(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
測定の基準点の近傍に配置され、複数Nの端末アンテナが筐体内の異なる位置に設けられた測定対象の無線端末が電波を送信する際に前記複数Nの端末アンテナのうちから自発的に選択した端末アンテナを推定するための無線端末のアクティブアンテナ推定方法であって、
前記無線端末が送信した電波を、前記基準点からの距離が異なる位置に配置され、前記距離を一定に保ちながら前記基準点を中心に前記無線端末に対する位置を相対的に変化させる複数Mの測定用アンテナにより受信し、前記無線端末に対して相対的に変化する位置毎の放射電力を測定してM組の電力測定結果を得る段階と、
前記無線端末の複数Nの端末アンテナのうちの特定アンテナから電波が送信されたものと仮定し、該特定アンテナの前記基準点に対する位置ずれを見込んで該特定アンテナが該基準点にあるのと等価な電力測定結果となるように、前記M組の電力測定結果に対する補正処理を、前記特定アンテナを変更して行い、M組×Nの補正結果を求める段階と、
前記M組×Nの補正結果を比較し、M組の補正結果同士の誤差が最も小さくなる補正結果を与える特定アンテナを、実際に電波を送信した端末アンテナと推定する段階とを含む無線端末のアクティブアンテナ推定方法。
複数Nの端末アンテナが筐体内の異なる位置に設けられ、該複数Nの端末アンテナのうちから自発的に選択した端末アンテナを用いて電波を送信する機能を有する測定対象の無線端末を、外部からの電波の進入および内部での電波の反射が抑圧された測定空間内の基準点の近傍位置に支持し、前記測定空間内で前記基準点から遠方界測定条件を満たす距離の位置にあり、前記基準点を中心に該基準点からの距離を一定に保ちながら前記無線端末に対する位置を相対的に変化させる測定用アンテナにより、前記無線端末から送信される電波を受信して、前記無線端末の放射電力特性を求める無線端末測定装置において、
前記測定用アンテナは、前記基準点からの距離が異なる位置に複数M設けられており、
該複数Mの測定用アンテナが受信した電波の放射電力を測定してM組の電力測定結果を得る電力測定手段(41)と、
前記無線端末の複数Nの端末アンテナのうちの特定アンテナから電波が送信されたものと仮定し、該特定アンテナの前記基準点に対する位置ずれを見込んで該特定アンテナが該基準点にあるのと等価な電力測定結果となるように、前記M組の電力測定結果に対する補正処理を、前記特定アンテナを変更して行い、M組×Nの補正結果を求める測定結果補正手段(42)と、
前記M組×Nの補正結果を比較し、M組の補正結果同士の誤差が最も小さくなる補正結果を与える特定アンテナを、実際に電波を送信した端末アンテナと推定するアンテナ推定手段(43)とを有し、
前記アンテナ推定手段によって推定された端末アンテナについて得られたM組の補正結果を有効とし、該有効な補正結果から放射電力特性を求めることを特徴とする無線端末測定装置。
前記電力測定手段は、前記無線端末が送信に用いる端末アンテナおよび該端末アンテナから出射される電波のビーム特性が変化しない状態で、前記M組の電力測定結果を得るように構成されており、
該M組の電力測定結果から得られた前記有効な補正結果から、前記無線端末の全球面放射電力TRPを求めることを特徴とする請求項2記載の無線端末測定装置。
前記電力測定手段は、前記無線端末が送信する電波のビーム方向を変化させるとともに、該変化するビーム方向に前記測定用アンテナの一つが位置する状態を保持して、前記無線端末が送信する電波のビーム方向毎の放射電力を測定する処理を、前記測定用アンテナの一つを変更して行い、M組の電力測定結果を得るように構成され、
前記アンテナ推定手段は、前記M組の電力測定結果から得られたM組×Nの補正結果を所定の測定区間毎に比較して、各測定区間でM組の補正結果同士の誤差が最も小さくなる補正結果を与える特定アンテナを、該測定区間に実際に電波を送信した端末アンテナと推定するように構成されており、
前記測定区間毎に推定された端末アンテナについての補正結果を有効とし、該有効な補正結果から無線端末の前記ビーム方向における等価等方性放射電力EIRPを求めることを特徴とする請求項2記載の無線端末測定装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したように、無線端末の端末アンテナに関する放射電力特性を測定する場合、基本的には、端末アンテナの位置を測定系の回転中心(基準点)に一致させて行なうが、種々の制約により必ずしも端末アンテナの位置を回転中心に一致させることができない状態で測定をする場合も生じる。
【0006】
この場合、全方位にわたって角度ごとに得られた測定結果に対し、端末アンテナの位置が回転中心からずれていることによる影響を補正する必要がある。
【0007】
ところが、次世代(5G)の無線端末では、筐体内の複数の異なる位置にそれぞれ搭載されたフェーズドアレー型の端末アンテナを有しており、そのいずれか一つを無線端末が自発的に選択して送信用として動作(以下、アクティブと記す)させることが想定されており、そのアクティブな端末アンテナを測定系で指定することができない場合が想定される。
【0008】
したがって、無線端末の筐体内の各端末アンテナの位置が分かっていても、測定装置側でどの端末アンテナがアクティブになっているかが判らなければ、正しい測定を行なうことができない。
【0009】
本発明は、この課題を解決して、筐体内の異なる位置に搭載された複数の端末アンテナのいずれかを無線端末が自発的に選択して送信用に用いる機能を有する無線端末のアクティブアンテナを推定できる推定方法および無線端末測定装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明の請求項1の無線端末のアクティブアンテナ推定方法は、
測定の基準点の近傍に配置され、複数Nの端末アンテナが筐体内の異なる位置に設けられた測定対象の無線端末が電波を送信する際に前記複数Nの端末アンテナのうちから自発的に選択した端末アンテナを推定するための無線端末のアクティブアンテナ推定方法であって、
前記無線端末が送信した電波を、前記基準点からの距離が異なる位置に配置され、前記距離を一定に保ちながら前記基準点を中心に前記無線端末に対する位置を相対的に変化させる複数Mの測定用アンテナにより受信し、前記無線端末に対して相対的に変化する位置毎の放射電力を測定してM組の電力測定結果を得る段階と、
前記無線端末の複数Nの端末アンテナのうちの特定アンテナから電波が送信されたものと仮定し、該特定アンテナの前記基準点に対する位置ずれを見込んで該特定アンテナが該基準点にあるのと等価な電力測定結果となるように、前記M組の電力測定結果に対する補正処理を、前記特定アンテナを変更して行い、M組×Nの補正結果を求める段階と、
前記M組×Nの補正結果を比較し、M組の補正結果同士の誤差が最も小さくなる補正結果を与える特定アンテナを、実際に電波を送信した端末アンテナと推定する段階とを含んでいる。
【0011】
また、本発明の請求項2の無線端末測定装置は、
複数Nの端末アンテナが筐体内の異なる位置に設けられ、該複数Nの端末アンテナのうちから自発的に選択した端末アンテナを用いて電波を送信する機能を有する測定対象の無線端末を、外部からの電波の進入および内部での電波の反射が抑圧された測定空間内の基準点の近傍位置に支持し、前記測定空間内で前記基準点から遠方界測定条件を満たす距離の位置にあり、前記基準点を中心に該基準点からの距離を一定に保ちながら前記無線端末に対する位置を相対的に変化させる測定用アンテナにより、前記無線端末から送信される電波を受信して、前記無線端末の放射電力特性を求める無線端末測定装置において、
前記測定用アンテナは、前記基準点からの距離が異なる位置に複数M設けられており、
該複数Mの測定用アンテナが受信した電波の放射電力を測定してM組の電力測定結果を得る電力測定手段(41)と、
前記無線端末の複数Nの端末アンテナのうちの特定アンテナから電波が送信されたものと仮定し、該特定アンテナの前記基準点に対する位置ずれを見込んで該特定アンテナが該基準点にあるのと等価な電力測定結果となるように、前記M組の電力測定結果に対する補正処理を、前記特定アンテナを変更して行い、M組×Nの補正結果を求める測定結果補正手段(42)と、
前記M組×Nの補正結果を比較し、M組の補正結果同士の誤差が最も小さくなる補正結果を与える特定アンテナを、実際に電波を送信した端末アンテナと推定するアンテナ推定手段(43)とを有し、
前記アンテナ推定手段によって推定された端末アンテナについて得られたM組の補正結果を有効とし、該有効な補正結果から放射電力特性を求めることを特徴とする。
【0012】
また、請求項3の無線端末測定装置は、請求項2記載の無線端末測定装置において、
前記電力測定手段は、前記無線端末が送信に用いる端末アンテナおよび該端末アンテナから出射される電波のビーム特性が変化しない状態で、前記M組の電力測定結果を得るように構成されており、
該M組の電力測定結果から得られた前記有効な補正結果から、前記無線端末の全球面放射電力TRPを求めることを特徴とする。
【0013】
また、請求項4の無線端末測定装置は、請求項2記載の無線端末測定装置において、
前記電力測定手段は、前記無線端末が送信する電波のビーム方向を変化させるとともに、該変化するビーム方向に前記測定用アンテナの一つが位置する状態を保持して、前記無線端末が送信する電波のビーム方向毎の放射電力を測定する処理を、前記測定用アンテナの一つを変更して行い、M組の電力測定結果を得るように構成され、
前記アンテナ推定手段は、前記M組の電力測定結果から得られたM組×Nの補正結果を所定の測定区間毎に比較して、各測定区間でM組の補正結果同士の誤差が最も小さくなる補正結果を与える特定アンテナを、該測定区間に実際に電波を送信した端末アンテナと推定するように構成されており、
前記測定区間毎に推定された端末アンテナについての補正結果を有効とし、該有効な補正結果から無線端末の前記ビーム方向における等価等方性放射電力EIRPを求めることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
このように、本発明では、無線端末が送信した電波を、基準点からの距離が異なる位置に配置され、基準点を中心に基準点からの距離を一定に保ちながら無線端末に対する位置を相対的に変化させる複数Mの測定用アンテナにより同時または順番に受信し、無線端末に対して相対的に変化する位置毎の放射電力を測定してM組の電力測定結果を得て、無線端末の複数Nの端末アンテナのうちの一つの特定アンテナから電波が送信されたものと仮定し、その特定アンテナの基準点に対する位置ずれを見込んでその特定アンテナが基準点に存在する場合と等価なM組の電力測定結果となるような補正処理を、特定アンテナを変更して行い、M組×Nの補正結果を求め、そのM組×Nの補正結果を比較し、M組の補正結果同士の誤差が最も小さくなる補正結果を与える特定アンテナを、実際に電波を送信した端末アンテナと推定している。
【0015】
このため、次世代の無線端末のように、筐体内の異なる位置に搭載された複数の端末アンテナのいずれかを自発的に選択して送信に用いる機能を有する無線端末の放射電力特性を正確に測定することができる。
【0016】
また、請求項3のように、無線端末が送信に用いる端末アンテナおよびその端末アンテナから出射される電波のビーム特性が変化しない状態で、M組の電力測定結果を得る電力測定手段を用いれば、そのM組の電力測定結果から得られた有効な補正結果から、無線端末の全球面放射電力TRPを求めることができる。
【0017】
また、請求項4のように、電力測定手段を、無線無線端末が送信する電波のビーム方向を変化させるとともに、その変化するビーム方向に測定用アンテナの一つが位置する状態を保持して、無線端末が送信する電波のビーム方向毎の放射電力を測定する処理を、ビーム方向に位置する測定用アンテナの一つを変更して行い、M組の電力測定結果を得るように構成し、アンテナ推定手段を、M組の電力測定結果から得られたM組×Nの補正結果を所定の測定区間毎に比較して、各測定区間でM組の補正結果同士の誤差が最も小さくなる補正結果を与える特定アンテナを、その測定区間に実際に電波を送信した端末アンテナと推定するように構成すれば、測定区間毎に推定された端末アンテナについての有効な補正結果から、無線端末のビーム方向における等価等方性放射電力EIRPを求めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明を適用した無線端末測定装置20の構成を示している。
【0020】
この無線端末測定装置20は、電波暗箱や電波暗室のように、外部からの電波の進入および内部での電波の反射が抑制された測定空間E内の基準点Oの近傍位置に、フェーズドアレイ型の複数Nの端末アンテナが筐体内の異なる既知の位置に設けられた測定対象の無線端末1を支持し、その無線端末1を、測定空間E内で基準点Oから遠方界測定条件を満たす距離の位置にある複数の測定用アンテナ21p、21qに対して、基準点Oを中心に回転させつつ、無線端末1から送信される電波を測定用アンテナ21p、21qで受信し、その受信信号から無線端末1の放射電力特性(TRPやEIRP)を求めるものである。
【0021】
ここで、遠方界測定条件は、送受のアンテナ間の距離Rが次の条件を満たした状態で測定することである。
R≧2D
2/λ
ただし、λは使用電波の自由空間波長(m)、Dは送受のアンテナの開口の最大径のうち、より径の大きい方(m)である。
【0022】
例えば、D=4λとし、λを第5世代で用いる電波の波長(30GHzで1cm)とすればRは32cm以上となるが、無線端末1の回転に必要な領域を確保し、ミリ波帯の伝搬ロスが大きくならないように考慮すると、Rは50cm〜1mの範囲が適当である。
【0023】
なお、全球面放射電力TRPの測定は、測定系による回転とは無関係に無線端末の特定アンテナがその筐体からみて一定方向にビームを出射している状態を保持し、その特定アンテナを中心にする各方位の電力を測定してその総和を求める測定である。この各方位の電力は、等価等方性放射電力EIRP値(単位dBとする)で測定される。
【0024】
また、等価等方性放射電力EIRPの測定は、測定系による回転に応じて変化するダウンリンク信号を送信する測定アンテナを端末アンテナから見た方向にビームを出射させ、その出射方向ごとの電力を測定するものであり、この測定の場合の各出射方向の電力は、ビームの最大電力値であるEIRP値で測定される。
【0025】
この実施形態では、測定系として、測定用アンテナ21p、21q側を固定し、無線端末1側を、基準点Oを通る垂直軸Vの周りと水平軸Hの周りに回転させる例を説明するが、基準点Oを中心に無線端末1に対する測定用アンテナの位置(厳密には姿勢も含む)を相対的に変化させる測定系であればよく、無線端末1を、基準点Oを通る垂直軸周りに回転させ、測定用アンテナ21p、21q側を基準点Oを通る水平軸周りに回転させる測定系、あるいは、無線端末1を基準点Oの近傍に固定し、測定用アンテナ21p、21q側を基準点Oを通る垂直軸と水平軸の周りに回転させる測定系であってもよい。
【0026】
なお、測定の際に無線端末が送信に用いる端末アンテナが既知の場合には、無線端末測定装置で測定に用いる測定用アンテナは一つで済むが、次世代の無線端末のように、筐体内の異なる位置に搭載された複数の端末アンテナのいずれかを自発的に選択して用いる無線端末が測定対象の場合、測定時に無線端末がどの端末アンテナを用いて送信したかを測定装置側で推定する必要がある。その推定のために、この無線端末測定装置20では、複数M(ここではM=2とする)の測定用アンテナ21p、21qを基準点Oから異なる距離Lp、Lqの位置に設けている。
【0027】
これらの測定用アンテナ21p、21qは指向特性既知のアンテナで、その指向性特性の最大利得方向が基準点O方向となる向きに設置されており、ミリ波帯では、ホーンアンテナや、プリント基板上にアンテナ素子がパターン形成されたアンテナ(例えばテーパスロットアンテナ)等を含む各種アンテナを用いることができる。
【0028】
測定対象の無線端末1は、端末保持回転機構30に支持されている。端末保持回転機構30は、基準点Oの近傍で無線端末1の筐体を保持し、その無線端末1を、基準点Oを中心にして垂直軸周りおよび水平軸周りに回転させる。
【0029】
端末保持回転機構30の具体的な機構は詳述しないが、例えば、
図1に示しているように、無線端末1を保持した状態で基準点Oを通る水平軸H周りの回転を与える回転駆動装置32と、無線端末1と回転駆動装置32とを一体的に保持し、これに基準点Oを通る垂直軸V周りの回転を与える回転駆動装置33を用いればよく、回転駆動装置32、33により無線端末1を垂直軸Vと水平軸H周りに所定角度ステップ(例えば10度ステップ)で回転させる。
【0030】
なお、実際に無線端末1を支持するための部材の材質としては、無線端末1の放射特性に影響を与えにくいもの(例えば、発泡材のように比誘電率が1に近いもの)を採用する必要があり、回転駆動装置32、33の駆動源となるモータ等の金属部材は無線端末1から離れた位置で電波吸収材で覆う必要がある。
【0031】
また、この実施形態の無線端末測定装置20は、無線端末1に対するTRP測定とEIRP測定の両方が行なえる構成とするが、TRP測定専用の無線端末測定装置とEIRP測定専用の無線端末測定装置であってもよく、その場合には、以下の各構成要件の機能を、測定モードに応じて専用化すればよい。
【0032】
測定モード指定手段40は、この無線端末測定装置20の測定モードを、TRP測定のモードかEIRP測定のモードのいずれかを指定するものである。
【0033】
以下の説明では、先に、各構成要件の機能の概要および測定モードとしてTRP測定が指定された場合の機能について説明し、その後にEIRP測定が指定された場合の各構成要件の機能を説明する。
【0034】
電力測定手段41は、端末保持回転機構30を制御して、無線端末1を垂直軸V周りおよび水平軸H周りに回転させつつ、無線端末1が送信した電波に対して測定用アンテナ21p、21qで受信された信号を受け、無線端末1の回転角(θ、φ)毎の電力値EIRPp、EIRPqの特性を求める。
【0035】
この電力測定手段41は、測定モードとして、TRP測定が指定された場合、無線端末1が送信に用いる端末アンテナおよびその端末アンテナから出射される電波のビーム特性(方向や強さ等を含む)が変化しないように保持する手段を用いて、M組の電力測定結果を得ている。
【0036】
この手段としては種々考えられるが、例えば、測定用アンテナ21p、21qとは別に、無線端末1との間でリンクを形成するためのリンク用アンテナ(図示せず)を用い、測定に先立って、このリンク用アンテナから無線端末1にダウンリンク信号を送信する。このダウンリンク信号に対し、無線端末1が一つの端末アンテナからリンク用アンテナ方向にアップリンク信号を送信することになる。無線端末1に対するリンク用アンテナの相対位置を変化させなければ、このリンクが継続し、無線端末1が一つの端末アンテナからリンク用アンテナ方向に定常的に電波を送信し続けることになる。
【0037】
したがって、この状態で、固定された測定用アンテナ21p、21qに対して、無線端末1およびリンク用アンテナを一体的に基準点Oを中心に垂直軸と水平軸周りに回転させて、その角度毎に得られる測定用アンテナ21p、21qの受信信号から、無線端末1が一つの端末アンテナからリンク用アンテナ方向に出力するビームに対して全角度方向から電力値EIRPp、EIRPqを測定する。
【0038】
なお、測定系によっては、固定された無線端末1とリンク用アンテナに対して、測定用アンテナ21p、21q側を基準点Oを中心に回転させてもよい。
【0039】
また、無線端末1に特定のコマンドを与えることで、端末アンテナおよびそのビーム特性を変化させないように保持することも可能である。この場合、測定用アンテナをリンク用アンテナとして兼用できる。例えば、測定用アンテナ21p、21qの一方(ここでは測定用アンテナ21pとする)からダウンリンク信号を送信し、このダウンリンク信号に対し、無線端末1が一つの端末アンテナから測定用アンテナ21p方向にアップリンク信号を送信することになる。ここで必要であれば、アップリンク信号のビーム方向を所望方向となるように測定用アンテナ21pの位置を調整する。そして、このリンクを維持した状態で、無線端末1がアップリンク信号を送信する端末アンテナおよびそのビーム特性を変化させないように指示するコマンド(ビームロックコマンド)を無線端末1に与える。
【0040】
このコマンドを受けた無線端末1は、以後、アクティブな端末アンテナおよびビーム特性を変更しない状態に保持されるので、この状態で、前記したように、固定された測定用アンテナ21p、21qに対して、無線端末1を基準点Oを中心に回転させ、その角度毎に得られる測定用アンテナ21p、21qの受信信号から、無線端末1が一つの端末アンテナから無線端末からみて特定方向に出力するビームに対して全角度方向から電力値EIRPp、EIRPqを測定する。
【0041】
測定結果補正手段42は、測定モードに関係なく、電力測定手段41で得られた2組の電力測定結果EIRPp、EIRPqに対し、無線端末1の複数N(ここではN=4とする)の端末アンテナ1a〜1dのうちの特定アンテナが送信した信号によるものと仮定し、その特定アンテナの基準点Oに対する位置ずれを見込んでその特定アンテナが基準点に存在する場合と等価なM組の電力測定結果となるような補正処理を、特定アンテナを変えて行い、M組×N(この例では2組×4)の補正結果(EIRPp-a、EIRPq-a)〜(EIRPp-d、EIRPq-d)を求める。なお、2つの測定用アンテナ21p、21qの観測角度が異なる点については、データ処理前に順番を並べ替えて、互いに同じ角度から観測したデータに見えるように変換する。この補正処理の詳細については後述する。
【0042】
アンテナ推定手段43は、測定モードとしてTRP測定が指定された場合、測定結果補正手段41で得られたM組×Nの補正結果を全測定区間で比較し、M組の補正結果同士の誤差が最も小さくなる補正結果を与える特定アンテナを、測定時に実際に電波を送信した端末アンテナ(アクティブアンテナ)と決定する。
【0043】
例えば、測定結果補正手段42で得られた2組×4の補正結果(EIRPp-a、EIRPq-a)〜(EIRPp-d、EIRPq-d)が、
図2のように得られたとする。この例では、端末アンテナ1bを特定アンテナとしたときに得られた補正結果(EIRPp-b、EIRPq-b)同士の差分Δebについての全測定区間の誤差(例えば平均2乗誤差)が、端末アンテナ1a、1c、1dを特定アンテナとしたときに得られた補正結果同士の差分Δea、Δec、Δedについての全測定区間の誤差よりも小さい。したがって、測定時に実際に電波を送信したアクティブアンテナは端末アンテナ1bであると推定できる。なお、実際の測定区間は、θ軸とφ軸の2軸平面上にEIPR値をプロットした3次元グラフとなるが、ここでは説明を容易にするために、簡易的に測定区間を表す1本の横軸上にEIRP値をプロットした2次元グラフで表している。
【0044】
測定結果生成手段44は、測定モードとしてTRP測定が指定された場合、アンテナ推定手段43でアクティブと推定された端末アンテナ1bについての補正結果(上記例では、EIRPp-b、EIRPq-b)を有効なものとし、この補正結果に基づいて、TRPの演算(具体的には全測定区間の積分処理)を行い、TRP値(単位dBm)を求める。有効な補正結果は測定用アンテナの数の分だけ得られるが、例えばその中から一つの補正結果を選択して用いる方法や、複数の補正結果の平均値を用いる方法等を含めて任意である。
【0045】
次に、測定モードとしてEIRP測定が指定された場合の電力測定手段41、アンテナ推定手段43の動作について説明する。
【0046】
EIRP測定では、前記したように、無線端末1が出力する電波のビーム方向を全方角に変更させ、それら各方角のビームの中心の電力を求める必要がある。
【0047】
このEIRP測定が指定された場合、電力測定手段41は、測定用アンテナの一つを使って、その測定用アンテナと無線端末1の相対位置関係を変化させることによって、無線端末1が測定用アンテナに向けて送信する電波のビーム方向を変化させるとともに、無線端末1が送信する電波のビーム方向の放射電力(EIRP)を測定する処理を、M個の測定用アンテナについて順次行い、M組の電力測定結果を得る。
【0048】
これは、測定用アンテナにリンク用アンテナを兼ねさせることで実現できる。つまり、電力測定手段41が、リンク用アンテナを兼ねた測定用アンテナ(以下、リンク兼用アンテナと記す)からダウンリンク信号を送信することで無線端末1が送信するアップリンク信号のビームはダウンリンク信号が到来するリンク兼用アンテナ方向となる。したがって、本実施形態の測定系であれば、固定されたリンク兼用アンテナに対して無線端末1を基準点Oを中心に回転させつつ、角度毎にリンクを更新していけば、様々な方向のビーム中心のEIRPを測定できる。
【0049】
実施形態のように、二つの測定用アンテナ21p、21qを有する測定系では、始めに一方の測定用アンテナ21pをリンク兼用アンテナとして用い、無線端末1を回転させて、全方角についての電力値EIRPpを測定し、次に、他方の測定用アンテナ21qをリンク兼用アンテナとして用い、無線端末1を回転させて、全方角についての電力値EIRPqを測定することになる。
【0050】
なお、このEIRP測定では、無線端末1が送信用に自発的に選択する端末アンテナ(アクティブアンテナ)が、測定ポイントごとに切り替わる可能性があり、さらに、そのアクティブアンテナが切り替わるタイミングは、測定毎に多少前後する可能性があるので、アクティブアンテナを推定する際には、一つの端末アンテナがアクティブな区間を認識する必要がある。
【0051】
上記したように、EIRP測定モードにおいて得られた電力測定結果EIRPp、EIRPqに対して、測定結果補正手段42による位置ずれの補正が行なわれて2組×4の補正結果(EIRPp-a、EIRPq-a)〜(EIRPp-d、EIRPq-d)が例えば
図3のように得られる。なお、TRP測定の場合と同様に、2つの測定用アンテナ21p、21qの観測角度が異なる点については、データ処理前に順番を並べ替えて、互いに同じ角度から観測したデータに見えるように変換する。
【0052】
図3の測定結果では、測定用アンテナ21pの受信信号を用いて得られた補正結果EIRPp-a〜EIRPp-dが測定点P2で不連続に変化しており、測定用アンテナ21qの受信信号を用いて得られた補正結果EIRPq-a〜EIRPq-dが、測定点P2の近くの測定点P1で不連続に変化しており、測定点P1の手前の測定区間および測定点P2のより後の測定区間では、補正結果の連続性が確認できる。
【0053】
アンテナ推定手段43は、測定モードとしてEIRP測定が指定された場合、M組の電力測定結果から得られたM組×Nの補正結果を所定の測定区間毎に比較して、各測定区間でM組の補正結果同士の誤差が最も小さくなる補正結果を与える特定アンテナを、その測定区間に実際に電波を送信したアクティブアンテナと推定する。ここで、測定区間は、無線端末1が端末アンテナを切り替えを行なった区間を検出し、この区間を境界として識別することになる。
【0054】
具体的に言えば、測定結果補正手段42で得られた補正結果に対し、同じ端末アンテナについての補正結果同士(EIRPp-i、EIRPq-i)の誤差(差分の2乗または絶対値)をある区間で移動平均したものを比較して、規定長以上に渡って連続して同一ペアの誤差が最小となる区間を見つけ、その区間においてアクティブである端末アンテナは、ペアで想定した端末アンテナであると判断する(なお、本処理をするデータは、測定ポイントが隣接する、測定された時系列順のデータであるとする。)
【0055】
例えば、
図3の補正結果に対して、
図4に示すようにP1の手前の測定区間では、端末アンテナ1bについて得られた補正結果EIRPp-b、EIRPq-b同士の誤差が最も小さく、P2の後の測定区間では、端末アンテナ1cについて得られた補正結果EIRPp-c、EIRPq-c同士の誤差が最も小さいので、P1より前の測定区間でアクティブなアンテナは端末アンテナ1bと判断し、P2より後の測定区間でアクティブなアンテナは端末アンテナ1cと判断する。なお、この測定区間の境界となる測定点P1、P2は、
図5に一例を示すように、補正結果に対する微分処理を行い、その微分値の絶対値が最大(理論上は∞)となる点で判断することができる。
【0056】
なお、
図5では、アクティブと判断された端末アンテナのみに注目して、その補正結果の微分値の絶対値が最大となる位置でアクティブなアンテナが切り替わったと判断するが、端末アンテナの切り換わり時には、そのビームの変化に伴い、アクティブアンテナ以外の端末アンテナについての補正結果も不連続に変化するので、任意の端末アンテナについての補正結果の微分値からも、アクティブな端末アンテナの切り換わりポイントを予測できる。
【0057】
ただし、上記のEIRP測定におけるアクティブアンテナ推定方法では、測定区間の端(測定開始サンプル付近、測定終了サンプル付近、時系列順のサンプルが隣接する測定ポイントのデータでないところ)において正確にアクティブアンテナを推定することができない。
【0058】
そのような場合に、以下の推定方法が適用可能である。
つまり、あるEIRP測定ポイントにおけるアクティブな端末アンテナは、次の手順で推定することができる。
(a)ある測定ポイントのEIRPを測定する。
(b)無線端末1が送信するビーム特性およびアクティブな端末アンテナが変化しないようにテストコマンド(ビームロック機能)で固定する。
(c)前記TRP測定におけるアクティブアンテナ推定手順を適用してアクティブな端末アンテナを推定する(このとき測定ポイントの数は、推定するのに必要最低限の数として良い)。
(d)上記(a)の測定ポイント位置に戻る。
(e)テストコマンドによるビームロックを解除する。
【0059】
測定結果生成手段44は、測定モードとしてEIRP測定が指定された場合、アンテナ推定手段43で得られた測定区間毎にアクティブと推定された端末アンテナについての有効な補正結果を全測定区間分組合せて、全方位についてのEIRP特性を生成する。この場合、有効な補正結果のうち切り換わりポイント(前記例ではP1、P2)が共通の補正結果を選択して全測定区間の特性を合成すればよい。
【0060】
例えば、
図4の補正結果について言えば、切り換わりポイントとして測定ポイントP1を優先させれば、P1より前の測定区間のEIRP特性としては端末アンテナ1bについて得られた補正結果EIRPq-bを採用し、P1より後の測定区間のEIRP特性としては端末アンテナ1cについてEIRPq-cを採用すればよい。また、切り換わりポイントとして測定ポイントP2を優先させれば、P2より前の測定区間のEIRP特性としては端末アンテナ1bについて得られた補正結果EIRPp-bを採用し、P2より後の測定区間のEIRP特性としては端末アンテナ1cについてEIRPp-cを採用すればよい。
【0061】
次に、無線端末1の各端末アンテナの位置が基準点Oからずれていることによる測定結果への影響を補正する処理について説明する。
【0062】
端末アンテナの位置が基準点Oからずれている場合、測定ポイントの角度の誤差、測定されたデータのパスロスの誤差、測定用アンテナの指向性の影響による誤差が生じる。
【0063】
これらの誤差を補正するために2つの球体A、B(図示せず)を想定する。球体Aは、基準点O(回転中心)を中心とする球体であり、その半径は回転中心から測定用アンテナまでの距離R(前記測定系ではLp、Lq)である。球体Bは、無線端末1の端末アンテナの位置を中心とする球体であり、その半径は球体Aと同じである。
【0064】
前記した電力測定手段40による測定は、球体A上で垂直軸周りおよび水平軸周りの角度が均等な格子点で実施される。例えば、EIRP測定を考えると、その測定値は無線端末1の端末アンテナの位置から球体A上の各格子点に向けて放射された電波のパワーを測定したものになる。このとき測定用アンテナへの入射角は正面方向からずれるため、その分、測定用アンテナの指向性の影響を受けた測定結果となる。
【0065】
さらに、無線端末1の端末アンテナから測定用アンテナまでのパスロス分も本来の値からずれたものとなる。無線端末1の端末アンテナから球体A上の各格子点に向けて結んだ直線上に測定結果があるが、その直線と球体Bの表面が交差する点に、対応する測定結果をマッピングしなおす。そのマッピングしなおす際、測定用アンテナの指向性の影響およびパスロスの誤差分を補正する。マッピングしなおした点の間隔は均等ではなくなるが、必要に応じて補間する。
【0066】
以下にその補正処理を数式を用いて説明するが、その前に計算に必要な座標をXYZ直交座標空間上で以下のように定義する(
図6参照)。
【0067】
回転中心(基準点O)の座標(0,0,0)
測定用アンテナの座標(x
m,y
m,z
m)
=(R・sinθ
m・cosφ
m,R・sinθ
m・sinφ
m,R・sinθ
m)……(0)
端末アンテナの位置(位相中心)の座標(x
a,y
a,z
a)
端末アンテナから各測定用アンテナの位置を結ぶ直線と、端末アンテナを中心とする球体Bの球面が交わる点の座標(x
d,y
d,z
d)
【0068】
端末アンテナから各測定用アンテナの位置(x
m,y
m,z
m)を結ぶ直線をパラメータtを含む形で表現すると次のようになる。
(x,y,z)
={(x
m,y
m,z
m)−(x
a,y
a,z
a)}t+(x
a,y
a,z
a)……(1)
【0069】
端末アンテナの位置を中心とする半径Rの球面は、
(x−x
a)
2+(y−y
a)
2+(z−z
a)
2=R
2 ……(2)
【0070】
式(1)を式(2)に代入して、次式(3)が得られる。
t=R/√{(x
m−x
a)
2+(y
m−y
a)
2+(z
m−z
a)
2} ……(3)
【0071】
これを式(1)に代入すれば、次式(4)〜(6)が得られる。
x
d=(x
m−x
a)・t+x
a ……(4)
y
d=(y
m−y
a)・t+y
a ……(5)
z
d=(z
m−z
a)・t+z
a ……(6)
【0072】
また、端末アンテナの位置を中心とする球体Bの中心からその球面上の点(x
d,y
d,z
d)を見たときの角度(φ
c,θ
c)は、次の式の関係にある。
(x
d−x
a,y
d−y
a,z
d−z
a)
=(R・sinθ
c・cosφ
c,R・sinθ
c・sinφ
c,R・sinθ
c) ……(7)
【0073】
式(7)から次の関係式が得られる。ただし、以下のtan
−1演算については実際のプログラムではゼロによる除算とならないように、X座標とY座標を除算せずに引数で渡すような関数(例えば、C言語の関数では、atan2(y,x))を利用することを想定している。
【0074】
(y
d−y
a)/(x
d−x
a)
=(R・sinθ
c・sinφ
c)/(R・sinθ
c・cosφ
c)
=tanφ
c ……(8)
∴φ
c=tan
−1{(y
d−y
a)/(x
d−x
a)} ……(9)
【0075】
また、式(7)から次の関係式が得られる。
{(x
d−x
a)
2+(y
d−y
a)
2}/(z
d−z
a)
2
=R
2・sin
2θ
c・(cos
2φ
c+sin
2φ
c)/(R
2・cos
2θ
c)
=tan
2φ
c ……(10)
∴|θ
c|=|tan
−1{√[(x
d−x
a)
2+(y
d−y
a)
2]/(z
d−z
a)}|
……(11)
【0076】
ここで、0<θ
c<πであるので、
θ
c=|tan
−1{√[(x
d−x
a)
2+(y
d−y
a)
2]/(z
d−z
a)}|……(12)
【0077】
次に、測定用アンテナの指向性の影響を補正するために、回転中心(基準点O)を中心とする球体Aの球面上の水平偏波・垂直偏波・回転中心方向の単位ベクトルそれぞれと、測定用アンテナから端末アンテナに向けたベクトルの内積から各ベクトルのなす角を求める。
【0078】
水平偏波方向の単位ベクトルv
H
v
H=(−sinφ
m,cosφ
m,0) ……(13)
垂直偏波方向の単位ベクトルv
V
v
V=(−cosθ
m・cosφ
m,−cosθ
m・sinφ
m,sinθ
m) ……(14)
回転中心方向の単位ベクトルv
R
v
R=(−sinθ
m・cosφ
m,−sinθ
m・sinφ
m,−cosθ
m) ……(15)
測定用アンテナから端末アンテナをみたときの単位ベクトルv
a
v
a=a/A ……(16)
a=(x
a−x
m,y
a−y
m,z
a−z
m)
A=√{(x
a−x
m)
2+(y
a−y
m)
2+(z
a−z
m)
2}
【0079】
測定用アンテナの正面方向からのずれ角度(指向性のずれ補正用)
水平方向ΔH=tan
−1{(v
a・v
H)/(v
a・v
R)} ……(17)
垂直方向ΔV=tan
−1{(v
a・v
V)/√[(v
a・v
R)
2+(v
a・v
H)
2]}
……(18)
パスロスの補正量G
PLcmp
G
PLcmp=20log
10(A/R) [dB]……(19)
【0080】
測定用アンテナの格子点(i,j)に対応する、回転中心から見た角度を次のように定義する。
φ
m(i)=(2π/Na)・i i={0,1,2,……,Na−1}
θ
m(j)=(π/Ne)・j j={0,1,2,……,Ne}
【0081】
格子点(i,j)に対応するEIRP測定結果を、EIRP
meas(i,j)[dB]とすると、それに対応する直交座標は前記式(0)、(3)〜(6)で求まり、さらに、極座標は前記式(9)、(12)により求まる。
【0082】
また、それに対応する補正済みのEIRP値EIRP
cmp(i,j)は、次の式で計算される。
EIRP
cmp(i,j)=EIRP
meas(i,j)+G
PLcmp−Dir(ΔH,ΔV)
……(20)
ここで、Dir(ΔH,ΔV)は、測定用アンテナの指向性である。
【0083】
次に、端末アンテナの位置ずれ補正済みのデータに対してTRP測定を実施する場合の計算について述べる。
【0084】
補正処理によって測定ポイントの格子間隔が均等ではなくなるため、TRPを計算する際には重み付けの積分を実施する必要がある。
【0085】
格子点(i,j)に対応する重みづけ面積をΔs(i,j)とすると、補正済みのデータに対応したTRP値TRP
cmpは、次のように計算される。
TRP
cmp=Σ
iΣ
jEIRP
cmp(i,j)・{Δs(i,j)/4πR
2} ……(21)
ここで、記号Σ
iは、i=0〜Ne−1までの総和を表し、記号Σ
jは、j=0〜Na−1までの総和を表す。
【0086】
格子点(i,j)に対応する重みづけ面積Δs(i,j)は、以下のように計算される。
極以外の格子点(i
0,j
0)(0<j
0<Ne)に対応する重み付け面積Δs(i
0,j
0)は、
図7のように、上辺d
1、底辺d
2、高さhの台形として表すことができ、それらの値は以下のように求められる。
【0087】
d
1(i
0,j
0)={dist[(i
0−1,j
0−1),(i
0+1,j
0−1)]
+dist[(i
0−1,j
0),(i
0+1,j
0)]}/4
……(22)
d
2(i
0,j
0)={dist[(i
0−1,j
0),(i
0+1,j
0)]
+dist[(i
0−1,j
0+1),(i
0+1,j
0+1)]}/4
……(23)
h(i
0,j
0)=dist[(i
0,j
0−1),(i
0,j
0+1)] ……(24)
ただし、dist[A,B]は、2点A、B間の距離を表す演算子である。
【0088】
上記式を用いて、極以外の格子点の重み付け面積は、台形の面積の式にしたがって、次のように表される。
Δs(i
0,j
0)=h(i
0,j
0)・{d
1(i
0,j
0)+d
2(i
0,j
0)}/2 ……(25)
【0089】
また、上下の極(j
0=0,j
0=Ne)における重み付け面積は、
図8の(a)、(b)に示す2等辺3角形の面積Δs(i
0,0)、Δs(i
0,Ne)をNa倍したものであり、以下の計算で求められる。ただし、前記式(21)で積分する際にEIRP
cmp(i,0)・EIRP
cmp(i,Ne)は、iの値によらず同一の測定結果であるとする。
【0090】
Δs(i
0,0)=h
np(i
0)・d
np/2 ……(26)
h
np(i
0)=dist[(i
0,0),(i
0,1)]/2 ……(27)
d
np=dist[(i
0−1,1),(i
0+1,1)]/2 ……(28)
【0091】
Δs(i
0,Ne)=h
sp(i
0)・d
sp/2 ……(29)
h
sp(i
0)=dist[(i
0,Ne),(i
0,Ne−1)]/2……(30)
d
sp=dist[(i
0−1,Ne−1),(i
0+1,Ne−1)]/2……(31)
【0092】
なお、上記重み付け面積Δsは、格子点(即ち測定系)および端末アンテナ位置が決まれば一義的に求まるので、測定に先立って予め求めて記憶しておき、式(21)の演算に用いればよい。
【0093】
上記実施形態では、測定用アンテナを2つ用いる場合について説明したが、測定用アンテナを多く用いるほどアクティブな端末アンテナに対する推定精度は高くなるが、演算処理に時間がかかる。したがって、例えば、速度優先の場合には2つの測定用アンテナの測定結果で推定し、精度優先の場合には3つ以上の測定用アンテナを用いような使い分けを行なうこともできる。