【実施例】
【0013】
図1は、(a)が本発明の実施例に係る電線の防水構造1を熱収縮チューブを断面視した状態でスプライス部側係合部12の上方側から視た図であり、(b)が本発明の実施例に係る電線の防水構造1を熱収縮チューブ20を断面視した状態でスプライス部側係合部12の側方側から視た図である。
図2は、(a)が係合部付きスプライス部10を含めた導体露出部分32および導体露出部分32周辺の絶縁被覆33をスプライス部側係合部12の上方側から視た図であり、(b)が係合部付きスプライス部10を含めた導体露出部分32および導体露出部分32周辺の絶縁被覆33をスプライス部側係合部12の側方側から視た図である。
図3は、熱収縮チューブ20の断面図である。
本発明の実施例に係る電線の防水接続構造1は、例えば、車両に配索されるワイヤハーネスの複数の電線30の分岐接続部分として室外、特に、高温の環境下に長時間放置される場所に配置されるものである。
【0014】
この電線の防水接続構造1は、導体部31が絶縁被覆33によって包囲された複数の電線30の絶縁被覆33が除去された端末部の導体露出部分32に、複数の電線30が互いに接続するように形成されたスプライス部11と、スプライス部11に凹状に形成されたスプライス部側係合部12と、を備えた係合部付きスプライス部10と、スプライス部側係合部12に係合されるように内面20aに凸状に形成されたチューブ側係合部21を備え、かつ、内面20aにホットメルト層22が設けられた熱収縮チューブ20と、を有する。
【0015】
まず、係合部付きスプライス部10について説明する。
スプライス部11は、例えば、熱圧着(拡散接合)、溶着接合、あるいは、超音波接合によって複数の電線30の導体部31が接続された部分である。なお、この実施例では、スプライス部11は、熱圧着によって複数の電線30の導体部31が接続される。
この実施例では、電線30の導体部31は、アルミニウム、あるいは、銅等からなる導電性の複数の素線31aが束ねられた芯線を構成する部分である。
なお、導体部31は、複数の素線31aが束ねられたものに限らず、単芯線からなるものであっても構わない。
また、この実施例では、3本の電線30が互いに接続されるものを示したが、互いに接続される電線30の数はこれに限らず、2本、あるいは3本以上であってもよい。
【0016】
このスプライス部11は、複数の電線30の端末部に露出された導体部31を互いに密着させた状態で、不図示のプレス機を用いて加熱しつつ圧着することによって、複数の電線30が互いに接続された部分である。
【0017】
スプライス部側係合部12は、チューブ側係合部21と係合する部分であり、スプライス部11の外表面11aに凹状に形成されている。
【0018】
次に、熱収縮チューブ20にてついて説明する。
熱収縮チューブ20は、熱収縮性の絶縁材からなる有底の筒状部材であり、内面にホットメルト層22が設けられている。
なお、熱収縮チューブ20は、底の無い筒状部材であっても構わない。
【0019】
この熱収縮チューブ20は、スプライス部11で互いに接続された複数の電線30に対して、スプライス部11を含めた導体露出部分32および該導体露出部分32周辺の絶縁被覆33によって導体部31が包囲された領域を覆うように装着される。
【0020】
チューブ側係合部21は、スプライス部11で互いに接続された複数の電線30に対して、スプライス部11を含めた導体露出部分32および導体露出部分32周辺の絶縁被覆33によって導体部31が包囲された領域を覆うように装着完了された状態で、スプライス部側係合部12に係合されるように内面20aに凸状に形成されている。
このようなチューブ側係合部21は、熱収縮チューブ20の外表面20bの一部を凹ませることによって熱収縮チューブ20の内面20aを凸状に押し出すことによって形成された部分である。
【0021】
次に、
図4を用いて本発明の実施例に係る電線の防水接続方法について説明する。
図4は、(a)がスプライス部形成工程を説明するための図であり、(b)が係合部付きスプライス部形成工程を説明するための図であり、(c)が熱収縮チューブ位置決め装着工程を説明するための図であり、(d)が熱収縮チューブ加熱工程を説明するための図である。
【0022】
まず、スプライス部形成工程として、電線30の接続部分となるスプライス部11を形成する(
図4(a)参照)。
このスプライス部形成工程では、端末部の絶縁被覆を除去した複数の電線30の導体露出部分32の導体部31を互いに密着させた状態で、不図示のプレス機を用いて加熱しつつ圧着することによってスプライス部11を形成する。
なお、このスプライス部形成工程では、熱圧着(拡散接合)によってスプライス部11を形成しているが、これに限らず、溶着接合、あるいは、超音波接合によってスプライス部11を形成するようにしてもよい。
【0023】
次に、係合部付きスプライス部形成工程として、チューブ側係合部21と係合する部分となるスプライス部側係合部12を形成する(
図4(b)参照)。
この係合部付きスプライス部形成工程では、不図示のプレス機を用いてスプライス部11の外表面11aに凹状のスプライス部側係合部12を形成する。
【0024】
次に、熱収縮チューブ位置決め装着工程として、スプライス部11で互いに接続された複数の電線30に対して熱収縮チューブ20を装着する(
図4(c)参照)。
この熱収縮チューブ位置決め装着工程では、スプライス部11で互いに接続された複数の電線30に対して、チューブ側係合部21をスプライス部側係合部12に係合しつつ、スプライス部11を含めた複数の電線30の導体露出部分32を覆うように位置決め装着する。
このような熱収縮チューブ位置決め装着工程は、チューブ側係合部21をスプライス部側係合部12に係合することによって、熱収縮チューブ20を位置決め装着することができる。
【0025】
熱収縮チューブ20が、例えば、無色透明等の光透過性の材料からなる場合、熱収縮チューブ20の装着過程において、作業者は、チューブ側係合部21とスプライス部側係合部12との相対位置関係を目視確認しながらチューブ側係合部21をスプライス部側係合部12に係合させることができる。
【0026】
また、熱収縮チューブ20が、例えば、黒色等の光非透過性の材料からなる場合、作業者は、チューブ側係合部21をスプライス部側係合部12に突き当てることによってチューブ側係合部21をスプライス部側係合部12に係合させることができる。
【0027】
最後に、熱収縮チューブ加熱工程として、位置決め装着された熱収縮チューブ20に高温の熱を加えることによって熱収縮チューブ20を収縮させる(
図4(d)参照)。
この熱収縮チューブ加熱工程では、チューブ側係合部21がスプライス部側係合部12に係合することによって位置決め装着された熱収縮チューブ20に高温の熱を加えることによって、熱収縮チューブ20を収縮させるとともに、熱収縮チューブ20の内面20aに設けられたホットメルト層22を溶融させる。
このようにして熱収縮チューブ20が収縮されることによって、熱収縮チューブ20が熱収縮チューブ20に覆われた部分に追従される。
また、ホットメルト層22は、溶融した後、熱収縮チューブ20の内面20aと熱収縮チューブ20に覆われた部分との間に充填されて固化される。
このため、チューブ側係合部21は、スプライス部側係合部12に追従されるため、スプライス部側係合部12との係合状態がより強化される。
【0028】
なお、上述した電線の防水接続方法についての説明では、スプライス部11とスプライス部側係合部12とをそれぞれ工程を分けて形成しているが、熱圧着によってスプライス部11を形成する場合のようにスプライス部11を形成するためにプレス機を用いる場合、スプライス部11とスプライス部側係合部12とを係合部付きスプライス部形成工程として一つの工程にまとめて同時に形成するようにしても構わない。
【0029】
本発明の実施例に係る電線の防水接続構造1は、熱収縮チューブ20が装着完了された状態では、チューブ側係合部21とスプライス部側係合部12とが係合されているため、高温環境下に長時間放置されてホットメルト層22が溶融することによって、熱収縮チューブ20が収縮して所定の装着完了位置からズレることが阻止される。
また、本発明に係る電線の防水接続構造1は、熱収縮チューブ20を、スプライス部11で互いに接続された複数の電線30に対してスプライス部11を含めた導体露出部分32を覆うように装着する際、チューブ側係合部21をスプライス部側係合部12に係合させることによって、装着完了位置に位置決めすることができる。
したがって、本発明に係る電線の防水接続構造1は、高温環境下に長時間放置された場合であっても、スプライス部11を含めた導体露出部分32を覆う熱収縮チューブ20がズレて導体部31が露出することによって、導体部31の保護および絶縁の機能が損なわれることを防止し、しかも、熱収縮チューブ20を装着完了位置に容易に位置決め装着することができる。
【0030】
本発明の実施例に係る電線の防水接続方法は、係合部付きスプライス部形成工程によって、スプライス部11に形成された凹状のスプライス部側係合部12に対して、熱収縮チューブ位置決め装着工程によって、熱収縮チューブ20の内面20aに凸状に形成されたチューブ側係合部21を係合するように熱収縮チューブ20を位置決め装着している。
このため、本発明の実施例に係る電線の防水接続方法は、チューブ側係合部21とスプライス部側係合部12とが係合されているため、高温環境下に長時間放置されてホットメルト層22が溶融することによって、熱収縮チューブ20が収縮して所定の装着完了位置からズレることが阻止される。
また、本発明に係る電線の防水接続方法は、熱収縮チューブ20を、スプライス部11で互いに接続された複数の電線30に対してスプライス部11を含めた導体露出部分32を覆うように装着する際、チューブ側係合部21をスプライス部側係合部12に係合させることによって装着完了位置に位置決めすることができる。
したがって、本発明に係る電線の防水接続方法は、高温環境下に長時間放置された場合であっても、スプライス部11を含めた導体露出部分32を覆う熱収縮チューブ20がズレて導体部31が露出することによって、導体部31の保護および絶縁の機能が損なわれることを防止し、しかも、熱収縮チューブ20を装着完了位置に容易に位置決め装着することができる。
【0031】
以上、本発明者によってなされた発明を、上述した発明の実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は、上述した発明の実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。