(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記水流れ方向上流側の折板屋根材の下端部及びその近傍を前記水流れ方向下流側の折板屋根材の上端部及びその近傍の上側に重ねて両者を固定する代わりに、前記水流れ方向上流側の折板屋根材の長手方向下端部を前記水流れ方向下流側の折板屋根材の長手方向上端部に突き当てた状態で互いに連結し、
この連結部分に折板屋根材当接端部間防水用樹脂シートを被せ、前記折板屋根材当接端部間防水用樹脂シートをこれが重なる水流れ方向上下の前記折板屋根材の上側面に備わる折板防水用樹脂シートの双方に融着することで、前記折板屋根材当接端部間の防水を図ることを特徴とする請求項1に記載の折板屋根材を用いた緩勾配屋根の施工方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した長尺タイプの折板屋根材を並べて多数嵌め合わせた構造の場合、以下の点が問題点として挙げられている。まず第1に、建物の規模に応じて折板屋根材の長さが数十メートルから百メートル程度と非常に長い長尺タイプの折板を多数用意する必要がある。
【0006】
このような長尺タイプの折板屋根材を使用する場合、屋根の施工現場と離れた工場で折板屋根材を多数製造し、これらを屋根の施工現場に大型トラック等で運搬しようとしても、折板屋根材の長さがあまりにも長いため実際上不可能である。
【0007】
そのため、屋根の施工現場にロール型成型機を持ち込み、その施工現場で長尺タイプの折板屋根材を多数成型して、その成型作業後か成型作業に合わせて長尺タイプの折板屋根材を建物の屋根の上に吊り上げる作業が必要となる。
【0008】
この段階での問題点として、施工現場で長尺タイプの折板屋根材を製造するために、大型のロール成型機を屋根の施工現場に持ち込んで一定期間その施工現場で使用し続けなければならない。それ故、非常に大きな運搬用大型トラックを用いなければならず、ロール型成型機の搬入が大変であるばかりか、天候によって成型機が雨さらしになり、機能劣化を招くことになる。同様にロール型成型機によって長尺の折板屋根材として成型される非常に大きな鉄板ロールを施工現場に搬入しなければならず、これらの搬入作業に伴って非常に大きな運搬用トラックを調達する必要がある。
【0009】
また、ロール成型機をその施工現場で一定期間置かなければならないため、他の屋根の施工現場で用いる異なる種類の折板屋根材を同時に製造することができない。ロール型成型機は大変大掛かりで高価な製造設備であるため、このような成型機を何台も有することは難しく、施工現場に一旦設置してしまうと他の種類の折板屋根材が製造できなくなり、他の屋根の施工スケジュールに支障をきたすことがある。
【0010】
また、長尺タイプの折板屋根材をロール型成型機で製造した後に建物の屋根の部分まで運び上げる場合、1本の折板屋根材の重量がかなり嵩むようになる。そのため、この長尺タイプの折板屋根材を建物の屋根の部分まで運び上げるためにかなり大型のクレーン車等の重機を用意してその折板屋根材を建物の屋根の部分まで吊り上げる作業を行わなければならない。
【0011】
また、このような長尺タイプの折板屋根材を屋根の部分まで吊り上げるにあたってバランスを取りながら吊り上げなければならないため、作業が極めて大変である。具体的には、吊り金具であるテンビンを用いて折板屋根材の長手方向何箇所かに取り付けたワイヤーを取り付けてクレーン車で建物の屋根の施工部分にまで吊り上げた後にこのテンビンを全て外すという面倒な作業が必要となる。
【0012】
また、上述の長尺タイプの折板屋根材を建物の下から屋根の部分まで吊り上げる作業を行なうにあたって、建物の上まで安全かつ確実に吊り上げるために建物の下側と上側に何人もの作業者を配置する必要とする。
【0013】
しかしながら、昨今の屋根の施工現場でのいわゆる屋根職人(以下、適宜「屋根職人」と称する。)と呼ばれる屋根の設置作業に熟練した作業員や施工者の人材不足から、長尺タイプの折板屋根材を用いる場合その施工現場に合せた人数の屋根職人を集めるのは現状では非常に難しくなっている。
【0014】
また、このような建物の下と屋根の設置部分のそれぞれにおいて、何人もの作業者を配置させながらテンビンを用いて長尺タイプの折板屋根材を持ち上げる作業は危険が伴うという安全上の問題点も生じている。
【0015】
また、長尺タイプの折板屋根材を屋根の設置場所に全て吊り上げた後、母屋の上に並べて取り付けると共に、隣接する折板同士の幅方向の端部を嵌め合わせる作業を行う。しかしながら、長尺タイプのため1本の折板屋根材の長さが非常に長く長手方向において同時に嵌め合わせる作業が必要となる。長尺タイプの折板屋根材の場合、屋根材の長手方向に亘って何人もの屋根職人を適当な間隔で配置して嵌め合わせ作業を行なわなければならない。
【0016】
そのため、長尺タイプの折板屋根材を用いて屋根を葺く作業のスケジュールに合わせて、予め決められた日程で多人数の屋根職人を確保しておかなければならず、上述したように屋根の施工の分野における人材不足からスケジュール調整が難しくなり、施工の工期が遅れてしまう場合もある。
【0017】
更に、長尺タイプの折板屋根材による屋根の施工が終わって長期間経過した後に生じる問題もある。具体的には、長尺タイプの折板屋根材は1本の非常に細長い金属板でできているため、熱応力の影響によりタイトフレームが壊れて飛び散るようなことも懸念される。
【0018】
その理由は、屋根は建物の上部を全て覆う構造体であるため、太陽光、風雨、積雪などの全ての過酷な自然環境の影響を直接受ける。そのため、四季の季節ごとや、例えば真夏の天候の変化による影響(晴天の炎天下や急な台風の来襲に伴う激しい風雨)により、極端に細長い各折板屋根材がそれぞれ個別に熱膨張や熱収縮する。このような熱応力の影響によってタイトフレームが壊れて飛び散るためである。
【0019】
また、折板屋根材を用いた屋根全体に断熱材を備えた構造とする場合においても問題点が生じる。具体的にはこのような断熱材を備えるためにダブルパック工法という施工方法により2枚の折板屋根材の間に断熱材を挟んだいわゆるサンドイッチ構造とする必要がある。
【0020】
このような構造を実現するためには、一旦建物の屋根の部分一面に長尺の折板屋根材を葺いてその上を断熱材で全て覆い、更に新たな折板屋根材をその断熱材の上に葺く必要がある。このような構造を実現するために第1工程として下側の折板屋根材の取り付け、第2工程として断熱材をその折板屋根材の上に取り付け、第3工程として断熱材の上に更に折板屋根材を取り付ける3工程を必要とする。
【0021】
そして、第1工程及び第3工程の作業と第2工程の作業は全く異なるものとなるため、長尺の折板屋根材を建物の上に取り付ける屋根職人と異なる作業者が下側の長尺の折板屋根材の上に断熱材を取り付けることとなる。
【0022】
そのため、施工のスケジュールに合わせて最初に第1工程を担当する折板屋根材取付けの屋根職人を多人数確保し、この工程が終わった後に第2工程を担当する断熱材取付けの屋根職人を多人数確保し、更にこの工程が終わった後に第3工程を担当する折板屋根材取付けの屋根職人を再び多人数確保する大変面倒なスケジュール調整を必要とする。
【0023】
更には、ロール成型機で作る長尺の折板屋根材の数が、断熱材を備えない場合に比べて2倍になると共に、この多くの折板屋根材を作る間中ロール成型機有を施工現場に置き続けなければならず、かつ建物の上部の高所で行う第1工程乃至第3工程においてそれぞれ多くの作業者を必要とし、かつ危険を伴うテンビンによる長尺の折板屋根材の吊り上げ作業を行わなければならない。そのため、断熱材を取り付けない場合の屋根の取り付けに比べてかなり長い作業スケジュールを必要とし、屋根職人の人材確保が大変であり、かつ施工コストがかなり嵩んでしまう。
【0024】
また、背景技術で説明したH型鋼の上に下地材としてのデッキ材を設け更に断熱材を重ねてその上に防水用樹脂シートを貼る屋根の構造の場合、以下の点が問題点として挙げられている。
【0025】
まず第1に、支持用の鋼材であるH型鋼の上に下地材としての鉄板を取り付ける作業と、その上に断熱材を重ねる作業と断熱材の上面に防水シートを融着で貼り付ける作業は別々の工事として行われ、異なる作業者が行うことになる。
【0026】
上述したように熟練した屋根職人が不足している現状において各工程の作業者を工期に関して最短のスケジュールを組むためにそのスケジュール期間中に完全に人員確保しておくことは難しい。そのため、どうしてもこの屋根の取り付けの方法では工期が長くなってしまい問題が生じる。
【0027】
また、デッキ材をしっかりと下地材に乗せるために例えばH型鋼同士の間隔をデッキ材に合わせて狭くしなければならず下地材を屋根全体に亘って組み立てるためにある程度長い期間を有し、その分工期が延びて屋根の取り付けのスケジュールに影響を与える。
【0028】
また、このような屋根の構造によると、近年懸念されている大規模地震が起こった際に下地材である鉄板などのデッキ材が落下してくる虞も考えられる。
【0029】
本発明の目的は、例えば倉庫や工場、幹線道路沿いの比較的大きなコンビニや薬局等の緩勾配屋根を施工するにあたって短い工期でコストを安く抑えつつ安全な施工を行うために好適に利用可能な定尺の折板屋根材を用いた緩勾配屋根の施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0030】
上述した課題を解決するために、本発明の請求項1に係る折板屋根材を用いた緩勾配屋根の施工方法は、
建物に緩勾配屋根を施工する折板屋根材を用いた緩勾配屋根の施工方法において、
前記緩勾配屋根に用いる折板屋根材であって、取り付け対象である建物の屋根の大きさとは別に予め決められた所定の長さを有する定尺の折板屋根板と、前記折板屋根材を建物に取り付けた状態で上側面となる前記折板屋根板の全面を覆う折板防水用樹脂シートから構成される折板屋根材を前記建物に前記緩勾配屋根を葺く分だけ多数用意し、
これらの折板屋根材を建物の緩勾配屋根設置部分まで運び、
前記緩勾配屋根設置部分において前記各折板屋根材の長手方向端部同士を水流れ方向上流側の折板屋根材の端部とその近傍が水流れ方向下流側の折板屋根材の端部とその近傍の上側に重なってこの部分に折板屋根材端部重なり部が形成されるように前記各折板屋根材を母屋に順々に取り付けると共に、前記緩勾配屋根を構成する各折板屋根材同士の全ての前記折板屋根材端部重なり部における防水を図るための所定幅を有する折板屋根材重なり部防水用樹脂シートを、前記折板屋根材端部重なり部の水流れ方向上流側となる折板屋根材の下端部を被うように重ね、
前記折板屋根材重なり部防水用樹脂シートをこれが重なる各折板屋根材の上側面に備わる前記折板防水用樹脂シートに溶着することで防水仕様の緩勾配屋根を建物に取り付け
る折板屋根材を用いた緩勾配屋根の施工方法
であって、
前記折板屋根材を建物に屋根を葺く分だけ多数用意し、前記折板屋根材を用いた緩勾配屋根の施工方法によって建物に屋根を取り付けるに際して、隣接する前記折板屋根材の幅方向端部同士を前記折板屋根材の長手方向と同じく長手方向に細長で上面がキャップ防水用樹脂シートで覆われた屋根材嵌合キャップを嵌め込んで結合すると共に、このキャップとこれが嵌まる両側の前記折板屋根材との全ての隙間をそれらの長手方向全体に亘って被うように所定幅のキャップ嵌め込み部防水用樹脂シートを重ね、
前記キャップ嵌め込み部防水用樹脂シートをこれが重なる折板屋根材の上側面に備わる折板防水用樹脂シートと前記キャップの上側面に備わるキャップ防水用樹脂シートの双方に融着することで、前記キャップ嵌合部の防水を更に図った防水仕様の緩勾配屋根材を前記建物に取り付けることを特徴としている。
【0033】
また、本発明の請求項
2に係る折板屋根材を用いた緩勾配屋根の施工方法は、請求項
1に記載の折板屋根材を用いた緩勾配屋根の施工方法において、
前記水流れ方向上流側の折板屋根材の下端部及びその近傍を前記水流れ方向下流側の折板屋根材の上端部及びその近傍の上側に重ねて両者を固定する代わりに、前記水流れ方向上流側の折板屋根材の長手方向下端部を前記水流れ方向下流側の折板屋根材の長手方向上端部に突き当てた状態で互いに連結し、
この連結部分に折板屋根材当接端部間防水用樹脂シートを被せ、前記折板屋根材当接端部間防水用樹脂シートをこれが重なる水流れ方向上下の前記折板屋根材の上側面に備わる折板防水用樹脂シートの双方に融着することで、前記折板屋根材当接端部間の防水を図ることを特徴としている。
【0034】
また、本発明の請求項
3に係る折板屋根材を用いた緩勾配屋根の施工方法は、請求項1
又は請求項
2に記載の折板屋根材を用いた緩勾配屋根の施工方法において、
前記折板屋根材の下側部分にはそれぞれ断熱材が備わっていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0035】
本発明によると、例えば倉庫や工場、幹線道路沿いの比較的大きなコンビニや薬局等の緩勾配屋根を施工するにあたって、特別に工夫した定尺の折板屋根材を用いることで、防水性に優れた緩勾配屋根の施工を短い工期でコストを安く抑えかつ安全に施工することができる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明に係る折板屋根材を用いた緩勾配屋根の施工方法の実施形態について図面に基づいて説明する。最初に第1の実施形態に係る緩勾配屋根の施工方法に用いる折板屋根材10及びこれを用いた緩勾配屋根の施工方法について説明する。
【0038】
図1は、第1の実施形態に係る緩勾配屋根の施工方法に用いる折板屋根材の斜視図である。また、
図2は、第1の実施形態に係る緩勾配屋根の施工方法に用いる折板屋根材を示す端面図(
図2(a))、及び屋根を二点鎖線と点線の組み合わせで示す母屋に取り付けた際に水流れ方向上流側の実線で示す折板屋根材の下端部及びその近傍が、水流れ方向下流側の点線で示す折板屋根材の上端部及びその近傍に重なった状態を示す端面図(
図2(b))である。また、
図3は、
図2(b)に示した第1の実施形態の折板屋根材端部重なり部における横方向に隣接する屋根材同士を嵌合させ、更に実線で示す折板屋根材重なり部防水用樹脂シートを折板屋根材端部重なり部の上側に被せて融着した状態を示す端面図(
図3(a))、及び
図3(a)の折板屋根材に断熱材を備えた第1の実施形態の変形例に係る折板屋根材の横方向に隣接する屋根材同士を嵌合させ、更に実線で示す折板屋根材重なり部防水用樹脂シートを折板屋根材端部重なり部の上側に被せて融着した状態を示す端面図(
図3(b))である。また、
図4は、
図1及び
図2に示した第1の実施形態において、水流れ方向上流側の折板屋根材の下端部及びその近傍を、水流れ方向下流側の折板屋根材の上端部及びその近傍の上に重ねてビスでリベット止めした状態を示す平面図である。また、
図5は、
図4に示した水流れ方向上流側と下流側同士を接続した折板屋根材のこの水流れ方向と直交する方向の両側に、同じく水流れ方向上流側と下流側において互いに連結した折板屋根材を嵌合させた状態を示す平面図である。また、
図6は、
図5に示した状態において、水流れ方向と直交する方向に互いに嵌合させてできた折板屋根材端部重なり部同士を全て被うように、第1の実施形態に係る折板屋根材重なり部防水用樹脂シートを被せて融着させた状態を示す平面図である。
【0039】
なお、
図1乃至
図6は、本発明への説明の理解の容易化を図るために、折板屋根材10の各構成要素の実際の寸法及び形状とは異なる本発明に含まれる寸法及び形状で示している。特に本発明の要部である折板屋根材重なり部防水用樹脂シートの厚さは、厚めに描いている。
【0040】
第1の実施形態に係る緩勾配屋根の施工方法に用いる折板屋根材(以下適宜単に「折板屋根材」とする)10は、例えば倉庫や工場、幹線道路沿いの比較的大きなコンビニや薬局等の緩勾配屋根に用いる折板屋根材である。そして、折板屋根材10は、取り付け対象である建物の屋根の大きさとは別に予め決められた所定の長さを有する定尺の折板屋根板110と、折板屋根材10を建物に取り付けた状態で上側面となる折板屋根板110の全面を覆う折板防水用樹脂シート120を備えている。折板防水用樹脂シート120は、折板屋根板110の上面にちょうど重なる長さ及び幅を有している。
【0041】
折板防水用樹脂シート120は、折板屋根材10をロール成形機で製造する際に折半屋根板110の素材となる鋼板の上に折板防水用樹脂シート120の素材となる同じ幅の樹脂シートを重ねた状態でロール成形機を用いて成形することで、下側が折板屋根材10で上側が折板防水用樹脂シート120からなる両者が重なって一体化した折板屋根材10を形成している(
図1及び
図2(a)参照)。
【0042】
なお、折板屋根材10の長さは、
図4に示すように、緩勾配屋根設置部分である母屋に水流れ方向に沿って折板屋根材を繋げて取り付けた際に各折板屋根材の長手方向端部の水流れ方向上流側の折板屋根材10の下端部11とその近傍が、水流れ方向下流側の折板屋根材10の上端部12とその近傍の上側に重なり、この部分に折板屋根材端部重なり部13が形成される長さとなっている。そして、同図に示すように、折板屋根材端部重なり部において多数のビス19を用いてリベット止めすることで、互いの折板屋根材同士をしっかりと連結するようになっている。
【0043】
本実施形態の場合、折板屋根板110にはアルミニウムや亜鉛の合金メッキ鋼板であるガルバリウム鋼板(登録商標)が用いられている。また、折板防水用樹脂シート120には塩ビ(ポリ塩化ビニル)シートが用いられている。そして、折板屋根材10を建物に取り付けた状態で上側面となる折板屋根板の全面を覆うように折板防水用樹脂シート120を重ねた状態でロール成型機(図示せず)を用いて長手方向に所定の山折り部111と谷折り部112を形成するようになっている(
図1及び
図2参照)。
【0044】
第1の実施形態に係る折板屋根材10の幅方向一方の端部は、キャップが一体化してキャップ部分130として形成されている(
図1乃至
図3(a)参照)。そして、折板屋根材を水流れ方向と直交する方向に並べて配置した際に、
図3(a)に示すように、キャップ部分130をなす図中右側の折板屋根材10の幅方向一方の端部が図中左側に並ぶ折板屋根材の幅方向他方の端部をなすキャップ内側部140の上側に被さるようになっている(
図3(a)参照)。
【0045】
なお、
図3(a)の下側には、折板屋根材10の水流れ方向における隣接する折板屋根材の繋がった部分である折板屋根材端部重なり部13の水流れ方向下流側に配置された折板屋根材が示されている。また、
図3(a)の上側には、後述する折板屋根材の水流れ方向における隣接する折板屋根材10の繋がった部分である折板屋根材端部重なり部13(
図4乃至
図6参照)の上に被さり、下側の折板屋根材の折板防水用樹脂シート120に融着した折板屋根材重なり部防水用樹脂シート200が示されている。
【0046】
本実施形態においては、折板屋根材10の折板屋根板110は、例えば長さ10m程度、幅30cmから50cm程度の定尺の折板屋根材として作成されている。また、折板防水用樹脂シート120は、折板屋根板110の山折り部111と谷折り部112のみならずキャップ部分130の上側面も覆うようにロール形成されている。なお、折板屋根板110をなすガルバリウム鋼板(登録商標)の厚さは、一例として0.5mmから1mm程度、折板防水用樹脂シート120をなす塩ビシートは、一例として1.5mm程度の厚さとなっている。しかしながら、本発明においては、その作用を発揮し得る限りこのような寸法関係に限定されるものではないことは言うまでもない。
【0047】
また、折板屋根材重なり部防水用樹脂シート200が、折板屋根材10とは別に用意されている(
図6における左上がりのハッチングと
図11及び
図12にドットで示し折板屋根材10に融着した状態で屋根の水流れ方向と直交する方向に延在する折板屋根材重なり部防水用樹脂シート200参照)。
【0048】
折板屋根材重なり部防水用樹脂シート200は、本発明において特徴的な構成要素であり、各折板屋根材10を母屋90に順々に取り付ける際か、若しくは取り付けた後に、緩勾配屋根を構成する各折板屋根材同士の全ての折板屋根材端部重なり部13における防水を図るのに十分な所定幅を有している。そして、
図5及び
図6に示すように、折板屋根材端部重なり部13の水流れ方向上流側となる折板屋根材の下端部11を被うように重ね、折板屋根材重なり部防水用樹脂シート200をこれが重なる各折板屋根材10の上側面に備わる折板防水用樹脂シート120に溶着することで、防水仕様の緩勾配屋根を建物に取り付け可能となっている。
【0049】
折板屋根材重なり部防水用樹脂シート200は、本実施形態の場合、折板屋根材端部重なり部13の水流れ方向の長さの約2倍程度の幅を有している。具体的には、折板屋根材端部重なり部13の水流れ方向の長さが10cmとすると、折板屋根材重なり部防水用樹脂シート200の幅は20cm程度となっている。しかしながら、この幅はあくまで一例にすぎず、折板屋根材重なり部防水用樹脂シート200がその防水機能を十分に果たすことができれば、これより短くても構わない。
【0050】
続いて、第1の実施形態に係る緩勾配屋根の施工方法に用いる折板屋根材10を用いた緩勾配屋根の施工方法について説明する。
図7は、第1の実施形態に係る折板屋根材を用いた緩勾配屋根の施工方法を分かり易く示す説明図である。また、
図8は、
図7に続く施工手順の一例を示す説明図である。また、
図9は、
図8に続く施工手順の一例を示す説明図である。また、
図10は、
図9に続く施工手順の一例を示す説明図である。また、
図11は、
図10に続く施工手順の一例を示す説明図である。また、
図12は、
図11に続く施工手順の一例を示す説明図であり、第1の実施形態に係る緩勾配屋根の施工方法の実施を完了した状態を示す図である。
【0051】
第1の実施形態に係る折板屋根材を用いた緩勾配屋根の施工を行うにあたり、最初に、上述した定尺の折板屋根材10を屋根の施工現場とは離れた工場内で多数製造しておく。この折板屋根材を製造に当たっては、工場内にあるロール成型機を用いて製造して工場内か工場とは別の倉庫に保管しておく。
【0052】
即ち、本発明によると予め任意の種類の折板屋根材10を任意の数だけ製造して保管しておくことができる。そのため、同一寸法を有する折板屋根材10か異なる寸法を有する別仕様の折板屋根材10を多少多めに作っておくことで、新たな屋根の施工の注文が急遽入った時にこれに迅速に対応することができる。
【0053】
次いで、これらの折板屋根材10を、屋根を設置すべき建物の施工現場まで運搬する。本実施形態に係る緩勾配屋根の施工方法に用いる折板屋根材10は、平均的には5mから長くても12m程度の長さでさほど長くない定尺の屋根材であるため、建物に取り付ける屋根の規模が大きくても小型のトラックで何回かに分けて運搬することで対応でき、特別に大型のトラックを運送会社に委託して大掛かりな運搬作業を行わずに済む。
【0054】
次いで、施工現場に運んだ折板屋根材10を適当な枚数まとめてクレーン車などを用いて建物の上部の屋根設置場所まで移動させる。この場合においても、従来例で説明したように建物の上部と下部に多人数の作業者を配置しながら長尺の折板屋根材を吊り金物(テンビン)を用いた吊り上げ作業を行う必要がないので、作業者の確保がし易くかつ吊り上げ作業を安全に行うことができる。また、クレーン車も長尺の折板屋根材を釣り上げる時のような大型のクレーン車(重機)を使用する必要はない。
【0055】
次いで、建物の母屋90に折板屋根材10を取り付ける。以下にこの手順について説明する。建物の母屋90が水流れ方向に対して垂直に例えば2m間隔で設けられているとすると、
図7に示すように、最初に軒下の一方の端に1番目の折板屋根材10(1−1)を取り付ける。この際、母屋90に適当な固定具を用いて取り付ける。次いで、この取り付けられた折板屋根材の横方向(軒下の延在方向、以下単に「横方向」とする)に隣接する母屋90に2番目の折板屋根材10(1−2)を取付けると共に、1番目の折板屋根材10(1−1)の幅方向一方の側(図中右側)のキャップ内側部140に2番目の折板屋根材10(1−2)の幅方向他方の側(図中左側)のキャップ部分130をしっかりと被せる(
図3(a)に示す状態参照)。
【0056】
このような手順で順々に横方向に折板屋根材10を母屋90に取り付けながら既に取り付けられた折板屋根材10のキャップ内側部140にその後に取り付けられる折板屋根材10のキャップ部分130を被せてしっかりと嵌め込んでいく。このようにして最も軒下側の母屋90に軒下の一端から他端まで横方向(水流れと垂直方向)に折板屋根材10(1−1)〜10(1−n)を1列取り付ける(
図8参照)。
【0057】
次いで、この横方向1列目の折板屋根材10(1−1)〜10(1−n)の上側に上記手順と同様の手順で水流れ方向下から2列目の折板屋根材10(2−1)〜10(2−n)を取り付ける(
図9参照)。この際、
図2(b)の断面図及び
図9に示すように、水流れ方向上流側の折板屋根材の端部とその近傍(
図2(b)の実線部分)が水流れ方向下流側の折板屋根材の端部とその近傍(
図2(b)の点線とその上側の実線で挟まれる領域の部分)の上側に重なってこの部分に折板屋根材端部重なり部13が形成されるように両者を繋げる。この作業により折板屋根材端部重なり部13を形成した後、この部分に多数のビス19を打ち込み、折板屋根材同士をリベット止めする(
図4及び
図5参照)。
【0058】
なお、
図9における水流れ方向に繋がっている折板屋根材の接続部分の横方向に繋がる上側の点線は、水流れ方向下側の折板屋根材の上端であって水流れ方向上側の折板屋根材の下端近傍が上側に被さった上端部12を示している。一方、
図9における各折板屋根材端部重なり部の横方向に繋がる下側の実線は、水流れ方向上側の折板屋根材の下端であって水流れ方向下側の折板屋根材の上側近傍に被さった下端部11を示している。
【0059】
次いで、本実施形態においては、上述した1列目の折板屋根材に対して2列目の折板屋根材を建物の母屋に取り付ける要領と同様の要領で3列目の折板屋根材10(3−1)〜10(3−n)を取り付ける(
図10参照)。このような作業を繰り返して建物の上部の母屋90の部分全体に定尺の折板屋根材10を取り付ける。
【0060】
次いで、折板屋根材重なり部防水用樹脂シート200を用意する。なお、折板屋根材重なり部防水用樹脂シート200については、これを折板屋根材に溶着した後の状態として
図3(a)に上側の実線、
図6に左上りのハッチングで示すと共に、
図11と
図12における折板屋根材の水流れ方向と直交する方向に延在するドット領域として示している。
【0061】
折板屋根材重なり部防水用樹脂シート200は、上述したように緩勾配屋根を構成する各折板屋根材同士の全ての折板屋根材端部重なり部13における防水を図るためのもので、この重なり部の防水を図るのに十分な所定幅を有する。また、本実施形態の場合、折板屋根材重なり部防水用樹脂シート200は、水流れ方向とは直交するように各列に形成された折板屋根材端部重なり部13の全てを一度に被う長さを有している(
図11及び
図12参照)。
【0062】
なお、折板屋根材重なり部防水用樹脂シート200の長さについては、本実施形態の場合、折板屋根材10の水流れ方向と直交する一方の端部から他方の端部まで達しているが、実際には適当な長さの折板屋根材重なり部防水用樹脂シート200を建物の施工すべき屋根の規模に合わせて繋げて使用すれば良い。
【0063】
そして、折板屋根材重なり部防水用樹脂シート200を、折板屋根材重なり部13の水流れ方向上流側となる折板屋根材10の下端部11を被うように重ね、折板屋根材重なり部防水用樹脂シート200をこれが重なる各折板屋根材の上側面に備わる折板防水用樹脂シート120に熱溶着装置(図示せず)で融着することで、防水仕様の緩勾配屋根を建物に取り付ける。
【0064】
このようにして、長手方向に隣接する折板屋根材同士の全ての接続部分に水流れ方向下流側融着防水部220を形成する(
図6及び
図12参照)。これによって、定尺の折板屋根材10を利用しているにも関わらず、屋根の施工現場でロール成型機を用いて作った長尺の屋根材と同じように水流れ方向に対して完全防水を実現した構造として建物の屋根を葺く作業を完了することができる。
【0065】
なお、上述した定尺の折板屋根材10を建物の母屋90に葺く作業と、折板屋根材重なり部防水用樹脂シート200をこれが重なる各折板屋根材10の上側面に備わる折板防水用樹脂シート120に融着させて水流れ方向下流側融着防水部220を形成する作業については、同一の屋根職人が行っても良く、若しくは屋根職人のスケジュール調整や安全上重要である疲労度合いを考慮して別の屋根職人が行っても良い。
【0066】
また、水流れ方向に対して下流側となる位置における横方向1列に亘って定尺の折板屋根材10を全て母屋90に取り付けた後に、これに対して隣接する上流側となる位置に横方向1列に亘って定尺の折板屋根材10を全て母屋90に取り付け、その後に折板屋根材重なり部防水用樹脂シート200を、折板屋根材端部重なり部の水流れ方向上流側となる折板屋根材の下端部11を被うように重ね、折板屋根材重なり部防水用樹脂シート200をこれが重なる各折板屋根材10の上側面に備わる折板防水用樹脂シート120に溶着することで、折板屋根材同士の接続部分に逐次水流れ方向下流側融着防水部220を形成する作業を繰り返しても良い。
【0067】
続いて、上述した第1の実施形態の作用について説明する。第1の実施形態に係る特別に工夫した定尺の折板屋根材10を用いて屋根を施工することによって、解決すべき課題の欄で記載した問題を解決しながら長尺の折板屋根材と同様に防水性を確保した緩傾斜の屋根を建物に葺くことができる。
【0068】
より詳細には、従来のように屋根の施工現場にロール成型機を設置して長尺の折板屋根材を作る代わりに、その現場と離れた工場内のロール成型機で定尺の折板屋根材10を予め多数作って保管しておくことができる。そのため、長尺タイプとは異なり長さが短い定尺タイプの折板屋根材10のため、工場でこの折板屋根材10を製造し、施工現場まで大掛かりなトラックを用いずに運搬していくことができる。
【0069】
また、工場内のロール成型機で予め定尺の折板屋根材10を作っておくことができるため、屋根の施工現場にロール型成型機やこれによって成形される非常に大きな鉄板ロールを屋根の施工期間中置いておく必要が無い。更に、長尺タイプの折板屋根材を吊り金具(テンビン)によって多人数で屋根の設置場所まで吊り上げる大掛かりで安全面において問題がある作業を行なう必要がない。
【0070】
また、長尺タイプの折板屋根材を用いる場合のように屋根を施工する際に一度に多くの屋根職人を集める必要が無いので、施工のスケジュールに合わせて少人数の熟練した屋根職人を集め易い。また、1本の折板屋根材の長さが定尺寸法となっているので、屋根職人の身体的負担が軽くなり作業が捗る共に、高い所で行う屋根の施工作業中の屋根職人の安全を確保することができる。
【0071】
また、長尺タイプの折板屋根材のように屋根の施工後に長期間経って経年変化を起こしてタイトフレーム等が壊れて飛び散るような不具合を防ぐことができる。
【0072】
また、特別に工夫した定尺の折板屋根材10を用いるので、母屋90に折板屋根材10を取り付けるにあたって、長尺の折板屋根材を1本ごとに大掛かりな作業を伴いながら母屋に取り付ける従来の工法と異なり、施工作業に時間的な自由度と余裕を持たせることができる。
【0073】
続いて、第1の実施形態の変形例に係る緩勾配屋根の施工方法に用いる折板屋根材10及びこれを用いた緩勾配屋根の施工方法について説明する。
図3(b)は、第1の実施形態の変形例に係る折板屋根材を2枚横方向(折板屋根材の水流れ方向と直交する方向)に嵌合させた状態を示す端面図である。
【0074】
この実施形態に係る緩勾配屋根の施工方法に用いる折板屋根材10は、第1の実施形態に係る緩勾配屋根の施工方法に用いる折板屋根材10に加えて、折板屋根材を建物に取り付けた状態で下側面となる折板屋根板に断熱材150を備えたことを特徴としている。
【0075】
本実施形態の場合、断熱材150の材質は、屋根の断熱材として一般的に用いられる発泡材である。この場合、発泡材の寸法の一例として、折板屋根材10の谷折り部112に対する山折り部111の高さ(山高)が100mm程度とすると、断熱材150の厚さは30mmかそれ以上、断熱効果を考慮して適当な厚さを選択する。
【0076】
断熱材150は、端面視で所定の凹凸形状を有する厚さの厚い板状体からなり、第1の実施形態と同様に一方の折板屋根材(
図3(b)の左側の折板屋根材)のキャップ内側部140にこの折板屋根材の幅方向に隣接するもう片方の折板屋根材(
図3(b)の右側の折板屋根材)のキャップ部分130が被さった状態で、ここでは詳細には説明しない固定金具を折板屋根板110の裏側の山折り部111と谷折り部112とで形成される凹凸部に嵌め込むことにより、折板屋根板10の裏側にしっかりと固定されている。なお、断熱材150に関しては折板屋根材10を母屋90に取り付ける際にその直前に折板屋根材10に固定しても良く、折板屋根材10を吊り上げる前や工場で折板屋根材10をロール成型機で作った際に取り付けていても良い。
【0077】
そして、この第1の実施形態の変形例に係る断熱材150を備えた折板屋根材10を用いて緩勾配屋根の施工を行うにあたっては、基本的には、
図7乃至
図12に示す第1の実施形態における屋根の施工方法と同様なやり方で行なう。なお、本実施形態において断熱材150の長手方向上端面及び下端面が、折板屋根材10の水流れ方向上端部及び下端部と面一となっている場合、折板屋根材を水流れ方向に繋げる際には、第1の実施形態と異なり水流れ方向上側の折板屋根材の下端部を水流れ方向下側の折板屋根材の上端部に当接させる。
【0078】
一方、折板屋根材10の水流れ方向の下端部11が断熱材150の長手方向下端面よりも一定量だけ長くなっている場合は、第1の実施形態と同様に水流れ方向下側の折板屋根材10の上端部12及びその近傍に水流れ方向上側の折板屋根材の下端部11及びその近傍を被せて多数のビス19を用いて、
図4及び
図5に示すように互いにリベット止めして両者を固定する。なお、この場合の水流れ方向下側の折板屋根材10の上端部12及びその近傍は、図中に断熱材を図示していない
図3(a)の下側の二点鎖線で特定される。
【0079】
以下に第1の実施形態の変形例に係る断熱材を備えた折板屋根材10の作用について説明する。基本的には第1の実施形態に係る緩勾配屋根の施工方法に用いる折板屋根材10と同等の作用を発揮するが、本変形例は、これに加えて以下のような特別の作用を発揮することが可能となる。
【0080】
具体的には、この第1の実施形態の変形例のような断熱材150を備えた屋根を葺く場合、従来の長尺タイプの折板屋根材を用いたのではダブルパック構造にしなければならず施工期間が極端に長くなっていたが、本変形例による折板防水用樹脂シート120を備えた定尺タイプの折板屋根材10を用いることで、母屋90に折板屋根材10を1回葺くだけで屋根の施工を完了することができる。
【0081】
即ち、従来のダブルパックの屋根構造のように1度屋根を葺いてその上に断熱材を乗せまた更にその上に屋根を葺くという3段階の工程を経て屋根を完成させる必要が無いので、従来例の課題で説明した熟練した屋根職人のスケジュール調整や工期の遅れ、コストの上昇等、長尺の屋根をテンビンによって吊り上げる大がかりで危険性を伴う吊り上げ作業の不要化、これに伴う多人数の作業者の困難なスケジュール調整や屋根の施工に関する屋根職人やその他の関連する作業者の安全性の確保等の問題を全て解決することができる。
【0082】
続いて、第2の実施形態に係る緩勾配屋根の施工方法に用いる折板屋根材10及びこれを用いた緩勾配屋根の施工方法について説明する。
図13は、
図6に示した構成において、第2の実施形態を具現化するために、幅方向に隣接する折板屋根材同士の嵌合部を被うように折半屋根材嵌合部防水用樹脂シートを重ねて融着させた状態を示す平面図である。また、
図14(a)は、
図13における折板屋根材嵌合部防水用樹脂シートが折板屋根材に融着された部分を水流れ方向と直交する方向に沿って切断した断面図(
図13におけるA-A断面図)である。また、
図14(b)は、折板屋根材重なり部防水用樹脂シートの上に更に折板屋根材嵌合部防水用樹脂シートが融着された部分を水流れ方向と直交する方向に沿って切断した断面図(
図13における例えばB-B断面図)である。また、
図15は、
図12に続く施工手順の一例を示す説明図であり、第2の実施形態に係る緩勾配屋根の施工方法の実施を完了した状態を示す図である。
【0083】
なお、この実施形態に係る緩勾配屋根の施工方法に用いる折板屋根材10についても、基本的構造は第1の実施形態に係る緩勾配屋根の施工方法に用いる折板屋根材10と同様である。
【0084】
しかしながら、第2の実施形態の特有の構成として、第1の実施形態の場合のように折板屋根材重なり部防水用樹脂シート200を用意しておくことに加えて、隣接する折板屋根材10の幅方向の嵌合部においても、この嵌合部を構成する上側に被せる折板屋根材10の幅方向端部を長手方向全体に亘って被うように所定幅の折半屋根材嵌合部防水用樹脂シート300を別途用意しておくことを特徴としている。
【0085】
そして、折半屋根材嵌合部防水用樹脂シート300は、上述したように幅方向に隣接する折板屋根材同士の嵌合部に被せてこれが重なる各折板屋根材10の上側面に備わる折板防水用樹脂シート120に融着することで、隣接する折板屋根材10の幅方向の嵌合部における防水を更に図った防水仕様の緩勾配屋根材を建物に取り付け可能にする役目を果たしている。
【0086】
次いで、第2の実施形態の折板屋根材10を用いた屋根の施工方法について説明する。この実施形態に係る屋根の施工方法についても、基本的には第1の実施形態に係る屋根の施工方法と同様であるが、以下の工程が追加されている。なお、
図13乃至
図15については、上述したように本発明への説明の理解の容易化を図るために、折板屋根材10の各構成要素の実際の形態に対して多少描き方を変えて(モディファイして)示している。特に折板屋根材重なり部防水用樹脂シートや本変形例の要部である折板屋根材嵌合部防水用樹脂シートの厚さは、厚めに描いている。
【0087】
即ち、一方の折板屋根材(
図13(a)の左側の折板屋根材)10のキャップ内側部140にこれに幅方向に隣接する他方の折板屋根材(
図3(a)の右側の折板屋根材)10のキャップ部分130を被せて嵌合させ、折板屋根材重なり部13に第1の実施形態に係る折板屋根材重なり部防水用樹脂シート200を融着させた後に、折半屋根材嵌合部防水用樹脂シート300を幅方向に隣接する折板屋根材同士の嵌合部に被せる(
図14(a)の左上側の実線参照)。
【0088】
そして、折半屋根材嵌合部防水用樹脂シート300が重なる各折板屋根材10の上側面に備わる折板防水用樹脂シート120に折半屋根材嵌合部防水用樹脂シート300を融着させることで、側方融着防水部260を形成する(
図13参照)。これによって隣接する折板屋根材の幅方向の嵌合部における防水を更に図った防水仕様の緩勾配屋根材を建物に取り付ける。
【0089】
なお、
図13(b)は、折板防水用樹脂シート120に折半屋根材嵌合部防水用樹脂シート300を融着させた部分に折半屋根材嵌合部防水用樹脂シート300を融着させた状態を示している。
【0090】
この取り付け方に関して、屋根全体を示す
図12を利用してより分かりやすく説明する。同図においては、各隣接する折板屋根材10の水流れ方向において連結している折板屋根材端部重なり部13(
図13参照)がこの水流れ方向と直交する方向に建物の一方の軒先から他方の軒先まで連なっている。
【0091】
即ち、この状態においては折板屋根材重なり部防水用樹脂シート200をその長さ分だけ上から被せてその被さった下側の折板屋根材の上面に重なった水流れ方向上下の折板屋根材10の折板屋根材防水シート120に図示しない溶着装置を用いて融着する。なお、ここまでの工程は上述した第1の実施形態に係る緩勾配屋根の取り付け手順と同じである。
【0092】
第2の実施形態においては、
図13乃至
図15に示すように、これに加えて既に母屋90に固定され第1の実施形態において長手方向において互いにビス19によりリベット止めして連結して長尺となった折板屋根材の隣接する折板屋根材同士の幅方向連結部に形成された折板屋根材同士の嵌合部を一度に被うように緩勾配屋根の軒先から軒下まで延びる長さの折半屋根材嵌合部防水用樹脂シート300を被せる。そして、折半屋根材嵌合部防水用樹脂シート300をこれが重なる各折板屋根材10の上側面に備わる折板防水用樹脂シート120に溶着することで、側方融着防水部260を形成する(
図13参照)。
【0093】
この作業を隣接する長尺化した折板屋根材同士の間に形成される全ての折板屋根材同士の嵌合部に対して行う(
図15の建物の軒先から軒下まで幅方向互いに所定間隔隔てて伸びるドット状の複数本の折半屋根材嵌合部防水用樹脂シート300参照)。これによって、この部分についても完全防水構造とすることができ、更なる防水機能を高め、防水性に格段に優れた屋根を施工することができる。
【0094】
なお、この第2の実施形態の折板屋根材の折半屋根材嵌合部防水用樹脂シート300をこれが重なる各折板屋根材10の上側面に備わる折板防水用樹脂シート120に溶着装置(図示せず)によって融着させる作業については、上述した第1の実施形態に係る緩勾配屋根の施工方法に用いる折板屋根材重なり部防水用樹脂シート200を、折板屋根材端部重なり部13の水流れ方向上流側となる折板屋根材10の下端部11を被うように重ね、折板屋根材重なり部防水用樹脂シート200をこれが重なる各折板屋根材10の上側面に備わる折板防水用樹脂シート120に溶着装置(図示せず)によって融着させる作業に合わせて行うのが施工上効率的である。
【0095】
続いて、上述の実施形態の更なる変形例であるキャップ取付け型の折板屋根材50を用いた緩勾配屋根の施工方法について説明する。
図16は、本発明に係る折板屋根材の変形例を示す端面図である。
【0096】
このキャップ取付け型の実施形態に係る緩勾配屋根の施工方法に用いる折板屋根材50は、第1及び第1の実施形態の変形例に係る緩勾配屋根の施工方法に用いる折板屋根材10と基本的構成に関しては共通している。相違点としては、第1の実施形態及びその変形例に係る折板屋根材10の場合、この幅方向の一端側がキャップ内側部140をなし他端側がこれに被さって嵌合するキャップ部分130をなしていたが、このキャップ取付型の場合、折板屋根材50の幅方向中心に対して各端部に左右対称となるキャップ嵌合ハゼ510,520をそれぞれ有している。
【0097】
また、このキャップ取付け型の実施形態においては、塩ビシートからなる防水用樹脂シート530は、上述の実施形態と同様に、長手方向に関しては折板屋根材50の折半屋根板500の端部と合致すると共に、幅方向に関しては、
図16に示すように一例としてその端部531,532がキャップ嵌合ハゼ510,520の内側端部まで延在している。そして、折板屋根材50の長手方向全体に亘ってキャップ嵌合ハゼ510,520に嵌合するキャップ550を用いるようになっている。
【0098】
キャップ550には、2つのハゼ係合部551,552が互いに対向するように備わっており、この2つのハゼ係合部551,552がそれぞれのキャップ嵌合ハゼ510,520の下向き折り曲げ部に嵌まることで、隣接する折板屋根材50の互いに向かい合うキャップ嵌合ハゼ510,520にキャップ550がしっかりと被さり、この部分の防水を確実に図る。
【0099】
また、本実施形態においてはキャップ嵌め込み部防水用樹脂シート600が特別に用意されている。キャップ嵌め込み部防水用樹脂シート600は、このキャップ550とこれが嵌まる両側の折板屋根材との全ての隙間を被うためのものである。
【0100】
そして、キャップ部分130とこれが嵌まる両側の折板屋根材50との全ての隙間をこのキャップ嵌め込み部防水用樹脂シート600で被い、キャップ嵌め込み部防水用樹脂シート600をこれが重なる折板屋根材50の上側面に備わる折板防水用樹脂シート530とキャップ550の上側面に備わるキャップ防水用樹脂シート(図示せず)の双方に図示しない溶着装置で上述の各実施形態と同様に融着することで、キャップ嵌合部の防水を更に図った防水仕様の緩勾配屋根材を建物に取り付け可能とする役目を果たしている。
【0101】
続いて、このキャップ取り付け型の実施形態の場合における折板屋根材50の建物への取り付け手順について説明する。最初に、横方向に2枚の折板屋根材50を並べて母屋90に固定し、一方の折板屋根材50の幅方向一端側のキャップ嵌合ハゼ510と他方の折板屋根材50の幅方向他端側のキャップ嵌合ハゼ520を僅かな間隔だけ隔てた状態とし、この上から定尺の折板屋根材と同様の長さを有する端面視逆角型U字状のキャップ550を双方のキャップ嵌合ハゼ510,520に被せてきっちりと嵌め込むようになっている。このようにして、上述した第2の実施形態に係る緩勾配屋根の施工方法に用いる折板屋根材と同様の作業手順で折板屋根材50とキャップ550との間の防水を確実に図ることができる。
【0102】
以上説明したように、本発明によると、例えば倉庫や工場、幹線道路沿いの比較的大きなコンビニや薬局等の緩勾配屋根を施工する際に施工現場でなければ造ることができない非常に長いいわゆる長尺の折板屋根材を用いる代わりに、特別に工夫した折板屋根材を用いながら長尺の折板屋根材を用いた時のように水漏れが生じない防水性に優れた緩勾配屋根を施工できる。
【0103】
これに伴い、従来のように長尺の折板屋根材を用いるに当たって必ず生じていた問題、即ち施工現場にロール成型機を設置したり、その場で造った長尺の折板屋根材を屋根の上に吊り上げるかなり大型のクレーン車等の重機を屋根の施工中使い続けたりしなければならない問題を一気に解決できる。
【0104】
また、吊り金具(テンビン)を用いて吊り上げる必要が無いので大人数の作業者をスケジュールに合わせて集める必要が無い。また、このような危険を伴う長尺の折板屋根材の吊り上げ作業を行なわなくて済むので安全上好ましい。また、建物の上で長尺の折板屋根材のように多人数の屋根職人が1度に集まって屋根を施工することを必要としないので、屋根職人の確保が非常に楽になる。
【0105】
また、断熱材を備えたダブルパック構造の折板屋根構造とする場合、従来のような長尺の折板屋根材を用いなくて済むので、このようなダブルパック構造とする必要が無く、1度で屋根を葺くことができる。これによって屋根職人を多人数集める必要が無くスケジュール調整がとり易くなり、且つ工期も長尺の折板屋根材を用いることに比べて格段に短くて済む。その結果施工コストを大幅に下げることができる。
【0106】
また、H型鋼の上に下地材としての鉄板などでできたデッキ材を設け更に断熱材を重ねてその上に防水用樹脂シートを貼る屋根の構造のように、支持用の鋼材であるH型鋼の上に下地材としての鉄板を取り付ける作業と、その上に断熱材を重ねる作業と断熱材の上面に防水シートを融着で貼り付ける別作業を異なる屋根職人が行う必要はなく、少人数の熟練した屋根職人によって短い工期で建物に屋根を葺く作業を行うことができる。
【0107】
特に折板屋根材を使った場合、それ自体十分な強度と剛性を有しているため、母屋のスパンを大きく取ることができ、上述した構造のようにH形鋼を小さい間隔で屋根の部分に張り巡らす必要がなく、コストを削減できると共に工期を短縮することができる。
【0108】
また、キャップ式の折板屋根材にも本発明を適用可能であるので、定尺の折板屋根材を用いながら防水性に優れた緩勾配屋根を施工できる。
【0109】
また、近年懸念されている大規模地震が起こった際に下地材である鉄板などのデッキ材が落下してくる心配も全くない。
【0110】
なお、本発明は、上述した各実施形態及びそれに対応する図面に記載された形状や寸法、材質、施工方法に限定されるものではなく、本発明の作用を発揮し得る範囲内であれば様々な他の変形例も本発明に属するものであることは言うまでもない。
【0111】
従って、折板屋根材同士を水流れ方向に繋げる際に必ずしも第1の実施形態や第2の実施形態のように水流れ方向上側の折板屋根材の長手方向下端部及びその近傍を水流れ方向下側の折板屋根材の長手方向上端部及びその近傍の上に被さるように重ねる必要は無い。
【0112】
即ち、水流れ方向上流側の折板屋根材の下端部及びその近傍を水流れ方向下流側の折板屋根材の上端部及びその近傍の上側に重ねて両者を固定する代わりに、水流れ方向上流側の折板屋根材の長手方向下端部を水流れ方向下流側の折板屋根材の長手方向上端部に突き当てた状態で互いに連結するようにした構成において、折板屋根材重なり部防水用樹脂シートの代わりにこの突き当て部に折板屋根材突き当て部防水用樹脂シートを重ねてこの下側の折板屋根材の樹脂部と融着させてこの突き当て部の防水を図るようにしても良い。
【0113】
以下、上記構成を図面に基づいて分かり易く説明する。
図17は、この端部突き当て型の折板屋根材70の端面図である。なお、折板屋根材70は、上述の実施形態と同様に屋根の母屋90への取り付け状態において折板屋根板701の上側面全体に折板防水用樹脂シート702を備えた構成を有している。折板屋根材70の水流れ方向端部当接部には、折板屋根材端部当接部防水用樹脂シート740(
図18参照)が上述の実施形態と同様に融着されている。
図18は、
図17に示した本発明の更なる変形例の折板屋根材70を水流れ方向と直交する方向に一方の内ハゼ710に他方の外ハゼ720を嵌合させながら水流れ方向に端部を当接させ、この端部の上側に折板屋根材端部当接部防水用樹脂シート740を融着した状態を示す端面図である。また、
図19は、
図18に示した折板屋根材70を母屋90に取り付けた後に、第1の実施形態に係る折板屋根材端部重なり部以外における折板屋根材嵌合部防水用樹脂シート750のみを融着した状態を示す端面図である。また、
図20は、
図19に示した折半断熱材の代わりに、この下面に断熱材760を備えた折板屋根材70を用いた状態を示す端面図である。
【0114】
これらの図面に示す構成から明らかなように、このような幅方向一方に外ハゼを有すると共に他方に内ハゼを有して水流れ方向上側の折板屋根材の下端部と下側の折板屋根材の上端部を突き当てるタイプの折板屋根材を用いた緩勾配屋根の施工方法に本発明を適用しても良い。この場合においても、上述した断熱材を用いた場合の本発明特有のメリットを共有することができる。
【0115】
また、上述した実施形態において、
図7乃至
図15に示した建物に屋根を葺く形態については、それぞれ折板屋根材を水流れ方向に3本直列に繋げて長尺の折板屋根材としたものであるが、本発明の趣旨を鑑みて例えばこのような折板屋根材を10本や20本直列につなげて長さ50mmから100mm程度あるロール成型機で作った極めて長尺の折板屋根材に変えて建物の屋根に葺くことができることは言うまでもない。即ち、本発明によると、極めて大きな建物に緩勾配屋根を葺く場合についても従来の問題点を解決しながら対応可能であることを付言しておく。