【文献】
Wen Gao et al.,Selective Antitumor Activity of Ibrutinib in EGFR-Mutant Non-Small Cell Lung Cancer Cells,Journal of the National Cancer Institute,2014年,Vol.106, Issue 9,p.1-4
【文献】
Lesley A. Mathews Griner,High-throughput combinatorial screening identifies drugs that cooperate with ibrutinib to kill activated B-cell-like diffuse large B-cell lymphoma cells,PNAS,2014年,Vol.111, No.6,p.2349-2354
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(3’R,4’S,5’R)−N−[(3R,6S)−6−カルバモイルテトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル]−6”−クロロ−4’−(2−クロロ−3−フルオロピリジン−4−イル)−4,4−ジメチル−2”−オキソ−1”,2”−ジヒドロジスピロ[シクロヘキサン−1,2’−ピロリジン−3’,3”−インドール]−5’−カルボキサミドまたはその薬学的に許容される塩とイブルチニブまたはその薬学的に許容される塩が、組み合わせて投与されることを特徴とする血液がん治療のための医薬。
(3’R,4’S,5’R)−N−[(3R,6S)−6−カルバモイルテトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル]−6”−クロロ−4’−(2−クロロ−3−フルオロピリジン−4−イル)−4,4−ジメチル−2”−オキソ−1”,2”−ジヒドロジスピロ[シクロヘキサン−1,2’−ピロリジン−3’,3”−インドール]−5’−カルボキサミドまたはその薬学的に許容される塩とイブルチニブまたはその薬学的に許容される塩が、それぞれ異なる製剤の有効成分として含有され、同時に、又は、異なる時間に投与されることを特徴とする請求項1に記載の医薬。
(3’R,4’S,5’R)−N−[(3R,6S)−6−カルバモイルテトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル]−6”−クロロ−4’−(2−クロロ−3−フルオロピリジン−4−イル)−4,4−ジメチル−2”−オキソ−1”,2”−ジヒドロジスピロ[シクロヘキサン−1,2’−ピロリジン−3’,3”−インドール]−5’−カルボキサミドまたはその薬学的に許容される塩とイブルチニブまたはその薬学的に許容される塩が、単一製剤中に含有されていることを特徴とする請求項1に記載の医薬。
(3’R,4’S,5’R)−N−[(3R,6S)−6−カルバモイルテトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル]−6”−クロロ−4’−(2−クロロ−3−フルオロピリジン−4−イル)−4,4−ジメチル−2”−オキソ−1”,2”−ジヒドロジスピロ[シクロヘキサン−1,2’−ピロリジン−3’,3”−インドール]−5’−カルボキサミドまたはその薬学的に許容される塩とイブルチニブまたはその薬学的に許容される塩を含むキット製剤であることを特徴とする請求項1に記載の医薬。
上記(3’R,4’S,5’R)−N−[(3R,6S)−6−カルバモイルテトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル]−6”−クロロ−4’−(2−クロロ−3−フルオロピリジン−4−イル)−4,4−ジメチル−2”−オキソ−1”,2”−ジヒドロジスピロ[シクロヘキサン−1,2’−ピロリジン−3’,3”−インドール]−5’−カルボキサミドの塩がp−トルエンスルホン酸塩である請求項1〜4のいずれか1項に記載の医薬。
血液がんが、慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、ハイリスクのCLL、非CLL/SLLリンパ腫、濾胞性リンパ腫(FL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、多発性骨髄腫(MM)、辺縁帯リンパ腫、バーキットリンパ腫、非バーキット型高悪性度B細胞リンパ腫、節外性辺縁帯B細胞リンパ腫、急性または慢性の骨髄性(あるいは骨髄球性)白血病、骨髄異形成症候群または急性リンパ芽球性白血病である請求項1〜5のいずれか1項に記載の医薬。
【背景技術】
【0002】
細胞のがん化を抑制する重要な因子の1つとして、p53が知られている。p53は、細胞周期や細胞のアポトーシスに関与する遺伝子の発現を、様々なストレスに応答して誘導する転写因子である。p53は、この転写調節機能により細胞のがん化を抑制すると考えられており、実際、ヒトのがんの約半数にp53遺伝子の欠失または変異が観察されている。
【0003】
一方、p53が正常であるにもかかわらずがん化している細胞のがん化の要因の1つとして、E3ユビキチンリガーゼの1種であるMDM2(murine double minute 2)の過剰発現が知られている。MDM2は、p53によって発現が誘導される蛋白質である。MDM2は、p53の転写活性ドメインに結合してp53の転写活性を低下させるとともに、p53を核外に排出し、さらには、p53に対するユビキチン化リガーゼとして作用してp53の分解を媒介することにより、p53を負に制御している。このため、MDM2が過剰発現している細胞では、p53機能の不活化および分解が促進され、がん化が引き起こされると考えられている(非特許文献1)。
【0004】
このようなMDM2の機能に着目し、MDM2によるp53の機能抑制を阻害する物質を抗腫瘍剤の候補とするアプローチが多数なされてきた。MDM2とp53との結合部位を標的としたMDM2阻害剤としては、スピロオキシインドール誘導体(特許文献1〜15、非特許文献1〜3)、インドール誘導体(特許文献16)、ピロリジン−2−カルボキサミド誘導体(特許文献17)、ピロリジノン誘導体(特許文献18)、イソインドリノン誘導体等(特許文献19、非特許文献4)、ジスピロピロリジン化合物(特許文献20)等が報告されている。
【0005】
ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)は、非受容体型チロシンキナーゼのTecファミリーに属し、Tリンパ球とナチュラルキラー細胞以外のすべての造血系細胞で発現する重要なシグナル伝達酵素である(非特許文献5)。BTKは、細胞表面B細胞受容体(BCR)刺激を下流の細胞内の応答に結びつけるB細胞シグナル伝達経路で本質的な役割を果たす。BTKは、B細胞の発生、活性化、シグナル伝達、および生存の重要な制御因子である。
【0006】
イブルチニブ(PCI-32765)はBTK阻害作用を有する低分子化合物であり、B細胞系腫瘍および自己免疫疾患に有効とされる(特許文献21、特許文献22、非特許文献6、7)。欧米においてマントル細胞リンパ腫(MCL)および慢性リンパ性白血病(CLL)を適応とする抗腫瘍薬として用いられており、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)および多発性骨髄腫(MM)への適応についても開発が進められている(非特許文献7、8)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2006/091646
【特許文献2】WO2006/136606
【特許文献3】WO2007/104664
【特許文献4】WO2007/104714
【特許文献5】WO2008/034736
【特許文献6】WO2008/036168
【特許文献7】WO2008/055812
【特許文献8】WO2008/141917
【特許文献9】WO2008/141975
【特許文献10】WO2009/077357
【特許文献11】WO2009/080488
【特許文献12】WO2010/084097
【特許文献13】WO2010/091979
【特許文献14】WO2010/094622
【特許文献15】WO2010/121995
【特許文献16】WO2008/119741
【特許文献17】WO2010/031713
【特許文献18】WO2010/028862
【特許文献19】WO2006/024837
【特許文献20】WO2012/121361
【特許文献21】WO2008/039218
【特許文献22】WO2013/059738
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】J.Am.Chem.Soc., 2005, 127, 10130-10131
【非特許文献2】J.Med.Chem., 2006, 49, 3432-3435
【非特許文献3】J.Med.Chem., 2009, 52, 7970-7973
【非特許文献4】J.Med.Chem., 2006, 49, 6209-6221
【非特許文献5】Curr.Opin.Immunol., 2000, 12, 282-288
【非特許文献6】PNAS, 2010, 107, 13075-13080
【非特許文献7】Drugs, 2014, 74, 263-271
【非特許文献8】Can.Res., 2015, 75, 594-604
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、MDM2阻害活性を有する化合物とBTK阻害活性を有する化合物とを組み合わせてなる医薬/がんの治療方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討した結果、MDM2阻害活性を有する化合物である(3’R,4’S,5’R)−N−[(3R,6S)−6−カルバモイルテトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル]−6”−クロロ−4’−(2−クロロ−3−フルオロピリジン−4−イル)−4,4−ジメチル−2”−オキソ−1”,2”−ジヒドロジスピロ[シクロヘキサン−1,2’−ピロリジン−3’,3”−インドール]−5’−カルボキサミドもしくはその薬学的に許容される塩とBTK阻害活性を有する化合物であるイブルチニブもしくはその薬学的に許容される塩とを組み合わせて使用することにより、特に優れた抗腫瘍効果が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明は、次の[1]〜[15]に関する。
[1](3’R,4’S,5’R)−N−[(3R,6S)−6−カルバモイルテトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル]−6”−クロロ−4’−(2−クロロ−3−フルオロピリジン−4−イル)−4,4−ジメチル−2”−オキソ−1”,2”−ジヒドロジスピロ[シクロヘキサン−1,2’−ピロリジン−3’,3”−インドール]−5’−カルボキサミドまたはその薬学的に許容される塩とイブルチニブまたはその薬学的に許容される塩が、組み合わせて投与されることを特徴とするがん治療のための医薬。
[2](3’R,4’S,5’R)−N−[(3R,6S)−6−カルバモイルテトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル]−6”−クロロ−4’−(2−クロロ−3−フルオロピリジン−4−イル)−4,4−ジメチル−2”−オキソ−1”,2”−ジヒドロジスピロ[シクロヘキサン−1,2’−ピロリジン−3’,3”−インドール]−5’−カルボキサミドまたはその薬学的に許容される塩とイブルチニブまたはその薬学的に許容される塩が、それぞれ異なる製剤の有効成分として含有され、同時に、又は、異なる時間に投与されることを特徴とする[1]に記載の医薬。
[3](3’R,4’S,5’R)−N−[(3R,6S)−6−カルバモイルテトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル]−6”−クロロ−4’−(2−クロロ−3−フルオロピリジン−4−イル)−4,4−ジメチル−2”−オキソ−1”,2”−ジヒドロジスピロ[シクロヘキサン−1,2’−ピロリジン−3’,3”−インドール]−5’−カルボキサミドまたはその薬学的に許容される塩とイブルチニブまたはその薬学的に許容される塩が、単一製剤中に含有されていることを特徴とする[1]に記載の医薬。
[4](3’R,4’S,5’R)−N−[(3R,6S)−6−カルバモイルテトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル]−6”−クロロ−4’−(2−クロロ−3−フルオロピリジン−4−イル)−4,4−ジメチル−2”−オキソ−1”,2”−ジヒドロジスピロ[シクロヘキサン−1,2’−ピロリジン−3’,3”−インドール]−5’−カルボキサミドまたはその薬学的に許容される塩とイブルチニブまたはその薬学的に許容される塩を含むキット製剤であることを特徴とする[1]に記載の医薬。
[5](3’R,4’S,5’R)−N−[(3R,6S)−6−カルバモイルテトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル]−6”−クロロ−4’−(2−クロロ−3−フルオロピリジン−4−イル)−4,4−ジメチル−2”−オキソ−1”,2”−ジヒドロジスピロ[シクロヘキサン−1,2’−ピロリジン−3’,3”−インドール]−5’−カルボキサミドまたはその薬学的に許容される塩とイブルチニブまたはその薬学的に許容される塩が組み合わせて投与されることを特徴とする癌の治療方法。
[6]上記(3’R,4’S,5’R)−N−[(3R,6S)−6−カルバモイルテトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル]−6”−クロロ−4’−(2−クロロ−3−フルオロピリジン−4−イル)−4,4−ジメチル−2”−オキソ−1”,2”−ジヒドロジスピロ[シクロヘキサン−1,2’−ピロリジン−3’,3”−インドール]−5’−カルボキサミドの塩がp−トルエンスルホン酸塩である[1]〜[4]のいずれか1に記載の医薬。
[7]上記(3’R,4’S,5’R)−N−[(3R,6S)−6−カルバモイルテトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル]−6”−クロロ−4’−(2−クロロ−3−フルオロピリジン−4−イル)−4,4−ジメチル−2”−オキソ−1”,2”−ジヒドロジスピロ[シクロヘキサン−1,2’−ピロリジン−3’,3”−インドール]−5’−カルボキサミドの塩がp−トルエンスルホン酸塩である[5]に記載の治療方法。
[8]がんが、血液がん、脳腫瘍、頭頚部がん、食道がん、胃がん、虫垂がん、大腸がん、肛門がん、胆嚢がん、胆管がん、膵臓がん、消化管間質腫瘍、肺がん、肝臓がん、中皮腫、甲状腺がん、腎臓がん、前立腺がん、神経内分泌腫瘍、黒色腫、乳がん、子宮体がん、子宮頸がん、卵巣がん、骨肉腫、軟部肉腫、カポジ肉腫、筋肉腫、腎臓がん、膀胱がんまたは睾丸がんである[1]〜[4]および[6]のいずれか1に記載の医薬。
[9]がんが、血液がん、脳腫瘍、頭頚部がん、食道がん、胃がん、虫垂がん、大腸がん、肛門がん、胆嚢がん、胆管がん、膵臓がん、消化管間質腫瘍、肺がん、肝臓がん、中皮腫、甲状腺がん、腎臓がん、前立腺がん、神経内分泌腫瘍、黒色腫、乳がん、子宮体がん、子宮頸がん、卵巣がん、骨肉腫、軟部肉腫、カポジ肉腫、筋肉腫、腎臓がん、膀胱がんまたは睾丸がんである[5]または[7]に記載の治療方法。
[10]がんが、血液がんである[1]〜[4]、および[6]のいずれか1に記載の医薬。
[11]がんが、血液がんである[5]、または[7]に記載の治療方法。
[12]血液がんが、慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、ハイリスクのCLL、非CLL/SLLリンパ腫、濾胞性リンパ腫(FL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、多発性骨髄腫(MM)、辺縁帯リンパ腫、バーキットリンパ腫、非バーキット型高悪性度B細胞リンパ腫、節外性辺縁帯B細胞リンパ腫、急性または慢性の骨髄性(あるいは骨髄球性)白血病、骨髄異形成症候群または急性リンパ芽球性白血病である[10]に記載の医薬。
[13]血液がんが、慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、ハイリスクのCLL、非CLL/SLLリンパ腫、濾胞性リンパ腫(FL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、多発性骨髄腫(MM)、辺縁帯リンパ腫、バーキットリンパ腫、非バーキット型高悪性度B細胞リンパ腫、節外性辺縁帯B細胞リンパ腫、急性または慢性の骨髄性(あるいは骨髄球性)白血病、骨髄異形成症候群または急性リンパ芽球性白血病である[11]に記載の治療方法。
[14]がんが、ジーンシグネチャーを用いてMDM2阻害剤感受性であると判定されたがんである[1]〜[4]、[6]、[8]、[10]、および[12]のいずれか1に記載の医薬。
[15]がんが、ジーンシグネチャーを用いてMDM2阻害剤感受性であると判定されたがんである[5]、[7]、[9]、[11]、および[13]のいずれか1に記載の治療方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、体重減少などの副作用が少なく、かつ、効果の高いがんの治療方法、および/または抗がん剤として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明において、(3’R,4’S,5’R)−N−[(3R,6S)−6−カルバモイルテトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル]−6”−クロロ−4’−(2−クロロ−3−フルオロピリジン−4−イル)−4,4−ジメチル−2”−オキソ−1”,2”−ジヒドロジスピロ[シクロヘキサン−1,2’−ピロリジン−3’,3”−インドール]−5’−カルボキサミドはWO2012/121361の実施例70の化合物である。本化合物はWO2012/121361に記載の方法により製造することができる(WO2012/121361は参照によりすべてが本明細書に組み込まれる)。
【0015】
本発明において、イブルチニブは(R)−1−(3−(4−アミノ−3−(4−フェノキシフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)prop−2−en−1−oneでありPCI-32765と表記されることもあり、また、Imbruvica(登録商標)と表記される場合もある。本化合物はWO2008/039218に記載の方法により製造することができる(WO2008/039218は参照によりすべてが本明細書に組み込まれる。)。
【0016】
本発明において、(3’R,4’S,5’R)−N−[(3R,6S)−6−カルバモイルテトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル]−6”−クロロ−4’−(2−クロロ−3−フルオロピリジン−4−イル)−4,4−ジメチル−2”−オキソ−1”,2”−ジヒドロジスピロ[シクロヘキサン−1,2’−ピロリジン−3’,3”−インドール]−5’−カルボキサミドおよびイブルチニブは、各種の薬学上許容される塩であってもよい。
【0017】
塩としては、例えば塩酸塩、ヨウ化水素酸塩等のハロゲン化水素酸塩;硝酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、燐酸塩等の無機酸塩;メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩等の低級アルカンスルホン酸塩;ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩等のアリ−ルスルホン酸塩;ギ酸、酢酸、りんご酸、フマル酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、蓚酸塩、マレイン酸塩等の有機酸塩;及びオルニチン酸塩、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩等のアミノ酸塩、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩等の無機塩;ジベンジルアミン塩、モルホリン塩、フェニルグリシンアルキルエステル塩、エチレンジアミン塩、N−メチルグルカミン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩、シクロヘキシルアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン塩、ジエタノールアミン塩、N−ベンジル−N−(2−フェニルエトキシ)アミン塩、ピペラジン塩、テトラメチルアンモニウム塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩等の有機アミン塩、等を挙げることができる。
【0018】
(3’R,4’S,5’R)−N−[(3R,6S)−6−カルバモイルテトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル]−6”−クロロ−4’−(2−クロロ−3−フルオロピリジン−4−イル)−4,4−ジメチル−2”−オキソ−1”,2”−ジヒドロジスピロ[シクロヘキサン−1,2’−ピロリジン−3’,3”−インドール]−5’−カルボキサミドの塩としてはp−トルエンスルホン酸塩が好ましい。
【0019】
本発明において、(3’R,4’S,5’R)−N−[(3R,6S)−6−カルバモイルテトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル]−6”−クロロ−4’−(2−クロロ−3−フルオロピリジン−4−イル)−4,4−ジメチル−2”−オキソ−1”,2”−ジヒドロジスピロ[シクロヘキサン−1,2’−ピロリジン−3’,3”−インドール]−5’−カルボキサミドおよびイブルチニブもしくはそれらの薬学上許容される塩は、遊離体もしくは溶媒和物として存在することもある。空気中の水分を吸収すること等により水和物として存在することもある。溶媒和物としては、医薬的に許容し得るものであれば特に限定されないが、具体的には、水和物、エタノール和物等が好ましい。また、一般式(1)で表される化合物中に窒素原子が存在する場合にはN−オキシド体となっていてもよく、これら溶媒和物及びN−オキシド体も本発明の範囲に含まれる。
【0020】
(3’R,4’S,5’R)−N−[(3R,6S)−6−カルバモイルテトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル]−6”−クロロ−4’−(2−クロロ−3−フルオロピリジン−4−イル)−4,4−ジメチル−2”−オキソ−1”,2”−ジヒドロジスピロ[シクロヘキサン−1,2’−ピロリジン−3’,3”−インドール]−5’−カルボキサミドおよびイブルチニブもしくはそれらの薬学上許容される塩は、それらの構造によっては、立体異性体を生じ得る。これらの立体異性体、およびこれらの立体異性体の任意の割合の混合物をもすべて含むものである。立体異性体の定義は1996 IUPC,Pure and Applied Chemistry 68,2193-2222に示す通りである。(3’R,4’S,5’R)−N−[(3R,6S)−6−カルバモイルテトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル]−6”−クロロ−4’−(2−クロロ−3−フルオロピリジン−4−イル)−4,4−ジメチル−2”−オキソ−1”,2”−ジヒドロジスピロ[シクロヘキサン−1,2’−ピロリジン−3’,3”−インドール]−5’−カルボキサミドおよびイブルチニブもしくはそれらの薬学上許容される塩が、互変異性体として存在する場合、それらの互変異性体が平衡状態で存在している場合も、またはある形が支配的に存在している場合のいずれも本発明の範囲内に含まれる。互変異性体とは分子の1個の原子のプロトンが他の原子にシフトすることによって生じる異性体のことを言う。
【0021】
また、(3’R,4’S,5’R)−N−[(3R,6S)−6−カルバモイルテトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル]−6”−クロロ−4’−(2−クロロ−3−フルオロピリジン−4−イル)−4,4−ジメチル−2”−オキソ−1”,2”−ジヒドロジスピロ[シクロヘキサン−1,2’−ピロリジン−3’,3”−インドール]−5’−カルボキサミドおよびイブルチニブもしくはそれらの薬学上許容される塩は、生体内における生理条件下で酵素や胃酸等による反応により酵素的に酸化、還元、加水分解等を起こしたり、胃酸等により加水分解等を起こして所望の化合物に変化される「医薬的に許容されるプロドラッグ化合物」であってもよい。
【0022】
上記プロドラッグとしては、アシル化、アルキル化、リン酸化された化合物等が挙げられる。
【0023】
化合物のプロドラッグは公知の方法によって化合物(1)から製造することができる。また、化合物のプロドラッグは、広川書店1990年刊「医薬品の開発」第7巻分子設計163頁〜198頁に記載されているような、生理的条件で所望の化合物に変化するものも含まれる。
【0024】
本発明において、用語「腫瘍」および「がん」は交換可能に使用される。また、本発明において、腫瘍、悪性腫瘍、がん、悪性新生物、がん腫、肉腫等を総称して、「腫瘍」または「がん」と表現する場合がある。
【0025】
本発明において、「ジーンシグネチャー」は、単一の遺伝子、または、複数の遺伝子からなる遺伝子群のその発現パターンが、ある種の疾患への罹患、ある種の医薬への反応性、ある種の疾患の予後等の生物学的表現型や医学的状態に特徴的である当該遺伝子、または、遺伝子群を意味する。
【0026】
本発明において、「生物学的試料」は、個体から単離された組織、液体、細胞、およびそれらの混合物をいい、例えば腫瘍生検、髄液、胸腔内液、腹腔内液、リンパ液、皮膚切片、血液、尿、糞便、痰、呼吸器、腸管、尿生殖器管、唾液、乳、消化器官、およびこれらから採取された細胞を挙げることができるが、これらに限定されない。「生物学的試料」は、例えば、がん疾患の治療目的で行われた手術の際に得られた被験者由来の切除組織の一部、がん疾患を疑われた被験者から生検等によって採取された組織の一部、あるいは胸腔内液や腹腔内液に由来する細胞を好ましく例示できる。
【0027】
生物学的試料は、個体から単離された組織、液体、細胞、およびそれらの混合物等から調製した蛋白質抽出液や核酸抽出液であっても良い。蛋白質抽出液や核酸抽出液の調製は、自体公知の蛋白質調製法や核酸調製法を利用して実施できる。
【0028】
本発明の一態様は、(3’R,4’S,5’R)−N−[(3R,6S)−6−カルバモイルテトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル]−6”−クロロ−4’−(2−クロロ−3−フルオロピリジン−4−イル)−4,4−ジメチル−2”−オキソ−1”,2”−ジヒドロジスピロ[シクロヘキサン−1,2’−ピロリジン−3’,3”−インドール]−5’−カルボキサミドまたはその薬学的に許容される塩とイブルチニブまたはその薬学的に許容される塩が、組み合わせて投与されることを特徴とするがん治療のための医薬に関する。
【0029】
本発明において、(3’R,4’S,5’R)−N−[(3R,6S)−6−カルバモイルテトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル]−6”−クロロ−4’−(2−クロロ−3−フルオロピリジン−4−イル)−4,4−ジメチル−2”−オキソ−1”,2”−ジヒドロジスピロ[シクロヘキサン−1,2’−ピロリジン−3’,3”−インドール]−5’−カルボキサミドもしくはその薬学上許容される塩とイブルチニブもしくはその薬学上許容される塩が「組み合わせて投与される医薬」とは、両薬剤が組み合わせて投与されることを想定された医薬である。
【0030】
本発明において、(3’R,4’S,5’R)−N−[(3R,6S)−6−カルバモイルテトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル]−6”−クロロ−4’−(2−クロロ−3−フルオロピリジン−4−イル)−4,4−ジメチル−2”−オキソ−1”,2”−ジヒドロジスピロ[シクロヘキサン−1,2’−ピロリジン−3’,3”−インドール]−5’−カルボキサミドもしくはその薬学上許容される塩とイブルチニブもしくはその薬学上許容される塩が「組み合わせて投与される」とは、ある一定期間において、被投与対象が、両薬剤をその体内に取り込むことを意味する。両薬剤が単一製剤中に含まれた製剤が投与されてもよく、またそれぞれが別々に製剤化され、別々に投与されても良い。別々に製剤化される場合、その投与の時期は特に限定されず、同時に投与されてもよく、時間を置いて異なる時間に、又は、異なる日に、投与されても良い。(3’R,4’S,5’R)−N−[(3R,6S)−6−カルバモイルテトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル]−6”−クロロ−4’−(2−クロロ−3−フルオロピリジン−4−イル)−4,4−ジメチル−2”−オキソ−1”,2”−ジヒドロジスピロ[シクロヘキサン−1,2’−ピロリジン−3’,3”−インドール]−5’−カルボキサミドもしくはその薬学上許容される塩とイブルチニブもしくはその薬学上許容される塩が、それぞれ異なる時間又は日に投与される場合、その投与の順番は特に限定されない。通常、それぞれの製剤は、それぞれの投与方法に従って投与されるため、それらの投与は、同一回数となる場合もあり、異なる回数となる場合もある。また、それぞれが別々に製剤化される場合、各製剤の投与方法(投与経路)は同じであってもよく、異なる投与方法(投与経路)で投与されてもよい。また、両薬剤が同時に体内に存在する必要は無く、ある一定期間(例えば一ヶ月間、好ましくは1週間、さらに好ましくは数日間、さらにより好ましくは1日間)の間に体内に取り込まれていればよく、いずれかの投与時にもう一方の有効成分が体内から消失していてもよい。
【0031】
本発明の医薬の投与形態を例示すると、例えば、1)(3’R,4’S,5’R)−N−[(3R,6S)−6−カルバモイルテトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル]−6”−クロロ−4’−(2−クロロ−3−フルオロピリジン−4−イル)−4,4−ジメチル−2”−オキソ−1”,2”−ジヒドロジスピロ[シクロヘキサン−1,2’−ピロリジン−3’,3”−インドール]−5’−カルボキサミドもしくはその薬学上許容される塩とイブルチニブもしくはその薬学上許容される塩を含む単一の製剤の投与、2)(3’R,4’S,5’R)−N−[(3R,6S)−6−カルバモイルテトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル]−6”−クロロ−4’−(2−クロロ−3−フルオロピリジン−4−イル)−4,4−ジメチル−2”−オキソ−1”,2”−ジヒドロジスピロ[シクロヘキサン−1,2’−ピロリジン−3’,3”−インドール]−5’−カルボキサミドもしくはその薬学上許容される塩とイブルチニブもしくはその薬学上許容される塩とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の同一投与経路での同時投与、3)(3’R,4’S,5’R)−N−[(3R,6S)−6−カルバモイルテトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル]−6”−クロロ−4’−(2−クロロ−3−フルオロピリジン−4−イル)−4,4−ジメチル−2”−オキソ−1”,2”−ジヒドロジスピロ[シクロヘキサン−1,2’−ピロリジン−3’,3”−インドール]−5’−カルボキサミドもしくはその薬学上許容される塩とイブルチニブもしくはその薬学上許容される塩を別々に製剤化して得られる2種の製剤の同一投与経路での時間差をおいての投与、4)(3’R,4’S,5’R)−N−[(3R,6S)−6−カルバモイルテトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル]−6”−クロロ−4’−(2−クロロ−3−フルオロピリジン−4−イル)−4,4−ジメチル−2”−オキソ−1”,2”−ジヒドロジスピロ[シクロヘキサン−1,2’−ピロリジン−3’,3”−インドール]−5’−カルボキサミドもしくはその薬学上許容される塩とイブルチニブもしくはその薬学上許容される塩を別々に製剤化して得られる2種の製剤の異なる投与経路での同時投与、5)(3’R,4’S,5’R)−N−[(3R,6S)−6−カルバモイルテトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル]−6”−クロロ−4’−(2−クロロ−3−フルオロピリジン−4−イル)−4,4−ジメチル−2”−オキソ−1”,2”−ジヒドロジスピロ[シクロヘキサン−1,2’−ピロリジン−3’,3”−インドール]−5’−カルボキサミドもしくはその薬学上許容される塩とイブルチニブもしくはその薬学上許容される塩とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の異なる投与経路での時間差をおいての投与などが挙げられる。
【0032】
本発明においては、2種の異なる製剤とした場合は、それらを含むキットとすることもできる。
【0033】
本発明にかかる医薬は、(3’R,4’S,5’R)−N−[(3R,6S)−6−カルバモイルテトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル]−6”−クロロ−4’−(2−クロロ−3−フルオロピリジン−4−イル)−4,4−ジメチル−2”−オキソ−1”,2”−ジヒドロジスピロ[シクロヘキサン−1,2’−ピロリジン−3’,3”−インドール]−5’−カルボキサミドもしくはその薬学上許容される塩および/またはイブルチニブもしくはその薬学上許容される塩と、薬学的に許容し得る担体を含み、静脈内注射、筋肉内注射、皮下注射等の各種注射剤として、あるいは、経口投与または経皮投与等の種々の方法によって投与することができる。薬学的に許容し得る担体とは、本発明の化合物または本発明の化合物を含む組成物を、ある器官または臓器から他の器官または臓器に輸送することに関与する、薬学的に許容される材料(例えば、賦形剤、希釈剤、添加剤、溶媒等)を意味する。
【0034】
製剤の調製方法としては投与法に応じ適当な製剤(例えば、経口剤または注射剤)を選択し、通常用いられている各種製剤の調製法にて調製できる。経口剤としては、例えば、錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、トローチ剤、溶液剤、シロップ剤、エリキシル剤、乳剤、または油性ないし水性の懸濁液等を例示できる。経口投与の場合では遊離体のままでも、塩の型のいずれでもよい。水性製剤は薬学的に許容される酸と酸付加物を形成させるか、ナトリウム等のアルカリ金属塩とすることで調製できる。注射剤の場合は製剤中に安定剤、防腐剤または溶解補助剤等を使用することもできる。これらの補助剤等を含むこともある溶液を容器に収納後、凍結乾燥等によって固形製剤として用時調製の製剤としてもよい。また、一回投与量を一の容器に収納してもよく、また複数回投与量を一の容器に収納してもよい。
【0035】
固形製剤としては、例えば、錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、またはトローチ剤が挙げられる。これらの固形製剤は、本発明の化合物とともに薬学的に許容し得る添加物を含んでもよい。添加物としては、例えば、充填剤類、増量剤類、結合剤類、崩壊剤類、溶解促進剤類、湿潤剤類または滑沢剤類が挙げられ、これらを必要に応じて選択して混合し、製剤化することができる。
【0036】
液体製剤としては、例えば、溶液剤、シロップ剤、エリキシル剤、乳剤、または懸濁剤が挙げられる。添加物としては、例えば、懸濁化剤または乳化剤が挙げられ、これらを必要に応じて選択して混合し、製剤化することができる。
【0037】
製剤用の物質として以下のものを挙げることができるが、これらに制限されない:グリシン、アラニン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリジン等のアミノ酸類、抗菌剤、アスコルビン酸、硫酸ナトリウム又は亜硫酸水素ナトリウム等の抗酸化剤、リン酸、クエン酸、ホウ酸バッファー、炭酸水素ナトリウム、トリス−塩酸(Tris-Hcl)溶液等の緩衝剤、マンニトールやグリシン等の充填剤、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等のキレート剤、カフェイン、ポリビニルピロリジン、β−シクロデキストリンやヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン等の錯化剤、グルコース、マンノース又はデキストリン等の増量剤、単糖類、二糖類等の他の炭水化物、着色剤、香味剤、希釈剤、乳化剤やポリビニルピロリジン等の親水ポリマー、低分子量ポリペプチド、塩形成対イオン、塩化ベンズアルコニウム、安息香酸、サリチル酸、チメロサール、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロレキシジン、ソルビン酸又は過酸化水素等の防腐剤、グリセリン、プロピレン・グリコール又はポリエチレングリコール等の溶媒、マンニトール又はソルビトール等の糖アルコール、懸濁剤、ソルビタンエステル、ポリソルベート20やポリソルベート80等のポリソルベート、トリトン(triton)、トロメタミン(tromethamine)、レシチン又はコレステロール等の界面活性剤、スクロースやソルビトール等の安定化増強剤、塩化ナトリウム、塩化カリウムやマンニトール・ソルビトール等の弾性増強剤、輸送剤、賦形剤、及び/又は薬学上の補助剤。これらの製剤用の物質の添加量は、薬剤の重量に対して0.01〜100倍、特に0.1〜10倍添加するのが好ましい。製剤中の好適な医薬組成物の組成は当業者によって、適用疾患、適用投与経路などに応じて適宜決定することができる。
【0038】
医薬組成物中の賦形剤や担体は液体でも固体でもよい。適当な賦形剤や担体は注射用の水や生理食塩水、人工脳脊髄液や非経口投与に通常用いられている他の物質でもよい。中性の生理食塩水や血清アルブミンを含む生理食塩水を担体に用いることもできる。医薬組成物にはpH7.0-8.5のTrisバッファー、pH4.0-5.5の酢酸バッファー、pH3.0-6.2のクエン酸バッファーを含むことができる。また、これらのバッファーにソルビトールや他の化合物を含むこともできる。
【0039】
イブルチニブもしくはその薬学上許容される塩の製剤の好適な例としては、WO2008/039218に記載の製剤、WO2010/009342に記載の製剤、WO2011/153514に記載の製剤、WO2013/059738に記載の製剤、WO2014/071231に記載の製剤、WO2013/159745に記載の製剤、WO2014/168975に記載の製剤、WO2014/194254に記載の製剤、WO2015/017812に記載の製剤を参照することによりそれらののすべてが本明細書に組み込まれる。より好適な例としては、クロスカルメロースナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、結晶セルロースおよびラウリル硫酸ナトリウムを含むカプセル製剤が挙げられる。
【0040】
本発明は、哺乳類、特にヒトのがん治療に用いることができる。本発明の医薬の投与量および投与間隔は、疾患の場所、患者の身長、体重、性別または病歴によって、医師の判断により適宜選択され得る。本発明の医薬をヒトに投与する場合、投与量の範囲は、一種類の有効成分につき、1日当たり、約0.01mg/kg体重〜約500mg/kg体重、好ましくは、約0.1mg/kg体重〜約100mg/kg体重である。ヒトに投与する場合、好ましくは、1日あたり1回、あるいは2から4回に分けて投与され、適当な間隔で繰り返すのが好ましい。また、1日量は、医師の判断により必要によっては上記の量を超えてもよい。
【0041】
イブルチニブもしくはその薬学上許容される塩の投与方法の例示としてはWO2008/039218に記載の方法、WO2010/009342に記載の方法、WO2011/153514に記載の方法、WO2013/059738に記載の方法、WO2014/071231に記載の方法、WO2013/159745に記載の方法、WO2014/168975に記載の方法、WO2014/194254に記載の方法、WO2015/017812に記載の方法を参照することによりそれらのすべてが本明細書に組み込まれる。1日1回で、1週間、2週間、3週間、4週間または5週間投与されてもよい。
【0042】
治療の対象となるがんの種類は本発明の併用治療に対して感受性が確認されるがんであれば特に限定されないが、血液がん、脳腫瘍、頭頚部がん、食道がん、胃がん、虫垂がん、大腸がん、肛門がん、胆嚢がん、胆管がん、膵臓がん、消化管間質腫瘍、肺がん、肝臓がん、中皮腫、甲状腺がん、腎臓がん、前立腺がん、神経内分泌腫瘍、黒色腫、乳がん、子宮体がん、子宮頸がん、卵巣がん、骨肉腫、軟部肉腫、カポジ肉腫、筋肉腫、腎臓がん、膀胱がんまたは睾丸がんが挙げられる。
【0043】
中でも血液がんが好ましく、血液がんとしては、慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、ハイリスクのCLL、非CLL/SLLリンパ腫、濾胞性リンパ腫(FL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、多発性骨髄腫(MM)、辺縁帯リンパ腫、バーキットリンパ腫、非バーキット型高悪性度B細胞リンパ腫、節外性辺縁帯B細胞リンパ腫、急性または慢性の骨髄性(あるいは骨髄球性)白血病、骨髄異形成症候群または急性リンパ芽球性白血病が例示として挙げられる。
【0044】
治療の対象となるがんの種類としては、別の観点からは、MDM2阻害剤に感受性のあるがんを対象とすることが好ましく、野生型TP53を有するがんであることがより好ましい。
【0045】
TP53が野生型であることを確認する方法としては、変異DNA配列に特異的なプローブを用いたマイクロアレイ法(AmpliChip p53, Roche Molecular Systems, Inc.等、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21319261)、変異DNA配列に特異的なプローブを用いたPCR法(qBiomarker Somatic Mutation PCR Arrays, QIAGEN等)、Sangerシーケンサーによりp53遺伝子配列を読む方法(http://p53.iarc.fr/Download/TP53_DirectSequencing_IARC.pdf)、次世代シーケンサーによりp53遺伝子配列を読む方法(TruSeq Amplicon - Cancer Panel, Illumina http://www.illuminakk.co.jp/products/truseq_amplicon_cancer_panel.ilmn、Oncomine(R) Cancer Research Panel, Lifetechnologies http://www.lifetechnologies.com/jp/ja/home/clinical/preclinical-companion-diagnostic-development/oncomine-cancer-research-panel-workflow.html等)が挙げられる。
【0046】
さらに、MDM2阻害剤への感受性を予測する方法としてジーンシグネチャーを用いた方法も好適に用いることができる。MDM2阻害剤への感受性を予測するためのジーンシグネチャーとしては、特に限定されないが、例えばWO2014/020502に記載の遺伝子群が挙げられる(WO2014/020502は参照することによりそのすべてが本明細書に組み込まれる。)。より具体的にはMDM2, CDKN1A, ZMAT3, DDB2, FDXR, RPS27L, BAX, RPM2B, SESN1, CCNG1, XPC, TNFSF10BおよびAENからなる群から選ばれる遺伝子を少なくとも1つ含む(全て含んでいてもよい)遺伝子群を好適に用いることができる。他の例示としては、WO2015/000945に記載の遺伝子群が挙げられる(WO2014/000945参照することによりそのすべてが本明細書に組み込まれる。)。より具体的にはBAX, RPS27L, EDA2R, XPC, DDB2, FDXR, MDM2, CDKN1A, TRIAP1, BBC3, CCNG1, TNFRSF10BおよびCDKN2Aからなる群から選ばれる遺伝子を少なくとも1つ含む(全てを含んでいてもよい)遺伝子群を好適に用いることができる。遺伝子群に含まれる遺伝子数は限定されない。ジーンシグネチャーに含まれる遺伝子の発現が高い場合MDM2阻害剤に感受性があると判定する感受性シグネチャーを好適に用いることができる。
【0047】
本発明にかかる医薬は他の抗腫瘍剤と併用して用いてもよい。例えば、抗腫瘍抗生物質、抗腫瘍性植物成分、BRM(生物学的応答性制御物質)、ホルモン、ビタミン、抗腫瘍性抗体、分子標的薬、アルキル化剤、代謝拮抗剤その他の抗腫瘍剤等が挙げられる。
【0048】
より具体的に、アルキル化剤としては、例えば、ナイトロジェンマスタード、ナイトロジェンマスタードN − オキシド、ベンダムスチンもしくはクロラムブチル等のアルキル化剤、カルボコンもしくはチオテパ等のアジリジン系アルキル化剤、ディブロモマンニトールもしくはディブロモダルシトール等のエポキシド系アルキル化剤、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ニムスチンハイドロクロライド、ストレプトゾシン、クロロゾトシンもしくはラニムスチン等のニトロソウレア系アルキル化剤、ブスルファン、トシル酸インプロスルファン、テモゾロミドまたはダカルバジン等が挙げられる。
【0049】
各種代謝拮抗剤としては、例えば、6−メルカプトプリン、6−チオグアニンもしくはチオイノシン等のプリン代謝拮抗剤、フルオロウラシル、テガフール、テガフール・ウラシル、カルモフール、ドキシフルリジン、ブロクスウリジン、シタラビン若しくはエノシタビン等のピリミジン代謝拮抗剤、メトトレキサートもしくはトリメトレキサート等の葉酸代謝拮抗剤等が挙げられる。
【0050】
抗腫瘍性抗生物質としては、例えば、マイトマイシンC、ブレオマイシン、ペプロマイシン、ダウノルビシン、アクラルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン、ピラルビシン、THP−アドリアマイシン、4 ’−エピドキソルビシンもしくはエピルビシン、クロモマイシンA3 またはアクチノマイシンD 等が挙げられる。
【0051】
抗腫瘍性植物成分およびそれらの誘導体としては、例えば、ビンデシン、ビンクリスチンもしくはビンブラスチン等のビンカアルカロイド類、パクリタキセル、ドセタキセル、カバジタキセル等のタキサン類、またはエトポシドもしくはテニポシド等のエピポドフィロトキシン類が挙げられる。
【0052】
BRMとしては、例えば、腫瘍壊死因子またはインドメタシン等が挙げられる。
【0053】
ホルモンとしては、例えば、ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プラステロン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、オキシメトロン、ナンドロロン、メテノロン、ホスフェストロール、エチニルエストラジオール、クロルマジノン、メペチオスタンまたはメドロキシプロゲステロン等が挙げられる。
【0054】
ビタミンとしては、例えば、ビタミンCまたはビタミンA等が挙げられる。
【0055】
抗腫瘍性抗体、分子標的薬としては、トラスツズマブ、リツキシマブ、セツキシマブ、ニモツズマブ、デノスマブ、ベバシズマブ、インフリキシマブ、イピリムマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、アベルマブ、ピジリズマブ、アテゾリズマブ、ラムシルマブ、メシル酸イマチニブ、ダサチニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、オシメルチニブ、スニチニブ、ラパチニブ、ダブラフェニブ、トラメチニブ、コビメチニブ、パゾパニブ、パルボシクリブ、パノビノスタット、ソラフェニブ、クリゾチニブ、ベムラフェニブ、キザルチニブ、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、イクサゾミブ、ギルテリチニブ等が挙げられる。
【0056】
その他の抗腫瘍剤としては、例えば、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、タモキシフェン、レトロゾール、アナストロゾール、エキセメスタン、トレミフェンクエン酸塩、フルベストラント、ビカルタミド、フルタミド、ミトタン、リュープロレリン、ゴセレリン酢酸塩、カンプトテシン、イホスファミド、シクロホスファミド、メルファラン、L−アスパラギナーゼ、アセクラトン、シゾフィラン、ピシバニール、プロカルバジン、ピポブロマン、ネオカルチノスタチン、ヒドロキシウレア、ウベニメクス、アザシチジン、デシタビン、サリドマイド、レナリドミド、ポマリドミド、エリブリン、トレチノインまたはクレスチン等が挙げられる。
【0057】
より具体的な組み合わせとしては、CHOP(シクロホスファミド、ヒドロキシドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾン)との組み合わせ、EPOCH(エトポシド、プレドニゾン、ビンクリスチン、シクロホスファミド、ヒドロキシドキソルビシン)との組み合わせ、Hyper-CVAD(シクロホスファミド、ビンクリスチン、ヒドロキシドキソルビシン、デキサメタゾン)との組み合わせ、ICE(イホスファミド、カルボプラチン、エトポシド)との組み合わせ、DHAP(high-doseシタラビン(ara-C)、デキサメタゾン、シスプラチン)との組み合わせ、ESHAP(エトポシド、メチルプレドニゾロン、シタラビン(ara-C)、シスプラチン)との組み合わせ、アンスラサイクリンベースの化学療法との組み合わせ、ヒストンデアセチレース阻害剤との組み合わせ、CYP3A4阻害剤との組み合わせ、抗CD37抗体との組み合わせ、Bcl-2阻害剤との組み合わせ、PI3キナーゼ阻害剤との組み合わせが挙げられる。
【実施例】
【0058】
以下に示す実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、これらはいかなる意味においても限定的に解釈されない。
【0059】
(試験例1 Compound Aとイブルチニブとのin vivo併用効果の検討)
ABC-type DLBCLの細胞株であるTMD-8細胞をリン酸緩衝生理食塩水を用いて1×10
8cells/mLになるよう懸濁し、調製した細胞懸濁液をNOD-SCIDマウス(雌性、6週齢)の皮下に0.1mL移植した。移植後6日目に腫瘍体積の平均が100mm
3を超えたことを確認後、腫瘍体積値を用いて群分けを行い(一群6匹)、Compound Aを25mg/kgもしくは50mg/kg、イブルチニブを100mg/kgもしくは200mg/kgにてマウスに強制経口投与した。併用群においてはCompound A 25mg/kgもしくは50mg/kgとイブルチニブ 100mg/kgもしくは200mg/kgを順次強制経口投与した。投与は群分け当日(移植後18日目)から1日1回、連続5日間(移植後18日目から22日目)行った後、2日間の休薬をはさんで1日1回連続4日間(移植後25日目から28日目)行った。経時的に腫瘍の長径(mm)および短径(mm)を電子デジタルノギスで計測し、以下に示す計算式(4)により算出した判定日(腫瘍移植後29日目)の腫瘍増殖抑制率(TGI%)で評価した。また経時的に小動物用自動天秤を用いて体重を測定し、以下に示す計算式(5)により体重変化率(Body weight change %)を算出し薬剤投与の体重への影響を検討すると共に、直近の体重測定結果を投与量算出に用いた。
【0060】
TGI (%) = (1−A/B)×100 ・・・(4)
A : 化合物投与群の判定日の平均腫瘍体積 (*)
B : 無処置対照群の判定日の平均腫瘍体積 (*)
* : 腫瘍体積は、1/2×[腫瘍長径]×[腫瘍短径]×[腫瘍短径]で算出した。
【0061】
Body weight change(%) = 各個体の体重変化率の平均値・・・(5)
各個体の体重変化率 = (1-BWn/BWs)×100
BWn:n日目の体重
BWs:投与開始日の体重
【0062】
結果を
図1および表1〜3に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
【表3】