特許第6823797号(P6823797)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6823797単独運転発電所の運転制御システム及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6823797
(24)【登録日】2021年1月14日
(45)【発行日】2021年2月3日
(54)【発明の名称】単独運転発電所の運転制御システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/46 20060101AFI20210121BHJP
【FI】
   H02J3/46
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-153310(P2016-153310)
(22)【出願日】2016年8月4日
(65)【公開番号】特開2018-23226(P2018-23226A)
(43)【公開日】2018年2月8日
【審査請求日】2019年7月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128277
【弁理士】
【氏名又は名称】專徳院 博
(72)【発明者】
【氏名】幸徳 温人
【審査官】 宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−201323(JP,A)
【文献】 特開平09−310674(JP,A)
【文献】 特開2015−227633(JP,A)
【文献】 特開2003−079057(JP,A)
【文献】 特開2008−199714(JP,A)
【文献】 特開平05−284653(JP,A)
【文献】 特開昭61−097722(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q10/00−10/10
G06Q30/00−30/08
G06Q50/00−50/20
G06Q50/26−99/00
G16Z99/00
H02J3/00−5/00
H02J13/00
H02P9/00−9/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数台の発電機を有する単独運転発電所の運転制御システムであって、
手動入力される複数台の発電機の優先順位を設定する優先順位設定手段と、
予め定める設定条件及び手順に従い発電機の運転台数を自動制御する運転台数制御手段と、
を含み、
前記運転台数制御手段は、負荷電力が設定条件を満足すると判断すると設定された優先順位に従い発電機を自動起動又は自動停止し、発電機の運転台数を自動制御し、
発電機を自動起動するとき次号機の起動の緊急性を判定し、緊急性があるときは並列運転中の発電機の有効電力・無効電力を発電機の定格比率で比例配分した電力にする制御を行い、緊急性がないときは無効電力を一定に制御することを特徴とする単独運転発電所の運転制御システム。
【請求項2】
前記優先順位設定手段は、入力された発電機の優先順位が設定条件を満足するときこれを受付け、設定条件を満たさないときには受付けを拒否する判定機能を有し、
前記設定条件が入力された優先順位に重複がなく、かつ運転中の発電機が停止中の発電機に比べて優先順位が高いことであることを特徴とする請求項1に記載の単独運転発電所の運転制御システム。
【請求項3】
さらに各発電機の状態を監視する状態監視手段を含み、
前記状態監視手段は、少なくとも各発電機が健全か否かを監視し、
前記運転台数制御手段は、次の発電機を起動させるとき、停止発電機のうち最も優先順位が高い発電機が健全か否か判断し、健全ではないと判断すると他の停止発電機を優先順位に従い健全か否か判断し、健全な停止発電機のうち優先順位の最も高い発電機を次の発電機として決定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の単独運転発電所の運転制御システム。
【請求項4】
コンピュータを請求項1から請求項のいずれか1項に記載の各手段として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数台の発電機を有する単独運転発電所の運転制御システム及びプログラムに関し、特に発電機の運転台数及び軽故障発生時の切替えを自動制御する運転制御システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、離島等での内燃力発電装置による単独運転系統での電力制御システムは、当直員が常時監視し手動制御している。具体的には、第1に、発電機運転台数の制御は、当直員が負荷状況により起動・停止を判断して行っている。第2に、発電機軽故障(温度上昇等)時は、故障状況を確認し、早急に待機発電機への切替えを行っている。第3に、重故障時には発電機用遮断器(52G)がトリップし、残りの発電機が過負荷状態となり遮断し、全停電に移行するため、当直員は全停電からの復旧操作を行う。
【0003】
しかしながら、最近は、停電に対する減少対策が強く求められ、当直員の負担も大きくなっている。これに対して、これまでにも当直員の負担を軽減可能な発電機の自動運転システム等が開発されている。例えば、発電機負荷率を算出し、発電機負荷率が所定の負荷率以上になると発電機を1台運転させ、所定の負荷率以下になると発電機を1台停止させる発電機自動運転装置がある(例えば特許文献1参照)。
【0004】
また複数台の発電機を備え、並行運転により各フィーダの負荷に電力を供給する常用発電所において、全停直前時の全負荷電力量を記憶し、全停電時に全負荷電力量に見合った発電機台数を自動的に立ち上げる常用発電機の自動運転システムがある(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−201323号公報
【特許文献2】特開平9−103098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の発電機自動運転装置は、当直員の判断で行っている次に立ち上げる発電機の始動条件、及び次に停止する発電機の停止条件を自動化したものであり、発電機の選定には当直員の判断が必要である。さらに発電機の軽故障には対応していないので、発電機に軽故障が発生した場合には当直員の判断、操作が必要である。特許文献2に記載の常用発電機の自動運転システムは、全停電からの復旧操作を自動化したものであり、発電機軽故障には対応していない。
【0007】
発電機に軽故障が発生した場合は、健全な発電機を立ち上げ、軽故障した発電機を停止する操作を早急に行う必要がある。これら操作が遅れれば機関重故障となる可能性が高く、如いては全停電となり、復旧操作は困難を極めれる。以上のように発電機軽故障の対応は当直員の負担、さらには停電の継続による社会的影響が大きいが、これまで発電機軽故障時の運転制御システムは開発されていない。
【0008】
本発明の目的は、当直員の負担を軽減可能な複数台の発電機を有する単独運転発電所の運転制御システム及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、複数台の発電機を有する単独運転発電所の運転制御システムであって、手動入力される複数台の発電機の優先順位を設定する優先順位設定手段と、予め定める設定条件及び手順に従い発電機の運転台数を自動制御する運転台数制御手段と、を含み、前記運転台数制御手段は、負荷電力が設定条件を満足すると判断すると設定された優先順位に従い発電機を自動起動又は自動停止し、発電機の運転台数を自動制御し、発電機を自動起動するとき次号機の起動の緊急性を判定し、緊急性があるときは並列運転中の発電機の有効電力・無効電力を発電機の定格比率で比例配分した電力にする制御を行い、緊急性がないときは無効電力を一定に制御することを特徴とする単独運転発電所の運転制御システムである。
【0010】
本発明によれば、運転台数制御手段が、負荷電力が予め定める設定条件を満足するか否か判断し、設定条件を満足すると判断すると設定された優先順位に従い発電機の運転台数を自動制御するので、当直員が起動・停止条件は元より、次に立ち上げる発電機、次に停止させる発電機を選定する必要がなく、当直員の負担が大幅に軽減される。
【0011】
本発明の単独運転発電所の運転制御システムにおいて、前記優先順位設定手段は、入力された発電機の優先順位が設定条件を満足するときこれを受付け、設定条件を満たさないときには受付けを拒否する判定機能を有し、前記設定条件が入力された優先順位に重複がなく、かつ運転中の発電機が停止中の発電機に比べて優先順位が高いことであることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、優先順位設定手段は、入力された優先順位に重複がなく、かつ運転中の発電機が停止中の発電機に比べて優先順位が高いときにのみ入力された優先順位を受付けるので、誤動作が防止され、発電機の運転制御を確実に実行することができる。
【0013】
また本発明の単独運転発電所の運転制御システムは、さらに各発電機の状態を監視する状態監視手段を含み、前記状態監視手段は、少なくとも各発電機が健全か否かを監視し、前記運転台数制御手段は、次の発電機を起動させるとき、停止発電機のうち最も優先順位が高い発電機が健全か否か判断し、健全ではないと判断すると他の停止発電機を優先順位に従い健全か否か判断し、健全な停止発電機のうち優先順位の最も高い発電機を次の発電機として決定することを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、運転制御システムは、「優先順位制御」を基本としつつも停止発電機のうち優先順位の最も高い停止発電機が健全ではないと判断すると、健全な発電機のうち優先順番の最も高い発電機を次に起動させる発電機として選出する「飛び越し制御」を行うので、信頼性の高い制御が可能となる。
【0017】
また本発明は、コンピュータを前記単独運転発電所の運転制御システムの各手段として機能させるためのプログラムである。
【0018】
本発明によれば、コンピュータプログラムを用いて単独運転発電所の運転制御システムの各手段を実行可能なため、プログラムをコンピュータにインストールすることで、単独運転発電所の運転制御システムを容易に実現できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、当直員の負担を軽減可能な複数台の発電機を有する単独運転発電所の運転制御システム及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施の一形態としての単独運転発電所の運転制御システム1が適用された電力系統図である。
図2】本発明の実施の一形態としての単独運転発電所の運転制御システム1の機能構成図である。
図3】本発明の実施の一形態としての単独運転発電所の運転制御システム1の優先順位設定画面を示す図である。
図4】本発明の実施の一形態としての単独運転発電所の運転制御システム1の運転台数制御手順(自動始動)を示すフローチャートである。
図5】本発明の実施の一形態としての単独運転発電所の運転制御システム1の運転台数制御手順(自動始動)を示すフローチャートである。
図6図4の運転台数制御手順(自動始動)を示すフローチャートのステップS3及びステップS4の関係を説明するための図である。
図7】本発明の実施の一形態としての単独運転発電所の運転制御システム1の運転台数制御手順(自動停止)を示すフローチャートである。
図8】本発明の実施の一形態としての単独運転発電所の運転制御システム1の発電機軽故障時の切替手順を示すフローチャートである。
図9】本発明の実施の一形態としての単独運転発電所の運転制御システム1の発電機軽故障時の切替手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態において、発電機を以下のように定義する。1号機とは、発電機G1を示し、以下同様にn号機とは発電機Gnを示す。運転号機とは運転中の各発電機を、停止号機とは停止中の各発電機をいう。軽故障機は、水温が高い・軸受温度が高い等の軽度の故障状態にあり、直ちに停止させる必要はないが、他の発電機に切替えた方がよい発電機である。作業機は、メンテナンス等を行っている発電機であり運転不能である。重故障機は、発電機用遮断器がトリップするような重度な故障が発生した発電機である。健全機は、運転可能な発電機であり、軽故障機、作業機及び重故障機以外の発電機である。
【0022】
図1は、本発明の実施の一形態としての単独運転発電所の運転制御システム1が適用された電力系統図である。図2は、本発明の実施の一形態としての単独運転発電所の運転制御システム1の機能構成図、図3は、運転制御システム1の優先順位設定画面を示す図である。
【0023】
本発明の実施の一形態としての運転制御システム1は、複数台の発電機を有する単独運転発電所の運転を制御するシステムである。運転制御システム1の説明に先立ち、複数台の発電機を有する単独運転発電所の電力系統について説明する。
【0024】
各発電機G1〜Gnには、発電機用遮断器52G1〜52Gnが配設され、各配電線L1〜Lnには、配電線用遮断器52F1〜5Fnが配設され、各発電機G1〜Gnと各配電線L1〜Lnとは、母線L0を介して接続される。また各配電線L1〜Lnには、電力量を計測する電力量計WT1〜WTnが配設されている。ここで添え字nは、任意の整数である。
【0025】
運転制御システム1は、各発電機G1〜Gn等と信号を送受信する送受信手段11と、入出力手段13と、データを保存するデータベース(記憶手段)15と、メニュー作成手段17と、各発電機G1〜Gnの優先順位を設定する優先順位設定手段19と、各発電機G1〜Gnの状態を監視する状態監視手段21と、発電機Gの運転台数を制御する運転台数制御手段23と、発電機Gに軽度の故障(軽故障)が発生すると発電機Gの切替えを行う軽故障切替制御手段25とを備える。
【0026】
送受信手段11は、各発電機G1〜Gn、電力量計WT1〜WTn等と信号を送受信する。送受信信号(送受信データ)には、各発電機G1〜Gnを始動・停止させるための信号、各発電機G1〜Gnから発せられる軽故障等の信号、発電機用遮断器52G1〜52Gnを入、切するための信号、電力負荷データ等がある。
【0027】
入出力手段13は、データを入力するキーボード、マウス、タッチパネル等からなる入力装置と、CRTディスプレイ等のデータ、画面を表示する表示装置とを含む。
【0028】
データベース15は、入出力手段13を介して入力される各発電機G1〜Gnの定格容量、始動出力条件、停止出力条件などの各種設定値、送受信手段11を介して受信した電力負荷データ、優先順位設定手段19を介して設定される各発電機G1〜Gnの優先順位などを保存する。
【0029】
メニュー作成手段17は、監視操作、故障表示、発電機優先順位等をメニューとし、監視操作画面、故障表示画面、発電機優先順位入力画面などを作成し、これを選択、操作、実行可能にタッチパネル等に表示する。図3に、優先順位設定画面を示す。ここに示す設定画面は、タッチパネルのディスプレイ上に表示された画面で、発電機Gの台数が4台の例である。
【0030】
優先順位設定手段(優先順位設定器)19は、各発電機G1〜Gnの優先順位を設定するためのものであり、優先順位設定画面から入力される各発電機G1〜Gnの優先順位が設定条件を満たすか否か判断し、設定条件を満たすと判断すると各発電機G1〜Gnの優先順位を受付け、設定条件を満たさないときには受付けを拒否する。
【0031】
発電機の優先順位の設定要領の具体例を示す。メニューから発電機優先順位が選択されると、タッチパネルのディスプレイ上に発電機の優先順位を設定するための優先順位設定画面が表示される。上段が現在の発電機の運転状態を表示し、中段が現在の優先順位を示す。発電機の優先順位を変更する場合には、下段の優先順位設定ボタンを介して順位を変更し、最下段の設定読込ボタンを介して入力する。
【0032】
優先順位設定手段19は、優先順位が入力されると現在運転号機の運転状態と対比し、入力された優先順位に重複がなく、かつ運転号機が停止号機に比べて優先順位が高いときにのみ変更入力された優先順位を受付ける。図3の例では、現在、発電機Gは、2号機と3号機が運転中ゆえ、2号機及び3号機のいずれか一方の優先順位が1番、他方が2番であれば、優先順位は受付られる。一方、上記設定条件を満足しない場合は、条件不成立を表示し、優先順位の受付けを拒否する。
【0033】
状態監視手段21は、送受信手段11を介して各発電機G1〜Gnの状態データを得て、運転中の発電機Gが健全か、軽故障が発生したか等を監視する。
【0034】
運転台数制御手段23は、送受信手段11を介して得る負荷電力、各発電機G1〜Gnの出力(発電量)に基づき負荷状態(負荷電力)を監視し、負荷状態が予め定める設定条件を満足すると判断すると、予め定める手順に従い運転台数を制御する。予め定める設定条件及び運転台数の制御手順は後述する。
【0035】
軽故障切替制御手段25は、状態監視手段23と協働し、発電中の発電機Gに軽故障が発生すると、予め定める手順に従い発電機の切替えを行うように制御する。発電機の切替操作の制御手順は後述する。
【0036】
以上からなる運転制御システム1は、送受信手段11を介して例えば数秒間隔で負荷電力データ等を取得し、負荷状態を判定し、運転台数制御手段23を介して予め定める手順に従い発電機Gを始動させ、あるいは停止させ発電機Gの運転台数を制御する。また運転制御システム1は、状態監視手段21を介して発電機Gの状態を監視し、発電中の発電機Gに軽故障が発生すると、予め定める手順に従い発電機Gの切替操作を行うように制御する。
【0037】
負荷状態の算出及び判定を行う部分は、これを負荷判定手段として運転台数制御手段25から切り離し、切り離した負荷判定手段と運転台数制御手段とを協働させ、発電機Gの運転台数を制御するようにしてもよい。
【0038】
運転制御システム1は、キーボード、マウス、タッチパネル等の入力装置、ディスプレイ等の出力装置、各種制御・演算・記憶を実行する制御装置、演算装置及び記憶装置を備える公知のコンピュータと、運転台数制御、軽故障切替制御等を実行させるためのプログラムを用いて実現することができる。運転台数制御、軽故障切替制御等を実行させるためのプログラムを作成し、これをコンピュータにインストールとすることで、コンピュータを図2に示す各種手段として機能させることができる。
【0039】
次に発電機の運転台数制御手順を示す。図4及び図5は、運転制御システム1の運転台数制御手順(自動始動)を示すフローチャートである。図6は、図4の運転台数制御手順(自動始動)を示すフローチャートのステップS3及びステップS4の関係を説明するための図である。ここでは発電機台数は4台とするが、発電機台数は特定の台数に限定されるものではない。図中の1G〜4Gは、1号機〜4号機を表す。
【0040】
現在、1号機と2号機とが運転状態で、3号機と4号機とが停止状態とする(ステップS0)。発電機の優先順位は、優先順位設定手段19により発電機号機の順に、つまり1号機の優先順位が1番で、4号機の優先順位が4番に設定されているものとする。また各発電機G1〜G4の定格容量(kW)、自動始動制御に使用する、始動最低出力条件(%),始動出力条件(%),始動確認時間,負荷増加率(kW),負荷増加率(秒)など、さらに内燃機関を制御する各種設定値等は、予め入力されデータベース15に保存されているものとする。
【0041】
運転制御システム1は、運転号機出力総和(負荷電力W)と運転号機である1号機と2号機の定格容量の総和とを比較し、負荷電力Wが運転号機の定格総和(定格容量総和)の始動最低出力条件を超えたか否か判断する(ステップS1)。運転号機の定格総和の始動最低出力条件は、例えば、運転号機の定格総和の80%に設定される。この始動最低出力条件は、任意の値である。
【0042】
負荷電力Wが運転号機の定格総和の始動最低出力条件を越えたときには、所定時間(例えば5秒)経過後(ステップS2)、負荷電力Wが運転号機の定格総和の始動出力条件を超えたか否か判断する(ステップS3)。運転号機の定格総和の始動出力条件は、例えば、運転号機の定格総和の95%に設定される。この始動出力条件は、任意の値である。
【0043】
さらに負荷電力Wが運転号機の定格総和の始動最低出力条件を越え、所定時間経過後(ステップS2)には、負荷増加率が設定条件を満足するか判断する(ステップS4)。このステップS4は、急激に負荷が増加した場合に対処するためのものであり、負荷増加率の設定条件もそれに対応する形で設定される。例えば、負荷増加率の設定条件は150kW/120秒以上である。この負荷増加率は、任意の値である。
【0044】
ステップS3とステップS4との関係を図6に示した。ステップS3の負荷電力Wが運転号機の定格総和の始動出力条件を満足する前に、ステップS4の条件が成立すると次ステップ(ステップS6)に進む。ステップS4の条件が成立しない場合には、ステップS3の条件成立を待ってステップS5、ステップS6の順に進む。
【0045】
ステップS6は、次に立ち上げ予定の発電機、本実施形態では3号機が健全機であるか否かを判断する。3号機が軽故障機、作業機又は重故障機でないときは、健全機であると判定され次号機始動指令(ステップS8)に進む。
【0046】
一方、3号機が健全機ではないと判定すると、次号機があるか判定する(ステップS7)。本実施形態では、4号機が次号機に該当するので、4号機が健全機であるか否かを判定し、4号機が健全機であれば、3号機に代えて4号機を始動するように制御する。4号機が健全機ではないときには、予備機なし表示を行う(ステップS9)。
【0047】
ステップS6及びステップS7は、次に立ち上げる予定の発電機が、作業中又は故障中のときは、この発電号機を飛び越して、次の発電号機に制御をかけるので「飛び越し制御」ということができる。
【0048】
次号機始動指令(ステップS8)に続き、内燃機関が定格回転数に達し(ステップS10)、その状態を所定時間保持(アイドリング)した後(ステップ11)、初期励磁入指令を発する(ステップS12)。なお、緊急始動時は、ステップ11をバイパスするように制御する。
【0049】
その後、遮断器を自動同期投入し並列する(ステップS13)。並列後、ガバナに増指令(65R)を発し(ステップS14)、1/4負荷以上であることを確認し(ステップS15、ステップS16)、次号機の始動を完了する(ステップS18)。ガバナ増指令(65R)時は、無効電力を一定に制御(偏差比例制御)する(ステップS17)。
【0050】
ここでステップS14〜ステップS17は、1/4負荷取り機能に該当する。1/4負荷取り機能は、急激に立ち上げることによる内燃機関への悪影響を避けるためのものであり、次号機を緊急に始動させる必要がある場合には、この部分をバイパスさせる。1/4負荷取り時には、無効電力が一定に制御されるが(ステップS17)、1/4負荷取り機能をバイパスさせるときには、定比率制御とする。定比率制御は、並列運転中の発電機の有効電力・無効電力を発電機の定格比率で比例配分した電力にする制御である。
【0051】
図7は、運転制御システム1の運転台数制御手順(自動停止)を示すフローチャートである。本実施形態において、発電機台数は4台とするが、発電機台数は特定の台数に限定されるものではない。また運転台数制御手順(自動始動)と同様に、発電機の優先順位、自動停止に使用する各種設定値は、予め入力されデータベース15に保存されているものとする。
【0052】
現在、1号機と2号機とが運転状態で、3号機と4号機とが停止状態とする(ステップS0)。発電機の優先順位は、優先順位設定手段19により発電機号機の順に、つまり1号機の優先順位が1番で、4号機の優先順位が4番に設定されているものとする。
【0053】
運転制御システム1は、運転号機出力総和(負荷電力W)と、運転号機の定格総和(定格容量総和)から次停止号機定格(容量)を減算した値に停止出力条件を乗算した値とを比較し、後者が前者を上回か否か判断する(ステップS21)。運転号機出力総和には、移動平均値が使用される。移動平均値は、移動平均周期(例えば1秒)毎に取り込んだ、移動平均個数(例えば300個)分の平均値である。停止出力条件は、任意の値に設定可能であり、例えば85%に設定される。本実施形態に当てはめると、負荷電力Wが、1号機の定格容量の85%を下回るとステップ21の条件が成立する。
【0054】
ステップ21の条件が成立すると、これが設定時間(停止確認時間)継続していることを確認し(ステップS22)、停止号機である2号機の停止操作を行う(ステップS23)。停止確認時間は、任意の値に設定可能であり、例えば1500秒に設定される。停止確認時間を長くし過ぎると燃料が無駄に消費される。
【0055】
運転制御システム1は、停止号機の停止操作において、無効電力一定下で(ステップS25)で負荷減指令を発し(ステップ24)、停止負荷以下になると(ステップS26)、ガバナを減操作(65R)し(ステップS28)、停止負荷の確認(ステップS29)、遮断器切(ステップS30)、機関停止操作(ステップS31)及び停止完了(ステップS32)の順に各操作を制御する。
【0056】
図8及び図9は、運転制御システム1の発電機軽故障時の切替手順を示すフローチャートである。本実施形態において、発電機台数は4台とするが、発電機台数は特定の台数に限定されるものではない。また運転台数制御手順と同様に、発電機の優先順位、自動停止に使用する各種設定値は、予め入力されデータベース15に保存されているものとする。ここでは、2号機に軽故障が発生するものとする。
【0057】
現在、1号機と2号機とが運転状態で、3号機と4号機とが停止状態とする(ステップS0)。発電機の優先順位は、優先順位設定手段19により発電機号機の順に、つまり1号機の優先順位が1番で、4号機の優先順位が4番に設定されているものとする。また3号機と4号機は共に健全号機であるとする。
【0058】
運転制御システム1は、運転中の発電機である2号機に軽故障が発生したことを検知すると(ステップS41)、全健全号機(3号機と4号機)に緊急始動させ、全健全号機の遮断器52G3、52G4を入りとする(ステップS42、ステップS43)。所定時間経過後(ステップS44)、軽故障が発生した2号機を停止させてもよいかの判断を行う(ステップS45)。
【0059】
具体的には、ステップS45において軽故障機を除く運転号機の軽故障切替定格総和が運転号機定格総和を上回るか否かを判断し、上回ると判断すると2号機の停止条件が成立する。2号機の停止条件が成立するとステップS46からステップS55の手順で2号機を自動停止させる。このステップS46からステップS56は、図7に示す運転台数制御手順(自動停止)のステップS22〜ステップS32と同じである。
【0060】
一方、ステップS45において軽故障機を除く運転号機の軽故障切替定格総和が運転号機定格総和を上回らないと判断すると、2号機を停止させることなく操作を終了する(ステップS57)。このことは予備機がないため軽故障機を止めることができないことを意味する。
【0061】
以上のように本発明の単独運転発電所の運転制御システムは、設定条件を満足すると判断すると設定された優先順位に従い発電機の運転台数を自動制御するので、当直員が起動・停止条件は元より、次に立ち上げる発電機、次に停止させる発電機を選定する必要がなく、当直員の負担が大幅に軽減される。また当直員の誤判断による誤操作防止が期待できる。
【0062】
また発電機の優先順位も予め定める設定条件を満足するときのみ設定可能(受付可能)なため誤動作が防止され、発電機の運転制御を確実に実行することができる。また本発明の単独運転発電所の運転制御システムは、「優先順位制御」を基本としつつも「飛び越し制御」を併用し制御するので、信頼性の高い制御が可能となる。
【0063】
また本発明の単独運転発電所の運転制御システムは、発電機の軽故障に対しても自動対応が可能なため当直員の負担が大幅に軽減される。また重故障への移行が回避でき電力供給に対する信頼度が向上する。
【0064】
また本発明によれば、コンピュータプログラムを用いて本発明の単独運転発電所の運転制御システムの各手段を実行可能なため、プログラムをコンピュータにインストールすることで、本発明の単独運転発電所の運転制御システムを容易に実現できる。
【0065】
以上のとおり、図面を参照しながら好適な実施形態を説明したが、当業者であれば、本明細書を見て、自明な範囲内で種々の変更及び修正を容易に想定するであろう。従って、そのような変更及び修正は、請求の範囲から定まる発明の範囲内のものと解釈される。
【符号の説明】
【0066】
1 運転制御システム
11 送受信手段
13 入出力手段
15 データベース
17 メニュー作成手段
19 優先順位設定手段
21 状態監視手段
23 運転台数制御手段
25 軽故障切替制御手段
52F1〜52Fn 配電線用遮断器
52G1〜52Gn 発電機用遮断器
G,G1〜Gn 発電機
L0 母線
L1〜Ln 配電線
WT1〜WTn 電力量計
図1
図2
図3
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図5
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図7
図8
図9