【文献】
“Super VecTwin System スーパーベクツインシステム”,日本,ジャパンハムワージ株式会社,2005年
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、船舶の操縦装置としては、例えば特許文献1に記載するものがある。これは、一基の推進プロペラの後方に一対の舵を推進プロペラ軸心に対して対称の位置に設けた二枚舵システム、あるいは、二基の推進プロペラの後方にそれぞれ一枚の舵を設けた二枚舵システムを有する船舶の操舵制御装置である。
【0003】
この操舵制御装置は、操舵命令系統がオートパイロット装置とジョイスティック・パネルとから構成され、オートパイロット装置は針路設定装置とジャイロコンパスとからなり、ジョイスティック・パネルはテールインボード設定装置とジョイスティックレバーと舵角設定装置と緊急停止押釦とからなり、制御装置系統が自動演算装置とテールインボード対応操舵量調整器とジョイスティック・ユニットと舵角設定器と緊急停止制御ユニットとから構成される。
【0004】
そして、自動操舵モードによる航行時は、設定針路復帰のための当て舵において、テールインボードとなっている二枚の舵を、テールインボード対応操舵量調整器により、それぞれ別々の転舵パターンで転舵させるようにしている。さらに、操縦モードによる出入港又は狭水路航行時は、自動演算装置とジョイスティック・ユニットと緊急停止制御ユニットとにより、二枚の舵のそれぞれの舵角の組合せによる船の複数の操縦パターンと緊急停止とができるようにしたものである。
【0005】
また、特許文献2には、一軸二舵船の舵角指示器が開示されている。これは、左右一対の舵と、各舵をそれぞれ駆動する一対のロータリーベーン舵取機を備えた一軸二舵船の舵角指示器であり、単一の表示盤面内に、各舵の舵角をそれぞれ指し示す左右一対の二つの指針と、各指針の周囲に配置されて、外舷側にロータリーベーン舵取機の外舷側の転舵限度舵角を表示し、内舷側にロータリーベーン舵取機の内舷側の転舵限度舵角を表示する左右一対の舵角目盛を備えている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の特許文献1では、ディスプレイ装置に、ジョイスティックレバーで指示する指示旋回方向と指示推力の大きさを示す指示値がベクトル表示される。ジョイスティックレバーによる指示値が船体のその場静止(ホバー)位置を原点とする指示ベクトル値として表示されるとともに、実行旋回方向と実行推力の大きさを示す実行値が船体のその場静止(ホバー)位置を原点とする実行ベクトル値として表示される。
【0008】
また、特許文献2では、ジョイスティックレバーによる操船における高揚力舵の作動範囲が140°の範囲にわたって設定されている。このため、
図10に示すように、舵角指示器500は、単一の表示盤面501の領域内に、各舵の実舵角をそれぞれ指し示す左右一対の二つの指針502、503と、各指針の周囲に配置されて、外舷側にロータリーベーン舵取機の外舷側の転舵限度舵角を表示し、内舷側にロータリーベーン舵取機の内舷側の転舵限度舵角を表示する左右一対の舵角目盛504、505を備えている。
【0009】
ここでは、舵角目盛504、505は一つの目盛当たりの舵角、つまり表示単位角度が5°に設定されている。
【0010】
ところで、オートパイロットによる操縦時には、舵の操舵可能範囲が中立位置から両舷方向に35°に決められている。さらに、舵角リミッタによって作動範囲を限定する場合がある。
【0011】
舵角目盛の表示単位角度が5°の舵角指示器において、操舵手が指針の動きを1°単位で読み取ることは困難である。また、手動操舵輪による操縦時に手動で操作し、舵角を1°単位で微調整する場合にも、舵角目盛の表示単位角度が5°の舵角指示器において、操舵角を1°単位で操舵することは困難である。
【0012】
本発明は上記の課題を解決するものであり、広い範囲で舵角を制御するジョイスティックレバーによる操船時や、狭い範囲で舵角を制御する手動による操船時の各々に適した舵角表示ができる一軸二舵船の操舵制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記した課題を解決するために、本発明の一軸二舵船の操舵制御装置は、船尾に配置した一基の推進プロペラと、推進プロペラの後方に配置した左右一対の高揚力舵と、各高揚力舵をそれぞれ駆動する一対のロータリーベーン舵取機と、2枚の高揚力舵の舵角を組み合わせて船体運動の方向を制御する操舵制御装置と、各舵の舵角を表示する舵角指示装置を備える一軸二舵船において、操舵制御装置は、ジョイスティックレバーによる操縦モードで操船するジョイスティック操船部と、手動操舵輪による操縦モードで操船する手動操船部と、モード切替スイッチにより各操船部の切替を行うモード切替部と、舵角指示装置を制御する舵角指示部を備え、舵角指示部は、複数の舵角指示画像を各操縦モードに応じて選択的に切り替えて舵角指示装置の表示部に表示し、各舵角指示画像は、単一の表示盤面内に、各高揚力舵の舵角をそれぞれ指し示す左右一対の二つの指針と、各指針の周囲にそれぞれ舵角目盛を有し、かつ舵角目盛が各操縦モードに適した操舵角レンジを有し、一つの舵角指示画像がジョイスティック操船時に適した広舵角指示画像であり、他の一つの舵角指示画像が手動操船時に適した狭舵角指示画像であり、狭舵角指示画像は、指針の一定回転角度範囲における操舵角レンジが広舵角指示画像の操舵角レンジより狭い舵角範囲となり、舵角目盛の表示単位角度が広舵角指示画像の表示単位角度より小さく、かつ指針が実際の舵角より大きな角度に回転して舵角目盛の当該舵角に相応する目盛値を指示し、 さらに、操舵制御装置は、画像拡大スイッチを有し、舵角指示部は、画像拡大スイッチON時にさらに他の一つの舵角指示画像として拡大舵角指示画像を表示し、拡大舵角指示画像は、指針の一定回転角度範囲における操舵角レンジが狭舵角指示画像の操舵角レンジよりさらに狭い舵角範囲となり、舵角目盛の表示単位角度が狭舵角指示画像の表示単位角度よりさらに小さく、かつ指針が実際の舵角よりさらに大きな角度に回転して舵角目盛の当該舵角に相応する目盛値を指示することを特徴とする。
【0017】
上記した課題を解決するために、本発明の一軸二舵船の操舵制御装置は、船尾に配置した一基の推進プロペラと、推進プロペラの後方に配置した左右一対の高揚力舵と、各高揚力舵をそれぞれ駆動する一対のロータリーベーン舵取機と、2枚の高揚力舵の舵角を組み合わせて船体運動の方向を制御する操舵制御装置と、各舵の舵角を表示する舵角指示装置を備える一軸二舵船において、操舵制御装置は、ジョイスティックレバーによる操縦モードで操船するジョイスティック操船部と、手動操舵輪による操縦モードで操船する手動操船部と、モード切替スイッチにより各操船部の切替を行うモード切替部と、舵角指示装置を制御する舵角指示部を備え、舵角指示部は、複数の舵角指示画像を各操縦モードに応じて選択的に切り替えて舵角指示装置の表示部に表示し、各舵角指示画像は、単一の表示盤面内に、各高揚力舵の舵角をそれぞれ指し示す左右一対の二つの指針と、各指針の周囲にそれぞれ舵角目盛を有し、かつ舵角目盛が各操縦モードに適した操舵角レンジを有し、一つの舵角指示画像がジョイスティック操船時に適した広舵角指示画像であり、他の一つの舵角指示画像が手動操船時に適した狭舵角指示画像であり、狭舵角指示画像は、指針の一定回転角度範囲における操舵角レンジが広舵角指示画像の操舵角レンジより狭い舵角範囲となり、舵角目盛の表示単位角度が広舵角指示画像の表示単位角度より小さく、かつ指針が実際の舵角より大きな角度に回転して舵角目盛の当該舵角に相応する目盛値を指示し、 さらに、操舵制御装置は、オートパイロットによる操縦モードで操船するオート操船部を有し、舵角指示部がオートパイロット操船時に広舵角指示画像を舵角指示装置の表示部に表示し、かつモード切替スイッチによるモード切替操作を行わずとも、手動操舵輪の操作を受けると、現操縦モードを維持しつつ舵角指示装置の表示部に狭舵角指示画像を表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
上記の構成により、指針の一定回転角度範囲における操舵角レンジが広い舵角範囲を表示する広舵角指示画像と、指針の一定回転角度範囲における操舵角レンジが狭い舵角範囲を表示する狭舵角指示画像とを切り替えて、舵角指示装置の表示部に表示する。
【0020】
このため、広い舵角範囲において高揚力舵の舵角を操作するジョイスティックレバーによる操船時には、広舵角指示画像を表示することで、表示単位角度が複数度の舵角目盛を視認しながら、広い範囲にわたって、例えば140°の範囲で舵角を数度刻みで指示することができる。
【0021】
そして、狭い舵角範囲において微小角度に高揚力舵の舵角を操作する手動操船時には、狭舵角指示画像もしくは拡大舵角指示画像を表示することで、狭い範囲の舵角を、例えば中立位置から両舷にそれぞれ35°の範囲の舵角を1°刻みで、あるいは0.5°の刻みで指示することができる。
【0022】
そして、狭舵角指示画像あるいは拡大舵角指示画像においては、指針の回転角度が実際の舵角より大きくなることで、指針の回転角度が実際の舵角と一致する場合に比べて、表示単位角度を示す目盛線間隔を広く設定することができ、視認性が高まり、指針を目標とする舵角目盛に合わせ易くなり、操舵手が微小な舵角を正確に制御することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本発明に係る一軸二舵船の操舵制御装置は、船舶の大きさに拘わらず適用可能である。
(実施の形態1)
本実施の形態における二枚舵操舵システムは、
図1から
図9に示すように、推力システム100と推力システム100を制御する操船システム(操舵制御装置)200からなる。
【0025】
推力システム100は、船体110の船尾に配置した1基1軸のプロペラからなるプロペラ推進器101と、プロペラの後方に配置した2枚の高揚力舵102、103を配したものである。
【0026】
各高揚力舵102、103は、それぞれ、アウトボード(外舷側)へ105°、インボード(内舷側)へ35゜転舵可能に構成されている。そして、1基1軸の推進器(プロペラ)をプロペラ前進回転のままで、1対2枚の高揚力舵102、103をそれぞれ独立して種々の角度に作動させ、両舷の高揚力舵102、103を舵角の組合せを変えることによって、プロペラ後流を目的とする望ましい方向に分配し、それぞれの方向の推力を自在に変えることができる。従って、それぞれの方向の推力の合成推力を自在に変えることができ、プロペラ後流を制御して船尾回りの推力を360゜全方向にわたって制御することで、船の前後進、停止、前進旋回、後進旋回等の操船を行わせ、船の運動を自由に制御することができる。
【0027】
さらに、推力システム100は、高揚力舵102、103を駆動するロータリーベーン舵取機104、105と、ロータリーベーン舵取機104、105を制御する舵制御装置(サーボアンプ)106、107と、船体110の船首側に配置した船首スラスター108および船首スラスター108を制御するスラスター制御装置109を有している。
【0028】
また、ロータリーベーン舵取機104、105のそれぞれには、ポンプユニット151、152と舵角発信器153、154とフィードバックユニット155、156が接続しており、フィードバックユニット155、156が舵制御装置106、107に接続している。
【0029】
操船システム(操舵制御装置)200は、操船スタンド250に格納されており、ジャイロコンパス251のジャイロ方位を表示するジャイロ方位表示部252と、GPSコンパスを用いたオートパイロットによる操縦モードで操船するオート操船部253と、ジョイスティックレバー254による操縦モードで操船するジョイスティック操船部255と、手動操舵輪256による操縦モードで操船する手動操船部257と、ノンフォローアップ操舵レバー258による操縦モードで操船するノンフォローアップ操船部259と、モード切替スイッチ260により各操船部の切替を行うモード切替部261と、画面にタッチパネルを配したディスプレイ装置262と、ディスプレイ装置262に映す画像を制御する画像制御部263と、緊急停船押釦264を操作することにより全ての操縦モードに優先して船舶を緊急に停船させる操縦モードで操船する緊急停船部265と、各高揚力舵102、103の現在舵角を表示する舵角指示装置270を制御する舵角指示部271と、画像拡大スイッチ290を操船スタンド250に一体的に備えている。
【0030】
画像制御部263は、ジャイロ方位を映すジャイロ方位表示画像267と、ジャイロ方位表示部252をモニター画面上でタッチ操作するための方位表示部操作画像268と、オート操船部253をモニター画面上でタッチ操作するためのオート操船操作画像269を選択的に表示し、あるいは同時に表示する。
【0031】
ジョイスティック操作部255は、ジョイスティックレバー254がX−Y方向の何れの方向へも操作可能に構成されており、ジョイスティックレバー254の傾倒方向で船体の指令運動方向を制御し、傾倒方向における傾倒角度で船首尾方向指令速度および船体横方向指令速度を制御するものである。
【0032】
ジョイスティック操船部255は、両舷の高揚力舵102、103の舵角をそれぞれジョイスティックレバー254の傾倒方向に応じて設定した舵角に制御し、かつ両舷の高揚力舵102、103の舵角を組合せることで、プロペラ後流の推力を目的方向に向けて変向し、双方のロータリーベーン舵取機104、105により両舷の高揚力舵102、103のそれぞれの舵角を外舷側へ105°、内舷側へ35°の範囲で制御する。詳細は後述する。
【0033】
オート操船部253は、GPSコンパス、電子海図システムにより自船の現在位置情報、誘導経路情報、停船保持位置情報に基づいて自船を予め定めた設定針路に誘導制御するものである。
【0034】
緊急停船部265は、緊急時に緊急停止押釦264を押すと、ジョイスティックレバー254でいかなる操船状態を指示していようとも、あるいは他の操縦モードで操船していても、現在の操船に係る舵角をキャンセルして、左舷舵103を取舵方向(上から見て時計回りの方向)に、右舷舵102を面舵方向(上から見て反時計回りの方向)に、それぞれハードオーバー(舵いっぱい)まで転舵させ、船に制動力を与えて停止させる。
【0035】
手動操船部257は、手動操舵輪256の回転操作により二枚の高揚力舵102、103の舵角を制御して操船するものである。
【0036】
ノンフォローアップ操船部259は、ノンフォローアップ操舵レバー258を左右に操作している時間に応じて右舷もしくは左舷に舵を切る。
【0037】
高揚力舵102、103の基本的な舵角の組合せ、およびジョイスティックレバー254の状態と、その呼称及びプロペラ後流線と運動方向を、
図9において説明する。
【0038】
図9中で、舵は水平断面で示してあり、その横あるいは下方に各々の舵の舵角を示している。舵角は右に取るのが正(+)、左に取るのが負(−)として表示し、これらの舵角の組み合わせに対する呼称を掲げている。プロペラ後流は、細い矢印線で、又、それによる船の推進方向を太い中抜き矢印線で画いている。
【0039】
ちなみに、「TURN TO PORT」(前進左旋回)は左舷舵−35°、右舷舵−35°であり、「ROTATE TO PORT」(船首左回頭)は左舷舵−70°、右舷舵−35°であり、「STERN TO PORT」(船尾左旋回)は左舷舵−105°、右舷舵+45°から+75°であり、「ASTERN TO PORT」(後進左旋回)は左舷舵−105°、右舷舵+75°から+105°であり、「AHEAD」(前進)は左舷舵0°、右舷舵0°であり、「HOVERING」(その場停止)は左舷舵−75°、右舷舵+75°であり、「ASTERN」(後進)は左舷舵−105°、右舷舵+105°であり、「TURN TO STARD」(前進右旋回)は左舷舵+35°、右舷舵+35°であり、「ROTATE TO STARD」(船首右回頭)は左舷舵+35°、右舷舵+70°であり、「STERN TO STARD」(船尾右旋回)は左舷舵−45°から−75°、右舷舵+105°であり、「ASTERN TO STARD」(後進右旋回)は左舷舵−75°から−105°、右舷舵+105°である。
【0040】
舵角指示部271は、舵角指示装置270の表示部272に、複数の舵角指示画像を各操縦モードに応じて選択的に切り替えて表示する。
【0041】
図3〜
図5に示すように、一つの舵角指示画像はジョイスティック操船時に適した広舵角指示画像301であり、他の一つの舵角指示画像は手動操船時およびオートパイロット操船時に適した狭舵角指示画像302であり、さらに他の一つの舵角指示画像は拡大舵角指示画像303である。
【0042】
各舵角指示画像301、302、303は、単一の表示盤面310に、各高揚力舵102、103の舵角をそれぞれ指し示す左右一対の二つの指針311、312と、各指針311、312の周囲にそれぞれ舵角目盛313、314、315を備えている。
【0043】
さらに、広舵角指示画像301は、舵角一致通知手段とホバリング通知手段を兼ねるインジケータランプ316を備えている。また、狭舵角指示画像302および拡大舵角指示画像303は、舵角値をデジタル表示するデジタル表示部317、3018を備えている。
【0044】
広舵角指示画像301の舵角目盛313の操舵角レンジは、内舷側に35°で外舷側に110°の舵角範囲を有している。狭舵角指示画像302の舵角目盛314の操舵角レンジは、内舷側に35°で外舷側に35°の舵角範囲を有している。拡大舵角指示画像302の舵角目盛315の操舵角レンジは、内舷側に20°で外舷側に20°の舵角範囲を有している。
【0045】
広舵角指示画像301において、指針311、312の一定回転角度範囲、例えば0°〜90°は、操舵角レンジの0°〜90°に相当し、舵角目盛313の表示単位角度は5°である。
【0046】
狭舵角指示画像302において、指針311、312の一定回転角度範囲、例えば0°から90°は、操舵角レンジの0°〜25°に相当し、舵角目盛314の表示単位角度は1°である。
【0047】
拡大舵角指示画像303において、指針311、312の一定回転角度範囲、例えば0°から90°は、操舵角レンジの0°から15°に相当し、舵角目盛315の表示単位角度は0.5°である。
【0048】
すなわち、狭舵角指示画像302の操舵角レンジは、広舵角指示画像301の操舵角レンジより狭い舵角範囲となり、舵角目盛314の表示単位角度が広舵角指示画像の表示単位角度より小さく、かつ指針311、312が実際の舵角より大きな角度に回転して舵角目盛314の当該舵角に相応する目盛値を指示する。
【0049】
たとえば、
図5に示す広舵角指示画像301においては、指針311、312が90°回転して指し示す舵角目盛313の目盛値は90°であり、指針311、312の回転角度と実際の舵角が一致している。
【0050】
図3に示す狭舵角指示画像302においては、指針311、312が90°回転して指し示す舵角目盛314の目盛値は25°であり、指針311、312の回転角度が実際の舵角より大きくなる。
【0051】
図4に示す拡大舵角指示画像303においては、指針311、312が90°回転して指し示す舵角目盛314の目盛値は15°であり、指針311、312の回転角度がさらに実際の舵角より大きくなる。
【0052】
以下、上記構成における作用を説明する。
1.ジョイスティックによる操縦モード
モード切替スイッチ260を操作してジョイスティックによる操縦モードを選択する。ジョイスティック操船部255は、ジョイスティックレバー254によって船体の指令運動方向、船首尾方向指令推力、船体横方向指令推力を指令する。
【0053】
この操船においては、プロペラ推進器101をプロペラ前進回転のままで、それぞれの高揚力舵102、103をそれぞれ独立に種々の角度に作動させてプロペラ後流を制御し、船尾回りの推力を360゜全方向にわたって制御する。この制御によって船の前後進、停止、前進旋回、後進旋回等を行わせることにより操船における機動性を向上させることができる。
【0054】
すなわち、両舷の舵の舵角の組合せを変えることによって、プロペラ後流を目的とする望ましい方向に向けてその方向に推力を変えることができる。ここに挙げた舵角の組み合わせは一例であり、目的とする推進方向及び推力を得るように、舵角の組み合わせを任意に変えることができる。
【0055】
このように、操船においては推進器推力の反転(プロペラ逆転)が不要であり、主機関は常に前進回転のままであらゆる操船制御が行え、主機関の回転数を加減せずとも、両舵の舵角を加減して、そのときのプロペラ回転数に対応した前進最大速度から後進最大速度まで無段階にきめ細かく船速を制御することができる。
【0056】
舵角指示部271は、操船者がモード切替スイッチ260を操作してジョイスティックによる操縦モードを選択すると、舵角指示装置270の表示部272に広舵角指示画像301を表示する。
【0057】
この広舵角指示画像301は、例えば「TURN TO PORT」(前進左旋回)において指針311、312がそれぞれ左舷舵−35°、右舷舵−35°を指し示し、例えば、「ROTATE TO PORT」(船首左回頭)において指針311,312がそれぞれ左舷舵−70°、右舷舵−35°を指し示す。
【0058】
このジョイスティックによる操船は舵角を精緻に制御するものではなく、舵角を大きく操作するので、広範囲な操舵角レンジが求められ、舵角目盛313の表示単位角度が5°でも操船者は高揚力舵102、103の舵角を適切に視認することができる。
【0059】
このジョイスティックによる操船において、操船システム(操舵制御装置)200は、ジョイスティック操船部255により各ロータリーベーン舵取機104、105に指示舵角としてホバリング指示舵角、つまり左舷舵−75°、右舷舵+75°を指示する際に、ジョイスティックレバー254の操作中にその指示舵角がホバリング指示舵角に一致した時点で、舵角指示部271が舵角指示装置270のインジケータランプ316をオレンジ色に点灯させて、指示舵角がホバリング指示舵角に一致したことを操船者に知らせる。
【0060】
さらに、ホバリング指示舵角を受けて高揚力舵102、103が指示舵角に向けて転舵し、各高揚力舵102、103の実舵角が船体110をその場に静止させるホバリング舵角に達すると、舵角指示部271は、インジケータランプ316をグリーン色に点灯させて、実舵角がホバリング舵角に達したことを操船者に知らせる。
【0061】
したがって、操船者はジョイスティックレバー254の操作においてインジケータランプ316の通知を受けることで自身が指示する指示舵角を正確にホバリング指示舵角に一致させることができる。よって、操船に不慣れな者でも迅速に、かつ正確にその場静止を操船することができる。
【0062】
また、操船者は、インジケータランプ316が通知するまでは各高揚力舵102、103の実舵角がホバリング舵角に達していないこと、およびインジケータランプ316の通知を受けることで各高揚力舵102、103の実舵角がホバリング舵角に達した事実とその時を正確に知ることができ、不慣れな操船者の操船の安全性が向上する。
2.緊急停船部による操縦モード
緊急停船押釦264を押すことの一挙動で、緊急停船部265を起動し、全ての操縦モードに優先して船舶を緊急に停船させることができる。すなわち、ジョイスティックレバー254の操舵モードにかかわらず、あるいは他の操縦モードにかかわらず、緊急停船部265によってクラッシュアスターンモード(左舷舵は左般105°、右舷舵は右舷105゜に舵を取る)に切換えて、両舵により非常に大きな制動力と後進力を発生させるので、プロペラ逆転による操船よりもはるかに短い時間、短い距離で船体を停止させることができる。
【0063】
また、クラッシュアスターンにおいても、主機関を止めて後進再始動をする必要がないため、操船中にいわゆる無制御状態となることがないので、航行における事態ヘのすばやい対応が可能である。
【0064】
尚、緊急停船部265による操船中に、船の特性、外乱等により旋回を起した場合や、または必要によって船首方位を含めて進行力向を変えたい場合には、そのままジョイスティツクレバー254を操作すれば通常のジョイスティック操作と同様に、ジョイスティックレバー254によって自在に操船して避行航行することができる。
3.オートパイロットによる操縦モード
通常航行操船では、モード切替スイッチ260を操作してオートパイロットによる操縦モードを選択する。
【0065】
ディスプレイ装置262のモニター画面上にオート操船操作画像269を表示し、モニター画面上のタッチ操作によりオート操船部253に自船の位置、進みたい方位、到達したい位置ないし船首尾線方位を入力し、設定した針路で船を自動誘導操船する。オート操船部253は、自船の現在位置情報、誘導経路情報、停船保持位置情報に基づいて適宜に舵角を制御する。
【0066】
舵角指示部271は、操船者がモード切替スイッチ260を操作してオートパイロットによる操縦モードを選択すると、舵角指示装置270の表示部272に狭舵角指示画像302を表示する。
【0067】
図3に示すように、狭舵角指示画像302においては、指針311、312の回転角度が実際の舵角より大きくなる。また、指針311、312がそれぞれ左舷舵−5°、右舷舵5°を指し示すとき、デジタル表示部317、318にそれぞれ「−5」、「5」を表示する。このオートパイロットによる操縦モードでは、操舵者が操舵することはない。しかし、オートパイロットが如何なる舵角を操舵しているのかを確認する際に、指針311、312が指し示す舵角の視認性が向上する。
【0068】
すなわち、指針311、312の回転角度が実際の舵角より大きくなることで、指針311、312の回転角度が実際の舵角と一致する場合に比べて、表示単位角度ごとに刻んだ目盛線313aの間隔を広く設定することができ、視認性が高まる。
【0069】
また、他の実施例として、オートパイロット操船時に舵角指示部271が広舵角指示画像301を舵角指示装置271の表示部272に表示することも可能である。
【0070】
この場合に、舵角指示部271は、モード切替スイッチ260によるモード切替操作を行わずとも、手動操舵輪256の操作を受けると、現操縦モードのオートパイロットによる操船を維持しつつ舵角指示装置271の表示部272に狭舵角指示画像302を表示する。
【0071】
このように、狭舵角指示画像302を表示することで、オートパイロットが如何なる舵角を操舵しているのかを確認する際に、指針311、312が指し示す舵角の視認性が向上する。
4.手動による操縦モード
モード切替スイッチ260を操作して手動操舵輪256による操縦モードを選択する。この操縦モードでは、手動操舵輪256の回転操作により二枚の高揚力舵102、103の舵角を手動操船部257に指示し、二枚の高揚力舵102、103の舵角を制御して操船する。
【0072】
舵角指示部271は、操船者がモード切替スイッチ260を操作して手動操舵輪256による操縦モードを選択すると、舵角指示装置270の表示部272に狭舵角指示画像302を表示する。
【0073】
図3に示すように、狭舵角指示画像302において操舵角レンジは、広舵角指示画像301の操舵角レンジ140°より狭い70°の舵角範囲となり、舵角目盛314の表示単位角度が広舵角指示画像301の表示単位角度の5°刻みより小さい1°刻みとなり、かつ指針311、312が実際の舵角より大きな角度に回転して舵角目盛314の当該舵角に相応する目盛値を指示するので、指針311、312の回転角度が実際の舵角と一致する場合に比べて、表示単位角度を示す目盛線314aの間隔を広く設定することができ、視認性が高まり、指針311、312を目標とする舵角目盛314の目盛線314aに合わせ易くなり、操舵手が微小な舵角を正確に制御することができる。
【0074】
さらに、操舵者が画像拡大スイッチ290をONすると、舵角指示部271は、舵角指示装置270の表示部272に拡大舵角指示画像303を表示する。
【0075】
拡大舵角指示画像303は、指針311、312の一定回転角度範囲における操舵角レンジが40°となり狭舵角指示画像302の操舵角レンジ70°よりさらに狭い舵角範囲となり、舵角目盛315の表示単位角度が狭舵角指示画像314の表示単位角度の1°刻みよりさらに小さい0.5°刻みとなり、かつ指針311、312が実際の舵角よりさらに大きな角度に回転して舵角目盛315の当該舵角に相応する目盛値を指示する。このため、舵角に視認性がさらに高まる。
5.ノンフォローアップの操縦モード
モード切替スイッチ260を操作してノンフォローアップ操縦レバー258による操縦モードを選択する。この操縦モードでは、ノンフォローアップ操船部259により、ノンフォローアップ操舵レバー258を左右に操作している時間に応じて右舷もしくは左舷に舵を切る。
【0076】
舵角指示部271は、操船者がモード切替スイッチ260を操作してノンフォローアップによる操縦モードを選択すると、舵角指示装置270の表示部272に狭舵角指示画像302を表示する。