特許第6823615号(P6823615)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6823615
(24)【登録日】2021年1月13日
(45)【発行日】2021年2月3日
(54)【発明の名称】水素ガス製造方法及び水素ガス製造設備
(51)【国際特許分類】
   C25B 1/04 20210101AFI20210121BHJP
   B01D 53/26 20060101ALI20210121BHJP
   B01D 53/04 20060101ALI20210121BHJP
【FI】
   C25B1/04
   B01D53/26 231
   B01D53/04 220
   B01D53/04 230
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-34802(P2018-34802)
(22)【出願日】2018年2月28日
(65)【公開番号】特開2019-148001(P2019-148001A)
(43)【公開日】2019年9月5日
【審査請求日】2019年10月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000192590
【氏名又は名称】株式会社神鋼環境ソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】石井 豊
(72)【発明者】
【氏名】中尾 末貴
【審査官】 萩原 周治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−249488(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0129390(US,A1)
【文献】 米国特許第05123277(US,A)
【文献】 特開2007−056199(JP,A)
【文献】 特表2017−534435(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0059184(US,A1)
【文献】 韓国公開特許第10−2017−0046739(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 1/00−15/08
B01D 53/02−53/12
B01D 53/26−53/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を電気分解して水素ガスを発生させる電解工程と、
前記水素ガスを被処理ガスとして吸着剤による除湿処理を行う除湿工程と、
該除湿工程に用いられた前記吸着剤を再生する再生工程と、が実施され、
前記除湿処理後の処理済ガスとして前記被処理ガスよりも水分の少ない水素ガスが製造される水素ガス製造方法であって、
前記除湿工程では、加熱されることで吸着した水分を放出して再生される吸着剤が用いられ、該吸着剤が収容されている吸着筒を前記被処理ガスが通過することによって前記除湿処理が実施され、
前記除湿工程に用いられた後の前記吸着筒で前記再生工程を実施し、該吸着筒で再び前記除湿工程を実施するまで別の吸着筒で前記除湿工程を実施し得るように前記吸着筒が複数用いられ、
前記再生工程では、前記吸着筒に収容されている前記吸着剤が加熱されるとともに水素ガスが再生用ガスとして該吸着筒に供給され、前記吸着剤から放出された水分を含む前記再生用ガスが該吸着筒から排出ガスとして排出され、且つ、該排出ガスの単位体積当たりの水分含有量が測定され
前記再生工程では、前記排出ガスの前記水分含有量を露点計によって測定し、
該測定を行う前記排出ガスを前記露点計よりも上流側で冷却することと、
前記露点計を通過した後の前記排出ガスを系外に排出することとを更に実施する水素ガス製造方法。
【請求項2】
前記処理済ガスの一部が前記再生用ガスとして利用される請求項1記載の水素ガス製造方法。
【請求項3】
前記排出ガスから熱回収され、該熱回収によって得られた熱で前記再生工程に用いる前記再生用ガスが加熱される請求項1又は2記載の水素ガス製造方法。
【請求項4】
前記排出ガスの前記冷却を前記熱回収によって実施することと、
該熱回収された後の前記排出ガスをさらに冷却することと、を前記露点計よりも上流側で実施し、
前記熱回収の後のさらなる冷却によって生じた凝縮水を前記排出ガスから除去した後に該排出ガスの水分含有量を前記露点計で測定する請求項3記載の水素ガス製造方法。
【請求項5】
前記再生工程では、前記吸着剤の加熱が開始された後の経過時間がさらに測定される請求項1乃至の何れか1項に記載の水素ガス製造方法。
【請求項6】
水を電気分解して水素ガスを発生させる電解セルを備えた電解部と、
前記電解部から供給される前記水素ガスを被処理ガスとして吸着筒による除湿処理が行われる除湿部と、を備え、
前記除湿部で除湿処理された後の処理済ガスとして前記被処理ガスよりも水分の少ない水素ガスが製造される水素ガス製造設備であって、
前記吸着筒には、加熱することによって、吸着した水分を放出させて再生させることができる吸着剤が収容されており、
該除湿部は、前記除湿処理に用いられた後の前記吸着筒に収容されている吸着剤を再生して該吸着筒で再び前記除湿処理を実施するまでの間、別の吸着筒で前記除湿処理を実施し得るように複数の前記吸着筒が備えられており、
前記吸着筒の前記再生では、前記吸着筒に収容されている前記吸着剤が加熱されるとともに水素ガスが再生用ガスとして該吸着筒に供給され、前記吸着剤から放出された水分を含む前記再生用ガスが該吸着筒から排出ガスとして排出され、
前記除湿部には、前記排出ガスの単位体積当たりの水分含有量を測定するための露点計がさらに備えられ
該測定を行う前記排出ガスを前記露点計よりも上流側で冷却することと、
前記露点計を通過した後の前記排出ガスを系外に排出することとが実施される水素ガス製造設備。
【請求項7】
前記排出ガスから熱回収して前記排出ガスを冷却する熱交換器を有し、該熱交換器で冷却された前記排出ガスがさらに冷却される冷却装置が備えられ、
該冷却装置での冷却によって前記排出ガスに凝縮水が生じた場合に前記露点計に供給する前に前記排出ガスから前記凝縮水を除去する凝縮水除去装置がさらに備えられている請求項6記載の水素ガス製造設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水を電気分解して水素ガスを発生させる電解工程と、前記水素ガスを被処理ガスとして吸着剤による除湿処理を行う除湿工程と、該除湿処理後の処理済ガスとして前記被処理ガスよりも水分の少ない水素ガスが製造される水素ガス製造方法と、この種の水素ガスの製造に用いられる水素ガス製造設備とに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、クリーンなエネルギー源として水素ガスを利用する機会が広がっており、このような水素ガスを得るための方法としては、水を電気分解して前記水素ガスを発生させる方法が広く知られている。
このような水の電気分解を利用した水素ガスの製造方法においては、電解セルから発生する水素ガスに通常多くの水分が含まれていることから発生した水素ガスを被処理ガスとして除湿処理が施されたりしている。
【0003】
この種の除湿処理には、ゼオライトなどの吸着剤を収容した吸着筒が利用されている。
ゼオライトは、水分を吸着可能でありながら、水分吸着後には加熱することによって吸着した水分を放出して吸着性能を回復することができる。
このため、従来、水素ガスの製造に際しては、ゼオライトのように再生可能な吸着剤を収容した吸着筒を複数使用し、複数の吸着筒の内の第1の吸着筒で水素ガスを除湿する工程を実施し、これと並行して第2の吸着筒では吸着剤を再生する工程を実施し、第1の吸着筒での水分吸着量が飽和する手前で水素ガスの供給先を第1の吸着筒から再生工程の終了した第2の吸着筒へと切り替えて第2の吸着筒で除湿工程を継続して実施させるような方法が採用されている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−249488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年の環境負荷軽減に対する要望の高まりによって前記のような水素ガス製造方法においては、消費エネルギーを低減させて省エネルギー化することが求められている。
しかしながら、従来の水素ガス製造方法においては十分な省エネルギー化がなされていない。
そこで、本発明は水を電気分解して水素ガスを製造する水素ガス製造方法において省エネルギー化を図ることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく本発明者が鋭意検討したところ、吸着剤を加熱再生して吸着性能の再利用が図られているような場合においては、この再生のために使用する水素ガスの消費量を削減したり、この再生のためのエネルギーを削減したりすることが省エネルギー化に有効であることを見出した。
そして、本発明者は、従来の吸着筒の再生工程では当該再生工程を完了させるタイミングがタイマー制御となっているために、再生工程時に流す水素ガスが必要以上に消費されていたり、吸着剤が必要以上に加熱されていたりする場合がある点に着目して本発明を完成させるに至った。
【0007】
本発明は、前記課題を解決すべく、水を電気分解して水素ガスを発生させる電解工程と、前記水素ガスを被処理ガスとして吸着剤による除湿処理を行う除湿工程と、該除湿工程に用いられた前記吸着剤を再生する再生工程と、が実施され、前記除湿処理後の処理済ガスとして前記被処理ガスよりも水分の少ない水素ガスが製造される水素ガス製造方法であって、前記除湿工程では、加熱されることで吸着した水分を放出して再生される吸着剤が用いられ、該吸着剤が収容されている吸着筒を前記被処理ガスが通過することによって前記除湿処理が実施され、前記除湿工程に用いられた後の前記吸着筒で前記再生工程を実施し、該吸着筒で再び前記除湿工程を実施するまで別の吸着筒で前記除湿工程を実施し得るように前記吸着筒が複数用いられ、前記再生工程では、前記吸着筒に収容されている前記吸着剤が加熱されるとともに水素ガスが再生用ガスとして該吸着筒に供給され、前記吸着剤から放出された水分を含む前記再生用ガスが該吸着筒から排出ガスとして排出され、且つ、該排出ガスの単位体積当たりの水分含有量が測定される水素ガス製造方法を提供する。
【0008】
また、本発明は、水を電気分解して水素ガスを発生させる電解セルを備えた電解部と、前記電解部から供給される前記水素ガスを被処理ガスとして吸着筒による除湿処理が行われる除湿部と、を備え、前記除湿部で除湿処理された後の処理済ガスとして前記被処理ガスよりも水分の少ない水素ガスが製造される水素ガス製造設備であって、前記吸着筒には、加熱することによって、吸着した水分を放出させて再生させることができる吸着剤が収容されており、該除湿部は、前記除湿処理に用いられた後の前記吸着筒に収容されている吸着剤を再生して該吸着筒で再び前記除湿処理を実施するまでの間、別の吸着筒で前記除湿処理を実施し得るように複数の前記吸着筒が備えられており、前記吸着筒の前記再生では、前記吸着筒に収容されている前記吸着剤が加熱されるとともに水素ガスが再生用ガスとして該吸着筒に供給され、前記吸着剤から放出された水分を含む前記再生用ガスが該吸着筒から排出ガスとして排出され、前記除湿部には、前記排出ガスの単位体積当たりの水分含有量を測定するための水分量測定装置がさらに備えられている水素ガス製造設備を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、再生工程が実施されている吸着筒から排出される排出ガスに含まれる水分量が把握できるため、当該吸着筒に収容されている吸着剤の再生状況を把握することができ、必要以上に再生用水素ガスが消費されたり、必要以上に吸着剤が加熱されたりすることを抑制させることができる。
即ち、本発明によれば、再生用水素ガスの消費量や、吸着剤の加熱再生に要するエネルギーを従来に比べて抑制させ得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係る水素ガス製造設備の概略的な系統図。
図2】水素ガス製造設備における除湿部の一つの運転状況を例示した概略図。
図3】水素ガス製造設備における除湿部の別の運転状況を例示した概略図。
図4】除湿工程を行っていた吸着筒を再生工程に移行する際の動作を示した概略図。
図5】除湿工程で得られた水素ガス以外の水素ガスを使って再生工程を行う際の運転状況を例示した概略図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の好ましい実施形態に係る水素ガス製造方法について説明する。
まず、水素ガス製造方法に用いられる水素ガス製造設備100について説明する。
図1に示すように本実施形態に係る水素ガス製造設備100は、水を電気分解して水素ガスを発生させる電解セル11を備えた電解部1を有している。
また、水素ガス製造設備100は、前記電解セル11で電気分解する水を電解部1に供給する水供給部2を有している。
なお、本実施形態での水素ガス製造設備100は、水素ガスの原料となる前記水としてイオン交換水や蒸留水などの純水を用いている。
【0012】
本実施形態に係る水素ガス製造設備100は、前記電解部1から供給される水素ガスを被処理ガスとして除湿処理を実施し、該除湿処理後の処理済ガスとして前記被処理ガスよりも水分の少ない水素ガスを得る除湿部3をさらに備えている。
電解部1から除湿部3に供給される水素ガスWH2は、概ね水蒸気を飽和状態で含んでいる。
そのため本実施形態での除湿部3は、この水素ガスWH2を被処理ガスとして導入し、除湿処理が実施されて乾燥状態となった水素ガスDH2を処理済ガスとして処理下流側へと供給すべく機能する。
【0013】
本実施形態に係る水素ガス製造設備100は、前記被処理ガスを前記電解部1から前記除湿部3へと搬送する第1搬送部4と、前記処理済ガスを前記除湿部3からユースポイント6に向けて搬送する第2搬送部5とをさらに備えている。
本実施形態での第1搬送部4並びに第2搬送部5は、パイプ、継ぎ手、バルブ等の配管部材によって構成されており、ポンプ等の搬送動力は備えられていない。
即ち、第1搬送部4や第2搬送部5は、パイプ等の内部を圧力によって水素ガスが自動的に移動し得るように構成されている。
【0014】
本実施形態の水素ガス製造設備100を構成する前記電解部1は、前記電解セル11に供給する純水を貯留する純水タンク12を備えている。
前記電解部1に備えられた電解セル11は、純水タンク12から供給される純水を内部に導入する給水口を備え、内部に固体高分子電解質膜を備えている。
該電解セル11では、固体高分子電解質膜の陽極面側に前記純水が流通され、電解により酸素ガスと水素イオンとが生成し、水素イオンは該陽極面側から陰極面側へと固体高分子電解質膜内を移動し、陰極面側にて水素ガスが発生する。
また、電解セル11では、移動する水素イオンに同伴して水分子が移動するため少量の純水が陰極側へと透過する。
電解セル11は、2つの排出口を備えており、電気分解によって生じた水素ガスが、透過した水とともに気液混合水の状態で排出される第1排出口と、酸素ガスが水とともに気液混合水の状態で排出される第2排出口とを備えている。
【0015】
前記電解部1は、前記電解セル11の陰極側及び陽極側から排出される気液混合水をそれぞれ気液分離するための2台のガス分離タンク13,14がさらに備えており、酸素ガスを含んだ気液混合水を気液分離するガス分離タンク14からは、気液分離後の水(純水)が前記純水タンク12に返送されるようになっている。
また、前記電解部1では、水素ガスを含んだ気液混合水が水素ガス用のガス分離タンク13で分離され、気液分離後の水蒸気を多く含んだ水素ガスが前記除湿部3に向けて供給される。
【0016】
前記水供給部2は、水の電気分解によって水が消費されて前記純水タンク12における水の水位が予め設定した下限以下になった場合に当該純水タンク12に水を供給すべく構成されている。
【0017】
前記除湿部3は、例えば、合成ゼオライト粒子、シリカゲル粒子、活性アルミナ粒子等といった水分を吸着可能な吸着剤が容器内に収容されている吸着筒を2台備えており、これらの吸着筒31,32が並列配置されてガス分離タンク13で分離された水素ガスの除湿処理をいずれの吸着筒でも実施することができるように構成されている。
即ち、本実施形態の水素ガス製造設備100は、前記電解セル11で発生させた被処理ガス(水蒸気を多く含んだ水素ガスWH2)の供給先を、2台の前記吸着筒31,32の内の第1吸着筒31と、該第1吸着筒31とは別の第2吸着筒32とに切り替え可能に構成されている。
【0018】
前記の吸着剤は、水分を吸着可能で且つ加熱されることで吸着した水分が放出されて水分吸着性能が回復する再生可能な吸着剤となっており、本実施形態の吸着筒31,32は内部に吸着剤を収容したままこれらを再生し得るように構成されている。
具体的には、この2台の吸着筒31,32は、それぞれヒーター31a,32aが内蔵されており、前記ヒーター31a,32aに通電することによって水分を吸着した吸着剤を加熱し、該加熱された吸着剤から水分を放出させて該吸着剤の再生を実施しうるよう構成されている。
ヒーター31a,32aは、筒内で直接的に吸着剤を加熱する直接加熱方式のものであっても、吸着剤を収容したケースの外側から吸着剤を間接的に加熱する間接加熱方式のものであってもよい。
なお、ヒーター31a,32aは、電熱線を用いたものに限定されず、オイルなどの熱媒を循環させる方式のものであってもよい。
吸着剤の加熱は、例えば、電気ヒーターやオイルヒーターに限定されず、例えば、マイクロ波を照射するような方法を採用してもよい。
第1吸着筒31のヒーター31aの通電経路には、該ヒーター31aを通電状態と非通電状態とに切り替えるための開閉器31sが備えられ、第2吸着筒32のヒーター32aの通電経路には、該ヒーター32aを通電状態と非通電状態とに切り替えるための開閉器32sが備えられている。
【0019】
本実施形態の除湿部3では、後述するように再生工程で吸着剤の再生が行われる吸着筒から排出される排出ガスに対して露点計での水分量測定が実施される。
そして、本実施形態の除湿部3は、この露点計で測定される測定値(露点)について所望の値を設定することが可能な制御装置CTRが備えられており、前記開閉器31s,32sの開閉(on/off)や、後述するガス供給先を切り替える切替装置がこの制御装置CTRで制御されるように構成されている。
【0020】
前記の通り該除湿部3は、前記被処理ガスを第1吸着筒31に供給して被処理ガスの除湿処理を実施した後に前記被処理ガスの供給先を第2吸着筒32に切り替えて該第2吸着筒32で被処理ガスの除湿処理を継続し得るように構成されており、前記被処理ガスの供給先を切り替えるガス供給切替装置を備えている。
そして、前記除湿部は、前記第1吸着筒31及び前記第2吸着筒32の内の一方の吸着筒に収容されている前記吸着剤を再生しつつ他方の吸着筒で前記除湿処理を実施し得るように構成されている。
また、前記除湿部は、前記他方の吸着筒での除湿処理によって得られた処理済ガスを前記第2搬送部5を通じてユースポイント側に供給するとともに該処理済ガスの一部を前記一方の吸着筒に分配して吸着剤の再生に利用し得るように構成されており、前記処理済ガスを分配する分配装置(図示せず)を備えている。
【0021】
前記除湿部3には、水素ガスの供給先を切り替えるための3つのガス供給切替装置C1,C2,C3が備えられている。
第1のガス供給切替装置C1(以下「第1切替装置(C1)」ともいう)は、前記第1搬送部4を通じて導入された前記被処理ガスの前記吸着筒31,32への供給を制御するためのものである。
より具体的に説明すると、前記第1切替装置C1は、並列配置された2台の吸着筒31,32の上流側に備られている。
第2のガス供給切替装置C2(以下「第2切替装置(C2)」ともいう)は、除湿処理がされた後の水素ガスの経路を切り替えるためのものである。
該第2切替装置C2は、吸着筒31,32の下流側に配置されている。
第3のガス供給切替装置C3(以下「第3切替装置(C3)」ともいう)は、吸着剤の再生に利用されて水分を多く含んだ状態となった水素ガスの経路を切り替えるためのものである。
本実施形態の除湿部3では、前記第1搬送部4から第1吸着筒31へと至る被処理ガスの第1の流通経路L1と、前記第1搬送部4から第2吸着筒32へと至る被処理ガスの第2の流通経路L2とを有しており、該第2の流通経路L2と前記第1の流通経路L1とは、上流側において経路が共通している。
即ち、前記第1の流通経路L1と前記第2の流通経路L2とは、除湿部3への被処理ガスの入り口から吸着筒31,32までの間で分岐した状態になっている。
そして、前記第1切替装置C1は、この分岐点に配されており、第1吸着筒31と第2吸着筒32との内の少なくとも一方に被処理ガスを供給する供給状態、及び、第1吸着筒31と第2吸着筒32との何れにも被処理ガスを供給しない非供給状態となるように構成されている。
具体的には、前記第1切替装置C1は、第1吸着筒31と第2吸着筒32との何れに対しても被処理ガスを供給させないモードと、第1吸着筒31と第2吸着筒32との何れか一方に対して被処理ガスを供給するモードと、第1吸着筒31と第2吸着筒32の両方に対して被処理ガスを供給するモードとに切り替え可能となっている。
即ち、前記第1切替装置C1は、前記非供給状態となるモード、前記供給状態で第1吸着筒31に被処理ガスを供給するモード、前記供給状態で第2吸着筒32に被処理ガスを供給するモード、及び、前記供給状態で第1吸着筒31と第2吸着筒32両方に被処理ガスを供給するモードの4つのモードに切り替え可能になっている。
【0022】
本実施形態の除湿部3は、第1吸着筒31から前記第2搬送部5へと至る第3の流通経路L3と、前記第2吸着筒32から前記第2搬送部5へと至る第4の流通経路L4とをさらに有しており、該第3の流通経路L3と前記第4の流通経路L4とは、下流側(第2搬送部5側)において経路が共通している。
即ち、前記第3の流通経路L3と前記第4の流通経路L4とは、吸着筒31,32から第2搬送部5までの間で統合された状態になっている。
そして、前記第2切替装置C2は、この統合地点に配され、それぞれ第2搬送部5、第1吸着筒31、及び、第2吸着筒32へと延びる配管に接続されており、第1吸着筒31と第2吸着筒32との間の被処理ガスの流通を可能にしながらも第2搬送部5に対して処理済ガスを供給させない非供給状態のモードと、第1吸着筒31と第2吸着筒32との間の被処理ガスの流通を可能にしながらも供給状態となって第2搬送部5への処理済ガスを供給可能にするモードとに切り替え可能となっている。
【0023】
本実施形態の除湿部3は、前記第1の流通経路L1から分岐して系外へと向かう経路を構成する第5の流通経路L5と、前記第2の流通経路L2から分岐して系外へと向かう経路を構成する第6の流通経路L6とを備えている。
本実施形態の除湿部3は、前記第1吸着筒31と前記第2吸着筒32とを再生する際に、これらの下流側から上流側に向けて再生用ガス(水素ガス)を流通させ得るように構成されている。
そして、前記第5の流通経路L5と前記第6の流通経路L6とは、それぞれ再生に用いられた後の水素ガスを排出ガスとして系外に排出すべく用いられるものである。
【0024】
本実施形態の除湿部3は、前記第5の流通経路L5を流通する排出ガスと前記第3の流通経路L3を流通する水素ガスとの間で熱交換を行うための第1熱交換器E1と、前記第6の流通経路L6を流通する排出ガスと前記第4の流通経路L4を流通する水素ガスとの間で熱交換を行うための第2熱交換器E2とをさらに備えている。
前記第5の流通経路L5と前記第6の流通経路L6とは、熱交換器の下流側で接続されて、一つの経路となるように統合されており、前記接続がされている箇所に前記第3切替装置C3が配されている。
尚、前記第5の流通経路L5と前記第6の流通経路L6とが統合された後の前記第3切替装置C3の下流側の経路は、前記第5の流通経路L5や前記第6の流通経路L6とともに水素ガスを系外に排出するための経路を構成するものである。
即ち、第5の流通経路L5と第6の流通経路L6には、系外へ排出するガスの排出先を切り替えるべく前記第3切替装置C3が接続されている。
なお、前記第1吸着筒31に収容されている吸着剤を加熱再生させる場合、第3切替装置C3は、その際に発生する排出ガスを系外に排出させるべく機能し、前記第5の流通経路L5は、この排出ガスの流通経路となるものである。
また、前記第2吸着筒32に収容されている吸着剤を加熱再生させる場合、第3切替装置C3は、その際に発生する排出ガスを系外に排出させるべく機能し、前記第6の流通経路L6は、この排出ガスの流通経路となるものである。
本実施形態の除湿部3は、第3切替装置C3の下流側の位置において、排出ガスの単位体積当たりの水分含有量を測定するための水分量測定装置として露点計DP1を備えている。
該露点計DP1としては、例えば、酸化アルミ式の静電容量式センサーを利用した一般的なものを採用することができる。
【0025】
前記露点計DP1で測定される露点は、第5の流通経路L5や第6の流通経路L6を流れる排出ガスが大気圧に近い圧力となっているので、通常、排出ガスの露点を大気圧状況下で測定した値と略同じになる。
即ち、前記排出ガスの単位体積当たりの水分含有量及び前記露点は、通常、露点計DP1が設置されている位置での配管の単位容積あたりに含まれる水分量から一義的に求められる。
【0026】
本実施形態の除湿部3は、前記露点計DP1で得られた測定結果に基づいて前記第1吸着筒31のヒーター31aの開閉器31sや記第2吸着筒32のヒーター32aの開閉器32sを制御し得るように構成されている。
具体的には、本実施形態の除湿部3は、露点計DP1で観測される露点(DPx(℃))が前記制御装置CTRに予め設定した基準値(DPs(℃))以下となった場合に制御装置CTRから発信される制御信号によってヒーター31a,32aの通電を規制し得るように構成されており、より具体的には、露点計DP1で観測される露点が設定値以下となった場合にヒーター31a,32aをそれぞれ電源オフの状態にし得るように構成されている。
なお、露点計DP1での測定は、連続的であっても定期的なものであってもよい。
【0027】
本実施形態の除湿部3は、ヒーター31a,32aの通電が開始してからの経過時間を測定するためのタイマーTMを備えており、第1吸着筒31及び第2吸着筒32のそれぞれの吸着剤の再生のための加熱が開始された後の経過時間を測定し得るように構成されている。
本実施形態の水素ガス製造設備100は、前記タイマーTMを備えることでヒーター31a,32aの異常などを検知することができる。
例えば、吸着筒での吸着剤の再生に通常要する時間を統計的に調査しておき、該調査に基づいて前記時間の基準値(基準時間(Ts))を前記制御装置CTRに設定し、前記タイマーTMでカウントされる経過時間(Tx)が基準時間(Ts)に到達しても前記露点計DP1で観測される値(DPx(℃))が基準値(DPs(℃))に到達しない場合は、ヒーター31a,32aなどに異常が生じていると判断できる。
従って、本実施形態の水素ガス製造設備100には、タイマーTMからの信号に基づいて起動するアラームなどを更に備えさせることができる。
尚、ここではこれ以上詳述しないが本実施形態の水素ガス製造設備100には、従来の水素ガス製造設備と同様の機器類がその構成部材として備えられている。
【0028】
本実施形態の水素ガス製造設備100は、上記のように水が電気分解されて水素ガスが発生する電解部1と、前記水素ガスが被処理ガスとなって吸着剤による除湿処理が行われる除湿部と、を備え、該除湿部では前記除湿処理に用いられた前記吸着剤が再生され、前記除湿部には、加熱されることで吸着した水分を放出して再生される前記吸着剤が収容されている吸着筒が備えられている。
本実施形態の水素ガス製造設備100の前記除湿部では、前記吸着筒を前記被処理ガスが通過することによって前記除湿処理が実施されて該除湿処理後の処理済ガスとして前記被処理ガスよりも水分の少ない水素ガスが製造される。
そして、本実施形態の水素ガス製造設備100の前記除湿部は、前記除湿処理に用いられた後の前記吸着筒を再生して再び該吸着筒で前記除湿処理を実施するまでの間に別の吸着筒で前記除湿処理を実施し得るように第1吸着筒と第2吸着筒とを含む複数の前記吸着筒を備えており、前記第1吸着筒及び前記第2吸着筒に収容されている前記吸着剤を加熱するためのヒーターと、水素ガスを再生用ガスとして前記第1吸着筒及び前記第2吸着筒に供給するための水素ガスの流通経路と、前記吸着剤から放出された水分を含む前記再生用ガスを排出ガスとして前記第1吸着筒及び前記第2吸着筒から排出させるための水素ガスの流通経路とを備え、前記排出ガスの単位体積当たりの水分含有量を測定する水分量測定装置をさらに備えている。
そのため、本実施形態の水素ガス製造設備100は、良好な乾燥状態となった処理済ガスを、エネルギー消費を抑制しつつ製造することができる。
【0029】
次いで、このような水素ガス製造設備100を使った水素ガス製造方法について図2〜4を参照しつつ説明する。
本実施形態の水素ガス製造方法では、水を電気分解して水素ガスを発生させる電解工程と、前記水素ガスを被処理ガスとして吸着剤による除湿処理を行う除湿工程と、該除湿工程に用いられた前記吸着剤を再生する再生工程と、が実施され、前記除湿処理後の処理済ガスとして前記被処理ガスよりも水分の少ない水素ガスが製造される。
本実施形態の水素ガス製造方法における前記除湿工程では、加熱されることで吸着した水分を放出して再生される吸着剤が用いられ、該吸着剤が収容されている吸着筒を前記被処理ガスが通過することによって前記除湿処理が実施される。
また、本実施形態の水素ガス製造方法では、前記除湿工程に用いられた後の前記吸着筒で前記再生工程を実施し、該吸着筒で再び前記除湿工程を実施するまで別の吸着筒で前記除湿工程を実施し得るように前記吸着筒が複数用いられる。
そして、本実施形態の水素ガス製造方法における前記再生工程では、前記吸着筒に収容されている前記吸着剤が加熱されるとともに水素ガスが再生用ガスとして該吸着筒に供給され、前記吸着剤から放出された水分を含む前記再生用ガスが該吸着筒から排出ガスとして排出され、且つ、該排出ガスの単位体積当たりの水分含有量が測定される。
【0030】
本実施形態の水素ガス製造方法では、前記処理済ガスを得るために前記のように第1吸着筒31と第2吸着筒32とを含む複数の吸着筒が用いられる。
従って、原則的には前記第1吸着筒31で除湿工程を行っている間は、それまで除湿工程を行っていた前記第2吸着筒32で再生工程が行われ、前記第1吸着筒31で除湿工程が行われている間に前記第2吸着筒32での再生工程が完了し、再び該第2吸着筒32で除湿工程が行われるとともに第1吸着筒31で再生工程が行われる。
なお、本実施形態においては、2つの吸着筒を用いる場合を例にしているが、3以上の吸着筒を用いてもよい。
その場合は、例えば、「第1:除湿、第2:再生、第3:待機」→「第1:再生、第2:待機、第3:除湿」→「第1:待機、第2:除湿、第3:再生」といったローテーションを行えばよい。
【0031】
尚、前記電解工程は、例えば、前記電解部1に設けられた電解セル11に純水タンク12から純水を供給し、該電解セル11を通電状態にして前記純水を電気分解することによって実施することができる。
このとき時間経過とともに電解セル11が温度上昇して電解セル11から発生する水素ガスは常温(例えば、23℃)よりも高温(例えば、40℃〜80℃)となって水蒸気の状態で多くの水分を含んだ状態となる。
このような水素ガスをそのまま吸着筒に導入すると吸着筒の負荷が過大なものとなるため、該水素ガスは凝縮器などで冷却して凝縮水を除去した状態で吸着筒へ導入させることが好ましい。
【0032】
前記電解部1で発生した水素ガスWH2は、次いで、除湿部3において除湿処理に供される。
該除湿部3での前記除湿工程及び前記再生工程は、例えば、前記第1吸着筒31で前記除湿工程を実施する場合、該第1吸着筒31で前記除湿工程を実施しつつ前記第2吸着筒32で前記再生工程を実施する。
前記除湿工程は、前記第1切替装置C1と第3切替装置C3とによる流路の切替によって電解部1で発生した水素ガスWH2(被処理ガス)を第1の流通経路L1を経由して第1吸着筒31に供給し、該被処理ガスを第1吸着筒31を通過させることによって実施できる。
そして、被処理ガスの除湿処理は、第1吸着筒31に収容されている吸着剤と被処理ガスとを接触させることによって行うことができる。
第1吸着筒31への被処理ガスの供給を継続すると、第1吸着筒31から製品ガスとして十分な乾燥状態になった処理済ガスが排出され、該処理済ガスは、第3の流通経路L3、第2切替装置C2、及び、第2搬送部5を通じてユースポイント6へと供給されることになる。
このとき図2に示すように第2切替装置C2により、処理済ガスの一部を前記第2吸着筒32の吸着剤を再生するための再生用ガスRH2として第4の流通経路L4を通じて前記第2吸着筒32に供給する。
【0033】
前記第2吸着筒32での再生工程は、前記ヒーター32aに通電して第2吸着筒32に収容されている前記吸着剤を加熱し、前記被処理ガスよりも水分の少ない水素ガスを再生用ガスRH2として該第2吸着筒32に供給することで実施される。
該再生工程では、第2吸着筒32への再生用ガスRH2の供給を継続すると、第2吸着筒32の前記吸着剤から放出された水分を含む前記再生用ガスが排出ガスEH2となって第2吸着筒32から押出され、該排出ガスEH2は、第2の流通経路L2、第6の流通経路L6、第2熱交換器E2、及び、第3切替装置C3を通じて系外に排出されることになる。
【0034】
前記第2吸着筒32での吸着剤の加熱温度としては、例えば、吸着剤としてゼオライト粒子を使用する場合には100〜350℃とされ、シリカゲル粒子を使用する場合には100〜250℃、活性アルミナ粒子では100〜300℃とされる。
そのため、前記排出ガスEH2は、100℃以上の温度となって第2吸着筒32から排出される。
本実施形態における水素ガス製造方法では、前記第2熱交換器E2を使って前記排出ガスEH2から熱回収が行われ、該熱回収によって得られた熱で前記再生用ガスRH2を前記第2吸着筒32に供給する前に予め加熱する予熱工程が実施される。
従って、本実施形態においては予熱された再生用ガスRH2の導入により、第2吸着筒内の吸着剤の温度低下が生じることを抑制することができ、前記再生用ガスRH2を加熱温度まで昇温させるために必要なエネルギーを低減できるため、再生工程が終了するまでのヒーター32aの消費電力の削減を図ることができる。
【0035】
第2熱交換器E2で熱回収がされて温度が低下した排出ガスEH2は、本実施形態においては、前記露点計DP1によって露点がモニタリングされながら系外へと排出される。
このとき、排出ガスEH2の温度がいまだ高く、露点計DP1のセンサーに障害を与えるおそれがあるときは、排出ガスEH2をさらに冷却した後に露点計DP1に導入するようにしてもよい。
この露点計DP1は、第2吸着筒32の吸着剤が十分に再生されたかどうかを見極め、再生用ガスRH2の第2吸着筒32への流通や、第2吸着筒32でのヒーター32aへの通電が必要以上に行われないようにするためのものである。
従って、ヒーター32aの電源をオフにする基準となる露点以下とならない範囲であれば第2熱交換器E2を通過した後の排出ガスEH2の冷却は、当該排出ガスEH2に含まれている水蒸気の凝縮を伴うようなものであってもよい。
但し、露点計DP1に凝縮水が導入されると誤動作の原因ともなるので、そのような場合はミストトラップなどの凝縮水除去装置を設けることが好ましい。
即ち、本実施形態においては、第2吸着筒32から排出された排出ガスEH2を冷却する冷却装置と、冷却後の排出ガスEH2から凝縮水を除去するための凝縮水除去装置とを露点計DP1までの間に設け、第2吸着筒32から排出された排出ガスEH2を冷却する冷却工程と、該冷却工程後の排出ガスEH2から凝縮水を除去する凝縮水除去工程とを実施し、該凝縮水除去工程後の排出ガスEH2の露点を測定することが好ましい。
そして、前記冷却装置を用いて行う冷却工程は、排出ガスEH2の温度が5℃以上60℃以下となるように実施することが好ましい。
【0036】
第2吸着筒32の吸着剤が十分再生されたと判断できる排出ガスEH2の露点は、例えば、通常、−70℃程度である。そのため、ヒーター32aの電源をオフにする基準となる露点(DPs(℃))は、−80℃〜−70℃の範囲内の何れかの値に設定されることが好ましい。
【0037】
本実施形態においては再生工程の終点が前記露点計DP1によって決定される一方で、前記除湿工程の終点は、運転時間等で決定される。
そのため、図3に示すように除湿工程の運転時間が予め設定した時間を経過しない内に排出ガスEH2の露点(DPx(℃))が基準値(DPs(℃))以下となった場合は、第2吸着筒32での再生工程は終了するものの第1吸着筒31での除湿工程は引き続き実施する。
【0038】
本実施形態においては、要すれば、第3の流通経路L3若しくは第4の流通経路L4、又は、第2搬送部5などに処理済ガスの露点を測定する露点計(DP2)を設け、該露点計DP2での測定値に基づいて除湿工程の終点を決定するようにしてもよい(図4参照)。
タイマーなどでの時間制御によって第1吸着筒31での除湿工程を実施すると、該第1吸着筒31が吸着性能に余力を残したまま除湿工程を終えることになったり、第1吸着筒31が破過しているにも関わらず該第1吸着筒31での除湿工程が継続実施されたりするおそれがあるが、上記のように処理済ガスについても単位体積当たりの水分含有量を測定する方法を採用することでこのような問題が生じることを回避することができる。
この場合、処理済ガスの露点(DPy(℃))が基準値(DPz(℃))に達するまでの間(図4(a)参照)は、通常通りの運転となる。
そして、この間に第2吸着筒32の再生が完了すると、図3に示したように再生用ガスRH2の供給を停止する。
そして、図4(b)に示すように、処理済ガスの露点(DPy(℃))が基準値(DPz(℃))以上となった時点で第1切替装置C1、及び、第3切替装置C3で水素ガスの経路の切替を行い、被処理ガスの供給先を第1吸着筒31から第2吸着筒32へと変更して第2吸着筒32での除湿工程を開始するとともに第2切替装置C2による水素ガスの経路の切替、及び、ヒーター31aへの通電を行って第1吸着筒31での再生工程を開始させればよい。
ここで、図5に示すように第2吸着筒32からの排出ガスEH2の露点(DPx)が基準値(DPs)に到達しない内に処理済ガスの露点(DPy)が除湿工程を終了すべき値(DPz)となってしまった場合は、第1切替装置C1を非供給状態にして第1吸着筒31での除湿工程を停止させることが好ましい。
但し、そのようにすると第2吸着筒32に供給する再生用ガスも作製されないことになるため、その場合は、図5(b)に示すように、ユースポイントから乾燥状態の水素ガスを戻してくるか、別途、水素ガスボンベなどを用意しておいて該水素ガスボンベから再生用ガスRH2’を供給させるようにすればよい。
【0039】
一日の初めに水素ガス製造設備100の運転を開始した直後の再生工程では、当該運転の直前の運転(前日の運転終了時点)において前記第2吸着筒32の吸着性能が十分に消費されていないことがある。
第2吸着筒32は、例えば、吸着可能な最大水分量を100%とした場合に、一日の運転開始直後の状態では20〜30%の吸着水分量となっている場合がある。
このような場合、ヒーター32aでの吸着剤の加熱時間は単純計算で通常の20〜30%とすることができるはずであるが、従来のタイマー制御では100%の加熱時間が確保されてしまい、再生工程の後半においては加熱する必要のない吸着剤を加熱している状態になってしまう。
その一方で本実施形態においては、吸着剤が十分に乾燥して再生された時点でヒーター32aでの加熱が終了するため従来の同種の水素ガス製造方法に比べてエネルギー消費を削減することができる。
【0040】
本実施形態においては、電力会社などから供給される商業電力や化石燃料を使って自家発電した安定電源から前記電解セル11へ電力供給を行ってもよく、太陽光、風力、潮力、地熱などの再生可能エネルギーによって得られる変動電源から前記電解セル11へ電力供給を行ってもよい。
なかでも、太陽光発電によって生じた電力を前記電解セル11に供給するような場合は、除湿工程で用いた吸着筒の水分吸着状態が予測し難く、再生に要するヒーターでの加熱時間が推測し難いため、本発明の効果がより顕著に発揮され得る。
【0041】
尚、本実施形態においては、再生用ガスの確保のためにカードルなどを用意することを省略し得ることから処理済ガスの一部を前記再生用ガスとして利用する場合を例示しているが、再生用ガスは処理済ガス以外であってもよい。
また、本実施形態においては、ヒーターへの電力供給量をより削減し得る点において排出ガスから熱回収し、該熱回収によって得られた熱で前記再生用ガスを前記吸着筒に供給する前に予め加熱するような態様を例示しているが、必ずしもこのような熱回収を行わなくてもよい。
さらに、本実施形態においては、設備の異常を検知し得るように再生工程では、吸着剤の加熱が開始された後の経過時間をタイマーで測定するようにしているが、必ずしもこのような測定は実施しなくてもよい。
そして、本実施形態においては、排出ガスや処理済ガスの単位体積当たりの水分含有量の測定に露点計を用いる場合を例示しているが、前記水分含有量の測定は露点計以外で行ってもよい。
また、ここではこれ以上の詳述を行わないが、水素ガス製造設備、及び、水素ガス製造方法に係る技術事項で、従来公知の事項については、本発明の効果が著しく損なわれない範囲において本発明に採用が可能である。
【符号の説明】
【0042】
1:電解部、3:除湿部、11:電解セル、31:第1吸着筒,32:第2吸着筒、4:第1搬送部、5:第2搬送部、DP1,DP2:露点計、E1,E2:熱交換器、EH2:排出ガス、RH2:再生用ガス
図1
図2
図3
図4
図5