(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フィルタ設定部が、前記電極検知部により前記電極の取外しが検知されたことを受けて、前記1種類以上のフィルタの設定状態を前記電極の装着前の設定状態に戻すことを特徴とする請求項1に記載の心電計。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態としての可搬型の小型の心電計を示した図である。
【0021】
この心電計10にはバッテリが内蔵されていて、この心電計10は、その内蔵バッテリの電力で動作する。この
図1には、内蔵バッテリを充電するための充電スタンド20に装着されている状態の心電計10が示されている。心電計10を、この充電スタンド20に
図1に示すように装着すると、心電計10と充電スタンド20の接点どうしが接続されて、心電計10の内蔵バッテリが充電される。なお、ここでは充電スタンド20が備えている電源ケーブルや電源プラグなどは、図示が省略されている。
【0022】
この心電計10には不図示の電極が接続され、この心電計10では、検査時に、心電波形やその他の生体情報の収集が行われる。
【0023】
この心電計10は、その前面に表示画面11や各種の操作ボタン12が配置されている。この心電計10には、操作ボタン12の操作により、各種のデータや指示が入力される。また、この心電計10の状態や測定された心電波形等の生体情報は、表示画面11上に表示される。
【0024】
図2は、
図1に外観を示した心電計の内部構成図である。
この心電計10は、制御部100を備えている。この制御部100は、プログラムを実行する演算機能を有し、各種のプログラムを実行することで、この心電計10の全体の制御を担っている。
【0025】
また、この心電計10は、操作/表示部110を備えている。この操作/表示部110は、
図1に示した表示画面11および操作ボタン12を含み、操作ボタン12の操作を制御部100に伝え、また、制御部100の指示に応じて、表示画面11上に画像を表示する役割を担っている。この操作/表示部110からは、後述する検査モードの切替えやフィルタの設定の指示も入力される。さらに、この操作/表示部110からは、心電波形等の検査を受ける被検者のID番号や氏名等からなる被検者情報も入力される。
【0026】
また、この心電計10は、電極装着部120、フィルタリング部130、生体情報取得部140、内蔵メモリ150、および無線LAN送信部160を備えている。
【0027】
電極装着部120は、この心電計10への電極の装着を担う部分である。この電極装着部120には、通常の電極のほか、リズム計測検査用の三角電極を装着することも可能である。制御部100には、三角電極検知部101が備えられていて、この三角電極検知部101では電極装着部120への三角電極の着脱が検知される。
【0028】
また、フィルタリング部130は、電極装着部120に装着された電極でピックアップされた信号をフィルタリングしてその信号に混入しているノイズを抑える機能を有する。本実施形態では、このフィルタリング部130で作用させるフィルタとして、ドリフトフィルタ、ACフィルタ、および筋電フィルタが用意されている。ドリフトフィルタは、電極装着部120を経由してきた信号のドリフトを抑えるフィルタである。また、ACフィルタは、AC電源に起因するハムノイズを抑えるフィルタである。前述の通り、この心電計は内蔵バッテリで動作する構成となっているが、電極の近くにAC電源やそのAC電源で動作する機器が存在すると、ハムノイズが混入するおそれがある。また、筋電フィルタは、被検者の筋肉の動きに起因して生じるノイズを抑えるフィルタである。本実施形態の心電計10には、これら3種類のフィルタであって、かつ、それぞれについて「強」と「弱」のフィルタが用意されている。「強」と「弱」のフィルタを用意しているのは、フィルタを作用させるとそのフィルタに応じたノイズが抑えられるが、それと同時に、信号自体も減衰する。このため、小さい信号しか得られない場面にまで強いフィルタを作用させると信号が小さくなり過ぎるおそれがあるからである。
【0029】
制御部100には、フィルタ設定部102が用意されていて、このフィルタ設定部102では、操作/表示部110でのユーザ操作に応じて、3種類のフィルタのそれぞれを、かつ「強」と「弱」のいずれかを、電極装着部120で作用させるべく設定され、あるいは、そのフィルタの作用を停止させるべく設定される。また、このフィルタ設定部102では、三角電極検知部101により、電極装着部120への三角電極の装着や取外しが検知されると、その検知に応じても、フィルタリング部130へのフィルタの設定を切り替える。詳細は後述する。
【0030】
また、生体情報取得部140は、フィルタリング部130を通過してきた信号を基にしての、心電波形等の生体情報の取得を担っている。
【0031】
本実施形態の心電計10には、標準の心電図検査(12誘導検査)を行なう標準検査モードと、不整脈検査を行なう不整脈検査モードと、リズム計測検査を行なうリズム計測検査モードとが用意されている。
【0032】
制御部100には、それらの検査モードを切り替える検査モード切替部103が設けられている。この検査モード切替部103は、操作/表示部110におけるユーザ操作に応じて、生体情報取得部140での生体情報取得の処理のモードを、上記の3つの検査モードのうちのいずれかの検査モードに設定する。生体情報取得部140では、設定された検査モードに応じた検査アルゴリズムによる、検査モードに応じた生体情報の取得が行われる。また、この検査モード切替部103は、三角電極検知部101による、電極装着部120への三角電極の装着や取外しが検知されると、その検知に応じても、生体情報取得部140への検査モードの設定を切り替える。詳細は後述する。
【0033】
また、内蔵メモリ150は、生体情報取得部140で取得した生体情報を一時的に蓄積しておくメモリである。生体情報取得部140で取得した生体情報は、操作/表示部110から入力したID番号や氏名等と対応付けられて内蔵メモリ150に格納される。
【0034】
さらに、無線LAN送信部160は、制御部100の指示に応じて、内蔵メモリ150に蓄積されている生体情報を、無線LAN用の内臓アンテナ161を使って、無線で、生体情報を蓄積しておくデータサーバに向けて送信する。本実施形態では、ユーザ操作に応じて送信を行なうほか、この心電計10が充電スタンド20(
図1参照)に装着されたタイミングでも行われる。
【0035】
図3は、心電計の電源をオンにしたときの動作フローを示した図である。
【0036】
心電計10のの電源スイッチ(不図示)をオンに操作すると、心電計10の内蔵バッテリから心電計10内の各部に電力が供給され、
図3に示す初期設定処理が実行される。
【0037】
ここでは標準の心電図検査(12誘導検査)を行なう標準検査モードに設定され(ステップS301)、3種類用意されているフィルタは全てオフに設定される(ステップS302)。ここで、フィルタをオフに設定するとは、フィルタリング部130(
図2参照)においてそのフィルタが作用しないように設定することをいう。
【0038】
ただし、この
図3に示す動作フローは、電源をオンにしたときの初期設定であり、ユーザ操作により検査モードの変更やフィルタのオン、オフの変更が可能である。
【0039】
ここではさらに、三角電極検知部101(
図2参照)での検知結果に基づいて、三角電極が装着済みか否かが判定される(ステップS303)。電極を装着してから電源をオンにする場面もあり得るからである。そして、三角電極が既に装着されていたときは、三角電極装着時のルーチン(
図7参照)が起動される(ステップS304)。三角電極装着時のルーチン(
図7)については、後述する。
【0040】
図4は、ユーザ操作による検査モード設定処理を示した図である。
【0041】
ユーザは、操作/表示部110(
図1に示す操作ボタン12)を操作して、3種類用意されている検査モード(標準検査モード、不整脈検査モード、およびリズム計測検査モード)の中の任意の検査モードを設定することができる(ステップS401)。
【0042】
図5はユーザ操作によるフィルタ設定処理を示した図である。
【0043】
ユーザは、操作/表示部110(
図1に示す操作ボタン12)を操作して、3種類用意されているフィルタ(ドリフトフィルタ、ACフィルタ、および筋電フィルタ)のそれぞれについて、オン、オフを設定することができる(ステップS501)。3種類のフィルタのそれぞれには、「強」と「弱」とがあり、「強」、「弱」についてもユーザが任意に設定することができる。ここで、フィルタをオンに設定するとは、フィルタリング部130(
図2参照)において、入力されてきた信号にそのフィルタが作用するように設定することをいう。
【0044】
図6は、ユーザ操作による演算時間設定処理を示した図である。
【0045】
三角電極装着時のルーチン(
図7)内のステップS707では、後述する演算が行われるが、ここでは、その演算時間が設定される。この演算時間は、初期状態では最短の15秒間に設定されているが、ユーザ操作により、その演算時間を、20秒間など、さらに長い時間に設定することができる。長い時間に設定すると、その演算結果の信頼性が向上する。ここで設定された演算時間は、電源がオフされても保存されていて、ユーザ操作により演算時間が次に変更されるまで有効である。
【0046】
図7は、三角電極装着時の処理フローを示した図である。
【0047】
図2に示す電極装着部120に三角電極が装着されると、三角電極が装着されたことが三角電極検知部101で検知され、この
図7に示す処理フローが実行される。
【0048】
ここでは先ず、現在の検査モードが3種類の検査モードのうちのどの検査モードであるか、という情報が保存される(ステップS701)。ここでいう「現在の検査モード」は、電源をオンにした後、検査モード変更の操作(
図4参照)をしていなければ、電源オン時に初期設定された標準検査モードであり(
図3参照)、電源オンの後で検査モードが変更されていたときは、その変更後の検査モードである。
【0049】
さらに、この検査モードの保存と同様に、現在のフィルタの設定状態、すなわち、3種類のフィルタのオン、オフおよび「強」、「弱」の設定状態が保存される(ステップS702)。電源オン時の初期設定では、3種類のフィルタのいずれもがオフに設定される(
図3参照)。したがって、電源をオンにした後、フィルタ設定の操作(
図5参照)がなされていないときは、このステップS702では、ドリフトフィルタ、ACフィルタ、および筋電フィルタの全てがオフであるという情報が保存される。電源オンの後でフィルタの設定操作(
図5参照)がなされていたときは、このステップS702では、その設定操作後のフィルタの状態が保存される。
【0050】
次に、検査モードがリズム計測検査モードに設定される(ステップS703)。また、本実施形態では、「強」のドリフトフィルタがオンに設定される(ステップS704)。リズム計測検査では、ほとんどの場合、信号波形のドリフトを強く抑えるのが有効だからである。
【0051】
このステップS704ではドリフトフィルタのみが対象であって、ACフィルタと筋電フィルタは対象外である。すなわち、ACフィルタと筋電フィルタについては、三角電極装着前の状態がそのまま維持される。換言すると、電源をオンにした後、フィルタ設定の操作(
図5参照)がなされていないときは、ドリフトフィルタ、ACフィルタ、および筋電フィルタの全てがオフであるため、このステップS704ではACフィルタと筋電フィルタについてはオフのまま、「強」のドリフトフィルタがオンに設定される。電源をオンにした後、フィルタ設定の操作(
図5参照)がなされたときは、ACフィルタと筋電フィルタについてはその設定操作後の状態のままとなる。ドリフトフィルタについては、オフのままであっても、「弱」のドリフトフィルタが設定されていたときであっても、ステップS704では、「強」のドリフトフィルタがオンに設定される。
【0052】
ここで、検査モードやフィルタのユーザ操作による設定(
図4,
図5参照)は、三角電極装着後であっても可能である。ユーザの操作を優先するためである。ただし、ここでは、三角電極装着後のユーザ操作による検査モードやフィルタ設定変更は行われないものとして説明を続ける。
【0053】
次には、被検者情報が入力される(ステップS705)。ここでは、
図1に示す操作ボタン12の操作により、被検者情報、すなわち、被検者のID番号、性別、年齢、氏名、身長、体重などが入力される。
【0054】
次いで、リズム計測検査が行われる(ステップS706)。
【0055】
ここでは、順次隣接するR波どうしの時間間隔(R−R間隔)の測定が行われてR−R間隔を表わす多数のデータ(RRデータ)が収集される。
【0056】
さらに、本実施形態では、隣接するR波どうしの時間間隔(R−R間隔)のばらつきを表わす指標値が算出される(ステップS707)。その指標値として、本実施形態では、以下の式に示すRRV値が採用されている。
【0057】
【数1】
このRRV値の算出にあたっては、複数のRRデータの取得が必要であり、データ収集にある程度の時間を要する。ここではその時間は、初期値としては15秒間、その時間をユーザが変更していたときは(
図6参照)、その変更後の時間である。なお、このRRV値算出の演算は、最初の1回のみ行ってもよく、リズム計測検査を行っている間、繰り返し行ってもよい。
ここで、本実施形態では、R−R間隔の測定は生体情報取得部140で行われ、その測定で得られたR―R間隔を表わすデータ(RRデータ)が制御部100に渡される。制御部では、その受け取ったRRデータを基にRRV値を算出する。したがって、生体情報取得部140は測定部の一例であり、制御部100は、算出部の一例である。
また、RRV値が算出されると、制御部100において、その算出されたRRV値が、予め定められている閾値と比較され、RRV値が閾値を超えているか否かが判定される(ステップS708)。RRV値は、R−R間隔のばらつきを表わしており、このRRV値が閾値を超えるということは、不整脈の懸念があることを意味している。
【0058】
そこで、RRV値が閾値を超えると、制御部100は、操作/表示部110の表示画面11(
図1参照)上にその旨を表示させる(ステップS709)。
【0059】
図8は、RRV値が閾値を超えたときの表示画面を表わした図である。
【0060】
画面中央にはリズム計測波形が表示されていて、RRV値が閾値を超えると、その画面の左下に、「RRが不整です」の文字が表示される。この表示とともにブザー音等で通知してもよい。また、RRV値が閾値以下のときも、RRは正常です、などの表示を行ってもよい。また、RRV値算出の演算を繰り返し行った場合、1回のRRV値算出のたびに表示を更新してもよく、あるいは、RRV値が1度でも閾値を超えた場合に「RRが不整です」の文字を表示し続けてもよい。
【0061】
また、この
図8に示す画面の右上には、「DF」の文字が表示されている。これは、ドリフトフィルタがオンになっていることを意味している。
【0063】
ユーザ操作により検査終了が指示されると(ステップS710)、今回の検査で得られた一連のR−R間隔を表わすデータ(RRデータ)が、ステップS705で入力された被検者情報や検査日時の情報、さらには、ステップS707で算出されたRRV値やステップS708での判定結果などからなる付属情報と対応付けられて、内蔵メモリ150(
図2参照)に保存される(ステップS711)。
【0064】
被検者情報の入力(ステップS705)から内蔵メモリ150への保存(ステップS711)までの処理は、検査人数分だけ繰り返される(ステップS712)。
【0065】
内蔵メモリ150に保存されたデータは、前述の通り、ユーザ操作により、あるいは充電スタンド20(
図1参照)への心電計10の装着により、データサーバ(不図示)に向けて送信される。
【0066】
図9は、三角電極取外し時の処理フローを示した図である。
電極装着部120(
図2参照)に装着されていた三角電極が取り外されると、三角電極が取り外されたことが三角電極検知部101で検知され、この
図9に示す処理フローが実行される。
【0067】
ここでは先ず、三角電極装着時に
図7のステップS701において保存しておいた検査モード情報に基づいて、三角電極装着前の検査モードが復元される(ステップS901)。また、これと同様にして、三角電極装着時に
図7のステップS702において保存しておいたフィルタ設定情報に基づいて、三角電極装着前のフィルタ設定状態が復元される(ステップS902)。
【0068】
その後は、その復元された検査モードによる検査が行われ、あるいは、電源オフにより、この心電計10による今回の検査が終了する。
【0069】
標準検査モードによる検査および不整脈検査モードによる検査は、従来から広く知られた検査であり、また、本実施形態における特有の点もないので、ここでの説明は省略する。
【0070】
なお、上記の実施形態では、三角電極の装着により、リズム計測検査モードに切り替えるとともに、ドリフトフィルタ(強)をオンにしているが、フィルタについてはユーザ操作による設定に委ねてもよい。
【0071】
また、上記の実施形態では、上述のRRV値を算出しているが、RRV値には限られず、R−R間隔のばらつきを表わす他の指標値を採用してもよい。
【0072】
さらに、上記の実施形態では、RRV値の算出に当たり、リズム計測検査の終了を待つことなく、例えば15秒間等の予め定められた時間を経過した時点で演算を終了しているが、リズム計測検査の終了を待って、その検査の間の全部のRRデータを使ってRRV値を算出してもよい。あるいは、
図6を参照して説明した演算時間が、RRV値算出の演算時間であるとともにリズム計測検査終了の時間でもあり、RRV値算出とともにリズム計測検査を自動的に終了させてもよい。