(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【0005】
本開示の実施形態は、少なくとも600MPaの降伏強度及び少なくとも20%IACSの導電率を有する、銅(Cu)及びXを含む電鋳二元系銅合金を対象としており、Xは、Cr、Fe、W、Mo、B、Co、Ag、及びPからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、Xは、Cr、Fe、W、及びMoからなる群から選択される。他の実施形態では、合金は、少なくとも900MPaの降伏強度を有することができる。いくつかの実施形態では、合金は、少なくとも30%IACSの導電率を有することができる。また他の実施形態では、合金は、900MPaと1700MPaとの間の降伏強度を有することができる。更に他の実施形態では、合金は、30%IACSと70%IACSとの間の導電率を有することができる。
【0006】
いくつかの実施形態では、Cu−X二元合金は、600MPa〜900MPaの間の降伏強度とともに、少なくとも80%IACSの導電率を有することができる。これらの合金は、電気デバイス内の回路基板の接続用に使用することができる電気コネクタを形成するために有用であり得る。他の実施形態では、Cu−X二元合金は、1000MPa〜1200MPaの間の降伏強度とともに、少なくとも80%IACSの導電率を有することができる。更に他の実施形態では、Cu−X二元合金は、900MPa〜1500MPaの間の降伏強度とともに、少なくとも50%IACSの導電率を有することができる。
【0007】
いくつかの実施形態では、Cu及びXのイオンは、異なる電極電位(すなわち、還元電位)を有することができる。いくつかの実施形態では、CuとXとの間の電極電位の差ΔVは、±0.25V未満である。他の実施形態では、CuとXとの間の電極電位の差ΔVは、±0.5Vより大きい。更に他の実施形態では、CuとXとの間の電極電位の差ΔVは、−1.0Vから1.0Vの間の範囲とすることができる。
【0008】
本開示の実施形態では、Cu−X合金は、少なくとも0.1重量%のXを含むことができる。本開示の他の実施形態では、Cu−X合金は、0.1重量%から0.5重量%のXを含むことができる。本開示の更に他の実施形態では、Cu−X合金は、少なくとも1重量%のXを含むことができる。本開示のまた他の実施形態では、Cu−X合金は、30重量%までのXを含むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、Xは、Moとすることができ、Moの重量%は、0.1重量%から0.5重量%の範囲とすることができる。
【0009】
本開示の他の実施形態は、高強度及び高導電率を有するCu−X二元合金を製造する方法を対象としている。いくつかの実施形態では、電鋳二元系銅合金を製造する方法は、Cu及びXのイオンを有し、Xは、Cr、Fe、W、Mo、B、Co、Ag、及びPからなる群から選択される、電解質浴を準備することと、カソードのプリフォームの少なくとも一部分を電解質浴内に浸漬することと、電解質浴に電流を印加することと、Cu−X二元合金を形成するために、Cu及びXのイオンをカソードのプリフォームの一部分上に析出させることと、電鋳Cu−Xの物品を形成するために、X及び/又はCu
yX
zの粒子を析出させるように、Cu−X二元合金を熱処理することと、を含むことができる。
【0010】
いくつかの実施形態では、電解質浴は、少なくとも0.1重量%のXイオンを含む。いくつかの実施形態では、電解質浴は、30重量%までのXイオンを含む。
【0011】
本開示の実施形態では、電解質浴は、Cu及びXのイオンの電極電位を適合させるために、化学合成物を含むことができる。他の実施形態では、電解質浴は、Cu相の粒子微細化のための化学添加物を含むことができる。
【0012】
いくつかの実施形態では、方法は、Cu−X二元合金の硬度を増大するために、Cu−X二元合金を熱処理することを含むことができる。熱処理プロセスは、Cu−X二元合金を少なくとも100℃の温度に一定時間加熱することを伴うことができる。いくつかの実施形態では、Cu−X二元合金は、少なくとも200℃の温度に加熱することができ、他の実施形態では、Cu−X二元合金は、少なくとも350℃の温度に加熱することができる。更に他の実施形態では、Cu−X二元合金は、少なくとも400℃の温度に加熱することができる。いくつかの実施形態では、Cu−X二元合金は、少なくとも30分間加熱することができ、他の実施形態では、合金は、少なくとも100分間加熱することができる。更に他の実施形態では、Cu−X二元合金は、30分から300分の範囲の時間加熱することができる。
【0013】
いくつかの態様では、熱処理は、Cu−X二元合金を析出させて硬化させるために加熱することを含むことができる。そのような実施形態では、熱処理は、X及び/又はCu
yX
zの粒内粒子を合金の少なくとも0.1%体積分率を構成するように析出させるのに充分な、温度及び/又は時間で、Cu−X二元合金を加熱することを含むことができる。他の実施形態では、X及び/又はCu
yX
zの粒内粒子は、合金の少なくとも0.25%体積分率を構成することができる。他の実施形態では、方法は、X及び/又はCu
yX
zの粒内粒子を合金の少なくとも1%体積分率を構成するように析出させるのに充分な、温度及び/又は時間で、Cu−X二元合金を熱処理することを含むことができる。他の実施形態では、X及び/又はCu
yX
zの粒内粒子は、合金の少なくとも5%体積分率である。更に他の実施形態では、方法は、X及び/又はCu
yX
zの粒内粒子を合金の30%体積分率までを構成するように析出させるのに充分な、温度及び/又は時間で、Cu−X二元合金を熱処理することを含むことができる。
【0014】
いくつかの実施形態では、Cu−X二元合金は、時効処理中に固溶体から析出された合金内にナノスケールの粒子相としてXを含むことができる。本開示の実施形態では、粒内粒子は、X及び/又はCu
yX
zの粒子を含むことができる。いくつかの実施形態では、合金は、粒内粒子として少なくとも0.1%体積分率のX及び/又はCu
yX
zの粒子を含むことができる。いくつかの実施形態では、合金は、粒内粒子として少なくとも0.25%体積分率のX及び/又はCu
yX
zの粒子を含むことができる。いくつかの実施形態では、合金は、粒内粒子として少なくとも1%体積分率のX及び/又はCu
yX
zの粒子を含むことができる。いくつかの実施形態では、合金は、粒内粒子として少なくとも5%体積分率のX及び/又はCu
yX
zの粒子を含むことができる。他の実施形態では、合金は、粒内粒子として15%体積分率までのX及び/又はCu
yX
zの粒子を含むことができる。
【0015】
いくつかの実施形態では、方法は、電鋳Cu−Xの物品をカソードのプリフォームから分離する工程を更に含むことができる。
【0016】
本開示の他の実施形態は、電鋳Cu−X二元合金から製造された物品/デバイスを対象としている。いくつかの実施形態では、物品/デバイスとしては、少なくとも800MPaの降伏強度及び少なくとも20%IACSの導電率を有する、銅及びXを含む電鋳二元系銅合金を含む電気コネクタを挙げることができ、Xは、Cr、Fe、W、Mo、B、Co、Ag、及びPからなる群から選択される。
【発明を実施するための形態】
【0023】
添付図面において説明される代表的な実施形態が詳細に参照される。以下の説明は、実施形態を1つの好適な実施形態に限定することを意図してはいないことを理解されたい。反対に、以下の説明は、添付の特許請求の範囲により画定される記載された実施形態の趣旨及び範囲に含むことができるような、代替形態、修正形態、及び均等物をカバーすることを意図している。
【0024】
本開示は、高強度及び高導電率を有する電鋳銅(Cu)二元合金、二元系銅合金を製造する方法、及び二元系銅合金で製造された物品又はデバイスに関する。本開示の実施形態は、高強度(例えば、少なくとも600MPa)及び高導電率(例えば、少なくとも20%IACS)を有する電鋳Cu−X二元合金を対象としている。いくつかの実施形態では、Cu−X合金は、少なくとも900MPaの降伏強度、及び少なくとも30%IACSの導電率を有することができる。他の実施形態では、Cu−X合金は、900MPaと1700MPaとの間の降伏強度、及び30%IACSと70%IACSとの間の導電率を有することができる。他の実施形態では、Cu−X合金は、600MPaと1000MPaとの間の降伏強度、及び80%IACSと95%IACSとの間の導電率を有することができる。更に他の実施形態では、Cu−X合金は、900MPaと1200MPaとの間の降伏強度、及び80%IACSと95%IACSとの間の導電率を有することができる。いくつかの実施形態では、Cu−X二元合金はまた、高い疲労特性のための、向上した剪断弾性率も有することができる。
【0025】
銅の強度を向上するために、合金化元素を添加することができる。更に、任意選択の熱処理及び/又は析出硬化処理を、高強度、高導電率、及び良好な成形性の組み合わせを有する二元系銅合金を生成するために更に使用することができる。銅への合金化元素の添加は降伏強度を増大することができるが、それはまた、導電率を低減することもある。特定の理論又は作用様式に限定されるものではないが、様々な態様では、Xの溶質濃度が大きくなるほど、合金のCu相に入ることができるXはより多くなり、それは導電率を低減することがある。インゴット冶金と対照的に、本開示の実施形態では、Xの濃度は、増大することができる。インゴット冶金では、Cu内に溶解できるXの重量%は、低い(例えば、1重量%以下)ことがあるが、本開示の電鋳プロセスは、Cu内に溶解できるXの重量%を増大することができる。
【0026】
図1Aは、銅及び銅合金に対する導電率と降伏強度との間の関係のグラフ表現を示す。そのような既存の冶金では、導電率及び降伏強度は、反比例する。例えば、
図1Aに示すように、既存の冶金の純銅(例えば、純Cu)及び電鋳の純ナノ銅(例えば、ナノCu)は、80%IACS以上の導電率を有するが、両方の降伏強度は、600MPaを下回る。反対に、電鋳のCo−P合金(例えば、析出されたまま及びアニール後)は、1500MPaを上回る降伏強度を有するが、10%IACS未満の導電率を有する。
【0027】
しかし、本開示の実施形態は、高い導電率(少なくとも20%IACS)及び高い降伏強度(少なくとも600MPa)の両方を有する電鋳二元系銅合金(例えば、Cu−X合金)を対象としている。本開示の実施形態では、銅及び/又は銅合金の降伏強度は、電鋳プロセスによりCu及びXを共析出させることによって合金化元素Xの体積分率を増大することにより、向上することができる。いくつかの実施形態では、Cu−X二元合金はまた、高い疲労特性のための、向上した剪断弾性率も有することができる。
【0028】
いくつかの態様では、二元系銅合金は、少なくとも20%IACSの導電率を有する。いくつかの態様では、二元系銅合金は、少なくとも25%IACSの導電率を有する。いくつかの態様では、二元系銅合金は、少なくとも30%IACSの導電率を有する。いくつかの態様では、二元系銅合金は、少なくとも35%IACSの導電率を有する。いくつかの態様では、二元系銅合金は、少なくとも40%IACSの導電率を有する。いくつかの態様では、二元系銅合金は、少なくとも45%IACSの導電率を有する。いくつかの態様では、二元系銅合金は、少なくとも50%IACSの導電率を有する。いくつかの態様では、二元系銅合金は、少なくとも55%IACSの導電率を有する。いくつかの態様では、二元系銅合金は、少なくとも60%IACSの導電率を有する。いくつかの態様では、二元系銅合金は、少なくとも65%IACSの導電率を有する。いくつかの態様では、二元系銅合金は、少なくとも70%IACSの導電率を有する。いくつかの態様では、二元系銅合金は、少なくとも80%IACSの導電率を有する。
【0029】
いくつかの態様では、二元系銅合金は、少なくとも600MPaの降伏強度を有する。いくつかの態様では、二元系銅合金は、少なくとも700MPaの降伏強度を有する。いくつかの態様では、二元系銅合金は、少なくとも800MPaの降伏強度を有する。いくつかの態様では、二元系銅合金は、少なくとも900MPaの降伏強度を有する。いくつかの態様では、二元系銅合金は、少なくとも1000MPaの降伏強度を有する。いくつかの態様では、二元系銅合金は、少なくとも1100MPaの降伏強度を有する。いくつかの態様では、二元系銅合金は、少なくとも1200MPaの降伏強度を有する。いくつかの態様では、二元系銅合金は、少なくとも1300MPaの降伏強度を有する。いくつかの態様では、二元系銅合金は、少なくとも1400MPaの降伏強度を有する。いくつかの態様では、二元系銅合金は、少なくとも1500MPaの降伏強度を有する。いくつかの態様では、二元系銅合金は、少なくとも1600MPaの降伏強度を有する。
【0030】
様々な態様では、高強度、高導電率のCu−X二元合金は、電鋳プロセスにより製造することができる。電鋳プロセスは、Cu及び合金化元素Xを共析出させることを含む。Xは、Cr、Fe、W、Mo、B、Co、Ag、及びPからなる群から選択することができる。
【0031】
本開示のいくつかの実施形態は、高強度(例えば、少なくとも600MPa)及び高導電率(例えば、少なくとも20%IACS)を有する電鋳Cu−X二元合金を対象としている。他の実施形態では、Cu−X二元合金は、少なくとも900MPaの降伏強度、及び30%IACSでの導電率を有することができる。他の実施形態では、Cu−X二元合金は、600MPaと900MPaとの間の降伏強度、及び80%IACSと95%IACSとの間の導電率を有することができ、他の実施形態では、Cu−X二元合金は、1000MPaと1200MPaとの間の降伏強度、及び80%IACSと95%IACSとの間の導電率を有することができる。更に他の実施形態では、Cu−X二元合金は、900MPaと1700MPaとの間の降伏強度、及び30%IACSと70%IACSとの間の導電率を有することができる。
【0032】
図1Bは、本開示の実施形態による電鋳二元系銅合金と比較した、既存の冶金の銅及び銅合金に対する導電率と降伏強度との間の関係のグラフ表現を示す。
図1Bに示すように、既存の冶金の純Cu及びCu合金は、導電率と降伏強度との間の反比例の逆行する関係を有する傾向を有する。例えば、400MPa未満の降伏強度を有し90%IACSより大きい導電率を有する純Cuと比較して、Cu−Ni−Sn合金に関しては降伏強度が1200MPaに増大すると、導電率は、10%IACS未満である。
【0033】
反対に、本開示の実施形態は、高い導電率(少なくとも20%IACS)及び高い降伏強度(少なくとも600MPa)の両方を有する電鋳Cu−X二元合金である。いくつかの実施形態では、図に示すように、Cu−X二元合金は、600MPa〜900MPaの間の降伏強度とともに、少なくとも80%IACSの導電率を有することができる。これらの合金は、電気デバイス内の回路基板の接続用(例えば、B2B(基板対基板)用電源端子)に使用することができる電気コネクタを形成するために有用であり得る。他の実施形態では、図に示すように、Cu−X二元合金は、1000MPa〜1200MPaの間の降伏強度とともに、少なくとも80%IACSの導電率を有することができる。これらの合金は、電気デバイス内のバッテリ端子用に使用することができる電気コネクタを形成するために有用であり得る。更に他の実施形態では、Cu−X二元合金は、他の種類の電気コネクタ用に、900MPa〜1500MPaの間の降伏強度とともに、少なくとも50%IACSの導電率を有することができる。
【0034】
様々な態様では、本開示の合金は、電鋳プロセスにより製造することができる。「電着」又は「電気めっき」としてもまた呼ばれることもある「電鋳」プロセスは、金属イオンを含有する水溶液又は非水溶液を介してアノードとカソードとの間に電流を通す電気化学処理である。イオンは、還元されてカソード上に析出される。カソードは、プリフォーム、原型、又はマンドレルとすることができる。電鋳は、装飾効果、耐腐食性などを提供するコーティングとしてではなく、別個の構造体として使用されるという点で、電鋳は、通常の電着又は電気めっきコーティングとは異なる。
【0035】
電鋳プロセスの基本的工程は、析出させる金属イオンを含有する電解質浴(めっき浴又は溶液としても呼ばれることもある)の準備、カソードのプリフォーム、成形型、又はマンドレルを電解質浴内に配置すること、及び電流を電解質浴に印加することを含むことができる。電解質浴内の金属イオンは、電気分解により電解質浴から沈着してカソードのプリフォーム、成形型、又はマンドレル上に析出される。必要な厚さの金属が付加された時、金属で覆われたプリフォーム、成形型、又はマンドレルは、電解質浴から除去することができ、電着された金属は、電着された金属で全体が構成された別個の自立する物品である電鋳品を生成するために、プリフォーム、成形型、又はマンドレルから分離される。電鋳プロセスは、Cu及び合金化元素Xを共析出させることを含むことができる。Xは、Cr、Fe、W、Mo、B、Co、Ag、P、Sn、及びZnからなる群から選択することができる。いくつかの実施形態では、Xは、Cr、Fe、W、及びMoからなる群から選択することができる。
【0036】
いくつかの実施形態では、プリフォーム、成形型、又はマンドレルは、例えば、黄銅又はステンレス鋼だがこれらに限定されない金属である。いくつかの実施形態では、Cu及び合金化元素Xの共析出は、少なくとも50μmの厚さのCu−X二元合金の層がカソードのプリフォーム上に析出されるまで進行させることができる。他の実施形態では、Cu及び合金化元素Xの共析出は、少なくとも100μmの厚さのCu−X二元合金の層がカソードのプリフォーム上に析出されるまで進行させることができる。更に他の実施形態では、Cu及び合金化元素Xの共析出は、少なくとも200μmの厚さのCu−X二元合金の層がカソードのプリフォーム上に析出されるまで進行させることができる。
【0037】
電鋳二元系銅合金は、電気コネクタ(例えば、相互配線)などの物品/デバイスを製造するために使用することができる。電鋳二元系銅合金から製造された物品/デバイスは、既存のインゴット冶金の銅合金と比較して、向上した導電率、向上した降伏強度、及び/又は向上した疲労特性を有することができる。
【0038】
加えて、電鋳Cu−X二元合金の向上した導電率及び向上した降伏強度は、既存のインゴット冶金の銅合金の製造上の利点と比較して、多くの製造上の利点を有する。例えば、増大した降伏強度は、機械的健全性を維持しながらも、電気コネクタのサイズの低減を可能にすることができる。いくつかの実施形態では、Cu−X二元合金の実施形態から製造された電気コネクタは、既存の合金の電気コネクタと比較して、少なくとも10%のサイズの低減を有することができる。例えば、Cu−X二元合金から製造されたB2B用端子は、既存の合金の電気コネクタと比較して全体のサイズを低減することができる、高さ、長さ、又は両方の低減を有することができる。電気コネクタのこのサイズの低減は、電気デバイス内でコネクタが消費する空間の量を低減することができ、それにより、より小さなデバイス、及び/又は電気デバイス内の他の構成要素のための追加の内部空間を可能にする。加えて、電気コネクタの向上した降伏強度はまた、機械的補強を提供する追加の構成要素の必要性も低減することができる。例示として、限定することを意図するものではないが、例えば、基板対基板ディスプレイリセプタクルでは、保持クリップの必要性をなくすことを可能にすることができる。別の利点は、本開示のCu−X二元合金の増大した導電率は、電気コネクタを介したより速い充電を可能にすることができることである。加えて、電鋳プロセスは、ほとんどもしくはまったく追加の機械加工、仕上げ加工、及び/又は研磨を必要としない、ネットシェイプの物品/デバイスの製造を可能にすることができる。
【0039】
本開示の実施形態では、Cu及びXのイオンを、電解質浴に添加することができる。いくつかの実施形態では、電解質浴内のCu及びXのイオンの濃度は、Xが少なくとも0.1重量%以上であるようにすることができる。他の実施形態では、電解質浴内のCu及びXのイオンの濃度は、Xが少なくとも1重量%以上であるようになっている。また他の実施形態では、電解質浴内のCu及びXのイオンの濃度は、Xが少なくとも5重量%以上であるようになっている。更に他の実施形態では、Xの濃度は、30重量%までとすることができる。いくつかの実施形態では、電解質浴内のCu及びXのイオンの濃度は、Xが0.1重量%と0.5重量%との間の範囲であるようにすることができる。他の実施形態では、電解質浴内のCu及びXのイオンの濃度は、Xが0.1重量%と1重量%との間の範囲であるようになっている。
【0040】
いくつかの実施形態では、電解質浴は、水溶液とすることができる。他の実施形態では、電解質浴は、非水系とすることができる。いくつかの実施形態では、電解質浴はまた、追加の化学合成物又は粒子微細化添加物も含むことができる。
【0041】
本開示の実施形態では、電解質浴内のCu及びXのイオンは、ネットシェイプの物品を形成するために、電解質浴に電流を印加することにより、カソードのプリフォーム、成形型、又はマンドレル上に電着させることができる。いくつかの実施形態では、ネットシェイプの物品は、電気コネクタを含む電気構成要素を形成するように製造することができる。他の実施形態では、電着されたCu−X二元合金は、電気コネクタを形成するために使用することができる。いくつかの実施形態では、Cu−Xのイオンは、成形型、プリフォーム、又はマンドレル上に電着させて、その後Cu−X二元合金の強度を高めるために粒子相を析出させるようにアニールすることができる。
【0042】
インゴット冶金と対照的に、本開示の実施形態では、Xの濃度は、増大することができる。インゴット冶金では、Cu内に溶解できるXの重量%は、低い(例えば、1重量%未満)ことがあるが、本開示の電鋳プロセスは、Cu内に溶解できるXの重量%を増大することができる。例えば、限定することを意図するものではないが、XがPである場合、それはインゴット冶金によりCu内に1.7重量%の溶解性を有することができる。しかし、本開示の電鋳プロセスの実施形態により、Cu内のPの溶解性は、増大させることができる(例えば、5重量%)。別の実施例では、XがMoである場合、それはインゴット冶金によりCu内に0重量%の溶解性を有する(すなわち、不溶解性)。しかし、本開示の電鋳プロセスの実施形態により、Moの溶解性は、増大させて0.1重量%から1.0重量%の範囲とすることができる。
【0043】
また、合金化元素Xは、本開示の電鋳プロセスにより、Cu相全体に均一に溶解させることができる。そのように、合金が析出硬化のために熱処理にかけられる場合、析出相は、より均一に分布させることができる。本開示のいくつかの実施形態により、熱処理プロセスは、二元系銅合金の硬度及び/又は降伏強度を増大するために、合金化元素Xの粒内粒子及び/又はCu
yX
zの粒内粒子を析出させることができる。いくつかの実施形態では、粒内粒子は、合金化元素Xのすべて又はほぼすべてを消費することができる。したがって、合金化元素Xは、熱処理中の析出を促進するために、低溶解性を有するように選択されなければならない。いくつかの実施形態では、Xイオンは、Cu内に少なくとも0.1重量%の溶解性を有することができる。いくつかの実施形態では、Xイオンは、Cu内に少なくとも1重量%の溶解性を有することができる。いくつかの実施形態では、Xイオンは、Cu内に0.1重量%と1重量%との間の溶解性を有することができる。また他の実施形態では、Xイオンは、Cu内に少なくとも5重量%の溶解性を有することができる。更に他の実施形態では、Xイオンは、Cu内に30重量%までの溶解性を有することができる。
【0044】
例示的実施例として、限定することを意図するものではないが、本開示の電鋳プロセスの実施形態により、Xは、Moとすることができる。インゴット冶金では、Moは、Cu内に0重量%の溶解性を有する。しかし、本開示の実施形態による電気めっきプロセスは、Cu内のMoの過飽和溶解含有量を0.1重量%から1.0重量%の範囲とするように、増大することができる。電気めっきプロセスは、Cu内の過飽和状態の固体内のMoの量の増大を可能にし、Cu相内の固溶体Moの形成を可能にする。Cu相内の固溶体内へのMoの添加は、合金の強度を向上する。しかし、Moの溶解性は、比較的低いため、Cuの高導電率は、保持される。いくつかの実施形態では、Cu−X合金(例えば、XがMo)の降伏強度及び/又は硬度は、以下により詳細に説明する時効処理及び/又は析出硬化処理により、更に増大することができる。
【0045】
例えば、いくつかの実施形態では、本開示による電気めっきプロセスにより導入されたMoの存在は、粒度の制御を可能にする。合金溶解物を使用する既存のインゴット冶金では、MoがCu内にゼロの平衡溶解性を有するため、Cu内のMoの固溶体を達成できない。したがって、合金溶解物が凝固すると、Moは、粗い相を形成する。しかし、本開示の実施形態によりMoがCuに電気めっきされる場合では、Cu内のMoの固溶体を達成することができる。そのような実施形態では、Moは、ナノサイズ粒子の形成物とすることができる。他の実施形態では、Xは、Wとすることができ、Wもまた、ナノサイズ粒子の形成物とすることができる。Moと同様に、いくつかの実施形態では、本開示による電気めっきプロセスにより導入されたWの存在は、粒度の制御を可能にする。
【0046】
いくつかの実施形態では、Cu−X二元合金の降伏強度はまた、粒子微細化(すなわち、Cu相の粒子のサイズを制御すること)により高めることができる。本開示の実施形態による電気めっきプロセスによるX相の添加は、ナノスケール粒度の安定化を可能にすることができ、結果として、高導電率とともに高強度の合金になる。既存の冶金(すなわち、鋳造、圧延など)では、Cu相は、粗い粒子を有することがあるが、本開示の実施形態では、電鋳プロセスは、Cu相に対して細かな(すなわち、ナノスケールの)粒子を生成することができる。主な粒子微細化効果は、溶質の添加によるものである。例示的な実施例として、限定することを意図するものではないが、MoであるXを有する実施形態では、Moの溶質は、平均粒度(すなわち、粒子の平均直径)を、形成したままの二元合金内の0.5重量%Moの試料内で約25nmであるように安定化することを示した。
【0047】
形成したままのCu−X合金は、時効処理及び/又は析出硬化処理により更に強化することができる。例えば、電気めっきプロセスによりCu及びXのイオンの析出により形成したままの合金では、平均粒度(すなわち、粒子の平均直径)は、25nmとすることができ、時効処理及び/又は析出硬化処理により、Xの一部を強化する粒内粒子として機能するように析出させることができると同時に、合金の平均粒度を増大することができる。例えば、Xを含有する粒内粒子は、10nm未満のサイズ(すなわち、直径)とすることができると同時に、粒子の直径は、25nmから800nmまで成長することができる。これは、電気めっきプロセスにより形成したままの合金と比較して、二元系銅合金の降伏強度及び/又は硬度を増大させることができる。
【0048】
粒子微細化は、下記のホールペッチ(Hall-Petch)(H−P)の式により記述される障害転位運動を生成するためにより多くの粒界を導入するように、Cu相の粒度を低減することにより、二元系銅合金を強化するために使用することができる。
σ
y=σ
0+d
−1/2
しかし、強度は、粒度の減少に伴い単調には増大しない。
【0049】
本開示のいくつかの実施形態では、Cu相の粒度の微細化は、電解質浴への粒子微細化添加物の含有により促進することができる。他の実施形態では、Cu粒子の成長を支援する添加物(促進剤と呼ばれることもある)を使用することができる。例えば、限定することを意図するものではないが、Cu粒子の成長の支援するための1つの添加物は、二(ナトリウム3−スルフォン酸塩−1−プロピル)硫化物[NaSO
3−(CH
2)
3−S−S−(CH
2)
3−SO
3Na]である。この添加物は、カソードのプリフォーム、マンドレル、又は成形型の表面上の好適な結晶部位上にCuが析出するのを助成することにより、めっき速度を加速することができる。更に他の実施形態では、平滑剤を、Cuの厚さ分布を改善するために使用することができる。平滑剤の非限定的な一例は、ポリエチレングリコールである。この平滑剤は、カソードのプリフォーム、マンドレル、又は成形型の表面の高電流密度の領域内に見られることがある。それゆえに、それは、高電流密度エリア及び低電流密度エリアでの厚さの差を低減することができる。他の実施形態では、平滑剤は、エピハロヒドリンと複素環式アミンの反応生成物、エーテル結合を含有するポリエポキシド化合物と、窒素、硫黄、並びに窒素及び硫黄の混合物から選択される異種原子を含む化合物の反応生成物、BDEとイミダゾールの1:0.6反応生成物、又は当該技術分野で既知の任意の他の好適な平滑剤とすることができる。
【0050】
本開示の実施形態では、Cu及び合金化元素Xのイオンは、同時に析出(すなわち、共析出)させることができる。いくつかの実施形態では、Cu及びXのイオンは、同じ又は類似の速度で析出させることができる。
【0051】
CuとXとの間のより貴な元素が電解質溶液からより速い速度で沈着したいであろうため、Cu及びXは、XがCuと適合する電極電位を有するように選択することにより、又は電解質溶液(すなわち、めっき浴)内への化学合成物の添加により、共析出させることができる。
【0052】
例えば、いくつかの実施形態では、Xは、Cuと類似の電極電位を有することができる。換言すれば、ΔVとして既知のCuとXとの間の電極電位の差は、比較的小さい。いくつかの実施形態では、ΔVは、Cu及びXが類似の速度で電解質溶液から析出(又は沈着)するように、±0.20Vとすることができる。他の実施形態では、ΔVは、±0.25V未満とすることができる。また他の実施形態では、ΔVは、±0.3V未満とすることができる。更に他の実施形態では、ΔVは、±0.5V未満とすることができる。そのような実施形態では、電極電位の差は、Cu及びXのイオンの濃度により容易に制御することができる。
【0053】
電解質浴内のCu及びXのイオンが類似の電極電位を有する場合、合金として析出されるCu及びXの重量比は、電解質浴内のCu及びXのイオンの濃度の比に類似する傾向がある。この特性は、析出される特徴内の析出される合金組成の予測可能性及び制御に適している。
【0054】
対照的に、合金化元素Xが類似の電極電位を有さない場合、析出される特徴内の合金組成の予測及び制御は、より困難になる。そのような実施形態では、ΔVは、大きいことがある(例えば、±0.50V)。いくつかの実施形態では、ΔVは、±0.3Vより大きいことがある。他の実施形態では、ΔVは、±0.5Vより大きいことがある。更に他の実施形態では、ΔVは、±1.35Vと同じ程度より大きいことがある。そのような実施形態では、ΔVが大きい場合、電解質浴に化学合成物を添加することができる。化学合成物の添加で、結果として、Cu及びXを類似のめっき速度で共析出させることができる、より小さい有効ΔVにすることができる。使用することができる化学合成物のいくつかの例は、EDTA、HEDTA、DTPA、GLDA、NTA、EDG、PDTA、シュウ酸、クエン酸、プロピオン酸、リンゴ酸、ニトリロ三酢酸、酒石酸、並びに当業者に既知の他の好適な化学合成物である。
【0055】
化学合成物(キレート剤などの)の添加に加えて、いくつかの実施形態では、めっきに使用される電流は、パルス電流を使用することにより、電極電位差を低減するために使用することができる。パルス電流は、いくつかの実施形態では化学合成物とともに使用することができるが、他の実施形態では、パルス電流は、化学合成物の添加なしで使用することができる。
【0056】
Cu及びXのイオンの電気化学電位の差は、めっき処理の熱力学部分を表現することができる。めっき処理の動力学的部分は、表面上に析出される表面付近のイオンの速さに関係し、それは表面でのイオン濃度を減少させる。一方、溶液のバルク内のイオンは、表面付近の領域に移動し、表面付近の領域でのイオン濃度を補充する。例えば、限定することを意図するものではないが、Cu−Cr二元合金に対して、Cu及びCrのイオンが、電解質浴内に存在する。Cuは、析出に対してCrイオンより低い電圧を有し、それゆえに、Cuは、Crイオンより析出に対して優先する。そのように、印加される電流が充分に強い場合、表面領域付近のCuイオンは、Cuイオンが電解質溶液のバルクから補充され得るより速い速度で消費されることがある。したがって、ある時点で、Crイオンは、Cuイオンと共析出を開始することができる。
【0057】
しかし、強い電流が連続的に印加される場合、表面付近にCuイオンの析出を継続するのに充分なイオンがないことがある。そのような場合、めっき層は、樹枝状になることがある。Cu及びCrのイオンの共析出する能力を高めてめっき層が樹枝状になる可能性を制限するために、パルス(又は複合波形)めっき手法を使用することができる。電流を印加するためにパルス(又は複合波形)を使用する実施形態では、電流は、一定時間期間(すなわち、パルス)の間印加し、次に一定時間期間の間停止することができる。動作中、電流がパルス周期の間印加される場合、カソードのプリフォーム、マンドレル、又は成形型の表面領域付近のCu及びX(例えば、Cr)のイオンの両方が、表面上に共析出される。パルス周期が終了した後、電流は停止し、それにより電解質のバルク内のイオンが表面領域に向かって移動することが可能になる。これは、大きな電気化学電位の差を有する金属を一体にめっきさせることを可能にする。
【0058】
いくつかの実施形態では、電流のパルスを提供するために、複合波形を使用することができる。限定することを意図するものではないが、使用することができる波形の一例は、以下のものである。
(1)20msecの間、20ASD(平方デシメートルあたりアンペア)(Cu及びCrを共析出させることを可能にする)
(2)3msの間、−50ASD(これは分散及び脆弱に形成された種の除去に役立つ)
(3)5msecの間、電流なし(イオンが表面領域に移動するのを可能にする)
(4)20msecの間、2ASD(Cuが析出するのを可能にする)
(5)3msの間、−50ASD(これは分散及び脆弱に形成された種の除去に役立つ)
(6)5msecの間、電流なし(イオンが表面領域に移動するのを可能にする)
このシーケンスは、所望の量のCu及びXのイオンが析出されるまで、及び/又はめっき層が所望の厚さになるまで、連続的に繰り返すことができる。他の実施形態では、2つのパルスの時間及び電流密度は、調整することができ、それにより析出物内のX/Cuの比の制御が可能になる。
【0059】
他の実施形態では、Cuは、析出に対してΔVが正であるようなXより高い電圧を有することができる。例えば、限定することを意図するものではないが、Cu−X二元合金に対して、Xは、Moとすることができる。Cuは、析出に対してMoイオンより高い電圧を有する。したがって、ΔVが正であり、Moが析出に対してCuイオンより低い電圧を有し、それゆえに、Moは、Cuイオンより析出に対して優先する。そのように、印加される電流が充分に強い場合、Cuイオンは、Moイオンと共析出することができる。
【0060】
Cu及びXのイオンの電極電位に加えて、他の要因がCu及びXのイオンのめっき(析出)速度に影響することがある。他の要因としては、カソード効率、電流密度、電解質浴内への化学合成物及び/又は粒子微細化添加物の添加、電解質浴の攪拌、電解質浴のpH、電解質浴の温度、並びにCu及びXのイオンの濃度、並びに化学合成物及び/又は粒子微細化添加物の濃度を挙げることができる。カソード電流は、印加される電流、Cu及びXのイオンをめっきするために必要な電流、電解質浴内に伝導される電流、水素の生成による電流、及び他の電気化学反応による電流の関数である。
【0061】
いくつかの実施形態では、Cu及び合金化元素Xの共析出は、少なくとも50μmの厚さのCu−X二元合金の層がカソードのプリフォーム上に析出されるまで進行させることができる。他の実施形態では、Cu及び合金化元素Xの共析出は、少なくとも100μmの厚さのCu−X二元合金の層がカソードのプリフォーム上に析出されるまで進行させることができる。更に他の実施形態では、Cu及び合金化元素Xの共析出は、少なくとも200μmの厚さのCu−X二元合金の層がカソードのプリフォーム上に析出されるまで進行させることができる。必要な厚さの合金が析出された時、合金で覆われたプリフォーム、成形型、又はマンドレルは、電解質浴から除去することができ、電着された金属は、電着された金属で全体が構成された別個の自立する物品である電鋳品を生成するために、プリフォーム、成形型、又はマンドレルから分離することができる。
【0062】
いくつかの実施形態では、Cu−X二元合金がカソードのプリフォーム、成形型、又はマンドレル上にめっきされた後で、Cu−X二元合金は、電鋳Cu−X二元合金の硬度を更に増大するために、任意選択的に熱処理プロセスにかけることができる。例示として、限定することを意図するものではないが、例示的なCu−Mo二元合金は、電着された状態で260HVの硬度を有することができ、次に300HVを超える硬度に向上させるために熱処理することができる。複数の実施形態では、Cu−X二元合金の硬度は、熱処理プロセスにより少なくとも20%増大させることができる。いくつかの実施形態では、Cu−X二元合金の硬度は、熱処理プロセスにより少なくとも25%増大させることができる。他の実施形態では、Cu−X二元合金の硬度は、熱処理プロセスにより少なくとも30%増大させることができる。更に他の実施形態では、Cu−X二元合金の硬度は、熱処理プロセスにより20%から50%増大させることができる。
【0063】
熱処理プロセスは、Cu−X二元合金を少なくとも100℃の温度に一定時間加熱することを伴う。いくつかの実施形態では、Cu−X二元合金は、少なくとも200℃の温度に加熱することができ、他の実施形態では、Cu−X二元合金は、少なくとも350℃の温度に加熱することができる。更に他の実施形態では、Cu−X二元合金は、少なくとも400℃の温度に加熱することができる。また他の実施形態では、Cu−X二元合金は、100℃と600℃との間の温度に加熱することができる。いくつかの実施形態では、Cu−X二元合金は、少なくとも30分間加熱することができ、他の実施形態では、合金は、少なくとも100分間加熱することができる。更に他の実施形態では、Cu−X二元合金は、30分から300分の範囲の時間加熱することができる。
【0064】
他の実施形態では、Cu−X二元合金は、合金を析出させて強化するために、熱処理プロセスにかけることができる。熱処理プロセスの間、Cu−X合金は、合金を強化するために、X及び/又はCu
yX
zを粒内粒子としてCu相粒子内に析出させるのに充分な温度に加熱することができる。いくつかの実施形態では、Cu−X合金は、X相の一部を粒内粒子に析出させるのに充分な時間、加熱することができる。いくつかの実施形態では、粒内粒子は、X粒子とすることができ、他の実施形態では、粒内粒子は、Cu
yX
z粒子とすることができる。更に他の実施形態では、粒内粒子は、X粒子及びCu
yX
z粒子の組み合わせとすることができる。
【0065】
いくつかの実施形態では、粒内粒子の体積分率は、少なくとも0.1体積%とすることができる。他の実施形態では、粒内粒子の体積分率は、少なくとも0.25体積%とすることができる。更に他の実施形態では、粒内粒子の体積分率は、少なくとも1体積%とすることができる。他の実施形態では、それは、5体積%とすることができる。更に他の実施形態では、粒内粒子の体積分率は、15体積%までとすることができる。
【0066】
本開示の実施形態では、Cu−X二元合金から電鋳された物品及び/又はデバイスが製造され、Cu及びXは、成形型、プリフォーム、又はマンドレル上に共析出される。Xは、Cr、Fe、W、Mo、B、Co、Ag、及びPからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、Xは、Cr、Fe、W、及びMoからなる群から選択することができる。他の実施形態では、物品及び/又はデバイスは、好適な寸法の負荷に耐える基板及び/又は基板マンドレルに、本開示のCu−X二元合金を電気めっきすることにより形成される。
【0067】
図2Aに示すように、本開示のいくつかの実施形態の電鋳プロセス200Aは、Cu及びXのイオンを有する電解質浴を準備する工程210、カソードのプリフォームの少なくとも一部分を電解質浴内に浸漬する工程220、電解質浴に電流を印加する工程230、及びCu−X二元合金を形成するためにCu及びXのイオンをカソードのプリフォームの一部分上に析出させる工程240を含む。いくつかの実施形態では、電鋳プロセスはまた、電鋳Cu−Xの物品をカソードのプリフォームから分離することも含むことができる。
【0068】
いくつかの実施形態では、電解質浴は、水溶液とすることができ、他の実施形態では、電解質浴は、非水系とすることができる。いくつかの実施形態では、電解質浴は、対応する酸とともに、銅イオン、Xイオン、及び硫酸塩又はフッ化ホウ素酸塩イオンのいずれかを含有する、銅酸浴とすることができる。銅イオンの好適なソースとしては、硫酸銅、塩化銅、酢酸銅、硝酸銅、フルオロホウ酸銅、メタンスルフォン酸銅、フェニルスルフォン酸銅、フェノールスルホン酸銅、及びp−トルエンスルホン酸銅が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、銅酸浴は、任意選択の添加物を含むことができる。例として、限定することを意図するものではないが、酸浴としては、硫酸銅、H
2SO
4、二(ナトリウム3−スルフォン酸塩−1−プロピル)硫化物、及びポリエチレングリコールを挙げることができる。他の実施形態では、電解質浴は、Cuイオンのソースとしてピロリン酸銅溶液を含むことができる。更に他の実施形態では、電解質浴は、イオン性液体を含むことができる。
【0069】
前述したように、Cu及びXのイオンのめっき(すなわち、析出)速度は、イオンの電極電位だけでなく、カソード効率、電流密度、電解質浴内への化学合成物及び/又は粒子微細化添加物の添加、電解質浴の攪拌、電解質浴のpH、電解質浴の温度、並びにCu及びXのイオンの濃度、並びに化学合成物及び/又は粒子微細化添加物の濃度を含む他の要因により影響される。
【0070】
いくつかの実施形態では、キレート剤(例えば、化学合成物)を、金属を析出させるための高電流パルスを可能にしながら金属を安定化するために使用することができる。可能なキレート剤は、EDTA、HEDTA、DTPA、GLDA、NTA、EDG、PDTA、シュウ酸、クエン酸、プロピオン酸、リンゴ酸、ニトリロ三酢酸、酒石酸である。
【0071】
他の態様では、キレート剤は、電解質浴内にXイオンを生成するために、Xの化合物の触媒作用反応を促進することができる。特定の機序又は作用様式に限定されることを望むものではないが、キレート剤用のソースは、電解質浴の溶液内に添加することができる、又はカソードのプリフォームは、キレート剤用のソースを提供することができる。
【0072】
いくつかの実施形態では、キレート剤は、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、又は他の好適な薬剤とすることができるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、亜鉛などのキレート剤は、当該技術分野で既知の任意の形態とすることができる。例えば、いくつかの実施形態では、亜鉛などのキレート剤は、金属塩として電解質浴内に提供することができる。そのような実施形態では、亜鉛塩は、硝酸亜鉛Zn(NO
3)
2、塩素酸亜鉛Zn(ClO
3)
2、硫酸亜鉛(ZnSO
4)、リン酸亜鉛(Zn
3(PO
4)
2、モリブデン酸亜鉛(ZnMoO
4))、クロム酸亜鉛ZnCrO
4、亜ヒ酸亜鉛Zn(AsO
2)
2、ヒ酸亜鉛8水塩(Zn(AsO
4)
2・8H
2O)、又は任意の他の既知の好適な亜鉛のソースとすることができる。
【0073】
他の実施形態では、カソードのプリフォームを、キレート剤を提供するためのソースとすることができる。例示として、例えば、これに限定されないが、カソードのプリフォームは、亜鉛を含む黄銅として、亜鉛キレート剤のソースとすることができる。
【0074】
Cu−X二元合金を電鋳する方法の別の実施形態を、
図2Bに示す。本開示のいくつかの実施形態の電鋳プロセス200Bは、Cu及びXのイオンを有する電解質浴を準備する工程210、カソードのプリフォームの少なくとも一部分を電解質浴内に浸漬する工程220、電解質浴に電流を印加する工程230、Cu−X二元合金を形成するためにCu及びXのイオンをカソードのプリフォームの一部分上に析出させる工程240、及び追加の任意選択の、合金を時効硬化するためにCu−X二元合金を熱処理する工程250を含む。いくつかの実施形態では、電鋳プロセスはまた、電鋳Cu−Xの物品をカソードのプリフォームから分離する工程260も含むことができる。
【0075】
そのような実施形態では、方法200Bの工程210〜工程240は、方法200Aの対応する工程と同様である。しかし、方法200Bは、Cu−X二元合金がカソードのプリフォーム、成形型、又はマンドレル上にめっきされた後で、電鋳Cu−X二元合金の硬度を更に増大するために、Cu−X二元合金を熱処理プロセスにかけることができる、工程250を含むことができる。加熱工程250のプロセスは、一定時間Cu−X二元合金の硬度を増大する温度にCu−X二元合金を加熱することを伴う。いくつかの実施形態では、Cu−X二元合金は、少なくとも100℃の温度に一定時間加熱することができる。いくつかの実施形態では、Cu−X二元合金は、少なくとも200℃の温度に加熱することができ、他の実施形態では、Cu−X二元合金は、少なくとも350℃の温度に加熱することができる。更に他の実施形態では、Cu−X二元合金は、少なくとも400℃の温度に加熱することができる。また他の実施形態では、Cu−X二元合金は、100℃と600℃との間の温度に加熱することができる。いくつかの実施形態では、Cu−X二元合金は、少なくとも30分間加熱することができ、他の実施形態では、合金は、少なくとも100分間加熱することができる。更に他の実施形態では、Cu−X二元合金は、30分から300分の範囲の時間加熱することができる。
【0076】
いくつかの実施形態では、加熱工程250は、析出強化することを含むことができる。そのような実施形態では、熱処理プロセスの間、Cu−X合金は、X及び/又はCu
yX
zの粒内粒子をCu相粒子内に析出させるのに充分な温度に加熱することができる。いくつかの実施形態では、Cu−X合金は、すべて又はほぼすべてのX相を粒内粒子に析出させるのに充分な時間、加熱することができる。いくつかの実施形態では、粒内粒子は、X粒子とすることができ、他の実施形態では、粒内粒子は、Cu
yX
z粒子とすることができ、更に他の実施形態では、粒内粒子は、X及びCu
yX
zの粒子の組み合わせとすることができる。
【0077】
そのような実施形態では、Cu−X二元合金の硬度は、析出硬化により少なくとも20%増大させることができる。いくつかの実施形態では、Cu−X二元合金の硬度は、析出硬化により少なくとも25%増大させることができる。他の実施形態では、Cu−X二元合金の硬度は、析出硬化により少なくとも30%増大させることができる。他の実施形態では、Cu−X二元合金の硬度は、析出硬化により少なくとも40%増大させることができる。他の実施形態では、Cu−X二元合金の硬度は、析出硬化により少なくとも50%増大させることができる。更に他の実施形態では、Cu−X二元合金の硬度は、析出硬化により20%から50%増大させることができる。
【0078】
例示的な実施例として、限定することを意図するものではないが、0.1重量%〜0.5重量%のMoを有する例示的なCu−Mo合金に対して、Moの一部は、粒内粒子として析出させることができる。いくつかの実施形態では、粒内粒子は、Mo粒子とすることができ、他の実施形態では、粒内粒子は、Cu
yMo
z粒子とすることができ、更に他の実施形態では、粒内粒子は、Mo粒子及びCu
yMo
z粒子の組み合わせとすることができる。
【0079】
いくつかの実施形態では、粒内粒子の体積分率は、少なくとも0.1体積%とすることができる。他の実施形態では、粒内粒子の体積分率は、少なくとも0.25体積%とすることができる。更に他の実施形態では、粒内粒子の体積分率は、少なくとも1体積%とすることができる。他の実施形態では、それは、5体積%とすることができる。更に他の実施形態では、粒内粒子の体積分率は、0.2体積%から1.5体積%の範囲とすることができる。
【0080】
いくつかの実施形態では、
図3に示すように、電鋳プロセスは、反応器310、Cu及びXのイオンを有する電解質浴320、例えばアノードの電極330、電源340、及びコントローラ350を含む、Cu及びXのイオンを電着するための槽300内で行うことができる。更に、カソードのプリフォーム360(成形型又はマンドレルとしても呼ばれる)は、電解質浴320内に少なくとも部分的に浸漬される。電解質浴320は、カソードのプリフォームの表面上に析出されるCu及びXの金属イオン(単数又は複数)のソースを含む。いくつかの実施形態では、電解質浴は、Cu及びXが類似の速度でめっきされるような化学合成物を含むことができる。いくつかの実施形態では、電解質浴は、Cu相の粒子微細化を促進するための添加物を含むことができる。
【0081】
動作中、電極330(例えば、アノード)は、電解質浴と電気的接触をしている。電源340は、カソードのプリフォーム360と電極330との間に、Cu及びXのイオンのカソードのプリフォーム上への電着を促進する電流(例えば、電力)を供給する。
【0082】
いくつかの実施形態では、アノードは、可溶性とすることができ、他の実施形態では、アノードは、不溶解性とすることができる。消耗され得るアノードを有する実施形態では、アノードは、析出されるイオン(Cu又はX)でできており、溶液内のCu及び/又はXのイオンを補充するように溶解する。不溶解性のアノードが使用される場合、いくつかの実施形態では、Cu及び/又はXのイオン含有量を維持するために、金属塩の定期的添加を溶液に行うことができる。
【0083】
イオンを電着するために使用される電流は、定常流として常時印加しなくてもよい。例えば、パルスめっき又は逆パルスめっきを使用することができる。パルス又は逆パルスめっきでは、電流が印加されない期間が後に続く、高強度の短いバーストで電流が印加される。サイクルは、オフ時間に対するオン時間の比(すなわち、デューティサイクル)、及び周波数を表す。デューティサイクル及び周波数を変化させることにより、所望の析出物の特性の変化を得ることができる。したがって、電着プロセスは、例えば、電位又はめっき電流密度のいずれかを変調することにより制御することができる。他の実施形態では、パルスは、2つ以上の電流を含む複合波形とすることができる。例えば、複合波形は、Cu及びXのイオンを共析出させるための第1の電圧での第1の電流パルス、及びCuイオンを析出させるための第2の電圧での第2の電流パルスを含むことができる。更に、析出されるCu及びXのイオンの特性は、電解質の組成、pH、温度、攪拌、電位、及び電流密度などの要因により決定される。
非限定的な実施例の合金
Cu−Cr合金
【0084】
いくつかの実施形態では、Cu−X二元合金は、Cu−Cr合金とすることができる。そのような実施形態では、上述の実施形態による、硫酸クロム(II)又は、硫酸クロム(III)を含む、酸性銅浴、ピロリン酸銅浴、又はイオン性液体を使用することができる。銅イオンの好適なソースとしては、硫酸銅、塩化銅、酢酸銅、硝酸銅、フルオロホウ酸銅、メタンスルフォン酸銅、フェニルスルフォン酸銅、フェノールスルホン酸銅、及びp−トルエンスルホン酸銅が挙げられるが、これらに限定されない。Cu及びCrのイオンをめっきするために、複合波形を使用して電解質浴に電流を印加することができる。いくつかの実施形態では、複合波形は、CrイオンをCuと共析出させることを可能にする電圧を印加する電流制御を有する第1のパルス、及びCuイオンを析出させることを可能にする電流制御を有する第2のパルスを含むことができる。いくつかの実施形態では、析出されるCr−Cuの比に影響を及ぼすために、追加のキレート剤を電解質浴に添加することができる。いくつかの実施形態では、キレート剤としては、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、又は電解質浴内にCrイオンを生成するためのCr化合物の触媒作用反応を促進する他の好適な薬剤を挙げることができるが、これらに限定されない。
Cu−W合金
【0085】
いくつかの実施形態では、Cu−X二元合金は、Cu−W合金とすることができる。そのような実施形態では、銅イオンのソースとして、上述の実施形態による、クエン酸により安定化されたWイオンを含む、酸性銅浴、ピロリン酸銅浴、又はイオン性液体を使用することができる。銅イオンの好適なソースとしては、硫酸銅、塩化銅、酢酸銅、硝酸銅、フルオロホウ酸銅、メタンスルフォン酸銅、フェニルスルフォン酸銅、フェノールスルホン酸銅、p−トルエンスルホン酸銅、及びピロリン酸銅が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、クエン酸を伴うWイオンは、クエン酸で脱水したタングステン酸アンモン又はタングステン酸ナトリウムから誘導することができる。他の実施形態では、クエン酸は、スルホ安息香酸イミドで置き換えることができる。Cu及びWのイオンをめっきするために、複合波形を使用して電解質浴に電流を印加することができる。いくつかの実施形態では、複合波形は、WイオンをCuと共析出させることを可能にする電圧を印加する電流制御を有する第1のパルス、及びCuイオンを析出させることを可能にする電流制御を有する第2のパルスを含むことができる。Cu及びWのイオンは、金属製カソードのプリフォーム上に共析出させることができる。いくつかの実施形態では、析出されるCu−Wの比に影響を及ぼすために、追加のキレート剤を電解質浴に添加することができる。いくつかの実施形態では、キレート剤としては、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、又は電解質浴内にWイオンを生成するためのW化合物の触媒作用反応を促進する他の好適な薬剤を挙げることができるが、これらに限定されない。
Cu−Fe合金
【0086】
いくつかの実施形態では、Cu−X二元合金は、Cu−Fe合金とすることができる。そのような実施形態では、銅イオンのソースとして、上述の実施形態による、Feイオン(例えば、Fe
3+)を含む、酸性銅浴、ピロリン酸銅浴、又はイオン性液体を使用することができる。銅イオンの好適なソースとしては、硫酸銅、塩化銅、酢酸銅、硝酸銅、フルオロホウ酸銅、メタンスルフォン酸銅、フェニルスルフォン酸銅、フェノールスルホン酸銅、及びp−トルエンスルホン酸銅が挙げられるが、これらに限定されない。Cu及びFeのイオンをめっきするために、複合波形を使用して電解質浴に電流を印加することができる。いくつかの実施形態では、複合波形は、FeイオンをCuと共析出させることを可能にする電圧を印加する電流制御を有する第1のパルス、及びCuイオンを析出させることを可能にする電流制御を有する第2のパルスを含むことができる。Cu及びFeのイオンは、カソードのプリフォーム上に共析出させることができる。カソードのプリフォームは、黄銅、ステンレス鋼、又は任意の他の好適な金属を含む、金属とすることができる。いくつかの実施形態では、析出されるCu−Feの比に影響を及ぼすために、追加のキレート剤を電解質浴に添加することができる。いくつかの実施形態では、キレート剤としては、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、又は電解質浴内にFeイオンを生成するためのFe化合物の触媒作用反応を促進する他の好適な薬剤を挙げることができるが、これらに限定されない。
Cu−Mo合金
【0087】
いくつかの実施形態では、Cu−X二元合金は、Cu−Mo合金とすることができる。そのような実施形態では、上述の実施形態による、クエン酸により安定化されたMoイオンを含む酸性銅浴を使用することができる。銅イオンの好適なソースとしては、硫酸銅、塩化銅、酢酸銅、硝酸銅、フルオロホウ酸銅、メタンスルフォン酸銅、フェニルスルフォン酸銅、フェノールスルホン酸銅、及びp−トルエンスルホン酸銅が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、Moイオンは、モリブデン酸塩、塩化モリブデン、フッ化モリブデン、酸化モリブデン、又は他の好適なモリブデン化合物により提供することができる。他の実施形態では、銅イオンのソースとして、ピロリン酸銅浴を使用することができる。更に他の実施形態では、銅イオンのソースは、イオン性液体とすることができる。
【0088】
Cu及びMoのイオンをめっきするために、複合波形を使用して電解質浴に電流を印加することができる。いくつかの実施形態では、複合波形は、MoイオンをCuと共析出させることを可能にする電圧を印加する電流制御を有する第1のパルス、及びCuイオンを析出させることを可能にする電流制御を有する第2のパルスを含むことができる。Cu及びMoのイオンは、カソードのプリフォーム上に共析出させることができる。カソードのプリフォームは、例として黄銅、ステンレス鋼、又は任意の他の好適な金属だがこれらに限定されない、金属とすることができる。
【0089】
いくつかの実施形態では、析出されるCu−Moの比に影響を及ぼすために、追加のキレート剤を電解質浴に添加することができる。いくつかの実施形態では、キレート剤としては、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、又は電解質浴内にMoイオンを生成するためのモリブデン化合物の触媒作用反応を促進する他の好適な薬剤を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0090】
いくつかの実施形態では、亜鉛などのキレート剤は、当該技術分野で既知の任意の形態とすることができる。例えば、いくつかの実施形態では、亜鉛などのキレート剤は、金属塩として電解質浴内に提供することができる。そのような実施形態では、亜鉛塩は、硝酸亜鉛Zn(NO
3)
2、塩素酸亜鉛Zn(ClO
3)
2、硫酸亜鉛(ZnSO
4)、リン酸亜鉛(Zn
3(PO
4)
2、モリブデン酸亜鉛(ZnMoO
4))、クロム酸亜鉛ZnCrO
4、亜ヒ酸亜鉛Zn(AsO
2)
2、ヒ酸亜鉛8水塩(Zn(AsO
4)
2・8H
2O)、又は任意の他の既知の好適な亜鉛のソースとすることができる。他の実施形態では、カソードのプリフォームは、亜鉛を含むことができ、亜鉛キレート剤のソースとすることができる。
【0091】
本明細書で説明するような合金及び実施形態は、様々な電子デバイス、及び特に電子デバイス内に配設される電気コネクタ内に含めることができる。電気コネクタとしては、基板対基板(B2B)用端子、バッテリ端子などを挙げることができる。そのような電子デバイスは、当該技術分野で既知の任意の電子デバイスであってよい。例えば、このデバイスは、携帯電話及び固定電話などの電話、又は、例えばiPhone(登録商標)を含めたスマートフォン、及び電子eメール送信/受信デバイスなどの、任意の通信デバイスであってよい。この合金は、デジタルディスプレイ、TVモニタ、電子ブックリーダ、携帯ウェブブラウザ(例えば、iPad(登録商標))、携帯時計(例えば、AppleWatch(登録商標))、又はコンピュータモニタなどの、ディスプレイ内の電気コネクタ内に使用することができる。デバイスはまた、携帯DVDプレーヤ、従来型DVDプレーヤ、ブルーレイディスクプレーヤ、ビデオゲームコンソール、携帯音楽プレーヤ(例えば、iPod(登録商標))などの音楽プレーヤなどを含めた、娯楽機器とすることもできる。デバイスは、画像、ビデオ、音声のストリーミングを制御する機器などの制御機器(例えば、Apple TV(登録商標))、又は別個の電子デバイス用の遠隔制御装置を含む。このデバイスは、コンピュータ、又はコンピュータ付属品、ラップトップキーボード、ラップトップトラックパッド、デスクトップキーボード、マウス、及びスピーカの、一部とすることができる。
【0092】
前述の説明は、記述される実施形態の完全な理解を提供するために、説明を目的として特定の専門用語を使用した。しかし、記述される実施形態を実践するために、特定の詳細が必要とされないことが当業者にとって明らかであろう。それゆえ、本明細書で説明した具体的な実施形態の上述の説明は、例示及び説明の目的のために提示されるものである。それらの説明は、網羅的であることも、又は開示される厳密な形態に実施形態を限定することも、目的とするものではない。上記の教示を考慮して多くの変更及び変形が可能であることが当業者には明らかとなるであろう。