(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6823714
(24)【登録日】2021年1月13日
(45)【発行日】2021年2月3日
(54)【発明の名称】テトラヒドロイソキノリンの塩の結晶、当該結晶を含んだ医薬組成物及び当該結晶の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 217/18 20060101AFI20210121BHJP
A61P 9/06 20060101ALI20210121BHJP
A61K 31/472 20060101ALI20210121BHJP
【FI】
C07D217/18
A61P9/06
A61K31/472
【請求項の数】23
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2019-512752(P2019-512752)
(86)(22)【出願日】2017年8月30日
(65)【公表番号】特表2019-526594(P2019-526594A)
(43)【公表日】2019年9月19日
(86)【国際出願番号】CN2017099549
(87)【国際公開番号】WO2018041112
(87)【国際公開日】20180308
【審査請求日】2019年7月30日
(31)【優先権主張番号】201610786945.X
(32)【優先日】2016年8月31日
(33)【優先権主張国】CN
(31)【優先権主張番号】201610786957.2
(32)【優先日】2016年8月31日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519072257
【氏名又は名称】チャイナ ステート インスティチュート オブ ファーマスーティカル インダストリー
(73)【特許権者】
【識別番号】519072268
【氏名又は名称】シャンハイ インスティチュート オブ ファーマスーティカル インダストリー
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジエ、メイフア
(72)【発明者】
【氏名】ザン、フリ
(72)【発明者】
【氏名】ウ、タイジ
(72)【発明者】
【氏名】ゾン、ジアリアン
【審査官】
小森 潔
(56)【参考文献】
【文献】
中国特許出願公開第104693115(CN,A)
【文献】
中国特許出願公開第1566098(CN,A)
【文献】
中国特許出願公開第101619038(CN,A)
【文献】
C.G.WERMUTH編,「最新 創薬化学 下巻」,株式会社 テクノミック,1999年,pp.347-365
【文献】
PHARM TECH JAPAN,2002年,Vol.18, No.10,pp.1629-1644
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1で表される1−(3−メタンスルホニルアミノベンジル)−6−メトキシ,7−ベンジルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリンの塩
の結晶であって、
式1のHAは硫酸、リン酸、ニコチン酸、シュウ酸、グリコール酸、ベンゼンスルホン酸又はオロト酸から選ばれる酸であり、
式1のXは1/3、1/2又は1から選ばれる数値であり、
水への溶解度
が3.0nmol/mL又は1.8mg/mL以上である塩
の結晶。
【化1】
【請求項2】
前記HAは硫酸であり、
前記Xは1/2又は1から選ばれる数値である、請求項1に記載の1−(3−メタンスルホニルアミノベンジル)−6−メトキシ,7−ベンジルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリンの塩の結晶。
【請求項3】
前記HAはシュウ酸であり、
前記Xは1/2又は1から選ばれる数値である、請求項1に記載の1−(3−メタンスルホニルアミノベンジル)−6−メトキシ,7−ベンジルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリンの塩の結晶。
【請求項4】
前記Xが1で、
前記HAが硫酸である場合、
前記結晶の結晶形は、粉末X線回折技術(XRPD)により測定し且つブラッグ2θ角(Bragg 2-Theta)で表されると、以下である:4.9±0.2°、7.1±0.2°、8.4±0.2°、9.7±0.2°、12.0±0.2°、15.4±0.2°、17.0±0.2°、19.5°±0.2°、20.3±0.2°、20.9±0.2°、21.6±0.2°、22.8±0.2°、23.6±0.2°、24.6±0.2°、25.4±0.2°、26.0±0.2°、30.8±0.2°;或いは、示差走査熱量技術(DSC)により分析すると、DSCスペクトルにおいて、130±5℃に一つの吸熱ピークが存在する、請求項1に記載の1−(3−メタンスルホニルアミノベンジル)−6−メトキシ,7−ベンジルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリンの塩の結晶。
【請求項5】
前記Xが1で、
前記HAがリン酸である場合、
前記結晶の結晶形は、粉末X線回折技術(XRPD)により測定され且つブラッグ2θ角(Bragg 2-Theta)で表されると、以下である:4.6±0.2°、7.6±0.2°、9.8±0.2°、10.2±0.2°、13.9±0.2°、14.4±0.2°、15.3±0.2°、18.1±0.2°、16.8±0.2°、20.5±0.2°、20.9±0.2°、21.9±0.2°、23.1±0.2°、23.5±0.2°、24.3±0.2°、27.1±0.2°、請求項1に記載の1−(3−メタンスルホニルアミノベンジル)−6−メトキシ,7−ベンジルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリンの塩の結晶。
【請求項6】
前記結晶の粉末X線回折スペクトルは
図1に示す、請求項
5に記載の1−(3−メタンスルホニルアミノベンジル)−6−メトキシ,7−ベンジルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリンの塩
の結晶。
[
図1]
【請求項7】
前記Xが1で、
前記HAがリン酸である場合、
前記結晶を示差走査熱量技術(DSC)により分析すると、DSCスペクトルにおいて、201±5℃に一つの吸熱ピークが存在する、請求項1に記載の1−(3−メタンスルホニルアミノベンジル)−6−メトキシ,7−ベンジルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリンの塩の結晶。
【請求項8】
前記結晶のDSCスペクトルは
図2に示す、請求項
7に記載の1−(3−メタンスルホニルアミノベンジル)−6−メトキシ,7−ベンジルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリンの塩
の結晶。
[
図2]
【請求項9】
前記HAがニコチン酸である場合の前記結晶の結晶形は、粉末X線回折技術(XRPD)により測定し且つブラッグ2θ角(Bragg 2-Theta)で表されると、以下である:5.0±0.2°、5.9±0.2°、7.2±0.2°、8.2±0.2°、10.9±0.2°、12.2±0.2°、13.4±0.2°、14.4°±0.2°、15.1±0.2°、15.5±0.2°、17.0±0.2°、17.4±0.2°、17.8±0.2°、18.7±0.2°、19.9±0.2°、20.5±0.2°、20.8±0.2°、21.9±0.2°、23.1±0.2°、23.5±0.2°、24.8±0.2°、25.1±0.2°、25.6±0.2°、27.0±0.2°、27.6±0.2°;或いは、示差走査熱量技術(DSC)により分析すると、DSCスペクトルにおいて、152±5℃に一つの吸熱ピークが存在する、請求項1に記載の1−(3−メタンスルホニルアミノベンジル)−6−メトキシ,7−ベンジルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリンの塩の結晶。
【請求項10】
前記HAがシュウ酸で、
前記Xが1である場合、
前記結晶の結晶形は、粉末X線回折技術(XRPD)により測定し且つブラッグ2θ角(Bragg 2-Theta)で表されると、以下である:3.4±0.2°、4.6±0.2°、5.5±0.2°、7.8±0.2°、9.2±0.2°、10.2±0.2°、10.8±0.2°、11.9°±0.2°、13.1±0.2°、13.8±0.2°、14.6±0.2°、16.4±0.2°、17.0±0.2°、18.4±0.2°、19.0±0.2°、20.2±0.2°、21.9±0.2°、23.6±0.2°、25.8±0.2°、27.3±0.2°、30.0±0.2°、31.9±0.2°;或いは、示差走査熱量技術(DSC)により分析すると、DSCスペクトルにおいて、161±5℃に一つの吸熱ピークが存在し、且つ190〜210℃の範囲に一つの幅広い吸熱ピークが存在する、請求項1に記載の1−(3−メタンスルホニルアミノベンジル)−6−メトキシ,7−ベンジルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリンの塩の結晶。
【請求項11】
前記HAがグリコール酸である場合の前記結晶の結晶形は、粉末X線回折技術(XRPD)により測定し且つブラッグ2θ角(Bragg 2-Theta)で表されると、以下である:4.7±0.2°、7.5±0.2°、9.9±0.2°、10.3±0.2°、13.7±0.2°、14.3±0.2°、14.9±0.2°、15.3°±0.2°、16.1±0.2°、16.9±0.2°、17.6±0.2°、18.1±0.2°、18.9±0.2°、19.3±0.2°、20.4±0.2°、20.8±0.2°、21.8±0.2°、22.5±0.2°、22.9±0.2°、24.3±0.2°、24.9±0.2°、25.3±0.2°、25.9±0.2°、27.7±0.2°;或いは、示差走査熱量技術(DSC)により分析すると、DSCスペクトルにおいて、187±5℃に一つの吸熱ピークが存在する、請求項1に記載の1−(3−メタンスルホニルアミノベンジル)−6−メトキシ,7−ベンジルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリンの塩の結晶。
【請求項12】
前記HAがベンゼンスルホン酸である場合の前記結晶の結晶形は、粉末X線回折技術(XRPD)により測定し且つブラッグ2θ角(Bragg 2-Theta)で表されると、以下である:6.1±0.2°、6.8±0.2°、8.2±0.2°、8.8±0.2°、11.5±0.2°、12.7±0.2°、14.4±0.2°、15.0°±0.2°、15.5±0.2°、16.5±0.2°、17.0±0.2°、17.4±0.2°、17.7±0.2°、18.7±0.2°、19.4±0.2°、19.8±0.2°、20.3±0.2°、21.3±0.2°、21.7±0.2°、22.6±0.2°、23.0±0.2°、23.5±0.2°、24.2±0.2°、29.1±0.2°;或いは、示差走査熱量技術(DSC)により分析すると、DSCスペクトルにおいて、150±5℃に一つの吸熱ピークが存在し、且つ160℃付近に一つのショルダーピークが存在する、請求項1に記載の1−(3−メタンスルホニルアミノベンジル)−6−メトキシ,7−ベンジルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリンの塩の結晶。
【請求項13】
前記HAがオロト酸である場合の前記結晶の結晶形は、粉末X線回折技術(XRPD)により測定し且つブラッグ2θ角(Bragg 2-Theta)で表されると、以下である:5.8±0.2°、8.7±0.2°、9.9±0.2°、11.2±0.2°、12.5±0.2°、13.9±0.2°、14.1±0.2°、15.2°±0.2°、16.2±0.2°、17.0±0.2°、17.4±0.2°、17.8±0.2°、18.7±0.2°、19.0±0.2°、20.4±0.2°、21.9±0.2°、23.5±0.2°、24.0±0.2°、24.9±0.2°、25.9±0.2°、27.6±0.2°、29.5±0.2°、31.0±0.2°、31.4±0.2°;或いは、示差走査熱量技術(DSC)により分析すると、DSCスペクトルにおいて、138±5℃に一つの吸熱ピークが存在する、請求項1に記載の1−(3−メタンスルホニルアミノベンジル)−6−メトキシ,7−ベンジルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリンの塩の結晶。
【請求項14】
1−(3−メタンスルホニルアミノベンジル)−6−メトキシ,7−ベンジルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリンを相応の前記HAと反応させて塩の結晶を形成することを含む、請求項1〜13のいずれかに記載の1−(3−メタンスルホニルアミノベンジル)−6−メトキシ,7−ベンジルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリンの塩の結晶の製造方法。
【請求項15】
前記反応を有機溶媒中で行って塩の結晶を形成することを含む、請求項14に記載の1−(3−メタンスルホニルアミノベンジル)−6−メトキシ,7−ベンジルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリンの塩の結晶の製造方法。
【請求項16】
前記HAがニコチン酸、シュウ酸、グリコール酸、ベンゼンスルホン酸又はオロト酸である場合、1−(3−メタンスルホニルアミノベンジル)−6−メトキシ,7−ベンジルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリンを前記有機溶媒に溶解させてから、前記HAを加え、冷却後に晶析させ、産物を得ることを含む、請求項15に記載の1−(3−メタンスルホニルアミノベンジル)−6−メトキシ,7−ベンジルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリンの塩の結晶の製造方法。
【請求項17】
前記HAが硫酸又はリン酸である場合、1−(3−メタンスルホニルアミノベンジル)−6−メトキシ,7−ベンジルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリンを前記有機溶媒に溶解させてから、前記HAを含有する前記有機溶媒を加え、冷却後に晶析させ、産物を得ることを含む、請求項16に記載の1−(3−メタンスルホニルアミノベンジル)−6−メトキシ,7−ベンジルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリンの塩の結晶の製造方法。
【請求項18】
析出した結晶又は沈殿を洗浄、乾燥することをさらに含む、請求項16又は17に記載の1−(3−メタンスルホニルアミノベンジル)−6−メトキシ,7−ベンジルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリンの塩の結晶の製造方法。
【請求項19】
前記反応の反応温度は0〜80℃である、請求項14〜18のいずれかに記載の1−(3−メタンスルホニルアミノベンジル)−6−メトキシ,7−ベンジルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリンの塩の結晶の製造方法。
【請求項20】
前記有機溶媒はメタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、2−ブタノン、酢酸メチル、酢酸イソプロピル、メチルt−ブチルエーテル、アセトニトリル又はトルエンである、請求項15〜18のいずれかに記載の1−(3−メタンスルホニルアミノベンジル)−6−メトキシ,7−ベンジルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリンの塩の結晶の製造方法。
【請求項21】
前記HAがリン酸である場合、前記反応温度は10〜60℃であり;好ましくは40℃である、請求項19に記載の1−(3−メタンスルホニルアミノベンジル)−6−メトキシ,7−ベンジルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリンの塩の結晶の製造方法。
【請求項22】
有効量の請求項1〜13のいずれかに記載の1−(3−メタンスルホニルアミノベンジル)−6−メトキシ,7−ベンジルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリンの塩の結晶と、1種又は多種の薬学的に許容される補助剤とからなる医薬組成物。
【請求項23】
抗不整脈薬物の調製に用いられる請求項1〜13のいずれかに記載の1−(3−メタンスルホニルアミノベンジル)−6−メトキシ,7−ベンジルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリンの塩の結晶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1−(3−メタンスルホニルアミノベンジル)−6−メトキシ,7−ベンジルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリンの塩誘導体及びその製造方法、並びに1−(3−メタンスルホニルアミノベンジル)−6−メトキシ,7−ベンジルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリンの塩誘導体を含む薬物成分に関する。
【背景技術】
【0002】
心臓突然死(SCD)は心血管疾患死の要因の一つである。SCDは、心筋電気生理の不安定による規律的な心臓リズムの消失の原因で発生するものであり、最も重篤なのは心室頻拍(VT、ventricular tachycardia)と心室細動(VF、vetricalar fibrillation)である。
【0003】
抗不整脈薬は四つの類型に分ける:I類は、a、b、cの3つの亜類型を含むナトリウムチャンネル遮断薬である。Ia類はナトリウムチャンネルを適度に遮断するもので、代表的な薬物としてキニジン(Quinidine)等がある;Ib類はナトリウムチャンネルを軽度に遮断するもので、代表的な薬物としてリドカイン(Lidocaine)等がある;Ic類はナトリウムチャンネルを顕著に遮断するもので、代表的な薬物としてフレカイニド(Flecainide)等がある。II類はβアドレナリン受容体遮断薬であり、代表的な薬物はプロプラノロール(Propranolol)である。III類は再分極過程を選択的に延長するものであって、活動電位持続時間(APD)及び有効不応期(ERP)を延長する薬物であり、代表的な薬物としてアミオダロン(Amiodarone)等がある。IV類はカルシウム拮抗薬である、代表的な薬物としてベラパミル(Verapamil)等がある。
【0004】
イソキノリンアルカロイドは天然植物に広範に存在するもので、そのうち、ビスベンジルイソキノリンアルカロイド(例えば:ベルバミン、ダウリシン、テトランドリン、トリロビン、ネフェリン)、モノベンジルイソキノリンアルカロイド(例えば:ヒゲナミン)及びプロトベルベリン(ベルベリン)等はいずれも抗不整脈等の心臓血管活性を有する。ただし、ベルベリンはIII類抗不整脈活性を示し、臨床で心室性不整脈の治療に用いられることが報告された。
【0005】
上海医薬産業研究員の研究員の謝美華は1985年から、ヒゲナミンとベルベリンを開始化合物として構造の改造を行い、千個近くの誘導体を設計して合成した。合成された前記千個近くの新規化合物から、抗不整脈に関する薬力学スクリーニング試験、エームス(Ames)毒性試験及び急性毒性評価によって、薬物動態パラメータ評価も合わせて、一番好ましい1−(3−メタンスルホニルアミノベンジル)−6−メトキシ,7−ベンジルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン(以下SIPI−409と略称する)を新規抗不整脈薬候補として前臨床開発し、その構造を化2に示す。
【化2】
【0006】
特許ZL200710181295.7では、1−(3−メタンスルホニルアミノベンジル)−6−メトキシ,7−ベンジルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン(SIPI−409)及びSIPI−409塩酸塩の構造及び製造方法と使用が開示された。
【0007】
しかしながら、更なる研究で、SIPI−409及びSIPI−409塩酸塩の水への溶解度が低く、それぞれ0.07mg/mL(0.15nmol/mL)と0.51mg/mL(1.05nmol/mL)しかないことが見出された。それと共に、初歩的な薬物動態結果から明らかなように、注射投与されるSIPI−409塩酸塩のt
1/2はソタロールに近く、SDラットに経口投与されるSIPI−409塩酸塩のバイオアベイラビリティは24%で、ソタロール(70%)より遥かに低く、それは、SIPI−409塩酸塩の水への溶解度が低すぎるためである。
【0008】
従って、本分野において、水への溶解度が良好な対応化合物の塩誘導体を提供し、これでそのバイオアベイラビリティを改善し、その創薬性を向上させることは切望されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、水への溶解度が良好なSIPI-409塩誘導体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第一は、式1で表される1−(3−メタンスルホニルアミノベンジル)−6−メトキシ,7−ベンジルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリンの塩
の結晶であって、
式1のHAは硫酸、リン酸、ニコチン酸、シュウ酸、グリコール酸、ベンゼンスルホン酸又はオロト酸から選ばれる酸であり、式1のXは1/3、1/2又は1から選ばれる数値であり、水への溶解度
が3.0nmol/mL又は1.8mg/mL以上である塩
の結晶を提供する。
【化1】
【0013】
他の好ましい例において、
前記HAは硫酸であり、
前記Xは1/2又は1から選ばれる
数値である。
【0014】
他の好ましい例において、
前記HAはシュウ酸であり、
前記Xは1/2又は1から選ばれる
数値である。
【0015】
他の好ましい例において、
前記HAが硫酸で、
前記Xが1である場合、前記結晶の結晶形は、粉末X線回折技術(XRPD)により測定
され且つブラッグ2θ角(Bragg 2-Theta)で表されると、以
下である:4.9±0.2°、7.1±0.2°、8.4±0.2°、9.7±0.2°、12.0±0.2°、15.4±0.2°、17.0±0.2°、19.5°±0.2°、20.3±0.2°、20.9±0.2°、21.6±0.2°、22.8±0.2°、23.6±0.2°、24.6±0.2°、25.4±0.2°、26.0±0.2°、30.8±0.2°;或いは、示差走査熱量技術(DSC)により分析すると、DSCスペクトルにおいて、130±5℃に一つの吸熱ピークが存在する。
【0016】
他の好ましい例において、
前記Xが1で、
前記HAがリン酸である場合、前記結晶の結晶形は、粉末X線回折技術(XRPD)により測定
され且つブラッグ2θ角(Bragg 2-Theta)で表されると、以
下である:4.6±0.2°、7.6±0.2°、9.8±0.2°、10.2±0.2°、13.9±0.2°、14.4±0.2°、15.3±0.2°、18.1±0.2°、16.8±0.2°、20.5±0.2°、20.9±0.2°、21.9±0.2°、23.1±0.2°、23.5±0.2°、24.3±0.2°、27.1±0.2°;より好ましくは、前記結晶の粉末X線回折スペクトルは
図1に示す。
【0017】
他の好ましい例において、Xが1で、HAがリン酸である場合、前記結晶を示差走査熱量技術(DSC)により分析すると、DSCスペクトルにおいて、201±5℃に一つの吸熱ピークが存在する;より好ましくは、前記結晶のDSCスペクトルは
図2に示す。
【0018】
他の好ましい例において、
前記HAがニコチン酸である場合の
前記結晶の結晶形は、粉末X線回折技術(XRPD)により測定し且つブラッグ2θ角(Bragg 2-Theta)で表されると、以
下である:5.0±0.2°、5.9±0.2°、7.2±0.2°、8.2±0.2°、10.9±0.2°、12.2±0.2°、13.4±0.2°、14.4°±0.2°、15.1±0.2°、15.5±0.2°、17.0±0.2°、17.4±0.2°、17.8±0.2°、18.7±0.2°、19.9±0.2°、20.5±0.2°、20.8±0.2°、21.9±0.2°、23.1±0.2°、23.5±0.2°、24.8±0.2°、25.1±0.2°、25.6±0.2°、27.0±0.2°、27.6±0.2°;或いは、示差走査熱量技術(DSC)により分析すると、DSCスペクトルにおいて、152±5℃に一つの吸熱ピークが存在する。
【0019】
他の好ましい例において、
前記HAがシュウ酸で、
前記Xが1である場合、前記結晶の結晶形は、粉末X線回折技術(XRPD)により測定し且つブラッグ2θ角(Bragg 2-Theta)で表されると、以
下である:3.4±0.2°、4.6±0.2°、5.5±0.2°、7.8±0.2°、9.2±0.2°、10.2±0.2°、10.8±0.2°、11.9°±0.2°、13.1±0.2°、13.8±0.2°、14.6±0.2°、16.4±0.2°、17.0±0.2°、18.4±0.2°、19.0±0.2°、20.2±0.2°、21.9±0.2°、23.6±0.2°、25.8±0.2°、27.3±0.2°、30.0±0.2°、31.9±0.2°;或いは、示差走査熱量技術(DSC)により分析すると、DSCスペクトルにおいて、161±5℃に一つの吸熱ピークが存在し、且つ190〜210℃の範囲に一つの幅広い吸熱ピークが存在する。
【0020】
他の好ましい例において、
前記HAがグリコール酸である場合の結晶の結晶形は、粉末X線回折技術(XRPD)により測定し且つブラッグ2θ角(Bragg 2-Theta)で表されると、以
下である:4.7±0.2°、7.5±0.2°、9.9±0.2°、10.3±0.2°、13.7±0.2°、14.3±0.2°、14.9±0.2°、15.3°±0.2°、16.1±0.2°、16.9±0.2°、17.6±0.2°、18.1±0.2°、18.9±0.2°、19.3±0.2°、20.4±0.2°、20.8±0.2°、21.8±0.2°、22.5±0.2°、22.9±0.2°、24.3±0.2°、24.9±0.2°、25.3±0.2°、25.9±0.2°、27.7±0.2°;或いは、示差走査熱量技術(DSC)により分析すると、DSCスペクトルにおいて、187±5℃に一つの吸熱ピークが存在する。
【0021】
他の好ましい例において、
前記HAがベンゼンスルホン酸である場合の
前記結晶の結晶形は、粉末X線回折技術(XRPD)により測定し且つブラッグ2θ角(Bragg 2-Theta)で表されると、以
下である:6.1±0.2°、6.8±0.2°、8.2±0.2°、8.8±0.2°、11.5±0.2°、12.7±0.2°、14.4±0.2°、15.0°±0.2°、15.5±0.2°、16.5±0.2°、17.0±0.2°、17.4±0.2°、17.7±0.2°、18.7±0.2°、19.4±0.2°、19.8±0.2°、20.3±0.2°、21.3±0.2°、21.7±0.2°、22.6±0.2°、23.0±0.2°、23.5±0.2°、24.2±0.2°、29.1±0.2°;或いは、示差走査熱量技術(DSC)により分析すると、DSCスペクトルにおいて、150±5℃に一つの吸熱ピークが存在し、且つ160℃付近に一つのショルダーピークが存在する。
【0022】
他の好ましい例において、
前記HAがオロト酸である場合の
前記結晶の結晶形は、粉末X線回折技術(XRPD)により測定し且つブラッグ2θ角(Bragg 2-Theta)で表されると、以
下である:5.8±0.2°、8.7±0.2°、9.9±0.2°、11.2±0.2°、12.5±0.2°、13.9±0.2°、14.1±0.2°、15.2°±0.2°、16.2±0.2°、17.0±0.2°、17.4±0.2°、17.8±0.2°、18.7±0.2°、19.0±0.2°、20.4±0.2°、21.9±0.2°、23.5±0.2°、24.0±0.2°、24.9±0.2°、25.9±0.2°、27.6±0.2°、29.5±0.2°、31.0±0.2°、31.4±0.2°;或いは、示差走査熱量技術(DSC)により分析すると、DSCスペクトルにおいて、138±5℃に一つの吸熱ピークが存在する。
【0023】
本発明の第二は、前記の本発明で提供される1−(3−メタンスルホニルアミノベンジル)−6−メトキシ,7−ベンジルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリンの塩
の結晶の製造方法であって、1−(3−メタンスルホニルアミノベンジル)−6−メトキシ,7−ベンジルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリンを相応の
前記HAと反応させて塩
の結晶を形成することを含む製造方法を提供する。
【0024】
他の好ましい例において、前記製造方法は、前記
反応を有機溶媒中で
行って塩
の結晶を形成することを含む。
【0025】
他の好ましい例において、前記製造方法は、
前記HAがニコチン酸、シュウ酸、グリコール酸、ベンゼンスルホン酸又はオロト酸である場合、1−(3−メタンスルホニルアミノベンジル)−6−メトキシ,7−ベンジルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリンを
前記有機溶媒に溶解させてから、
前記HAを加え、冷却後に晶析させ、産物を得ることを含む。
【0026】
他の好ましい例において、前記製造方法は、
前記HAが硫酸又はリン酸である場合、1−(3−メタンスルホニルアミノベンジル)−6−メトキシ,7−ベンジルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリンを
前記有機溶媒に溶解させてから、
前記HAを含有する
前記有機溶媒を加え、冷却後に晶析させ、産物を得ることを含む。
【0027】
他の好ましい例において、前記製造方法は、析出した結晶又は沈殿を洗浄、乾燥することをさらに含む。
【0028】
他の好ましい例において、前記反応の反応温度は0〜80℃である。
【0029】
他の好ましい例において、前記有機溶媒はメタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、2−ブタノン、酢酸メチル、酢酸イソプロピル、メチルt−ブチルエーテル、アセトニトリル又はトルエンである。
【0030】
他の好ましい例において、
前記HAがリン酸である場合、前記反応温度は10〜60℃であり;より好ましくは40℃である。
【0031】
本発明の第三は、有効量の前記の本発明で提供される1−(3−メタンスルホニルアミノベンジル)−6−メトキシ,7−ベンジルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリンの塩誘導体と、1種又は多種の薬学的に許容される補助剤とからなる医薬組成物を提供する。
【0032】
本発明の第四は、前記の本発明で提供される1−(3−メタンスルホニルアミノベンジル)−6−メトキシ,7−ベンジルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリンの塩誘導体の、抗不整脈薬物の調製における使用を提供する。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、水への溶解度が良好な対応化合物の塩誘導体は提供され、これでそのバイオアベイラビリティが改善され、その創薬性が向上される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】
図1はSIPI−409リン酸塩結晶のCuターゲット放射光源による実験条件でのXRPDスペクトルであり;図中、横軸は回折ピーク位置(2θ値)で、縦軸は回折ピーク強度である。
【
図2】
図2はSIPI−409リン酸塩結晶のDSCスペクトルであり;ただし、下向きのピークは吸熱ピークを示す。
【
図3】
図3はSIPI−409硫酸塩結晶のCuターゲット放射光源による実験条件でのXRPDスペクトルであり;図中、横軸は回折ピーク位置(2θ値)で、縦軸は回折ピーク強度である。
【
図4】
図4はSIPI−409硫酸塩結晶のDSCスペクトルであり;ただし、下向きのピークは吸熱ピークを示す。
【
図5】
図5はSIPI−409ニコチン酸塩結晶のCuターゲット放射光源による実験条件でのXRPDスペクトルであり;図中、横軸は回折ピーク位置(2θ値)で、縦軸は回折ピーク強度である。
【
図6】
図6はSIPI−409ニコチン酸塩結晶のDSCスペクトルであり;ただし、下向きのピークは吸熱ピークを示す。
【
図7】
図7はSIPI−409シュウ酸塩結晶のCuターゲット放射光源による実験条件でのXRPDスペクトルであり;図中、横軸は回折ピーク位置(2θ値)で、縦軸は回折ピーク強度である。
【
図8】
図8はSIPI−409シュウ酸塩結晶のDSCスペクトルであり;ただし、下向きのピークは吸熱ピークを示す。
【
図9】
図9はSIPI−409グリコール酸塩結晶のCuターゲット放射光源による実験条件でのXRPDスペクトルであり;図中、横軸は回折ピーク位置(2θ値)で、縦軸は回折ピーク強度である。
【
図10】
図10はSIPI−409グリコール酸塩結晶のDSCスペクトルであり;ただし、下向きのピークは吸熱ピークを示す。
【
図11】
図11はSIPI−409ベンゼンスルホン酸塩結晶のCuターゲット放射光源による実験条件でのXRPDスペクトルであり;図中、横軸は回折ピーク位置(2θ値)で、縦軸は回折ピーク強度である。
【
図12】
図12はSIPI−409ベンゼンスルホン酸塩結晶のDSCスペクトルであり;ただし、下向きのピークは吸熱ピークを示す。
【
図13】
図13はSIPI−409オロト酸塩結晶のCuターゲット放射光源による実験条件でのXRPDスペクトルであり;図中、横軸は回折ピーク位置(2θ値)で、縦軸は回折ピーク強度である。
【
図14】
図14はSIPI−409オロト酸塩結晶のDSCスペクトルであり;ただし、下向きのピークは吸熱ピークを示す。
【
図15A】
図15AはSIPI−409原料のXRPDスペクトル及びそれと塩酸の反応産物のXRPDスペクトルである。
【
図15B】
図15BはSIPI−409原料のXRPDスペクトル及びそれとコハク酸の反応産物のXRPDスペクトルである。
【
図15C】
図15CはSIPI−409原料のXRPDスペクトル及びそれとグリコール酸の反応産物のXRPDスペクトルである。
【
図15D】
図15DはSIPI−409原料のXRPDスペクトル及びそれとシュウ酸の反応産物のXRPDスペクトルである。
【
図15E】
図15EはSIPI−409原料のXRPDスペクトル及びそれとオロト酸の反応産物のXRPDスペクトルである。
【
図15F】
図15FはSIPI−409原料のXRPDスペクトル及びそれとフマル酸の反応産物のXRPDスペクトルである。
【
図15G】
図15GはSIPI−409原料のXRPDスペクトル及びそれと酒石酸の反応産物のXRPDスペクトルである。
【
図15H】
図15HはSIPI−409原料のXRPDスペクトル及びそれとエタンジスルホン酸の反応産物のXRPDスペクトルである。
【
図15I】
図15IはSIPI−409原料のXRPDスペクトル及びそれとリンゴ酸の反応産物のXRPDスペクトルである。
【
図15J】
図15JはSIPI−409原料のXRPDスペクトル及びそれと臭化水素酸の反応産物のXRPDスペクトルである。
【
図15K】
図15KはSIPI−409原料のXRPDスペクトル及びそれとリン酸の反応産物のXRPDスペクトルである。
【
図15L】
図15LはSIPI−409原料のXRPDスペクトル及びそれとニコチン酸の反応産物のXRPDスペクトルである。
【
図15M】
図15MはSIPI−409原料のXRPDスペクトル及びそれと硫酸の反応産物のXRPDスペクトルである。
【
図15N】
図15NはSIPI−409原料のXRPDスペクトル及びそれとベンゼンスルホン酸の反応産物のXRPDスペクトルである。
【
図16】
図16はSIPI−409硫酸塩結晶の単結晶の分子立体構造の投影図である。
【
図17】
図17はSIPI−409標準品を用いて得られる溶解度標準曲線であり;R値は0.999932である。
【
図18A】
図18AはSIPI−409リン酸塩の結晶形の安定性を調査して得られるXRPDスペクトルである。
【
図18B】
図18BはSIPI−409ニコチン酸塩の結晶形の安定性を調査して得られるXRPDスペクトルである。
【
図18C】
図18CはSIPI−409グリコール酸塩の結晶形の安定性を調査して得られるXRPDスペクトルである。
【
図18D】
図18DはSIPI−409シュウ酸塩の結晶形の安定性を調査して得られるXRPDスペクトルである。
【
図18E】
図18EはSIPI−409オロト酸塩の結晶形の安定性を調査して得られるXRPDスペクトルである。
【
図18F】
図18FはSIPI−409ベンゼンスルホン酸塩の結晶形の安定性を調査して得られるXRPDスペクトルである。
【
図18G】
図18GはSIPI−409硫酸塩の結晶形の安定性を調査して得られるXRPDスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
発明者らは幅広く深く研究したところ、構造が式1で表される1−(3−メタンスルホニルアミノベンジル)−6−メトキシ,7−ベンジルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン塩誘導体の水への溶解度は従来のSIPI−409及びSIPI−409塩酸塩より顕著に向上したことを見出し、更なる薬物動態実験により、本発明にかかるSIPI−409の塩誘導体のバイオアベイラビリティは従来のSIPI−409塩酸塩より顕著に改善したことが分かり、リン酸塩を一例とすると、そのバイオアベイラビリティは従来のSIPI−409塩酸塩より329%も向上した。
【0036】
本発明は、式1で表される化合物SIPI−409の塩誘導体を提供する。
【化1】
ただし、SIPI−409と塩を形成するものは、普通の有機酸又は无机酸であってもよく;表1に記載の酸から選ばれても良い。
【0038】
XRPDにより塩型の初歩的スクリーニング試験の結果を計測し、SIPI−409を塩酸、コハク酸、フマル酸、L−酒石酸、エタンジスルホン酸、グリコール酸、オロト酸、DL−リンゴ酸、臭化水素酸、シュウ酸、リン酸、ニコチン酸、硫酸、ベンゼンスルホン酸等と反応させた後のXRPDスペクトルと、SIPI−409原料のXRPDスペクトルとを比較し、結果は
図15に示す。結果に示されるように、前記の14種の反応産物のXRPDスペクトルは、回折パターン、回折角位置及び回折強度で、いずれもSIPI−409と顕著な差異があり、前記の14種の酸がSIPI−409と塩形成反応を発生したと初歩的に判断できる。リン酸、硫酸、ニコチン酸、シュウ酸、グリコール酸、ベンゼンスルホン酸又はオロト酸がSIPI−409と塩を形成することは好ましく;硫酸、リン酸、ニコチン酸又はシュウ酸はより好ましい。
【0039】
本発明で提供されるSIPI−409リン酸塩結晶において、SIPI−409とリン酸の比率は1:1、2:1又は3:1であり、SIPI−409とリン酸の比率が1:1である場合、得られる結晶を粉末X線回折により分析し、Cuターゲット放射光源による実験条件を採用すると、その2θ特徴的回折ピークは:4.6±0.2°、7.6±0.2°、9.8±0.2°、10.2±0.2°、13.9±0.2°、14.4±0.2°、15.3±0.2°、18.1±0.2°、16.8±0.2°、20.5±0.2°、20.9±0.2°、21.9±0.2°、23.1±0.2°、23.5±0.2°、24.3±0.2°、27.1±0.2°であり;より好ましくは、そのXRPDスペクトルは
図1に示す。
【0040】
前記SIPI−409リン酸塩結晶を示差走査熱量技術により分析すると、昇温速度が10℃/minのDSCスペクトルにおいて、201±5℃に一つの吸熱ピークが存在することを示す;より好ましくは、そのDSCスペクトルは
図2に示す。
【0041】
本発明で提供されるSIPI−409硫酸塩結晶において、SIPI−409と硫酸の比率は1:1、2:1であり、ただし、SIPI−409と硫酸の比率が1:1である場合、得られる結晶を粉末X線回折により分析し、Cuターゲット放射光源による実験条件を採用すると、その2θ特徴的回折ピークは:4.9±0.2°、7.1±0.2°、8.4±0.2°、9.7±0.2°、12.0±0.2°、15.4±0.2°、17.0±0.2°、19.5°±0.2°、20.3±0.2°、20.9±0.2°、21.6±0.2°、22.8±0.2°、23.6±0.2°、24.6±0.2°、25.4±0.2°、26.0±0.2°、30.8±0.2°であり;より好ましくは、そのXRPDスペクトルは
図3に示す。
【0042】
前記SIPI−409硫酸塩結晶を示差走査熱量技術(DSC)により分析すると、昇温速度が10℃/minのDSCスペクトルにおいて、130±5℃に一つの吸熱ピークが存在することを示す;より好ましくは、そのDSCスペクトルは
図4に示す。
【0043】
前記SIPI−409硫酸塩結晶(C
25H
28N
2O
4S・H
2SO
4)の単結晶は無色透明の塊状であり、結晶密度は1.361g/cm
3で、空間群はP−1で、格子パラメータは:a=10.292Å、b=11.499Å、c=12.982Å、α=94.86°、β=106.70°、γ=110.95°、格子体積V=1343.85Å
3、格子内の非対称単位数Z=2である。(
図16)
【0044】
本発明で提供されるSIPI−409ニコチン酸塩結晶は、粉末X線回折により分析し、Cuターゲット放射光源による実験条件を採用すると、その2θ特徴的回折ピークは:5.0±0.2°、5.9±0.2°、7.2±0.2°、8.2±0.2°、10.9±0.2°、12.2±0.2°、13.4±0.2°、14.4°±0.2°、15.1±0.2°、15.5±0.2°、17.0±0.2°、17.4±0.2°、17.8±0.2°、18.7±0.2°、19.9±0.2°、20.5±0.2°、20.8±0.2°、21.9±0.2°、23.1±0.2°、23.5±0.2°、24.8±0.2°、25.1±0.2°、25.6±0.2°、27.0±0.2°、27.6±0.2°であり;より好ましくは、そのXRPDスペクトルは
図5に示す。
【0045】
本発明で提供されるSIPI−409ニコチン酸塩結晶を示差走査熱量技術(DSC)により分析すると、昇温速度が10℃/minのDSCスペクトルにおいて、152±5℃に一つの吸熱ピークが存在することを示す;より好ましくは、そのDSCスペクトルは
図6に示す。
【0046】
本発明で提供されるSIPI−409シュウ酸塩結晶において、SIPI−409とシュウ酸の比率は1:1又は2:1であり、ただし、SIPI−409とシュウ酸の比率が1:1である場合、得られる結晶を粉末X線回折により分析し、Cuターゲット放射光源による実験条件を採用すると、その2θ特徴的回折ピークは:3.4±0.2°、4.6±0.2°、5.5±0.2°、7.8±0.2°、9.2±0.2°、10.2±0.2°、10.8±0.2°、11.9°±0.2°、13.1±0.2°、13.8±0.2°、14.6±0.2°、16.4±0.2°、17.0±0.2°、18.4±0.2°、19.0±0.2°、20.2±0.2°、21.9±0.2°、23.6±0.2°、25.8±0.2°、27.3±0.2°、30.0±0.2°、31.9±0.2°であり;より好ましくは、そのXRPDスペクトルは
図7に示す。
【0047】
前記SIPI−409シュウ酸塩結晶を示差走査熱量技術(DSC)により分析すると、昇温速度が10℃/minのDSCスペクトルにおいて、161±5℃に一つの吸熱ピークが存在し、且つ190〜210℃の範囲に一つの幅広い吸熱ピークが存在することを示す;より好ましくは、そのDSCスペクトルは
図8に示す。
【0048】
本発明で提供されるSIPI−409グリコール酸塩結晶は、粉末X線回折により分析し、Cuターゲット放射光源による実験条件を採用すると、その2θ特徴的回折ピークは:4.7±0.2°、7.5±0.2°、9.9±0.2°、10.3±0.2°、13.7±0.2°、14.3±0.2°、14.9±0.2°、15.3°±0.2°、16.1±0.2°、16.9±0.2°、17.6±0.2°、18.1±0.2°、18.9±0.2°、19.3±0.2°、20.4±0.2°、20.8±0.2°、21.8±0.2°、22.5±0.2°、22.9±0.2°、24.3±0.2°、24.9±0.2°、25.3±0.2°、25.9±0.2°、27.7±0.2°であり;より好ましくは、そのXRPDスペクトルは
図9に示す。
【0049】
本発明で提供されるSIPI−409グリコール酸塩結晶を示差走査熱量技術(DSC)により分析すると、昇温速度が10℃/minのDSCスペクトルにおいて、187±5℃に一つの吸熱ピークが存在することを示す;より好ましくは、そのDSCスペクトルは
図10に示す。
【0050】
本発明で提供されるSIPI−409ベンゼンスルホン酸塩結晶は、粉末X線回折により分析し、Cuターゲット放射光源による実験条件を採用すると、その2θ特徴的回折ピークは:6.1±0.2°、6.8±0.2°、8.2±0.2°、8.8±0.2°、11.5±0.2°、12.7±0.2°、14.4±0.2°、15.0°±0.2°、15.5±0.2°、16.5±0.2°、17.0±0.2°、17.4±0.2°、17.7±0.2°、18.7±0.2°、19.4±0.2°、19.8±0.2°、20.3±0.2°、21.3±0.2°、21.7±0.2°、22.6±0.2°、23.0±0.2°、23.5±0.2°、24.2±0.2°、29.1±0.2°であり;より好ましくは、そのXRPDスペクトルは
図11に示す。
【0051】
本発明で提供されるSIPI−409ベンゼンスルホン酸塩結晶を示差走査熱量技術(DSC)により分析すると、昇温速度が10℃/minのDSCスペクトルにおいて、150±5℃に一つの吸熱ピークが存在し、且つ160℃付近に一つのショルダーピークが存在することを示す;より好ましくは、そのDSCスペクトルは
図12に示す。
【0052】
本発明で提供されるSIPI−409オロト酸塩結晶は、粉末X線回折により分析し、Cuターゲット放射光源による実験条件を採用すると、その2θ特徴的回折ピークは:5.8±0.2°、8.7±0.2°、9.9±0.2°、11.2±0.2°、12.5±0.2°、13.9±0.2°、14.1±0.2°、15.2°±0.2°、16.2±0.2°、17.0±0.2°、17.4±0.2°、17.8±0.2°、18.7±0.2°、19.0±0.2°、20.4±0.2°、21.9±0.2°、23.5±0.2°、24.0±0.2°、24.9±0.2°、25.9±0.2°、27.6±0.2°、29.5±0.2°、31.0±0.2°、31.4±0.2°であり;より好ましくは、そのXRPDスペクトルは
図13に示す。
【0053】
本発明で提供されるSIPI−409オロト酸塩結晶を示差走査熱量技術(DSC)により分析すると、昇温速度が10℃/minのDSCスペクトルにおいて、138±5℃に一つの吸熱ピークが存在することを示す;より好ましくは、そのDSCスペクトルは
図14に示す。
【0054】
本発明にかかるSIPI−409塩誘導体結晶は、単結晶を含むが、その多結晶形も含む。
【0055】
本発明はさらに、SIPI−409の塩誘導体及びその結晶の製造方法を提供し、ただし、SIPI−409を有機溶媒に溶解し、有機又は无机酸を加え、攪拌して反応させた後、冷却晶析させ、SIPI−409の塩誘導体結晶を得る。前記溶媒は、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、アレーン系溶媒及びニトリル系溶媒を含む。前記アルコール系溶媒は、メタノール、エタノール及びイソプロパノールを含み;好ましくはメタノールであり;前記ケトン系溶媒は、アセトン及び2−ブタノンを含み;前記エーテル系溶媒は、メチルt−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン及び2−メチルテトラヒドロフランを含み;前記エステル系溶媒は、酢酸エチル、酢酸メチル及び酢酸イソプロピルを含み;前記アレーン系溶媒は、トルエンおよびキシレンを含み;前記ニトリル系溶媒はアセトニトリルである。塩形成の反応温度は0〜80℃であり;好ましくは10−60℃であり;最も好ましくは40℃である。SIPI−409と酸の比率及び仕込み方式は、本発明の原理から逸脱することなく、所要の塩の誘導体に応じて適切に変更できる。
【0056】
本発明で提供されるSIPI−409塩誘導体又はその結晶は、ある程度の安定性を有し、それを活性成分として経口投与剤形の抗不整脈薬物を開発し、臨床使用に供することができる。通常の経口投与形態は、普通の錠剤、カプセル、分散錠、ペレット剤等を含むが、前記剤形における前記賦形剤、滑沢剤、結合剤等の補助剤はいずれも本分野で通常の補助剤である。
【0057】
本発明で述べられた上述の特徴、或は実施例で述べられる特徴は、任意に組み合わせてもよい。本明細書で開示された全ての特徴は任意の組成物の様態と併用してもよく、明細書で開示された各特徴はいずれも、同様、同等或いは類似の目的を果たす代わりの特徴により置換されてもよい。したがって、特に説明しない限り、開示された特徴は、同等または類似の特徴の一般的なシリーズの一例に過ぎない。
【0058】
本発明の利点は主に、本発明で提供されるSIPI−409の新規塩誘導体及びその結晶によれば、その水溶性を顕著に向上させ、これでそのバイオアベイラビリティと創薬性を高める、ということにある。
【0059】
以下、具体的な実施例によって、さらに本発明を説明する。これらの実施例は本発明を説明するために用いるもので、本発明の範囲の制限にはならないと理解されるものである。以下の実施例において、具体的な条件が記載されていない実験方法は、通常、通常の条件、或いはメーカーの薦めの条件で行われた。別の説明がない限り、すべての百分率、比率、比例或いは部は、重量で計算される。本発明における重量体積百分率の単位は当業者にとって熟知で、例えば100mLの溶液における溶質の重量を指す。別途に定義しない限り、文中に使用されるすべての専門・科学用語は、本分野の熟練者によく知られる意味と同じである。また、記載される内容に類似或は同等の方法及び材料はいずれも本発明に使用することができる。文中に記載の好ましい実施形態及び材料は例示だけのためである。
【0060】
本発明にかかる実験におけるXRPDスペクトルは、Cuターゲット放射光源による実験条件下で得られるものである。
【0061】
本発明にかかる実験におけるDSCスペクトルは、昇温速度が10℃/minのスペクトルを示す。
【0062】
本発明にかかるSIPI−40塩誘導体の安定性とは、所定の時間内で、前記塩誘導体結晶の温度、湿度、光に対する安定性及び吸湿性を指す。
【実施例1】
【0063】
SIPI−409リン酸塩及び結晶の調製
SIPI−409を0.5g(0.11mmol)取り、50mLフラスコに入れ、メタノール溶媒を20mL加え、水浴温度を40℃に制御し、1Mのリン酸メタノール溶液を1.3mL(0.13mmol)滴下し、引き続き40℃に保持して2時間攪拌した後、5〜15℃に冷却して晶析させ、ろ過し、SIPI−409リン酸塩の白色固体粉末を0.52g得、収率は86%であり、該結晶におけるSIPI−409:リン酸=1:1、元素分析は表2に示す。そのXRPDスペクトルは
図1に示し、DSCスペクトルは
図2に示す。
【0064】
【0065】
サンプルの元素分析の測定値と理論値の誤差は<0.3%であった。
【実施例2】
【0066】
SIPI−409硫酸塩及び結晶の調製
SIPI−409を0.5g(0.11mmol)取り、50mLフラスコに入れ、メタノール溶媒を20mL加え、水浴温度を40℃に制御し、1Mの硫酸メタノール溶液を1.3mL(0.13mmol)滴下し、引き続き40℃に保持して2時間攪拌した後、5〜15℃に冷却して晶析させ、ろ過し、SIPI−409硫酸塩の白色固体粉末を0.54g得、収率は90%であり、該結晶におけるSIPI−409:硫酸=1:1、単結晶データは図面に示す。そのXRPDスペクトルは
図3に示し、DSCスペクトルは
図4に示す。
【実施例3】
【0067】
SIPI−409ニコチン酸塩及び結晶の調製
SIPI−409を0.5g(0.11mmol)取り、50mLフラスコに入れ、メタノール溶媒を20mL加え、水浴温度を40℃に制御し、ニコチン酸を0.16g(0.13mmol)加え、引き続き40℃に保持して2時間攪拌した後、5〜15℃に冷却して晶析させ、ろ過し、SIPI−409ニコチン酸塩の白色固体粉末を0.49g得、収率は78%であった。そのXRPDスペクトルは
図5に示し、DSCスペクトルは
図6に示す。
【実施例4】
【0068】
SIPI−409シュウ酸塩及び結晶の調製
SIPI−409を0.5g(0.11mmol)取り、50mLフラスコに入れ、メタノール溶媒を20mL加え、水浴温度を40℃に制御し、シュウ酸を0.117g(0.13mmol)加え、引き続き40℃に保持して2時間攪拌した後、5〜15℃に冷却して晶析させ、ろ過し、SIPI−409シュウ酸塩の白色固体粉末を0.50g得、収率は84%であった。そのXRPDスペクトルは
図7に示し、DSCスペクトルは
図8に示す。
【実施例5】
【0069】
SIPI−409グリコール酸塩及び結晶の調製
SIPI−409を0.5g(0.11mmol)取り、50mLフラスコに入れ、メタノール溶媒を20mL加え、水浴温度を40℃に制御し、グリコール酸を0.098g(0.13mmol)加え、引き続き40℃に保持して2時間攪拌した後、5〜15℃に冷却して晶析させ、ろ過し、SIPI−409グリコール酸塩の白色固体粉末を0.47g得、収率は81%であった。そのXRPDスペクトルは
図9に示し、DSCスペクトルは
図10に示す。
【実施例6】
【0070】
SIPI−409ベンゼンスルホン酸塩及び結晶の調製
SIPI−409を0.5g(0.11mmol)取り、50mLフラスコに入れ、メタノール溶媒を20mL加え、水浴温度を40℃に制御し、ベンゼンスルホン酸を0.205g(0.13mmol)加え、引き続き40℃に保持して2時間攪拌した後、5〜15℃に冷却して晶析させ、ろ過し、SIPI−409ベンゼンスルホン酸塩の白色固体粉末を0.57g得、収率は84%であった。そのXRPDスペクトルは
図11に示し、DSCスペクトルは
図12に示す。
【実施例7】
【0071】
SIPI−409オロト酸塩及び結晶の調製
SIPI−409を0.5g(0.11mmol)取り、50mLフラスコに入れ、メタノール溶媒を20mL加え、水浴温度を40℃に制御し、オロト酸一水合物を0.226g(0.13mmol)加え、引き続き40℃に保持して2時間攪拌した後、5〜15℃に冷却して晶析させ、ろ過し、SIPI−409オロト酸塩の白色固体粉末を0.52g得、収率は77%であった。そのXRPDスペクトルは
図13に示し、DSCスペクトルは
図14に示す。
【実施例8】
【0072】
水への溶解度の測定
液体クロマトグラフィーにより、SIPI−409及びその塩誘導体について水への溶解度の測定を行った。
主要な実験ステップは:濃度がそれぞれ5μg/mL、10μg/mL、50μg/mL、100μg/mL、200μg/mLのSIPI−409標準品を調製し、標準曲線を作成し、結果は
図17に示す。
クロマトグラフィー条件:
クロマトグラフィーカラム:Phenomenex Luna 5u C18(2) 100A 4.6×200 mm
検出波長:210nm
移動相:アセトニトリル/リン酸塩緩衝溶液(0.68g/Lリン酸二水素カリウム、トリエチルアミンでpHを3.0に調節した)=68/32
カラム温度:30℃
注入量:10μL
保持時間:約6.3min
サンプル処理:受試サンプルを過飽和水溶液(懸濁液)にし、30℃の条件で12h振盪した後、超音波装置で30s超音波処理し、ろ過し、適切な倍数に希釈し、HPLC分析を行った。計測結果は表3に示す。
【0073】
【0074】
結果から分かるように、本発明のSIPI−409リン酸塩、SIPI−409硫酸塩、SIPI−409ニコチン酸塩、SIPI−409シュウ酸塩、SIPI−409グリコール酸塩、SIPI−409ベンゼンスルホン酸塩、SIPI−409オロト酸塩の水への溶解度は、従来のSIPI−409及びSIPI−409塩酸塩より顕著に向上した。
【実施例9】
【0075】
薬物動態研究
水への溶解度の計測結果に示されるように、SIPI−409リン酸塩の水への溶解度はSIPI−409及びSIPI−409塩酸塩より大幅に向上したので、SIPI−409リン酸塩についてさらに薬物動態研究を行い、且つSIPI−409塩酸塩と比較した。
実験方法
SIPI−409塩酸塩、SIPI−409リン酸塩をそれぞれ経口(PO)で投与し、それらのSDラット生体内における薬物動態パラメータ及びバイオアベイラビリティを研究した。液体クロマトグラフィー−タンデム質量分析法により、異なる時点の血漿中のSIPI−409塩酸塩、SIPI−409リン酸塩の濃度を測定した。
データ処理
得られた血中薬物濃度データから、薬物動態処理ソフトWinNonlin 5.2を用いて、ノンコンパートメントモデルで相関の薬物動態パラメータを算出した。
【0076】
実験結果
SIPI−409塩酸塩、SIPI−409リン酸塩の初歩的な薬物動態は表4に示す。
【0077】
【0078】
結果から分かるように、SDラットに静脈内注射投与されたSIPI−409塩酸塩とSIPI−409リン酸塩結晶形αの薬物動態パラメータは実質的に同等であった。SDラットに経口投与されたSIPI−409塩酸塩のバイオアベイラビリティは24%であったが、SIPI−409リン酸塩のバイオアベイラビリティは79%であった。即ち、本発明にかかるSIPI−409リン酸塩のバイオアベイラビリティは、従来のSIPI−409塩酸塩より329%向上した。
【実施例10】
【0079】
安定性の調査
温度安定性の調査
SIPI−409リン酸塩、ニコチン酸塩、グリコール酸塩、シュウ酸塩、オロト酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、硫酸塩を60℃オーブンに入れ、0日目、5日目、10日目、20日目、30日目にそれぞれサンプリングしてXRPD測定を行った。
【0080】
湿度安定性の調査
SIPI−409リン酸塩、ニコチン酸塩、グリコール酸塩、シュウ酸塩、オロト酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、硫酸塩を92.5%RH(飽和KNO
3)に入れ、0日目、5日目、10日目、20日目、30日目にそれぞれサンプリングしてXRPD測定を行った。
【0081】
光安定性の調査
SIPI−409リン酸塩、ニコチン酸塩、グリコール酸塩、シュウ酸塩、オロト酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、硫酸塩をライトボックスに入れ、0日目、5日目、10日目、20日目、30日目にそれぞれサンプリングしてXRPD測定を行った。
【0082】
吸湿性の調査
サンプルの吸湿性をさらに調査するために、SIPI−409リン酸塩、ニコチン酸塩、グリコール酸塩、シュウ酸塩、オロト酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、硫酸塩を動的水分吸着分析装置(DVS)に入れ、吸湿性の調査を行った。
【0083】
安定性の調査結果は
図18と表5に示す。
【0084】
【0085】
結果から分かるように、60℃の高温条件で5日目に変化が発生した、熱に不安定なニコチン酸塩を除き、他の塩誘導体は、水への溶解性に優れるだけでなく、相当な安定性も示した;ただし、SIPI−409リン酸塩は、水への溶解度が一番大きく、9.69mg/mLにも達し、且つ高温、高湿、光照射のいずれの条件でも安定で、DVSに示される最大吸湿量が0.7%しかなかった。
【0086】
以上の説明は本発明の好ましい実施例だけで、本発明の実質の技術内容の範囲を限定するものではなく、本発明の実質の技術内容は広義的に出願の請求の範囲に定義され、他の人が完成した技術実体或いは方法は、出願の請求の範囲に定義されたものとまったく同じものであれば、或いは効果が同等の変更であれば、いずれもその請求の範囲に含まれるとみなされる。