特許第6823936号(P6823936)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6823936
(24)【登録日】2021年1月14日
(45)【発行日】2021年2月3日
(54)【発明の名称】金属酵素阻害剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/555 20060101AFI20210121BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20210121BHJP
   A61P 17/18 20060101ALI20210121BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20210121BHJP
   C12N 9/64 20060101ALI20210121BHJP
   C12N 9/99 20060101ALI20210121BHJP
【FI】
   A61K31/555
   A61P9/12
   A61P17/18
   A61P43/00 111
   C12N9/64
   C12N9/99
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-60881(P2016-60881)
(22)【出願日】2016年3月24日
(65)【公開番号】特開2017-171622(P2017-171622A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2019年3月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】502306235
【氏名又は名称】新洋水産有限会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】世古 卓也
(72)【発明者】
【氏名】山下 倫明
(72)【発明者】
【氏名】山下 由美子
(72)【発明者】
【氏名】石原 賢司
(72)【発明者】
【氏名】今村 伸太郎
(72)【発明者】
【氏名】山内 健
(72)【発明者】
【氏名】横澤 美紀
(72)【発明者】
【氏名】高柳 周
【審査官】 大島 彰公
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5669056(JP,B2)
【文献】 Bayse et al.,Biochalcogen Chemistry: The Biological Chemistry of Sulfer, Selenium, and Tellurium,ACS SYMPOSIUM SERIES,2013年,vol.1152,33-70
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/555
A61P 9/12
A61P 17/18
A61P 43/00
C12N 9/64
C12N 9/99
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】
[式中、
Rは、水素、エルゴチオニル基、グルタチオニル基、又はシステイニル基である]
で表されるセレン含有化合物を有効成分として含有する金属酵素阻害剤。
【請求項2】
チロシナーゼを阻害することを特徴とする、請求項1に記載の金属酵素阻害剤。
【請求項3】
メラニン合成阻害を特徴とする、請求項1又は2に記載の金属酵素阻害剤。
【請求項4】
アンジオテンシン変換酵素を阻害することを特徴とする、請求項1に記載の金属酵素阻害剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の金属酵素阻害剤を含有する血圧降下用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セレン含有化合物を有効成分とする金属酵素阻害剤、該金属酵素阻害剤を含有する血圧降下用組成物、並びに美白用および美肌用化粧品および食品に関する。
【背景技術】
【0002】
セレン含有化合物であるセレノネインは、強い抗酸化能(ラジカル消去活性)を有し、ヒト細胞に対して生体抗酸化作用を示すことが見出されている(特許文献1)。抗酸化作用を有する物質は、生体内の活性酸素種を除去し、様々な生理活性を示す。そのため、セレノネインの機能性食品、化粧品、飼料、試薬等への応用が期待されている。
【0003】
魚食には、がんや糖尿病などの生活習慣病に対する予防効果やアンチエイジングの効果が知られていることから、セレノネインがこのような生活習慣病予防やアンチエイジングに対して寄与することが考えられるが、セレノネインによる生活習慣病予防効果やその分子機序、セレノネインと他の生体分子との相互作用については検証されていなかった。とくに、人体や動物細胞に対するセレノネインの健康機能性については、ラジカル消去活性など抗酸化能以外の生理活性は、これまで調べられていない。そのため、生体分子や、モデル細胞に対するセレノネインの生理活性を検証し、セレノネインの新たな用途の開発が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5669056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、本発明者らによって開発されたセレノネインの生理活性を検証し、その新たな用途を見出すことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、セレノネインの健康機能性を生化学的に解析したところ、血圧上昇を促す亜鉛酵素であるアンジオテンシン変換酵素(ACE)やメラニン合成を促進する銅酵素であるチロシナーゼなど、亜鉛や銅などの金属イオンを活性中心にもつ金属酵素群に対する阻害活性をセレノネインが示すことが新たに見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は、セレノネインを含有する金属酵素阻害剤、その組成物および血圧降下作用や美白効果、美肌効果などの新規機能性を有する食品または化粧品を提供する。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の通りである。
[1]式I:
【0008】
【化1】
【0009】
[式中、
Rは、水素、エルゴチオニル基、グルタチオニル基、又はシステイニル基である]
で表されるセレン含有化合物を有効成分として含有する金属酵素阻害剤。
[2]チロシナーゼを阻害することを特徴とする、上記[1]に記載の金属酵素阻害剤。
[3]メラニン合成阻害を特徴とする、上記[1]又は[2]に記載の金属酵素阻害剤。
[4]アンジオテンシン変換酵素を阻害することを特徴とする、上記[1]に記載の金属酵素阻害剤。
[5]上記[1]〜[4]のいずれかに記載の金属酵素阻害剤を含有する血圧降下用組成物。
[6]上記[1]〜[3]のいずれかに記載の金属酵素阻害剤を含有する美白用又は美肌用化粧品。
[7]上記[1]〜[4]のいずれかに記載の金属酵素阻害剤を含有する美白用又は美肌用食品。
【発明の効果】
【0010】
本発明の金属酵素阻害剤は、従来知られていたセレノネインのラジカル消去活性に基づく抗酸化剤としての効果に加えて、金属酵素阻害剤としての新規用途が見出され、新規の血圧降下剤や美白剤として、食品および化粧品の原料として利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、セレン含有化合物を有効成分とする金属酵素阻害剤、該金属酵素阻害剤を含有する血圧降下用組成物、並びに美白用および美肌用化粧品および食品に関する。
【0012】
(1)セレン含有化合物
本発明の金属酵素阻害剤の有効成分となるセレン含有化合物は、特許第5669056号公報に記載の方法に従って得ることができる。本明細書において別段の指示がない限り、「セレン含有化合物」には、「セレン含有組成物」および「セレノネイン」(後述)を含むことが意図される。ここで、セレン含有化合物は、魚類等の生物由来の試料を有機溶媒で抽出することによりセレン濃縮物を得た後、クロマトグラフィーによって分離・精製することによって得ることができる。ここで、「セレン濃縮物」とは、本発明の化学式1〜4に表されるセレン含有化合物(後述)を含むセレン濃縮物を指し、試料を有機溶媒または水で抽出した後、ロータリーエバポレーター等で濃縮して得られるもの等が挙げられる。セレン濃縮物は、溶液状である場合には、本発明のセレン含有化合物を5μg/mL以上を含有しているものであることが好ましい。
【0013】
本発明のセレン含有化合物は、限定されないが、一般的には、式I:
【0014】
【化2】
【0015】
で表される化合物であり、置換基Rが、エルゴチオネイン、グルタチオン、システイン、アセチルシステイン、ホモシステイン、メチル水銀、生体内で生成されると推定されるチオール化合物と結合した「セレン含有化合物」であり、また、「セレン含有化合物」がセレノール基を介して結合した金属や高分子材料も含まれる。
【0016】
一実施形態において、本発明のセレン含有化合物には、式II:
【0017】
【化3】
【0018】
で表される3−(2−ヒドロセレノ−1H−イミダゾール−5−イル)−2−(トリメチルアンモニオ)プロパノエート、および
【0019】
【化4】
【0020】
で表される3−(2−セレノキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イミダゾール−4−イル)−2−(トリメチルアンモニオ)プロパノエートが挙げられる。上記の通り、式IIおよび式IIIで表されるセレン含有化合物はいずれもセレン含有化合物の単量体である。式IIのセレン含有化合物は、イミダゾール環の2位の炭素原子にセレノール基が結合した分子構造を有しており、セレノール基はセレノケトン基との平衡状態にある互変異性体を形成することから、溶液状態では溶媒の条件によって、セレノ−ル型(式II)とセレノケトン型(式III)の2つの化学形態を有している。セレノール型異性体に平衡が傾く非極性溶媒存在下では,容易に酸化型二量体が形成される一方、極性溶媒中ではセレノケトン型異性体に化学平衡が片寄り,主に単量体として存在する性質がある。
【0021】
さらに、本発明のセレン含有化合物には、式IV:
【0022】
【化5】
【0023】
で表される酸化型二量体(3,3'−(2,2’−ジセランジイルビス(1H−イミダゾール−5,2−ジイル))ビス(2−(トリメチルアンモニオ)プロパノエート))のイミダゾール環にセレノール基とトリメチルアンモニウム基が結合した分子構造を持つ化合物を基本単位として、この化合物がセレノール基を介してジセレニドを形成した二量体も含まれる。
【0024】
別の実施形態において、本発明のセレン含有化合物は、例えば、式IIで表される化合物(「セレノネイン」)を含有する組成物の形態で提供されてもよい。本発明のセレノネインを含有する組成物は、限定されないが、セレノネイン濃縮物、その乾固物またはセレノネイン精製品をセレンとして1〜100μgを含有する錠剤、ペーストまたは飲料の形状であってもよい。サプリメント剤や飲料など食品として利用する場合は、1日あたりのセレンの必要量を服用するのに適した形状に成形するのが望ましい。他の食品素材や甘味料、香料、賦形剤、増粘剤、保存料など食品添加物を含んでいてもよい。皮膚に塗布する化粧品として利用する場合は、尿素、ワセリン、グリセリン、ヒアルロン酸、コラーゲン、セラミド、スクワレンなど他の化粧品素材に対してセレノネイン濃縮物を混合して用いてもよい。
【0025】
本発明のセレン含有化合物の典型例としてのセレノネインの由来原料としては、例えば、マグロ類(クロマグロ、ミナミマグロ、キハダ、メバチ、ビンナガ)、カジキ類(メカジキ、マカジキ、バショウカジキ、クロカジキ)、カツオ類(カツオ、マルソウダガツオ、ヒラソウダガツオ、ハガツオ、スマ)、サバ類(マサバ、ゴマサバ、ノルウェーサバ、ニジョウサバ、グルクマ)、ブリ類、アジ類(マアジ)、イワシ類(マイワシ、カタクチイワシ)、タイ類(マダイ)を含む魚類、イルカ類、ハクジラ類を含む海洋性哺乳類、酵母(Schizosaccharomyces pombe)等の微生物が挙げられる(「水産物のメチル水銀とセレン」化学と生物 50(11), 807-817, 2012-11-01;Genetic and Metabolomic Dissection of the Ergothioneine and Selenoneine Biosynthetic Pathway in the Fission Yeast, S. pombe, and Construction of an Overproduction System, PLoS One. 2014 July 31; 9(7): e105177参照)。
【0026】
セレノネインを含有する製品もまた知られ、セレノネインは、例えば、サバ、カジキ、カツオ、メバチ、ビンナガ、マグロ、アジ、タイを原料とする食品中に含有されると考えられている。具体的には、上記魚類の刺身及び煮付け及び焼き物及び蒸し物及び揚げ物、上記魚類の加工品としては水煮缶詰、油漬缶詰、味付缶詰、マグロ・カツオ角煮、魚肉ソーセージ、カマボコ、さつま揚げ等の練り物、スープ、煮汁濃縮物、液体出汁、顆粒出汁、かつお煎じ、干物、みりん干し、味噌漬け、塩麹漬け、燻製等がある。
【0027】
(2)金属酵素阻害剤
本発明は、上記のセレン含有化合物が、金属酵素、例えば、アンジオテンシン変換酵素(亜鉛酵素)やチロシナーゼ(銅酵素)に対する酵素活性阻害作用を有することを見出し、セレン含有化合物を有効成分として含有する金属酵素阻害剤を提供するものである。本発明の金属酵素阻害剤に含まれるセレン含有化合物の含有量は、金属酵素阻害剤の全重量に対して、1〜99重量%であってよく、当業者であれば、所望の効果を得るためにセレン含有化合物の含有量を適宜調整することができる。また、セレン含有組成物を有効成分とする場合は、上記の通り、セレンとして1〜100μgを含有する形態をとることができる。また、金属酵素阻害剤の原料については、セレノネインを含有するものであれば特に限定されず、例えば、上記魚類、海洋性哺乳類、酵母等の微生物の他、菌糸類、植物、海藻、藻類も原料となり得る。
【0028】
本明細書において、本発明の金属酵素阻害剤との関連で対象とされる「金属酵素」には、限定されないが、分子中に亜鉛、銅、鉄、マンガン、マグネシウム、ニッケル、またはモリブデンである金属原子を含む酵素が挙げられる。
【0029】
金属酵素としては、例えば、アンジオテンシン変換酵素、チロシナーゼのほか、チトクロームP450ファミリ、ホスホジエステラーゼ、アロマターゼ(CYP19)、シクロオキシゲナーゼ、ラノステロールデメチラーゼ(CYP51)、トロンボキサン合成酵素(CYP5a)、甲状腺ペルオキシダーゼ、17−αヒドロキシラーゼ/17,20−リアーゼ(CYP17)、アルドステロン合成酵素(CYP11B2)、チトクロームP450 2A6、ヘムオキシゲナーゼ、インドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼ、レチノイン酸ヒドロキシラーゼ(CYP26)、ビタミンDヒドロキシラーゼ(CYP24)、4−ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼ、5−リポキシゲナーゼ、アデノシンデアミナーゼ、アルコール脱水素酵素、アミノペプチダーゼN、カルシニューリン、カルバモイルリン酸合成酵素、炭酸脱水酵素ファミリ、カテコール−O−メチル転移酵素、シクロオキシゲナーゼファミリ、ジヒドロピリミジン脱水素酵素−1、DNAポリメラーゼ、ファルネシル二リン酸合成酵素、ファルネシル転移酵素、フマル酸還元酵素、GABAアミノ基転移酵素、HIF−プロリルヒドロキシラーゼ、ヒストン脱アセチル化酵素ファミリ、HIVインテグラーゼ、HIV−1逆転写酵素、イソロイシンtRNAリガーゼ、マトリックスメタロプロテアーゼファミリ、メチオニンアミノペプチダーゼ、中性エンドペプチダーゼ、一酸化窒素合成酵素ファミリ、ホスホジエステラーゼIII、ホスホジエステラーゼIV、ホスホジエステラーゼV、ピルビン酸フェレドキシン酸化還元酵素、腎臓ペプチダーゼ、リボヌクレオシド二リン酸還元酵素、ウレアーゼおよびキサンチン酸化酵素であるか、あるいは1−デオキシ−d−キシルロース−5−リン酸レダクトイソメラーゼ(DXR)、17−αヒドロキシラーゼ(CYP17)、アルドステロン合成酵素(CYP11B2)、アミノペプチダーゼP、炭疽菌致死因子、アルギナーゼ、β−ラクタマーゼ、チトクロームP450 2A6、D−Ala−D−Alaリガーゼ、ドーパミン−β−ヒドロキシラーゼ、エンドセリン変換酵素−1、グルタミン酸カルボキシペプチダーゼII、グルタミニルシクラーゼ、グリオキサラーゼ、ヘムオキシゲナーゼ、HPV/HSV E1ヘリカーゼ、インドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼ、ロイコトリエンA4加水分解酵素、メチオニンアミノペプチダーゼ2、ペプチド脱ホルミル酵素、ホスホジエステラーゼVII、レラキサーゼ、レチノイン酸ヒドロキシラーゼ(CYP26)、TNF−α変換酵素(TACE)、UDP−(3−O−(R−3−ヒドロキシミリストイル))−N−アセチルグルコサミン脱アセチル化酵素(LpxC)、血管接着タンパク質−1(VAP−1)またはビタミンDヒドロキシラーゼ(CYP24)などであってもよい。
【0030】
本発明の金属酵素阻害剤はまた、有効成分であるセレン含有化合物以外に、目的に応じて他の成分を含有してもよい。本発明の金属酵素阻害剤に含有され得る他の成分としては、限定されないが、水;アルコール;食肉加工品;米、小麦、トウモロコシ、ジャガイモ、スイートポテト、大豆、コンブ、ワカメ、テングサなどの一般食品材料およびそれらの粉末;デンプン、水飴、乳糖、グルコース、果糖、スクロース、マンニトールなどの糖類;香辛料、甘味料、食用油、ビタミン類などの一般的な食品添加物;界面活性剤;賦形剤;着色料;保存料;コーティング助剤;ラクトース;デキストリン;コーンスターチ;ソルビトール;結晶性セルロース;ポリビニルピロリドン;油分;保湿剤;増粘剤;防腐剤;香料;ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。本発明の金属酵素阻害剤は、さらに、必要に応じて他の薬剤を含有してもよい。このような他の成分および/または他の薬剤の含有量は、特に限定されず、当業者によって適宜選択され得る。
【0031】
(3)金属酵素阻害剤の酵素活性
本発明の金属酵素阻害剤の酵素活性は、一般的に知られている方法に従って測定することができる。
a.アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害活性の測定
アンジオテンシン変換酵素(EC3.4.15.1)活性は、アンジオテンシンIのアナログであるN−ヒプリル−His−Leuを基質とし、その加水分解によって生成する馬尿酸量を測定することによって決定することができる(食品機能研究法(光琳),109−112,2000)。本発明の金属酵素阻害剤によるACE阻害活性の測定は、本発明の金属酵素阻害剤に有効成分として含有されるセレン含有組成物、例えば、セレノネインを含有する濃縮物や精製品をホウ酸緩衝液中に溶解し、阻害活性測定用の希釈液を調製して、ACE活性測定用反応液に添加することにより、基質の分解によって生じる馬尿酸量の低下を測定することによって行うことができる。
【0032】
この方法において、例えば、セレノネインと、ACE阻害活性を有し、血圧降下作用が報告されている食品由来のペプチドであるバリルチロシン(J.Biol.Chem.,255(2),401−407,1980)とを同濃度で阻害活性について比較すると、セレノネインは、バリルチロシンが阻害活性を示さない濃度でACEを阻害する(実施例1)。カプトプリルという血圧降下剤のセレンアナログ(SeCap)は、ACEの活性中心の亜鉛イオンに配位し、阻害作用を示すことが報告されている(Org.Biomol.Chem.,9,1356−1365,2011;FEBS Journal,278,3644−3650,2011)。そのため、セレノネインのACE阻害作用も、Seの亜鉛イオンへの配位によるものと予想される。これらのことから、セレノネインは、従来のACE阻害ペプチドよりも強い阻害能を有する。また、サケ卵やホタテ外套膜、オキアミ、サバ(特開2005−145827号;特開2008−37766号;特開2010−24165号;特開2013−43839号)、マグロ、イワシ、ワカメ(Biochem.Biophys.Res.Commun.,151,332−337,1988;栄食誌,52,271−277,1999;Journal of National Fisheries University,50,61−66,2002)といった水産物由来のペプチドの他、乳タンパク質、酒粕由来のペプチド(特開2008−308445号;特表2011−526600号)といったACE阻害ペプチドのように、基質と競合するのではなく、酵素に直接作用して阻害する天然成分として、食品原料などに利用可能である。
【0033】
b.セレン含有組成物によるチロシナーゼ阻害活性の測定
希釈したセレン含有組成物(例えば、セレノネイン)溶液をリン酸緩衝液中でチロシナーゼ(EC1.14.18.1)と混合し、チロシナーゼの基質であるL−DOPAを加えると、L−DOPAの酸化による溶液の褐色変化が抑制される。チロシナーゼは、チロシンとL−DOPAを基質として、それらを酸化し、褐色のDOPAキノンを生成する。チロシナーゼは、ポリフェノールオキシダーゼ(PPO)の一種であり、活性中心に銅イオンを有する金属酵素である。チロシナーゼの構造的特徴から、セレノネインは、活性中心の銅イオンに配位し、チロシナーゼを阻害すると予想される。チロシナーゼ精製品に対するセレノネインの阻害活性測定によって、セレノネインのチロシナーゼ阻害能は、チロシナーゼ阻害剤として知られているビタミンC(Biochem.J.(1993)295,309−312)よりも強いことを確認することができる。
【0034】
インビトロにおけるメラニン合成試験は、メラニン細胞であるB16メラノーマ4A5細胞を用いることによって測定することができる。メラニン細胞の培地に対して、メラニン細胞刺激ホルモン(α−MSH)の添加によって細胞内のメラニン量が増加するが(Biosci.Biotechnol.Biochem.,74(7),1504−1506,2010)、セレン含有組成物(例えば、セレノネイン)の培地への添加によって、メラニン合成能は、抑制される。セレノネインのメラニン合成抑制作用は、皮膚の色素沈着の予防剤として利用されているアルブチン(特開平5―085926号)よりも強い。
【0035】
これらの結果から、セレノネインは、金属酵素であるチロシナーゼを阻害し、生体でのメラニン合成を抑制する。そのため、セレノネインをポリフェノールオキシダーゼ阻害剤として、酸化的褐色変化と、酵素的褐色変化防止剤として利用することができる。さらに、メラニン合成を抑制する点から、シミ予防剤、美白剤としても利用できる。
【0036】
(4)用途
本発明のセレン含有組成物を有効成分とする金属酵素阻害剤は、上記の通り、血圧調節に関わるアンジオテンシン変換酵素(ACE)や、シミ形成の原因物質であるメラニンの合成に関与するチロシナーゼを有効に阻害することができるため、本発明の金属酵素阻害剤は、血圧降下作用、ならびに美白および美肌効果が期待される。ここで、本明細書で使用するとき、「血圧降下作用」とは、高血圧症の発症者およびその予備軍(健常者に対して軽度に高血圧の者)に対する血圧降下作用を意味する。すなわち、高血圧症の発症者およびその予備軍に対しては、血圧降下作用により正常に近い血圧に戻す作用である。そのため、本発明の金属酵素阻害剤は、高血圧症の予防、改善および治療のための、例えば、血圧降下剤、血圧降下用組成物、および血圧降下用医薬組成物として提供される。また、本発明の金属酵素阻害剤は、メラニン合成に関与するチロシナーゼ活性を阻害できることから、シミの予防および除去、美白効果が期待される。また、本発明の金属酵素阻害剤は、上述のさまざまな金属酵素類に対する阻害作用によって、これらの金属酵素が関与する代謝の抑制または向上、体質の改善などの生理・生化学的効果が期待される。
【0037】
a.血圧降下作用
本発明の金属酵素阻害剤は、血圧降下作用を有する組成物(食品、医薬組成物を含む)として提供され得る。より具体的には、本発明のセレン含有化合物を含む金属酵素阻害剤は、高血圧を予防および/または改善するための健康食品、機能性食品、特定保健用食品、栄養機能食品、栄養補助食品、機能性表示食品の形態であってもよい。別の態様では、本発明の金属酵素阻害剤は、高血圧症を予防、改善および/または治療するための医薬組成物の形態であってもよい。
【0038】
本発明によれば、セレン含有化合物による金属酵素阻害活性を損なわない限りにおいて、血圧降下作用組成物および医薬組成物(以下、単に「本発明の組成物等」という場合がある。)には、所望の製品形態に応じた食品または医薬として許容されうる担体や、他の添加剤を含んでもよい。このような担体および添加剤としては、例えば、賦形剤、結合剤、香料、緩衝剤、増粘剤、着色剤、安定剤、乳化剤、分散剤、懸濁化剤、崩壊剤、滑沢剤、防腐剤等が挙げられる。本発明の組成物等は、経口または非経口的に投与または摂取することができる。経口用の形態としては、例えば、食品、食品添加剤、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、徐放剤などの固形製剤、溶液、懸濁液、乳濁液などの液状製剤の形態が挙げられる。非経口用の形態としては、例えば、注射剤、点滴剤、外用剤や座剤の形態が挙げられる。これらは、当該技術分野で通常行われている手法により、必要に応じて担体や添加剤とともに、製剤化もしくは製品化することができる。
【0039】
本発明に係る金属酵素阻害剤において、所望のACE阻害効果を得るためには、上述した有効成分であるセレン含有化合物を成人一人の体重1kgあたり、1日に1ng〜60μg投与または摂取することが好ましく、より好ましくは5ng〜27.1μgであり、さらに好ましくは10ng〜14.5μgである。また、本発明においては、この量の有効成分を1日1〜数回に分けて、阻害剤そのままの形態で、または、食品、組成物、医薬、飲食品等の所望の形態とした上で、投与または摂取すればよい。
【0040】
なお、本発明の金属酵素阻害剤は、上記の通り、食品用途として提供され得るものであるが、本発明によれば、該金属酵素阻害剤を用いた、高血圧症の患者を予防、改善および/または治療する方法が提供され得る。
【0041】
b.美白および美肌効果
本発明の金属酵素阻害剤は、これを含有する美白および/または美肌効果を有する組成物(食品、医薬組成物を含む)、化粧品として提供され得る。組成物に関しては、上記の血圧降下作用組成物に準ずる。一方、化粧品としては、本発明の金属酵素阻害剤によるメラニン細胞におけるメラニン合成を抑制する効果に起因したシミ発生の予防やシミの除去、皮膚の美白用および美肌用の化粧水、化粧クリーム、乳液、クリーム、パック、ヘアトニック、ヘアクリーム、シャンプー、ヘアリンス、トリートメント、ボディシャンプー、洗顔剤、石鹸、ファンデーション、スプレーなどが提供され得る。化粧品に含有される本発明の金属酵素阻害剤の含有量は、当業者により適宜調整することができる。
【0042】
以下の実施例は、本開示の様々な態様を例証する。材料と方法の両方に対する多数の修飾は、本開示の範囲から逸脱せずに実施されてもよいことは当業者に明らかである。市販品供給業者から購入される全ての試薬および溶媒は、さらに精製又は加工することなしに使用される。
【実施例】
【0043】
実施例1:アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害活性の測定
精製されたセレノネインを用いて、ACE阻害活性を測定した(食品機能研究法(光琳),109−112,2000)。具体的には、N−ヒプリル−His−Leu水和物を基質とし、ウサギ肺由来ACEとの酵素反応による、馬尿酸の生成量から活性を測定した。ウサギ肺由来アセトンパウダー(Sigma社製)0.5gに、pH8.3の200mMホウ酸緩衝液を5mL加え、4℃でホモジナイズした。ホモジネートを14000rpmで遠心分離し、上清を回収した。回収した上清を200mMホウ酸緩衝液で5倍希釈し、ACE溶液とした。N−ヒプリル−His−Leu水和物(Sigma社製)を7.6mMになるように、608mM NaCl含有200mMホウ酸緩衝液に溶解し、基質溶液とした。セレノネインは、1、5、25μMに蒸留水で調製した。バリルチロシン(Sigma社製)は、25μM、25mMに蒸留水で調製した。
【0044】
試験管に各濃度のセレノネイン、バリルチロシン30μLと、基質溶液250μLを加え、37℃で5分間加熱した。コントロール群は、セレノネイン、バリルチロシンの代わりに蒸留水30μLを加えた。ACE溶液100μLを加え、撹拌後、37℃で20分間加熱した。反応時のバリルチロシンとセレノネインの終濃度は、バリルチロシン1.97μM、1.97mM、セレノネイン0.0789μM、0.395μM、1.973μMであった。加熱後、1N塩酸250μLを加えて反応を停止した。ブランク群では、ACE溶液を加える前に1N塩酸250μLを加え、酵素を失活させた。酢酸エチル1.5mLを加え、よく撹拌した後、3000rpmで10分間遠心した。上層を1mL回収し、遠心エバポレーターで溶媒を除去した後、蒸留水4mLを加え、馬尿酸を溶解した。228 nmで吸光度を測定し、ACE活性を測定した。
ACE活性(%)=(測定吸光度−ブランク吸光度)/(コントロール吸光度−ブランク吸光度)×100
その結果、セレノネインは濃度依存的にACE活性を阻害した。また、1.973μMバリルチロシンはACE阻害活性を示さなかったが、1.973μMセレノネインはACE活性を約78.2%阻害した。
【0045】
実施例2:ACE阻害活性の比較(1)
実施例1と同様の実験方法でセレノネインとエルゴチオネイン(Sigma社製)のACE阻害活性を比較した。セレノネインは25μM、エルゴチオネインは5および25μMに蒸留水で調製し、反応時の終濃度をセレノネイン1.973μM、エルゴチオネインを0.395μM、1.973μMとした。その結果、エルゴチオネインは0.395μM、1.973μでACE阻害活性を示さなかった。
【0046】
実施例3:ACE阻害活性の比較(2)
実施例1と同様の実験方法でセレノネインと亜セレン酸ナトリウム(和光純薬工業社製)のACE阻害活性を比較した。セレノネインは25μM、亜セレン酸ナトリウムは5、25μMに蒸留水で調製した。その結果、亜セレン酸ナトリウムは5、25μMでACE阻害活性を示さなかった。
【0047】
実施例4:マグロからのセレノネイン水溶液の調製
マグロから抽出、精製し、蒸留水に溶解して、1.58mM調製したセレノネイン水溶液を原液とした。原液をさらに蒸留水で希釈し、6N塩酸と1N水酸化ナトリウムを用いることでpH7.24に調製し、190μMに希釈した。
【0048】
実施例5:チロシナーゼ阻害活性の測定
実施例4で作成したセレノネイン水溶液を用いて、チロシナーゼ活性阻害試験を行った(沖縄県工業技術センター研究報告書,第10号,61−63,2008)。96wellマイクロプレートに、pH6.8の0.1Nリン酸緩衝液を100μLを添加し、さらに、1、10、100μMに調製したセレノネイン水溶液を20μL加えた。100μMセレノネイン水溶液は薄い黄色を示したため、各セレノネイン濃度でブランク群を設置した。酵素溶液として、pH6.8の0.1Nリン酸緩衝液に溶解した40U/mLに調製したマッシュルーム由来チロシナーゼ(Sigma社製)溶液40μLをすべてのwellに加えた後、十分に撹拌し、20℃で3分間インキュベートした。ブランク群のwellにミリQ水を50μL添加した。残りのwellには基質溶液として2.5mM DOPA(3,4−ジヒドロキシ−L−フェニルアラニン、Sigma社製)を50μL加え、ただちに490nMの吸光度(As0)を測定した。20℃で10分後、490nmの吸光度(As10)を測定した。反応時のセレノネインの終濃度はそれぞれ0.095μM、0.95μM、9.5μMであった。
チロシナーゼ阻害率(%)は100−[100*{(As10−Ab10)−(As0−Ab0)}/(Ac10−Ac0)]
として算出した(Ac:コントロール群の吸光度、Ab:ブランク群の吸光度)。
【0049】
実施例6:チロシナーゼ阻害活性の経時的変化
基質溶液の濃度を5.0mMとして、実施例5と同様の方法でチロシナーゼ活性の経時変化を測定した。同時にエルゴチオネイン、亜セレン酸ナトリウム、ビタミンCのチロシナーゼ阻害活性を測定した。反応終濃度はセレノネインで1、10μM、エルゴチオネイン、亜セレン酸ナトリウム、ビタミンCは10μMとした。その結果、終濃度10μMセレノネイン群のチロシナーゼ活性は0から60分の間、常に他の群よりも低かった。抗酸化作用が報告されており、美白剤として化粧品成分として利用されているビタミンCのチロシナーゼ活性は、60分後でコントロール群の約0.907倍であった。セレノネインの60分後のチロシナーゼ活性はコントロール群の約0.449倍であり、強いチロシナーゼ活性抑制作用を有することが示された。
【0050】
実施例7:メラノーマ細胞におけるメラニン合成阻害活性測定のための試料調製
マウスメラノーマ細胞(B16メラノーマ4A5)を用いて、セレノネインが細胞のメラニン合成に与える影響を検証した(Biosci.Biotechnol.Biochem.,70(6),1499−1501,2006)。B16メラノーマ4A5は理研細胞バンクから購入し、10%非動化済FBSと1%ペニシリン・ストレプトマイシンを添加したDMEM培地(GE社製)で、37℃、5%COの条件下培養した。B16メラノーマ4A5を12wellプレートに2.0×10細胞/mLで1mL播種した。24時間後、培地を除去し、終濃度でそれぞれ1μMセレノネイン、1μMセレノネイン+1μM α−MSH(Phoenix Pharmaceuticals社製)、1μMエルゴチオネイン+1μM α−MSH、1μM亜セレン酸ナトリウム+1μM α−MSH、1μMビタミンC+1μM α−MSH、1μMアルブチン(Sigma社製)+1μM α−MSHとしてDMEM培地(10%非動化済FBS・1%ペニシリン・ストレプトマイシン)を調製し、DISMIC 25CS020AN(Avanti社製)で濾過滅菌したものを1ml加えた。培地に添加する前の各試験物質とα−MSHはミリQ水で100μMに調製したものを用いた。コントロール、コントロール+α−MSH群には、試験物質とα−MSHの代わりにミリQ水を添加した。
【0051】
37℃、5%COの条件下で培養し、添加後24、48時間後に同様の組成の培地に交換した。最初の添加から72時間後、培地を除去し、PBSで洗浄した。PBSを除去した後、細胞をプロテアーゼ阻害剤ミックス(DMSO溶液、動物細胞・組織抽出液用、和光純薬工業社製)を加えたRIPA緩衝液(10mM Tris−HCl、pH7.5、1%NP−40、0.1%デオキシコール酸ナトリウム、0.1%SDS、150mM NaCl、1mM EDTA)500μLに溶解し、1.5mLチューブに回収した。4℃で15000rpm、15分間遠心分離し上清500μLを回収し、チロシナーゼ活性測定用の試料として−40℃で保存した。上清を回収した後の1.5mLチューブに1N NaOHを250μL加え、沈殿を溶解し、メラニン定量用の試料として−40℃で保存した。
【0052】
実施例8:メラニン合成阻害活性の測定
実施例7で得た試料を用いてチロシナーゼ活性の測定を行った(Biosci.Biotechnol.Biochem.,70(6),1499−1501,2006)。室温で試料を融解した後、50μLを96wellプレートに添加し、実施例5で用いたリン酸緩衝液100μLに溶解した。25mM DOPAを50μL加えた直後、37℃で475nmの吸光度を測定した。その後37℃でインキュベートし、吸光度を5分ごとに60分間測定した。その結果、セレノネインはα−MSHを添加した時に上昇するチロシナーゼ活性を抑制した。
【0053】
実施例9:試料中のメラニン含量の測定
実施例7で得られた試料を用いて、細胞内のメラニンを定量した。試料を室温で融解した後、キャップを閉めた状態で、100℃ 5分間の加熱を行った。卓上遠心機で3秒間遠心し、ボルテックスミキサーで十分に撹拌した後、100μLを96wellプレートに供した。また、メラニン標準品(MP biomedical社製)を0、2、20、100、200ng/100μLで供し、検量線を作成した。
【0054】
その結果、α−MSHの添加により、細胞のメラニン量は46.1ng/wellから103.1ng/wellに上昇した。α−MSHと同時にセレノネインを添加した場合、メラニン量は47.9ng/wellとなり、メラニン合成の抑制が確認された。エルゴチオネイン、亜セレン酸ナトリウム、ビタミンCには抑制作用が認められなかった。
【0055】
上記から、本開示の具体的な実施形態は本明細書において例示を目的として記載されているが、様々な修正が本開示の精神と範囲から逸脱することなく行われてもよいことを理解されたい。従って、本開示は、添付の特許請求の範囲による場合を別として、限定されない。さらに、特許請求の範囲は、その全範囲および同等物に権利を有する。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明のセレン含有化合物を有効成分として含有する金属酵素阻害剤は、血圧降下剤や美白剤として期待され得る。特に、水産加工残滓から抽出したセレノネイン濃縮物の新たな用途が見出されたことから、低未利用水産物の高付加価値化に貢献することができる。消費者の健康志向に対応する新たな食材や機能性素材を商品化することができる。
【0057】
本明細書に引用する全ての刊行物および特許文献は、参照により全体として本明細書中に援用される。なお、例示を目的として、本発明の特定の実施形態を本明細書において説明したが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、種々の改変が行われる場合があることは、当業者に容易に理解されるであろう。