特許第6823938号(P6823938)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6823938
(24)【登録日】2021年1月14日
(45)【発行日】2021年2月3日
(54)【発明の名称】皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9789 20170101AFI20210121BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20210121BHJP
   A61K 36/185 20060101ALI20210121BHJP
   A61K 36/53 20060101ALI20210121BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20210121BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20210121BHJP
【FI】
   A61K8/9789
   A61Q19/00
   A61K36/185
   A61K36/53
   A61P17/00
   A61P9/00
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-68764(P2016-68764)
(22)【出願日】2016年3月30日
(65)【公開番号】特開2017-178850(P2017-178850A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2019年2月19日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 公開(1)「公益社団法人 日本薬学会発行 ファルマシア52巻2号 付録日本薬学会第136年会プログラム」(平成28年2月1日発行、公益社団法人日本薬学会) 公開(2)平成28年日本薬学会第136年会のウェブサイト(平成28年2月1日掲載、http://nenkai.pharm.or.jp/136/web/) 公開(3)平成28年日本薬学会第136年会のウェブサイト(平成28年2月4日掲載、http://nenkai.pharm.or.jp/136/web/) 公開(4)「平成28年日本薬学会第136年会DVD要旨集」及び「平成28年日本薬学会第136年会要旨集」(平成28年3月5日発行、公益社団法人日本薬学会) 公開(5)平成28年日本薬学会第136年会の一般学術発表「ポスター」(平成28年3月26〜29日開催中29日発表)
(73)【特許権者】
【識別番号】397036365
【氏名又は名称】株式会社アイビー化粧品
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】西澤 愛
(72)【発明者】
【氏名】植草 奈津子
(72)【発明者】
【氏名】前甸 貴志
(72)【発明者】
【氏名】木村 吉秀
【審査官】 星 浩臣
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−091728(JP,A)
【文献】 特開2001−064192(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0075652(US,A1)
【文献】 特開2010−195724(JP,A)
【文献】 特開平11−263720(JP,A)
【文献】 特開2000−247830(JP,A)
【文献】 特開2006−104117(JP,A)
【文献】 特表2010−514774(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
A61K 36/00−36/9068
A61P 1/00−43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIX/KOSMET(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マジョラム(ORIGANUM MAJORANA=MAJORANA HORTENSIS)の葉の抽出物を、血管新生抑制作用の有効成分として0.3〜1.5質量%含有する皮膚外用剤。
【請求項2】
ホップ(HUMULUS LUPULUS)の雌花穂の抽出物及びマジョラム(ORIGANUM MAJORANA=MAJORANA HORTENSIS)の葉の抽出物の混合物を含有する皮膚外用剤であって、
前記混合物中、ホップの雌花穂の抽出物の含有割合が血管新生抑制作用の有効成分として0.05〜3質量%、マジョラムの葉の抽出物の含有割合が血管新生抑制作用の有効成分として0.1〜1.5質量%であり、
ホップの雌花穂の抽出物とマジョラムの葉の抽出物の合計量中の含有割合が、ホップの雌花穂の抽出物/マジョラムの葉の抽出物(質量比)が1/2〜1/1である、皮膚外用剤。
【請求項3】
前記抽出物が、水と、エタノール、1,3−ブタンジオール及びイソプロパノールから選ばれる有機溶媒の混合溶媒を用いて得られるものである、請求項1または2記載の皮膚外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの肌は表皮、真皮、皮下組織の大きく分けて3つの層から成っていることは広く知られている。表皮にも生細胞は存在し、基底層にある表皮ケラチノサイトが分裂、成熟して行くことにより有棘層、顆粒層を経て死細胞である角層へと分化する。このとき、表皮ケラチノサイトの細胞分裂に必要な物質を運搬、供給しているのが真皮に到達する毛細血管である。
【0003】
血管は、器官形成や、創傷治癒、炎症の修復の際などに誘導されることが知られており、これは血管新生とよばれる生体内現象である。
しかし、この血管新生が、過剰に行われた場合には皮膚状態の悪化、特にシワ形成が促進されることがすでに知られている。
血管新生は血管内皮増殖因子(VEGF)の働きにより亢進し、トロンボスポンジン1(TSP−1)がその働きに抑制をかけることが分かっており、紫外線照射時にはVEGFの発現が上昇しTSP−1の発現は低下することが報告されている(非特許文献1)。すなわち、VEGFとTSP−1のバランスが崩れ、相対的にVEGFが優位に働くことにより血管新生が促進される。
紫外線照射を受けた部位の新生血管からは、エラスターゼを産生する好中球が容易に皮膚組織に浸潤可能であるため、エラスチン線維の破壊を惹起する。その結果、皮膚構造の変化、特にシワ形成が促進される。
【0004】
特許文献1には、D−メチオニンおよびその誘導体を含有する血管新生抑制のための組成物が記載されている(特許請求の範囲)。
特許文献2には、ウスヒラタケ、ヌメリスギタケ、クリタケの抽出物を含有する血管新生抑制剤が記載されている(特許請求の範囲)。実施例ではクリタケ抽出物を5.0重量%含有するローションが記載されている。
特許文献3には、発酵大麦エキスが血管新生抑制作用を持つとされ、前記エキスを含有する機能性食品素材が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−177356号公報
【特許文献2】特開2007−238454号公報
【特許文献3】特開2007−84504号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Journal of Investigative Dermatology 118,800−805,2002
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、皮膚外用剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ホップ(HUMULUS LUPULUS)の雌花穂の抽出物及びマジョラム(ORIGANUM MAJORANA=MAJORANA HORTENSIS)の葉の抽出物から選ばれる1種以上の抽出物を、血管新生抑制作用の有効成分として0.05〜5質量%含有する皮膚外用剤を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の皮膚外用剤は、紫外線照射により促進される血管新生を抑制し、肌弾力を向上させ、肌にハリを与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】試験例1(ホップ抽出物)のヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)増殖率の結果を示す。
図2】試験例1(マジョラム抽出物)のヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を用いた細胞増殖率の結果を示す。
図3】試験例1(ホップ抽出物とマジョラム抽出物の混合物)のヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)増殖率の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<皮膚外用剤>
本発明の皮膚外用剤は、ホップの雌花穂の抽出物及びマジョラムの葉の抽出物から選ばれる1種以上の抽出物を血管新生抑制作用の有効成分として含有するものである。
【0012】
ホップの雌花穂は、クワ科のホップ(HUMULUS LUPULUS)の雌花穂を指す。該植物は古来より薬用に用いられており、苦味健胃薬として用いられることがある。ホップの類縁植物を使用することもできる。
【0013】
本発明において用いるマジョラムの葉は、シソ科のマジョラム(ORIGANUM MAJORANA=MAJORANA HORTENSIS)の葉を指す。マジョラムの精油や、エキスは現在でも鎮静、抗不安等の目的で用いられることがある。マジョラムの類縁植物を使用することもできる。
【0014】
本発明で用いる抽出物は、例えば、ホップの雌花穂やマジョラムの葉を乾燥して刻み、または粉末状にした後、抽出溶媒を加え、冷浸抽出または加熱抽出することによって得ることができる。
冷浸抽出法による抽出方法は、公知の方法を採用することができる。例えば、ホップの雌花穂やマジョラムの葉100gに対して前記抽出溶媒1〜1.5Lを加え、室温で攪拌等して、本発明で用いる抽出物を得ることができる。
加熱抽出法による抽出方法も、公知の方法を採用することができる。例えば、ホップの雌花穂やマジョラムの葉100gに対して前記抽出溶媒0.5〜1Lを加え、加熱還流して、本発明で用いる抽出物を得ることができる。
【0015】
抽出溶媒としては、水と、エタノール、1,3−ブタンジオール、イソプロパノール等から選ばれる有機溶媒との混合溶媒を使用することができる。
【0016】
本発明における抽出物は、抽出液、該抽出液の希釈液もしくは濃縮液、該抽出液を乾燥して得られる乾燥物(例えば粉末)のいずれをも含むものであり、さらには前記乾燥物を水等の溶媒に溶解させたものも含まれる。
【0017】
本発明で用いる抽出物の含有量は、有効濃度や安定性の点から、0.05〜5質量%、好ましくは0.06〜3質量%、より好ましくは0.1〜2質量%である。
本発明で用いる抽出物は、優れた血管新生抑制作用を有しており、少量で高い効果を得ることができる。
【0018】
本発明で用いる抽出物がホップの雌花穂を抽出して得られるもの(ホップ抽出物)である場合、前記抽出物の含有量は、好ましくは0.05〜3質量%、より好ましくは0.1〜2質量%、さらに好ましくは0.25〜2.0質量%である。
【0019】
また本発明で用いる抽出物がマジョラムの葉を抽出して得られるもの(マジョラム抽出物)である場合、前記抽出物の含有量は、好ましくは0.3〜1.75質量%、より好ましくは0.5〜1.5質量%、さらに好ましくは0.75〜1質量%である。
【0020】
本発明で用いる抽出物は、ホップ抽出物とマジョラム抽出物をそれぞれ単独で用いることもできるが、組み合わせて使用することもできる。
ホップ抽出物とマジョラム抽出物を組み合わせて使用するときは、
ホップ抽出物の皮膚外用剤中の含有割合は0.05〜3質量%が好ましく、0.06〜2質量%がより好ましく、
マジョラム抽出物の皮膚外用剤中の含有割合は0.1〜1.5質量%が好ましく、0.12〜1質量%がより好ましい。
ホップ抽出物とマジョラム抽出物の合計量中の割合は、ホップ抽出物/マジョラム抽出物(質量比)で、1/3〜3/1が好ましく、1/2〜2/1がより好ましく、1/2〜1/1がさらに好ましい。
【0021】
本発明の皮膚外用剤は、ホップ抽出物とマジョラム抽出物が液体(濃縮物も含む)である場合は、そのまま皮膚外用剤として使用することができるほか、皮膚外用剤に配合される各種成分と組み合わせることができる。
本発明の皮膚外用剤は、ホップ抽出物とマジョラム抽出物が乾燥物(粉末など)である場合は、皮膚外用剤に配合される各種成分と組み合わせることが好ましい。
【0022】
一般に皮膚外用剤に配合される各種成分としては、
炭化水素、スクワラン、流動パラフィン、ワセリン、固形パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、セレシン、アルキッド、アクリル、スルホンアミド樹脂、ニトロセルロース;
ミネラルオイル、オリーブ油、アーモンド油、カカオ脂、マカデミアナッツ油、アボカド油、硬化パーム油、ヒマシ油、ヒマワリ油、月見草油、合成トリグリセライド、ロウ、ヒマワリ種子ロウ、ミツロウ、カルナバロウ、キャンデリラロウ、ラノリン、酢酸ラノリン、高級脂肪酸、高級アルコール、合成エステル、直鎖・環状シリコーンオイル、ジメチルポリシロキサン、モノステアリン酸グリセリン、デカメチルシクロペンタンシロキサン、ポリオキシエチレン変性ジメチルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ポリフェニルメチルシロキサン、ロジンペンタエリスリトットエステル、ジイソオクタン酸ネオペンチルグリコール、トリイソオクタン酸グリセリン、ミリスチン酸イソプロピル、モノラウリン酸プロピレングリコール、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルなどの油剤;
精製水、エタノール、イソプロパノール、多価アルコール、水溶性高分子、ベントナイト、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ブタノール;グリセリン、プロピレングリコール、ソルビット、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジグリセリン、マンニトール、POEメチルグリコシド、生体高分子、蔗糖などの保湿剤;
エチルヘキサン酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、トリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチルなどのエモリエント成分;クインスシード、ペクチン、セルロース誘導体、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、ソアギーナ、カルボキシビニルポリマー;
ミリスチン酸オクチルドデシル、ジイソオクタン酸ネオペンチルグリコール、モノオレイン酸ソルビタン、トリイソオクタン酸グリセリン、オクチルメトキシシンナメート、モノオレイン酸POEソルビタン、イソセチル、イソステアリン酸、ステアリン酸、パルミチン酸イソプロピル、クエン酸アセチルトリブチル、ジ安息香酸トリメチルペンタンジイル、ステアリルコニウムベントナイト;
増粘剤、防腐剤、乳化剤、安定化剤;
陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性イオン界面活性剤、蛋白質系界面活性剤;
薬効成分、ビタミンCジパルミテート、ビタミン類、アミノ酸、美白剤、殺菌剤;
タルク、カオリン、マイカ、セリサイト、アルミナ、シリカ、ガラスフレーク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸、硫酸バリウム、化粧品用タール色素、有機色素、βカロチン、カルサミン、カルミン、クロロフィル、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、群青、紺青、酸化クロム、カーボンブラック、白色顔料、パール顔料などの顔料、
ナイロンパウダー、ポリエチレン粉末、ポリメタクリル酸メチル、ウールパウダー、セルロースパウダー、シルクパウダー、シリコーンパウダー、でんぷん粉、アルミニウム粉末、球状ナイロン、球状ポリスチレン、雲母チタン、二酸化チタン、酸化チタン、酸化鉄、その他の粉体;
pH調整剤、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、金属イオン封止剤、クエン酸、クエン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム、紫外線吸収剤、抗酸化剤、香料、防腐剤、キレート剤、酸化防止剤、分散剤、褐色防止剤、緩衝剤、沈殿防止成分、ゲル化剤、有機変性粘土鉱物、使用性改質剤、等が挙げられる。
【0023】
本発明の皮膚外用剤は、ローション、乳剤、クリーム、軟膏、貼り付け剤等、種々の形態をとることができる。
本発明の皮膚外用剤は、化粧料や皮膚疾患用の医薬部外品として用いることができる。
【0024】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。なお「%」は特に断らない限り質量%を意味する。
【実施例】
【0025】
調製例1(ホップ抽出物)
水で洗浄した後粉砕したホップの雌花穂500gを、約5Lの抽出溶媒(水/1,3−ブタンジオール=1:1(質量比))を用いて加熱抽出(80℃還流加熱)して得られた抽出物を濾過し、赤褐色の抽出液と滓に分離した。得られた抽出液の溶媒を留去して、ペースト状の濃縮物であるホップ抽出物を得た。
【0026】
調製例2(マジョラム抽出物)
水で洗浄した後粉砕したマジョラムの葉500gを、約5Lの抽出溶媒(水/1,3−ブタンジオール=1:1(質量比))を用いて加熱抽出(80℃還流加熱)して得られた抽出物を濾過し、黄褐色の抽出液と滓に分離した。得られた抽出液の溶媒を留去して、ペースト状の濃縮物であるマジョラム抽出物を得た。
【0027】
調製例3(ホップ抽出物とマジョラム抽出物の混合物)
上記調製例1、2の抽出液を任意の割合で混合して、褐色の混合抽出液を得た。得られた混合抽出液の溶媒を留去して、ペースト状の濃縮物であるホップ抽出物とマジョラム抽出物の混合物を得た。
【0028】
試験例1(血管新生抑制作用の評価)
調製例1のホップ抽出物単独、調製例2のマジョラム抽出物単独、及び調整例3のホップ抽出物とマジョラム抽出物の混合物をサンプルとして使用して、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を用いた細胞増殖率によりそれぞれの血管新生抑制作用を評価した。
まず、次の(i)血管内細胞基礎培地1、(ii)血管内細胞基礎培地2及び(iii)発色液を調製した。
【0029】
(i)血管内細胞基礎培地1の調製
HuMedia−EB2(倉敷紡績社製)に、FBS(終濃度2容量%)、10ng/mLhEFG、1.34μg/mLHC、50μg/mLGM、50ng/mLATB、5ng/mLhFGF−B、10μg/mLHPを添加して調製した。
【0030】
(ii)血管内細胞基礎培地2の調製
前記(i)の血管内皮細胞基礎培地1に、5ng/mLVEGFを添加して調製した。
【0031】
(iii)発色液の調製
〔3-(4,5-Dimethylthial-2-yl)-2,5-DiphenyltetrazaliumBromide〕(MTT)を5mg/mLとなるようにリン酸緩衝生理食塩水(PBS(−))に溶解させて調製した。
【0032】
血管内細胞基礎培地1を使用して、HUVECが1.5×10個/mLとなるように調製し、100μLずつ96穴マイクロプレートに播種して、5%炭酸ガス、飽和水蒸気下、37℃で培養した。
【0033】
24時間後、培養液を吸引除去し、各サンプル(各抽出物の50質量%1,3-ブタンジオール水溶液)を、図1〜3に示す配合量(純分換算)で血管内細胞基礎培地2に添加して、5%炭酸ガス、飽和水蒸気下、37℃で培養した。
【0034】
24時間後、培養液を吸引除去し、血管内細胞基礎培地1にて発色液を10倍希釈したものを100μLずつ添加し、5%炭酸ガス、飽和水蒸気下、37℃で培養した。
2時間後、希釈した発色液を除去し、イソプロパノール150μLで色素を抽出しマイクロプレートリーダーにより吸光度を測定した。測定波長は570nm、参照波長は620nmとした。
【0035】
本発明の抽出物を添加していない、血管内皮細胞基礎培地1のみを加えて培養したもの(図1〜3のHuMedia+FBS)をコントロールとして、前記吸光度から細胞増殖率を算出した。ホップ抽出物の結果を図1に、マジョラム抽出物の結果を図2に示した。また、組み合わせて配合した結果を図3に示した。図中、縦軸の数値は細胞増殖率を、横軸の数値は前記(ii)の培地2に添加した各抽出物量(質量%)を、*はp<0.05を、**はp<0.01を示した。
【0036】
縦軸である細胞増殖率が、前記(ii)の培地2よりも小さければ、「細胞増殖率の抑制あり」又は「細胞増殖率の抑制傾向あり」とした。
図1より、ホップ抽出物は0.125質量%以上の濃度においてHUVECの過剰な増殖を抑制していることを確認した。また、0.0625質量%以上の濃度において過剰な増殖に対し抑制傾向を示していることを確認した。
図2より、マジョラム抽出物は1.0質量%以上の濃度においてHUVECの過剰な増殖を抑制していることを確認した。また、0.5質量%以上の濃度において過剰な増殖に対し抑制傾向を示していることを確認した。
図3より、ホップ、マジョラム抽出物の組み合わせによりそれぞれの抑制作用が増強されることを確認した。ホップ抽出物及びマジョラム抽出物の混合物は、ホップ抽出物0.0625質量%以上の濃度のもの及びマジョラム抽出物0.125質量%以上の濃度のものを組み合わせて配合することにより効果が得られることを確認した。
【0037】
また図3より、ホップ抽出物及びマジョラム抽出物の混合物を用いた場合において、ホップ抽出物量のほうが多くてもよく、マジョラム抽出物量のほうが多くてもよいが、マジョラム抽出物量を多くした場合に、混合物全体が少ない量で効果が得られることを確認した。マジョラム抽出物量を多くした場合、ホップ抽出物が、マジョラム抽出物の有するHUVECの過剰な増殖を抑制する効果を引き出し、相乗的に効果が得られたものと予測される。
【0038】
また縦軸である細胞増殖率が、前記(i)の培地1よりも大きければ、「細胞に対する毒性傾向なし」とした。
図1より、ホップ抽出物は4.0質量%よりも小さい濃度において、細胞に対する毒性傾向がないことを確認した。
図2より、マジョラム抽出物は2.0質量%よりも小さい濃度において、細胞に対する毒性傾向がないことを確認した。
図3より、ホップ抽出物及びマジョラム抽出物の混合物は、ホップ抽出物4.0質量%及びマジョラム抽出物2.0質量%の組み合わせたものよりも各濃度が小さい濃度において、細胞に対する毒性傾向がないことを確認した。
【0039】
実施例1、2(肌用クリーム)
下記の成分(1)〜(5)を混合後加熱溶解して75℃とし、これに混合、加熱融解し75℃とした(6)〜(9)および(12)を添加して乳化し、撹拌冷却後、(10)および(11)を添加して、肌用クリームを得た。
(組成)(質量%)
(1)ステアリン酸 1.00
(2)バチルアルコール 1.00
(3)モノステアリン酸グリセリン 0.50
(4)スクアラン 15.00
(5)ソルビタンモノステアレート 2.00
(6)ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート 2.00
(7)水酸化カリウム 0.05
(8)カルボキシビニルポリマー 0.10
(9)パラヒドロキシ安息香酸メチル 0.10
(10)ホップ抽出物(実施例1)、マジョラム抽出物(実施例2) 1.00
(11) 香料 0.10
(12) 精製水 77.15
全量 100.00
【0040】
<実施例1、2の肌用クリームの使用試験>
日常的に日光への暴露があり、肌の弾力の衰えを感じているパネラー20名(男性7名、年齢29〜48歳、女性13名、年齢26〜53歳)を第1群、別のパネラー20名(男性8名、年齢27〜46歳、女性12名、年齢28〜55歳)を第2群として試験した。
比較例1として、実施例1、2のホップ抽出物、マジョラム抽出物の代わりに同量の保湿液(水/1,3ブチレングリコール=1:1)を配合した肌クリームを使用した。
実施例1、2の肌クリームと比較例1の肌クリームをブラインド試験にて、パネラーの顔面に1回の塗布量1.5mg/cmで塗布した。
使用期間は10月1日から末日までの1ヶ月として、毎朝の洗顔後に1回使用した。
表1の肌弾力(実施例1と比較例1)と官能評価(実施例1と比較例1)は、第1群のパネラーで試験した。
表2の肌弾力(実施例2と比較例1)と官能評価(実施例2と比較例1)は第2群のパネラーで試験した。
【0041】
評価基準は、次のとおりである。
(肌弾力)
「上昇」、「変化なし」、「やや低下」、「低下」の4段階で各パネラーが評価して、人数で示した。結果を表1に示す。
(官能評価)
「ハリを感じた」、「変化なし」、「ややハリがなくなった」、「ハリがなくなった」の4段階で各パネラーが評価して、人数で示した。結果を表2に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
表1、表2に示すように実施例1、2は比較例1と比べると、肌弾力が上昇し、官能評価も同様の傾向を示した。
【0045】
以上、詳述したように、本発明の皮膚外用剤は、紫外線暴露で生じ得るVEGFの上昇の結果誘導される血管新生を抑制し、過剰な血管新生によって引き起こされる皮膚構造の変化、特にエラスチンの分解による弾肌弾力の低下や、老化肌の形成を防止することができることが確認された。
また、実施例1,2での試験濃度において細胞に対する毒性傾向を示さず、問題となる皮膚刺激性も見られないことより、安全性の懸念も少ない優れた皮膚外用剤であることを確認した。
【0046】
実施例3(肌用クリーム)
実施例1、2に示す成分(10)1質量%に代えて、ホップ抽出物1質量%及びマジョラム抽出物2質量%の混合物3質量%を配合し、(12)75.15質量%を配合した以外は、実施例1、2と同様にして、肌用クリームを得た。
実施例1、2と同様の肌弾力と官能評価を行ったところ、実施例1、2と比べて同等以上の効果を確認した。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の皮膚外用剤は、肌に塗布するための化粧品、医薬部外品として利用することができる。
図1
図2
図3