【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上述の目的が、エチルベンゼンと、少なくとも1つの他のC
8芳香族化合物
との混合物を含む供給流の下方に水性流が導入される抽出蒸留方法によって達成されると
いう驚くべき知見に基づいている。
【0015】
したがって本発明は、エチルベンゼンと、少なくとも1つの他のC
8芳香族化合物とを
含む混合物からのエチルベンゼンの蒸留分離のための方法であって、
a)前記混合物を含む供給流を第1の蒸留塔に導入する工程と、
b)第1の蒸留塔に供給流の上方にヘビーソルベントを含む第1の流れを導入する工程
と、
c)第1の蒸留塔に供給流の下方に水性流を導入する工程とを含む方法を提供する。
【0016】
もちろん、本発明の方法を実施する間、工程a)〜c)は、少なくともほとんどの時間
、同時に行われる。
【0017】
本発明の方法において、エチルベンゼンと、少なくとも1つの他のC
8芳香族化合物と
の混合物は、供給流として工程a)の第1の蒸留塔に導入される。混合物のエチルベンゼ
ン含有量は、広範囲にわたって変更してもよい。しかし、エチルベンゼン含有量が非常に
低いと、方法が経済的にあまり魅力的でなくなる可能性がある。
【0018】
1つの実施形態において、混合物は、5〜99重量%のエチルベンゼン、好ましくは1
0〜95重量%のエチルベンゼン、より好ましくは10〜85重量%のエチルベンゼンを
含む。
【0019】
供給流は、例えば、第1の蒸留塔の中間部分に導入することができる。
【0020】
供給流は、エチルベンゼンと、少なくとも1つの他のC
8芳香族化合物とを含む。
【0021】
少なくとも1つの他のC
8芳香族化合物は、好ましくは、p−キシレン、m−キシレン
、o−キシレン及びこれらの混合物から選択される。
【0022】
好ましくは、塔への全体の供給は、塔内への1つの供給流として、すなわち工程a)の
供給流として入る。
【0023】
第1の蒸留塔に導入されつつある第1の流れはヘビーソルベントを含むか、又は、好ま
しくはヘビーソルベントからなる。また、用語「ヘビーソルベント」は(1つ又は複数の
)ヘビーソルベントと見なす化合物の混合物にも適用され、その時はこのような化合物の
全体を表す。
【0024】
本明細書において用いられる用語「ヘビーソルベント」は概して、少なくとも1つの他
のC
8芳香族化合物の沸点よりも高い沸点を有する溶媒を表す。ヘビーソルベントは、好
ましくは150℃を超え、より好ましくは151〜290℃の範囲の沸点を有する。
【0025】
第1の流れは、工程b)において第1の蒸留塔に供給流の上方に導入される。
【0026】
例えば、供給流が第1の蒸留塔の中間部分に導入される場合、第1の流れは塔の上部に
導入される。
【0027】
ヘビーソルベントは、好ましくは、少なくとも1つのCl、S、NもしくはO含有化合
物又はこれらの混合物を含み、或いはこれらからなる。
【0028】
Cl含有化合物は、好ましくは、2,4−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロ
ベンゼン、1,2,4,5−テトラクロロベンゼン、ポリクロロベンゼン、ベンゼンヘキ
サクロリド、2,3,4,6−テトラクロロフェノール、1,2,3−トリクロロプロパ
ン及びこれらの混合物から選択され、より好ましくは、1,2,4−トリクロロベンゼン
及び1,2,3−トリクロロベンゼンから選択される。
【0029】
S含有化合物は、好ましくは、ジメチルスルホキシド、スルホラン、メチルスルホラン
及びこれらの混合物から選択される。
【0030】
N含有化合物は、好ましくは、N−ホルミルモルホリン、アニリン、2−ピロリジノン
、キノリン、n−メチル−2−ピロリドン、n−メチルアニリン、ベンゾニトリル、ニト
ロベンゼン及びこれらの混合物から選択される。
【0031】
O含有化合物は、好ましくは、メチルサリシレート、メチルベンゾエート、n−メチル
−2−ピロリドン、1,2−プロパンジオール(プロピレングリコール)、1,2−ブタ
ンジオール、1,3−ブタンジオール、ベンズアルデヒド、フェノール、テトラヒドロフ
ルフリルアルコール、ジエチルマレエート、エチルアセトアセテート、4−メトキシアセ
トフェノン、イソホロン、5−メチル−2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、シクロヘキサ
ノン、2−オクタノン、2−ノナノン、3−ヘプタノン、ジイソブチルケトン、5−ノナ
ノン、ベンジルアルコール及びこれらの混合物から選択される。
【0032】
水性流は、工程c)において第1の蒸留塔に供給流の下方に導入される。
【0033】
例えば、供給流が第1の蒸留塔の中間部分に導入される場合、水性流は塔の下部に導入
される。
【0034】
水性流は、好ましくは水及び/又は蒸気を含み、或いは水及び/又は蒸気からなり、よ
り好ましくは水を含み、又は水からなる。
【0035】
工程c)において蒸留塔に導入される水性流の量は、好ましくは、水性流の質量供給が
、蒸留塔へのヘビーソルベントの質量供給に基づいて、0,5〜25重量%、より好まし
くは1〜20重量%、さらにより好ましくは2〜15重量%、最も好ましくは4〜10重
量%になるような量である。
【0036】
本発明の実施形態において、水性流は、水並びにCl、S、N又はO含有化合物及びこ
れらの混合物から選択される少なくとも1つのライトソルベントを含み、或いはこれらか
らなる。
【0037】
本明細書において用いられる用語「ライトソルベント」は概して、少なくとも1つの他
のC
8芳香族化合物の沸点よりも低く、且つエチルベンゼンの沸点よりも低い沸点を有す
る溶媒を表す。また、用語「ライトソルベント」は(1つ又は複数の)ライトソルベント
と見なす化合物の混合物にも適用され、その時はこのような化合物の全体を表す。
【0038】
ライトソルベントは、好ましくは135℃未満、より好ましくは130℃未満、さらに
より好ましくは125℃未満、さらにより好ましくは120℃未満、最も好ましくは11
0℃未満の沸点を有する。
【0039】
Cl含有化合物は、好ましくは、クロロホルム、四塩化炭素及びこれらの混合物から選
択される。
【0040】
N含有化合物は、好ましくは、ジメチルアミン、ジエチルアミン、アセトニトリル及び
これらの混合物から選択される。
【0041】
O含有化合物は、好ましくは、アセトアルデヒド、1−プロパナール、メチルイソプロ
ピルケトン、3−メチル−2−ペンタノン、3,3−ジメチル−2−ブタノン、2−ペン
タノン、2−メチルプロパナール、1−ブタナール、シクロペンタノン、アセトン、エタ
ノール及びこれらの混合物から選択される。
【0042】
本発明の方法は、エチルベンゼンと、少なくとも1つの他のC
8芳香族化合物、例えば
o−キシレン、p−キシレン及びm−キシレン又はこれらの混合物とを含む混合物からの
エチルベンゼンの分離に限定されない。
【0043】
本発明の方法の特定の実施形態において、エチルベンゼンと、少なくとも1つの他のC
8芳香族化合物とを含む混合物はさらに、少なくとも1つの非芳香族化合物及び/又は少
なくとも1つの別の芳香族化合物を含む。
【0044】
少なくとも1つの非芳香族化合物は、パラフィン、オレフィン、ナフタレン又は他の脂
肪族構造の炭化水素にすることができる。好ましくは、少なくとも1つの非芳香族化合物
は、C7〜C11非芳香族化合物、例えばイソプロピルシクロペンタン、2,4,4−ト
リメチルヘキサン、2,2−ジメチルヘプタン、cis−1,2−ジメチルシクロヘキサ
ン、1,1,4−トリメチルシクロヘキサン、2,3,4−トリメチルヘキサン、1,3
,4−トリメチルシクロヘキサン、2,3−ジメチルヘプタン、3,5−ジメチルヘプタ
ン、3,4−ジメチルヘプタン、2−メチルオクタン、3−メチルオクタン、1−エチル
−4−メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、trans−2−ノネン、イソブ
チルシクロペンタン、3−エチル−4−メチル−3−ヘキセン、n−ノナン、cis−1
−メチル−3−エチルシクロヘキサン、シクロオクタン、イソプロピルヘキサン及びこれ
らの混合物から選択される。
【0045】
少なくとも1つの別の芳香族化合物は、ベンゼン、トルエン、スチレン又はこれらの混
合物にすることができる。
【0046】
また、特定の実施形態において、エチルベンゼンと、少なくとも1つの他のC8芳香族
化合物とを含む混合物は、本発明の方法に、より適した供給流を調製するために、第1の
蒸留塔に入る前に前処理工程を通過してもよい。前処理工程は、例えば、9個又はそれ以
上の炭素原子を有する重炭化水素化合物の分離を含んでもよい。
【0047】
第1の蒸留塔は、好ましくは、100mbar〜1100mbar、より好ましくは1
40mbar〜900mbar、さらにより好ましくは180〜700mbar、最も好
ましくは200〜500mbarの圧力で運転される。
【0048】
第1の蒸留塔内の温度は、好ましくは、50℃〜250℃、より好ましくは60℃〜2
00℃、さらにより好ましくは70℃〜180℃である。
【0049】
工程b)において蒸留塔に導入されるヘビーソルベントの量は、少なくとも1つの他の
C8芳香族化合物に対するエチルベンゼンの比揮発度を改善するために十分多くあるべき
である。
【0050】
工程b)において蒸留塔に導入されるヘビーソルベント流の量は、好ましくは、供給に
対するヘビーソルベントの質量供給比、すなわち第1の蒸留塔に導入される供給流の全質
量に対するヘビーソルベント流の全質量の比が1:1〜10:1、より好ましくは2:1
〜8:1、さらにより好ましくは3:1〜7:1であるような量である。
【0051】
好ましい実施形態において、本発明による方法は、エチルベンゼンに富む第2の流れが
第1の蒸留塔から、通常は塔の最上部又は上部から取り出される工程d)を含む。供給流
中のエチルベンゼンに対する第2の流れ中のエチルベンゼンの比と定義されるエチルベン
ゼンの回収率は、好ましくは1より大きく、より好ましくは1,5より大きく、より好ま
しくは2より大きく、さらにより好ましくは2,5より大きく、さらにより好ましくは3
より大きく、最も好ましくは3,5より大きい。通常、この比は50より大きくない。
【0052】
第2の流れ又は塔頂流は、水及びライトソルベントをさらに含んでもよい。このような
場合、本発明による方法は、好ましくは、工程d)の第2の流れ中に存在する水及びライ
トソルベントからエチルベンゼンを分離する工程f)をさらに含む。これは、例えば、塔
頂流が取り出された後、デカンタにおける相分離及び/又は別の蒸留塔における蒸留分離
によって行うことができる。
【0053】
さらに好ましい実施形態において、本発明による方法は、少なくとも1つの他のC8芳
香族化合物に富み、且つヘビーソルベントをさらに含む第3の流れが塔から、通常は塔の
最下部又は下部から取り出される工程e)を含む。
【0054】
本発明の方法のある実施形態では、第2の蒸留塔が使用される。この第2の塔は溶媒回
収塔とも呼ばれる。この実施形態において、方法は、好ましくは、ヘビーソルベントから
少なくとも1つの他のC8芳香族化合物を分離するために、工程e)のあらかじめ取り出
された第3の流れが第2の蒸留塔において処理される工程g)をさらに含む。
【0055】
効率の理由で、本発明の方法において、流れを回収及び再循環することができる。例え
ば、工程e)の分離ユニット及び/又は工程g)の第2の蒸留塔から取り出される流れは
、第1の蒸留塔内に再循環することができる。好ましくは、水及び/又はヘビーソルベン
ト及び/又はライトソルベントは、第1の蒸留塔に再循環される。
【0056】
本明細書において用いられる用語「還流比」は、留出物流に対する還流の比と定義され
る。好ましくは、本発明の方法の第1の蒸留塔において、1〜30、より好ましくは2〜
25、より好ましくは4〜20、最も好ましくは5〜15の還流比が適用される。
【0057】
また本発明は、エチルベンゼンと、少なくとも1つの他のC
8芳香族化合物との混合物
を含む供給流の下方に導入される水性流の、前記混合物からのエチルベンゼンの蒸留分離
における、分離の効率を高めるための使用に関する。
【0058】
以下で説明する一例により、また以下の図を参照することにより本発明をさらに説明す
る。