(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記演算部は、個々の前記DR期間において、当該DR期間中に取得した前記実績データに基づいて、当該DR期間の開始時刻から特定時刻までの削減電力量である中間実績削減電力量を算出し、当該中間実績削減電力量と前記特定時刻において達成しているべき削減電力量である中間目標削減電力量との差分が小さくなるように、前記特定時刻以後における前記調整タイプである前記対象機器の削減電力を変更した前記変更後DR実行データを生成することを特徴とする請求項1に記載のデマンドレスポンスシステム。
前記演算部は、前記中間実績削減電力量と前記中間目標削減電力量との差分が、次の前記実績データを取得するタイミングで相殺されているように、前記調整タイプである前記対象機器の削減電力を変更した前記変更後DR実行データを生成することを特徴とする請求項2に記載のデマンドレスポンスシステム。
前記演算部は、現在または将来の前記DR期間において、前記調整タイプである前記対象機器による削減電力を変更しても前記目標削減電力量の達成が不可能であると判定すると、前記DR計画を策定し直すことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のデマンドレスポンスシステム。
前記本体側通信部は、現在または将来の前記DR期間において前記対象機器がデマンドレスポンスを実行可能であるか否かを表す情報が含まれている実行可否データを受信し、
前記演算部は、前記実行可否データに基づいて、前記DR計画において現在または将来の前記DR期間にデマンドレスポンスを実行するように予定されていた1つ以上の前記調整タイプではない前記対象機器がデマンドレスポンスを実行不可能になったことを検出すると、前記DR計画を策定し直すことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のデマンドレスポンスシステム。
前記演算部は、個々の前記DR期間において、当該DR期間中に取得した前記実績データに基づいて、当該DR期間の開始時刻から特定時刻までの削減電力量である中間実績削減電力量を算出し、当該中間実績削減電力量と前記特定時刻において達成しているべき削減電力量である中間目標削減電力量とが所定の程度以上乖離している場合、前記DR計画を策定し直すことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のデマンドレスポンスシステム。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<<デマンドレスポンスシステムの構成例>>
本発明の実施形態に係るデマンドレスポンスシステムの構成の一例について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るデマンドレスポンスシステムの構成の一例を示すブロック図である。
【0019】
本発明の実施形態に係るデマンドレスポンスシステム1は、将来の特定の期間である計画期間において特定の大きさの系統電力を削減するという要請を受けて、当該計画期間に実行すべきデマンドレスポンスの計画(以下、「DR計画」という)を策定するものである。ただし、この計画期間は、連続した1または複数のDR期間で構成されており、要請された系統電力の削減が達成されたか否かは、この当該DR期間毎に判定される。具体的に、1つのDR期間がX時間、要請されている削減電力の大きさがYkWである場合、当該DR期間においてX×YkWhの電力量(以下、「目標削減電力量」という)を削減することができれば、要請された系統電力の削減が達成されたことになる(後述の
図4(a)に記載の具体例参照)。
【0020】
図1に示すように、デマンドレスポンスシステム1は、データベース11と、演算部12と、本体側通信部13を備えている。なお、デマンドレスポンスシステム1は、商用電力系統から需要家D1〜D3に供給される電力量を削減するために、需要家D1〜D3が有する機器(以下、「対象機器」という)41〜43を制御してデマンドレスポンスを実行させるものである。また、需要家D1〜D3は、デマンドレスポンスシステム1によってデマンドレスポンスの実行を要請され得る需要家の一部を代表させて例示したものであり、実際には多数の需要家が備える対象機器がデマンドレスポンスを実行し得る。
【0021】
データベース11は、例えば、ハードディスクなどの大容量のデータを記録可能な記録装置等を備える。データベース11は、演算部12による演算に必要なデータを記録している。具体的に、データベース11は、複数の対象機器41〜43のそれぞれにおけるデマンドレスポンスの実行条件を表す情報が含まれる対象機器データを記録しているとともに、需要家D1〜D3のそれぞれにおける系統電力の消費状況が含まれる実績データを記録している。
【0022】
演算部12は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などの演算装置及び半導体メモリなどの記憶装置等を備える。演算部12は、対象機器データに基づいて、DR期間のそれぞれにおける目標削減電力量を達成するためのDR計画を策定する。また、演算部12は、策定したDR計画に基づいて、対象機器41〜43にデマンドレスポンスを実行させるためのDR実行データを生成する。なお、DR実行データは、対象機器41〜43別または需要家D1〜D3別に生成される。
【0023】
本体側通信部13は、例えば、インターネットなどの所定の通信網を介して、需要家D1〜D3のそれぞれとデータを送受信する通信装置等を備える。特に、本体側通信部13は、演算部12が生成したDR実行データを、需要家D1〜D3のそれぞれに送信する。また、本体側通信部13は、需要家D1〜D3のそれぞれから送信される実績データを受信する。
【0024】
実績データは、デマンドレスポンスの実行時だけでなく、デマンドレスポンスを実行していない時も送信されており、本体側通信部13によって受信されてデータベース11に随時記録される。演算部12は、デマンドレスポンスが実行されていない時(以下、「通常時」という)の実績データに基づいて、通常時に消費される電力量であるベースラインを算出する。このベースラインと、デマンドレスポンスの実行時に消費された電力量との差分が、デマンドレスポンスによって削減された電力量になる。
【0025】
ベースラインの算出方法は、需要家D1〜D3が通常時に消費する電力量の算出方法として妥当であれば、どのような算出方法であってもよい。例えば、過去数日分の、デマンドレスポンスを実行する時間帯と同じ時間帯に消費された系統電力の平均値をベースラインとする方法や、デマンドレスポンスを実行する直前の数時間で消費された系統電力の平均値をベースラインとする方法が知られている。また、ベースラインは、原則として個々の需要家D1〜D3毎に作成されるが、例えば目標削減電力量が達成できたか否かを確認するなどの目的のために、複数の需要家D1〜D3の合計分を作成してもよい。
【0026】
需要家D1は、需要家側通信部21と、電力管理部31と、発電装置41を備える。需要家D2は、需要家側通信部22と、電力管理部32と、蓄電池42を備える。需要家D3は、需要家側通信部23と、電力管理部33と、電力消費機器43を備える。
【0027】
需要家側通信部21〜23は、例えば、インターネットなどの所定の通信網を介して、本体側通信部13とデータを送受信する通信装置等を備える。特に、需要家側通信部21〜23は、デマンドレスポンスシステム1に対して、単位時間毎(例えば、10分毎)に実績データを送信する。また、需要家側通信部21〜23は、デマンドレスポンスシステム1から送信されるDR実行データを受信する。
【0028】
電力管理部31〜33は、需要家D1〜D3が消費した系統電力を測定する測定部311〜331と、対象機器を制御してデマンドレスポンスを実行する制御部312〜332を備える。測定部311〜331は、例えば、スマートメータなどの単位時間毎(例えば、1分毎)に需要家D1〜D3が消費した系統電力を測定可能な機器を備えており、この測定結果を実績データとして生成する。制御部312〜332は、例えば、CPUなどの演算装置及び半導体メモリなどの記憶装置等を備える。
【0029】
発電装置41は、例えば、燃料電池やエンジン発電機などの発電を行う電気機器(特に、発電する電力量を制御可能な電気機器)や、発電を行う電機機器と当該電気機器の廃熱を利用する機器とを備えたコージェネレーションシステムなどで構成される。また、蓄電池42は、例えば、リチウムイオン電池などの充電及び放電を行う電気機器で構成される。また、電力消費機器43は、例えば、エアコンなどの電力を消費する電気機器で構成される。
【0030】
制御部312は、発電装置41が発電する電力量を制御する。特に、制御部312は、需要家側通信部21が受信するDR実行データに基づいて、発電装置41が発電する電力量を増大させる制御(発電装置41の発電を開始させる制御も含まれる)を行うことで、デマンドレスポンスを実行する。
【0031】
制御部322は、蓄電池42が放電する電力量を制御する。特に、制御部322は、需要家側通信部22が受信するDR実行データに基づいて、蓄電池42が放電する電力量を増大させる制御(蓄電池42の放電を開始させる制御も含まれる)を行うことで、デマンドレスポンスを実行する。なお、制御部322が、DR期間において蓄電池42を放電させて十分な電力量を供給できるようにするために、当該DR期間が到来する前に、蓄電池42を充電させるように制御してもよい。
【0032】
制御部332は、電力消費機器43が消費する電力量を制御する。特に、制御部332は、需要家側通信部23が受信するDR実行データに基づいて、電力消費機器43が消費する電力量を減少させる制御(電力消費機器43を停止させる制御も含まれる)を行うことで、デマンドレスポンスを実行する。
【0033】
なお、制御部312〜332は、発電装置41、蓄電池42及び電力消費機器43のそれぞれに対して設けられる専用の装置であってもよいが、複数の電気機器をまとめて制御する装置であってもよい。例えば、制御部311〜331が、HEMS(Home Energy Management System)やBEMS(Building Energy Management System)の一部であってもよい。また、
図1では特に図示していないが、需要家D1〜D3は、対象機器41〜43の他に、当然に電力消費機器などの他の機器を備えている。
【0034】
また、
図1では、デマンドレスポンスシステム1が、データベース11、演算部12及び本体側通信部13で構成される場合について例示しているが、需要家D1〜D3に設けられている需要家側通信部21〜23、電力管理部31〜33、発電装置41、蓄電池42及び電力消費機器43の一部または全部を、デマンドレスポンスシステム1の一部として解釈してもよい。
【0035】
また、
図1では、1人の需要家D1〜D3が、対象機器41〜43を1つだけ有する場合について例示しているが、1人の需要家が複数の対象機器を有していてもよい。この場合、1つの制御部で1つの対象機器を制御してもよいし、1つの制御部で複数の対象機器を制御してもよい。
【0036】
<<デマンドレスポンスシステムの動作例>>
次に、本発明の実施形態に係るデマンドレスポンスシステム1の動作の一例について図面を参照して説明する。
図2は、本発明の実施形態に係るデマンドレスポンスシステムの動作の一例を示すフローチャートである。
【0037】
デマンドレスポンスシステム1は、電力会社等からのデマンドレスポンスの実行要請を受け付けることで、
図2のフローチャートに示す動作を開始する。このとき、例えば、電力会社等から送信されるデマンドレスポンス実行要請データを本体側通信部13が受信してデータベース11が記録したり、デマンドレスポンスの実行要請を受けたデマンドレスポンスシステム1の利用者(例えば、電気事業者やアグリゲータ)がデマンドレスポンス実行要請データを作成してデータベース11に記録させたりすることにより、デマンドレスポンスシステム1がデマンドレスポンスの実行要請を受け付ける。デマンドレスポンス実行要請データには、デマンドレスポンスを実行すべき日時、削減すべき電力の大きさなどが含まれる。
【0038】
図2に示すように、最初に、演算部12が、データベース11に記録されている対象機器データ及びデマンドレスポンス実行要請データに基づいて、DR計画を策定する(ステップ#1)。
【0039】
ここで、対象機器データの一例について、図面を参照して説明する。
図3は、対象機器データの一例を示す図である。
図3に示すように、対象機器データには、複数の対象機器T1〜T3のそれぞれにおけるデマンドレスポンスの実行条件を表す情報が含まれている。例えば、対象機器データには、「DR対応可能日」、「DR対応可能時間」、「機種」、「タイプ」、「定格容量」、「DR容量」、「運転時DR創出時間」、「停止時DR創出時間」、「継続可能時間」、「最低負荷運転」、「再起動遅延時間」、「SOC下限」及び「SOC上限」が含まれている。なお、
図3では、代表的な対象機器T1〜T3のみ例示しているが、これ以外の対象機器の情報も対象機器データに含まれている。
【0040】
「DR対応可能日」は、デマンドレスポンスの実行が可能な日であり、例えば曜日や日付などである。「DR対応可能時間」は、デマンドレスポンスの実行が可能な時間帯である。「機種」は、対象機器の機種であり、例えば発電装置、蓄電池、電力消費機器などである。「タイプ」は、上記「機種」にも関連しており、デマンドレスポンスを実行するDR期間(例えば、30分)中における削減電力の変更が可能な調整タイプと、それ以外のベースタイプがある。「定格容量」は、対象機器の定格容量である。「DR容量」は、デマンドレスポンスの実行時に創出可能な容量である。「運転時DR創出時間」は、対象機器が運転中である場合において必要な削減電力を創出できるようになるまでに必要な時間である。「停止時DR創出時間」は、対象機器が停止中である場合において必要な削減電力を創出できるようになるまでに必要な時間である。「継続可能時間」は、デマンドレスポンスを継続して実行することができる時間である。「最低負荷運転」は、対象機器の出力の下限である。「再起動遅延時間」は、調整タイプの対象機器において、デマンドレスポンスの実行を停止した後、再びデマンドレスポンスの実行を開始するまでに必要な時間である。「SOC下限」とは、蓄電池において放電を停止する充電状態(SOC:State Of Charge)である。「SOC上限」とは、蓄電池において充電を停止する充電状態である。なお、
図3では、ベースタイプの対象機器について、デマンドレスポンスの実行を停止した場合は再起動しないことを前提として再起動遅延時間を設定していないが、ベースタイプであっても再起動に支障がない対象機器には再起動遅延時間を設定してもよい。
【0041】
図4は、演算部によるDR計画の策定例を示す図である。
図4(a)は、デマンドレスポンス実行要請データを表した図である。
図4(b)は、
図4(a)に示すデマンドレスポンス実行要請データと対象機器データに基づいて選択された、デマンドレスポンスの実行を要請する候補となる需要家を表した図である。
図4(c)は、
図4(b)の選択結果に基づいて策定したDR計画の一例を示す図である。
【0042】
図4(a)に例示するデマンドレスポンス実行要請データは、DR計画が策定される14時から18時までの計画期間中に継続して400kWの電力を削減することを要請するものである。ただし、デマンドレスポンスの実行によって要請された電力が削減されたか否かは、毎時0分と30分のそれぞれから開始される30分間のDR期間毎に判定される。そのため、DR期間のそれぞれにおいて、400kW×0.5時間=200kWhの目標削減電力量を削減することができれば、デマンドレスポンスの実行によって要請された電力が削減されたことになる。ただし、デマンドレスポンスの成果は、通常時の実績データに基づいて算出されるベースラインを下回った分の電力量として計算される。
【0043】
演算部12は、
図3に例示する対象機器データに基づいて、
図4(a)に例示する計画期間においてデマンドレスポンスを実行可能な対象機器を検出する。なお、
図4(b)に示す対象機器T11〜T13,T21,T22,T31は、
図3では明示していない対象機器である。
【0044】
このとき、演算部12は、
図4(b)に示すように、ベースタイプと調整タイプのそれぞれの対象機器を検出するとともに、DR計画に採用する際の優先順位もタイプ別に算出する。この優先順位は、一例として、要請された削減電力の達成を容易にする需要家であるほど高くなるように算出される。例えば、過去のデマンドレスポンスの実行時に要請した削減電力を達成できた割合が大きい(即ち、成功率が高い)需要家ほど、優先順位が高くなるように算出してもよい。また例えば、削減電力が大きい需要家(DR容量が大きい需要家、SOCが大きい蓄電池を有する需要家)ほど、優先順位が高くなるように算出してもよい。
【0045】
以下に、ベースタイプと調整タイプの各対象機器の優先順位の一算出例について、具体的に説明する。下記の式(1)により算出されるDR価値V
DRの大きい順に優先順位を決定する。式(1)の右辺のVp(xp)は、対象機器毎に予め契約等で決められたデマンドレスポンスによって削減される単位電力量に対する対価(xp)の多寡に応じて0〜1の間で変化する価格指標値であり、下記の式(2)で算出される。また、同右辺のVr(xr)は、需要家毎に消費電力量のバラツキの程度(xr)の多寡に応じて0〜1の間で変化する信頼度指標値であり、下記の式(3)で算出される。なお、式(1)の右辺において、Vp(xp)は、正の実数nを冪指数とする冪演算により、重み付けが施されている。冪演算による重み付けは、式(1)の右辺においてVr(xr)に対して行ってもよい。下記の式(1)の場合、0<n<1では、価格指標値Vp(xp)が信頼度指標値Vr(xr)より低めに評価され、n>1では、価格指標値Vp(xp)が信頼度指標値Vr(xr)より高めに評価される。
【0046】
需要家毎の消費電力量のバラツキの程度(xr)は、過去の一定期間(例えば、1〜12ヶ月等)の算出対象日における各日の1以上の所定の算出対象時間帯(例えば、午前0時〜午後12時)の所定の算出時間単位(例えば、DR期間)毎の系統電力の消費電力の実績値の相対平均二乗誤差(RRMSE)により与えられる。具体的には、a)上記一定期間における上記時間単位毎の実績値の平均値と各日の実績値の上記時間単位毎の誤差を算出する。b)上記a)で算出した、全ての算出対象日の上記時間単位毎の誤差の二乗の総和を、算出対象となる全時間単位数で除し、平均二乗誤差を算出する。c)全ての算出対象日の算出対象時間帯における上記時間単位毎の実績値の平均値 (実績平均値)を算出する。d)上記b)で算出した平均二乗誤差の平方根を、上記c)で算出した実績平均値で除すことで、上記相対平均二乗誤差が算出される。
【0048】
本実施形態では、価格指標値Vp(xp)及び信頼度指標値Vr(xr)は、一例として、それぞれ下記の式(2)及び式(3)に示すロジスティック関数で表される。式(2)と式(3)の左辺の値は何れも、変数xp、xrが小さいほど1に近付き、大きいほど0に近付く。各式のh
Pとh
Rは、変数xp、xrの変動範囲内でVp(xp)とVr(xr)が1を超えないように調整するパラメータであり、k
P、P
0、k
R、R
0は、Vp(xp)とVr(xr)の勾配の程度及び位置を調整するパラメータであり、実情に合わせて調整される。
【0050】
ここで、上記優先順位の算出法において、対象機器の運転状態(現在運転中か否か、算出時点までの発停回数、等)に応じて、算出されたDR価値V
DRを、優先順位を決定する候補から除外するようにしてもよい。なお、当該運転状態は、
図3に示す対象機器データの実行条件に含めるようにしてもよい。
【0051】
また、優先順位の算出法は、上記算出例に限定されるものではない。例えば、信頼度指標値Vr(xr)の変数であるxrを算出する際の算出対象時間帯を複数の時間帯、或いは、DR期間に分割して行い、当該優先順位を該複数の時間帯別またはDR期間別に算出してもよい。この場合、DR計画の策定対象となるDR期間に対応した優先順位を使用することになる。
【0052】
演算部12は、
図4(c)に示すように、DR期間において調整タイプを1つ以上含む対象機器がデマンドレスポンスを実行するように、DR計画を策定する。具体的には、例えば、各DR期間の削減電力に対して、当該削減電力以上とならないように、ベースタイプの対象機器を優先順位の高い順に割り当て、当該削減電力に満たない部分に対して、調整タイプの対象機器を優先順位の高い順に割り当てる。例えば、
図4(c)では、8つのDR期間のそれぞれにおいて、調整タイプの対象機器によって100kWの削減電力を創出するようにDR計画が策定される場合を例示している。また、演算部12は、優先順位が高い需要家から順番に選択してDR計画を策定する。なお、
図4(c)では、数個の対象機器のみがデマンドレスポンスを実行するDR計画を例示しているが、数十個や数百個などの多数の対象機器がデマンドレスポンスを実行するようなDR計画を策定することもあり得る。
【0053】
図2に示すように、演算部12は、DR計画を策定すると、当該DR計画に基づいて、対象機器がデマンドレスポンスを実行するように制御する(ステップ#2)。具体的には、演算部12が、対象機器にデマンドレスポンスを実行させるためのDR実行データを生成し、本体側通信部13が当該DR実行データを送信する。なお、制御部312〜332や対象機器41〜43(
図1参照)の制御方法によって、DR実行データを頻繁に生成して送信する(例えば、1分毎)ことが必要になる場合もあり得るし、DR期間の開始以前に1度だけ送信すれば足りる場合もあり得る。ただし、いずれの場合であっても、例えばコージェネレーションシステムなどの発電装置のように、運転時DR創出時間または停止時DR創出時間が長い対象機器については、これらの創出時間が必要であることを見込んで、DR期間の開始時点よりも少なくとも当該創出時間だけ早い時点において、DR実行データを送信しておく必要がある。
【0054】
DR期間が開始すると、本体側通信部13が、実績データ及び実行可否データを受信する(ステップ#3)。実行可否データは、現在または将来のDR期間において対象機器がデマンドレスポンスを実行可能であるか否かを表す情報が含まれているデータであって、現在の対象機器の状態(運転中、停止中、故障中など)を表す情報や、将来の対象機器の状態(需要家がデマンドレスポンスの実行を拒否した)を表す情報が含まれ得る。また、実行可否データには、蓄電池42のSOCの情報なども含まれ得る。
【0055】
計画期間がまだ終了しない場合(ステップ#4、NO)、演算部12は、現在策定しているDR計画の再策定が必要か否かを判定する(ステップ#5)。具体的に、演算部12は、調整タイプである対象機器による削減電力を変更しても目標削減電力量の達成が不可能である場合、DR計画の再策定が必要と判定して(ステップ#5、YES)、DR計画を再策定する(ステップ#6)。なお、DR計画の再策定については、後述する<DR計画の再策定>において説明する。
【0056】
次に、演算部12は、調整タイプである対象機器による削減電力の変更が必要か否かを判定する(ステップ#7)。演算部12は、調整タイプである対象機器による削減電力の変更が必要であると判定すると(ステップ#7、YES)、少なくとも1つの調整タイプである対象機器による削減電力を変更するための変更後DR実行データを生成する(ステップ#8)。
【0057】
ここで、ステップ#7及び#8における演算部12の動作について、図面を参照しつつ具体例を挙げて説明する。
図5は、調整タイプである対象機器による削減電力の変更方法の一例を示す図である。なお、
図5では、30分であるDR期間の目標削減電力量がW
DRkWhであり、DR期間が開始してから10分後、20分後、30分後のそれぞれにおいて実績データを受信する場合を例示している。
【0058】
図5において、DR期間中の特定時刻において達成しているべき削減電力量である中間目標削減電力量を、白塗りの四角(□)で示している。この中間目標削減電力量は、一定の削減電力で、DR期間の終了時点である30分後にちょうど目標削減電力量であるW
DRkWhを達成するという条件で算出され、10分後の中間目標削減電力量はW
DR×10/30=W
DR/3kWh、20分後の中間目標削減電力量はW
DR×20/30=2W
DR/3kWhになる。
【0059】
図5中の白塗りの四角(□)を結ぶ破線は、DR計画通りに電力が削減された場合の削減電力量を示している。この場合の削減電力は、当該破線の傾きに相当し、2W
DR(
図4の例では400kw)である。演算部12は、削減電力の合計が2W
DRになるように、DR計画を策定するとともにDR実行データを生成する。ただし、デマンドレスポンスの成果は、ベースラインを下回った電力として計算されるから、DR計画の通りの削減電力がそのままデマンドレスポンスの成果になるとは限らない。例えば、需要家が普段よりも系統電力を多く消費すれば、デマンドレスポンスの成果は減殺され、DR実行データによって指示した削減電力よりも当該成果の方が小さくなる。また例えば、需要家が普段よりも系統電力を少なく消費すれば、デマンドレスポンスの成果は過剰になり、DR実行データによって指示した削減電力よりも当該成果の方が大きくなる。
【0060】
そこで、演算部12は、実績データに基づいて、DR期間の開始時刻から特定時刻(10分後、20分後)までの削減電力量である中間実績削減電力量を算出する(図中の黒塗りの丸:●)。そして、演算部12は、目標削減電力量と中間削減電力量との差分が小さくなるように、特定時刻以後における調整タイプである対象機器の削減電力を変更する変更後DR実行データを生成する。
【0061】
例えば、
図5に示すように、10分後における目標削減電力量がW
DR/3、10分後における中間実績削減電力量がw
10である場合、演算部12は、20分後の時点で差分W
DR/3−w
10が相殺されているように、調整タイプである対象機器の削減電力を変更する。具体的に、演算部12は、調整タイプである対象機器の削減電力を、DR実行データによって指示した削減電力(以下、「基準削減電力」という)よりも、(W
DR/3−w
10)×60/10kWだけ増大させる。この削減電力の変更は、デマンドレスポンスを実行している調整タイプである対象機器の少なくとも1つの削減電力を増大させることによって実現する。なお、
図5では、中間目標削減電力量よりも中間実績削減電力量が小さい場合を例示しているが、中間目標削減電力量よりも中間実績削減電力量が大きい場合、過度なインセンティブの支払いを避ける等のために、調整タイプである対象機器の削減電力を減少させる。
【0062】
そして、
図5に例示するように、演算部12は、10分後に生じた差分W
DR/3−w
10が、20分後の時点で相殺されていれば、変更後DR実行データによって調整タイプである対象機器に指示する削減電力を、基準削減電力に戻す。一方、20分後の時点で差分が相殺しきれていない場合は、当該差分が30分後に相殺されているように、基準削減電力よりも大きい削減電力を指示する変更後DR実行データを生成する。また、20分後の時点で差分が相殺されているが、中間目標削減電力量よりも中間実績削減電力量が大きくなって負の差分が生じている場合は、当該差分が30分後に相殺されているように、基準削減電力よりも小さい削減電力を指示する変更後DR実行データを生成する。
【0063】
下記式(4)は、
図5に例示した調整タイプである対象機器の削減電力の変更方法を一般化したものである。P
Aは変更後の調整タイプである対象機器の削減電力(kW)、T
Iは実績データの受信間隔(分)、w
NはDR期間の開始時刻から特定時刻までの中間実績削減電力量(kWh)、W
N+1はDR期間の開始時刻から時間T
N+T
Iが経過した時点における中間目標削減電力量(kWh)、P
Bはベースタイプの対象機器の削減電力(kW)である。また、DR期間中において、演算部12は、実績データを受信する毎に、中間実績削減電力量を算出し、調整タイプである対象機器の削減電力を計算する。
【0065】
また、調整タイプである対象機器の削減電力の増減量は、例えば下記式(5)で算出することができる。下記式(5)において、ΔP
Aは調整タイプである対象機器の削減電力の増減量(kW)、T
DRはDR期間の長さ(分)、T
Iは実績データの受信間隔(分)、W
DRは目標削減電力量(kWh)、w
NはDR期間の開始時刻から特定時刻までの中間実績削減電力量(kWh)、T
NはDR期間の開始時刻から特定時刻までの時間(分)である。ただし、ΔP
Aは、調整タイプである対象機器の基準削減電力W
DR×60/T
DR−P
Bを基準とした増減量であり、変動後の調整タイプである対象機器の削減電力(kW)は、P
A=W
DR×60/T
DR−P
B+ΔP
Aである。なお、P
A=W
DR×60/T
DR−P
B+ΔP
A、W
N+1=(T
N+T
I)×W
DR/T
DRであり、これらを上記式(4)に代入すれば、下記式(5)が得られる。即ち、上記式(4)及び下記式(5)は、同じ計算式を変形したものに過ぎない。
【0067】
そして、演算部12は、再びデマンドレスポンスの実行制御を行う(ステップ#2)。このとき、ステップ#8において演算部12が変更後DR実行データを生成していれば、本体側通信部13が変更後DR実行データを送信して、調整タイプである対象機器の削減電力を変更する。また、
図4(c)の16時のように、DR計画においてデマンドレスポンスを実行させる対象機器を切り替えることになっている場合は、上述したステップ#2の説明と同様に、演算部12が切り替え後の対象機器にデマンドレスポンスを実行させるためのDR実行データを生成し、本体側通信部13が当該DR実行データを送信する。そして、以上の動作(ステップ#2〜#8)を、計画期間が終了するまで(ステップ#4、YES)、繰り返し行う。
【0068】
以上の通り、本発明の実施形態に係るデマンドレスポンスシステム1は、DR期間中に、調整タイプである対象機器による削減電力を変更することで、当該DR期間の目標削減電力量をより確実に達成することができる。そのため、特許文献1で提案されているデマンドレスポンスシステムのように、常に補完計画を策定して必要以上に系統電力を削減する必要がない。したがって、このデマンドレスポンスシステム1によれば、要請通りに系統電力を削減することが可能になる。
【0069】
<DR計画の再策定>
図2のステップ#6における、演算部12によるDR計画の再策定について、図面を参照しつつ具体例を挙げて説明する。
図6及び
図7のそれぞれは、DR計画の再策定の一例を示す図である。なお、
図6及び
図7のそれぞれは、
図4(c)に示したDR計画が策定されている場合における、DR計画の再策定の一例を示した図である。また、
図6(a)及び
図7(a)は、再策定前のDR計画に対して削減電力の不足分(図中のハッチング領域)を書き加えた図であり、
図6(b)及び
図7(b)は、再策定後のDR計画を示した図である。
【0070】
図6(a)に示す例は、15時から16時までデマンドレスポンスを実行する予定であった、ベースタイプである対象機器T11が、この時間帯にデマンドレスポンスを実行不可能になったことで、削減電力の不足分が生じた場合である。例えば、発電装置である対象機器T11が故障等で発電できなくなった場合や、対象機器T11を有する需要家が15時から16時までのデマンドレスポンスの実行を予め拒否した場合などである。
【0071】
この例のように、演算部12は、現在または将来のDR期間にデマンドレスポンスを実行するように予定されていた1つ以上のベースタイプの対象機器がデマンドレスポンスを実行不可能になったことを検出すると、DR計画の再策定が必要であると判定し(ステップ#5、YES)、DR計画を再策定する(ステップ#6)。具体的には、
図6(b)に示すように、15時から16時までのDR期間において、対象機器T11の代わりに、対象機器T12及びT13にデマンドレスポンスを実行させる。
【0072】
ここで、対象機器T11がデマンドレスポンスを実行不可能になったことが、15時よりも十分前に判明していれば、再策定するDR計画における15時から開始するDR期間に、運転時DR創出時間または停止時DR創出時間が長い対象機器であっても組み込まれ得る。一方、対象機器T11がデマンドレスポンスを実行不可能になったことが、15時の直前や15時を過ぎてから判明した場合、再策定するDR計画における15時から開始するDR期間には、運転時DR創出時間または停止時DR創出時間が短い対象機器が優先的に組み込まれ得る。
【0073】
また、
図7(a)に示す例は、15時から16時までの間に、一部の需要家の消費電力がベースラインよりも非常に大きくなるなどして、デマンドレスポンスの効果が大きく減殺された場合である。通常、このような場合は、調整タイプである対象機器T21による削減電力を増大させることで目標削減電力量を達成する(
図5参照)。しかし、
図7(a)に示す例は、中間実績削減電力量と中間目標削減電力量とが所定の程度以上乖離している場合である。例えば、中間目標削減電力量が、目標削減電力量から10%以上乖離している場合や、上記式(5)のΔP
Aの絶対値が、目標削減電力量を達成するために必要な削減電力(
図7の例では400kW)の10%以上になる場合である。
【0074】
この例のように、演算部12は、中間実績削減電力量と中間目標削減電力量とが所定の程度以上乖離している場合、DR計画の再策定が必要であると判定し(ステップ#5、YES)、DR計画を再策定する(ステップ#6)。具体的には、
図7(b)に示すように、15時から16時までのDR期間において、さらに対象機器T13にデマンドレスポンスを実行させる。なお、
図7に示す例とは反対に、一部の需要家の消費電力がベースラインよりも非常に小さくなるなどして、デマンドレスポンスの効果が過剰になり、削減電力の余剰分が発生しており、中間削減電力量と中間目標削減電力量とが所定の程度以上乖離している場合、演算部12が、過度なインセンティブの支払いを避ける等のために上記と同様にDR計画を再策定する。
【0075】
以上のように、演算部12がDR計画を再策定することで、調整タイプである対象機器による削減電力を変更しても目標削減電力量が達成できない場合であっても、DR計画を策定し直すことで、目標削減電力量を達成可能な状態にすることができる。
【0076】
<<変形等>>
[1]
図5及び上記式(4)及び(5)は、実績データの受信間隔T
Iを基準にして、特定時刻に実績データを受信して中間実績削減電力量と中間目標削減電力量との差分が生じていることが判明した場合、次の実績データを受信するまでの間(時間T
I)に当該差分が相殺されるように調整タイプである対象機器の削減電力を変動させる場合の例であるが、当該変動を生じさせる時間の長さは任意であり、必ずしも時間T
Iにする必要はない。
【0077】
ただし、調整タイプである対象機器の削減電力を変動させる時間をT
Iよりも短くすると、実績データを受信して当該変動の効果を確認する前に、削減電力量の不足分または過剰分が生じることを防止するため、調整タイプである対象機器の削減電力を変動させる(例えば、変動させた削減電力を元に戻す)必要が生じ得る。一方、調整タイプである対象機器の削減電力を変動させる時間をT
Iよりも長くすると、実績データを受信した後、調整タイプである対象機器の削減電力を変動させる(例えば、変動させた削減電力を元に戻す)必要があることを分かっていながら、変動させずに放置することになり得る。したがって、これらの問題を避ける観点から、実績データを受信する度に、演算部12が、調整タイプである対象機器の削減電力の変動の要否を判定すると、好ましい。
【0078】
[2]
図2において、DR計画の策定後デマンドレスポンスの実行制御を開始するまで(ステップ#1と#2の間)において、例えばベースラインの算出のために、本体側通信部13が実績データを受信してもよい。
【0079】
また、DR計画の策定後デマンドレスポンスの実行制御を開始するまで(ステップ#1と#2の間)において、デマンドレスポンスを実行する予定の対象機器が故障したり、需要家がデマンドレスポンスの実行を拒否したりして、デマンドレスポンスを実行できなくなることが想定される。そこで、この期間中に、演算部12が、DR計画の再策定が必要か否かを判定し、必要に応じてDR計画の再策定を行ってもよい。即ち、
図2のステップ#1と#2の間において、ステップ#5及び#6を行ってもよい。
【0080】
[3] 上述の実施形態では、中間目標削減電力量よりも中間実績削減電力量が大きい場合、過度なインセンティブの支払いを避ける等のために調整タイプである対象機器の削減電力を減少させると説明した。しかし、この場合、少なくともデマンドレスポンスの要請は満たしているのであるから調整タイプである対象機器の削減電力を変更しなくてもよい。
【0081】
また、上述の実施形態では、中間削減電力量と中間目標削減電力量とが所定の程度以上乖離している場合、演算部12が、過度なインセンティブの支払いを避ける等のために上記と同様にDR計画を再策定すると説明した。しかし、この場合、少なくともデマンドレスポンスの要請は満たしているのであるからDR計画を再策定しなくてもよい。