特許第6823922号(P6823922)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6823922
(24)【登録日】2021年1月14日
(45)【発行日】2021年2月3日
(54)【発明の名称】蓋体付き容器
(51)【国際特許分類】
   A45D 33/00 20060101AFI20210121BHJP
【FI】
   A45D33/00 610Z
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-214996(P2015-214996)
(22)【出願日】2015年10月30日
(65)【公開番号】特開2017-80324(P2017-80324A)
(43)【公開日】2017年5月18日
【審査請求日】2018年5月2日
【審判番号】不服2019-17200(P2019-17200/J1)
【審判請求日】2019年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】坂本 智
(72)【発明者】
【氏名】桑原 和仁
【合議体】
【審判長】 平田 信勝
【審判官】 田村 嘉章
【審判官】 尾崎 和寛
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭60−173214(JP,U)
【文献】 特開昭61−268205(JP,A)
【文献】 特開平9−104477(JP,A)
【文献】 実開平6−76108(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体又は蓋体のいずれか一方に設けられた長穴と、
他方に設けられた前記長穴に嵌合する軸と、
前記容器本体に設けられた容器側閉塞手段と、
前記蓋体に設けられ、該容器側閉塞手段に作用して前記蓋体を前記容器本体に対して閉塞させる蓋体側閉塞手段と
を備え、
前記蓋体は、前記容器本体に対して、前記軸の周りに回転させることによって開放及び閉塞が可能であり、
前記容器側閉塞手段及び前記蓋体側閉塞手段はいずれも磁石であり、該磁石は前記長穴の長手方向に着磁されており、
前記蓋体を前記容器本体に対して前記長穴の長手方向に移動させて、前記軸が前記長穴における長手方向の一方の端部に達したとき、前記容器側閉塞手段が前記蓋体側閉塞手段に対して引き合う力を作用させることで前記蓋体は前記容器本体に対して閉塞可能となり、前記軸が前記長穴における他方の端部に達したとき、前記容器側閉塞手段が前記蓋体側閉塞手段に対して反発力を作用させることで前記蓋体は閉塞不可能となることを特徴とする蓋体付き容器。
【請求項2】
前記長穴は、長手方向の両端が拡径されている、請求項1に記載の蓋体付き容器。
【請求項3】
前記容器側閉塞手段及び前記蓋体側閉塞手段は、それぞれ容器側係合部及び蓋体側係合部を更に備える、請求項1又は2に記載の蓋体付き容器。
【請求項4】
前記長穴に嵌合する軸は、前記蓋体に設けられており、前記蓋体の背面には、前記軸を中心とするR面が設けられており、該R面のうち、前記蓋体の閉塞時において前記容器本体に対向する部分の前記軸の中心からの距離よりも、前記蓋体の開放時において前記容器本体に対向する部分の前記軸の中心からの距離の方が大きく、前記蓋体の開放時において前記R面は前記容器本体を押圧することにより摩擦力を作用させる、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の蓋体付き容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、利用者が意図しない開放を防止する機能を有する蓋体付き容器に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料用のコンパクト容器のような蓋体付き容器においては、蓋体及び容器本体の双方にフック部等の係合部を設けて、保管時に蓋体が開放されないようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5639000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のコンパクト容器では、例えば鞄の中でコンパクト容器が他の荷物とぶつかった場合等に操作部材が利用者の意図に反して押圧され、蓋体が開いてしまうことがあった。
【0005】
本発明の目的とするところは、利用者が意図しない開放を防止する機能を有する蓋体付き容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る蓋体付き容器は、
容器本体又は蓋体のいずれか一方に設けられた長穴と、
他方に設けられた前記長穴に嵌合する軸と、
前記容器本体に設けられた容器側閉塞手段と、
前記蓋体に設けられ、該容器側閉塞手段に作用して前記蓋体を前記容器本体に対して閉塞させる蓋体側閉塞手段と
を備え、
前記蓋体は、前記容器本体に対して、前記軸の周りに回転させることによって開放及び閉塞が可能であり、
前記容器側閉塞手段及び前記蓋体側閉塞手段はいずれも磁石であり、該磁石は前記長穴の長手方向に着磁されており、
前記蓋体を前記容器本体に対して前記長穴の長手方向に移動させて、前記軸が前記長穴における長手方向の一方の端部に達したとき、前記容器側閉塞手段が前記蓋体側閉塞手段に対して引き合う力を作用させることで前記蓋体は前記容器本体に対して閉塞可能となり、前記軸が前記長穴における他方の端部に達したとき、前記容器側閉塞手段が前記蓋体側閉塞手段に対して反発力を作用させることで前記蓋体は閉塞不可能となることを特徴とする。
【0007】
また、前記長穴は、長手方向の両端が拡径されていることが好ましい。
【0008】
また、前記容器側閉塞手段及び前記蓋体側閉塞手段は、それぞれ容器側係合部及び蓋体側係合部を更に備えることが好ましい。
【0011】
また、前記長穴に嵌合する軸は、前記蓋体に設けられており、前記蓋体の背面には、前記軸を中心とするR面が設けられており、該R面のうち、前記蓋体の閉塞時において前記容器本体に対向する部分の前記軸の中心からの距離よりも、前記蓋体の開放時において前記容器本体に対向する部分の前記軸の中心からの距離の方が大きく、前記蓋体の開放時において前記R面は前記容器本体を押圧することにより摩擦力を作用させることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、利用者が意図しない開放を防止する機能を有する蓋体付き容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態である蓋体付き容器の保管時における(a)平面図、(b)背面図、(c)側面図である。
図2】(a)は、図1(a)のA−A断面における拡大断面図であり、(b)は、図1(a)のB−B断面における拡大断面図であり、(c)は、図1(a)の磁石2m、5m部分の拡大図である。
図3】本発明の第1実施形態である蓋体付き容器の蓋体スライド時における(a)平面図、(b)側面図である。
図4】(a)は、図3(b)における軸、長穴部分の拡大図であり、(b)は、図3(a)の磁石2m、5m部分の拡大図であり、(c)は、図3(a)のC−C断面における拡大断面図である。
図5】本発明の第1実施形態である蓋体付き容器の蓋体開放時における(a)平面図、(b)側面図である。
図6図5(a)のD−D断面における拡大断面図である。
図7】本発明の第2実施形態である蓋体付き容器の蓋体スライド時における軸、長穴部分の拡大図である。
図8】(a)は、図7のE−E断面における拡大断面図であり、(b)は、(a)において蓋体を開放した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の第1実施形態である蓋体付き容器1を詳細に説明する。
【0015】
図1は、本実施形態に係る蓋体付き容器1の保管時における状態を示す図である。なお、本明細書、特許請求の範囲、要約書および図面では、フック部2p、5p等が配置されている側(図1(a)における下方向)を前方とし、軸5j、長穴2h等が配置されている側(図1(a)における上方向)を後方とし、紙面に垂直な上向き方向を上方とする。本実施形態に係る蓋体付き容器1は、後述する凹部2aを備える容器本体2と、当該容器本体2に対して軸5jによって連結された蓋体5とを備える。本実施形態では、蓋体付き容器1は化粧料用コンパクト容器を想定しており、容器本体2、及び蓋体5は、それぞれ合成樹脂によって形成されている。しかし、蓋体付き容器1は金属等の他の材料を用いて構成してもよい。
【0016】
図1(a)に示すように、容器本体2は、上面視で矩形形状を有し、後述するように化粧料等の内容物を収容する凹部2a(図1(a)には図示しない)を有している。容器本体2は、後端中央位置において上方に延びる連結部2bを有しており、当該連結部2bの側面には、長穴2hが左右に1箇所ずつ設けられている。なお、本実施形態において、長穴2hは、図1(c)に示すように長軸が前後方向に延びるように形成され、また、図2(b)に示すように長手方向の端部2h1が拡径されている。容器本体2の前端近傍には、図1(a)に示すようにフック部2pが設けられている。また、フック部2pの左右両側には、磁石2mが配置されている。更に、容器本体2の背面には、図1(b)及び図2(a)に示すように、利用者が容器本体2を保持するための指掛け2fが設けられている。
【0017】
蓋体5は容器本体2と同様に上面視で矩形形状を有しており、図1(c)に示すように、保管時において容器本体2の上面を覆っている。後述するように、蓋体5の裏面には、鏡5a(図1(a)には図示しない)が設置されている。また、蓋体5後端の左右両側には、上述の連結部2bが間に収容される2本のアーム部5bが設けられている。そして、アーム部5bの側面には、軸穴5hが貫通穴として設けられており、軸穴5hには、蓋体5と容器本体2とを回動自在に連結するための軸5jが圧入によって固定されている。そして、軸5jの先端は上述の長穴2hに挿入されている。ここで、軸5jは長穴2h内で回転可能となる嵌め合いで形成されているため、蓋体5は、容器本体2に対して軸5jを中心に回転することが可能となる。また、軸5jが長穴2h内を長手方向に移動することによって、蓋体5は、容器本体2に対して前後方向(図1(a)の上下方向)にスライドすることができる。
【0018】
なお、先述のように、容器本体2に設けられた長穴2hは、図2(b)に示すように長手方向の端部2h1が拡径されている。そして、長穴2hの端部2h1以外の部分は、軸5jが通過するのに所定の抵抗力を要するように形成されている。従って、利用者は、図1(a)〜(c)の保管時の状態から、後述する図3(a)(b)に示す蓋体スライド時の状態に移行するために、蓋体5に対して所定のスライド力を作用させる必要がある。このため、利用者が意図しない蓋体5のスライドを防止することができる他、利用者が蓋体5のスライドが行われたか否かを正確に認識することができる。なお、長穴2hには、必ずしも拡径された端部2h1を設ける必要はない。
【0019】
本実施形態において、軸5jは、耐久性等を考慮してステンレス等の金属材料を用いているが、この態様には限定されず、合成樹脂、セラミック等を用いてもよい。また、軸5jは、蓋体5と一体成形されていてもよい。また、本実施形態では、軸5jが蓋体5に固定され、容器本体2に長穴2hを設けるように構成したが、この態様には限定されず、軸を容器本体2側に設ける一方、長穴を蓋体5側に設けてもよい。この場合にも、軸の材料に様々な材料を用い得ること、及び軸を容器本体2と一体成形し得ることには変わりがない。
【0020】
蓋体5の前端近傍の裏面には、図1(a)に破線で示すようにフック部5pが設けられている。フック部5pは、図1(a)の保管時状態において、容器本体2に設けられたフック部2pと係合可能であり、この係合によって、蓋体5は、容器本体2の上面を閉塞した状態を維持することができる。
【0021】
また、図1(a)に示すように、フック部5pの左右両側には、磁石5mが配置されている。保管時における、容器本体2に設けられた磁石2m、及び蓋体5に設けられた磁石5mの配置を図2(c)に詳細に示す。なお、図2(c)では、蓋体5のうち磁石5m以外は図示しておらず、磁石2m、5mの相対位置を示している。磁石2m、5mは、図に示すようにいずれも前後方向に着磁されており、保管時において、容器本体2側の磁石2mのN極が、蓋体5側の磁石5mのS極と隣接するように配置されている。これによって、保管時には、磁石2mと磁石5mとが引き合うため、蓋体5は磁力によって容器本体2に引き寄せられて閉塞状態を維持することができる。
【0022】
次に、本実施形態に係る蓋体付き容器1を図3図4に示す蓋体スライド時の状態に移行させた場合について説明する。
【0023】
図3(a)、(b)は、図1(a)〜(c)に示す保管時の状態から蓋体5にスライド力を作用させ、容器本体2に対して蓋体5を前方へとスライドさせた、蓋体スライド時の状態を示す図である。保管時の状態から蓋体スライド時の状態に移行させると、長穴2hに挿入されている軸5jが、後方の端部2h1から前方の端部2h1へと移動する(図4(a)、(c)参照)。この間に、利用者は所定の抵抗力に抗して蓋体5にスライド力を作用させるため、蓋体5のスライドがなされたことを確実に認識することができる。
【0024】
蓋体付き容器1が蓋体スライド時の状態に移行すると、図3(a)に示すように、蓋体5側のフック部5pは容器本体2側のフック部2pに対して前方に移動して離間する。これによって、容器本体2側のフック部2pと蓋体5側のフック部5pとの係合が外れる。なお、フック部2p、5pは、上下方向の引っ張り力に対しては係合状態を維持し、前後方向の引っ張り力に対しては係合状態が容易に外れるような構成を有することが望ましい。このような構成を採用することによって、保管時には蓋体5の閉塞状態を確実に維持しつつ、利用者が蓋体5を開放するために蓋体5をスライドさせたときには、速やかにフック部2p、5pの係合が外れて蓋体スライド時の状態へと移行させることができる。
【0025】
また、蓋体付き容器1が蓋体スライド時の状態に移行すると、容器本体2側の磁石2mと蓋体5側の磁石5mとが、図4(b)に示すように上面視で重なり合う。なお、図4(b)では、蓋体5のうち磁石5m以外は図示しておらず、磁石2m、5mの相対位置を示している。このとき、磁石2mのN極と磁石5mのN極とが上下に重なり合い、同様に磁石2mのS極と磁石5mのS極とが上下に重なり合うため、両磁石2m、5mは上下方向に反発し合う。これによって、蓋体5に対して、容器本体2から離間する方向に磁力が作用するため、蓋体5の前端部分が容器本体2から浮き上がる。従って、利用者は蓋体5の前端部分を把持して、容易に蓋体5を開放状態へと移行させることができる。
【0026】
なお、図4(b)において、容器本体2側の磁石2mと、蓋体5側の磁石5mとは、上面視で前後方向に僅かにずれているが、両磁石2m、5mを図示するためにこのように位置ずれを生じさせて図示している。従って、実際に位置ずれが生じている必要はなく、位置ずれが無い場合が最も大きい反発力が得られるため望ましい。
【0027】
本実施形態では、容器本体2と蓋体5の双方に磁石2m、5mを設けて、保管時には磁石2m、5mが引き合い、蓋体スライド時には磁石2m、5mが反発し合うように構成したが、この態様には限定されない。例えば、磁石2m、5mが保管時にのみ引き合い、蓋体スライド時には両者の距離が離れることにより相互作用しないようにしてもよい。また、磁石2m、5mの一方を鉄片等の磁性体材料で置き換え、保管時にのみ磁石と鉄片とが引き合い、蓋体スライド時には相互作用しないようにしてもよい。更に、磁石2m、5mが保管時には相互作用せず、蓋体スライド時にのみ反発力を作用するようにしてもよい。なお、保管時、又は蓋体スライド時のいずれか一方のみで磁力を相互作用させる場合には、磁石の着磁方向も限定されず、左右方向、又は上下方向に着磁するようにしてもよい。
【0028】
また、本実施形態では、保管時にフック部2p、5pが係合すると共に磁石2m、5mが引き合うように構成したが、この構成に限定されず、フック部2p、5pを設けないで、磁石2m、5mが引き合うことのみによって蓋体5の閉塞状態を維持するようにしてもよい。また、磁石2m、5mを設けずに、保管時にフック部2p、5pが係合することのみによって蓋体5の閉塞状態を維持するようにしてもよい。
【0029】
次に、本実施形態に係る蓋体付き容器1を図5図6に示す蓋体開放時の状態に移行させた場合について説明する。なお、本明細書において、蓋体開放時とは、蓋体付き容器1を使用するために、容器本体2に対して蓋体5を少なくとも90度以上開放した状態を指すものとする。従って、先述のように磁力によって蓋体5が浮いた状態等は蓋体開放時には含まない。
【0030】
図5(a)、(b)は、図3(a),(b)の蓋体スライド時の状態から利用者が蓋体5の前端部分を把持する等して持ち上げ、軸5j周りに180度回転させて開放させた状態を示している。先述のように、容器本体2の上面には、凹部2aが設けられている。本実施形態において、凹部2aは、容器本体2と同様に合成樹脂で形成された容器本体2とは別体の中皿部材として設けられており、その凹所には、ファンデーション等の図示しない内容物を収容可能である。なお、凹部2aは、合成樹脂以外の材料によって構成してもよいし、容器本体2に一体成形することにより設けてもよい。
【0031】
また、先述のように、蓋体5の裏面には鏡5aが配置されている。鏡5aは、利用者が鏡5aを見ながら凹部2a内の内容物を使用することを想定して設けられている。しかし、蓋体付き容器1はこの態様には限定されず、鏡5aを配置しないで、凹部2aのみを有するように構成してもよい。また、凹部2aを配置しないで、鏡5aのみを蓋体5に配置してもよい。更に、鏡5aは容器本体2側に設けてもよい。なお、容器本体2は、凹部2aに内容物を収容するものに限定されず、例えば、鏡など、蓋体で覆うことによって、脱落、傷、汚れ、及び破損等から保護すべきあらゆるものを収容するものを指すものとする。
【0032】
図6は、蓋体5の開放時における軸5j及び長穴2hの状態を示している。図6は、図4(c)の状態から利用者が軸5jを回転中心として蓋体5を180度回転させた状態である。長穴2hは、端部2h1以外の部分は、軸5jが通過するのに所定の抵抗力を要するように形成されている。従って、利用者が蓋体5を開放させるために軸5j周りに回転させているときに軸5jが長穴2hの内部で長手方向にずれて保管時の位置に戻ってしまうことがない。これによって、蓋体5の開放動作を安定させることができる。
【0033】
上述のように、本実施形態によれば、容器本体2の連結部2bの左右側面に長穴2hを設けると共に、蓋体5側に蓋体開閉時の回転中心となる軸5jを固定して長穴2hに挿入されるように構成した。また、容器本体2と蓋体5にフック部2p、5pを設けて軸5jが長穴2hの一方の端部2h1にあるとき(保管時)にフック部2p、5p同士が係合して蓋体5の閉塞状態を維持し、軸5jが長穴2hの他方の端部2h1にあるとき(蓋体スライド時)にフック部2p、5p同士の係合が外れて蓋体5が開放可能となるように構成した。これによって、蓋体5を前方にスライドさせなければ開かないため、利用者が意図しない蓋体5の開放を防止することができる。
【0034】
また、本実施形態によれば、長穴2hは端部2h1が拡径され、長穴2hのうち端部2h1以外の部分は、軸5jが通過するのに所定の抵抗力を要するように構成した。これによって、利用者が意図しない蓋体5のスライドを防止することができる他、利用者が蓋体5のスライドが行われたか否かを正確に認識することができる。
【0035】
また、本実施形態によれば、容器本体2側及び蓋体5側に磁石2m、5mを配置し、保管時には両磁石2m、5mが引き合い、蓋体スライド時には両磁石が反発するように構成した。これによって、保管時には磁石2m、5mの吸引力によって蓋体5の閉塞状態を維持することができる一方、蓋体スライド時には、磁石2m、5mの反発力によって蓋体5の前端を浮かせることができる。従って、利用者は容易に蓋体5を持ち上げて開放することができる。
【0036】
次に、本発明の第2実施形態である蓋体付き容器1'を詳細に説明する。
【0037】
なお、本実施形態に係る蓋体付き容器1'は、アーム部5b'の背面に設けたR面の形状、及び容器本体2'に新たにゴムパッド2rを設けた他は、第1実施形態に係る蓋体付き容器1と異なる部分が無い。従って、ここでは第1実施形態との相違点に絞って説明する。
【0038】
第1実施形態の図5(a)、(b)及び図6では、蓋体5が容器本体2に対して180度開いた状態を示したが、鏡5aを使用するために蓋体5を任意の角度で保持したい場合がある。本実施形態に係る蓋体付き容器1'は、任意の開放位置で蓋体を制止させるためのフリーストップ機構を設けた一例である。図7には、本実施形態に係る蓋体付き容器1'の蓋体スライド時における、軸5j、長穴2h部分の拡大図を示す。本実施形態では、蓋体スライド時においては、蓋体5'の前方への移動によって軸5jの一部分が、容器本体2の上面に設けられたゴムパッド2rの上に位置決めされる。
【0039】
図8(a)は、図7のE−E断面による拡大断面図である。蓋体5'のアーム部5b'の背面には、軸5jを中心とするR面が設けられており、当該R面の内、蓋体をスライドさせた直後の蓋体5'閉塞時において容器本体2に対向する部分の軸5jの中心からの距離RCよりも、蓋体開放時(図8(b)参照)において容器本体2に対向する部分の軸5jの中心からの距離ROの方が大きくなるように構成されている。なお、距離ROは、例えば蓋体5'の回動角度を任意に設定した値(例えば90度)を超える位置で定めることができる。このような構成によって、図8(a)に示す蓋体をスライドさせた直後の蓋体5閉塞時において容器本体2に対向するR面とゴムパッド2rとがちょうど接するような場合には、図8(b)に示す蓋体開放時においてR面はゴムパッド2rを押圧するため、R面とゴムパッド2rとの間に摩擦力が生じる。従って、利用者は、蓋体5を当該摩擦力に抗して回転させることによって任意の角度で保持して蓋体5の裏面に設けた鏡5aを使用することが可能になる。
【0040】
なお、本実施形態では、長穴2hは、端部2h1以外の部分は、軸5jが通過するのに所定の抵抗力を要するように形成されている。従って、蓋体5の開放時に、軸5jが長穴2h内で容易に保管時の位置に戻ることがない。また、軸5jの中心位置と、ゴムパッド2rよりも後端側における容器本体2の上面との上下方向距離をRC以上RO未満とすることによって、蓋体5の開放時に軸5jが保管時の位置に戻らないようにすることができる。従って、保管時の軸5jの位置から誤って蓋体5を閉じてフック部2p、5pを破損することがない。
【0041】
上述のように、本実施形態によれば、蓋体5のアーム部5bの背面には、軸5jを中心とするR面が設けられており、R面のうち、蓋体5の閉塞時において容器本体2に対向する部分の軸5jの中心からの距離RCよりも、蓋体5の開放時において容器本体2に対向する部分の軸5jの中心からの距離ROの方が大きくなるように構成した。これによって、利用者は、蓋体5を任意の角度で保持することができるため、鏡5aの使い勝手が向上する。
【0042】
なお、上述したところは、本発明の実施形態を示したにすぎず、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。そして、そのような構成は本発明の範囲内であると理解すべきである。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、化粧用コンパクト容器に限定されることなく、さまざまな蓋付き容器に採用することができる。また、本発明の蓋体の構成は、容器に限定されることなく、折り畳み式の(電子)機器等、蓋体と本体部とを有する様々な製品に採用することができる。
【符号の説明】
【0044】
1,1' 蓋体付き容器
2,2' 容器本体
2a 凹部
2b 連結部
2f 指掛け
2h 長穴
2h1 端部
2r ゴムパッド
2m マグネット(容器側閉塞手段)
2p フック部(容器側閉塞手段)
5,5' 蓋体
5a 鏡
5b,5b' アーム部
5h 軸穴
5j 軸
5m マグネット(蓋体側閉塞手段)
5p フック部(蓋体側閉塞手段)
C 距離
O 距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8