特許第6823739号(P6823739)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6823739紙葉鑑別装置、白基準データの調整方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6823739
(24)【登録日】2021年1月13日
(45)【発行日】2021年2月3日
(54)【発明の名称】紙葉鑑別装置、白基準データの調整方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G07D 7/12 20160101AFI20210121BHJP
   H04N 1/04 20060101ALI20210121BHJP
   H04N 1/191 20060101ALI20210121BHJP
   H04N 1/401 20060101ALI20210121BHJP
【FI】
   G07D7/12
   H04N1/12 Z
   H04N1/191
   H04N1/401
【請求項の数】6
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2020-25243(P2020-25243)
(22)【出願日】2020年2月18日
(65)【公開番号】特開2020-166836(P2020-166836A)
(43)【公開日】2020年10月8日
【審査請求日】2020年6月19日
(31)【優先権主張番号】特願2019-66319(P2019-66319)
(32)【優先日】2019年3月29日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000230858
【氏名又は名称】日本金銭機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085660
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 均
(74)【代理人】
【識別番号】100149892
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 弥生
(74)【代理人】
【識別番号】100185672
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】關 亨
(72)【発明者】
【氏名】湯地 健太
【審査官】 花田 尚樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−358142(JP,A)
【文献】 特開2009−016915(JP,A)
【文献】 特開2003−315944(JP,A)
【文献】 特開2016−208126(JP,A)
【文献】 特開2004−007542(JP,A)
【文献】 特開2019−029837(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 7/00 − 7/20
H04N 1/04 − 1/207
H04N 1/40 − 1/409
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送路に沿って紙葉を移動させる搬送手段と、
移動中の前記紙葉の一面へ検知光を照射する発光手段と、
移動中の前記紙葉の他面と対向する位置に配置されて紙葉を通過してきた前記検知光を受光すると共に、前記紙葉の移動方向と直交する幅方向に沿って複数配置された受光手段と、
前記受光手段に入射した前記検知光に応じた階調の画像データを生成する画像データ生成手段と、
前記画像データをシェーディング補正するのに用いる白基準部材に前記検知光を照射することにより得られた白基準データを記憶する白基準データ記憶手段と、
前記搬送路の幅方向端部に位置し、当該搬送路の側壁を形成する移動規制手段と、
前記幅方向位置が予め定められた特定領域内であり、前記発光手段と前記受光手段との間に設けられ、前記紙葉の一面または他面に当接すると共に、光を透過する部材で形成される当接手段と、
前記受光手段の前記幅方向位置が前記特定領域内であること条件に、当該受光手段の画像データをシェーディング補正するための前記白基準データを、所定値に調整する調整手段と、を具備する紙葉鑑別装置。
【請求項2】
前記特定領域は、前記移動規制手段までの前記幅方向上の距離が所定距離以下の領域であることを特徴とする請求項1に記載の紙葉鑑別装置。
【請求項3】
搬送路に沿って紙葉を移動させる搬送手段と、移動中の前記紙葉の一面へ検知光を照射する発光手段と、移動中の前記紙葉の他面と対向する位置に配置されて紙葉を通過してきた前記検知光を受光すると共に、前記紙葉の移動方向と直交する幅方向に沿って複数配置された受光手段と、前記受光手段に入射した前記検知光に応じた階調の画像データを生成する画像データ生成手段と、前記搬送路の幅方向端部に位置し、当該搬送路の側壁を形成する移動規制手段と、前記幅方向位置が予め定められた特定領域内であり、前記発光手段と前記受光手段との間に設けられ、前記紙葉の一面または他面に当接すると共に、光を透過する部材で形成される当接手段と、を具備する紙葉鑑別装置において、前記画像データをシェーディング補正するのに用いる白基準データの調整方法であって、
前記受光手段の前記幅方向位置が前記特定領域内であること条件に、当該受光手段の画像データをシェーディング補正するための前記白基準データを、所定値に調整するステップ、を具備する白基準データの調整方法。
【請求項4】
搬送路に沿って紙葉を移動させる搬送手段と、移動中の前記紙葉の一面へ検知光を照射する発光手段と、移動中の前記紙葉の他面と対向する位置に配置されて紙葉を通過してきた前記検知光を受光すると共に、前記紙葉の移動方向と直交する幅方向に沿って複数配置された受光手段と、前記受光手段に入射した前記検知光に応じた階調の画像データを生成する画像データ生成手段と、前記搬送路の幅方向端部に位置し、当該搬送路の側壁を形成する移動規制手段と、前記幅方向位置が予め定められた特定領域内であり、前記発光手段と前記受光手段との間に設けられ、前記紙葉の一面または他面に当接すると共に、光を透過する部材で形成される当接手段と、を具備する紙葉鑑別装置において、前記画像データをシェーディング補正するのに用いる白基準データをコンピュータに調整させるプログラムであって、
前記受光手段の前記幅方向位置が前記特定領域内であること条件に、当該受光手段の画像データをシェーディング補正するための前記白基準データを、所定値に調整する調整手段としてコンピュータを機能させるプログラム。
【請求項5】
搬送路に沿って紙葉を移動させる搬送手段と、
移動中の前記紙葉の一面へ検知光を照射する発光手段と、
移動中の前記紙葉の他面と対向する位置に配置されて紙葉を通過してきた前記検知光を受光すると共に、前記紙葉の移動方向と直交する幅方向に沿って複数配置された受光手段と、
前記受光手段に入射した前記検知光に応じた階調の画像データを生成する画像データ生成手段と、
前記画像データをシェーディング補正するのに用いる白基準データを記憶する白基準データ記憶手段と、を具備し、
前記白基準データは、白基準部材に前記検知光を照射することにより得られた第1補正値と、前記白基準部材を透過していない前記検知光を前記受光手段に照射することにより得られた第2補正値とを含み、
前記幅方向位置が予め定められた特定領域外である前記受光手段の前記画像データを、前記第1補正値を用いてシェーディング補正するとともに、前記幅方向位置が前記特定領域内である前記受光手段の前記画像データを、前記第2補正値を用いてシェーディング補正する補正部をさらに具備する
紙葉鑑別装置。
【請求項6】
搬送路に沿って紙葉を移動させる搬送手段と、移動中の前記紙葉の一面へ検知光を照射する発光手段と、移動中の前記紙葉の他面と対向する位置に配置されて紙葉を通過してきた前記検知光を受光すると共に、前記紙葉の移動方向と直交する幅方向に沿って複数配置された受光手段と、前記受光手段に入射した前記検知光に応じた階調の画像データを生成する画像データ生成手段と、前記画像データをシェーディング補正するのに用いる白基準データを記憶する白基準データ記憶手段と、を具備する紙葉鑑別装置において、前記画像データをシェーディング補正する補正方法であって、
前記白基準データは、白基準部材に前記検知光を照射することにより得られた第1補正値と、前記白基準部材を透過していない前記検知光を前記受光手段に照射することにより得られた第2補正値とを含み、
前記幅方向位置が予め定められた特定領域外である前記受光手段の前記画像データを、前記第1補正値を用いてシェーディング補正するとともに、前記幅方向位置が前記特定領域内である前記受光手段の前記画像データを、前記第2補正値を用いてシェーディング補正するステップ
を具備する補正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙葉鑑別装置、白基準データの調整方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、挿入口から挿入された紙葉を搬送路内部に受け入れて紙葉の真贋、金種等の鑑別処理を実施する紙葉鑑別装置が知られている。以上の紙葉鑑別装置では、搬送路を搬送される紙葉が画像センサで撮影され、当該紙葉を示す画像データが生成される。以上の画像データは、紙葉の真贋の鑑別等に用いられる。
【0003】
例えば、特許文献1には、搬送路の紙葉の一面へ検知光を照射する発光手段と、紙葉の他面側へ透過した検知光が入射する受光手段とで構成される画像センサを具備する紙葉鑑別装置が開示される。以上の紙葉鑑別装置では、画像センサにより生成された画像をシェーディング補正する技術が採用される場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−295125公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シェーディング補正に用いる白基準データは、予め定められた方法で生成される。しかし、白基準データを生成する方法(例えば、白基準部材の形状)によっては、予め定められた特定領域(例えば、搬送路の側壁の近傍)に位置する画素の画像データを補正するための白基準データが適切に生成困難な場合がある。以上の事情を考慮して、本発明は、上述の特定領域に位置する画素の白基準データを調整可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するために、搬送路に沿って紙葉を移動させる搬送手段と、移動中の紙葉の一面へ検知光を照射する発光手段と、移動中の紙葉の他面と対向する位置に配置されて紙葉を通過してきた検知光を受光すると共に、紙葉の移動方向と直交する幅方向に沿って複数配置された受光手段と、受光手段に入射した検知光に応じた階調の画像データを生成する画像データ生成手段と、画像データをシェーディング補正するのに用いる白基準部材に検知光を照射することにより得られた白基準データを記憶する白基準データ記憶手段と、搬送路の幅方向端部に位置し、当該搬送路の側壁を形成する移動規制手段と、受光手段の幅方向位置が予め定められた特定領域内であること条件に、当該受光手段の画像データをシェーディング補正するための白基準データを、所定値に調整する調整手段と、を具備する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、紙葉の画像が適当にシェーディング補正される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る紙幣鑑別装置の外観斜視図および断面図である。
図2】第1実施形態に係る紙幣鑑別装置の分解斜視図および拡大断面図である。
図3】第1実施形態に係る白基準部材を説明するための図である。
図4】第1実施形態に係る紙幣鑑別装置の機能ブロック図である。
図5】第1実施形態に係る調整前白基準データを説明するための図である。
図6】第1実施形態に係る白基準データの調整方法を説明するための図である。
図7】第1実施形態に係る出荷前調整処理のフローチャートである。
図8】第2実施形態に係る白基準データの調整方法を説明するための図である。
図9】第3実施形態に係る白基準データを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1実施形態>
図1(a)は、第1実施形態に係る紙幣鑑別装置Hの外観斜視図である。また、図1(b)は、図1(a)におけるA−A線の断面図である。以上の紙幣鑑別装置Hは、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)およびフラッシュメモリなどで構成される制御装置を具備する。
【0010】
紙幣鑑別装置Hは、図1(a)に示す通り、下部ユニット1および上部ユニット2を含んで構成され、下部ユニット1の上面と上部ユニット2の下面との間に形成される搬送路4に対して、挿入口3aから紙葉(例えば、紙幣)が挿入される。挿入口3aに挿入された紙幣は、図1(b)に矢印で示す移動方向に向けて搬送路4内を移動する。
【0011】
図1(b)に示す通り、紙幣鑑別装置Hには、搬送装置5が設けられる。搬送装置5は、搬送路4の下側に配置された搬送ドラム(ローラ)、搬送ベルト等から成る複数の下側搬送部材5a、および搬送路4の上側に配置されて各下側搬送部材5aと夫々対向して配置された搬送ドラム等から成る上側搬送部材5bを含んで構成される。本例に係る下側搬送部材5aは、その外周面にて紙幣下面と接しながらモータにより回転駆動される搬送ドラム、搬送ベルト等である。上側搬送部材5bはその外周面にて紙幣上面と接しながら紙幣を介して下側搬送部材5aに連れ回りする。挿入口3aに挿入された紙幣は、下側搬送部材5aおよび上側搬送部材5bの間に配置されて両面をニップされ、下側搬送部材5aの回転に伴い搬送路4を一定速度で移動する。なお、紙幣を搬送するための搬送装置5は上述の例に限定されない。
【0012】
図1(b)に示す通り、紙幣鑑別装置Hは、センサ6(6a、6b、6c)を具備する。紙幣鑑別装置Hの制御装置は、挿入口3aに挿入された紙幣の真贋等をセンサ6から取得された情報に応じて鑑別する。具体的には、センサ6は、2個の画像センサ6(6a、6b)および1個の磁気センサ6cを含んで構成される。ただし、以上のセンサ以外により紙幣が鑑別される構成としてもよい。
【0013】
第1画像センサ6aは、CIS(Contact Image Sensor)である。また、第2画像センサ6bは、第1画像センサ6aと同様にCISである。以上の画像センサの各々は、搬送路4の紙幣へ検知光を照射する発光部(例えば、後述の発光素子Ga)、および、当該検知光が入射する受光部(例えば、後述の画素Gb)を含む。また、画像センサの発光部は、反射光源および透過光源の2種類の光源を含む。各光源は、波長が相違する複数種類の検知光を照射する。なお、本発明における「検知光」には、可視光(波長=360〜760nm)の他に不可視光(赤外線など)が含まれ得る。
【0014】
例えば、第1画像センサ6aの反射光源から照射された検知光は、搬送路4における紙幣の一面で反射し、第1画像センサ6aの受光部へ入射する。また、第2画像センサ6bの反射光源から照射された検知光は、搬送路4における紙幣の他面で反射し、第2画像センサ6bの受光部へ入射する。
【0015】
第1画像センサ6aの透過光源から照射された検知光は、搬送路4における紙幣の一面側から他面側へ透過し、第2画像センサ6bの受光部へ入射する。また、第2画像センサ6bの透過光源から照射された検知光は、搬送路4における紙幣の他面側から一面側へ透過し、第1画像センサ6aの受光部へ入射する。
【0016】
画像センサ(6a、6b)の受光部は、複数個の画素で構成される。また、以上の画素に入射した検知光(透過光、反射光)に応じた検知信号が、上述の制御装置に入力される。制御装置のCPUは、ROMに記憶されたプログラムを実行することで、検知信号に基づいて紙幣を示す画像データを生成する。
【0017】
画像データからは、暗電流成分を除去する黒補正処理が実行される。また、詳細には後述するが、黒補正処理を実行した後に、シェーディング補正が画像データに対して実行される。シェーディング補正とは、画像データが含む輝度むらを低減する方法であり、例えば、白基準データの各画素の階調により、対応する画像データの各画素の階調を除算して、当該画像データの各画素の階調を補正する方法である。シェーディング補正に用いる白基準データは、例えば、紙幣鑑別装置Hが製造される工程において生成され、制御装置のフラッシュメモリに記憶される。
【0018】
磁気センサ6cは、紙幣の印刷面のインクに含まれる鉄分を検出する。以上のセンサ6からの検知信号により、CPUは紙幣を鑑別する。例えば、正規な紙幣ではないと判断された場合、搬送装置5により挿入口3aから当該紙幣が排出される。一方、正規な紙幣であると判断された場合、当該紙幣は取込口3bへ移動する。詳細な説明は省略するが、紙幣鑑別装置Hは、例えば特開2009−295125号公報に記載の紙葉処理装置に装着される。紙幣鑑別装置Hの取込口3bへ移動した紙幣は、その後、紙葉処理装置の収容ユニットに収容される。
【0019】
図2(a)は、紙幣鑑別装置Hの分解斜視図である。また、図2(b)は、上述の図1(a)におけるB−B線の断面図である。図2(a)に示す通り、紙幣鑑別装置Hは、上述の下部ユニット1、上部ユニット2、第1画像センサ6aおよび第2画像センサ6bに加え、下部カバー7、上部トレイ8、反射用白基準片9(9a、9b)を含む。なお、図2(b)では、紙幣鑑別装置Hの各構成のうち第1画像センサ6a、第2画像センサ6b、下部カバー7、上部トレイ8および反射用白基準片9(9a、9b)以外を省略して示す。
【0020】
図2(a)に示す様に、上部トレイ8は上面に有底の凹所8aを有した略箱状に形成され、図2(b)に示す様に、上部トレイ8の凹所8a内には第1画像センサ6aが収納される。さらに、図2(b)に示す様に、上部トレイ8の下面8bは、搬送路4の上面(天井面)を形成する。以上の上部トレイ8は、光透過性の材料、例えば、透明な樹脂で形成される。
【0021】
図2(b)には、第1画像センサ6aの透過光源である複数個の発光素子Gaが示される。なお、図2(b)では、全ての発光素子Gaのうちの一部を抜粋して示す。以上の発光素子Gaは、搬送路4の紙幣が移動する方向をY軸方向(搬送方向)とした場合、Y軸方向に対して水平方向へ直交するX軸方向(幅方向)に沿って複数個延在するように配置される。本実施形態では、720個の発光素子GaがX軸方向へ配列される。
【0022】
図2(b)に示す様に、第1画像センサ6aは、上述の下面8b側に発光素子Gaが位置する様に上部トレイ8の凹所8a内に収納される。上述した通り、上部トレイ8は光透過性である。したがって、発光素子Gaから照射された検知光は、上部トレイ8を透過して搬送路4へ進入できる。
【0023】
本実施形態の第2画像センサ6bは、図2(b)に示す様に、第1画像センサ6aから照射された検知光が入射する複数個の画素Gbを具備する。なお、図2(b)では、全ての画素Gbのうちの一部を抜粋して示す。以上の第2画像センサ6bには、第1画像センサ6aの発光素子Gaと同数(720個)の画素Gbが設けられる。また、各画素Gbは、発光素子Gaと同様にX軸方向へ配列され、一の発光素子Gaと一の画素Gbとは、光軸L(図2(b)参照)が一致する様に対向する。
【0024】
図2(a)に示す様に、下部カバー7には、右側壁面7a、左側壁面7b、下部カバーの搬送方向奧側端縁を切欠き形成された上下方向へ貫通する凹所7c、および凹所7cを回避した個所にある上面7dが設けられる。下部カバー7は、図2(b)に示す様に、第2画像センサ6bの上面(画素Gb側)を覆うように設けられる。また、下部カバー7の上面7dは搬送路4の底面を構成する。本実施形態における搬送路4の底面(下部カバー7)から天井面(上部トレイ8)までの高さ(図2(b)に示す距離h)は約2mmである。
【0025】
下部カバー7が下部ユニット1上に設置されると、搬送装置5の搬送ベルト等の下側搬送部材5aが凹所7cを介して搬送路4側へ突出する。搬送路4の紙幣は、搬送ベルトの回転に伴い搬送方向へ移動する。
【0026】
下部カバー7は、上述の上部トレイ8と同様に、透明な樹脂などの光透過性の材料で形成される。したがって、第1画像センサ6aの発光素子Gaから照射され、搬送路4の紙幣を透過した検知光は、下部カバー7(上面7d)を透過して、第2画像センサ6bの画素Gbに入射可能である。
【0027】
図2(b)に示す様に、下部カバー7の右側壁面7aおよび左側壁面7bは、搬送路4の側壁を形成する。具体的には、右側壁面7aは、搬送路4を移動する紙幣から見て右側の側壁を形成する。また、左側壁面7bは、搬送路4を移動する紙幣から見て左側の側壁を形成する。本実施形態では、説明のため、X軸(主走査軸)上の領域のうち右側壁面7aから左側壁面7bまでの領域を「領域R」という。以上の領域Rは、紙幣を鑑別するための画像が撮影される領域である。
【0028】
本実施形態では、領域Rの長さ(右側壁面7aから左側壁面7bまでの距離)は、搬送路4を移動する紙幣のX軸方向の幅より約4mmだけ長い。以上の構成では、例えば領域Rの長さが紙幣の幅より4mm以上長い構成と比較して、搬送路4の幅が短くなる。したがって、本実施形態によれば、紙幣鑑別装置Hを小型化し易いという利点がある。
【0029】
上述した通り、本実施形態の紙幣鑑別装置Hは、画像のシェーディング補正が可能である。具体的には、紙幣鑑別装置Hは、反射光源により得られた画像のシェーディング補正、および、透過光源により得られた画像のシェーディング補正の双方が可能である。
【0030】
紙幣鑑別装置Hは、反射光源により得られた画像のシェーディング補正に用いる白基準データを、上述の領域Rの外側の反射光源および受光部を用いて生成する。一方、透過光源(発光素子Ga)により得られた画像のシェーディング補正に用いる白基準データは、上述の領域Rの内側の透過光源および受光部(画素Gb)を用いて生成される。
【0031】
紙幣鑑別装置Hは、反射光源により得られた画像のシェーディング補正に用いる白基準データを生成するために反射用白基準片(9a、9b)を具備する。図2(a)に示す通り、以上の反射用白基準片9には白色の2個の反射板Tが設けられる。図2(b)に示す通り、反射用白基準片9は、領域Rの外側の領域rに反射板Tが位置する様に設けられる。なお、図2(b)に示す通り、各反射板Tの先端は下部カバー7に当接する。本実施形態では、領域Rおよび領域rの全域に画素Gbが配列される。
【0032】
2個の反射板Tのうち一方の反射板Tには、第1画像センサ6aの反射光源のうち領域rに位置する反射光源から出射された光が照射される。また、以上の反射光源から出射され反射板Tで反射された光は、第1画像センサ6aの反射光用の受光素子(画素)に入射する。同様に、2個の反射板Tのうち他方の反射板Tには、第2画像センサ6bの反射光源のうち領域rに位置する反射光源から出射された光が照射される。また、以上の反射光源から出射され反射板Tで反射された光は、第2画像センサ6bの反射光用の受光素子(画素)に入射する。制御装置のCPUは、受光素子に入射した反射板Tからの反射光の階調に応じて、反射光源で得られた画像を補正するための白基準データを生成する。
【0033】
以上の通り、反射光源により得られた画像の白基準データは、反射用白基準片9(反射板T)を用いて生成される。一方、透過光源(発光素子Ga)により得られた画像の白基準データは、後述の白基準部材10(図3参照)を用いて生成される。なお、反射光源により得られた画像の白基準データを生成する時期は適宜に設定できる。例えば、紙幣が挿入口3aに挿入された直後(紙幣が画像センサで検知される前)に、以上の白基準データが生成される構成としてもよい。
【0034】
図3(a)は、上述の白基準部材10の斜視図である。本実施形態では、紙幣鑑別装置Hの製造過程において、白基準部材10を用いて白基準データが生成される。ただし、白基準データが他の契機で生成される構成としてもよい。白基準部材10は、白基準データを生成する場合、搬送路4(下部カバー7の上面7d)に配置される(後述の図3(b)参照)。また、白基準部材10は、白基準データを生成した後に、作業者により取り除かれる。すなわち、紙幣鑑別装置Hが完成品として出荷される場合には、搬送路4に白基準部材10は配置されない。
【0035】
図3(a)に示す通り、白基準部材10は、白基準シート10aと、白基準シート10aの外周縁を保持する矩形環状のガード部材10bとを含んで構成される。白基準シート10aは、発光素子Gaの検知光が照射された場合、紙幣の白色部分と同様な光(種類、強度)を透過する。以上の白基準シート10aは、例えば、紙幣と略同じ厚さで形成される。
【0036】
ガード部材10bは、外縁が略矩形の略板状の環状部材(枠体)であり、図3(a)に示す通り、貫通した開口部Kが設けられる。白基準シート10aは、開口部Kを塞ぐようにガード部材10bに取付(貼付)けられる。ガード部材10bは、白基準シート10aより強度が高く比重が大きい(重い)材料で形成される。例えば、ステンレス等の合金でガード部材10bが形成される。
【0037】
ガード部材10bを設けた白基準部材10によれば、例えば白基準シート10aのみで構成される白基準部材10と比較して、白基準部材10を搬送路4に配置するに際して、白基準シート10aが折り曲がる不都合が抑制されるという利点がある。また、白基準部材10(白基準シート10a)が風の影響等でズレる不都合が抑制されるという利点がある。
【0038】
図3(b)は、搬送路4に載置された白基準部材10を説明するための図である。白基準データを生成する場合、作業者により一時的に搬送路4に白基準部材10が配置される。具体的には、第1画像センサ6aと第2画像センサ6bとの間であって、第1画像センサ6aの発光素子Gaが照射した検知光が照射される位置に白基準部材10が配置される。
【0039】
図3(b)に示す通り、白基準部材10の長辺の長さは、領域Rの長さと近似する(略等しい)。以上の場合、白基準部材10(ガード部材10b)の短辺は、搬送路4の側壁(7a、7b)の近傍に位置する(略当接する)。なお、白基準部材10の構成は上述の例に限定されない。
【0040】
白基準データを生成するに際して、白基準部材10を搬送路4の領域Rに載置した状態で、発光素子Gaから検知光が照射される。以上の場合、発光素子Gaからの検知光のうち、白基準部材10の白基準シート10aに照射された検知光は、白基準シート10aを透過して画素Gbに入射される。以上の画素Gbに入射した検知光からは、適切な白基準データが生成される。
【0041】
一方、白基準部材10のうちガード部材10bは、紙幣の白色部分(白基準シート10a)と比較して光の透過率が低い。例えば、ガード部材10bが金属製である場合、検知光を透過させない。したがって、白基準部材10を領域Rに設置した状態で、第1画像センサ6aの発光素子Gaから検知光を照射させた場合、ガード部材10b(長手方向両端部10b`)に照射された検知光は、第2画像センサ6b側へ透過しないため、画素Gbで受光されない。以上の場合、当該画素Gbが生成した画像データをシェーディング補正するための白基準データが適切に生成されない(後述の図5(b)参照)。
【0042】
以上の説明から理解される通り、本実施形態の白基準部材10を用いて白基準データを生成した場合、ガード部材10bの長手方向両端部10b`と対向する画素Gbの画像を補正するための白基準データが適切に生成されない。すなわち、搬送路4の側壁近傍に位置する画素Gbの白基準データが適切に生成されない。搬送路4の側壁近傍に位置する画素Gbの白基準データが適当に生成されない場合、例えば図3(c)に示す様に、紙幣Bが搬送路4の側壁近傍を移動した場合に問題となる。
【0043】
例えば、従来からATM(Automatic Teller Machine)装置等において、紙幣が不正に取出される(盗難される)場合、当該紙幣に盗難インクを噴射する技術が採用されている(例えば、特開特開2000−322625号公報参照)。以上の事情から、紙幣鑑別装置Hにおいては、挿入された紙幣に盗難インクが付着しているか否かを判別可能な構成が好適である。しかし、盗難インクは紙幣の幅方向外縁近傍の部位に付着する場合が多々ある。したがって、仮に搬送路4の側壁近傍で撮影された画像のシェーディング補正が適切にされない場合、当該紙幣に盗難インクが付着しているか否かを正確に判別できない場合がある。
【0044】
以上の事情を考慮して、本実施形態の紙幣鑑別装置Hは、搬送路4の側壁近傍の画像が適切にシェーディング補正される構成(後述の図4に示す白基準データ生成部107等)を具備する。以上の紙幣鑑別装置Hによれば、搬送路4の幅を比較的短くしつつ、紙幣の外縁近傍に付着した盗難インクを適切に発見できるという利点がある。
【0045】
具体的には、本実施形態の紙幣鑑別装置Hは、白基準部材10を用いて白基準データを生成した後に、ガード部材10bと対向する画素Gbの画像を補正するための白基準データを調整可能な構成を採用した。以上の構成によれば、搬送路4の側壁の近傍を紙幣Bが移動した場合であっても、搬送路4の側壁近傍の画素Gbの画像が適切にシェーディング補正されるため、鮮明な画像で当該紙幣Bを鑑別できる。
【0046】
なお、搬送路4の側壁近傍の画素Gbの白基準データを適切に生成する他の方法として、白基準部材10のガード部材10bの長手方向両端部10b`を載置可能な領域を領域Rの外側(側壁の外側)に設け、領域Rの全域を白基準シート10aと対向させるという方法が考えられる。しかし、以上の方法では、紙幣鑑別装置Hが小型化し難いという不都合が生じ得る。本実施形態では、以上の不都合が抑制される。
【0047】
図4は、第1実施形態に係る紙幣鑑別装置100(H)の機能ブロック図である。紙幣鑑別装置100のCPUがプログラムを実行することで、各種の機能が実現される。ただし、紙幣鑑別装置100の製造工程において、紙幣鑑別装置100を外部コンピュータと通信可能に接続し、当該外部コンピュータが図4に示す各機能の一部(例えば、後述の白基準データ生成部107)を実現してもよい。以上の場合、紙幣鑑別装置100および外部コンピュータの組合せが本発明の「紙葉鑑別装置」に相当し得る。
【0048】
図4に示す通り、紙幣鑑別装置100は、搬送制御部101、センサ部102、センサ制御部103、画像データ生成部104、白基準データ記憶部105、補正部106および白基準データ生成部107を具備する。搬送制御部101は、上述の搬送装置5を制御する。例えば、挿入口3aに紙幣が挿入されると、搬送制御部101は、当該紙幣が搬送方向へ移動する様に、搬送装置5の搬送部5a(搬送ベルト等)を回転させる駆動信号を出力する。
【0049】
センサ部102は、上述の第1画像センサ6aおよび第2画像センサ6bを含んで構成される。また、センサ制御部103は、第1画像センサ6aの発光素子Gaを点灯制御する。例えば、センサ制御部103は、上述の領域Rを紙幣が通過する期間(以下「撮影期間」という)において発光素子Gaを点灯させる。また、センサ制御部103は、撮影期間の各時点において各画素Gbに入射した検知光(紙幣を透過した検知光)の階調を示す信号を、後述の画像データ生成部104へ入力する。
【0050】
本実施形態のセンサ制御部103は、紙幣鑑別装置Hの製造過程で白基準データを生成する期間(以下「生成期間」という)において発光素子Gaを点灯させる。また、センサ制御部103は、以上の生成期間の各時点において各画素Gbに入射した検知光(白基準シート10aを透過した検知光)の階調を示す信号を、後述の白基準データ生成部107へ入力する。
【0051】
画像データ生成部104は、挿入口3aに挿入された紙幣の画像を示す画像データを生成する。具体的には、上述の領域Rを紙幣が通過する撮影期間の各時点において、各画素Gbに入射した検知光(紙幣を透過した検知光)の階調を示す信号が画像データ生成部104へ入力される。画像データ生成部104は、以上の信号から当該紙幣を示す画像データを生成する。
【0052】
白基準データ記憶部105は、画像データ生成部104が生成した画像データのシェーディング補正に用いる白基準データを記憶する。以上の白基準データは、後述の白基準データ生成部107により生成される。
【0053】
補正部106は、上述の白基準データを用いて、画像データ生成部104が生成した画像データのシェーディング補正をする。なお、紙幣鑑別装置100において、シェーディング補正に先行して、画像データの黒補正処理が実行される。具体的には、紙幣鑑別装置100は、画像センサ(6a、6b)の発光素子Gaが消灯する期間において、画素Gbから取得される暗電流成分を記憶する。また、紙幣鑑別装置100は、画像データが生成された場合、当該画像データから上述の暗電流成分を減算する。
【0054】
白基準データ生成部107は、調整位置決定部108および調整部109を含んで構成され、白基準データ記憶部105に記憶される白基準データを生成する。上述した通り、白基準データ生成部107には、紙幣鑑別装置100の製造過程で白基準データが生成される生成期間において、各画素Gbに入射した検知光(白基準シート10aを透過した検知光)の階調を示す信号が上述のセンサ部102から入力される。白基準データ生成部107は、以上の信号から調整前白基準データ(後述の図5(b)参照)を生成する。
【0055】
調整前白基準データは、生成期間において入射した検知光の階調を画素Gb毎に特定可能なデータである。白基準データ生成部107の調整位置決定部108は、走査軸方向に配列された画素Gbのうちから調整前白基準データを調整する画素Gbを決定する。詳細には後述するが、調整位置決定部108は、白基準部材10のガード部材10bと対向する画素Gbを決定可能である。
【0056】
白基準データ生成部107の調整部109は、調整位置決定部108が決定した画素Gbの調整前白基準データを予め定められた所定値(後述の「平均階調Iave」)に調整する。白基準データ生成部107は、調整部109により調整された白基準データを白基準データ記憶部105に記憶させる。
【0057】
図5(a)および図5(b)は、調整前白基準データを説明するための図である。図5(a)は、上述の図2(b)と同様に、図1(a)に示すB−B断面図である。ただし、図5(a)では、紙幣鑑別装置100の各構成のうち第1画像センサ6a、第2画像センサ6b、下部カバー7および上部トレイ8を抜粋して示す。また、図5(a)には、発光素子Gaから照射された検知光の光路を破線の矢印で示す。
【0058】
図5(a)の具体例では、白基準部材10(白基準シート10a、ガード部材10b)が搬送路4の領域Rに配置された場合を想定する。上述した通り、白基準部材10を搬送路4に載置した場合、当該白基準部材10のガード部材10bの長手方向両端部10b`が搬送路4の側壁(7a、7b)の近傍に位置する。
【0059】
図5(a)に示す通り、第1画像センサ6a(発光素子Ga)から照射された検知光のうち白基準シート10aの長手方向両端部10b`に照射された検知光は、白基準シート10aを透過して第2画像センサ6b(画素Gb)に入射する。一方、第1画像センサ6aから照射された検知光のうちガード部材10bの長手方向両端部10b`に照射された検知光は、第2画像センサ6b側へ透過されない。したがって、ガード部材10bの長手方向両端部10b`に照射された検知光は、第2画像センサ6bに到達しない。
【0060】
図5(b)は、調整前白基準データを説明するための図である。図5(b)には、領域R(搬送路4の側壁間の領域)のX軸上の各位置における、第2画像センサ6bに入射した検知光(透過光)の階調I(明るさ)が示される。本実施形態では、説明のため、搬送路4の右側壁面7a(領域Rの右端)のX軸上の位置を「位置Pea」と記載する。同様に、搬送路4の左側壁面7b(領域Rの左端)のX軸上の位置を「位置Peb」と記載する。
【0061】
また、右側壁面7aの近傍に位置するガード部材10bの長手方向両端部10b`と第2画像センサ6bとが対向するX軸上の領域を「領域Rx」と記載する。同様に、左側壁面7bの近傍に位置するガード部材10bと第2画像センサ6bとが対向するX軸上の領域を「領域Ry」と記載する。
【0062】
図5(b)の具体例では、右側壁面7aおよび左側壁面7bにガード部材10bが当接する場合を想定する。以上の具体例では、図5(b)に示す通り、領域Rxの右端の座標は位置Pea(右側壁面7aと共通)になる。同様に、領域Ryの左端の座標は位置Peb(左側壁面7bと共通)になる。図5(b)の具体例では、領域Rxの左端の座標は位置Pxであり、領域Ryの左端の座標は位置Pyである。
【0063】
本来、白基準データは、領域Rの全域(領域Rxおよび領域Ryを含む)に白基準シート10aを載置し、当該白基準シート10aに検知光を照射して生成される構成が好適である。図5(c)において、領域Rの全域に白基準シート10aを載置して生成された白基準データを示す。
【0064】
しかし、図5(b)および図5(c)から理解される通り、ガード部材10bが位置する領域Rxおよび領域Ryにおける階調Iは、白基準シート10aが領域Rxおよび領域Ryに位置すると仮定した場合の階調Iと相違する。以上の調整前白基準データでは、画像データに対して適切なシェーディング補正ができないという不都合が生じ得る。
【0065】
以上の事情を考慮して、本実施形態では、領域Rのうち領域Rxを含む調整領域Raにおける階調Iを調整可能とした。また、領域Rのうち領域Ryを含む調整領域Rbにおける階調Iを調整可能とした。なお、説明のため、領域Rのうち調整領域Raおよび調整領域Rb以外の領域を領域Rcと記載する場合がある。以上の領域Rcの全域には、白基準シート10aが位置する(ガード部材10bは位置しない)。
【0066】
図6(a)から図6(c)は、調整前白基準データを調整する構成を説明するための図である。図6(a)は、上述の図5(b)と同様に、調整前白基準データを示す。ただし、図6(a)の具体例では、上述した領域Rx(側壁の近傍)および調整領域Raを含む調整前白基準データの一部分を示す。
【0067】
上述した通り、調整領域Raは、ガード部材10bが位置する領域Rxを含む領域である。具体的には、図6(a)に示す通り、X軸上の位置Pea(右側壁面7a)から検索開始位置Psaまでが調整領域Raとして設定される。上述の検索開始位置Psaは、領域Rx(ガード部材10b)の左端(位置Px)より領域Rc(白基準シート10a)側に位置する。同様に、X軸上の位置Peb(左側壁面7b)から検索開始位置Psbまでが調整領域Rbとして設定される。上述の検索開始位置Psbは、領域Ryの左端(位置Py)より領域Rc(白基準シート10a)側に位置する。
【0068】
以上の通り、調整前白基準データが調整される調整領域Raは、検索開始位置Psaにより規定される。以上の検索開始位置Psaは、例えば長手方向両端部10b`のX軸方向の厚さを考慮して予め決定される。また、調整前白基準データが調整される調整領域Rbは、検索開始位置Psbにより規定される。以上の検索開始位置Psbは、例えばガード部材10bのX軸方向の厚さを考慮して予め決定される。紙幣鑑別装置100のフラッシュメモリは、以上の検索開始位置Psaおよび検索開始位置Psbを記憶する。
【0069】
図6(a)には、平均階調Iaveが示される。本実施形態では、領域Rcに位置する各画素Gbのうち、検索開始位置Psaに位置する画素Gb、および、当該画素Gbから領域Rc側に連続して配列される4個の画素Gb(合計で5個の画素Gb)の階調Iがサンプリングされる。また、当該5個の階調Iの平均値が算出され、算出結果が平均階調Iaveとして記憶される。なお、平均階調Iaveの算出方法は上述の例に限定されない。例えば、以上の5個の画素Gb以外の階調Iがサンプリングされ、当該階調Iにより平均階調Iaveが算出される構成としてもよい。
【0070】
また、図6(a)には、平均階調Iaveからズレ閾値W以内の範囲(Iave−W≦I≦Iave+W)が示される。以上の階調Iの範囲を、以下において「正常範囲」という場合がある。本実施形態のズレ閾値Wは、調整領域Raの画素Gbのうち白基準シート10aに対向する画素Gbの階調Iが正常範囲となり、領域Rxの画素Gbの階調が正常範囲から逸脱する様に予め定められる。
【0071】
本実施形態の紙幣鑑別装置100は、階調Iが正常範囲から逸脱したX軸上の位置(画素Gb)を特定する。具体的には、図6(a)に示す白色の矢印の方向(X軸方向)へ、検索開始位置Psaの階調Iから順に、当該階調Iと平均階調Iaveとの差の絶対値(以下「ズレ幅」という)がズレ閾値Wより大きいか否かが判定される。図6(a)の具体例では、位置Pxにおいて、ズレ幅がズレ閾値Wを超えたと最初に判断される。
【0072】
図6(b)は、調整後の白基準データの一部分を説明するための図である。図6(b)の具体例では、白基準データのうち領域Rx近傍の一部分が示される。また、図6(b)の具体例では、上述の図6(a)の具体例と同様に、位置Pxにおいてズレ幅がズレ閾値Wを超えたと判断された場合を想定する。以上の場合、図6(b)に示す通り、位置Pxより位置Pea(右側壁面7a)側の領域(領域Rx)の階調Iが平均階調Iaveに調整される。
【0073】
図6(c)は、調整後の白基準データの全体を説明するための図である。図6(c)の具体例では、上述の図6(b)の具体例と同様に、位置Pxにおいてズレ幅がズレ閾値Wを超えたと判断された場合を想定する。以上の場合、位置Pxより位置Pea側の領域の階調Iが平均階調Iaveに調整される。以下において、調整領域Raの階調Iが調整される平均階調Iaveを「平均階調Iave1」と記載する。
【0074】
紙幣鑑別装置100は、上述した調整領域Raと同様に、調整領域Rbの階調Iを調整する。具体的には、紙幣鑑別装置100は、検索開始位置Psbに位置する画素Gb、および、当該画素Gbから領域Rc側に連続して配列される4個の画素Gb(合計で5個の画素Gb)の階調Iをサンプリングする。また、当該5個の階調Iの平均値が算出され、算出結果が平均階調Iave2として記憶される。なお、以上の5個の画素Gb以外の階調Iにより平均階調Iave2が算出される構成としてもよい。
【0075】
その後、紙幣鑑別装置100は、検索開始位置Psbから位置Pebに向けて、各位置(画素Gb)の階調Iと平均階調Iave2との差の絶対値(ズレ幅)がズレ閾値Wより大きいか否かを判定する。図6(c)の具体例では、位置Pyにおいて、ズレ幅がズレ閾値Wを超えたと最初に判断された場合を想定する。以上の場合、紙幣鑑別装置100は、調整前白基準データにおける位置Pyから位置Pebまでの階調Iを平均階調Iave2に調整する。
【0076】
調整領域Raおよび調整領域Rbの階調Iを調整した後に、紙幣鑑別装置100は、白基準データを白基準データ記憶部105に記憶させる。以上の白基準データによれば、搬送路4の側壁(7a、7b)近傍(調整領域Ra、調整領域Rb)で撮影された紙幣の画像が適切にシェーディング補正できる。
【0077】
図7は、紙幣鑑別装置100が実行する出荷前調整処理のフローチャートである。以上の出荷前調整処理は、紙幣鑑別装置100の製造工程(出荷前)において実行される。紙幣鑑別装置100は、出荷前調整処理において調整前白基準データを調整し、調整後の白基準データを白基準データ記憶部105に記憶する。
【0078】
上述した通り、紙幣鑑別装置100は、紙幣が通過する領域Rのうち調整領域Ra(右側壁面7aの近傍)および調整領域Rb(左側壁面7bの近傍)の双方について、調整前白基準データの階調Iが調整される。紙幣鑑別装置100は、調整領域Raおよび調整領域Rbのうち調整領域Raの階調Iが調整される出荷前調整処理を実行した後に、調整領域Rbの階調Iが調整される出荷前調整処理を実行する。図7の具体例では、出荷前調整処理において、調整領域Raの階調Iが調整される場合を想定する。
【0079】
図7に示す通り、出荷前調整処理を開始すると、紙幣鑑別装置100は、調整前白基準データから5個の画素Gbの階調Iを取得する(S1)。上述した通り、例えば調整領域Raにおける画素Gbの階調Iを調整する場合、調整領域Raの左側(右側壁とは逆側)の端部である検索開始位置Psaから左側方向(X軸逆方向)に配列される5個の画素Gb(すなわち、図6(a)の領域Rcに配列される画素Gb)の階調Iが取得される。以上の各画素Gbには、白基準シート10aを透過した検知光が入射する。
【0080】
調整前白基準データから5個の画素Gbの階調Iを取得した後に、紙幣鑑別装置100は、当該画素Gbの階調Iから平均階調Iaveを算出する(S2)。その後、紙幣鑑別装置100は、各画素Gbから対象画素Gbを特定する(S3)。初回のステップS3では、上述の検索開始位置Psaに位置する画素Gbが対象画素Gbとして特定される。また、次回のステップS3では、前回のステップS3で特定された画素Gbの右隣(1個右側壁面7a側に位置する)画素が対象画素Gbに特定される。
【0081】
対象画素Gbを特定した後に、紙幣鑑別装置100は、当該対象画素Gbの階調Iについてズレ幅を算出する。具体的には、紙幣鑑別装置100は、上述のステップS2で算出した平均階調Iaveを対象画素Gbの階調Iに減算し、減算結果の絶対値を当該対象画素Gbのズレ幅として記憶する。
【0082】
対象画素Gbについてズレ幅を算出した後に、紙幣鑑別装置100は、当該ズレ幅がズレ閾値Wより大きいか否かを判定する(S5)。ズレ幅がズレ閾値Wより小さいと判断した場合(S5:NO)、紙幣鑑別装置100は、上述のステップS3に処理を戻す。その後、紙幣鑑別装置100は、ステップS3において対象画素Gbを変更しつつ、ステップS4およびステップS5を繰返し実行する。以上の構成では、搬送路4の側壁方向へ対象画素Gbを1個ずつずらしながら、各画素Gbのズレ幅がズレ閾値Wより大きいか否かが繰返し判定される。
【0083】
対象画素Gbのズレ幅がズレ閾値Wより大きいと判断した場合(S5:YES)、紙幣鑑別装置100は、当該対象画像Gbから搬送路4の側壁までの各画素について、白基準データを平均階調Iaveに調整(S6)。例えば、右側壁面7a近傍の調整領域Raの白基準データを調整する場合、対象画素Gbから右側壁面7aまでの各画素Gbの白基準データが平均階調Iaveに調整される。白基準データを調整した後に、紙幣鑑別装置Hは、出荷前調整処理を終了する。
【0084】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態を以下に説明する。なお、以下に例示する各形態において作用や機能が第1実施形態と同等である要素については、第1実施形態の説明で参照した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0085】
図8(a)は、第2実施形態における紙幣鑑別装置Hの断面図である。図8(a)は、上述の第1実施形態の図1(a)に示すB−B断面図に対応する。ただし、図8(a)では、紙幣鑑別装置100の各構成のうち第1画像センサ6a、第2画像センサ6b、下部カバー7および上部トレイ8を抜粋して示す。また、図8(a)には、発光素子Gaから照射された検知光の光路を破線の矢印で示す。
【0086】
図8(a)に示す通り、上部トレイ8にはガイド部8Lおよびガイド部8Rが設けられる。ガイド部8Rは略板状であり、搬送路4の右側壁(7a)に沿って立設される。図8(a)に示す通り、ガイド部8Rの下端は、上部トレイ8の下部カバー7との当接面(図8(a)に示すS)より搬送路4の底面側に位置する。以上のガイド部8Rの下端は、搬送路4の底面に載置された紙幣の右端近傍と当接し、当該紙幣の上側方向(Z軸方向)への移動を規制する。
【0087】
ガイド部8Lは、ガイド部8Rと同様に略板状であり、搬送路4の左側壁(7b)に沿って立設される。また、図8(a)に示す通り、ガイド部8Lの下端は、上部トレイ8における下部カバー7との当接面Sより搬送路4の底面側に位置し、搬送路4の底面に載置された紙幣の左端近傍と当接し、当該紙幣の上側方向への移動を規制する。
【0088】
仮に、ガイド部8(R、L)が設けられない対比例を想定する。以上の対比例では、紙幣の左端または右端が、上述の当接面Sまで移動する(浮き上りが生じる)場合がある。以上の場合、上部トレイ8と下部カバー7との間に紙幣の端部が侵入し、当該紙幣が搬送路4で移動不可能になり、紙幣詰りが発生する可能性が完全には排除されないという不都合がある。第2実施形態のガイド部8(R、L)によれば、上述した通り、紙幣の左右両端の浮き上りが抑制されるため、上述の不都合が抑制されるという利点がある。
【0089】
第2実施形態のガイド部8(R、L)は、紙幣の鑑別に用いる画像が撮影される領域R(上述の図5(a)参照)内に設けられる。以上の構成では、例えばガイド部8(R、L)が領域Rの外側に設けられた構成と比較して、紙幣鑑別装置Hの小型化し易いという利点がある。
【0090】
ただし、第1画像センサ6aの発光素子Gaと第2画像センサ6bの画素Gbとの間に位置する部材は、光透を透過させる必要がある。以上の事情を考慮して、上部トレイ8と同様に、ガイド部8(R、L)は光透過性の部材(例えば透明な樹脂)で形成される。
【0091】
しかし、透明なガイド部8(R、L)を領域Rに設けた場合、当該ガイド部8(R、L)により検知光が屈折するという新たな問題が生じ得る。すなわち、ガイド部8(R、L)により、検知光の光路が本来の光路からズレる問題が生じ得る。また、以上の問題が生じた場合、画像データのシェーディング補正に用いる白基準データが適当に生成されないという不都合が生じ得る。
【0092】
例えば、ガイド部8Rの直上に位置する発光素子Gaから照射された検知光は、本来、ガイド部8Rの直下に位置する画素Gbに入射すべきである。しかし、例えば図8(a)に示す様に、発光素子Gaから照射された検知光がガイド部8Rで屈折した場合、本来入射すべき画素Gbとは別の画素Gb(例えば隣接する画素Gb)に当該検知光が入射し得る。以上の場合、当該検知光が本来入射すべき画素Gbにおける白基準データ(調整前白基準データ)の階調Iは、本来の(ガイド部8Rが無い場合の)階調Iより小さくなる。一方、当該別の画素Gbにおける白基準データの階調Iは、本来の階調Iより大きくなる。
【0093】
図8(b)は、第2実施形態における調整前白基準データを説明するための図である。図8(b)には、領域R(搬送路4の側壁間の領域)のX軸上の各位置における、第2画像センサ6bに入射した検知光の階調Iが示される。
【0094】
なお、上述の第1実施形態では、白基準部材10(図3参照)に検知光を照射することで白基準データが生成された。第2実施形態では、白基準データを生成するに際して、白基準部材10が搬送路4(領域R)に載置されない。以上の第2実施形態では、白基準データを生成するに際に白基準部材10を搬送路4に載置する必要がないため、紙幣鑑別装置Hの製造過程後の期間(市場で稼働する期間)において、白基準データを定期的に生成することができる。例えば、紙幣鑑別装置Hの電源が投入される毎に、白基準データを生成することができる。
【0095】
発光素子Gaから照射された検知光の階調Iは、白基準紙(例えば、上述の白基準シート10a)を透過した場合、白基準紙を透過しなかった場合の約1/10になる。以上の事情を考慮して、第2実施形態では、各画素Gbの階調を1/10にした白基準データが白基準データ記憶部105に記憶される。
【0096】
図8(b)に示す通り、第2実施形態では、上述の第1実施形態と同様に、搬送路4の右側壁面7a(領域Rの右端)のX軸上の位置を「位置Pea」と記載する。また、搬送路4の左側壁面7b(領域Rの左端)のX軸上の位置を「位置Peb」と記載する。
【0097】
また、第2実施形態では、上述の第1実施形態と同様に、搬送路4の右側壁近傍の調整領域Raおよび左側壁近傍の調整領域Rbの画素Gbの補正前白基準データが調整される。具体的には、平均階調Iaveと階調Iとの差の絶対値(ズレ幅)がズレ閾値Wより大きい画素Gbについて、当該画素Gbの階調Iが平均階調Iaveに調整される。
【0098】
図8(b)の具体例では、領域Rの中央から位置Pea(右側壁)の方向へ見た場合、位置Pxの画素Gbのズレ幅が最初にズレ閾値Wより大きくなる。以上の具体例では、位置Pxから位置Peaまでの調整前白基準データが平均階調Iaveに調整される。同様に、領域Rの中央から位置Peb(左側壁)の方向へ見た場合、位置Pyの画素Gbのズレ幅が最初にズレ閾値Wより大きくなる。以上の具体例では、位置Pyから位置Pebまでの調整前白基準データが平均階調Iaveに調整される。
【0099】
図8(c)は、第2実施形態における調整領域Raを説明するための図である。図8(c)は、上述の図8(b)と同様に、調整前白基準データを示す。ただし、図8(c)の具体例では、調整領域Raを含む調整前白基準データの一部分を示す。
【0100】
図8(c)に示す通り、調整領域Raは、上述の第1実施形態と同様に、位置Psaから位置Pea(右側壁)までの予め定められた領域である。以上の位置Psaは、ガイド部8Rの形状および屈折率(検知光の屈折が影響する範囲)を考慮して予め設定される。同様に、調整領域Rbは、上述の第1実施形態と同様に、位置Psbから位置Peb(左側壁)までの予め定められた領域である。以上の位置Psbは、ガイド部8Lの形状および屈折率を考慮して予め設定される。
【0101】
図8(d)は、上述の図8(c)の具体例において、調整領域Raの階調Iが調整された白基準データを示す図である。図8(d)の具体例では、位置Pxから位置Peaまでの階調Iが平均階調Iaveに調整された場合を想定する。なお、調整領域Rbの階調Iは、調整領域Raと同様な方法により調整される。紙幣鑑別装置Hは、調整領域Raおよび調整領域Rbの階調Iが調整された調整前白基準データの全領域の階調Iを1/10倍し、白基準データとして記憶する。
【0102】
以上の第2実施形態においても、上述の第1実施形態と同様な効果が奏せられる。なお、ガイド部(8R、8L)を設ける位置は適宜に変更できる。例えば、下部カバー7の上面7dにガイド部が設けられる構成としてもよい。また、第2実施形態では、ガイド部を搬送路4の側壁近傍に設けたが、搬送路4の中央付近に設けてもよい。以上の場合、中央付近に設けられたガイド部が含まれる領域が調整領域に設定され、当該調整領域に位置する画素Gbの白基準データが調整される。
【0103】
<第3実施形態>
上述の第1実施形態では、白基準部材10(図3(a)参照)を搬送路4の領域Rに載置した状態で得られた調整前白基準データから、シェーディング補正で実際に使用する白基準データを決定した。また、第2実施形態では、白基準部材10を搬送路4の領域Rに載置しない状態で得られた(発光素子Gaから画素Gbへ検知光を直接照射することにより得られた)調整前白基準データから白基準データを決定した。
【0104】
以下、説明のため、白基準部材10を載置した状態で得られた調整前白基準データを「第1調整前データ」と記載する場合がある。また、白基準部材10を載置しない状態で得られた調整前白基準データを「第2調整前データ」と記載する場合がある。詳細には後述するが、第3実施形態では、第1調整前データおよび第2調整前データの双方を用いて、白基準データD(後述の図9(c)参照)が決定される。
【0105】
図9(a)から図9(c)は、第3実施形態を説明するための図である。第3実施形態の紙幣鑑別装置100は、上述の第1実施形態と同様に、紙幣が通過する領域R(RxおよびRyを含む)を具備する。上述した通り、領域Rのうち領域Rxは、右側壁面7a近傍の領域である。また、領域Rのうち領域Ryは、左側壁面7b近傍の領域である。以下、説明のため、領域Rxおよび領域Ry以外の領域Rを「領域Rz」と記載する。以上の領域Rzは、領域Rの中央を含む領域である。
【0106】
第3実施形態の紙幣鑑別装置100には、N個の画素Gが設けられる。具体的には、左側壁面7bから右側壁面7aへ向けて、画素G1、画素G2…画素GNの順にN個の画素Gが一列に設けられる。例えば、N個の画素Gのうち、画素G1から画素Gnのn個の画素Gが領域Ryに設けられる。また、画素G(n+1)から画素G(N−n)のN−2n個の画素Gが領域Rzに設けられ、画素G(N−n+1)から画素GNのn個の画素Gが領域Rxに設けられる。なお、第3実施形態において、左側壁面7bから見てi番目の画素Gを「画素Gi」と記載する場合がある(1≦i≦N)。
【0107】
図9(a)は、第1調整前データを説明するための図である。第1調整前データは、上述の第1実施形態の図5(b)に示した調整前白基準データと略同じである。
【0108】
具体的には、領域Rのうち領域Rzの画素G(n+1)から画素G(N−n)は、白基準部材10の白基準シート10aと対向する。したがって、領域Rzにおける各画素Gの第1調整前データの階調(以下「階調Ia」と記載する場合がある)は白基準データとして採用され得る。一方、領域Rのうち領域Ryの画素G1から画素Gnは、白基準部材10のガード部材10bと対向する。したがって、領域Ryにおける階調Iaは白基準データとして適当ではない。領域Rのうち領域Rxにおける階調Iaについても、領域Ryにおける階調Iaと同様に、白基準データとして適当ではない。
【0109】
図9(b)は、第2調整前データを説明するための図である。第2調整前データは、上述の第2実施形態の図8(b)に示した調整前白基準データと略同じである。ただし、第3実施形態では、予め定められた階調(以下「上限階調Im」)より強い検知光が画素Gへ照射されたとしても、当該画素Gの第2調整前データは上限階調Imになる。
【0110】
図9(b)に示す通り、領域Rのうち領域Rzにおける第2調整前データは上限階調Imになる。一方、領域Rのうち領域Rxおよび領域Ryでは、上述した通り、ガイド部8により検知光が屈折する。したがって、領域Rxおよび領域Ryにおける各画素Gの第2調整前データの階調(以下「階調Ib」と記載する場合がある)は、図9(b)に示す通り、上限階調Imにならない場合がある。
【0111】
以上の構成では、実際の検知光の階調が上限階調Imより強い場合、領域Rzにおける第2調整前データは、実際の検知光の階調と相違する。一方、領域Rzにおける第1調整前データは、実際の検知光の階調を示す。したがって、領域Rzの各画素Gの階調は、第2調整前データから得られる白基準データで補正されるより、第1調整前データから得られる白基準データで補正されるのが望ましい。
【0112】
また、上述した通り、領域Rxおよび領域Ryにおける第1調整前データは、白基準データとして適当ではない。したがって、領域Rxおよび領域Ryの各画素Gの階調は、第1調整前データから得られる白基準データで補正されるより、第2調整前データから得られる白基準データで補正されるのが望ましい。なお、領域Rxおよび領域Ryの各画素Gの階調を第2調整前データから得られる白基準データで補正することにより、紙幣と対向しない画素Gの階調が上限階調Imに補正され、紙幣と対向しない画素Gの階調が上限階調Im未満に補正される。したがって、紙幣の外縁が検知し易くなるという利点がある。
【0113】
以上の事情を考慮して、第3実施形態の白基準データは、領域Rzの各画素Gの階調を補正する白基準データは第1調整前データから決定され、領域Rxおよび領域Ryの各画素Gの階調を補正する白基準データは第2調整前データから決定される構成を採用した。
【0114】
図9(c)は、第3実施形態における白基準データDの概念図である。白基準データDは、N個の補正値dを含んで構成される。各補正値dは、各画素Gの何れかに対応する。以下、画素Giに対応する補正値dを「補正値di」と記載する。画素Giの補正前の階調を実測階調Ivi(1≦i≦N)とすると、シェーディング補正後の当該画素Giの階調(以下「補正階調Ici」と記載する)は、実測階調Iviに補正値diを乗算することで求められる(Ici=Ivi×di)。
【0115】
以上の各補正値dは、第1調整前データ(図9(a)参照)から決定される補正値dと、第2調整前データ(図9(b)参照)から決定される補正値dとを含む。以上の構成は、白基準データDは、白基準部材10に検知光を照射することにより得られた補正値d(第1補正値)と、白基準部材10を透過していない検知光を画素G(受光手段)に照射することにより得られた補正値d(第2補正値)とを含んで構成されるとも換言される。
【0116】
例えば、第2調整前データのうち、領域Ryの画素G1の階調Ia1からは、補正値d1が決定される。同様に、第2調整前データのうち、領域Ryの画素G2から画素Gnの各階調Ia(Ia2〜Ian)からは、補正値d2から補正値dnが決定される。また、第2調整前データのうち、領域Rxの画素G(N−n+1)の階調Ia(N−n+1)からは、補正値d(N−n+1)が決定される。同様に、第2調整前データのうち、領域Rxの画素G(N−n+2)から画素GNの各階調Ia(Ia(N−n+2)〜IaN)からは、補正値d(N−n+2)から補正値dNが決定される。
【0117】
以上の説明から理解される通り、領域Rxおよび領域Ryの各画素Gに対応する補正値dは、第2調整前データから決定される。具体的には、領域Rxおよび領域Ryの各画素Gに対応する補正値diは(1≦i≦n,N−n≦i≦Nの場合)、第2調整前データの階調Ibiを上限階調Imに除算することで求められる(di=Im/Ibi)。
【0118】
一方、領域Rzの各画素Gに対応する補正値dは、第1調整前データから決定される。具体的には、第1調整前データのうち、領域Rzの画素G(n+1)の階調Ia(n+1)からは、補正値d(n+1)が決定される。同様に、第1調整前データのうち、領域Rzの画素G(n+2)から画素G(N−n)の各階調Ia(Ia(n+2)〜Ia(N−n))からは、補正値d(n+2)から補正値d(N−n)が決定される。具体的には、白色となる階調Iを白色階調Iwとすると、領域Rzの各画素Gに対応する補正値diは(n+1≦i≦N−n−1の場合)、第1調整前データの階調Iaiを白色階調Iwに除算することで求められる(di=Iw/Iai)。
【0119】
なお、第1調整前データから補正値dが決定される画素G、および、第2調整前データから補正値dが決定される画素Gは適宜に変更できる。例えば、領域Rzより広い領域の画素Gの補正値が、第1調整前データから決定される構成としてもよい。
【0120】
本発明の紙葉鑑別装置は、例えば以下の紙葉鑑別装置である。
【0121】
本発明の紙葉鑑別装置(100)は、搬送路(4)に沿って紙葉を移動させる搬送手段(搬送制御部101)と、移動中の紙葉の一面へ検知光を照射する発光手段(発光素子Ga)と、移動中の紙葉の他面と対向する位置に配置されて紙葉を通過してきた検知光を受光すると共に、紙葉の移動方向(Y軸方向)と直交する幅方向(X軸方向、走査軸方向)に沿って複数配置された受光手段(画素Gb)と、受光手段に入射した検知光に応じた階調の画像データを生成する画像データ生成手段(画像データ生成部104)と、画像データをシェーディング補正するのに用いる白基準部材(10)に検知光を照射することにより得られた白基準データを記憶する白基準データ記憶手段(白基準データ記憶部105)と、搬送路の幅方向端部に位置し、当該搬送路の側壁を形成する移動規制手段(右側壁面7a、左側壁面7b)と、受光手段の幅方向位置が予め定められた特定領域(調整領域Ra、調整領域Rb)内であること条件に、当該受光手段の画像データをシェーディング補正するための白基準データを、所定値(平均階調Iave)に調整する調整手段(調整部109)と、を具備する。以上の構成によれば、紙葉の画像が適当にシェーディング補正される。
【0122】
本発明の好適な態様として、特定領域は、移動規制手段までの幅方向上の距離が所定距離(図5のPsaからPeaまでの距離、または、PsbからPebまでの距離)以下の領域であることを特徴とする。また、本発明の好適な他の態様として、発光手段と受光手段との間に設けられ、紙葉の一面または他面に当接するとともに、光を透過する部材で形成される当接手段(ガイド部)を具備し、当接手段の幅方向上の位置は、特定領域に位置する。
【符号の説明】
【0123】
1…下部ユニット、10…白基準部材、10a…白基準シート、10b…ガード部材、2…上部ユニット、3a…挿入口、3b…取込口、4…搬送路、5…搬送装置、5a…下側搬送部材、5a…搬送部、5b…上側搬送部材、6a…第1画像センサ、6b…第2画像センサ、6c…磁気センサ、7…下部カバー、7a…右側壁面、7a…個右側壁面、7b…左側壁面、7c…凹所、7d…上面、8…ガイド部、8…上部トレイ、8L…ガイド部、8R…ガイド部、8a…凹所、8b…下面、9…反射用白基準片、100…紙幣鑑別装置、101…搬送制御部、102…センサ部、103…センサ制御部、104…画像データ生成部、105…白基準データ記憶部、106…補正部、107…白基準データ生成部、108…調整位置決定部、109…調整部、10b`…長手方向両端部。
図1
図2
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