特許第6823900号(P6823900)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6823900
(24)【登録日】2021年1月14日
(45)【発行日】2021年2月3日
(54)【発明の名称】5軸制御工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q 1/48 20060101AFI20210121BHJP
【FI】
   B23Q1/48 F
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-63221(P2016-63221)
(22)【出願日】2016年3月28日
(65)【公開番号】特開2017-177230(P2017-177230A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2019年3月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000174987
【氏名又は名称】三井精機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098279
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 聖
(72)【発明者】
【氏名】木場 浩之
【審査官】 村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−094425(JP,A)
【文献】 特開2004−338030(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 1/00−1/76
B23Q 11/10−11/14
B24B 53/00
B24B 55/02
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工領域部と応用領域部を備え、前記加工領域部は、第一回転動作軸についてワークを回転させると共に、その第一回転動作軸に直交する第二回転動作軸についてベッド部に対して回転するテーブルにより前記ワークを回転させつつ、また、その1つが前記第二回転動作軸と同方向の互いに直交する第一、第二、及び第三直進動作軸について工具を前記ベッド部に対して三次元的に移動させつつ、前記工具により前記ワークを加工する5軸制御工作機械であって、前記第二回転動作軸について回転可能なように、その軸方向の一端が、前記ベッド部に枢支される回転体と、前記回転体の前記第一回転動作軸方向の両端にあって、前記ワークを、前記第一回転動作軸について回転可能なように前記第一回転動作軸方向から挟持する一対の挟持部材とを備え、前記応用領域部は、前記工具をドレッシングするためのドレス装置と、前記工具によるワークの加工点へクーラントを供給するためのタンクシステムと、工具自動交換装置を備え、前記一対の挟持部材は、一方側に前記ワークを把持する第1のチャック及びその第1のチャックを回転駆動させる第1の駆動体と、他方側に前記ワークを把持する第2のチャック及びその第2のチャックを回転駆動させる第2の駆動体を含み、前記第1及び第2のチャックにより両側から前記ワークを把持すると共に、前記第1及び第2の駆動体により両側から前記ワークを前記第1及び第2のチャックを介して回転させるものであり、更に、前記加工領域部の両側は、それぞれ固定壁が立設され、また、後方側は可動壁が開閉可能に立設されることで、周囲3方向が壁体により囲われており、前記テーブルは、前記第二回転動作軸について360度以上回転可能であることを特徴とする5軸制御工作機械。
【請求項2】
前記後方側の可動壁は、前記工具自動交換装置による工具交換のタイミングに合わせて開閉可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の5軸制御工作機械。
【請求項3】
前記固定壁の円形穴を介して前記テーブルが更にもう1個設けられていることで、前記テーブルは前記加工領域部に2個設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の5軸制御工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、5軸制御工作機械に関し、例えば、ブレード加工に利用される5軸制御工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆる5軸制御により、主軸に装着した工具により加工対象物(以下、「ワーク」と称する)に対して切削加工を行うマシニングセンタ等の工作機械が普及している。ここで、5軸というのは、工具のワークに対する、3次元空間の互いに直交する方向の移動を規定する直進移動軸(X,Y,Z)の3軸と、工具に対する、ワーク自体の回転とワークの旋回を規定する回転中心軸(A,C)の2軸である。このような5軸に関して動作制御することにより、湾曲面を有するような部品でも加工できるようにしている。かかる工作機械を開示したものとして、例えば、特許文献1及び2がある。なお、工具とワークとの間の旋回動作で、物理的に工具側を旋回させる構成のものもある。
【0003】
また、作業空間を有効に利用して加工作業工程の効率を高めることができる5軸制御工作機械も本出願人により提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−266275号公報
【特許文献2】特開2007−219951号公報
【特許文献3】特開2014−094425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1及び2記載の標準5軸制御工作機械では、例えば航空機エンジンのブレード形状のような複雑に湾曲する特殊な部品の加工速度を短縮することが困難であり、また、多種類のワークの加工に対応するために機械構成も複雑・大型化を免れず、省スペース化が困難であった。これに対して、上述した特許文献3記載の5軸制御工作機械では、省スペース化と加工作業工程の効率化が可能であるが、汎用的な加工のみならず、加工速度やトルク・剛性等の面から多種類のワークの加工にも有効に対応可能な工作機械で、更なる省スペース化や製品加工のリードタイム短縮に貢献できる工作機械の開発が待たれている。
【0006】
本発明は上述のような事情から為されたものであり、その目的は、汎用的な加工のみならず、加工速度やトルク・剛性等の面から多種類のワークの加工にも有効に対応できる上に、更なる省スペース化や製品加工のリードタイム短縮が可能な5軸制御工作機械を提供することにある。また、本発明の他の目的は、ブレード加工機として優れた性能を有する5軸制御工作機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の5軸制御工作機械は、加工領域部と応用領域部を備え、前記加工領域部は、第一回転動作軸についてワークを回転させると共に、その第一回転動作軸に直交する第二回転動作軸についてベッド部に対して回転するテーブルにより前記ワークを回転させつつ、また、その1つが前記第二回転動作軸と同方向の互いに直交する第一、第二、及び第三直進動作軸について工具を前記ベッド部に対して三次元的に移動させつつ、前記工具により前記ワークを加工する5軸制御工作機械であって、前記第二回転動作軸について回転可能なように、その軸方向の一端が、前記ベッド部に枢支される回転体と、前記回転体の前記第一回転動作軸方向の両端にあって、前記ワークを、前記第一回転動作軸について回転可能なように前記第一回転動作軸方向から挟持する一対の挟持部材とを備え、前記応用領域部は、前記工具をドレッシングするためのドレス装置と、前記工具によるワークの加工点へクーラントを供給するためのタンクシステムと、工具自動交換装置を備え、前記一対の挟持部材は、一方側に前記ワークを把持する第1のチャック及びその第1のチャックを回転駆動させる第1の駆動体と、他方側に前記ワークを把持する第2のチャック及びその第2のチャックを回転駆動させる第2の駆動体を含み、前記第1及び第2のチャックにより両側から前記ワークを把持すると共に、前記第1及び第2の駆動体により両側から前記ワークを前記第1及び第2のチャックを介して回転させるものであり、更に、前記加工領域部の両側は、それぞれ固定壁が立設され、また、後方側は可動壁が開閉可能に立設されることで、周囲3方向が壁体により囲われており、前記テーブルは、前記第二回転動作軸について360度以上回転可能であることを特徴とする。
【0009】
前記後方側の可動壁は、前記工具自動交換装置による工具交換のタイミングに合わせて開閉可能に構成されているようにしても良い。また、前記固定壁の円形穴を介して前記テーブルが更にもう1個設けられていることで、前記テーブルは前記加工領域部に2個設けられているようにしても良い。また、本発明の上記好適な5軸制御工作機械は、ブレード製品の加工及びカム溝の加工に用いることが可能である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、汎用的な加工のみならず、加工速度やトルク・剛性等の面から多種類のワークの加工にも有効に対応できる上に、更なる省スペース化や製品加工のリードタイム短縮が可能になる。また、ブレード加工機として優れた性能を有する5軸制御工作機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】出願人の先願に係る5軸制御工作機械の平面図である。
図2】出願人の先願に係る5軸制御工作機械の正面図である。
図3】出願人の先願に係る5軸制御工作機械の側面図である。
図4】出願人の先願に係る5軸制御工作機械におけるA軸及びC軸動作に係る構造体の詳細を示す斜視図である。
図5】本発明の第1の実施形態に係る5軸制御工作機械のレイアウト構成を示す平面図である。
図6】本発明の第1の実施形態に係る5軸制御工作機械におけるA軸及びC軸動作に係る構造体の拡大平面図であり、片側テールストック仕様を示す図である。
図7】本発明の第2の実施形態に係る5軸制御工作機械における加工領域部を中心とした斜視図であり、A軸及びC軸動作に係る構造体のタンデム仕様を示す図である。
図8】本発明の第2の実施形態に係る5軸制御工作機械における主軸とワークの動作上の相対的位置関係を説明するための第1の図である。
図9】本発明の第2の実施形態に係る5軸制御工作機械における主軸とワークの動作上の相対的位置関係を説明するための第2の図である。
図10】本発明の第2の実施形態に係る5軸制御工作機械によるブレード加工の優位性を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
まず、本発明の理解を容易にするため、図1乃至図4を参照して、本出願人の先願である特願2012−247075号に記載の5軸制御工作機械について簡単に述べる。図1はその5軸制御工作機械の平面図、図2はその5軸制御工作機械の正面図、図3はその5軸制御工作機械の側面図、図4はその5軸制御工作機械におけるA軸及びC軸動作に係る構造体の詳細を示す斜視図である。この図1乃至図4に示す5軸制御工作機械100は、基礎であるベッド20と、そのベッド20に対してY軸方向に摺動可能なY軸移動体(コラム)30と、そのY軸移動体30に対してX軸方向に摺動可能なX軸移動体40と、そのX軸移動体40に対してZ軸方向に摺動可能なZ軸移動体50とを備えている。また、Z軸移動体50の下部には、Z軸と同方向の軸を有する主軸51が設けられ、その主軸51の下端に、工具が取り付け可能となっている。主軸51に取り付けられた工具は、その主軸51に内蔵された主軸モータ(図示せず)により主軸周りに回転可能となる。ここで、Y軸移動体30、X軸移動体40、及びZ軸移動体50は、それぞれ、Y軸駆動モータ31、X軸駆動モータ(図示せず)、及びZ軸駆動モータ(図示せず)により駆動されて、それぞれの軸方向に移動する。以上の構造により、主軸モータにより回転状態にある工具が、ベッド20に対して3次元的に相対移動が可能となり、この動作により、後述するワークWに対する3次元的な接近/離反動作を実現している。
【0013】
次に、図4をも参照することにより、A軸及びC軸動作に係る構造体400について説明する。図4は、その詳細構造を示す図である。そこで、A軸は、図1及び図2に示すように、X軸に平行な軸であり、C軸は、図1に示すように、A軸に対して直交する軸であると共に、後に詳述するように、A軸回転に伴ってY軸とZ軸で画定される平面内を回動可能な軸である。そこで、図1及び図2に示すように、ベッド20内の加工動作可能領域MSの左側壁に、略四角柱縦長形状であり、その中央部がA軸周りに回転可能に枢支されたA軸回転体11が備わっている。A軸回転体11は、A軸回転駆動モータ15により回転駆動される。また、A軸回転体11の一端には、C軸回転駆動体12が備わっており、その他端には、油圧駆動される心押し台13が備わっている。また、C軸回転駆動体12には、ワークWを把持可能なものであって、そのC軸回転駆動体12によりC軸周りに回転駆動されるチャック14が取り付けられている。動作としては、ワークWの一端をチャック14で把持し、その他端を心押し台13で支持した状態で、C軸回転駆動体12によりチャック14を回転させると、ワークWがC軸周りに回転することになる。従って、チャック14がC軸回転し、かつ、A軸回転体11A軸回転駆動モータ15によりA軸について回転すると、ワークWは、C軸について自転しつつ、A軸について回転するような動作となる。このワークWの、C軸及びA軸に関する回転によるベッド20に対する相対動作と、工具のX軸、Y軸、及びZ軸に関する移動によるベッド20に対する相対動作により、工具によるワークWへの5軸制御加工が実現できる。なお、図3における2点鎖線は、A軸回転体11の両端の回転軌跡を表している。このように5軸制御工作機械100にあっては、ワークWのベッド20に対する相対的A軸回転を実現する部材を、ワークWについてA軸方向一端でベッド20に対して枢支するように構成している。簡単に言えば、いわゆる片持ち構造としている。また、それに伴って、ワークのC軸回転を規定する構造としては、A軸回転体11にそれぞれ固定されたC軸回転駆動体12及び心押し台13によりワークWを挟持する構造を採用している。また、5軸制御工作機械100は、工具自動交換装置60を備えており、その工具把持交換機構61が、複数の工具から所望の工具を選択して、把持、移動し、主軸51に取り付けると共に、加工後の工具を撤退させることが可能となっている。また、上述及び後述の機械的動作の制御は、NC(Numerical Control)制御部70により行われる。更に、5軸制御工作機械100は、操作/表示パネル80を備えている。
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の第1の実施形態について詳細に説明する。図5は本発明の第1の実施形態に係る5軸制御工作機械のレイアウト構成を示す平面図、図6はそのA軸及びC軸動作に係る構造体500の拡大平面図であり、片側テールストック仕様を示す図である。図5及び図6を参照しつつ、本発明の第1の実施形態に係る5軸制御工作機械200のNC加工部220の基本的構成は、図1乃至図4に示した出願人の先願に係る5軸制御工作機械100と略同様であるので、その詳しい説明及び図示は省略する。本実施形態に係る5軸制御工作機械200も、図6に示すように、A軸及びC軸動作に係る構造体500は、片側テールストック仕様に構成されている。即ち、ワークWのベッド20(図3等参照)に対する相対的A軸回転を実現する部材を、ワークWについてA軸方向一端でベッド20に対して枢支するように構成し、いわゆる片持ち構造としている。また、ワークのC軸回転を規定する構造としては、A軸回転体11にそれぞれ固定されたC軸回転駆動体12及び心押し台13によりワークWを挟持する構造を採用している。
【0015】
さて、本実施形態に係る5軸制御工作機械200の大きな特徴は、ブレード加工機としての優位性を追求した点にある。即ち、5軸制御工作機械200は、加工領域部としてのNC加工部220と、応用領域部230を備え、図5に示すように、応用領域部230は、図示しないドレス装置、タンクシステム260等、汎用的な加工を可能にするための総合的アプリケーションとして構成されており、このため加工製品製作までのリードタイム短縮が可能なように構成されている。また、総合的アプリケーションとして省スペース化を実現し、機構的にも・制御的にも高加減速を実現した機械として構成されている。また、専用機ではなく、汎用機として製作可能であるためこの5軸制御工作機械200の製品納期までを短くすることができ、機械トータルもより安価に製作できるというメリットがある。即ち、図5に示すように、本実施形態の5軸制御工作機械200は、工具としての砥石等をドレッシングするための図示しないドレス装置を備えている。また、工具によるワークWの加工点へクーラントを供給するためのタンクシステム260を備えている。このため、多種の機能を搭載しながらも、図5に示すように、コンパクトな平面構成になっており、等、汎用的な加工を可能にするための総合的アプリケーションとして構成されており、このため加工製品製作までのリードタイム短縮が可能である。また、本実施形態の5軸制御工作機械200では、A軸及びC軸動作に係る構造体500をコンパクトに構成しているので、加工動作可能領域MS(図1等参照)が従来と同様の容積であれば、そのコンパクト化により有意に生じた領域を有効利用でき、そのために、図5に示すように、段取り用テーブル216を設けている。このように、段取りテーブル216を並置すれば、ワークWの加工に並行して、他のワークのチャッキング部分の加工などの前加工やその他の加工を行うことができ、より複合的な加工が可能となり、多様性が増すと共に、全加工工程の効率化・時間短縮が図れる。
【0016】
次に、図7乃至図10を参照して、本発明の第2の実施形態について詳細に説明する。本実施形態に係る5軸制御工作機械300のNC加工部320では、図示しないワークのベッド20に対する相対的A軸回転を実現する部材を、ワークについてA軸方向一端でベッド20に対して枢支するように構成し、いわゆる片持ち構造としているのは、図1乃至図4に示した出願人の先願に係る5軸制御工作機械100と同様であるが、A軸及びC軸動作に係る構造体600は、出願人の先願に係る5軸制御工作機械100及び上述した第1の実施形態と異なり、タンデム仕様に構成されている。即ち、ワークのC軸回転を規定する構造としては、A軸回転体11の両端側にそれぞれ固定されたC軸回転駆動体12A及び12Bによりワークを挟持する構造、従って、C軸回転駆動体12A及び12Bによる、いわゆるタンデム駆動の構成を採用している。即ち、本実施形態に係る5軸制御工作機械300の大きな特徴は、タンデム駆動の優位性を追求した点にあり、これにより、トルクの増強と支持剛性の強化、ひいては回転スピードの向上が図られている。尚、図7に示すように、段取り用テーブル216を設けているのは、上述した第1の実施形態と同様である。
【0017】
また、図7に示すように、この第2の実施形態に係る5軸制御工作機械300では、NC加工部320のうち加工動作可能領域MS(図1等参照)の周囲3方向が壁体により囲われている。即ち、5軸制御工作機械300では、加工動作可能領域MSの両側は、それぞれ固定壁302、304が立設され、また、後方側は可動壁306が開閉可能に立設されることで、周囲3方向が壁体により囲われている。これにより、加工による金属加工粉やクーラントが飛散してしまうのを防止している。尚、後方側の可動壁306は、工具自動交換装置60(図5等参照)による工具交換のタイミング等に合わせて開閉可能に構成されている。また、図7に示す例では、A軸及びC軸動作に係る構造体600は、加工動作可能領域MSに1個のみ設けられているが、固定壁304の円形穴304Hを介して、A軸及びC軸動作に係る構造体600をもう一対設ける変形例も可能である。かかる変形例によれば、2つのワークを並行で加工する、いわゆるタンデム加工(タンデム駆動+タンデム加工)を実現できる。
【0018】
次に、図8及び図9を参照して、主軸51とワークW(図示せず、後述する図10参照)の動作上の相対的位置関係について説明する。図8(a)は、A軸及びC軸動作に係る構造体600の部分の部分正面図であり、当該構造体600に対する主軸51のX軸及びZ軸に係る相対移動のストロークを示している。また、図8(b)は、A軸及びC軸動作に係る構造体600の部分の部分平面図である。また、図8(c)及び図9(a)〜(d)は、同様に、A軸及びC軸動作に係る構造体600の部分の部分側面図であり、当該構造体600に対する主軸51のY軸に係る相対移動と、当該構造体600のA軸回転動作の関係を示している。詳細には、図8(c)及び図9(a)は、C軸の方向とY軸の方向が一致している場合(このとき、例えば、A軸の回転を0度とする)を示しており、そのときの主軸51のY軸方向の移動(ワークWに対する長手方向の移動)のストロークを示している。なお、図8(c)では円形の一点鎖線、図9(a)〜(d)では円形の二点鎖線は、それぞれA軸回転体11の両端の回転軌跡を表している。また、図9(b)は、同様に、主軸51のY軸方向の移動のストロークを示すものであり、特に、構造体600がA軸について−45度回転し、つまり、C軸がY軸に対して−45度傾いている状態を示している。また、図8(c)は、同様に、主軸51のY軸方向の移動のストロークを示すものであり、特に、構造体600がA軸について−90度回転し、つまり、C軸がY軸に対して直交している状態を示している。また、図9(d)は、同様に、主軸51のY軸方向の移動のストロークを示すものであり、特に、構造体600がA軸について45度回転し、つまり、C軸がY軸に対して45度傾いている状態を示している。このように、主軸51は、構造体600がA軸に関して回転しても、そのC軸回転駆動体12等と干渉しないように移動動作する。
【0019】
本発明の第2の実施形態に係る5軸制御工作機械300は、ブレード加工機としての優位性を追求した点にある。ここで、本実施形態に係る5軸制御工作機械300と比較例としての標準5軸機によるブレード製品の加工について説明しておく。図10(a)(b)は、比較例1、2の標準5軸機でブレード製品の加工が難しいことを説明するための図であり、(c)は、本実施形態に係る5軸制御工作機械300によるブレード製品の加工における優位性を説明するための図である。図10(a)(b)(c)では、航空機エンジンのブレードとして用いられる加工物を加工する例が示されている。尚、説明の便宜上、前述したC軸に相当する軸をB軸として説明する場合がある。即ち、固定端側が三角体にギア状の溝が加工され、そこから伸びる羽根状の回転体が滑らかに湾曲する複雑な形状の加工部品を加工する必要がある。しかしながら、図10(a)に示すように、比較例1の標準5軸機では、(1)B軸テーブルにあたる回転軸のC軸が大きい、(2)イナーシャが大きい、(3)A軸回転角度が小さい、(4)ワークWを片側固定のみで剛性が不足する、(5)干渉が大きい、等の理由から上記ブレード製品の加工が難しいという問題がある。また、図10(b)に示すように、比較例2の標準5軸機では、(1)B軸テーブルにあたる回転軸が大きい、(2)イナーシャが大きい、(3)A軸回転角度が±75度ぐらいまでしか回転できない小さい、等の理由から、やはり上記ブレード製品の加工が難しいという問題がある。これに対して、本発明の第2の実施形態に係る5軸制御工作機械300は、図10(c)に示すように、(1)A軸及びC軸動作に係る構造体600のふところが大きいので、主軸との干渉を回避可能である、(2)ワークWを両側で固定できるので、支持剛性が強い、(3)B軸テーブルは速く回転でき(イナーシャが小さい)、回転の切替が早い(イナーシャが小さい)上に、図9(a)〜(d)にも示したように、360度以上回転可能である(スピンテーブル)、等の理由から、上記ブレード製品の加工が可能且つ容易であるという画期的な利点がある。尚、上記と同様の構成上の利点を生かして、例えば、ローラギアカムのカム溝の加工も可能であることを確認している。
【0020】
以上のように、本発明の5軸制御工作機械における上述の実施形態によれば、従来の標準5軸機では困難であったブレード製品の加工やカム溝の加工が可能になる上に、汎用機としてこれらの加工が可能になるという大きな利点が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明の5軸制御工作機械は、マシニングセンタ、特にブレード加工機として使用できる。また、カム溝の加工機としても使用できる。
【符号の説明】
【0022】
100 5軸制御工作機械
11 A軸回転体
12 C軸回転駆動体
13 心押し台
14 チャック
15 A軸回転駆動モータ
16 段取りテーブル
20 ベッド
30 Y軸移動体
40 X軸移動体
50 Z軸移動体
51 主軸
60 自動工具交換装置
61 工具把持交換機構
70 NC制御部
80 操作/表示パネル
W ワーク
MS 加工動作可能領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10