(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
透明基材と、透明導電層と、第1のポリマーバインダーおよび誘電体ナノダイアモンドを含む透明コーティングと、を含む光学構造物であって、前記透明コーティングがパーセントとして表わされるナノダイアモンドによる可視光線の全透過の値の減少が5以下であり、前記光学構造物が可視光線の全透過の少なくとも85%を有し、前記透明導電層が薄く広がった金属導電性要素および第2のポリマーバインダーを含み、前記透明コーティングが透明導電層と直接接触し、および前記第1のポリマーバインダーが架橋アクリル樹脂を含有する、光学構造体。
前記第1のポリマーバインダーが更にポリシロキサン、ポリシルセスキオキサン、ポリウレタン、アクリルコポリマー、水不溶性構造多糖類、ポリエーテル、ポリエステル、ポリスチレン、ポリイミド、フルオロポリマー、スチレン−アクリレートコポリマー、スチレンブタジエンコポリマー、アクリロニトリルブタジエンスチレンコポリマー、ポリスルフィド、エポキシ含有ポリマー、それらのコポリマー、およびそれらの混合物を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学構造物。
前記透明コーティングの鉛筆硬度が、前記ナノダイアモンドを有さない透明コーティングの鉛筆硬度よりも少なくとも1等級硬い、請求項1〜6のいずれか一項に記載の光学構造物。
透明基材と、透明電気導電層と、第1のポリマーバインダーおよび100nm以下の平均一次粒径を有するナノ粒子であって、少なくとも1650HVのバルクビッカース硬度を有する材料、ダイアモンド、グラフェン、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、ヒ化ガリウム、リン化インジウムまたはそれらの混合物からなる群から選択される高熱伝導率材料および/またはチタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸鉛、チタン酸鉛ジルコニウム、チタン酸カルシウム銅およびそれらの混合物からなる群から選択される高誘電率材料から形成されるナノ粒子を含む保護コーティングとを含む透明導電性フィルムであって、前記透明導電性フィルムが可視光線の全透過の少なくとも85%を有し、前記透明電気導電層が薄く広がった金属導電性要素および第2のポリマーバインダーを含み、前記透明保護コーティングが透明電気導電層と直接接触し、および前記第1のポリマーバインダーが架橋アクリル樹脂を含有する、透明導電性フィルム。
前記透明保護コーティングが、50nm以下の平均粒径を有するナノ粒子0.1重量%〜70重量%を有し、前記ポリマーバインダーがポリシロキサン、ポリシルセスキオキサン、ポリウレタン、アクリルコポリマー、水不溶性構造多糖類、ポリエーテル、ポリエステル、ポリスチレン、ポリイミド、フルオロポリマー、スチレン−アクリレートコポリマー、スチレンブタジエンコポリマー、アクリロニトリルブタジエンスチレンコポリマー、ポリスルフィド、エポキシ含有ポリマー、それらのコポリマー、およびそれらの混合物を含む、請求項8〜11のいずれか一項に記載の透明導電性フィルム。
前記基材が、5ミクロン〜1ミリメートルの平均厚さを有するポリマーフィルムであり、前記透明保護コーティングが50nm〜25ミクロンの平均厚さを有する、請求項8〜12のいずれか一項に記載の透明導電性フィルム。
前記ナノ粒子がフッ素化、塩素化、カルボキシ化、アミノ化、ヒドロキシ化、水素化、スルホン化されるかまたはそれらの混合で官能化された誘電体ナノダイアモンドを含む、請求項8〜13のいずれか一項に記載の透明導電性フィルム。
前記透明保護コーティングの鉛筆硬度が、ナノ粒子を有さない透明保護コーティングの鉛筆硬度よりも少なくとも1等級大きく、パーセントとして表わされる透明保護コーティングによる可視光線の全透過の値の減少が5以下である、請求項8〜14のいずれか一項に記載の透明導電性フィルム。
前記溶媒が水、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、第三ブチルアルコール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、環状ケトン、グリコールエーテル、トルエン、ヘキサン、エチルアセテート、ブチルアセテート、エチルラクテート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、PGMEA(2−メトキシ−1−メチルエチルアセテート)、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、蟻酸、またはそれらの混合物を含む、請求項16〜17のいずれか一項に記載の溶液。
前記硬化性ポリマーバインダーが、ポリシロキサン、ポリシルセスキオキサン、ポリウレタン、アクリル樹脂、アクリルコポリマー、セルロースエーテルおよびエステル、ニトロセルロース、他の水不溶性構造多糖類、ポリエーテル、ポリエステル、スチレン−アクリレートコポリマー、スチレンブタジエンコポリマー、アクリロニトリルブタジエンスチレンコポリマー、ポリスルフィド、エポキシ含有ポリマー、それらのコポリマー、およびそれらの混合物を含む、請求項16〜18のいずれか一項に記載の溶液。
【発明を実施するための形態】
【0012】
コーティングのための所望の性質、例えば増加した硬度および/または良い光学透明性を有する薄いコーティング内のより大きな熱伝導率を提供するために特性強化ナノ粒子充填剤を有するポリマー母材を使用する透明コーティングが開発されている。ポリマー母材のための適した充填剤には例えば、光学透明性を望ましくない量まで減少させずに、ナノダイアモンドを使用して形成されたコーティングに望ましい硬度、増加した誘電率、および熱伝導率を提供することができるナノダイアモンドが含まれる。他の適切なナノ粒子またはそれらの組合せを同様にポリマー母材中に組み込むことができる。充填剤として使用するためのナノ粒子は、高いバルク硬度値および/または高いバルク熱伝導率および/または高いバルク誘電率を有する材料から形成され得る。いくつかの実施形態において、粒子充填ポリマーから形成されるコーティングは、約5ミクロン以下の厚さを有することができる。強化コーティングは、母材ポリマーを溶媒中に分散させてナノ粒子を溶液中に分散させる溶液コーティング法によって形成され得る。コーティングは透明電気導電層の保護のために適し得るが、本明細書に記載される強化コーティングを他の透明コーティング用途が有効利用することができる。特に、透明導電層が金属ナノワイヤーから形成され得る。さらに別のまたは代替実施形態において、ポリマーオーバーコートを有するコーティングの次に、望ましい充填剤を薄く広がった金属導電性要素を形成するために使用される導電性インクに直接に添加することができ、硬度の相応する増加およびその他の特性改善をもたらすことができる。保護コーティングは、引掻きや稀酸および塩基などの環境攻撃からの損傷を減少させ、熱的損傷を低減させ、高電圧に由来する脆弱性を減少させおよび/または他の有益な保護を提供するために有用であり得る。
【0013】
本明細書に記載されるように、可視光線の全透過の低下があまり大きくない強化された充填コーティングを形成することができる。比較的良い機械的強度を有するコーティングのために様々なポリマー母材を導入して、さらなる強化のために良い高透明性基材を提供することができる。一般的に、小さな厚さを有するようにコーティングを形成することができ、強化された機械的性質は、小さな厚さを有する場合でもコーティングを機械的に安定化するために有効であり得る。いくつかの実施形態において、電気導電率は薄いオーバーコートを通して維持され得るので隣接した透明導電層に使用するために小さな厚さが望ましいことがあり得る。したがって、約25ミクロン以下およびいくつかの実施形態において1ミクロン以下、そして一般的に少なくとも約50nmの厚さの平均厚さを有するコーティングによって、著しい機械的安定度を得ることができる。さらに、強化コーティングの熱伝導率性質は、熱を散逸させて加熱に由来する損傷を低減することができるようにするために望ましいことがあり得る。改良された熱伝導率は、特定の用途のために他の望ましい利用をもたらすことができる。高誘電体充填剤を有するコーティングは、薄く広がった金属導電層を高電圧に由来する損傷から保護するために有用であり得る。
【0014】
良いコーティング性は一般的に、母材ポリマーの溶液中のナノ粒子充填剤の良い分散体を形成することを必要とし、得られたコーティングが粒子塊を生じる効果を低減するようにする。ナノ粒子充填剤は一般的に、約100nm以下の平均一次粒径を有し、粒子を比較的平滑な薄いコーティング中に混合することができるようにして、又、粒子が光学的性質を必要以上に変えないようにする。一般的には、コーティングは、約70重量パーセント以下のナノ粒子充填量を有する。コーティング溶液中のポリマーバインダーおよび充填剤粒子の濃度を調節して、例えば粘度や最終コーティングの厚さなど、溶液の望ましいコーティング性をもたらすように調節することができる。コーティング溶液中の固形分の濃度の比を調節して、コーティングが乾燥されると望ましいコーティング濃度をもたらすことができる。一般的にコーティングのポリマー成分を紫外線でまたはポリマーバインダーに適した他の手段で架橋させて、コーティングをさらに強化することができる。
【0015】
一般的には、特性強化ナノ粒子充填剤を不動態保護コーティング中におよび/または直接に透明導電層中に導入することができる。透明導電層を覆うために不動態透明保護コーティングを使用しても使用しなくてもよい。これらのコーティングの一般的な特徴は、コーティング溶液中のならびに得られた複合材料中の成分の相溶性である。相溶性は、集塊化などによる、成分の許容できない程度の凝結を伴わずに比較的均一な材料に有効に分散する能力を指す。特に、相溶性は、コーティング溶液中の材料を十分に分散させることを可能にし、コーティングを形成する適度に均一な複合材料を形成することができる。より均一な複合材料は、良い透明性および低いヘイズなど、コーティングの望ましい光学的性質に寄与すると考えられる。
【0016】
不動態コーティングについては、コーティング溶液は、溶媒、溶解される母材ポリマー、選択された性質を有するナノ粒子、それらの可能な組合せおよび任意選択のさらに別の成分を含むことができる。以下に説明されるように、透明フィルムに適している様々な母材ポリマーを使用することができる。湿潤剤、例えば界面活性剤ならびに他の加工助剤を使用することができる。一般的には、溶媒は水、有機溶媒または適したそれらの混合物を含むことができる。活性コーティングについては、コーティング溶液は一般的に、電気導電率に寄与するための金属ナノワイヤーなどの活性機能性に寄与する成分をさらに含む。両方のタイプのコーティングの例が以下の実施例において説明される。金属ナノワイヤーをベースとした透明導電層のオーバーコートとして使用するために、オーバーコートに導入される安定剤が透明導電層の電気導電率を安定化することができることが見出された。安定剤は、コーティング溶液の良い透明性およびプロセス適合性を維持することに適い、以下にさらに説明される。
【0017】
望ましい充填剤に関して、ナノダイアモンドは、良い光学透明性および比較的低いヘイズを維持することにより導入され得る望ましい性質のために特に重要である。ダイアモンドは、黒鉛状炭素、非晶質炭素およびその他の形態の炭素と対照的に、sp
3混成軌道を有する炭素の結晶形である。商用ナノダイアモンドは一般的に、非晶質および/または黒鉛状炭素のシェルを有する結晶ダイアモンド炭素のコアを有することができ、誘電体である。ナノダイアモンドの表面化学は、合成法とおそらく付加的な加工とを反映し得る。商用ナノダイアモンドは、精製後に官能化されることもされないこともあり得るが、様々な以下に列挙するような様々な供給元から入手可能である。ナノダイアモンドは、非常に高い値の硬度および熱伝導率を巨視的ダイアモンドと共有し、これらの性質を用いて、ナノダイアモンドを混合する透明コーティングに望ましい性質を与えることができる。
【0018】
平均一次粒径が一般的に約50nm以下およびいくつかの実施形態において約10nm以下のナノダイアモンドが市販されているが、平均一次粒径が約100nm以下のナノダイアモンドがいくつかの実施形態において有用である場合がある。本別記しなければ明細書中で用いられるとき、粒径は粒子の主軸に沿う値の平均であり透過型電子顕微鏡写真から概算することができる。商用ナノダイアモンドは合成により製造され表面改質が可能であるが、分光技術を使用してそれらの構造全体を確認することができる。ナノダイアモンドの表面改質は、ナノダイアモンドの加工のためにならびに特定の溶媒およびバインダーとの相溶性のために有用であり得る。以下の実施例において説明されるように、良い透明性および低いヘイズを有する高品質光学コーティングの製造のために様々な溶媒中に商用ナノダイアモンドをよく分散させることができる。他のナノ粒子充填剤は、ナノダイアモンドと同じ範囲の平均粒径を有することができる。ナノ粒子は、略球形状または他の適当な形状を有することができる。ナノダイアモンドまたは他の特性強化ナノ粒子について上記の平均粒径の明示範囲内のさらに別の範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを当業者は認識するであろう。
【0019】
ナノダイアモンドは、望ましい硬度および熱伝導率をナノダイアモンドを混合する複合コーティングに与えることができる。また、ダイアモンドは良い誘電体であり、ナノダイアモンド複合コーティングが、構造中のフィルムに損傷を与え得る強い電界の散逸を促進することができるようにする。他のナノ粒子を同様に導入して、得られたコーティングの良い光学透明性に見合う機能性ナノ粒子を混合する複合物に同様な性質を提供することができる。透明導電性フィルムを形成するために、硬度を与えるための他の適したナノ粒子には、限定されないが、例えば、窒化ホウ素、B
4C、立方晶BC
2N、炭化ケイ素、結晶性アルファ−酸化アルミニウム(サファイア)等が含まれる。硬度に寄与するナノ粒子は、少なくとも約1650kgf/mm
2(16.18GPa)のビッカース硬度を有するバルク材料から形成され得る。
【0020】
熱伝導率に関して、ナノダイアモンドの他に、グラフェン、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、ヒ化ガリウム、リン化インジウムおよびそれらの混合物が高熱伝導率を導入するために適し得る。いくつかの実施形態において、高熱伝導率材料が少なくとも約30W/(m・K)の熱伝導率を有することができ、最も高い熱伝導率のなかでもグラフェンおよびダイアモンドが知られている。ナノ粒子として導入され得る特に高い誘電率材料には、限定されないが、例えば、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸鉛、チタン酸鉛ジルコニウム、チタン酸カルシウム銅およびそれらの混合物が含まれる。ポリマーベースの保護コーティングの硬度に関して、以下にさらに説明されるように、フィルム用の鉛筆硬度試験を使用して硬度を測定することができる。また、耐引掻性は、以下の実施例においてスチールウールを使用して評価される。
【0021】
コーティングは一般的に、溶液コーティングによって形成される。ナノダイアモンドなどのナノ粒子を分散させることができ、次にナノ粒子の分散体をポリマーバインダーのコーティング溶液とブレンドすることができるが、加工順序は、溶媒の選択および粒子の分散性に応じて適している場合がある。コーティング溶液中のナノ粒子は、約0.005重量%〜約5.0重量%、さらなる実施形態において約0.0075重量%〜約1.5重量%およびさらに別の実施形態において約0.01重量%〜約1.0重量%の範囲の濃度を有することができる。上記の明示範囲内の濃度のさらに別の範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを当業者は認識するであろう。
【0022】
本明細書の特定の目的の透明な電気導電性要素、例えば、フィルムは、薄く広がった金属導電層を含む。導電層は一般的に、所望の量の光学透明性をもたらすように薄く広がっているので、金属の被覆範囲は導電性要素の層の上にかなり大きい間隙を有する。例えば、透明な電気導電性フィルムは、層に沿って堆積される金属ナノワイヤーを含むことができ、パーコレーションのために十分な接触をもたらして適した導電経路を提供することができる。他の実施形態において、透明な電気導電性フィルムが融着金属ナノ構造ネットワークを含むことができ、それは望ましい電気的および光学的性質を示すことが判明している。本明細書において言及される導電率は、特に別記しない限り、電気導電率を指す。
【0023】
本明細書に記載された充填剤添加ポリマーフィルムは、一般的に透明な光学フィルムのためのおよび特に透明導電性フィルム中の薄く広がった金属導電性要素の保護のための望ましい性質を提供することができる。フィルムの厚さは、フィルムを通る良い電気導電率が得られるように十分に薄く選択され得る。フィルムの硬さが引掻きおよび変形に対して耐性がある構造物を製造することができ、高熱伝導率が熱の除去を促進して薄く広がった金属導電性要素の熱による損傷の可能性を抑えることができる。薄く広がった金属導電性要素は、特定の構造に関係なく、環境攻撃に対して弱い。
【0024】
一般的には、様々な薄く広がった金属導電層が金属ナノワイヤーから形成され得る。金属ナノワイヤーで形成され、ナノワイヤーを接合部で偏平にするように加工して導電率を改良するフィルムが、“Transparent Conductors Comprising Metal Nanowires”と題されたAldenらに対する米国特許第8,049,333号明細書(参照によって本願明細書に組み込む)に記載されている。金属導電率を増加させるために表面に埋め込まれた金属ナノワイヤーを含む構造物が“Patterned Transparent Conductors and Related Manufacturing Methods”と題されたSrinivasらに対する米国特許第8,748,749号明細書(参照によって本願明細書に組み込む)に記載されている。しかしながら、融着金属ナノ構造ネットワークについて高い電気導電率に関して望ましい性質ならびに透明性および低いヘイズに関して望ましい光学的性質が見出されている。隣接した金属ナノワイヤーの融着が商業的に適切な加工条件下の化学プロセスに基づいて実施され得る。
【0025】
金属ナノワイヤーを様々な金属から形成することができ、金属ナノワイヤーは商業的に入手可能である。金属ナノワイヤーは本質的に導電性であるが、金属ナノワイヤーベースをベースとしたフィルムの抵抗の大部分はナノワイヤー間の接合によると考えられる。加工条件およびナノワイヤーの性質に応じて、堆積されただけの、比較的透明なナノワイヤーフィルムのシート抵抗は、例えばギガオーム/sqの範囲であるかまたはさらに高いなど、非常に大きいことがあり得る。光学透明性を損なわずにナノワイヤーフィルムの電気抵抗を低減する様々な方法が提案されている。金属ナノ構造ネットワークを形成する低温化学融着は、光学透明性を維持しながら電気抵抗を低下させるのに非常に有効であることが判明している。
【0026】
特に、金属ナノワイヤーベースをベースとした電気導電性フィルムの達成に関する著しい前進は、金属ナノワイヤーの隣接した部分が融着する融着金属ネットワークを形成するための十分に制御可能な方法の発見であった。様々な融着源を使用する金属ナノワイヤーの融着はさらに、“Metal Nanowire Networks and Transparent Conductive Material”と題された、Virkarらに対する米国特許出願公開第2013/0341074号明細書、“Metal Nanostructured Networks and Transparent Conductive Material”と題された、Virkarらに対する米国特許出願公開第2013/0342221号明細書(出願公開第2013/0342221号)、“Fused Metal Nanostructured Networks,Fusing Solutions With Reducing Agents and Methods for Forming Metal Networks”と題された、Virkarらに対する米国特許出願公開第2014/0238833号明細書(出願公開第2014/0238833号)、および“Transparent Conductive Coatings Based on Metal Nanowires and Polymer Binders,Solution Processing Thereof,and Patterning Approaches”と題された、Yangらに対する米国特許出願公開第2015/0144380号明細書(出願公開第2015/0144380号)および“Metal Nanowire Inks for the Formation of Transparent Conductive Films With Fused Networks”と題された、Liらに対する係属中の米国特許出願第14/448,504号明細書(全て参照によって本願明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0027】
透明導電性フィルムは一般的に、光学的性質を好ましくないほど変えずに構造物の加工性および/または機械的性質に寄与するいくつかの成分または層を含む。薄く広がった金属導電層は、透明導電性フィルムに組み込む時に望ましい光学的性質を有するように設計することができる。薄く広がった金属導電層はポリマーバインダーをさらに含んでもよく含まなくてもよい。別記しない限り、厚さへの言及は、言及される層またはフィルムの平均厚さを指し、隣接した層は、特定の材料に応じてそれらの境界で絡み合わせてもよい。いくつかの実施形態において、フィルム構造物全体の、可視光線の全透過が少なくとも約85%、ヘイズが約2パーセント以下および形成後のシート抵抗が約250ohms/sq以下であり得るが、本明細書においてかなりより良い性能が記載されている。
【0028】
透明導電性フィルムのために透明コーティング中にまたは薄く広がった金属導電層を形成するためインク中に直接に導入するために、充填剤添加オーバーコートは一般的にシート抵抗を著しく増加させず、およびいくつかの実施形態においてシート抵抗は相応する未充填フィルムのシート抵抗に対して約20%以下、さらなる実施形態において、約15%以下およびさらに別の実施形態において、約10%以下増加する。一般的な光学用途については、オーバーコートは、相応する未充填フィルムの全透過のパーセント値に対して可視光線の全透過率を約5以下、さらなる実施形態において約3以下、さらに別の実施形態において約2以下および他の実施形態において約1以下減少させ得る。またコーティング中の充填剤によってヘイズが多量に増加しないのが望ましいことがあり得る。いくつかの実施形態において、ヘイズ値は、相応する未充填フィルムのヘイズ値に対して、パーセントとして一般的に記録されるヘイズの単位で約0.5以下、さらなる実施形態において約0.4以下およびさらに別の実施形態において約0.3以下増加し得る。いくつかの実施形態において、ヘイズが減少する場合がある。上記の明示範囲内のシート抵抗の増加、全透過率の変化およびヘイズの変化のさらに別の範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを当業者は認識するであろう。溶媒中に同じ濃度の他の成分を有するコーティング溶液を使用して基準未充填フィルムが製造され、同様に加工されるが、最終厚さはわずかに異なっていてもよい。
【0029】
薄く広がった金属導電層の非常に有効な安定化が構造全体の適切な設計によって達成され得ることが見出された。特に、オーバーコート層またはアンダーコート層であり得る、薄く広がった金属導電性要素に隣接した層内に安定化組成物を置くことができる。さらに、例えば、フィルムの成分として、光学透明接着剤を使用して、透明導電性フィルムをデバイスに付着させることができ、光学透明接着剤を選択することによって所望の安定化度を得ることがかなり容易になることが見出された。特に、光学透明接着剤は、キャリア層上に両面接着剤層を含むことができる。出願人は特定の光学透明接着剤の作用の理論によって限定されることを望まないが、キャリア層は、望ましい湿分およびガスバリアを提供して薄く広がった金属導電層を保護する場合がある、ポリエステル、例えばPETまたは商用バリア層材料であり得る。
【0030】
透明な、電気導電性フィルムは、例えば太陽電池およびタッチスクリーンにおいて重要な用途がある。金属ナノワイヤー成分から形成される透明導電性フィルムは、従来の材料に比べてより低い加工費およびより適合性のある物理的性質が期待できる。様々な構造ポリマー層を有する複数層フィルムにおいて、得られたフィルム構造物は望ましい電気導電率を維持しながら加工に対して強靭であることが見出されており、本明細書に記載されるような望ましい成分を混合することによって、フィルムの機能性を低下させずに安定化をさらにもたらすことができ、通常使用する時にフィルムを組み込むデバイスが適した寿命を有するようにできる。
【0031】
透明コーティングおよびフィルム
本明細書に記載されるナノ粒子充填ポリマーを有する透明コーティングを一般的に透明基材上にコートして所望の構造物に組み込む。以下の節において一般的な構造物が説明され、透明導電性フィルムのための特定の用途が見出される。一般的には、透明な充填剤添加コーティングの前駆体溶液を、適切なコーティング方法を使用して透明基材上に堆積させて、透明構造物を形成することができる。いくつかの実施形態において、透明基材は、最終デバイスまたは代わりにまたはさらに一体光学部品、例えば発光デバイスまたは受光デバイスに組み込むためのフィルムであり得る。簡単な不動態透明基材に焦点を合わせて考察し、それに応じてその他の構造物を考察する。
【0032】
一般的には、任意の適当な透明基材が適し得る。したがって、適した基材は、例えば、無機ガラス、例えばシリケートガラス、透明ポリマーフィルム、無機結晶等から形成され得る。いくつかの実施形態において、基材はポリマーフィルムである。基材のために適したポリマーには、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアクリレート、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、フルオロポリマー、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、ポリシロキサン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリノルボルネン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、アクリロニトリルブタジエンスチレンコポリマー、環状オレフィンポリマー、環状オレフィンコポリマー、ポリカーボネート、それらのコポリマーまたはそれらのブレンド等が含まれる。フルオロポリマーには、例えば、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ヘキサフロオロプロピレン、ぺルフルオロプロピルビニルエーテル、ペルフルオロメチルビニルエーテル、ポリクロロトリフルオロエチレン等が含まれる。いくつかの実施形態のためのポリマーフィルムは、約5ミクロン〜約5mm、さらなる実施形態において、約10ミクロン〜約2mmおよびさらに別の実施形態において約15ミクロン〜約1mmの厚さを有し得る。上記の明示範囲内の厚さのさらに別の範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを当業者は認識するであろう。基材は、組成物および/または他の性質によって区別される複数の層を含むことができる。透明導電性フィルムの基材のために適した材料のより具体的な範囲が以下に示され、一般的な基材の範囲は、これらの具体的な材料および性質を包含する。コーティングのための適したポリマーには、例えば、放射線硬化性ポリマーおよび/または熱硬化性ポリマー、例えばポリウレタン、アクリル樹脂、アクリルコポリマー、セルロースエーテルおよびエステル、他の構造多糖類、ポリエーテル、ポリエステル、エポキシ含有ポリマー、それらのコポリマー、およびそれらの混合物が含まれ得る。
【0033】
特性強化ナノ粒子充填剤を有する透明コーティングは一般的に、約25ミクロン以下、さらなる実施形態において約20ナノメートル(nm)〜約10ミクロン、他の実施形態において約35nm〜約5ミクロン、およびさらに別の実施形態において約50nm〜約2ミクロンの厚さを有することができる。ナノ粒子充填ポリマーから形成される透明コーティングは、約0.01重量パーセント(重量%)〜約70重量%の特性強化ナノ粒子、さらなる実施形態において約0.05重量%〜約60重量%、他の実施形態において約0.1重量%〜約50重量%、およびさらに別の実施形態において約0.2重量%〜約40重量%の特性強化ナノ粒子を含むことができる。透明コーティングは、ポリマーバインダー、任意選択の特性改良剤、例えば架橋剤、湿潤剤、粘度調整剤、および/または透明導電性フィルムのための安定剤、例えば酸化防止剤および/または紫外線安定剤、および任意選択により薄く広がった金属導電層をさらに含むことができる。上記の明示範囲内の厚さおよび充填ポリマー中のナノ粒子の濃度のさらに別の範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを当業者は認識するであろう。
【0034】
特性強化ナノ粒子に対して、ナノダイアモンドは、特に硬度および熱伝導率に対してならびに或る程度の誘電率に対して望ましい性質を示す。バルクダイアモンドは、硬度および熱伝導率の両方に対して公知の材料のうちとりわけ最も大きい値を有する。しかしながら、さらに別の材料がこれらの性質の望ましい値を提供する。ナノ粒子の値はあまり利用しやすくない場合があるので、便宜上、材料の性質は相応するバルク材料を参照するが、ナノ粒子の性質は一般的にバルク性質をほぼ直接に反映する。特性強化ナノ粒子の材料は一般的に、無機材料または材料の大部分が元素炭素である炭素材料のどちらかであり、それらは例えば、フラーレン、3次元結晶(ダイアモンド)、2次元結晶(黒鉛炭素)、非晶形(例えば、カーボンブラック)等として公知である。ナノ粒子は、過半のコア材料に応じてナノ粒子の本性を変えずに有機表面改質形態などの表面改質形態を有することができる。
【0035】
関連材料について、バルク材料の硬度は、ビッカース硬度測定を参照することができる。ビッカース硬度は、材料にくぼみをつける尺度である。ビッカース硬度は、ASTM E384およびISO 6507−1−2005(両方とも参照によって本願明細書に組み込む)などの一般に認められている標準を使用して測定され得る。目的とする多くの材料についてビッカース硬度を記載する。ビッカース硬度は一般的に、HV(ビッカースピラミッド数、kg−force/mm
2)の単位で記録されるが、それは実際には圧力ではなくてもパスカルの単位で記録されてもよい。いくつかの実施形態において、ナノ粒子に相応するバルク材料は、少なくとも約1650HV、いくつかの実施形態において少なくとも約1750HVおよびさらに別の実施形態において少なくとも約1800HVのビッカース硬度を有することができる。ナノダイアモンドの他に、特性強化ナノ粒子のためのさらに別の硬質材料には、例えば、窒化ホウ素、B
4C、立方晶BC
2N、炭化ケイ素、タングステンカーバイド、硼化アルミニウム、結晶性アルファ酸化アルミニウム(サファイア)等が含まれる。
【0036】
高熱伝導率材料に関して、適した材料は、少なくとも約30W/(m・K)、さらなる実施形態において少なくとも約35W/(m・K)、およびいくつかの実施形態において少なくとも約50W/(m・K)のバルク熱伝導率を有し得る。上記の明示範囲内の熱伝導率のさらに別の範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを当業者は認識するであろう。ナノダイアモンドを別として、適した高熱伝導率材料には、例えば、多くの元素金属(非イオン化元素の形態)および金属合金、グラフェン、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、ヒ化ガリウム、リン化インジウム、酸化アルミニウム、およびそれらの混合物が含まれる。高誘電率に関して、様々なチタン酸塩が例えばチタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸鉛、チタン酸鉛ジルコニウム、チタン酸カルシウム銅およびそれらの混合物が高誘電率を有する。
【0037】
関連ナノ粒子は一般的に市販されている。ナノ粒子供給元には、例えば、US Research Nanomaterials,Inc.(Texas,USA)(多くの目的とする材料を販売している)、BYK−Chemie GMbH.(Germany)、Sigma−Aldrich(Missouri,USA)、Nanostructured and Amorphous Materials(Texas,USA)、Sky Spring Nano Materials Inc.(Texas,USA)およびNanophase Technologies Corp.(Romeoville,Illinois,USA)が含まれる。また、“Nanoparticle−Based Powder Coatings and Corresponding Structures”(参照によって本願明細書に組み込まれる)と題された、Biらに対する米国特許第7,384,680号明細書に記載されるように、広範囲の分散性ナノ粒子の合成のためのレーザー熱分解技術が開発されている
【0038】
ナノダイアモンド、またはダイアモンドナノ粒子は一般的に天然ナノダイアモンドであっても合成ナノダイアモンドであってもよく、ナノダイアモンド粒子は、黒鉛および/または非晶質炭素のシェルによって囲まれる結晶ナノダイアモンドコアを含むことができる。ナノダイアモンドの表面は、特定の合成方法ならびに任意選択の合成後の加工、例えば表面官能化により形成されてもよい。商業用途のために、適したダイアモンドナノ粒子は一般的に合成ナノダイアモンドであり、それらは市販されている。ナノダイアモンドの表面を官能化して、ナノダイアモンドの化学的性質、例えば特定のポリマーバインダーに対する分散性および/または相溶性に影響を与えてもよい。ナノダイアモンド粒子の平均直径は一般的に、約100nm以下、さらなる実施形態において約2nm〜約75nmおよびさらに別の実施形態において約2.5nm〜約50nmであり得る。上記の明示範囲内のナノダイアモンド平均直径のさらに別の範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを当業者は認識するであろう。
【0039】
合成ナノダイアモンドはいくつかの手段によって製造され得る。例えば、化学蒸着などの蒸気相形成、黒鉛のイオン照射、炭化物の塩素化、および衝撃波エネルギーを使用する技術は、このようなダイアモンド粒子または薄いナノダイアモンドフィルムを製造するためのいくつかの可能性がある方法の一部である。粗い球形状のダイアモンドナノ粒子の他に、ナノダイアモンドロッド、シート、フレーク等の他の一次元および二次元ナノダイアモンド構造物が製造されており、それらはまた、紫外線保護組成物中で使用され得る(これらの構造物の合成方法に関してO.ShenderovaおよびG.McGuire著,“Ultrananocrystalline diamond:Synthesis,Properties and Applications”中の章である“Types of Nanodiamonds”、編者:O.Shenderova,D.Gruen,William−Andrews Publisher、2006年(参照によって本願明細書に組み込む)を参照のこと)。商用ナノダイアモンド粒子は一般的に、“Diamond−Carbon Material and Method for Producing Thereof”と題されたVereschaginらに対する米国特許第5,916,955号明細書(参照によって本願明細書に組み込む)に記載されるような制御爆破技術によって形成される。デトネーションナノダイアモンドの改良された精製方法は、例えば、“Detonation Nanodiamond Material Purification Method and Product Thereof”と題されたDolmatovらに対するPCT出願国際公開2013/135305号パンフレット(参照によって本願明細書に組み込む)に記載されている。様々な表面化学を有するかまたは様々な溶媒中に分散される商用ナノダイアモンドが、株式会社ナノ炭素研究所(日本)、PlasmaChem(Germany)、Carbodeon Limited OY(Finland)、NEOMOND(Korea)、Sigma−Aldrich(USA)、およびRay Techniques Ltd.(Israel)から入手可能である。
【0040】
ナノダイアモンド粒子はそれぞれ一般的に、機械的に安定な、化学的に不活性な結晶コアと、比較的化学的に活性であると一般的に考えられる表面とを含む。ナノダイアモンド粒子表面を目標とする種で官能化することによって、ナノダイアモンドに改良された化学的および/または物理的性質を与えることができる。官能化を様々な化学、光化学、および電気化学方法によって実施して、異なった有機官能基をナノダイアモンド上にグラフトすることができる。ナノダイアモンドの所望の物理的性質および用途に応じて、官能化ナノダイアモンド材料はフッ素化、塩素化、カルボキシ化、アミノ化、ヒドロキシ化、水素化、スルホン化されるかまたはそれらの混合物であり得る。例えば、“Process for Production of Dispersion of Fluorinated Nano Diamond”と題されたYaoに対する米国特許出願公開第2011/0232199号明細書および(カルボキシ化ナノダイアモンド)“A Method for Producing Zeta Negative Nanodiamond Dispersion and Zeta Negative Nanodiamond Dispersion”と題されたMyllyakiらに対するPCT出願国際公開第2014/174150号パンフレット(参照によって本願明細書に組み込む)を参照のこと。官能化および/または精製を使用して、ナノ粒子凝集塊を除去および/または分解することができる。一般的には、商用ナノダイアモンドは、本明細書に記載されるような比較的均一な薄いフィルムに加工するために十分に非凝集である。溶液のpH、濃度、溶媒およびその他の分散性を調節して、ナノダイアモンドの分散をさらに補助することができる。例えば、カルボキシ化ナノダイアモンドは一般的に、より高いpHの溶液中に安定して分散され、水素化およびアミノ化ナノダイアモンドは一般的に、より低いpHの溶液中に安定して分散される。
【0041】
充填ポリマーフィルムの硬度は、ASTM D3363に基づくフィルム用の鉛筆硬度試験を使用して測定することができる。鉛筆削り手順の後に、鉛筆を45°の角度に保持しながら下方に加えた一定の力を使用する。500グラムまたは750グラムによる測定のために鉛筆硬度キットを使用した。硬度は、導電基層上で黒鉛評価スケールにおいて異なった鉛筆の効果を分析することによって測定された。基層に損傷が生じなかった場合、フィルムは合格したと考えられた。フィルムを20倍の倍率でLeica顕微鏡下で検査した。硬度スケールは9B〜9Hの等級値にわたり、Bの高い方の値が硬度の低い方の値に相当し、Hの高い方の値が増加した硬度に相当し、Fの値がBとHの範囲をつなぎ、最も低い「B」値はHBであり、その後に、B、2B、...、9Bが続く。いくつかの実施形態において、特性強化ナノ粒子を有するコーティングは、特性強化ナノ粒子を有しないこと以外は他の全ての点において同等のコーティングに比べて少なくとも1等級大きい硬度、いくつかの実施形態において少なくとも約2等級大きい、そしてさらなる実施形態において少なくとも約3等級大きい鉛筆硬度を有し得る。他の硬度スケールおよび試験が入手可能であり、定性的に同様な傾向になるのがよい。また、耐引掻性は、以下の実施例においてさらに説明されるように、100gの重みをかけてスチールウールを使用して表面を摩擦して評価される。透明なオーバーコートが適用された後に、超精密スチールウールを使用して、表面を摩擦することによってフィルムを引っ掻いた。
【0042】
透明充填コーティングは、適切なコーティング方法を使用して前駆体溶液をコートすることによって形成され得る。特性強化ナノ粒子および/または安定化組成物が、適切な相溶性を有するコーティングを堆積するように選択された適した溶媒中に混合され得る。適した溶媒には一般的に、例えば、水、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、例えばグリコールエーテル、芳香族化合物、アルカン等およびそれらの混合物が含まれる。具体的な溶媒には、例えば、水、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、第三ブチルアルコール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、環状ケトン、例えばシクロペンタノンおよびシクロヘキサノン、グリコールエーテル、トルエン、ヘキサン、エチルアセテート、ブチルアセテート、エチルラクテート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、PGMEA(2−メトキシ−1−メチルエチルアセテート)、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、蟻酸、またはそれらの混合物が含まれる。
【0043】
一般的には、コーティングのためのポリマー、一般的に架橋性ポリマーは、商用コーティング組成物として供給されるかまたは選択されたポリマー組成物を使用して調合され得る。放射線硬化性ポリマーおよび/または熱硬化性ポリマーの適した種類には、例えば、ポリシロキサン、ポリシルセスキオキサン、ポリウレタン、アクリル樹脂、アクリルコポリマー、セルロースエーテルおよびエステル、ニトロセルロース、他の水不溶性構造多糖類、ポリエーテル、ポリエステル、ポリスチレン、ポリイミド、フルオロポリマー、スチレン−アクリレートコポリマー、スチレンブタジエンコポリマー、アクリロニトリルブタジエンスチレンコポリマー、ポリスルフィド、エポキシ含有ポリマー、それらのコポリマー、およびそれらの混合物が含まれる。適した商用コーティング組成物には、例えば、Dexerials Corporation(日本)製のコーティング溶液、Hybrid Plastics,Inc.(Mississippi,USA)製のPOSS(登録商標)コーティング、California Hardcoating Company(California,USA)製のシリカ充填シロキサンコーティング、SDC Technologies,Inc.(California,USA)製のCrystalCoat紫外線硬化性コーティングが含まれる。ポリマー濃度および相応して他の不揮発剤の濃度が、選択されるコーティング法のための適切な粘度など、コーティング溶液の所望のレオロジーを達成するように選択され得る。溶媒を添加または除去して全固体濃度を調節することができる。固形分の相対量は、完成コーティング組成物の組成を調節するように選択することができ、固形分の全量は、乾燥コーティングの所望の厚さを達成するように調節することができる。一般的に、コーティング溶液は、約0.025重量%〜約50重量%、さらなる実施形態において約0.05重量%〜約25重量%およびさらに別の実施形態において約0.075重量%〜約20重量%のポリマー濃度を有することができる。上記の特定の範囲内のポリマー濃度のさらに別の範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを当業者は認識するであろう。
【0044】
コーティング層を形成するためのコーティング溶液中に特性強化ナノ粒子を混合することができる。コーティング前駆体溶液は、約0.005重量%〜約5重量%のナノ粒子、さらなる実施形態において約0.01重量%〜約3重量%およびさらに別の実施形態において約0.025重量%〜約2重量%の特性強化ナノ粒子を含むことができる。上記の明示範囲内のコーティング溶液中の特性強化ナノ粒子のさらに別の範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを当業者は認識するであろう。湿潤剤、粘度調整剤、分散助剤等のさらに別の添加剤を必要に応じて添加することができる。
【0045】
特性強化ナノ粒子を有する透明コーティングはいくつかの実施形態において、特性強化ナノ粒子を有さない相応するコーティングに対して約5パーセントポイント以下、さらなる実施形態において約3以下およびさらに別の実施形態において約1.5パーセントポイント以下の可視光線の全透過率の減少を起こし得る。また、特性強化ナノ粒子を有する透明コーティングは、相応する未充填コーティングに対していくつかの実施形態において約1.5パーセントポイント以下、さらなる実施形態において約1以下、およびさらに別の実施形態において約0.6パーセントポイント以下のヘイズの増加を起こし得る。上記の明示範囲内の充填ポリマーコーティングによる光学的性質の改良のさらに別の範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを当業者は認識するであろう。相応する未充填コーティングは、存在しないナノ粒子以外は溶媒中に同じ濃度の成分を有し、同様に製造されるが、コーティングの最終厚さは相応するコーティングに対してわずかに異なっていてもよい。
【0046】
コーティング前駆体溶液の堆積のために、浸漬コーティング、噴霧コーティング、ナイフエッジコーティング、バーコーティング、マイヤーロッドコーティング、スロットダイコーティング、グラビア印刷、スピンコーティング等の任意の適当な堆積方法を使用することができる。堆積方法は、堆積される液体の量を誘導し、溶液の濃度を調節して、表面上に生成コーティングの所望の厚さをもたらすことができる。分散体でコーティングを形成した後、コーティングを乾燥させて液体を除去し、適切に架橋させることができる。
【0047】
透明導電性フィルム
透明な電気導電性構造物またはフィルムは一般的に、光学的性質を著しく好ましくない方向に変えずに電気導電率を提供する薄く広がった金属導電層と、導電性要素の機械的支持ならびに保護を提供する様々な付加的な層とを含む。一般的に、ポリマーオーバーコートが薄く広がった金属導電層の上に置かれる。本明細書に記載される特性強化ナノ粒子が、オーバーコート層、任意選択のアンダーコート層内におよび/または薄く広がった金属導電層内に直接に入れられることがあり得る。薄く広がった金属導電層は非常に薄く、相応して機械的誤用およびその他の誤用によって損傷を受けやすい。特性強化ナノ粒子は、前節で説明されたように、或るタイプの保護、および安定化化合物を提供することができ、ならびにフィルムの他の要素がさらに別の保護を提供することができる。環境被害に対する感度に関して、アンダーコートおよび/またはオーバーコートが、望ましい保護を提供することができる安定化組成物を含むことができ、特定の種類の光学透明接着剤および/またはバリア層もまた、光、熱、化学物質およびその他の環境被害からの有益な保護を提供することができることが見出された。ここでは湿り空気、熱および光による環境攻撃に焦点を合わせているが、導電層をこれらの環境攻撃から保護するために使用されるポリマーシートもまた、接触等からの保護を提供することができる。
【0048】
したがって、基材の構造内に1つまたは複数の層を有することができる基材上に薄く広がった金属導電層を形成することができる。基材は一般的に、自立フィルムまたはシート構造として扱うことができる。アンダーコートと称される、薄い溶液加工層を任意選択により基材フィルムの上面に沿っておよび薄く広がった金属導電層のすぐ下に置くことができる。また、基材の反対側の薄く広がった金属導電の面に特定の保護をもたらす付加的な層で薄く広がった金属導電性層をコートすることができる。一般的には、電気導電性構造物を最終製造物においてどちらかの向きに置くことができ、すなわち、基材の外側に向いている基材が電気導電性構造物を支持する製造物の表面に接している。いくつかの実施形態において、複数のコーティング、すなわち、アンダーコートおよびオーバーコートを適用することができ、それぞれの層が、相応する特性強化のための選択される添加剤を有することができる。
【0049】
図1を参照すると、典型的な透明導電性フィルム100が基材102、アンダーコート層104、薄く広がった金属導電層106、オーバーコート層108、光学透明接着剤層110および保護表面層112を含むが、全ての実施形態が全ての層を備えるわけではない。特に、付加的な被覆層を後で加えることを必要とする場合もしない場合もある後程の加工のために上層としてオーバーコートを有する透明導電性フィルムのロールを分配することができる。これらの実施形態において、機械的に硬いオーバーコートを有することは、電気導電性フィルムに対する損傷のリスクを低減する観点から望ましいことがあり得る。透明導電性フィルムは一般的に、薄く広がった金属導電層と、薄く広がった金属導電層の各面上の少なくとも1つの層とを含む。透明導電性フィルムの全厚さは、いくつかの実施形態において厚さ5ミクロン〜約3ミリメートル(mm)、さらなる実施形態において約10ミクロン〜約2.5mmおよび他の実施形態において約15ミクロン〜約1.5mmの厚さを有することができる。上記の明示範囲内の厚さのさらに別の範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを当業者は認識するであろう。いくつかの実施形態において、製造しただけのフィルムの長さおよび幅は、製造物としてさらに加工するためフィルムを直接に導入するために特定の用途に適しているように選択され得る。さらに別のまたは代替実施形態において、フィルムの幅は、特定の用途のために選択され得るが、他方、フィルムの長さは、使用するためにフィルムを所望の長さに切断することを考慮して長くなっていることがあり得る。例えば、フィルムは長いシートまたはロール状であり得る。同様に、いくつかの実施形態において、フィルムはロールで支持するかまたは別の大きな標準形式であり得て、使用するためにフィルムの要素を所望の長さおよび幅に切断することができる。
【0050】
基材102は一般的に、適切なポリマーまたはポリマーから形成される耐久性支持体層を含む。いくつかの実施形態において、基材は、約10ミクロン〜約1.5mm、さらなる実施形態において約15ミクロン〜約1.25mmおよびさらに別の実施形態において約20ミクロン〜約1mmの厚さを有することができる。上記の明示範囲内の基材の厚さのさらに別の範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを当業者は認識するであろう。非常に良い透明性、低いヘイズおよび良い保護能力を有する適した光学透明ポリマーを基材のために使用することができる。適したポリマーには、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアクリレート、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、フルオロポリマー、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、ポリシロキサン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリノルボルネン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、アクリロニトリルブタジエンスチレンコポリマー、環状オレフィンポリマー、環状オレフィンコポリマー、ポリカーボネート、それらのコポリマーまたはそれらのブレンド等が含まれる。適した商用ポリカーボネート基材には、例えば、Bayer Material Scienceから市販されているMAKROFOL SR243 1−1 CG、TAP Plasticsから市販されているTAP(登録商標)Plastic、およびSABIC Innovative Plasticsから市販されているLEXAN(商標)8010CDEが含まれる。保護表面層112は独立に、この段落で上述した基材と同じ厚さの範囲および組成範囲に及ぶ厚さおよび組成を有することができる。
【0051】
含有させるために独立に選択可能である、任意選択のアンダーコート104および/または任意選択のオーバーコート108をそれぞれ、薄く広がった金属導電層106の下にまたは上に置くことができる。任意選択のコーティング104、108は、硬化性ポリマー、例えば、熱硬化性または放射線硬化性ポリマーを含むことができる。コーティング104、108のために適したポリマーは、金属ナノワイヤーインク中に含有させるためのバインダーとして以下に記載され、架橋剤に相当するポリマーおよび添加剤の候補が任意選択のコーティング104、108に同様に適用されるが、ここで説明を明確に繰り返すことはしない。コーティング104、108は、約25nm〜約2ミクロン、さらなる実施形態において約40nm〜約1.5ミクロンおよびさらに別の実施形態において約50nm〜約1ミクロンの厚さを有することができる。上記の明示範囲内のオーバーコートの厚さのさらに別の範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを当業者は認識するであろう。一般的には、オーバーコート108の薄さがオーバーコート108の電気導電率を可能にして、薄く広がった金属導電層106への電気接続を形成し得るが、いくつかの実施形態において、オーバーコートが副層を含むことができ、そこで副層の必ずしも全てではないがいくつかによって電気導電率が与えられる。
【0052】
任意選択の光学透明接着剤層110は、約10ミクロン〜約300ミクロン、さらなる実施形態において約15ミクロン〜約250ミクロンおよび他の実施形態において約20ミクロン〜約200ミクロンの厚さを有することができる。上記の明示範囲内の光学透明接着剤層の厚さのさらに別の範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを当業者は認識するであろう。適した光学透明接着剤は触圧接着剤であり得る。光学透明接着剤には、例えば、コート可能な組成物および接着テープが含まれる。紫外線硬化性液体光学透明接着剤は、アクリルまたはポリシロキサン化学に基づいて利用可能である。適した接着テープは、市販されている例えば、Lintec Corporation(MOシリーズ)、Saint Gobain Performance Plastics(DF713シリーズ)、Nitto Americas(Nitto Denko)(LUCIACS CS9621TおよびLUCIAS CS9622T)、DIC Corporation (DAITAC LTシリーズOCA、DAITAC WSシリーズOCAおよびDAITAC ZBシリーズ)、PANAC Plastic Film Company(PANACLEANシリーズ)、Minnesota Mining and Manufacturing(3M,Minnesota U.S.A.−製品番号8146、8171、8172、8173および同様な製品)およびAdhesive Research(例えば製品8932)から市販されている。
【0053】
薄く広がった金属導電層106のために基材上に供給されるナノワイヤーの量は、所望の量の透明性および電気導電率を達成するための要因のバランスに影響を与え得る。ナノワイヤーネットワークの厚さは基本的には走査電子顕微鏡検査を使用して評価することができるが、ネットワークは比較的薄く広がって光学透明性を提供することができ、測定を複雑にすることがあり得る。一般的には、薄く広がった金属導電性要素、例えば、融着金属ナノワイヤーネットワークは、約5ミクロン以下、さらなる実施形態において約2ミクロン以下および他の実施形態において約10nm〜約500nmの平均厚さを有する。しかしながら、薄く広がった金属導電性要素は一般的に、サブミクロンスケールの著しい表面構造を有する比較的開放構造物である。ナノワイヤーの添加量レベルは、容易に評価され得るネットワークの有用なパラメーターを提供することができ、添加量値は、厚さに関する代替パラメーターを提供する。したがって、本明細書中で用いられるとき、基材上へのナノワイヤーの添加量レベルは一般的に、基材1平方メートルについてのナノワイヤーのミリグラムとして示される。一般的には、金属導電性ネットワークは、融着されるか否かにかかわらず、約0.1ミリグラム(mg)/m
2〜約300mg/m
2、さらなる実施形態において約0.5mg/m
2〜約200mg/m
2、および他の実施形態において約1mg/m
2〜約150mg/m
2の添加量を有することができる。透明導電層は、約0.5重量%〜約70重量%の金属、他の実施形態において約0.75重量%〜約60重量%およびさらなる実施形態において約1重量%〜約50重量%の金属を導電性ネットワーク内に含むことができる。上記の明示範囲内の厚さおよび金属添加量のさらに別の範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを当業者は認識するであろう。薄く広がった金属導電層がパターン化される場合、厚さおよび添加量の考察は、金属が取り除かれないかまたはパターン化プロセスによってかなり減少される領域にだけ適用される。薄く広がった金属導電層は、ポリマーバインダーおよびその他の加工助剤等のほかに特性強化ナノ粒子を含むことができる。透明ポリマー層内の添加量について上に記載された特性強化ナノ粒子の濃度の範囲は一般的に、薄く広がった金属導電層にも適用される。
【0054】
一般的に、フィルム100の特定の成分について上記の全厚さの範囲内で、層102、104、106、108、110、112を例えば、他の副層と異なった組成を有する副層にさらに分割することができる。例えば、オーバーコート層は、異なった特性強化成分を有する副層を含むことができる。いくつかの実施形態において、上部オーバーコート副層は、層の電気導通を妨げる場合がある、高誘電体ナノ粒子を含んでもよい。その場合には、オーバーコート副層(例えば、ナノダイアモンドおよび/または安定化組成物を含んでもよい)を必ずしも貫通せずにオーバーコート108の上部副層を貫通する窓、金属タブ等を通して電気接続を形成することができる。また、複数層光学透明接着剤が上に考察されている。したがって、より複雑な層積層体を形成することができる。副層は、特定の層内の他の副層と同様に加工されてもされなくてもよい、例えば、1つの副層を形成することができるが、別の副層をコートして硬化させることができる。
【0055】
安定化組成物を適切な層内に入れて、薄く広がった金属導電層を安定化することができる。薄く広がった金属導電層が融着ナノ構造金属ネットワークを含む実施形態については、安定化化合物の存在が化学的融着プロセスを妨げる場合があるので形成されただけの薄く広がった金属導電層自体はこのような化合物を含まなくてもよい。代替実施形態において、薄く広がった金属導電層を形成するためのコーティング溶液中に安定剤を含有することは許容範囲である場合がある。同様に、安定化化合物を光学透明接着剤配合物に含有させることができる。しかしながら、安定化化合物をコーティング層に有効に含有させることができ、それは、有効な安定化をさらに提供しながら相応して比較的薄くされ得ることが見出された。安定化組成物を有するコーティングの具体的な説明は前節に説明されている。安定化組成物を有する層は薄いことがあり得るので、低総量の安定剤を使用して望ましい安定化を得ることができ、それは加工の観点からならびに光学的性質に対する影響が低いために望ましいことがあり得る。
【0056】
いくつかの用途のために、タッチセンサーの異なった領域など、フィルムの電気導電性部分をパターン化して所望の機能性を導入することが望ましい。パターン化を基材表面上の金属添加量を変えることによって実施するには、金属ナノワイヤーを選択された位置に印刷し、他の位置は金属を効果的に有さないようにするか、またはナノワイヤーを融着する前およびまたは後のどちらかに選択された位置から金属をエッチするかあるいは他の方法でアブレートするかどちらでも可能である。しかしながら、金属ナノワイヤーを選択的に融着することによってパターン化を行なうことができるように、本質的に等しい金属添加量を有する層の融着と非融着部分との間に電気導電率の高いコントラストを達成することができることが発見されている。このように、融着に基づいてパターン化することができることによって、例えば、融着溶液または蒸気の選択的な供給によって、ナノワイヤーの選択的な融着に基づいて重要な更なるパターン化の選択肢が提供される。金属ナノワイヤーの選択的な融着に基づくパターン化は、上記の米国特許出願公開第2014/0238833号明細書および米国特許出願公開第2015/0144380号明細書に記載されている。
【0057】
概略的な例として、
図2に示されるように、電気的抵抗領域128、130、132、134によって囲まれる複数の電気導電経路122、124、および126を有する基材表面120に沿う導電性パターンを融着金属ナノ構造ネットワークが形成することができる。
図2に示されるように、融着範囲は、電気導電経路122、124、および126に相応する3つの異なった電気導電性領域に相応する。3つの独立に接続される導電性領域が
図2に示されているが、2つ、4つまたは4つを超える導電性単独導電経路または領域を有するパターンを要望通りに形成することができるということは理解されたい。多くの商業用途のために、多数の要素を有するかなり複雑なパターンを形成することができる。特に、本明細書に記載されるフィルムのパターン化に適合される利用可能なパターン化技術を使用して、高解像度の特徴を有する非常に微細なパターンを形成することができる。同様に、特定の導電性領域の形状を要望通りに選択することができる。
【0058】
一般的に透明導電性フィルムが、フィルムの機能特徴を形成するために堆積される薄く広がった金属導電性要素の周りに形成される。適切なフィルム加工方法を使用して様々な層を構造物にコートするか、積層あるいは他の方法で付加する。本明細書に記載されるように、層の性質は、透明導電性フィルムの長期性能を著しく変えることがあり得る。薄く広がった金属導電層の堆積は融着金属ナノ構造層の文脈で以下にさらに説明されるが、非融着金属ナノワイヤーコーティングは、融着成分が存在していないこと以外は同様に堆積され得る。
【0059】
薄く広がった金属導電層が一般的に基材上に溶液コートされ、基材はその上にコーティング層を有しても有さなくてもよいが、その場合にはそれは薄く広がった金属導電層に隣接してアンダーコートを形成する。いくつかの実施形態においてオーバーコートを薄く広がった金属導電層上に溶液コートすることができる。紫外線、熱または他の放射線を適用して架橋を実施し、コーティング層および/または薄く広がった金属導電層中のポリマーバインダーを架橋することができ、これを一工程または複数工程で実施することができる。
【0060】
薄く広がった金属導電層
薄く広がった金属導電層は一般的に、金属ナノワイヤーから形成される。十分な添加量および選択されるナノワイヤーの性質によって、相応する適切な光学的性質を有するナノワイヤーを使用して適度の導電率を達成することができる。本明細書に記載された安定化されたフィルム構造物が様々な薄く広がった金属導電性構造物を有するフィルムの望ましい性能をもたらすことができることが予想される。しかしながら、特に望ましい性質は融着金属ナノ構造ネットワークによって達成された。
【0061】
上に要約したように、金属ナノワイヤー融着を実施するためにいくつかの実用的な方法が開発されている。良い光学的性質を有する望ましいレベルの電気導電率を達成するために金属添加量のバランスをとることができる。一般的には、金属ナノワイヤー加工は、金属ナノワイヤーを含む第1のインクと融着組成物を含む第2のインクとを有する二インクの堆積によって、または融着要素を金属ナノワイヤー分散体中に混ぜるインクの堆積によって達成され得る。インクは、付加的な加工助剤、バインダー等を含んでもよくさらに含まなくてもよい。特定のインク系のために適しているように好適なパターン化方法を選択することができる。
【0062】
一般的には、金属ナノ構造ネットワークの形成のための1つまたは複数の溶液またはインクは、よく分散された金属ナノワイヤー、融剤、および任意選択のさらに別の成分、例えば、ポリマーバインダー、架橋剤、湿潤剤、例えば、界面活性剤、増粘剤、分散剤、他の任意選択の添加剤またはそれらの組合せを一括して含むことができる。金属ナノワイヤーインクおよび/またはナノワイヤーインクと異なっている場合融着溶液のための溶媒は、水性溶媒、有機溶媒またはそれらの混合物を含むことができる。特に、適した溶媒には、例えば、水、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、例えばグリコールエーテル、芳香族化合物、アルカン等およびそれらの混合物が含まれる。具体的な溶媒には、例えば、水、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、第三ブチルアルコール、メチルエチルケトン、グリコールエーテル、メチルイソブチルケトン、トルエン、ヘキサン、エチルアセテート、ブチルアセテート、エチルラクテート、PGMEA(2−メトキシ−1−メチルエチルアセテート)、またはそれらの混合物が含まれる。溶媒は金属ナノワイヤーの良い分散体を形成する能力に基づいて選択されるのがよいが、溶媒はまた、他の選択される添加剤が溶媒に可溶性であるように添加剤と相溶性であるのがよい。融剤が金属ナノワイヤーを有する単一溶液に含有される実施形態については、溶媒またはその成分は、アルコールなどの融着溶液の重要な成分であってもなくてもよく、必要ならばそれに応じて選択され得る。
【0063】
金属ナノワイヤーインクは、一インクまたは二インク構成のどちらかで、約0.01〜約1重量パーセントの金属ナノワイヤー、さらなる実施形態において約0.02〜約0.75重量パーセントの金属ナノワイヤーおよびさらに別の実施形態において約0.04〜約0.5重量パーセントの金属ナノワイヤーを含有することができる。上記の明示範囲内の金属ナノワイヤー濃度のさらに別の範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを当業者は理解するであろう。金属ナノワイヤーの濃度は、基材表面上の金属の添加量ならびにインクの物理的性質に影響を与える。
【0064】
一般的には、ナノワイヤーは、高い導電率のために望ましいことがあり得る様々な金属、例えば銀、金、インジウム、スズ、鉄、コバルト、白金、パラジウム、ニッケル、コバルト、チタン、銅およびそれらの合金から形成され得る。商用金属ナノワイヤーは、Sigma−Aldrich(Missouri,USA),Cangzhou Nano−Channel Material Co.,Ltd.(China),Blue Nano(North Carolina,USA),EMFUTUR(Spain),Seashell Technologies(California,USA),Aiden(Korea),nanoComposix(U.S.A.)、Nanopyxis(Korea)、K&B(Korea),ACS Materials(China),KeChuang Advanced Materials(China),およびNanotrons(USA)から入手可能である。特に銀がすぐれた導電率を提供し、商用銀ナノワイヤーが入手可能である。あるいは、銀ナノワイヤーはまた、様々な公知の合成経路またはそれらの別形態を使用して合成され得る。良い透明性および低いヘイズを有するために、ナノワイヤーが様々な小さな直径を有することが望ましい。特に、金属ナノワイヤーが約250nm以下、さらなる実施形態において約150nm以下、他の実施形態において約10nm〜約120nmの平均直径を有することが望ましい。平均長さに対して、より長い長さのナノワイヤーは、ネットワーク内のより良い導電率をもたらすことが予想される。一般的には、金属ナノワイヤーは、少なくとも1ミクロン、さらなる実施形態において、少なくとも2.5ミクロンおよび他の実施形態において約5ミクロン〜約100ミクロンの平均長さを有することができるが、将来開発される改良された合成技術は、より長いナノワイヤーを可能にするかもしれない。アスペクト比は、平均長さを平均直径で割った比として規定することができ、いくつかの実施形態において、ナノワイヤーは、少なくとも約25、さらなる実施形態において約50〜約10,000およびさらに別の実施形態において約100〜約2000のアスペクト比を有することができる。上記の明示範囲内のナノワイヤーの寸法のさらに別の範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを当業者は理解するであろう。
【0065】
ポリマーバインダーおよび溶媒は一般的に、ポリマーバインダーが溶媒に可溶性または分散性であるように一貫して選択される。適切な実施形態において、金属ナノワイヤーインクは一般的に約0.02〜約5重量パーセントのバインダー、さらなる実施形態において約0.05〜約4重量パーセントのバインダーおよびさらに別の実施形態において約0.1〜約2.5重量パーセントのポリマーバインダーを含む。いくつかの実施形態において、ポリマーバインダーは、放射線架橋性有機ポリマーおよび/または熱硬化性有機バインダーなどの架橋性有機ポリマーを含む。バインダーの架橋を促進するために、金属ナノワイヤーインクは、いくつかの実施形態において約0.0005重量%〜約1重量%の架橋剤、さらなる実施形態において約0.002重量%〜約0.5重量%およびさらに別の実施形態において約0.005重量%〜約0.25重量%を含むことができる。ナノワイヤーインクは任意選択により、レオロジー改質剤またはその組合せを含むことができる。いくつかの実施形態において、インクは、表面張力を低下させるための湿潤剤または界面活性剤を含むことができ、湿潤剤は、コーティング性を改良するために有用であり得る。湿潤剤は一般的に溶媒に可溶性である。いくつかの実施形態において、ナノワイヤーインクは、約0.01重量パーセント〜約1重量パーセントの湿潤剤、さらなる実施形態において約0.02〜約0.75重量パーセントおよび他の実施形態において約0.03〜約0.6重量パーセントの湿潤剤を含むことができる。増粘剤を任意選択によりレオロジー改質剤として使用して分散体を安定化すると共に沈降を低減するかまたは除くことができる。いくつかの実施形態において、ナノワイヤーインクが任意選択により約0.05〜約5重量パーセントの増粘剤、さらなる実施形態において約0.075〜約4重量パーセントおよび他の実施形態において約0.1〜約3重量パーセントの増粘剤を含むことができる。上記の明示範囲内のバインダー、湿潤剤および増粘剤濃度のさらに別の範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを当業者は理解するであろう。
【0066】
広範囲のポリマーバインダーが金属ナノワイヤーのための溶媒中に溶解/分散させるのに適し得るが、適したバインダーには、コーティング用途のために開発されたポリマーが含まれる。ハードコートポリマー、例えば、放射線硬化性コーティングは、水性または非水性溶媒中に溶解するために選択され得る、例えば広範囲の用途のためのハードコート材料として市販されている。放射線硬化性ポリマーおよび/または熱硬化性ポリマーの適した種類には、例えば、ポリシロキサン、ポリシルセスキオキサン、ポリウレタン、アクリル樹脂、アクリルコポリマー、セルロースエーテルおよびエステル、ニトロセルロース、他の水不溶性構造多糖類、ポリエーテル、ポリエステル、ポリスチレン、ポリイミド、フルオロポリマー、スチレン−アクリレートコポリマー、スチレンブタジエンコポリマー、アクリロニトリルブタジエンスチレンコポリマー、ポリスルフィド、エポキシ含有ポリマー、それらのコポリマー、およびそれらの混合物が含まれる。商用ポリマーバインダーの例には、例えば、NEOCRYL(登録商標)銘柄アクリル樹脂(DMS NeoResins)、JONCRYL(登録商標)銘柄アクリルコポリマー(BASF Resins)、ELVACITE(登録商標)銘柄アクリル樹脂(Lucite International)、SANCURE(登録商標)銘柄ウレタン(Lubrizol Advanced Materials)、セルロースアセトブチレートポリマー(Eastman(商標)Chemical製のCAB銘柄)、BAYHYDROL(商標)銘柄ポリウレタン分散体(Bayer Material Science)、UCECOAT(登録商標)銘柄ポリウレタン分散体(Cytec Industries,Inc.)、MOWITOL(登録商標)銘柄ポリビニルブチラール(Kuraray America,Inc.)、セルロースエーテル、例えば、エチルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース、他の多糖系ポリマー、例えばキトサンおよびペクチン、ポリ酢酸ビニルのような合成ポリマー等が含まれる。ポリマーバインダーは放射線に露光時に自己架橋性であり得る、および/またはそれらは光開始剤または他の架橋剤によって架橋され得る。いくつかの実施形態において、光架橋剤は放射線に露光時にラジカルを形成する場合があり、次に、ラジカルはラジカル重合機構に基づいた架橋反応を引き起こす。適した光開始剤には、例えば、IRGACURE(登録商標)銘柄(BASF)、GENOCURE(商標)銘柄(Rahn USA Corp.)、およびDOUBLECURE(登録商標)銘柄(Double Bond Chemical Ind.,Co,Ltd.)などの市販の製品、それらの組合せ等が含まれる。
【0067】
湿潤剤を使用して金属ナノワイヤーインクの被覆性ならびに金属ナノワイヤー分散体の特質を改良することができる。特に、湿潤剤は、コーティングの後にインクが表面上に十分に広がるようにインクの表面エネルギーを低下させることができる。湿潤剤は界面活性剤および/または分散剤であり得る。界面活性剤は、表面エネルギーを低下させるように機能する材料のクラスであり、界面活性剤は、材料の溶解性を改良することができる。界面活性剤は一般的に、その性質に寄与する分子の親水性部分と分子の疎水性部分とを有する。広範囲の界面活性剤、例えば非イオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、双性イオン界面活性剤が市販されている。いくつかの実施形態において、界面活性剤に伴なう性質が問題ではない場合、非界面活性剤湿潤剤、例えば、分散剤もまた本技術分野に公知であり、インクの湿潤能力を改良するために有効であり得る。適した商用の湿潤剤には、例えば、COATOSIL(商標)商標エポキシ官能化シランオリゴマー(Momentum Performance Materials)、SILWET(商標)商標オルガノシリコーン界面活性剤(Momentum Performance Materials)、THETAWET(商標)商標短鎖非イオン性フッ素系界面活性剤(ICT Industries,Inc.)、ZETASPERSE(登録商標)商標ポリマー分散剤(Air Products Inc.)、SOLSPERSE(登録商標)商標ポリマー分散剤(Lubrizol)、XOANONS WE−D545界面活性剤(Anhui Xoanons Chemical Co.,Ltd.)、EFKA(商標)PU 4009ポリマー分散剤(BASF)、MASURF FP−815 CP、MASURF FS−910(Mason Chemicals)、NOVEC(商標)FC−4430およびFC−4432フッ素化界面活性剤(3M)、それらの混合物等が含まれる。
【0068】
増粘剤を使用して、金属ナノワイヤーインクからの固形分の沈降を低減または取り除くことによって分散体の安定性を改良することができる。増粘剤は、インクの粘度または他の流体性質をかなり変化させる場合もない場合もある。適した増粘剤は市販されており、例えば、変性尿素のCRAYVALLAC(商標)商標、例えばLA−100(Cray Valley Acrylics,USA)、ポリアクリルアミド、THIXOL(商標)53L商標アクリル増粘剤、COAPUR(商標)2025、COAPUR(商標)830W、COAPUR(商標)6050、COAPUR(商標)XS71(Coatex,Inc.)、変性尿素のBYK(登録商標)商標(BYK Additives)、アクリゾール DR73、アクリゾール RM−995、アクリゾール RM−8W(Dow Coating Materials)、Aquaflow NHS−300、Aquaflow XLS−530疎水性変性ポリエーテル増粘剤(Ashland Inc.),Borchi Gel L 75N、Borchi Gel PW25(OMG Borchers)等が含まれる。
【0069】
上記のとおり、薄く広がった金属導電層を堆積させるためのインクは、特性強化ナノ粒子をさらに含むことができる。適した特性強化ナノ粒子には、ナノダイアモンドならびに上述の他の特性強化ナノ粒子材料(本考察に具体的に組み込まれる)が含まれる。また、ナノ粒子の大きさの範囲はコーティングの文脈で上に記載され、同様にここに援用される。薄く広がった金属導電層を形成するための溶液は、約0.001重量%〜約10重量%のナノ粒子、さらなる実施形態において約0.002重量%〜約7重量%およびさらに別の実施形態において約0.005重量%〜約5重量%の特性強化ナノ粒子を含むことができる。上記の明示範囲内のナノ粒子濃度のさらに別の範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを当業者は認識するであろう。
【0070】
付加的な添加剤を一般的にそれぞれ約5重量パーセント以下、さらなる実施形態において約2重量パーセント以下およびさらなる実施形態において約1重量パーセント以下の量で金属ナノワイヤーインクに添加することができる。他の添加剤には、例えば、酸化防止剤、紫外線安定剤、脱泡剤または消泡剤、沈降防止剤、粘度改質剤等が含まれ得る。
【0071】
上記のとおり、金属ナノワイヤーの融着は様々な試剤によって達成され得る。理論によって限定されることを望まないが、融剤が金属イオンを可動化させると考えられ、自由エネルギーが融着プロセスにおいて低下されると思われる。過度の金属移動または成長はいくつかの実施形態において光学的性質の低下につながる場合があり、したがって、所望の光学的性質を維持しながら所望の電気導電率を得るために十分な融着を生成するため、一般的に短時間の間適度に制御された方法で平衡のシフトによって望ましい結果を達成することができる。いくつかの実施形態において、融着プロセスの開始は、溶液を部分乾燥させて成分の濃度を増加させることによって制御することができ、融着プロセスの急冷は、例えば、金属層を洗浄するかあるいはさらに乾燥を終えることによって達成することができる。融剤を金属ナノワイヤーと共に単一インクに混合することができる。一インク溶液は融着プロセスの適切な制御を提供することができる。
【0072】
いくつかの実施形態において、薄く広がったナノワイヤーフィルムを最初に堆積させ、別のインクを堆積させるかまたは堆積させない後続の加工によって金属ナノワイヤーを融着し、電気導電性である、金属ナノ構造ネットワークに形成する方法が使用される。融着プロセスは、融着蒸気への制御された暴露によっておよび/または溶解した融剤の堆積によって実施され得る。薄く広がった金属導電層は一般的に、選択された基材表面上に形成される。一般的に、堆積されただけのナノワイヤーフィルムを乾燥させて溶媒を除去する。加工をさらに以下に説明されるようにフィルムのパターン化のために適合させることができる。
【0073】
金属ナノワイヤーインクの堆積のために、任意の適当な堆積方法、例えば浸漬コーティング、噴霧コーティング、ナイフエッジコーティング、バーコーティング、マイヤーロッドコーティング、スロットダイコーティング、グラビア印刷、スピンコーティング等を使用することができる。インクは、所望の堆積方法のために添加剤で適切に調節された、粘度などの性質を有することができる。同様に、堆積方法が堆積される液体の量を管理し、インクの濃度を調節して所望の添加量の金属ナノワイヤーを表面上に提供することができる。分散体でコーティングを形成した後、薄く広がった金属導電層を乾燥させて液体を除去することができる。
【0074】
フィルムは、例えば、ヒートガン、炉、サーマルランプ等で乾燥され得るが、いくつかの実施形態においては空気乾燥され得るフィルムが望ましいことがある。いくつかの実施形態において、フィルムは、乾燥中に約50℃〜約150℃の温度に加熱することができる。乾燥させた後、フィルムを1回もしくは複数回、例えば、エタノールもしくはイソプロピルアルコールなどのアルコールまたは他の溶媒もしくは溶媒ブレンドで洗浄して、過剰な固形分を除去してヘイズを低下させることができる。パターン化はいくつかの適当な方法で達成することができる。例えば、金属ナノワイヤーの印刷は、パターン化を直接にもたらすことができる。さらにまたは代わりに、リソグラフィ技術を使用して、融着の前または後に金属ナノワイヤーの部分を除去し、パターンを形成することができる。
【0075】
薄く広がった金属導電層を覆う透明保護フィルムを孔等が適切な位置にあるように形成して、導電層に対する電気接続を提供することができる。一般的には、様々なポリマーフィルム加工技術および装置をこれらのポリマーシートの加工のために使用することができ、このような装置および技術は本技術分野においてよく開発されており、将来開発される加工技術および装置を相応して当該材料に適合させることができる。
【0076】
透明フィルムの電気的および光学的性質
融着金属ナノ構造ネットワークは、良い光学的性質を提供しながら低い電気抵抗を提供することができる。したがって、フィルムは透明導電性電極等として有用であり得る。透明導電性電極は、太陽電池の受光表面に沿う電極などの様々な用途に適し得る。ディスプレイのためにおよび特にタッチスクリーンのために、フィルムをパターン化して、フィルムによって形成される電気導電性パターンを提供することができる。パターン化フィルムを有する基材は一般的に、パターンの各部分において良い光学的性質を有する。
【0077】
薄いフィルムの電気抵抗はシート抵抗として表わすことができ、それをオーム/スクエア(Ω/□またはohms/sq)の単位で記録し、測定法に関連したパラメーターに従ってバルク電気抵抗値から値を識別する。フィルムのシート抵抗は一般的に、4点プローブ測定または別の適した方法を使用して測定される。いくつかの実施形態において、融着金属ナノワイヤーネットワークは、約300ohms/sq以下、さらなる実施形態において約200ohms/sq以下、さらに別の実施形態において約100ohms/sq以下および他の実施形態において約60ohms/sq以下のシート抵抗を有することができる。上記の明示範囲内のシート抵抗のさらに別の範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを当業者は理解するであろう。特定の用途に応じて、デバイスにおいて使用するためのシート抵抗の商用規格は、さらなるコストが必要とされる場合がある時など、シート抵抗のより低い値を必ずしも目的としていない場合があり、現在商業的に重要な値は、異なった品質および/またはサイズのタッチスクリーンの目標値として例えば、270ohm/sqか、150ohms/sqか、100ohms/sqか、50ohms/sqか、40ohms/sqか、30ohms/sq以下であってもよく、これらの値のそれぞれが範囲の端点として特定の値の間の範囲を画定し、例えば270ohms/sq〜150ohms/sq、270ohms/sq〜100ohms/sq、150ohms/sq〜100ohms/sq等となり、15の特定の範囲が画定される。このように、より低コストのフィルムが、適度に高めのシート抵抗値と引き換えに特定の用途のために適している場合がある。一般的には、ナノワイヤーの添加量を増加させることによってシート抵抗を低下させることができるが、増加した添加量は、他の観点から望ましくない場合があり、金属添加量はシート抵抗の低い値を達成するための、多くのなかの唯一の要因である。
【0078】
透明導電性フィルムとしての用途のために、融着金属ナノワイヤーネットワークが良い光学透明性を維持することが望ましい。基本的には、光学透明性は添加量と反比例しており、より高い添加量は透明性の低下をもたらすが、ネットワークの加工もまた、透明性にかなり影響を与え得る。また、ポリマーバインダーおよびその他の添加剤は、良い光学透明性を維持するように選択され得る。光学透明性は、基材を通る透過光に対して評価することができる。例えば、本明細書に説明された導電性フィルムの透明性は、紫外可視分光光度計を使用しておよび導電性フィルムおよび支持体基材を通る全透過を測定することによって測定することができる。透過率は、透過光の強度(I)の、入射光の強度(I
o)に対する比である。フィルムを通る透過率(T
フィルム)は、測定された全透過率(T)を支持体基材を通る透過率(T
基材)によって割ることによって推定され得る。(T=I/I
oおよびT/T
基材=(I/I
o)/(I
基材/I
o)=I/I
基材=T
フィルム)したがって、記録された全透過を補正して基材を通る透過を除去し、フィルムだけの透過を得ることができる。可視スペクトルにわたって良い光学透明性を有することが一般的に望ましいが、便宜上、550nmの波長の光で光の透過を記録することができる。代わりにまたはさらに、400nm〜700nmの波長の光の全透過率として透過を記録することができ、このような結果は以下の実施例において報告される。一般的には、融着金属ナノワイヤーフィルムについて、550nmの透過率および400nm〜700nmの全透過率(または便宜上、単に「全透過率」)の測定は、定性的に異なっていない。いくつかの実施形態において、融着ネットワークによって形成されるフィルムは、少なくとも80%、さらなる実施形態において少なくとも約85%、さらに別の実施形態において、少なくとも約90%、他の実施形態において少なくとも約94%およびいくつかの実施形態において約95%〜約99%の全透過率(全透過率%)を有する。透明なポリマー基材上のフィルムの透明性は、標準ASTM D1003(“Standard Test Method for Haze and Luminous Transmittance of Transparent Plastics”)(本願明細書に参照によって組み込まれる)を使用して評価することができる。上記の明示範囲内の透過率のさらに別の範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを当業者は認識するであろう。基材のために以下の実施例においてフィルムの測定された光学的性質を調節するとき、フィルムは非常に良い透過およびヘイズ値を有し、それらは観察される低いシート抵抗と共に達成される。
【0079】
また、融着金属ネットワークは、望ましくは低いシート抵抗を有しながら可視光線の高い透過と共に低いヘイズを有することができる。ヘイズは、上に参照されたASTM D1003に基づいてヘイズメーターを使用して測定することができ、基材のヘイズ寄与を除去して透明導電性フィルムのヘイズ値を提供することができる。いくつかの実施形態において、焼結ネットワークフィルムは、約1.2%以下、さらなる実施形態において約1.1%以下、さらに別の実施形態において約1.0%以下および他の実施形態において約0.9%〜約0.2%のヘイズ値を有することができる。実施例において説明されるように、適切に選択された銀ナノワイヤーによってヘイズおよびシート抵抗の非常に低い値が同時に達成された。添加量を調節して、可能な限り非常に低いヘイズ値とまだ良いシート抵抗値を有するようにシート抵抗とヘイズ値とのバランスをとることができる。具体的には、0.8%以下、そしてさらなる実施形態において約0.4%〜約0.7%のヘイズ値を少なくとも約45ohms/sqのシート抵抗の値と共に達成することができる。また、0.7%〜約1.2%、およびいくつかの実施形態において約0.75%〜約1.05%のヘイズ値を約30ohms/sq〜約45ohms/sqのシート抵抗の値と共に達成することができる。これらのフィルムの全てが良い光学透明性を維持した。上記の明示範囲内のヘイズのさらに別の範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを当業者は理解するであろう。
【0080】
複数層フィルムの相当する性質に関して、付加的な成分は一般的に、光学的性質に及ぼす効果が小さいように選択され、透明要素において使用するために様々なコーティングおよび基材が市販されている。適した光学コーティング、基材および関連材料が上に要約される。構造材料のいくつかは電気絶縁性であり得るが、厚めの絶縁層が使用される場合、フィルムをパターン化して、他の場合なら埋設される電気導電性要素への接触および電気的接触を絶縁層を貫通する間隙またはボイドが提供することができる位置を設けることができる。
【0081】
タッチセンサー
本明細書に説明された透明導電性フィルムを、多くの電子デバイスに使用されるタッチスクリーンに適合し得るタッチセンサーに有効に組み込むことができる。いくつかの代表的な実施形態が一般的にここで説明されるが、透明導電性フィルムを他の所望の設計に適合させることができる。タッチセンサーの一般的な特徴は一般的に、自然な状態で、すなわち、触れられたりあるいは他の方法で外的に接触されない時に離隔された配置の2つの透明導電性電極構造物の存在である。キャパシタンスに基づいて作動するセンサーについては、誘電体層は一般的に2つの電極構造物の間にある。
図3を参照して、代表的なキャパシタンスに基づいたタッチセンサー202が、ディスプレイ成分204と、任意選択の下部基材206と、第1の透明導電性電極構造物208と、誘電体層210、例えばポリマーまたはガラス板と、第2の透明導電性電極構造物212と、任意選択の上蓋214と、センサーに触れることと関連づけられたキャパシタンスの変化を測定する測定回路216とを含む。
図4を参照して、代表的な抵抗に基づいたタッチセンサー240が、ディスプレイ成分242と、任意選択の下基材244と、第1の透明導電性電極構造物246と、第2の透明導電性電極構造物248と、それらの自然な構成において電極構造物の離隔された構成を支持する支持体構造物250、252と、上側覆い層254と抵抗測定回路256とを含む。
【0082】
ディスプレイ成分204、242は、例えば、LEDに基づいたディスプレイ、LCDディスプレイまたは他の所望のディスプレイ成分であり得る。基材206、244および覆い層214、254は、独立に透明なポリマーシートまたは他の透明シートであり得る。支持体構造物を誘電体材料から形成することができ、センサー構造物が、所望の安定なデバイスを提供するための付加的な支持体を含むことができる。測定回路216、256は本技術分野に公知である。
【0083】
透明導電性電極208、212、246および248を融着金属ネットワークを使用して有効に形成することができ、それらを適切にパターン化して異なったセンサーを形成することができるが、いくつかの実施形態において、融着金属ネットワークが一部の透明な電極構造物を形成し、これに対してデバイス内の他の透明な電極構造物が、電気導電性金属酸化物、例えば薄いフィルムまたは微粒子として酸化インジウムスズ、アルミニウムドープト酸化亜鉛、インジウムドープト酸化カドミウム、フッ素ドープト酸化スズ、アンチモンドープト酸化スズ等、カーボンナノチューブ、グラフェン、導電性有機組成物等の材料を含むことができる。融着金属ネットワークを本明細書に説明されたように有効にパターン化することができ、そして透明導電性構造物内の複数の電極を使用して、触るプロセスに関連した位置情報を提供することができるように、電極構造物の1つまたは複数においてのパターン化フィルムがセンサーを形成するのが望ましいことがあり得る。パターン化タッチセンサーを形成するためのパターン化透明導電性電極の使用は、例えば、“Touch Sensor,Display With Touch Sensor,and Method for Generating Position Data”と題された、Miyamotoらに対する米国特許第8,031,180号明細書および“Narrow Frame Touch Input Sheet,Manufacturing Method of Same,and Conductive Sheet Used in Narrow Frame Touch Input Sheet”と題された、Sakataらに対する米国特許出願公開第2012/0073947号明細書(共に本願明細書に参照によって組み込まれる)に記載されている。
【実施例】
【0084】
以下の実施例は、充填剤添加ポリマー前駆体溶液を適切な基材上にコートする工程を必要とする。ナノダイアモンド充填剤、酸化アルミニウムナノ粒子充填剤または酸化ジルコニウムナノ粒子充填剤を使用する実施例が示される。いくつかの実施例は、不動態コーテッドポリマーフィルムの形成を必要とする。他の実施例は、透明導電性フィルムの形成をもたらす融着金属導電性ネットワークが混在されたコーティングを必要とする。透明導電性フィルムの実施形態については、融着金属導電性ネットワークを有する層内にまたは融着金属導電性ネットワークを有する層の上に置かれるコーティング内に特性強化ナノ粒子を有する実施例が示される。銀ナノワイヤーを使用して融着金属導電性ネットワークが形成される。
【0085】
25〜50nmの平均直径および10〜30ミクロンの平均長さを有する商用銀ナノワイヤーを以下の実施例において使用した。銀ナノワイヤーインクは本質的には、“Metal Nanowire Inks for the Formation of Transparent Conductive Films With Fused Networks”(参照によって本願明細書に組み込む)と題された、Liらに対する係属中の米国特許出願第14/448,504号明細書の実施例5に記載されている通りである。金属ナノワイヤーインクは、0.01〜0.5重量%のレベルの銀ナノワイヤー、0.01mg/mL〜2.0mg/mLの間の銀イオン、および約0.02〜1.0重量%の濃度のセルロース系バインダーを含んだ。銀ナノワイヤーインクは、少量のアルコールを有する水溶液であった。インクをPETポリエステルフィルム上にスロットコートした。ナノワイヤーインクをコートした後、次にフィルムを100℃の炉内で10分間にわたって加熱してフィルムを乾燥させた。オーバーコートの形成手順は具体的な実施例において以下に説明される。
【0086】
フィルム試料の全透過(TT)およびヘイズはヘイズメーターを使用して測定された。以下の試料のためのヘイズ測定を調整するために、基材のヘイズの値を測定値から差し引いて、透明導電性フィルムだけの近似的なヘイズ測定値を得ることができる。計測器は、ASTM D1003標準(“Standard Test Method for Haze and Luminous Transmittance of Transparent Plastics”)(本願明細書に参照によって組み込まれる)に基づいて光学的性質を評価するように設計されている。これらのフィルムの全透過およびヘイズは、それぞれ約92.9%および0.1%〜0.4%の基礎全透過およびヘイズを有するPET基材を含む。以下の実施例において、融着用金属ナノワイヤーインクのいくつかの異なった調合物を光学測定値およびシート抵抗の測定値と共に示す。
【0087】
シート抵抗は、4点プローブ方法、無接点抵抗計によって測定されるかまたは銀ペーストから形成される2本の連続した(不透明な)銀線によって画定される四角形を使用してフィルムの抵抗を測定することによって測定される。いくつかの実施形態において、シート抵抗を測定するために、銀ペーストの一対の平行なストライプをしばらくの間使用するため、ペーストを試料の表面上に塗装して四角形、または矩形形状を画定し、それらを次に、銀ペーストを硬化および乾燥させるためにほぼ120℃において20分間アニールした。わに口クリップを銀ペーストストライプに接続し、リードを商用の抵抗測定装置に接続した。フィルムの露出した端部部分への電気接続を形成する。いくつかの試料は、サードパーティ・ベンダーによってシート抵抗が測定された。
【0088】
鉛筆試験キットを使用してAgNWsフィルム試料の鉛筆硬度を測定した。鉛筆削り手順の後に、鉛筆の先を修正するために研磨紙を使用し、鉛筆を45°の角度に保持しながら下方への一定の力を加え、フィルム試料の表面の端から端まで鉛筆を移動させた。この試験は、500gまたは750g商用鉛筆硬度キットを使用した。導電基層上の黒鉛評価スケールで異なった鉛筆の効果を分析することによって硬度を測定した。基層に損傷が与えられない場合、フィルムは、その特定の黒鉛レベルを合格したと考えられた。フィルムは20倍の倍率のLeica顕微鏡下で検査された。フィルムを非常に平らな表面上に置いたが、それは、フィルムが非常に薄い時に鉛筆による引掻きを避けるために重要である。この試験は、拡大せずに目視検査に依拠する、最終とは異なった。
【0089】
特定重量下で超精密0000スチールウールを使用してフィルム試料のスチールウール最終硬度を測定した。いくつかの試料について、20g、50g、または100gの重りによって与えられる下方への一定の力を使用して、スチールウールを一度、コーテッドフィルムの上に送り、フィルムを微小な引掻きの検出のために照明下で検査した。引掻きの数がフィルムの耐引掻性を決定する。スチールウールによって生じた引掻きが無いことは、スチールウール上のその特定重量について「合格」を意味する。合格しない場合、生じた引掻きの数が結果の節に示される。いくつかの試料について、ヘイズおよび/またはシート抵抗もまた、スチールウールを使用する試験の後に評価された。
【0090】
ヘイズおよび/またはシート抵抗分析において、オーバーコートを適用して架橋した後に超精密スチールウールを使用して表面を摩擦した。下方への一定の力を維持しながらスチールウール摩擦を非常にゆるやかに実施する。試験中のフィルムの形材をスチールウールで10回、前後に摩擦した。微小引掻きは、深めの引掻きに比べてヘイズの増加に寄与することがずっと少なくなる傾向がある。BYK Haze−Gard Plusを全透明性およびヘイズの測定のために使用した。また、シート抵抗の変化は、実施例4において説明されるように、インハウスOC調合物のためのサードパーティサービスによって測定された。ヘイズを試験の前と後に測定した。
【0091】
実施例1−ナノダイアモンドが透明基材上の商用オーバーコートに及ぼす効果
この実施例は、ナノダイアモンドが充填された商用オーバーコートの硬度が初期ポリマーバインダーオーバーコートを有するPET基材に及ぼす効果を試験する。
【0092】
基材を作製するため、セルロース系ポリマーバインダーを有するが全く銀ナノワイヤーを有さないベースインクを透明なPET基材上にコートし、乾燥させた。コートされた基材は、0.72%のヘイズを有した。Dexerials製の商用コーティングポリマーがN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解された。2重量%、3重量%および4重量%のポリマー濃度のそれぞれ2つの試料を作製して、6つの試料を作製した。それぞれのポリマー濃度の1つの試料において、水素終端ナノダイアモンドをそれぞれ、0.2重量%、0.3重量%、または0.4重量%の濃度において添加し、それぞれのダイアモンド含有試料において、ダイアモンド濃度がポリマー濃度の約十分の一になるようにした。コーティング溶液は、1ミル(25.4ミクロン)の湿潤厚さでスロットコーティングすることによって基材上に堆積された。次に、フィルムを赤外線ランプで乾燥させ、ヘレウス・フュージョン・UVシステム(Heraeus Fusion UV System)(Hバルブ)を使用して1J/cm
2で窒素下にて紫外線によって硬化させた。コーティング溶液の固形分は、乾燥フィルムの厚さと相関関係にあり、0.3重量%のポリマーを有するコーティング溶液を使用して形成されるフィルムは、約75nmの平均厚さを有する。ナノ粒子充填剤を使用して形成されたフィルムとナノ粒子充填剤を使用せずに形成されたフィルムとの間で硬度および光学的性質を比較した。結果を表1に示す。一般的には、厚めの乾燥コーティングについては、ナノダイアモンドを含有することによって硬度がかなり改良され、ヘイズの増加は小さかった。
【0093】
【表1】
【0094】
実施例2−導電性インク中のナノダイアモンドの効果
この実施例は、融着金属ナノ構造層を有し、ナノダイアモンドが導電層に混合され、導電層の上に適用された硬質コーティングを有するフィルムの硬度を試験する。
【0095】
水素終端表面を有するナノダイアモンド0.036重量%をインク中に添加すること以外は上に記載されたように銀ナノワイヤーインクを調製した。銀ナノワイヤーインク中に混合する前にナノダイアモンドを最初にガンマ−ブチロラクトン溶媒中に分散させた。ナノワイヤーインクをPETフィルム基材上にスロットコートして乾燥させてナノワイヤーを融着し、導電層を形成する融着金属ナノ構造ネットワークを形成した。0.5重量%のポリマー濃度でナノダイアモンドを使用せずに調製したこと以外は実施例1に記載したようにオーバーコーティング組成物を調製した。乾燥された融着金属導電層上にスロットコーティングし、コーティングを乾燥させ、コーティングを紫外線硬化して実施例1に記載したように同様にオーバーコートを加工した。
【0096】
表2に示されるように、導電層にナノ粒子充填剤を使用して形成されたフィルムとナノ粒子充填剤を使用せずに形成されたフィルムとの間で硬度および光学的性質を比較した。また、オーバーコートを使用しておよび使用せずに光学的性質を定量した。ナノワイヤーインク中にナノダイアモンドを含有させることによって、オーバーコートを有するフィルムの硬度が著しく改良された。ナノダイアモンドの添加によって、シート抵抗がある程度増加し、全透明性がわずかに減少してヘイズがある程度増加した。しかしオーバーコートは一般的に、オーバーコートを使用しない相応する試料に対してヘイズを低下させたことに留意されたい。
【0097】
【表2】
【0098】
実施例3−透明導電層上の商用オーバーコート中のナノダイアモンドの効果
この実施例は、ナノダイアモンドを混合する商用オーバーコートを取り入れる透明導電性フィルムの硬度を試験する。
【0099】
銀ナノワイヤーを上述のように堆積して加工した。乾燥後に、層は薄く広がった金属導電層内に融着金属ナノ構造ネットワークを含んだ。導電層のシート抵抗は50〜60ohms/sqの間であり、薄いオーバーコート層は、オーバーコートを適用して硬化させた後にフィルムのシート抵抗を著しく変化させなかった。2つの異なった金属ナノワイヤーインク系を3つの異なった商用オーバーコート、3つの異なった相応する溶媒系および3つの異なった初期ナノダイアモンド分散体と組合せて試験した。融着金属ナノ構造ネットワークを有する基材は、オーバーコートを適用する前の初期ヘイズが第1のインク系を使用する場合1.12%および第2のインク系を使用する場合1.28%であった。ナノ粒子充填剤を使用して形成されたフィルムとナノ粒子充填剤を使用せずに形成されたフィルムとの間で硬度および光学的性質を比較した。
【0100】
第1の組合せの試料は、第1の銀ナノワイヤーインク系とHybrid Plastics製のコーティング材料によって形成されたオーバーコートとを使用して作製された。オーバーコートのためのコーティング溶液を蟻酸溶液中で形成した。0.5重量%のポリマー濃度を有する2つの溶液と0.75重量%のポリマー濃度を有する2つの溶液との4つの溶液が形成された。各々のポリマー濃度の2つの溶液のうち、一方は、水性溶媒中に付加的な商用ナノダイアモンドを有した。ナノダイアモンド充填剤を有する溶液は、0.5重量%ポリマー溶液については0.05重量%のナノダイアモンドおよび0.75重量%ポリマー溶液については0.075重量%のナノダイアモンドを有した。オーバーコートを適用し、乾燥および硬化させた。光学測定値および硬度測定値が硬化フィルムに関して得られ、結果を表3に示す。表3のヘイズ値はフィルム全体にわたる平均値であり、他方、スチールウール評価のための初期ヘイズ値は、スチールウールが適用される位置で測定された特定値であった。表3に示されるように、これらのフィルムにナノダイアモンドを含有させることによって硬度が著しく改良され、相当する実験もまた、スチールウールによる耐引掻性の著しい改良を示した。
図5および
図6において2つの倍率で10重量%ナノダイアモンドフィルムの典型的な走査電子顕微鏡写真を示す。比較のために、
図7および
図8は、それぞれ、5重量%および3重量%ナノダイアモンドフィルムのSEM画像を示す。
【0101】
【表3】
【0102】
蟻酸を使用して2つのさらに別の試料を調製した。これらの溶液は、コーティング溶液中にCalifornia Hardcoating Company(CHC)ポリマーを使用して調製された。コーティング溶液は、0.5重量%のポリマーを有した。1つの溶液は、水溶液中に0.05重量%の商用ナノダイアモンドを含み、第2の溶液は全くナノダイアモンドを含有しなかった。溶液は、第2の銀ナノワイヤーインク系を使用して形成された融着金属ナノ構造ネットワークの上にコートされた。光学および硬度の結果が乾燥および硬化後に得られた。結果を表4に示す。ナノダイアモンドを含有することによってコーティングの硬度が著しく増加し、スチールウール試験により生じるヘイズ増加が減少した。ナノダイアモンドを使用する場合初期ヘイズだけわずかに増加し、全透過率だけわずかに減少した。
【0103】
【表4】
【0104】
コーティング溶液中にN,N−ジメチルホルムアミドを使用してさらに別の組合せの9つの試料を調製した。溶液はDexerials製のコーティングポリマーを使用する3つの異なったポリマー濃度を含み、いくつかの試料は、コーティング溶液中に相当する濃度でエチレングリコールに初期に分散されたナノダイアモンドを含有し、他の溶液は、ナノダイアモンドを含有しなかった。第1のナノワイヤーインク溶液を使用して形成された融着金属ナノ構造ネットワークの上にコーティングが適用された。オーバーコートを乾燥および硬化した後に光学測定値および硬度測定値が得られ、結果を表5に記載する。
【0105】
【表5】
【0106】
オーバーコートを形成するために非水溶媒中の10のさらなる試料を調製した。再び、4.5体積パーセントのN,N−ジメチルアセトアミド(DMA)を有するプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)の溶媒中のDexerials製のポリマーを使用した。溶液の全てが0.5重量%のポリマーを含有した。3つの異なった商用ナノダイアモンドを使用し、それぞれのナノダイアモンドのために3つの異なったナノダイアモンド濃度を使用した。ナノダイアモンドは、エチレングリコールの分散体(ND−A)、水素−グリコール終端表面を有する粒子を有するエチレングリコールの分散体(ND−H−EG)または水素終端表面を有する粒子を有するガンマ−ブチロラクトンの分散体(ND−H−G)として得られる商用ナノダイアモンドであった。上述のようにフィルム試料を調製した。光学測定値および硬度測定値が得られた。これらの試料について、スチールウールで摩擦した後に微小引掻き分析もまた実施した。結果を表6に示す。ナノ粒子はフィルムの耐引掻性を著しく改良し、ヘイズの増加および全透過率の減少はあまり大きくない。
【0107】
【表6】
【0108】
実施例4−調合されたコーティング溶液中のナノダイアモンドの効果
この実施例において、硬度を改良するナノダイアモンドの有効性が、インハウス調合オーバーコートを有する透明導電性フィルムの試料において検査される。
【0109】
これらの実験のために、実施例3に記載された第2の金属ナノワイヤーインクを使用して形成された融着金属導電層を備える基材を作製した。2つの異なったインハウスコーティング溶液(HOC1およびHOC2)を試験した。インハウス調合コーティング材料は、商用紫外線架橋性アクリレート硬質コーティング組成物と環状シロキサンエポキシ樹脂とのブレンドを含有した。HOC1は、ウレタンアクリレートオリゴマーをさらに含み、HOC2は、エポキシアクリレートオリゴマーをさらに含んだ。エポキシアクリレートハイブリッド硬質コーティングがさらに、例えば、“Abrasion Resistant Ultraviolet Light Curable Hard Coating Compositions”と題されたChungに対する米国特許第4,348,462号明細書、“Protective Coating for Phototools”と題されたKistnerに対する米国特許第4,623,676号明細書および“UV−Cured Interpenetrating Acrylic−Epoxy Polymer Networks: Preparation and Characterization”と題されたSangermanoら著,Macromolecular Materials and Engineering、第293巻、515〜520ページ(2008)(それら3つ全てが参照によって本願明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0110】
2つの異なった溶媒系を使用して12の試料を調製した。具体的には、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)とメチルエチルケトン(MEK)の1:1体積比の混合物中の8つの試料を調製し、アセトニトリル中の3つの試料を調製した。HOC1を使用して試料1〜4を調製し、HOC2を使用して試料5〜12を調製した。コーティング溶液中の2つの異なったポリマー濃度および3つの異なったナノダイアモンド濃度を使用して試料を調製した。試料1〜8は0.5重量%のポリマーを有し、試料9〜12は、0.8重量%のポリマーを有する。4つの試料については、光学測定値および硬度測定値の他に、スチールウールを適用後のシート抵抗の変化もまた測定された。結果を表7(試料1〜8)および表8(試料9〜12)に示す。結果は、溶媒がコーティング性に著しい効果を有することを示す。ナノダイアモンドは硬度を著しく改良した。ナノダイアモンドを含有することによってヘイズがある程度増加した。
【0111】
【表7】
【0112】
【表8】
【0113】
HOC2ベースのオーバーコートを使用して6つの試料を調製した。全体として、2つの異なった溶媒系および2つの異なった種類のナノダイアモンドを試験した。上述のように試料を調製した。結果を表9に示す。表7および8に示される結果と同様、硬度の結果は溶媒系に著しく依存している。
【0114】
【表9】
【0115】
実施例5−金属酸化物充填剤
この実施例は、薄く広がった金属導電層の上のオーバーコートに金属酸化物ナノ粒子による透明導電性フィルムへの効果を試験する。
【0116】
導電層は、上の実施例3に記載されたように第2の銀ナノワイヤーインクを使用して形成された。2つの異なったオーバーコートポリマーのうちの1つと3つの異なった金属酸化物ナノ粒子のうちの1つを使用して6つの十分に混合されたコーティング溶液試料を調製した。第1のオーバーコートポリマーはCalifornia Hardcoating Company(CHC)から得られ、第2のオーバーコートポリマーは、実施例4に記載されたポリマーと同様にインハウス調合された(HOC3)。金属酸化物ナノ粒子は、BYKとUS−Nanoの両方からの酸化アルミニウムナノ粒子(Al
2O
3)またはBYKからの酸化ジルコニウムナノ粒子(ZrO
2)であった。上に記載されたように全てのオーバーコート溶液をコートし、乾燥および硬化させた。ナノ粒子の平均粒度は約20nm〜約40nmであった。コーティング溶液は、約0.75重量%のポリマーおよび約0.09重量%のナノ粒子を有した。
【0117】
金属酸化物ナノ粒子を使用して形成されたフィルムおよび金属酸化物ナノ粒子を使用せずに形成されたフィルムについてシート抵抗(SR)および光学的性質が得られた。結果を表9に示す。一般的には、酸化アルミニウムナノ粒子または酸化ジルコニウムナノ粒子を含有させることが著しくシート抵抗を増加させることも全透過率を減少させることもなかった。酸化ジルコニウムナノ粒子によって、ヘイズは増加せず、わずかに減少したかもしれない。しかしながら、酸化アルミニウムナノ粒子によってヘイズは著しく増加した。
【0118】
【表10】
【0119】
上記の実施形態は例示のためのものであり限定的でないことを意図している。さらなる実施形態が請求の範囲内である。さらに、本発明は特定の実施形態を参照して説明されたが、本発明の趣旨および範囲から逸脱せずに形態および詳細に変更を加えることができることを当業者は認識するであろう。本明細書の明示的な開示に反する主題が組み込まれないように上記の文献の参照による任意の組み込みは制限される。