(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6823678
(24)【登録日】2021年1月13日
(45)【発行日】2021年2月3日
(54)【発明の名称】言語学習用教材
(51)【国際特許分類】
G09B 5/04 20060101AFI20210121BHJP
G09B 19/06 20060101ALI20210121BHJP
【FI】
G09B5/04
G09B19/06
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2019-47986(P2019-47986)
(22)【出願日】2019年3月15日
(65)【公開番号】特開2020-148979(P2020-148979A)
(43)【公開日】2020年9月17日
【審査請求日】2019年3月15日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年3月22日に開催の「パテントコンテスト」において公開
(73)【特許権者】
【識別番号】519092392
【氏名又は名称】▲高▼橋 賢吾
(74)【代理人】
【識別番号】100091373
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100097065
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 雅栄
(74)【代理人】
【識別番号】100201237
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 将太郎
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 賢吾
【審査官】
西村 民男
(56)【参考文献】
【文献】
特開2018−55076(JP,A)
【文献】
特開2011−128362(JP,A)
【文献】
ひげ翻訳者のイングリッシュルーム,[online], 2015年12月15日, [2020年4月22日検索],URL,https://fromtamatoworld.blogspot.com/2015/12/chunk-english-learning.html
【文献】
英語の強弱のリズム。学校では習わないけどとっても重要!,[online], 2015年10月16日, [2020年4月22日検索],URL,https://naminorism.com/strength_rhythms/
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B1/00−9/56,17/00−19/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
言語を学習するための言語学習用教材であって、言語音声が再生可能に構成された言語音声データを有し、この言語音声データはチャンクごとに区分されており、この区分されたチャンクごとの言語音声データは、チャンクごとに音の高さ、音の大きさ若しくは音色が異なり、チャンクごとの区別可能なように再生されるデータであることを特徴とする言語学習用教材。
【請求項2】
言語を学習するための言語学習用教材であって、言語音声が再生可能に構成された言語音声データを有し、この言語音声データはチャンクごとに区分されており、この区分されたチャンクごとの言語音声データは、チャンクごとの先頭にチャンクごとに異なる音が再生されるデータであることを特徴とする言語学習用教材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、母国語以外の他言語を学習することを目的とした言語学習用教材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
音声教材を使った学習教材には、会話の内容を音声データとしてCD、デジタルオーディオプレーヤーなどに保存し、再生された音声の聞き取り、聞き取った音声の復唱を行うことで語学を学習するというものがある。
【0003】
特開2016-206591(以下、従来例という。)では、長文のリスニングが困難な学習者に向けた学習コンテンツを作成する手法として、元の音声から音量レベルに従い複数に分割したリスニング用音声を、専用の再生機器を使用して再生する方法が提案された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−206591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来例では、話者ごとに音声を分割することを想定して、音量の大きさに応じて音声の分割をおこなう境界を設定し、長文を分割するという手法がとられ、一人の話者がごく長い文を読み上げる場合には長文を分割することが難しく、各話者がごく短い文を読み上げる前提がなければ分割が難しいという問題点がある。
【0006】
また、従来例では、分割した音声を再生するために、専用の再生装置を準備しなければならないという問題点もある。
【0007】
本発明は、種々試してみた結果、語学の学習が良好に行える言語学習用教材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0009】
言語を学習するための言語学習用教材であって、言語音声が再生可能に構成された言語音声データを有し、この言語音声データはチャンクごとに区分されており、この区分されたチャンクごとの言語音声データは、チャンクごとに音の高さ、音の大きさ若しくは音
色が異なり、チャンクごとの区別可能なように再生されるデータであることを特徴とする言語学習用教材に係るものである。
【0010】
また、言語を学習するための言語学習用教材であって、言語音声が再生可能に構成された言語音声データを有し、この言語音声データはチャンクごとに区分されており、この区分されたチャンクごとの言語音声データは、チャンクごとの先頭にチャンクごとに異なる音が再生されるデータであることを特徴とする言語学習用教材に係るものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は上述のように構成したから、語学の学習が非常に効率よく行うことができる言語学習用教材となる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0014】
複数の文からなる言語音声データは、学習者が聞き取りやすいようにチャンクという単位ごとに区分されているから、1つの文を単語で区切るよりも少ない構成要素数で再生され、1つの文を記憶することが容易になる。この点、単語ごとに区切るより、単語をひとまとめにしたチャンクごとに区切り、学習を行うことで、記憶と想起が効果的に行えることがこれまでの研究で示唆されている(参考文献:CHEN, Zhijian; COWAN, Nelson. Chunk limits and length limits in immediate recall: a reconciliation. Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition, 2005, 31.6: 1235.)。
【0015】
またこの区分されたチャンクは、例えばチャンクごとに音の高さなどが異なるように再生されるものであるから、チャンクと共に語順を学習する事ができる。英語の語順は厳格であり、語順を変えることで文意が大きく変わることから、正確な文意と共に英文を学習するためには、言葉と共に語順を学習する必要がある。本発明では、例えばチャンクごとに音の高さが異なるように再生することで、日本語とは異なる外国語の語順と言葉を関連付けて学習することができ、文意を捉えつつ文を学習することができる(参考文献:佐藤秀樹, et al. 日本語と英語の違いを意識した英語学習―語順, 時制を中心に―. 長野大学紀要, 2015, 37.2: 1-12.)。
【0016】
さらに修得したチャンクを語順に従って組み立てるようにすれば、リスニングだけではなくスピーキングの学習も行うことが出来る。
【実施例】
【0017】
<実施
例>
本発明の具体的な実施
例について図面に基づいて説明する。実施
例は英語を学習する場合の教材である。
チャンクは英語の学習を行う上で利用される言葉の概念の1つであり、文法上の機能を有する「言葉の単位」という特徴と、認知科学・心理学の分野におけるチャンクとおなじ「記憶の単位」という特徴を持つ言葉の単位を指す。
【0018】
簡潔には、チャンクは、2語〜7語程度の決まり文句(フレーズ)のことであり、ネイティブスピーカーが日常英会話で使う短文のことである(参考文献:SAATY, Thomas L.; OZDEMIR, Mujgan S. Why the magic number seven plusor minus two. Mathematical and computer modelling, 2003, 38.3-4:233-244.)。
【0019】
たとえば、以下がチャンクの例である。
want to 〜 (〜したい)
(be)going to 〜 (〜するつもりです)
【0020】
本実施例では「文法上の機能を有する言葉の単位」という特徴に着目し、2つ以上の単語で1つの品詞を表現する「句」と、主語・定形動詞を備えながら文の構成要素をなす「節」の2種それぞれの先頭をチャンクの分割点として定義し、分割された単語の塊をチャンクと定義する。
【0021】
まず、
図1に示す原文を、句・節の先頭での分割処理にてチャンクに分割し、分割されたチャンクと対応するように音声の分割を行う。以下、このように分割した音声を「チャンク音声」(請求項でいう「言語音声データ」)という。
【0022】
さらに、分割したチャンク音声に語順の情報を加えるため、チャンク音声に対して語順に応じた変化を加える。例えばチャンクごとに音の高さ、音の大きさ若しくは音色などが異なり、前後のチャンクで何らかの変化を加えるものである。
【0023】
語順に応じてチャンク音声に変化を加える手法は他に、例えば、チャンク音声ごとに年齢により明らかに声質の違う人の音声が再生されるように構成したり、また、男性大人、女性大人、男性子供、女性子供のような再生順となるようにしても良い。加工した音声は、学習方法に応じて適当なオーディオメディアから再生をおこなう。原文となる文章を記載した紙媒体のテキストを参照しながら、オーディオプレーヤーなどに保存された音声データを再生しても良いし、テキストデータと音声データを備えた学習用アプリケーションを作成しても良い。
【0024】
更に、
図1に示すように分割した音声の先頭にチャンク音声とは別の音声を挿入する。
【0025】
ここでは、チャンク音声の先頭に、ピアノの音を1音挿入し、語順が後半になるにつれ、音を順次低くすることで語順を表現し、音声チャンクに変化を与える。
【0026】
音声チャンクの変化は、文単位でリセットする。
図1を例として説明すると、コンマで区切られている4つ目のチャンクの後に次の文が続くのであれば、低く推移していたピアノの音を、次の文の文頭で初めの音の高さに戻す。文単位で語順に応じた変化をチャンクに加えることで、文の切れ目を表現することが可能になる。
【0027】
英語の語順は他の言語に比べて固定されやすいと言われており、語順と基本文型との対応が取れやすいことから、語順の情報の付加が文型を捉えるための補助の役割を果たすことが期待できる。
【0028】
また、本実施
例はチャンク音声は汎用オーディオプ
レーヤーで再生できるように構成されているから、非常に利用価値が高い。
【0029】
<
構成例>
構成例について図面に基づいて説明する。
【0030】
空間音響技術を用いてチャンク音声に音声の位置情報を付加する。
【0031】
ここで、空間音響技術とは音声に対して音源の位置の情報を付加する技術を指す。イヤホン等の出力機器によるステレオ再生を前提として、左右の耳に提示する音声の音量・周波数等を変化させ、音源の距離、角度の情報を付加させる技術である。
【0032】
空間音響技術を使用してチャンク音声の語順を表現する方法に、語順に応じてチャンク音声を提示する位置を変化させる。チャンク音声ごとに音源の位置を指定し、時計回りの順にチャンク音声を学習者に聞かせることで語順を表現することができる。
【0033】
図2に図示したように、4分割されたチャンク音声の場合、
図2のような音源位置への配置とする。学習者の頭部を中心とした水平面上にして円周上に音源を配置すると考え、水平面上の円と学習者の正面と交点を0度として、左前45度から右前45度まで30度間隔で4箇所に音源を配置し、左前45度から時計回りの順に、チャンク音声を文頭から文末にかけて1つずつ各チャンク音声に空間音響処理を施す。