特許第6823764号(P6823764)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6823764
(24)【登録日】2021年1月14日
(45)【発行日】2021年2月3日
(54)【発明の名称】魚雷防御システム
(51)【国際特許分類】
   B63G 9/04 20060101AFI20210121BHJP
   F41H 11/02 20060101ALI20210121BHJP
【FI】
   B63G9/04
   F41H11/02
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2020-69441(P2020-69441)
(22)【出願日】2020年4月7日
【審査請求日】2020年4月8日
(31)【優先権主張番号】特願2019-211907(P2019-211907)
(32)【優先日】2019年11月25日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590004187
【氏名又は名称】福永 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100136146
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 明生
(72)【発明者】
【氏名】福永 幹夫
【審査官】 福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第102087083(CN,A)
【文献】 韓国登録実用新案第20−0378614(KR,Y1)
【文献】 韓国登録特許第10−1418108(KR,B1)
【文献】 韓国公開特許第10−2006−0054672(KR,A)
【文献】 韓国登録特許第10−1430996(KR,B1)
【文献】 中国特許出願公開第101226043(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63G 9/04
F41H 11/02 − 11/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
網と、
前記網に取り付けられた複数の機雷と、
前記網に取り付けられ、水の流れを生じ推進力を発生させる推進力発生手段と移動の方向を転換する方向転換手段とを有し水中を自由な方向に移動する複数の移動装置と
を備える魚雷防御システム。
【請求項2】
前記複数の移動装置は、互いに水中を移動するときの水深が異なる2つの移動装置を含む
請求項1に記載の魚雷防御システム。
【請求項3】
前記2つの移動装置のうち水深が浅い移動装置の水中の重さが、水深が深い移動装置の水中の重さよりも軽い
請求項2に記載の魚雷防御システム。
【請求項4】
前記複数の移動装置の各々は、移動方向を制御する移動方向制御部を備え、
前記複数の移動装置のうちの少なくとも1の移動装置の各々は、外部の装置から移動方向を指示する移動指示信号を受信する受信部を備え、
前記少なくとも1の移動装置の各々の前記移動方向制御部は、当該移動装置の前記受信部が受信した移動指示信号に従い当該移動装置の移動方向を制御する
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の魚雷防御システム。
【請求項5】
前記外部の装置を備え、
前記外部の装置は、魚雷の位置を特定する魚雷位置特定部と、
前記魚雷位置特定部が特定した魚雷の位置に基づき前記少なくとも1の移動装置の各々の移動方向を決定する移動方向決定部と、
前記少なくとも1の移動装置の各々に関し、前記移動方向決定部が決定した移動方向を指示する移動指示信号を当該移動装置に送信する送信部と
を備える
請求項4に記載の魚雷防御システム。
【請求項6】
前記複数の移動装置の各々は、移動速度を制御する移動速度制御部を備え、
前記移動指示信号は移動方向に加え移動速度を指示し、
前記少なくとも1の移動装置の各々の前記移動速度制御部は、当該移動装置の前記受信部が受信した移動指示信号に従い当該移動装置の移動速度を制御する
請求項4又は5に記載の魚雷防御システム。
【請求項7】
前記少なくとも1の移動装置の各々は、前記複数の移動装置のうち自装置と異なるいずれかの移動装置に前記移動指示信号を送信する
請求項4乃至6のいずれか1項に記載の魚雷防御システム。
【請求項8】
前記少なくとも1の移動装置の各々は、前記移動指示信号の送信先の移動装置に通信ケーブルにより前記移動指示信号を送信する
請求項7に記載の魚雷防御システム。
【請求項9】
前記少なくとも1の移動装置の各々は、前記移動指示信号の送信先の移動装置に光又は電波により前記移動指示信号を送信する
請求項7に記載の魚雷防御システム。
【請求項10】
前記複数の移動装置のうち前記少なくとも1の移動装置以外の移動装置の各々は、
前記複数の移動装置のうち自装置と異なる移動装置と自装置との相対位置を特定する相対位置特定部と、
前記相対位置特定部が特定した相対位置に基づき移動方向を決定する移動方向決定部と
を備え、
前記少なくとも1の移動装置以外の移動装置の各々の前記移動方向制御部は、当該移動装置の前記移動方向決定部が決定した移動方向に移動するように当該移動装置の移動方向を制御する
請求項4乃至9のいずれか1項に記載の魚雷防御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚雷の攻撃対象を魚雷から防御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶等の海洋移動体や水上発電所等の海洋構造物は、紛争時等に魚雷の攻撃対象となり得る。そこで、魚雷の攻撃対象を魚雷から防御する技術が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、複数の機雷が格子点に取り付けられた矩形の網と、当該網の一辺の両端に取り付けられた2個の移動体を備える魚雷防御装置が提案されている。特許文献1に記載の魚雷防御装置が備える移動体は浮体と推進部と方向制御部を備え、外部のサーバ装置の制御下で、水上に浮いた状態で推進部が発生する推力により、方向制御部により制御される方向に移動しながら網を魚雷の移動経路を塞ぐ位置に移動させる。その結果、魚雷を高い確率で捕捉し、魚雷が攻撃対象に達する前に機雷によって魚雷を爆破する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】韓国登録実用新案第20−0378614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の魚雷防御装置は、水上に浮く移動体により水中の網が移動されるため、網の下方部分は移動体より遅れて移動する。従って、網の下方部分の移動が間に合わず、魚雷をしっかりと捕捉できない場合がある。
【0006】
上記の課題に鑑みて、本発明は、従来技術と比較し、魚雷の攻撃対象を魚雷からより高い確率で防御する手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
網と、
前記網に取り付けられた複数の機雷と、前記網に取り付けられ、水の流れを生じ推進力を発生させる推進力発生手段と移動の方向を転換する方向転換手段とを有し水中を自由な方向に移動する複数の移動装置とを備える魚雷防御システムを第1の態様として提案する。
【0008】
第1の態様に係る魚雷防御システムによれば、水中で網が迅速に移動できるので、従来技術と比較し、魚雷の攻撃対象を魚雷からより高い確率で防御できる。
【0009】
第1の態様に係る魚雷防御システムにおいて、前記複数の移動装置は、互いに水中を移動するときの水深が異なる2つの移動装置を含む、という構成が第2の態様として採用されてもよい。
【0010】
第2の態様に係る魚雷防御システムによれば、水中で網を迅速に上下方向に広げることができる。
【0011】
第2の態様に係る魚雷防御システムにおいて、前記2つの移動装置のうち水深が浅い移動装置の水中の重さが、水深が深い移動装置の水中の重さよりも軽い、という構成が第3の態様として採用されてもよい。
【0012】
第3の態様に係る魚雷防御システムによれば、水深に応じた移動装置の重さの差により、水中で網が迅速に上下方向に広がる。
【0013】
第1乃至第3のいずれかの態様に係る魚雷防御システムにおいて、前記複数の移動装置の各々は、移動方向を制御する移動方向制御部を備え、前記複数の移動装置のうちの少なくとも1の移動装置の各々は、外部の装置から移動方向を指示する移動指示信号を受信する受信部を備え、前記少なくとも1の移動装置の各々の前記移動方向制御部は、当該移動装置の前記受信部が受信した移動指示信号に従い当該移動装置の移動方向を制御する、という構成が第4の態様として採用されてもよい。
【0014】
第4の態様に係る魚雷防御システムによれば、外部の装置から攻撃対象に向かう魚雷の移動経路を塞ぐ位置への移動方向を指示する移動指示信号を受信することで、魚雷の移動方向を塞ぐ位置へ網を移動することができる。
【0015】
第4の態様に係る魚雷防御システムにおいて、前記外部の装置を備え、前記外部の装置は、魚雷の位置を特定する魚雷位置特定部と、前記魚雷位置特定部が特定した魚雷の位置に基づき前記少なくとも1の移動装置の各々の移動方向を決定する移動方向決定部と、前記少なくとも1の移動装置の各々に関し、前記移動方向決定部が決定した移動方向を指示する移動指示信号を当該移動装置に送信する送信部とを備える、という構成が第5の態様として採用されてもよい。
【0016】
第5の態様に係る魚雷防御システムによれば、魚雷の移動方向を塞ぐ位置へ網を移動することができる。
【0017】
第4又は第5の態様に係る魚雷防御システムにおいて、前記複数の移動装置の各々は、移動速度を制御する移動速度制御部を備え、前記移動指示信号は移動方向に加え移動速度を指示し、前記少なくとも1の移動装置の各々の前記移動速度制御部は、当該移動装置の前記受信部が受信した移動指示信号に従い当該移動装置の移動速度を制御する、という構成が第6の態様として採用されてもよい。
【0018】
第6の態様に係る魚雷防御システムによれば、移動速度が制御されない場合と比較し、より迅速に網を広げることができる。
【0019】
第4乃至第6のいずれかの態様に係る魚雷防御システムにおいて、前記少なくとも1の移動装置の各々は、前記複数の移動装置のうち自装置と異なるいずれかの移動装置に前記移動指示信号を送信する、という構成が第7の態様として採用されてもよい。
【0020】
第7の態様に係る魚雷防御システムによれば、複数の移動装置の必ずしも全てが外部の装置から移動指示信号を受信しなくてもよい。
【0021】
第7の態様に係る魚雷防御システムにおいて、前記少なくとも1の移動装置の各々は、前記移動指示信号の送信先の移動装置に通信ケーブルにより前記移動指示信号を送信する、という構成が第8の態様として採用されてもよい。
【0022】
第8の態様に係る魚雷防御システムによれば、通信ケーブルにより高速に移動指示信号の送受信が行われる。
【0023】
第7の態様に係る魚雷防御システムにおいて、前記少なくとも1の移動装置の各々は、前記移動指示信号の送信先の移動装置に光又は電波により前記移動指示信号を送信する、という構成が第9の態様として採用されてもよい。
【0024】
第9の態様に係る魚雷防御システムによれば、通信ケーブルの配線を要さない。
【0025】
第4乃至第9のいずれかの態様に係る魚雷防御システムにおいて、前記複数の移動装置のうち前記少なくとも1の移動装置以外の移動装置の各々は、前記複数の移動装置のうち自装置と異なる移動装置と自装置との相対位置を特定する相対位置特定部と、前記相対位置特定部が特定した相対位置に基づき移動方向を決定する移動方向決定部とを備え、前記少なくとも1の移動装置以外の移動装置の各々の前記移動方向制御部は、当該移動装置の前記移動方向決定部が決定した移動方向に移動するように当該移動装置の移動方向を制御する、という構成が第10の態様として採用されてもよい。
【0026】
第10の態様に係る魚雷防御システムによれば、一部の移動装置が他の移動装置と自装置の相対位置に基づき網を広げる方向に移動することで、網が迅速に広がる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】一実施形態に係る魚雷防御システムの全体構成を示した図である。
図2】一実施形態に係る移動装置の構成を模式的に示した図である。
図3】一実施形態に係る射出装置の外観を模式的に示した図である。
図4A】一実施形態に係る射出装置の射出筒から移動装置が射出される様子を模式的に示した図である。
図4B】一実施形態に係る射出装置の射出筒から移動装置が射出される様子を模式的に示した図である。
図5A】一実施形態に係る制御装置が移動装置の各々に応じた移動指示信号を生成する方法を説明するための図である。
図5B】一実施形態に係る制御装置が移動装置の各々に応じた移動指示信号を生成する方法を説明するための図である。
図5C】一実施形態に係る制御装置が移動装置の各々に応じた移動指示信号を生成する方法を説明するための図である。
図5D】一実施形態に係る制御装置が移動装置の各々に応じた移動指示信号を生成する方法を説明するための図である。
図6】一実施形態に係る制御装置の機能構成を模式的に示した図である。
図7】一実施形態に係る移動装置の機能構成を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[実施形態]
図1は本発明の一実施形態に係る魚雷防御システム1の全体構成を示した図である。魚雷防御システム1は網11と、網11の中央の格子点に取り付けられた移動装置12Mと、網11の中央ではない格子点のうちのいくつか(図1の例では8個)に取り付けられた複数の移動装置12Sと、網11の格子点のうち移動装置12M及び移動装置12Sのいずれも取り付けられていない格子点に取り付けられた複数の機雷13と、図示せぬ船舶内に配置された制御装置14と、ソナー15と、射出装置16を備える。
【0029】
以下、1つの移動装置12Mと複数の移動装置12Sを互いに区別しない場合、それらを移動装置12と総称する。
【0030】
網11は船舶を攻撃対象とする魚雷を捕捉するための網である。
【0031】
移動装置12はバッテリ、バッテリが供給する電力で運転する複数のモータ、モータにより回転するスクリュー、モータにより移動装置12の本体に対する角度が変わる上下用舵及び左右用舵を備え、水中を自由な方向に移動できる。
【0032】
移動装置12Mは水中でデータ通信を行うための光通信ユニットを備え、制御装置14から移動装置12の各々の移動方向及び移動速度を指示する移動指示信号を受信する。制御装置14も移動装置12Mとデータ通信を行うための光通信ユニットを備えている。
【0033】
移動装置12M及び制御装置14が備える光通信ユニットは、例えば450nmの光を発光及び受光して水中で相互にデータ通信を行うユニットである。移動装置12M及び制御装置14が備える光通信ユニットとしては、例えば、株式会社東洋テクニカ(東京都中央区)により製造されている水中光学通信モデムBlueCommシリーズ、株式会社島津製作所(京都府京都市)により製造されている水中光無線通信装置MC100等が利用可能である。なお、制御装置14が備える光通信ユニットは、船体外部の水中に取り付けられている。
【0034】
移動装置12Mと移動装置12Sの各々とは通信ケーブルにより互いに接続されている。通信ケーブルは、例えば、網11を構成する綱に沿うように取り付けられている。移動装置12Mは制御装置14から移動装置12の各々に関する移動指示信号を受信すると、移動装置12Sの各々に、それらの移動装置12Sの各々に応じた移動指示信号を通信ケーブルを介して送信する。
【0035】
移動装置12Mは、制御装置14から直接受信した自装置用の移動指示信号が指示する移動方向に、当該移動指示信号が指示する移動速度で移動する。移動装置12Sの各々は、制御装置14から移動装置12Mを介して受信した自装置用の移動指示信号が指示する移動方向に、当該移動指示信号が指示する移動速度で移動する。
【0036】
移動装置12の水中の重さは、浮体により、水深が浅いもの程、軽くなるように調整されている。例えば、図1の9つの移動装置12のうち、上段の3つの移動装置12は水より軽く、外力が加えられない状態では、水面に向かい浮こうとする。また、中段の3つの移動装置12は水とほぼ同じ重さで、外力が加えられない状態では、水中で浮遊する。また、下段の3つの移動装置12は水より重く、外力が加えられない状態では、水底に向かい沈もうとする。移動装置12の水中の重さが水深に応じて調整されている結果、移動装置12は水中で網11を速やかに上下に広げることができる。
【0037】
機雷13は網11が魚雷を捕捉した際に自ら爆発して魚雷を破壊するための機雷である。機雷13の各々は、コンピュータと、制御装置14が備える光通信ユニットと同種の光通信ユニットと、加速度計を備える。本願において、コンピュータは、メモリと、メモリに記憶されたプログラムに従いデータ処理を行うプロセッサと、プロセッサの制御下で外部の装置との間でデータの入出力を行うインタフェースとを備える。機雷13が備えるコンピュータは、光通信ユニットを介して制御装置14からモード切替信号を受信する。モード切替信号は、機雷13の動作モードを、起爆停止モードと起爆待機モードの間で切り替えることを指示する信号である。起爆停止モードは加速度計が所定の閾値以上の加速度を測定した場合であっても起爆しないモードである。起爆待機モードは加速度計が所定の閾値以上の加速度を測定した場合、起爆するモードである。
【0038】
機雷13のコンピュータは、制御装置14から、起爆停止モードから起爆待機モードへの切替を指示するモード切替信号を受信すると、所定時間(例えば、10秒)が経過した後、機雷13の動作モードを起爆待機モードに切り替える。また、機雷13のコンピュータは、制御装置14から、起爆待機モードから起爆停止モードへの切替を指示するモード切替信号を受信すると、速やかに、機雷13の動作モードを起爆停止モードに切り替える。
【0039】
以下、網11と網11に取り付けられた移動装置12及び機雷13を魚雷捕捉装置10と呼ぶ。
【0040】
制御装置14(外部の装置の一例)は、ソナー15が生成する画像に基づき魚雷を検知し、検知した魚雷の位置の経時変化に基づき魚雷の移動経路を特定し、魚雷の移動経路上に船舶がある場合、その移動経路を塞ぐ位置に魚雷捕捉装置10を射出するように射出装置16に指示する。同時に、制御装置14は機雷13に対し、起爆停止モードから起爆待機モードへの切替を指示するモード切替信号を送信する。
【0041】
また、制御装置14は、射出装置16により魚雷捕捉装置10が射出された後、ソナー15が生成する画像に基づき移動装置12の各々の位置を特定し、移動装置12Mが魚雷の移動経路上となり、移動装置12Sが移動装置12Mを中心に最大限に広がるように、移動装置12の各々の移動方向と移動速度を決定する。制御装置14は移動装置12の各々に関し、決定した移動方向に決定した移動速度で移動するように指示する移動指示信号を生成し、移動装置12Mに送信する。
【0042】
ソナー15は超音波を水中に発し、その反射波を受波して、水中の物体を表す画像を生成する。ソナー15の種類は、サーチライトソナー、スキャニングソナー等のいずれであってもよい。
【0043】
射出装置16は移動装置12の各々に応じた射出筒を備え、制御装置14の指示に従い、射出筒から複数の移動装置12を一斉に水中に射出する。
【0044】
図2は、移動装置12の構成を模式的に示した図である。移動装置12は、全体として弾丸形状のケース121と、ケース121に固定されたバッテリ122と、ケース121に固定されバッテリ122から供給される電力で運転するモータ123と、モータ123により図2のX軸周りに回転駆動されるスクリュー124を備える。
【0045】
ケース121のヘッド側とテイル側には複数の開口部が設けられている。スクリュー124が回転すると、ケース121のヘッド側の開口部から流入し、ケース121内を通過し、ケース121のテイル側の開口部から流出する水の流れが生じる。この水の流れにより、移動装置12はヘッド側へ移動する。
【0046】
また、移動装置12は、ケース121に固定されバッテリ122から供給される電力で運転するモータ125と、モータ125により図2のZ軸周りに所定の角度範囲内で往復移動する左右方向転換用の舵126と、ケース121に固定されバッテリ122から供給される電力で運転するモータ127と、モータ127により図2のY軸周りに所定の角度範囲内で往復移動する上下方向転換用の舵128と、図示せぬコンピュータと通信ユニットを備えている。
【0047】
移動装置12が備えるコンピュータは、プログラムに従うデータ処理により、移動装置12が備える他の装置(モータ123等)の動作を制御する。移動装置12Mが備える通信ユニットは、上述した光通信ユニットと、移動装置12Sとの間で通信ケーブルを介して行う有線通信ユニットの複合体である。移動装置12Sが備える通信ユニットは、移動装置12Mとの間で通信ケーブルを介して行う有線通信ユニットである。
【0048】
図3は、射出装置16の外観を模式的に示した図である。射出装置16は図示せぬコンピュータ、通信ユニット、2軸雲台及びフック駆動ユニットを備える。射出装置16のコンピュータは、通信ユニットを介して制御装置14から射出指示信号を受信すると、射出指示信号が示す方向に自装置が正対するように2軸雲台を制御する。2軸雲台がコンピュータの指示に従い射出指示信号が示す方向に射出装置16を正対させると、コンピュータはフック駆動ユニットに移動装置12を射出筒内に保持しているフックの解除を指示する。フック駆動ユニットがコンピュータの指示に従いフックを解除すると、複数の移動装置12が一斉に射出筒から水中に射出される。
【0049】
移動装置12Mを射出する射出筒の軸は射出装置16の正面方向であり、移動装置12Sを射出する射出筒の軸は斜め外側方向である。そのため、射出装置16から射出された移動装置12Sは移動装置12Mから外側に離れる方向に移動しながら網11を広げる。
【0050】
図4A及び図4Bは、射出装置16の射出筒から移動装置12が射出される様子を模式的に示した図である。図4Aに示されるように、射出前の移動装置12は射出装置16の筐体背側の壁面161に取り付けられたスプリング162により図4AのX軸正方向に付勢された状態で、射出筒163に取り付けられているフック164により射出筒163内に保持されている。
【0051】
射出装置16がフック164を解除すると、図4Bに示されるように、スプリング162による付勢により移動装置12が射出筒163から図4BのX軸正方向に射出される。
【0052】
図5A図5Dは、ソナー15が生成する画像に基づき、制御装置14が移動装置12の各々に応じた移動指示信号を生成する方法を説明するための図である。図5Aは、ソナー15の画角内に魚雷Tが入ってきた直後にソナー15が生成する画像の例である。制御装置14は図5Aの画像に基づき、既知の画像認識手法により魚雷Tを検知する。
【0053】
図5Bは、図5Aより所定時間(例えば3秒)が経過した時点にソナー15が生成する画像の例である。ただし、ソナー15が実際に生成する画像は図5Bにおいて実線で示されている部分であり、破線の長方形は図5Aの画像に示される魚雷Tの位置を示し、破線の矢印は図5A及ぶ図5Bに示される魚雷Tの位置の経時変化に基づき特定される魚雷Tの移動経路を示している。
【0054】
制御装置14は図5Bに魚雷Tの移動経路を特定すると、射出装置16に対し、魚雷Tの移動経路に正対した後、移動装置12を水中に射出することを指示する射出指示信号を射出装置16に送信する。この射出指示信号に従い、射出装置16は魚雷Tの移動経路に正対するように姿勢を変更した後、移動装置12を射出する。
【0055】
図5Cは、移動装置12が射出された直後にソナー15が生成する画像の例である。図5Cに示される9つの円形は移動装置12を表している。図5Dは、図5Cのうち、移動装置12を表す円形を含む領域を拡大した図である。ただし、ソナー15が実際に生成する画像は図5Dにおいて実線の円形及び実線の長方形で示されている部分である。
【0056】
魚雷Tを網11により高い確率で捕捉するためには、移動装置12Mは魚雷Tの移動経路上にあるべきである。また、移動装置12Sは魚雷Tの移動経路上の点を中心に放射状に、網11の制約下において最大限に広がった位置にあるべきである。図5Dの破線の円形はそれらの移動装置12のあるべき位置を示している。そして、図5Dの実線の矢印は、移動装置12の各々の移動すべき方向と移動の際の速度を示す移動ベクトルである。制御装置14は、これらの移動ベクトルを特定すると、これらの移動ベクトルを示す移動指示信号を生成し、移動装置12Mに送信する。
【0057】
移動装置12Mは、制御装置14から受信した移動指示信号のうち自装置用の移動指示信号に従い、その移動指示信号が示す移動方向に、その移動指示信号が示す移動速度で移動する。移動装置12Mは、制御装置14から受信した移動指示信号のうち移動装置12Sの各々に応じた移動指示信号をそれらの移動装置12Sに送信する。移動装置12Sの各々は、移動装置12Mから受信した移動指示信号に従い、その移動指示信号が示す移動方向に、その移動指示信号が示す移動速度で移動する。その結果、網11が魚雷Tの移動経路を真ん中で捉える位置で最大限に広がる。
【0058】
移動装置12により網11が広げられ、移動される間に、機雷13の動作モードが起爆待機モードに切り替わる。その後、魚雷Tが網11に到達すると、網11を介して機雷13の加速度センサが閾値以上の加速度を測定し、機雷13が爆発する。そして、機雷13の爆発により魚雷Tが船舶に達する前に爆発する。その結果、船舶が魚雷Tによる損傷を免れる。
【0059】
図6は、制御装置14の機能構成を模式的に示した図である。すなわち、制御装置14のコンピュータがプログラムに従うデータ処理を行うと、図6に示す構成部を備える装置として機能する。以下に制御装置14の機能構成を説明する。
【0060】
画像取得部1401は、ソナー15から画像を取得する。魚雷位置特定部1402は、画像取得部1401が取得した画像に基づき、魚雷の位置を特定する。移動経路特定部1403は、魚雷位置特定部1402が特定した魚雷の位置の経時変化に基づき、魚雷の移動経路を特定する。射出指示信号生成部1404は、移動経路特定部1403が特定した魚雷の移動経路上に船舶がある場合、その移動経路に基づき、射出指示信号を生成する。送信部1405は、射出指示信号生成部1404が生成した射出指示信号を射出装置16に送信する。
【0061】
モード切替信号生成部1406は、移動経路特定部1403が特定した魚雷の移動経路上に船舶がある場合、起爆停止モードから起爆待機モードへの切替を指示するモード切替信号を生成する。モード切替信号生成部1406が生成したモード切替信号は、送信部1405により機雷13に送信される。
【0062】
移動装置位置特定部1407は、画像取得部1401が取得した画像に基づき、移動装置12の各々の位置を特定する。移動指示信号生成部1408(移動方向決定部の一例)は、移動経路特定部1403が特定した魚雷の移動経路と、移動装置位置特定部1407が特定した移動装置12の各々の位置に基づいて、移動装置12の各々の移動方向と移動速度を決定し、それらを示す移動指示信号を生成する。移動指示信号生成部1408が生成した移動指示信号は、送信部1405により移動装置12Mに送信される。
【0063】
図7は、移動装置12Mの機能構成を模式的に示した図である。すなわち、移動装置12Mのコンピュータがプログラムに従うデータ処理を行うと、図7に示す構成部を備える装置として機能する。以下に移動装置12Mの機能構成を説明する。
【0064】
受信部1201は、制御装置14から移動装置12の各々に応じた移動指示信号を受信する。送信部1202は、受信部1201が受信した移動装置12Sの各々に応じた移動指示信号を、それらの移動装置12Sに送信する。
【0065】
移動方向制御部1203は、受信部1201が受信した移動装置12Mに応じた移動指示信号が示す移動方向に移動装置12Mが移動するように、モータ125及びモータ127を制御し、舵126及び舵128の方向を変更させて、移動装置12Mの移動方向を制御する。移動速度制御部1204は、受信部1201が受信した移動装置12Mに応じた移動指示信号が示す移動速度で移動装置12Mが移動するように、モータ123を制御し、スクリュー124の回転速度を変更させて、移動装置12の速度を制御する。
【0066】
移動装置12Sの機能構成は、上述した移動装置12Mの機能構成と以下の点が異なる以外、同様である。
(a)受信部1201が移動装置12Mから自装置に応じた移動指示信号を受信する点。
(b)送信部1202を備えない点。
【0067】
上述した魚雷防御システム1によれば、魚雷の攻撃対象を魚雷から高い確率で防御することができる。
【0068】
[変形例]
上述した魚雷防御システム1は本発明の一実施例であって、本発明の技術的思想の範囲内において魚雷防御システム1は様々に変形されてよい。以下にそれらの変形の例を示す。
【0069】
(1)上述した実施形態においては、制御装置14が送信する移動指示信号を受信する移動装置12Mの数は1つであるが、移動装置12Mの数が2以上であってもよい。例えば、上段の左右方向における真ん中の移動装置12と、下段の左右方向における真ん中の移動装置12を移動装置12Mとし、それらの移動装置12Mが同じ段の移動装置12Sに対し、制御装置14から受信した移動指示信号を送信してもよい。
【0070】
(2)上述した実施形態においては、制御装置14が送信する移動指示信号は移動装置12Mが受信し、移動装置12Sは移動装置12Mを介して移動指示信号を受信する。これに代えて、全ての移動装置12が光通信ユニットを備え、移動装置12の各々が直接、制御装置14から自装置に応じた移動指示信号を受信してもよい。
【0071】
(3)上述した実施形態においては、制御装置14と移動装置12Mの間のデータ通信は光により行われる。これに代えて、制御装置14と移動装置12Mの間のデータ通信が電波により行われてもよい。水中で電波によりデータ通信を行う技術としては、例えば、Wireless Fiber Systems Ltd.(英国)が開発したSeatoothやSeaTextと呼ばれる製品がある。
【0072】
(4)上述した実施形態においては、移動装置12Mと移動装置12Sの各々との間の通信は通信ケーブルを介して行われる。これに代えて、移動装置12Mと移動装置12Sの各々との間の通信が光又は電波により行われてもよい。
【0073】
(5)複数の移動装置12Sの各々が、自装置と異なる移動装置12と自装置との相対位置を特定する相対位置特定部と、相対位置特定部が特定した相対位置に基づき自装置の移動方向を決定する移動方向決定部を備えてもよい。この変形例においては、移動装置12Sの移動方向制御部1203は、移動方向決定部が決定した移動方向に移動するように自装置の移動方向を制御する。
【0074】
例えば、この変形例に係る移動装置12S及び移動装置12Mは、電波を送信する送信アンテナを備える。また、この変形例に係る移動装置12Sは、他の移動装置12の送信アンテナから送信された電波を受信する3本の受信アンテナを備える。そして、移動装置12Sの各々の相対位置特定部は、3本の受信アンテナが受信した電波の位相差に基づき、自装置の位置を基準とした、その電波の送信元の移動装置12の位置を特定する。なお、複数の移動装置12Sが同時に電波を送信すると電波の混信が生じるので、例えば複数の移動装置12は割り当てられたタイムスロットにおいて電波を送信する。
【0075】
この変形例に係る移動装置12Sの各々の移動方向決定部は、隣接する他の移動装置12と自装置の相対位置が、網11を最大限に広げた場合の相対位置に近づくように、自装置の移動方向を決定する。その結果、移動装置12Sは制御装置14からの移動指示信号を移動装置12Mを介して受信する前に、網11を広げる方向への移動を開始することができる。その結果、より迅速に網11が広がる。
【0076】
なお、移動装置12Sが他の移動装置12と自装置の相対位置を特定する方法は上述した方法に限られない。例えば、光を用いた測距計が用いられてもよい。
【0077】
(6)網11の全ての格子点に移動装置12又は機雷13が取り付けられる必要はない。また、移動装置12及び機雷13が取り付けられる位置は、網11の格子点に限られない。また、網11の大きさ、形状は図1に示したものに限られない。また、機雷13及び移動装置12の数は図1に示したものに限られない。図2に示した移動装置12の構成、図3及び図4に示した射出装置16の構成等は例示であって、他の様々な構成が採用されてよい。
【0078】
(7)魚雷捕捉装置10が水中に射出された後、魚雷が方向転換した等の理由により網11が魚雷を捕捉せず、機雷13が爆発しなかった場合、制御装置14が機雷13に対し、起爆待機モードから起爆停止モードへの切替を指示するモード切替信号を送信してもよい。この場合、機雷13は制御装置14から送信されるモード切替信号に従い、起爆停止モードに切り替わり、その後、何らかの衝撃を受けても誤爆することがない。
【0079】
(9)複数の機雷13の水中の重さが、網11が水中で広がった状態において水深が浅いもの程、軽くなるように調整されていてもよい。例えば、図1の例において、上から第n段の機雷13の水中の重さをWn(ただし、nは1≦n≦9のいずれかの自然数)とすると、W1<W2<W3<W4<W5<W6<W7<W8<W9となるように、機雷13が調整されてもよい。この変形例によれば、網11が上下方向に迅速に広がる。
【符号の説明】
【0080】
1…魚雷防御システム、10…魚雷捕捉装置、11…網、12M・12S…移動装置、13…機雷、14…制御装置、15…ソナー、16…射出装置、121…ケース、122…バッテリ、123…モータ、124…スクリュー、125…モータ、126…舵、127…モータ、128…舵、161…壁面、162…スプリング、163…射出筒、164…フック、1201…受信部、1202…送信部、1203…移動方向制御部、1204…移動速度制御部、1401…画像取得部、1402…魚雷位置特定部、1403…移動経路特定部、1404…射出指示信号生成部、1405…送信部、1406…モード切替信号生成部、1407…移動装置位置特定部、1408…移動指示信号生成部。
【要約】
【課題】魚雷の攻撃対象を魚雷から高い確率で防御する手段を提供する。
【解決手段】制御装置14はソナー15が生成する画像に基づき魚雷を検知すると、その魚雷の移動経路を特定する。その移動経路上に船舶がある場合、制御装置14は射出装置16に魚雷捕捉装置10の射出を指示するとともに、機雷13に起爆待機モードへの切替を指示する。制御装置14の指示に従い射出装置16が射出した魚雷捕捉装置10の移動装置12は、水中で網11を広げるように移動する。その後、制御装置14はソナー15が生成する画像に基づき移動装置12M及び12Sの各々の位置を特定し、網11の中央が魚雷の移動経路上となるように移動装置12M及び12Sに移動を指示する。移動装置12M及び12Sは制御装置14の指示に従い移動する。その後、魚雷が網11に達すると、網11が魚雷を捕捉し、起爆待機状態の機雷13が爆発して、船舶に達する前に魚雷を爆発させる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7