(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態に係る作業車両について説明する。以下の説明では、同一部品には、同一の符号を付している。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0010】
実施形態における構成を適宜組み合わせて用いることは当初から予定されていることである。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0011】
また、以下では、作業車両としてモータグレーダを例に挙げて説明する。しかしながら、作業車両は、モータグレーダに限定されるものではなく、油圧ショベル、ホイールローダ、ブルドーザ、ダンプトラック、クローラダンプ等であってもよい。
【0012】
以下、モータグレーダについて、図面を参照しながら説明する。なお、以下の図の説明において、モータグレーダが直進走行する方向を、モータグレーダの前後方向という。モータグレーダの前後方向において、作業機に対して前輪が配置されている側を、前方向とする。モータグレーダの前後方向において、作業機に対して後輪が配置されている側を、後方向とする。モータグレーダの左右方向とは、平面視において前後方向と直交する方向である。前方向を見て左右方向の右側、左側が、それぞれ右方向、左方向である。モータグレーダの上下方向とは、前後方向および左右方向によって定められる平面に直交する方向である。上下方向において地面のある側が下側、空のある側が上側である。
【0013】
<A.外観>
図1は、本発明の一実施形態におけるモータグレーダ1の構成を概略的に示す斜視図である。
【0014】
図1に示されるように、本実施形態のモータグレーダ1は、走行輪11,12と、車体フレーム2と、運転室3と、作業機4とを主に備えている。また、モータグレーダ1は、エンジン室6に配置されたエンジンなどの構成部品を備えている。作業機4は、ブレード42を含んでいる。モータグレーダ1は、ブレード42で整地作業、除雪作業、軽切削、材料混合などの作業を行なうことができる。
【0015】
走行輪11,12は、前輪11と後輪12とを含んでいる。
図1においては、片側1輪ずつの2つの前輪11と片側2輪ずつの4つの後輪12とからなる走行輪を示しているが、前輪および後輪の数および配置はこれに限られない。
【0016】
車体フレーム2は、リアフレーム21と、フロントフレーム22とを含んでいる。リアフレーム21は、エンジン室6に配置されたエンジンなどの構成部品を支持している。
【0017】
リアフレーム21には、上記のたとえば4つの後輪12の各々がエンジンからの駆動力によって回転駆動可能に取付けられている。フロントフレーム22は、リアフレーム21の前方に取り付けられている。フロントフレーム22の前端部には、上記のたとえば2つの前輪11が回転可能に取り付けられている。
【0018】
運転室3はフロントフレーム22に載置されている。運転室3の内部には、ハンドル、変速レバー、作業機4を操作するための作業機レバー、ブレーキ、アクセルペダル、インチングベダルなどの操作部(図示せず)が設けられている。なお、運転室3は、リアフレーム21に載置されていてもよい。
【0019】
作業機4は、ドローバ40と、ブレード42とを主に有している。
ドローバ40の前端部は、フロントフレーム22の前端部に揺動可能に取付けられている。ドローバ40の後端部は、一対のリフトシリンダ44,45によってフロントフレーム22に支持されている。
【0020】
モータグレーダ1は、複数の速度段を有するトランスミッションを備えている。
<B.運転室>
図2は、運転室3の詳細を説明するための図である。
【0021】
図2に示されるように、運転室3は、ハンドル310と、運転席320と、コンソール340,350とを備える。コンソール340は、運転席320の右側に配置されている。コンソール350は、運転席320の左側に配置されている。
【0022】
コンソール340には、前後進切替スイッチ341と、シフトレバー3421と、作業機ロックスイッチ343と、複数の作業機レバー390とが配置されている。
【0023】
コンソール350には、複数の作業機レバー390が配置されている。
前後進切替スイッチ341は、前後方向に操作可能なスイッチである。オペレータが前後進切替スイッチ341を前方向に移動させることにより前後進切替スイッチ341が前進位置を取ると、前進クラッチ(図示せず)が係合状態となる。オペレータが前後進切替スイッチ341を後方向に移動させることにより前後進切替スイッチ341が後進位置を取ると、後進クラッチ(図示せず)が係合状態となる。
【0024】
シフトレバー3421は、ジョイスティック342(
図3)を構成する操作レバーである。シフトレバー3421は、中立位置と、中立位置からの右方向へのオペレータ操作で切替上限段を1段上げる位置(以下、「アップ位置」とも称する)と、中立位置からの左方向へのオペレータ操作で切替上限段を1段下げる位置(以下、「ダウン位置」とも称する)とを取る。オペレータがシフトレバー3421を中立位置から右方向に倒すとアップ位置となる。オペレータがシフトレバー3421を中立位置から左方向に倒すとダウン位置となる。
【0025】
「切替上限段」とは、トランスミッションの複数の変速段のうち、使用が許容された最も高い速度段を表す。たとえば、トランスミッションが前進に関し8速の速度段を有している場合、切替上限段が7段に設定されると、モータグレーダ1は、速度段を8段にはシフトアップしない。切替上限段と実際の速度段との関係については、後述する(
図4)。
【0026】
<C.ハードウェア構成>
図3は、モータグレーダ1のハードウェア構成の一部を表した図である。
【0027】
図3に示されるように、モータグレーダ1は、前後進切替スイッチ341と、ジョイスティック342と、作業機ロックスイッチ343と、メインコントローラ400と、トランスミッション500と、電磁比例制御弁511,512と、電磁比例制御弁521〜528と、リアアクスル600とを備えている。
【0028】
(c1.ジョイスティック)
ジョイスティック342は、シフトレバー3421と、操作検出器3422とを有する。
【0029】
ジョイスティック342は、シフトレバー3421を中立位置に自動的に復帰させる自動復帰機能を有する。ジョイスティック342は、オペレータがシフトレバー3421から手を離すと、内蔵されたバネによって、シフトレバー3421を中立位置に戻す。
【0030】
操作検出器3422は、シフトレバー3421が中立位置にある場合とアップ位置にある場合とダウン位置にある場合とで、互いに異なる電圧値の指令信号をメインコントローラ400に送信する。操作検出器3422は、シフトレバー3421が中立位置からアップ位置に移動する操作を受け付ける毎に、シフトレバー3421が中立位置にあるときよりも所定の値だけ高い電圧値の指令信号をメインコントローラ400に対して出力する。また、シフトレバー3421がアップ位置にある場合には、操作検出器3422は、この間、上記指令信号を出力し続ける。操作検出器3422は、この間、操作検出器3422とメインコントローラ400とを結ぶ配線に対して、シフトレバー3421が中立位置にあるときよりも所定の値だけ高い電圧を印加する。
【0031】
なお、操作検出器3422は、シフトレバー3421が中立位置にある場合とアップ位置にある場合とダウン位置にある場合とで、互いに異なる電流値の指令信号をメインコントローラ400に送信する構成であってもよい。また、操作検出器3422とメインコントローラ400とが3本の配線で接続されており、中間位置とアップ位置とダウン位置とで異なる配線が印加される構成としてもよい。
【0032】
以下では、説明の便宜上、ジョイスティック342に対する予め定められた時間Th以上の連続操作を「長押し操作」と称する。また、「長押し操作」のうち、オペレータがシフトレバー3421を中立位置からアップ位置に移動させ、かつシフトレバー3421をアップ位置で予め定められた時間Th以上維持する操作を、「アップ方向への長押し操作」とも称する。
【0033】
一方、ジョイスティック342に対する予め定められた時間Th未満の連続操作を「短押し操作」と称する。また、「短押し操作」のうち、オペレータがシフトレバー3421を中立位置からアップ位置に移動させる操作を、「アップ方向への短押し操作」とも称する。
【0034】
(c2.前後進切替スイッチ)
前後進切替スイッチ341は、前後進切替スイッチ341の可動部が中立位置にある場合と前進位置にある場合と後進位置にある場合とで、互いに異なる電圧値の指令信号をメインコントローラ400に送信する。前後進切替スイッチ341は、上記可動部がアップ位置にある場合には、この間、この可動部が中立位置にあるときよりも所定の値だけ高い電圧値の指令信号をメインコントローラ400に対して出力する。
【0035】
なお、前後進切替スイッチ341は、上記可動部が中立位置にある場合とアップ位置にある場合とダウン位置にある場合とで、互いに異なる電流値の指令信号をメインコントローラ400に送信する構成であってもよい。また、前後進切替スイッチ341とメインコントローラ400とが3本の配線で接続されており、中間位置とアップ位置とダウン位置とで異なる配線が印加される構成としてもよい。
【0036】
(c3.作業機ロックスイッチ)
作業機ロックスイッチ343は、作業機4の動作をロックする。作業機ロックスイッチ343は、押下状態と押下されていない状態とで、互いに異なる電圧値の指令信号をメインコントローラ400に送信する。なお、作業機ロックスイッチ343は、上記押下状態および押下されていない状態のいずれか一方の状態のときに指令信号を出力しない構成(電圧値が0V)であってもよい。
【0037】
(c4.トランスミッション、電磁比例制御弁)
トランスミッション500は、前進クラッチと、後進クラッチと、1速から8速の速度段クラッチとを有する。速度段クラッチにより、速度段が設定される。
【0038】
電磁比例制御弁511は、メインコントローラ400からの指令電流によってパイロット圧を生成し、このパイロット圧によって、前進クラッチを係合状態とする。電磁比例制御弁512は、メインコントローラ400からの指令電流によってパイロット圧を生成し、このパイロット圧によって、後進クラッチを係合状態とする。
【0039】
電磁比例制御弁521は、メインコントローラ400からの指令電流によってパイロット圧を生成し、このパイロット圧によって、1速の速度段クラッチを係合状態とする。電磁比例制御弁522は、メインコントローラ400からの指令電流によってパイロット圧を生成し、このパイロット圧によって、2速の速度段クラッチを係合状態とする。以下同様に、電磁比例制御弁523〜528は、それぞれ、3速から8速の1つの速度段クラッチを係合状態とする。
【0040】
(c5.メインコントローラ)
メインコントローラ400は、モータグレーダ1の全体の動作を制御する。メインコントローラ400は、前後進切替スイッチ341と、ジョイスティック342と、作業機ロックスイッチ343とから、指令信号を受信する。
【0041】
メインコントローラ400は、前後進切替スイッチ341に対するオペレータ操作により、トランスミッション500の前進クラッチを係合状態としたり、後進クラッチを係合状態としたりする。メインコントローラ400は、トランスミッション500に接続された電磁比例制御弁511に流す指令電流を制御することにより、前進クラッチの係合状態を制御する。メインコントローラ400は、トランスミッション500に接続された電磁比例制御弁512に流す指令電流を制御することにより、後進クラッチの係合状態を制御する。
【0042】
メインコントローラ400は、ジョイスティック342に対するオペレータ操作によって設定される切替上限段の情報と、モータグレーダ1の車速の情報とに基づいて、トランスミッション500の速度段を切り替える制御を行う。メインコントローラ400は、トランスミッション500に接続された電磁比例制御弁521〜528に流す指令電流を制御することにより、トランスミッションの速度段を切り替える。
【0043】
メインコントローラ400は、アップ方向への短押し操作に基づく指令信号をジョイスティック342から受信すると、トランスミッション500の速度段の切替上限段を1段上げる設定を行う。また、メインコントローラ400は、切替上限段以下の速度段を維持するようにトランスミッション500を制御する。メインコントローラ400が、アップ方向への長押し操作に基づく指令信号をジョイスティック342から受信したときの切替上限段の設定については、後述する(
図6)。
【0044】
なお、ジョイスティック342、シフトレバー3421、アップ位置、ダウン位置は、それぞれ、本発明における、「第1の操作装置」、「操作レバー」、「第1の位置」、「第2の位置」の一例である。また、前後進切替スイッチ341、トランスミッション500、メインコントローラ400は、それぞれ、本発明における、「第3の操作装置」、「変速機」、「コントローラ」の一例である。さらに、アップ方向への短押し操作、アップ方向への長押し操作は、それぞれ、本発明における「第1の操作」、「第2の操作」の一例である。
【0045】
<D.シフトチェンジ>
図4は、前進時における切替上限段と速度段との関係を表した図である。
【0046】
図4に示されるように、メインコントローラ400において切替上限段が1速(
図4では「F−1」と表記)に設定されている場合には、メインコントローラ400は、トランスミッションの速度段を1速(
図4では「F−1」と表記)に設定する。同様に、切替上限段が2速,3速,4速に設定されている場合には、それぞれ、メインコントローラ400は、トランスミッションの速度段を、2速,3速,4速に設定する。
【0047】
切替上限段が5速に設定されている場合には、メインコントローラ400は、車速に基づいて、速度段を4速と5速との間で制御する。なお、
図4における二重丸の記号は、高速時にロックアップすることを表している。
【0048】
切替上限段が6速に設定されている場合には、メインコントローラ400は、車速に基づいて速度段を4速から6速の間で制御する。切替上限段が7速に設定されている場合には、メインコントローラ400は、車速に基づいて速度段を4速から7速の間で制御する。切替上限段が8速に設定されている場合には、メインコントローラ400は、車速に基づいて速度段を4速から8速の間で制御する。
【0049】
このように、メインコントローラ400は、切替上限段が5速から8速の間では、車速に基づいて自動変速を行う。また、切替上限段が5速から8速の間で設定されているときには、メインコントローラ400は、速度段を3速以下に設定しない。
【0050】
以下、前進時における、シフトレバー3421の操作と、切替上限段と、速度段との関係について、2つの例を挙げて説明する。
【0051】
図5は、アップ方向への短押し操作が繰り返し行われたときのタイミングチャートである。
【0052】
図5に示されるように、切替上限段と速度段とが1速の状態において、時刻t1でオペレータがアップ方向への短押し操作を開始すると、ジョイスティック342から指令信号がメインコントローラ400に出力される。なお、同図の例では、指令信号は時刻ta迄出力される。メインコントローラ400は、時刻t1からΔt秒後に、切替上限段を1速から2速に上げるとともに、
図4に示した切替上限段と速度段との関係に基づいて、速度段を1速から2速に上げる。
【0053】
時刻t2においてオペレータがアップ方向への短押し操作を開始すると、指令信号がメインコントローラ400に出力される。なお、同図の例では、指令信号は時刻tb迄出力される。メインコントローラ400は、時刻t2からΔt秒後に、切替上限段を2速から3速に上げるとともに、
図4に示した切替上限段と速度段との関係に基づいて、速度段を2速から3速に上げる。
【0054】
時刻t3においてオペレータがアップ方向への短押し操作を開始すると、指令信号がメインコントローラ400に出力される。メインコントローラ400は、時刻t3からΔt秒後に、切替上限段を3速から4速に上げるとともに、
図4に示した切替上限段と速度段との関係に基づいて、速度段を3速から4速に上げる。
【0055】
時刻t4においてオペレータがアップ方向への短押し操作を開始すると、指令信号がメインコントローラ400に出力される。メインコントローラ400は、時刻t4からΔt秒後に、切替上限段を4速から5速に上げる。この場合、メインコントローラ400は、
図4に示した切替上限段と速度段との関係に示したように、自動変速を実行する。メインコントローラ400は、車速に基づいて、速度段を4速または5速に設定する。
【0056】
図6は、アップ方向への長押し操作が行われたときのタイミングチャートである。
図6に示されるように、切替上限段と速度段とが1速の状態において、時刻t1でオペレータがアップ方向への短押し操作を行うと、ジョイスティック342から指令信号がメインコントローラ400に出力される。メインコントローラ400は、時刻t1からΔt秒後に、切替上限段を1速から2速に上げるとともに、
図4に示した切替上限段と速度段との関係に基づいて、速度段を1速から2速に上げる。
【0057】
時刻t2においてオペレータがアップ方向への長押し操作を開始すると、指令信号がメインコントローラ400に出力される。なお、同図の例では、指令信号は時刻tc迄出力される。時刻t2から時刻tc迄の時間Tmは、予め定められた時間Thよりも長い。時間Thは、たとえば、1秒とすることができる。
【0058】
メインコントローラ400は、時刻t2からΔt秒後に、切替上限段を2速から3速に上げるとともに、
図4に示した切替上限段と速度段との関係に基づいて、速度段を2速から3速に上げる。さらに、時刻t2から時間Th以上経過すると(時刻t3になると)、メインコントローラ400は、切替上限段を最高速度段の8速にする指令を受け付けたと判断する。
【0059】
この場合、メインコントローラ400は、時刻t2から時間Th+Δt経過後(時刻t3+Δtになると)、切替上限段を3速から8速に変更する。このように、モータグレーダ1においては、切替上限段として、3速の次に8速が設定される。詳しくは、メインコントローラ400は、4速,5速,6速,7速を経由することなく、切替上限段を少なくとも2段上の切替上限段(たとえば8速)に設定する処理(以下、「ジャンプ処理」とも称する)を実行する。
【0060】
その後、メインコントローラ400は、
図4に示した切替上限段と速度段との関係に示したように、自動変速を実行する。メインコントローラ400は、車速に基づいて速度段を4速から8速の間で制御する。
【0061】
以上のように、メインコントローラ400は、アップ方向への長押し操作が行われたことに基づき、切替上限段を、当該操作が行われる直前の切替上限段から、トランスミッション500の最高速度段である8速に変更する制御を行う。
【0062】
なお、アップ方向への短押し操作を繰り返し行うことにより切替上限段が7速となっている場合、速度段は8速までなので、上記のようにアップ方向への長押し操作を行っても切替上限段は1段しか上がらない。
【0063】
なお、トランスミッション500の最高速度段である8速は、本発明の「第2の切替上限段」の一例である。第2の切替上限段は、最高速度段よりも低い速度段(たとえば、7速)であってもよい。なお、第2の切替上限段は、第1の切替上限段の次に設定される切替上限段とも言える。また、切替上限段における4速が、本発明における「予め定められた閾値段」の一例である。
【0064】
<E.機能的構成>
図7は、メインコントローラ400の機能的構成を表した機能ブロック図である。
【0065】
図7に示されるように、メインコントローラ400は、切替上限段設定部410と、記憶部420と、変速段制御部430とを備える。切替上限段設定部410は、受信時間判断部411を含む。
【0066】
記憶部420は、現在の切替上限段を記憶している。
切替上限段設定部410は、ジョイスティック342から受信した指令信号に基づき、切替上限段を設定する。切替上限段設定部410は、設定がなされる毎に、記憶部420に記憶されている切替上限段を当該設定された値で更新する。この更新処理の内容は、以下のとおりである。
【0067】
切替上限段設定部410は、ジョイスティック342から指令信号を受信すると、切替上限段を1段上げる。切替上限段設定部410は、当該指令信号を予め定められた時間Th以上連続して受信していると判断すると、切替上限段を最高速度段である8速に変更する。なお、指令信号を予め定められた時間Th以上連続して受信しているか否かは、受信時間判断部411によって判断される。
【0068】
変速段制御部430は、モータグレーダ1の車速情報に基づいて、記憶部420に記憶された切替上限段以下の速度段を維持するようにトランスミッション500を制御する。変速段制御部430は、トランスミッション500の速度段を切り替えるための速度段切替指令として、電磁比例制御弁521〜528に対して指令電流を出力する。
【0069】
また、変速段制御部430は、
図4に示したように、切替上限段が4速以下の場合には、トランスミッション500の速度段が設定上限段と同じ速度段となるようにトランスミッション500を制御する。変速段制御部430は、切替上限段が4速よりも高い場合には、速度段が、4速以上かつ切替上限段以下の範囲内の速度段となるようにトランスミッション500を制御する。
【0070】
なお、
図7においては、記憶部420が切替上限段設定部410とは別に設けられた構成を記載しているが、切替上限段設定部410において切替上限段が記憶され、かつ切替上限段の変更(更新)がなされる度に、切替上限段設定部410が変速段制御部に変更後の切替上限段を通知する構成としてもよい。
【0071】
図8は、モータグレーダ1における前進時の制御処理の流れを説明するためのフロー図である。
【0072】
図8に示されるように、ステップS1において、メインコントローラ400は、ジョイスティック342が右方向に操作されたことに基づき、ジョイスティック342から切替上限段を上げる指令を受信する。ステップS2において、メインコントローラ400は、切替上限段を1段上げる。
【0073】
ステップS3において、メインコントローラ400は、指令信号を予め定められた時間Th以上受信し続けているか否かを判断する。メインコントローラ400は、指令信号を予め定められた時間Th以上受信し続けていると判断すると(ステップS3においてYES)、ステップS4において、作業機ロックスイッチ343によって作業機4がロック状態に遷移しているか否かを判断する。メインコントローラ400は、指令信号を予め定められた時間Th以上受信し続けていないと判断すると(ステップS3においてNO)、一連の処理を終了する。
【0074】
メインコントローラ400は、作業機4がロック状態であると判断した場合(ステップS4においてYES)、設定上限段を現在の設定上限段から最高速度段(8速)に変更する。メインコントローラ400は、作業機4がロック状態でないと判断した場合(ステップS4においてNO)、設定上限段を現在の設定上限段から最高速度段に変更することなく、一連の処理を終了する。
【0075】
ステップS4において、作業機4がロック状態か否かを判断するのは、切替上限段を8速に設定するジャンプ処理を、整地作業を伴わない走行時等においてのみ実行するためである。ただし、これに限られず、作業機4がロック状態において上記ジャンプ処理を許可するようにメインコントローラ400を構成してもよい。また、上記においては前進時にジャンプ処理を実行する例を挙げているが、後進の速度段にも適用可能である。
【0076】
<F.利点>
(1)モータグレーダ1は、ジョイスティック342と、複数の速度段を有するトランスミッション500と、モータグレーダ1の車速に基づいてトランスミッション500の速度段を切替上限段以下に切り替える制御を行うメインコントローラ400とを備える。メインコントローラ400は、ジョイスティック342に対してアップ方向への短押し操作が行われたことに基づき、切替上限段を1段上げる設定を行う。メインコントローラ400は、アップ方向への長押し操作が行われたことに基づき、切替上限段を、アップ方向への長押し操作が行われる直前の切替上限段から、最高速度段(8速)に変更する制御を行う。
【0077】
このような構成によれば、オペレータは、アップ方向への長押し操作を行うだけで、切替上限段を一挙に最高速度段まで上げることが可能となる。また、ジョイスティック342に対する操作だけで、切替上限段を1段だけ上げる処理と、切替上限段を最高速度段まで上げる処理とを行うことが可能となる。
【0078】
(2)第1の操作および第2の操作は、ジョイスティック342のシフトレバー3421に対する操作である。このため、シフトレバー3421を予め定められた時間以上の連続で操作することにより、切替上限段を一挙に最高速度段まで上げることが可能となる。
【0079】
(3)シフトレバー3421は、中立位置と、アップ方向への短押し操作で切替上限段を1段上げるアップ位置と、アップ方向への短押し操作と反対の方向にシフトレバー3421を移動させる操作で切替上限段を1段下げるダウン位置とを取る。アップ方向への長押し操作は、シフトレバー3421を中立位置からアップ位置に移動させ、かつシフトレバー3421をアップ位置で予め定められた時間以上維持する操作である。
【0080】
このような構成によれば、オペレータは、シフトレバー3421を中立位置からアップ位置に移動させ、かつシフトレバー3421をアップ位置で予め定められた時間以上維持することにより、切替上限段を一挙に最高速度段まで上げることが可能となる。
【0081】
(4)メインコントローラ400は、切替上限段が4速以下の場合には、速度段が切替上限段と同じ速度段となるようにトランスミッション500を制御する。メインコントローラ400は、切替上限段が4速よりも高い場合には、速度段が、4速以上かつ切替上限段以下の範囲内の速度段となるようにトランスミッション500を制御する。
【0082】
このような構成によれば、切替上限段が4速よりも高い場合には、速度段が4速以下の速度段となることはない。したがって、速度が低下した場合であっても、4速以下の速度段となることはない。それゆえ、速度が低下した場合、4速以下の速度段となるような構成に比べて、速度段の変速回数を減らすことが可能となる。
【0083】
(5)モータグレーダ1は、前進および後進を切り替える前後進切替スイッチ341をさらに備える。メインコントローラ400は、前後進切替スイッチ341が前進位置にあることを条件に、切替上限段を最高速度段に変更する制御を行う。
【0084】
このような構成によれば、モータグレーダ1が前進しているときにオペレータがアップ方向への長押し操作を行うことによって、切替上限段を一挙に最高速度段まで上げることが可能となる。
【0085】
(6)モータグレーダ1は、作業機4と、作業機4の動作をロックする作業機ロックスイッチ343とを備える。メインコントローラ400は、作業機ロックスイッチ343によって作業機の動作がロックされていることを条件に、切替上限段を最高速度段に変更する制御を行う。
【0086】
このような構成によれば、作業機4の動作がロックされているときにオペレータがアップ方向への長押し操作を行うことによって、切替上限段を一挙に最高速度段まで上げることが可能となる。
【0087】
<G.変形例>
(1)第1の変形例
上記の実施の形態においては、トランスミッション500の速度段を変更する操作装置として、ジョイスティック342を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。
【0088】
図9は、速度段を変更する操作装置として押しボタンスイッチを用いる構成を表した図である。
図9に示されるように、コンソール340は、ジョイスティック342の代わりに、操作装置としての押しボタンスイッチ361,362を備える。
【0089】
押しボタンスイッチ361は、切替上限段を下げるためのスイッチとして機能する。押しボタンスイッチ362は、切替上限段を上げるためのスイッチとして機能する。
【0090】
押しボタンスイッチ362が予め定められた時間Th以上押下され続けると、メインコントローラ400は上述した8速へのジャンプ処理を実行する。押しボタンスイッチ362の押下操作が予め定められた時間Th未満の場合には、メインコントローラ400は、切替上限段を1段だけ上げる。
【0091】
したがって、オペレータは、押しボタンスイッチ362を長押しするだけで、切替上限段を一挙に最高速度段まで上げることが可能となる。
【0092】
なお、押しボタンスイッチ361,362は、本発明の「第1の操作装置」の一例でもある。また、押しボタンスイッチ361、押しボタンスイッチ362は、それぞれ、本発明における、「第2の押しボタンスイッチ」、「第1の押しボタンスイッチ」の一例である。
【0093】
(2)第2の変形例
上記の実施形態においては、ジョイスティック342を用いて8速へのジャンプ処理を実行する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。ジョイスティック342とは別に設けられた操作装置(たとえば、押しボタンスイッチ)を用いて8速へのジャンプ処理を実行するように、メインコントローラ400を構成してもよい。
【0094】
図10は、ジャンプ処理を実行する装置として押しボタンスイッチを用いる構成を表した図である。
図10に示されるように、コンソール340は、押しボタンスイッチ370を備える。押しボタンスイッチ370は、一例として、ジョイスティック342と作業機ロックスイッチ343との間に配置される。押しボタンスイッチ370は、ジョイスティック342のシフトレバー3421に設けられていてもよい。
【0095】
このような構成において、押しボタンスイッチ370が押下されると、メインコントローラ400は上述した8速へのジャンプ処理を実行する。
【0096】
また、押しボタンスイッチ362が自動復帰型のボタンの場合には、一例として、押しボタンスイッチ370の押下時間が閾値よりも長いことを条件にジャンプ処理が実行されるように、メインコントローラ400を構成してもよい。
【0097】
なお、押しボタンスイッチ370は、本発明における「第2の操作装置」および「押しボタンスイッチ」の一例である。
【0098】
(3)第3の変形例
上記の実施形態においては、操舵装置(図示せず)に対する入力装置として、ハンドル310のみを例に挙げて説明した。本変形例では、操舵装置に対する入力装置として、ハンドル310と、操舵用のステアリングレバーとを備える構成について説明する。
【0099】
このステアリングレバーは、典型的には、コンソール340に設けられる。また、ステアリングレバーの機能は、オペレータ操作によって、オンまたはオフのいずれかに切り替えることができる。
【0100】
メインコントローラ400は、ステアリングレバーに対するオペレータ操作に基づいて、ステアリングレバーから操舵装置が制御可能な状態(ステアリングレバーの機能がオン状態)になっていることを条件に、切替上限段を最高速度段に変更する制御(ジャンプ処理)を行う。
【0101】
このような構成においては、たとえば、
図8のステップS4の代わりに、「メインコントローラ400が、ステアリングレバーの操作で操舵装置を制御できる状態となっているか否かを判断する」との処理を行なってもよい。この場合、メインコントローラ400は、ステアリングレバーの操作で操舵装置を制御できる状態となっている場合に、処理をステップS5に進めればよい。
【0102】
今回開示された実施の形態は例示であって、上記内容のみに制限されるものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。