30を所定の独立駆動(例えば、独立駆動による相反回転や同相速度違い回転等)させるように駆動モータ41の動作を制御する。その後の脱水行程では、内槽30を通常の回転数で回転させるように、駆動モータ41の駆動を制御する。
【0138】
これにより、防水性衣類C2に溜まっている水が、パルセータ45と内槽30の独立駆動によって取り除かれることとなり、脱水行程時の内槽30を通常の回転数で回転させても、異常振動の発生を防止することができる。
【0139】
ところで、パルセータ45と内槽30の独立駆動だけでは、防水性衣類C2に溜まっている水を取り除ききれない場合がある。この場合に、脱水行程において内槽30を通常の回転数で回転させ続けると、異常振動が発生するおそれがある。
【0140】
そこで、本実施形態では、脱水行程において振動センサ36の検出結果に基づいて、駆動モータ41の動作を適切に制御するようにしている。具体的に、制御部50は、脱水行程において、振動センサ36に基づいて異常振動の予兆を検知して、駆動モータ41の動作を停止するように制御する。
【0141】
なお、異常振動の予兆の検知については、前記実施形態2と同様であるため、説明を省略する。
【0142】
また、本実施形態3のような、アウターロータ46及びインナーロータ47を有する駆動モータ41は、前記実施形態1,2に対しても適用可能である。
【0143】
《その他の実施形態》
前記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0144】
本実施形態では、水位検出部28として圧力センサを用いた構成について説明したが、この形態に限定するものではない。例えば、静電容量センサ、超音波センサ、画像センサ、光センサ、電波センサ、熱センサ等を水位検出部として用いてもよい。
【0145】
また、本実施形態では、水位検出部28としての圧力センサを、外槽20の外側に配置しているが、外槽20の内側に配置した構成でもよい。