(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記調整データ取得工程では、前記調整データとして、各色のトーンを調整するためのトーン調整データと、前記インクジェット印刷装置の各ノズルから吐出されるインクの量を調整するためのシェーディング調整データと、各色の濃度を調整するための濃度調整データとが取得され、
前記画像データ補正工程では、前記トーン調整データと前記シェーディング調整データと前記濃度調整データとを用いて前記画像データが補正されることを特徴とする、請求項1または2に記載のインク消費量見積もり方法。
前記調整データ取得工程では、前記調整データとして、印刷に使用されるインクジェット印刷装置のノズルからインクが吐出される際のインクの液滴量を調整するための液滴量調整データが取得され、
前記インク消費量算出工程では、前記液滴量調整データを用いてインク消費量の算出が行われることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載のインク消費量見積もり方法。
前記インク消費量算出工程では、1つの色に着目したときの各画素におけるインク消費量が、印刷に使用されるインクジェット印刷装置のノズルからインクが吐出される際の複数の液滴サイズのそれぞれの出現率を階調値毎に定めた網テーブルを用いて画素の階調値に応じた各液滴サイズの出現率とそれに対応する液滴量との積の総和を求めることによって算出されることを特徴とする、請求項7に記載のインク消費量見積もり方法。
印刷対象の画像データを生成する画像データ生成装置と、基材にインクを吐出することによって印刷を行う印刷機本体と該印刷機本体の動作を制御する印刷制御装置とからなるインクジェット印刷装置とを有する印刷システムであって、
前記画像データと印刷に関する属性情報であるジョブ情報とを含む印刷ジョブを取得する印刷ジョブ取得手段と、
印刷が行われる際のインクの吐出量を調整するために前記インクジェット印刷装置で生成された複数の調整データの中から前記ジョブ情報に応じた調整データを取得する調整データ取得手段と、
前記調整データ取得手段によって取得された調整データを用いて前記画像データを補正する画像データ補正手段と、
前記画像データ補正手段による補正後の画像データによって表される画像の印刷に要するインクの量をインク消費量として算出するインク消費量算出手段と、
前記調整データの変更の有無を監視する調整データ監視手段と
を備え、
前記調整データ監視手段によって前記調整データの変更が検知されたとき、オペレータによる操作を介することなく、前記画像データ補正手段と前記インク消費量算出手段とによって、変更後の調整データに応じたインク消費量が算出されることを特徴とする、印刷システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、同じ画像データを用いて印刷が行われる場合であっても、ユーザーが指定するトーン,印刷速度や、印刷の際に使用される基材の種類などによって、実際に消費されるインクの量は変化する。例えば、濃度ムラの発生を抑制するために各ノズルから吐出されるインクの量を調整する「シェーディング処理」と呼ばれる処理がインクジェット印刷装置(以下、単に「装置」ともいう。)で行われているところ、シェーディング処理で調整されるインクの量は基材の種類や印刷モード(例えば、印刷速度や解像度)によって定まる。すなわち、シェーディング処理でのインクの調整量は、基材の種類や印刷モードによって異なる。また、その調整量は、実際に印刷に使用される個々の装置毎に異なる。さらに、シェーディング処理以外の処理に関しても、装置毎にインクの量が調整されるものがある。なお、本明細書においては、印刷が行われる際のインクの吐出量を印刷に使用される装置毎に調整するための様々なデータを総称して「調整データ」という。
【0006】
上述したように、同じ画像データを用いて印刷が行われる場合であっても、実際に消費されるインクの量は調整データによる調整の結果に伴って変化する。ところが、従来においては、このような調整データが考慮されることなくインク消費量の見積もり(予測)が行われている。このため、インク消費量の見積もりは充分な精度では行われていない。従って、高精度な見積もり結果を欲するユーザーは、例えば、実際に少部数の印刷を実行して、そのときのインク消費量から印刷ジョブ全体でのインク消費量を見積もっている。以上のようなことから、インク消費量の見積もり精度の向上が強く求められている。
【0007】
そこで本発明は、インクジェット印刷装置で印刷が行われる際のインクの消費量を従来よりも高い精度で見積もる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、インクジェット印刷装置で印刷が行われる際のインクの消費量を見積もる方法であって、
印刷対象の画像データと印刷に関する属性情報であるジョブ情報とを含む印刷ジョブを取得する印刷ジョブ取得工程と、
印刷が行われる際のインクの吐出量を印刷に使用されるインクジェット印刷装置毎に調整するための調整データを前記ジョブ情報に応じて取得する調整データ取得工程と、
前記調整データを用いて前記画像データを補正する画像データ補正工程と、
前記画像データ補正工程による補正後の画像データによって表される画像の印刷に要するインクの量をインク消費量として
印刷開始前に算出するインク消費量算出工程と
、
前記画像データに基づく印刷が行われる際にフラッシングが実行されるか否かをフラッシング可否データに基づいて判定するフラッシング判定工程と、
前記フラッシング判定工程によってフラッシングが実行される旨の判定が行われたときにフラッシングによるインク使用量を印刷開始前に算出するフラッシング見積もり工程と
を含み、
前記ジョブ情報は、印刷対象ページ数と、前記画像データの印刷に使用されるページ送り長と、前記画像データに基づく印刷の繰り返し回数を示す部数とを含み、
前記フラッシング見積もり工程は、
前記ジョブ情報から前記印刷対象ページ数と前記ページ送り長と前記部数とを抽出する工程と、
フラッシング間隔と1回のフラッシングに要するインク吐出量とを含むフラッシングパラメータを取得する工程と、
前記印刷対象ページ数と前記ページ送り長と前記部数と前記フラッシング間隔とに基づいて、前記画像データの印刷中に実行されるフラッシング回数を算出する工程と、
前記フラッシング回数と前記フラッシングに要するインク吐出量とに基づいて、前記フラッシングによるインク使用量を算出する工程と、
前記フラッシングによるインク使用量と前記インク消費量算出工程で算出されたインク消費量とを加算することによって、印刷が行われる際のインクの総消費量を算出する工程と
を含むことを特徴とする。
第2の発明は、インクジェット印刷装置で印刷が行われる際のインクの消費量を見積もる方法であって、
印刷対象の画像データと印刷に関する属性情報であるジョブ情報とを含む印刷ジョブを取得する印刷ジョブ取得工程と、
印刷が行われる際のインクの吐出量を印刷に使用されるインクジェット印刷装置毎に調整するための調整データを前記ジョブ情報に応じて取得する調整データ取得工程と、
前記調整データを用いて前記画像データを補正する画像データ補正工程と、
前記画像データ補正工程による補正後の画像データによって表される画像の印刷に要するインクの量をインク消費量として算出するインク消費量算出工程と、
前記画像データに基づく印刷が行われる際にフラッシングが実行されるか否かをフラッシング可否データに基づいて判定するフラッシング判定工程と、
前記フラッシング判定工程によってフラッシングが実行される旨の判定が行われたときにフラッシングによるインク使用量を印刷開始前に算出するフラッシング見積もり工程と
を含み、
前記ジョブ情報は、印刷対象ページ数と、前記画像データに基づく印刷の繰り返し回数を示す部数とを含み、
前記フラッシング見積もり工程は、
前記ジョブ情報から前記印刷対象ページ数と前記部数とを抽出する工程と、
フラッシング間隔と1回のフラッシングに要するインク吐出量とを含むフラッシングパラメータを取得する工程と、
前記印刷対象ページ数と前記部数と前記フラッシング間隔とに基づいて、前記画像データの印刷中に実行されるフラッシング回数を算出する工程と、
前記フラッシング回数と前記フラッシングに要するインク吐出量とに基づいて、前記フラッシングによるインク使用量を算出する工程と、
前記フラッシングによるインク使用量と前記インク消費量算出工程で算出されたインク消費量とを加算することによって、印刷が行われる際のインクの総消費量を算出する工程と
を含むことを特徴とする
【0009】
第
3の発明は、第1
または第2の発明において、
前記調整データ取得工程では、前記調整データとして、各色のトーンを調整するためのトーン調整データと、前記インクジェット印刷装置の各ノズルから吐出されるインクの量を調整するためのシェーディング調整データと、各色の濃度を調整するための濃度調整データとが取得され、
前記画像データ補正工程では、前記トーン調整データと前記シェーディング調整データと前記濃度調整データとを用いて前記画像データが補正されることを特徴とする。
【0010】
第
4の発明は、第
3の発明において、
前記トーン調整データは、トーンが調整されるよう入力階調値と出力階調値とが対応付けられたトーンテーブルであって、
前記シェーディング調整データは、インクの吐出量が調整されるよう入力階調値と出力階調値とが対応付けられたシェーディングテーブルであって、
前記濃度調整データは、濃度が調整されるよう入力階調値と出力階調値とが対応付けられた濃度テーブルであって、
前記調整データ取得工程では、
色毎に、用意されている複数のトーンテーブルの中から前記ジョブ情報に応じたトーンテーブルが取得され、
色毎かつ印刷の際に使用されるノズル毎に、用意されている複数のシェーディングテーブルの中から前記ジョブ情報に応じたシェーディングテーブルが取得され、
色毎に、用意されている複数の濃度テーブルの中から前記ジョブ情報に応じた濃度テーブルが取得されることを特徴とする。
【0011】
第
5の発明は、第
4の発明において、
前記画像データ補正工程は、
前記画像データに含まれる各画素の階調値を前記調整データ取得工程で取得されたトーンテーブルに基づいて補正するトーン調整工程と、
前記トーン調整工程による補正後の各画素の階調値を前記調整データ取得工程で取得されたシェーディングテーブルに基づいて補正するシェーディング調整工程と、
前記シェーディング調整工程による補正後の各画素の階調値を前記調整データ取得工程で取得された濃度テーブルに基づいて補正する濃度調整工程と
を含むことを特徴とする。
【0012】
第
6の発明は、第
5の発明において、
前記ジョブ情報に基づいて決定される印字範囲に対応するノズルを使用ノズルとして決定する使用ノズル決定工程を更に含み、
前記シェーディング調整工程では、前記使用ノズル決定工程で決定された使用ノズル毎のシェーディングテーブルに基づいて、各画素の階調値の補正が行われることを特徴とする。
【0013】
第
7の発明は、第1から第
6までのいずれかの発明において、
前記調整データ取得工程では、前記調整データとして、印刷に使用されるインクジェット印刷装置のノズルからインクが吐出される際のインクの液滴量を調整するための液滴量調整データが取得され、
前記インク消費量算出工程では、前記液滴量調整データを用いてインク消費量の算出が行われることを特徴とする。
【0014】
第
8の発明は、第
7の発明において、
前記インク消費量算出工程では、1つの色に着目したときの各画素におけるインク消費量が、印刷に使用されるインクジェット印刷装置のノズルからインクが吐出される際の複数の液滴サイズのそれぞれの出現率を階調値毎に定めた網テーブルを用いて画素の階調値に応じた各液滴サイズの出現率とそれに対応する液滴量との積の総和を求めることによって算出されることを特徴とする。
【0015】
第
9の発明は、第
8の発明において、
前記液滴量調整データは、前記網テーブルであって、
前記調整データ取得工程では、色毎に、用意されている複数の網テーブルの中から前記ジョブ情報に応じた網テーブルが取得され、
前記インク消費量算出工程では、前記調整データ取得工程で取得された網テーブルを用いて、画素の階調値に応じた各液滴サイズの出現率が求められることを特徴とする。
【0016】
第
10の発明は、第
8または第
9の発明において、
前記液滴量調整データは、印刷に使用されるインクジェット印刷装置内の圧電素子に目標とするインクの液滴量に応じて与えられる電圧の波形情報であって、
前記インク消費量算出工程では、前記複数の液滴サイズのそれぞれに対応する液滴量が前記波形情報に基づいて求められることを特徴とする。
【0018】
第11の発明は、インクジェット印刷装置で印刷が行われる際のインクの消費量を見積もるインク消費量見積もり装置であって、
印刷対象の画像データと印刷に関する属性情報であるジョブ情報とを含む印刷ジョブを取得する印刷ジョブ取得手段と、
印刷が行われる際のインクの吐出量を印刷に使用されるインクジェット印刷装置毎に調整するための調整データを前記ジョブ情報に応じて取得する調整データ取得手段と、
前記調整データを用いて前記画像データを補正する画像データ補正手段と、
前記画像データ補正手段による補正後の画像データによって表される画像の印刷に要するインクの量をインク消費量として算出するインク消費量算出手段と
、
前記調整データの変更の有無を監視する調整データ監視手段と
を備え、
前記調整データ監視手段によって前記調整データの変更が検知されたとき、オペレータによる操作を介することなく、前記画像データ補正手段と前記インク消費量算出手段とによって、変更後の調整データに応じたインク消費量が算出されることを特徴とする。
【0019】
第12の発明は、第11の発明において、
印刷ジョブに含まれる前記ジョブ情報を監視するジョブ情報監視手段を更に備え、
前記ジョブ情報監視手段によって前記ジョブ情報の変更が検知されたとき、オペレータによる操作を介することなく、前記調整データ取得手段と前記画像データ補正手段と前記インク消費量算出手段とによって、変更後のジョブ情報に応じたインク消費量が算出されることを特徴とする。
【0021】
第
13の発明は、印刷対象の画像データを生成する画像データ生成装置と、基材にインクを吐出することによって印刷を行う印刷機本体と該印刷機本体の動作を制御する印刷制御装置とからなるインクジェット印刷装置とを有する印刷システムであって、
前記画像データと印刷に関する属性情報であるジョブ情報とを含む印刷ジョブを取得する印刷ジョブ取得手段と、
印刷が行われる際のインクの吐出量を調整するために前記インクジェット印刷装置で生成された複数の調整データの中から前記ジョブ情報に応じた調整データを取得する調整データ取得手段と、
前記調整データ取得手段によって取得された調整データを用いて前記画像データを補正する画像データ補正手段と、
前記画像データ補正手段による補正後の画像データによって表される画像の印刷に要するインクの量をインク消費量として算出するインク消費量算出手段と
、
前記調整データの変更の有無を監視する調整データ監視手段と
を備え、
前記調整データ監視手段によって前記調整データの変更が検知されたとき、オペレータによる操作を介することなく、前記画像データ補正手段と前記インク消費量算出手段とによって、変更後の調整データに応じたインク消費量が算出されることを特徴とする。
【0022】
第
14の発明は、第
13の発明において、
印刷ジョブに含まれる前記ジョブ情報を監視するジョブ情報監視手段を更に備え、
前記ジョブ情報監視手段によって前記ジョブ情報の変更が検知されたとき、オペレータによる操作を介することなく、前記調整データ取得手段と前記画像データ補正手段と前記インク消費量算出手段とによって、変更後のジョブ情報に応じたインク消費量が算出されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
上記第1の発明によれば、印刷が行われる際のインクの吐出量を印刷に使用されるインクジェット印刷装置毎に調整するためのデータである調整データが印刷ジョブに含まれるジョブ情報に応じて取得され、その調整データを用いて印刷対象の画像データが補正される。そして、補正後の画像データに基づいて、印刷に要するインクの量が見積もられる。このように、実際に印刷が実行されるジョブ情報に応じた調整データを考慮して、インク消費量の見積もりが行われる。従って、インクジェット印刷装置で印刷が行われる際のインクの消費量が従来よりも高い精度で見積もられる。その結果、印刷途中でのインク不足に起因するインクや基材などの無駄の発生が抑制される。また、印刷に要するコストを充分に高い精度で事前に見積もることが可能となる。
また、フラッシングが行われることになっている印刷ジョブの実行に基づくインク消費量の見積もりが行われるときには、フラッシングに基づくインク使用量も算出される。そして、画像の印刷に基づくインク使用量とフラッシングに基づくインク使用量との合計が、印刷が行われる際のインクの総消費量として算出される。このように、フラッシングによって消費されるインクの量も考慮されるので、インク消費量の見積もりが充分に高い精度で行われる。
【0025】
上記第
3から第
6までの発明によれば、印刷対象の画像データが、実際に印刷が実行されるときと同じように補正される。このため、より精度良く、インクジェット印刷装置で印刷が行われる際のインク消費量が見積もられる。
【0026】
上記第
7から第
10までの発明によれば、実際に印刷が実行されるときのインクの液滴量をも考慮して、インク消費量の見積もりが行われる。このため、より精度良く、インクジェット印刷装置で印刷が行われる際のインク消費量が見積もられる。
【0028】
上記第11の発明によれば、
調整データに変更があると、インク消費量を見積もる処理が自動的に再実行される。このため、ユーザーは、調整データの変更を意識することなく、印刷によって消費されるインクの量(見積もり値)を常に精度良く把握することができる。
【0029】
上記第12の発明によれば、ジョブ情報に変更があると、インク消費量を見積もる処理が自動的に再実行される。このため、ユーザーは、ジョブ情報の変更を意識することなく、印刷によって消費されるインクの量(見積もり値)を常に精度良く把握することができる。
【0031】
上記第13の発明によれば、上記第
11の発明と同様の効果が得られる。
【0032】
上記第
14の発明によれば、上記第12の発明と同様の効果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態について説明する。
【0036】
<1.印刷システムの全体構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る印刷システムの全体構成図である。この印刷システムは、印刷物を構成する文字や、ロゴ,絵柄,イラスト等の複数種類の部品を用いた編集処理を行うためのクライアントコンピュータ100と、入稿データに対してRIP処理(ラスタライズ処理)などのデータ処理を施すことによって画像データを生成する画像データ生成装置200と、カラー印刷を実行するインクジェット印刷装置300とによって構成されている。インクジェット印刷装置300は、印刷機本体320とその制御装置である印刷制御装置310とによって構成されている。クライアントコンピュータ100と画像データ生成装置200とインクジェット印刷装置300とは、通信回線400によって互いに通信可能に接続されている。
【0037】
なお、本実施形態におけるインクジェット印刷装置300は、光硬化型(紫外線硬化型)インクジェット印刷装置である。但し、光硬化型以外のインクジェット印刷装置(例えば水性インクを用いた印刷を行うインクジェット印刷装置)にも本発明を適用することができる。
【0038】
この印刷システムによる印刷は、概略的には次のようにして行われる。まず、クライアントコンピュータ100において、各種部品の編集やレイアウトなどが行われることにより、例えば印刷対象をページ記述言語で記述したページデータが生成される。クライアントコンピュータ100で生成されたページデータは、画像データ生成装置200に入稿データとして与えられる。画像データ生成装置200では、入稿データに対してRIP処理などのデータ処理が施される。これにより、印刷用データであるビットマップ形式の画像データが生成される。画像データ生成装置200で生成された画像データはインクジェット印刷装置300に送られる。そして、インクジェット印刷装置300は、その画像データに基づいて印刷を実行する。
【0039】
なお、以下の説明では、印刷対象の画像データとして版毎のTIFF(Tagged Image File Format)データが画像データ生成装置200からインクジェット印刷装置300に送られるものと仮定する。但し、本発明はこれには限定されず、印刷対象の画像データはTIFFデータ以外のデータであっても良い。
【0040】
<2.インクジェット印刷装置の構成>
図2は、本実施形態におけるインクジェット印刷装置300の一構成例を示す模式図である。上述したように、このインクジェット印刷装置300は、印刷機本体320とその制御装置である印刷制御装置310とによって構成されている。
【0041】
印刷機本体320は、印刷用紙等の基材32を供給する巻き出し部31と、基材32を印刷機構内部へと搬送するための第1の駆動ローラ33と、印刷機構内部で基材32を搬送するための複数個の支持ローラ34と、基材32にインクを吐出して印刷を行う印字部35と、印刷後の基材32上のインクを硬化させるUV照射部36と、基材32への印刷の状態を検査する検査部37と、基材32を印刷機構内部から出力するための第2の駆動ローラ38と、印刷後の基材32を巻き取る巻き取り部39とを備えている。
【0042】
印字部35には、W(ホワイト),C(シアン),M(マゼンタ),Y(イエロー),およびK(ブラック)のインクをそれぞれ吐出するW用インクジェットヘッド35w,C用インクジェットヘッド35c,M用インクジェットヘッド35m,Y用インクジェットヘッド35y,およびK用インクジェットヘッド35kが含まれている。各インクジェットヘッド35w,35c,35m,35y,および35kは、ピエゾ素子(圧電素子)の駆動によってインクを吐出する多数のノズルを有している。各ノズルからは、目標とするインクの液滴量に応じた波形の電圧がピエゾ素子に与えられることによってインクが吐出される。なお、印刷機構内部には、各インクジェットヘッド35w,35c,35m,35y,および35kに供給するためのインクを溜めておくインクタンク(不図示)も設けられている。
【0043】
印刷制御装置310は、以上のような構成の印刷機本体320の動作を制御する。印刷制御装置310に印刷出力の指示コマンドが与えられると、印刷制御装置310は、基材32が巻き出し部31から巻き取り部39へと搬送されるよう、印刷機本体320の動作を制御する。そして、基材32の搬送過程において、まず印字部35内の各インクジェットヘッド35w,35c,35m,35y,および35kからのインクの吐出による印字が行われ、次にUV照射部36によってインクの硬化が行われ、最後に検査部37によって印刷状態の検査が行われる。
【0044】
また、本実施形態においては、このインクジェット印刷装置300で印刷が行われた場合のインクの消費量を見積もる旨の指示コマンドがオペレータ(ユーザー)によって印刷制御装置310に与えられると、印刷制御装置310は上述した調整データを考慮して後述するようにインクの消費量を見積もる。すなわち、本実施形態においては、この印刷制御装置310によってインク消費量見積もり装置が実現されている。
【0045】
図3は、本実施形態における印刷制御装置310のハードウェア構成図である。この印刷制御装置310は、CPU311と、ROM312と、RAM313と、補助記憶装置314と、キーボード等の入力操作部315と、表示部316と、ネットワークインタフェース部317とを有している。画像データ生成装置200から通信回線400経由で送られてくる画像データは、ネットワークインタフェース部317を介して印刷制御装置310の内部へと入力される。インク消費量見積もり処理を実行するプログラム(以下、「インク消費量見積もりプログラム」という。)は補助記憶装置314に格納されている。インク消費量見積もり処理の実行が指示されると、インク消費量見積もりプログラムが補助記憶装置314からRAM313へと読み出され、そのRAM313に読み出されたインク消費量見積もりプログラムをCPU311が実行することにより、インク消費量の見積もりが行われる。
【0046】
図4は、インク消費量見積もりプログラムが実行されることによって印刷制御装置310で実現される機能の構成を示す機能ブロック図である。
図4に示すように、印刷制御装置310には、機能的には、印刷ジョブ取得手段510と調整データ取得手段520と画像データ補正手段530とインク消費量算出手段540とフラッシング見積もり手段550とが設けられる。
【0047】
印刷ジョブ取得手段510は、インク消費量の見積もり対象の印刷ジョブに含まれている画像データD1とジョブ情報DJとを取得する。調整データ取得手段520は、上述した調整データDAをジョブ情報DJに応じて取得する。画像データ補正手段530は、調整データDAを用いて画像データD1を補正する。インク消費量算出手段540は、画像データ補正手段530による補正後の画像データD2によって表される画像の印刷に要するインクの量を算出する。フラッシング見積もり手段550は、フラッシングが実行された場合のフラッシングによるインクの使用量をジョブ情報に基づいて算出する。以下、これらの機能的構成要素によって実行されるインク消費量見積もり処理の詳細について説明する。
【0048】
<3.インク消費量見積もり処理>
<3.1 概要>
以下、本実施形態におけるインク消費量見積もり処理について説明する。インク消費量見積もり処理は、上述したように、印刷制御装置310で実行される。但し、インク消費量見積もり処理が印刷制御装置310以外の装置で行われる場合にも本発明を適用することができる。インク消費量見積もり処理が実行される前に、予め印刷ジョブが登録されている必要がある。すなわち、印刷制御装置310の補助記憶装置314などに印刷ジョブが保持されていれば、当該印刷ジョブに基づくインク消費量見積もり処理を実行することができる。ところで、従来のインク消費量見積もり処理では、上述した調整データDAは考慮されていなかった。これに対して、本実施形態においては、調整データDAを考慮してインクの消費量が見積もられる。
【0049】
<3.2 処理手順>
図5は、本実施形態におけるインク消費量見積もり処理の手順を示すフローチャートである。インク消費量見積もり処理の開始後、まず、印刷ジョブの取得が行われる(ステップS10)。具体的には、印刷制御装置310において、補助記憶装置314などに保持されている印刷ジョブがRAM313へと読み出される。
【0050】
印刷ジョブは、印刷対象の画像データ(版毎のTIFFデータ)D1と印刷に関する属性情報であるジョブ情報DJとを含んでいる。ジョブ情報DJには、例えば、基材種類,印刷モード,トーン,基材幅,ページ送り長,オフセット,部数,印刷ページ範囲,フラッシングフラグなどの情報が含まれている。
【0051】
基材種類は、印刷の際に使用される基材の種類である。なお、以下においては、説明の便宜上、基材種類として「普通紙」,「コート紙」,および「透明フィルム」のうちのいずれかの選択が可能であると仮定する。印刷モードは、例えば印刷速度や解像度などの印刷方式のことである。なお、以下においては、説明の便宜上、印刷モードのうち印刷速度のみがインクの消費量に影響を及ぼすものと仮定し、また、印刷速度として「高速」または「低速」のいずれかの選択が可能であると仮定する。
【0052】
トーンは一般的には色調を意味するが、ジョブ情報DJに含まれているトーンの情報は、用意されている複数のトーンテーブルのうちのいずれのトーンテーブルを印刷の際に使用するのかを示す情報である。ここで、トーンテーブルとは、各色のトーン(色調)を調整するために入力階調値と出力階調値との対応関係が定義されたルックアップテーブルのことである。
【0053】
基材幅は、印刷の際に使用される基材の幅である。換言すれば、基材幅は、基材の進行方向に垂直な方向についての基材の長さである。ページ送り長は、基材の進行方向についての1ページの長さである。オフセットは、印刷の開始位置を所定の基準位置からどれだけずらすのかを表す値である。オフセットは、X軸方向(基材の進行方向に垂直な方向)についての基準位置からの距離とY軸方向(基材の進行方向とは逆の方向)についての基準位置からの距離とで表される。
【0054】
部数は、印刷対象の画像データD1に基づく印刷を何回繰り返すのかを表す値である。印刷ページ範囲は、印刷を実行するページの範囲である。印刷ページ範囲は、開始ページと終了ページとで表される。フラッシングフラグは、印刷中にフラッシングを実行するか否かを表す情報である。本実施形態においては、フラッシングフラグがオン(値が「1」)であれば、印刷中にフラッシングが実行され、フラッシングフラグがオフ(値が「0」)であれば、印刷中にフラッシングは実行されない。
【0055】
印刷ジョブの取得後、当該印刷ジョブに含まれている上述のようなジョブ情報DJに基づいて、調整データDAが取得される(ステップS20)。なお、上述したように、本明細書における「調整データ」とは、印刷が行われる際のインクの吐出量を印刷に使用される装置毎に調整するための様々なデータの総称のことである。本実施形態においては、調整データDAは、インクの吐出量すなわちインクの消費量にかかわるものとして、基材に吐出されるインクの量を調整して印刷物の色を調整する「色調整データ」と、インクを吐出してインクジェットヘッドのコンディション調整などプリンタの運用上の調整を行うための「装置調整データ」とを含む。本実施形態においては、調整データDAのうちの「色調整データ」として、各色のトーンを調整するためのトーン調整データと、各ノズルから吐出されるインクの量を調整するためのシェーディング調整データと、各色の濃度を調整するための濃度調整データと、ノズルからインクが吐出される際のインクの液滴量を調整するための液滴量調整データとを含み、また、「装置調整データ」として、フラッシングの実行の可否を示すフラッシング可否データとを含み、ステップS20では、それらを含んだ調整データDAが取得される。
【0056】
トーン調整データは、上述したトーンテーブルによって具現される。トーンテーブルは、模式的には、例えば横軸,縦軸をそれぞれ入力階調値,出力階調値とするグラフによって表される。印刷制御装置310はトーンの情報(入力階調値と出力階調値との対応関係)を登録することが可能となっている。そして、印刷制御装置310でトーンの情報の登録が行われると、トーンテーブルが生成される。トーンテーブルは、例えば印刷制御装置310の補助記憶装置314内に格納されている。このようにして、色毎に、複数のトーンテーブルが用意される。ステップS20では、色毎に、用意された複数のトーンテーブルの中からジョブ情報DJに含まれているトーンの情報に対応するトーンテーブルが取得(選択)される(
図6参照)。
【0057】
シェーディング調整データは、インクの吐出量が調整されるよう色毎かつノズル毎に入力階調値と出力階調値とが対応付けられたシェーディングテーブルによって具現される。トーンテーブルと同様、シェーディングテーブルについても、模式的には、例えば横軸,縦軸をそれぞれ入力階調値,出力階調値とするグラフによって表される。ところで、本実施形態においては、シェーディング処理でのインクの調整量は、基材種類と印刷速度とに基づいて決定される。また、上述したように、インクの吐出量はノズル毎に調整される。従って、各色用のインクジェットヘッドにn個のノズルが設けられていると仮定すると、各色について、
図7に示すように、n個のノズルにそれぞれ対応するn個のシェーディングテーブルの集合によって1つのテーブルセットが構成されている。このようなテーブルセットが、基材種類と印刷速度との組み合わせ毎に設けられている。そして、例えば
図8に示すように、「基材種類と印刷速度との組み合わせ」と「後述する画像データ補正処理で使用するテーブルセット」との対応関係が予め定義されている。以上のような前提の下、ステップS20では、色毎に、ジョブ情報DJに含まれている基材種類の情報とジョブ情報DJに含まれている印刷モード中の印刷速度の情報との組み合わせに対応するテーブルセットが取得される。
図8に示す例では、仮に基材種類がコート紙であって印刷速度が高速であれば、第3のテーブルセットが取得される。
【0058】
濃度調整データは、濃度が調整されるよう色毎に入力階調値と出力階調値とが対応付けられた濃度テーブルによって具現される。トーンテーブルと同様、濃度テーブルについても、模式的には、例えば横軸,縦軸をそれぞれ入力階調値,出力階調値とするグラフによって表される。なお、本実施形態におけるインクジェット印刷装置300では濃度を調整する処理としてベタ濃度を調整する処理と中間調を線形化する処理とが行われるが、ベタ濃度を調整する処理用のテーブルと中間調を線形化する処理用のテーブルとをマージすることによって1つの濃度テーブルが作成されている。本実施形態においては、色毎に複数の濃度テーブルが用意されており、濃度の調整は基材種類と印刷速度とに基づいて行われる。従って、ステップS20では、色毎に、ジョブ情報DJに含まれている基材種類の情報とジョブ情報DJに含まれている印刷モード中の印刷速度の情報との組み合わせに対応する濃度テーブルが取得される。
【0059】
液滴量調整データは、ノズルからインクが吐出される際の複数の液滴サイズのそれぞれの出現率を階調値毎に定めた網テーブルと、インクの吐出の際にピエゾ素子(圧電素子)に与えられる電圧の波形情報とによって具現される。本実施形態におけるインクジェット印刷装置300では、インク吐出時のドットサイズとして3段階のサイズ(Lサイズ,Mサイズ,Sサイズ)が設けられている。そして、網テーブルによって、階調値毎に、Lサイズ,Mサイズ,およびSサイズのそれぞれの出現率が定められている。従って、網テーブルは、模式的には、
図9に示すように、横軸,縦軸をそれぞれ階調値,出現率とするグラフによって表される。なお、
図9において、太実線はLサイズの特性を表し、太点線はMサイズの特性を表し、細実線はSサイズの特性を表している。本実施形態においては、このような網テーブルが予め複数用意されており、印刷の際に使用する網テーブルが基材種類と印刷速度との組み合わせに基づいて決定される。また、各サイズに対応する液滴量は、ピエゾ素子に与えられる電圧の波形によって定まる。従って、印刷制御装置310には、その波形情報が保持されている。本実施形態においては、そのような波形情報がサイズ毎に予め複数用意されており、印刷の際に実際にピエゾ素子に与えられる電圧の波形は基材種類と印刷速度との組み合わせに基づいて決定される。以上のような前提の下、ステップS20では、ジョブ情報DJに含まれている基材種類の情報とジョブ情報DJに含まれている印刷モード中の印刷速度の情報との組み合わせに対応する網テーブルと波形情報とが取得される。なお、網テーブルが1つだけ用意されている場合にも本発明を適用することができ、各サイズにつき波形情報が1つだけ用意されている場合にも本発明を適用することができる。
【0060】
なお、シェーディングテーブル、濃度テーブル、網テーブルについても、印刷制御装置310の補助記憶装置314内に格納されていることは、トーンテーブルと同様である。
【0061】
フラッシング可否データは、フラッシングの実行の可否を示すデータである。本実施形態においては、ジョブ情報DJに含まれているフラッシングフラグがそのままフラッシング可否データとなる。なお、一回のフラッシングでのインク吐出量は、予め印刷制御装置310に設定され、補助記憶装置314に格納されている。
【0062】
以上のような調整データDAの取得が行われた後、印刷ジョブに基づく画像の印字範囲と印刷が実行される際の使用ノズルとを決定する処理である見積もり範囲決定処理が行われる(ステップS30)。その後、ステップS20で取得された調整データDAのうちのトーン調整データとシェーディング調整データと濃度調整データとを用いて画像データ(印刷ジョブに含まれている印刷対象の画像データD1)を補正する処理である画像データ補正処理が行われる(ステップS40)。その後、補正後の画像データD2によって表される画像の印刷によって消費されるインクの量を求める処理であるインク消費量算出処理が行われる(ステップS50)。
【0063】
その後、フラッシング可否データに基づいて、フラッシングを実行するか否かの判定が行われる(ステップS60)。本実施形態においては、具体的には、フラッシングフラグがオンまたはオフのいずれであるのかの判定が行われる。判定の結果、フラッシングフラグがオンであれば、印刷の際にフラッシングが実行されるので、処理はステップS70に進む。一方、フラッシングフラグがオフであれば、印刷の際にフラッシングは実行されないので、処理はステップS80に進む。
【0064】
ステップS70では、フラッシングが実行されることによって使用されるインクの量を見積もる処理であるフラッシング見積もり処理が行われる。なお、フラッシング見積もり処理では、後述するように、画像の印刷に基づくインク使用量(ステップS50で算出されたインク消費量)とフラッシングに基づくインク使用量とを加算することによって総インク消費量が求められる。ステップS70の終了後、処理はステップS80に進む。
【0065】
ステップS80では、例えば印刷制御装置310の表示部316に結果(印刷対象の画像データに基づく印刷が行われた際のインク消費量の見積もり値)が提示される。なお、フラッシングが実行される場合には、フラッシング見積もり処理(ステップS70)で得られた総インク消費量が見積もり値としてユーザーに提示される。一方、フラッシングが実行されない場合には、上述したインク消費量算出処理(ステップS50)で求められたインク消費量が見積もり値としてユーザーに提示される。
【0066】
なお、本実施形態においては、上記ステップS10によって印刷ジョブ取得工程が実現され、上記ステップS20によって調整データ取得工程が実現され、上記ステップS40によって画像データ補正工程が実現され、上記ステップS50によってインク消費量算出工程が実現され、上記ステップS60によってフラッシング判定工程が実現され、上記ステップS70によってフラッシング見積もり工程が実現されている。
【0067】
以下、見積もり範囲決定処理(ステップS30),画像データ補正処理(ステップS40),インク消費量算出処理(ステップS50),およびフラッシング見積もり処理(ステップS70)について詳しく説明する。
【0068】
<3.2.1 見積もり範囲決定処理>
図10は、見積もり範囲決定処理の詳細な手順を示すフローチャートである。見積もり範囲決定処理の開始後、まず、ステップS10(
図5参照)で取得されたジョブ情報DJから、この見積もり範囲決定処理に必要な情報が抽出される(ステップS310)。本実施形態においては、基材幅,ページ送り長,およびオフセットの情報がジョブ情報DJから抽出される。なお、後述するステップS330,S340では、版毎のTIFFデータも使用される。次に、印刷が実行される際の余白の情報が取得される(ステップS320)。余白の大きさは、インクジェット印刷装置の機種毎に定められている。
【0069】
その後、有効印字領域の算出が行われる(ステップS330)。有効印字領域は、基材幅とページ送り長と余白とを考慮して求められる印字可能領域である。基材幅を符号WBで表し、ページ送り長を符号LBで表し、ページの左側の余白を符号S1で表し、ページの右側の余白を符号S2で表し、基準位置を符号Pで表すと、
図11において符号61で示す矩形範囲が有効印字領域となる。なお、
図11では、ノズルを符号60で表し、最大印字幅を符号MPで表し、このインクジェット印刷装置300で使用可能な最大基材幅を符号MBで表している。一例を挙げると、最大基材幅は350mmであり、最大印字幅は322mmであり、左右の余白S1,S2は4mmである。
【0070】
最後に、印字範囲と使用ノズルとが決定される(ステップS340)。このステップS340によって、使用ノズル決定工程が実現されている。ここで、
図12および
図13を参照しつつ、印字範囲および使用ノズルについて説明する。なお、
図12および
図13では、TIFFデータに基づく画像範囲を符号62の矩形領域で表し、印字範囲を符号63の網掛け領域で表している。印字範囲は、オフセットの有無によって異なる。オフセットが設けられていない場合(ジョブ情報DJに含まれているオフセットの値が0である場合)には、
図12に示すように、TIFFデータに基づく画像範囲62の左上座標を基準位置Pに合わせた状態で上記画像範囲62のうち有効印字領域61に含まれている範囲が印字範囲63となる。そして、その印字範囲63に対応するノズル64が使用ノズルとなる。
図12に示す例では、印字範囲63はTIFFデータに基づく画像範囲62に一致している。オフセットが設けられている場合(ジョブ情報DJに含まれているオフセットの値が0以外の値である場合)には、
図13に示すように、TIFFデータに基づく画像範囲62の左上座標がオフセットの値に基づいて基準位置Pからずらされた状態で上記画像範囲62のうち有効印字領域61に含まれている範囲が印字範囲63となる。このようにジョブ情報DJに基づいて印字範囲63が決定され、その印字範囲63に対応するノズル67が使用ノズルとなる。
図13に示す例では、TIFFデータに基づく画像範囲62のうちの一部が印字範囲63となっている。以上のようにして印字範囲と使用ノズルとが決定された後、処理は画像データ補正処理(
図5のステップS40)に進む。
【0071】
<3.2.2 画像データ補正処理>
画像データ補正処理について説明する。なお、ここでは、1つの色に着目して説明する。
図14は、画像データ補正処理の詳細な手順を示すフローチャートである。また、
図15は、画像データ補正処理の流れを模式的に示した図である。画像データ補正処理の開始後、まず、トーン調整が行われる(ステップS410)。ステップS410では、印字範囲画像(上記ステップS340で決定された印字範囲63内の画像)70に含まれる各画素の階調値に対して、ステップS20(
図5参照)で取得されたトーンテーブル71に基づく補正が施される。例えば、
図16に示すように表されるトーンテーブルが取得されている場合において、或る画素の入力階調値(印字範囲画像70に基づく階調値)がV1であれば、トーン調整によって当該画素の出力階調値はV2となる。このようなトーン調整が印字範囲画像70に含まれる全ての画素に対して行われることにより、トーン調整後の画像72が出力される。
【0072】
トーン調整後、シェーディング調整が行われる(ステップS420)。ステップS420では、トーン調整後の画像72に含まれる各画素の階調値に対して、ステップS340(
図10参照)で決定された使用ノズルの情報73を考慮しつつ、ステップS20(
図5参照)で取得されたテーブルセットに含まれる複数のシェーディングテーブル74に基づく補正が施される。すなわち、トーン調整後の画像72に含まれる各画素の階調値は、使用ノズルに対応するシェーディングテーブルに基づいて補正される。トーン調整後の画像72に含まれる全ての画素に対してシェーディング調整が行われることにより、シェーディング調整後の画像75が出力される。
【0073】
シェーディング調整後、濃度調整が行われる(ステップS430)。ステップS430では、シェーディング調整後の画像75に含まれる各画素の階調値に対して、ステップS20(
図5参照)で取得された濃度テーブル76に基づく補正が施される。シェーディング調整後の画像75に含まれる全ての画素に対して濃度調整が行われることにより、濃度調整後の画像77が出力される。濃度調整後、処理はインク消費量算出処理(
図5のステップS50)に進む。
【0074】
なお、本実施形態においては、上記ステップS410によってトーン調整工程が実現され、上記ステップS420によってシェーディング調整工程が実現され、上記ステップS430によって濃度調整工程が実現されている。
【0075】
ところで、この画像データ補正処理においては、トーンテーブルを用いたトーン調整によって得られた出力階調値はシェーディングテーブルを用いたシェーディング調整の際の入力階調値となり、シェーディングテーブルを用いたシェーディング調整によって得られた出力階調値は濃度テーブルを用いた濃度調整の際の入力階調値となる。従って、
図17に示すように表されるトーンテーブル,シェーディングテーブル,および濃度テーブルが使用される場合、印字範囲画像70(
図15参照)に含まれる或る画素の階調値がV1であれば、
図17から把握されるように、濃度調整後の当該画素の階調値はV4となる。なお、本実施形態ではトーンテーブル,シェーディングテーブル,および濃度テーブルを別々に設けているが、それらトーンテーブル,シェーディングテーブル,および濃度テーブルをマージした1種類のテーブルを設けるようにしても良い。
【0076】
<3.2.3 インク消費量算出処理>
図18は、インク消費量算出処理の詳細な手順を示すフローチャートである。このインク消費量算出処理では、画像データ補正処理による補正後の画像データD2によって表される画像(上記ステップS430での濃度調整後の画像)の印刷に要するインクの量が算出される。すなわち、このインク消費量算出処理では、濃度調整後の画像が使用される。
【0077】
まず、このインク消費量算出処理で使用される変数P,T,x,およびyに対する値の設定が行われる(ステップS510)。変数Pは、見積もり範囲内の画素の総数を表す変数である。変数Tは、インク見積もり量の累計値を表す変数である。変数xは、処理中において見積もり対象となっている画素のインデックスを表す変数である。見積もり範囲内にK個の画素が含まれている場合、変数xは1からKまでの値を取る。変数yは、処理中において見積もり対象となっている画素についてのインク見積もり量を表す。ステップS510では、変数Pに濃度調整後の画像の総画素数の値がセットされ、変数Tに「0」がセットされ、変数xに「1」がセットされ、変数yに「0」がセットされる。
【0078】
次に、変数xの値が変数Pの値以下であるか否かが判定される(ステップS520)。判定の結果、変数xの値が変数Pの値以下であれば、処理はステップS530に進む。一方、変数xの値が変数Pの値よりも大きければ、このインク消費量算出処理は終了する。
【0079】
ステップS530では、濃度調整後の画像から、変数xによって表されるインデックスが割り当てられている画素(見積もり対象画素)の階調値が取得される。次に、ステップS20(
図5参照)で取得された網テーブルに基づいて、見積もり対象画素の階調値に対応するドットサイズ毎の出現率(Sサイズの出現率rS,Mサイズの出現率rM,およびLサイズの出現率rS)が求められる(ステップS540)。次に、ステップS20で取得された波形情報(目標とするインクの液滴量に応じてピエゾ素子に与えられる電圧の波形の情報)に基づいて、各ドットサイズに対応する液滴量(Sサイズに対応する液滴量aS,Mサイズに対応する液滴量aM,およびLサイズに対応する液滴量aL)が求められる(ステップS550)。
【0080】
その後、次式(1)によって、見積もり対象画素についてのインク見積もり量yが算出される(ステップS560)。
y=aS×rS+aM×rM+aL×rL ・・・(1)
【0081】
その後、変数Tの値に、ステップS560で算出された変数yの値が加算される(ステップS570)。また、変数xの値に「1」が加算される(ステップS580)。その後、処理はステップS520に戻る。
【0082】
以上のようにして、見積もり範囲内の画素の総数に等しい回数だけステップS530〜S580の処理が繰り返される。そして、変数xの値が変数Pの値(見積もり範囲内の画素の総数に等しい値)よりも大きくなった時に、インク消費量算出処理が終了する。その時の変数Tの値が、該当色についての1部当たりのインク量となる。そのインク量にジョブ情報DJの部数を乗じて得られる値が、このインク消費量算出処理による出力結果としてのインク消費量となる。このようにして、色毎にインク消費量が算出される。
【0083】
<3.2.4 フラッシング見積もり処理>
図19は、フラッシング見積もり処理の詳細な手順を示すフローチャートである。このフラッシング見積もり処理は、色毎に行われる。但し、フラッシングが行われる色(インクの色)についてのみフラッシング見積もり処理は行われる。例えば、白色のインクのみのフラッシングが行われる装置では、白色についてのみフラッシング見積もり処理が行われる。また、以下に説明する手順は一例であって、実際の手順は、各装置で行われるフラッシングの仕様に応じて決定すれば良い。
【0084】
フラッシング見積もり処理の開始後、まず、ステップS10(
図5参照)で取得されたジョブ情報DJから、このフラッシング見積もり処理に必要な情報が抽出される(ステップS710)。本実施形態においては、印刷対象ページ数,ページ送り長,部数,および基材幅の情報がジョブ情報DJから抽出される。なお、印刷対象ページ数は、印刷ページ範囲の情報から求められる。次に、フラッシングパラメータの取得が行われる(ステップS720)。本実施形態においては、フラッシングパラメータとして、フラッシング間隔とフラッシング1回当たりのインク吐出量とが取得される。フラッシング間隔は、例えば2mに設定されている。また、1回のフラッシングでは例えばLサイズのドットで8ライン分のインク吐出が行われ、その処理に要するインクの量が上述のフラッシング1回当たりのインク吐出量である。
【0085】
次に、ページ送り長がフラッシング間隔未満であるか否かの判定が行われる(ステップS730)。判定の結果、ページ送り長がフラッシング間隔未満であれば、処理はステップS740に進む。一方、ページ送り長がフラッシング間隔以上であれば、処理はステップS760に進む。
【0086】
ステップS740では、ジョブ印字長の算出が行われる。ジョブ印字長は、印字対象ページ数とページ送り長と部数とを乗ずることによって算出される。その後、回数(フラッシングの実行回数)の算出が行われる(ステップS750)。回数は、ジョブ印字長をフラッシング間隔で除することによって算出される。ステップS750の終了後、処理はステップS770に進む。
【0087】
ステップS760でも、回数の算出が行われる。但し、ステップS760では、ステップS750とは異なり、回数は、印字対象ページ数と部数とを乗ずることによって算出される。ステップS760の終了後、処理はステップS770に進む。
【0088】
ステップS770では、フラッシングによるインク使用量の算出が行われる。このインク使用量は、フラッシング1回当たりのインク吐出量と回数(ステップS750またはステップS760で算出された回数)とを乗ずることによって算出される。最後に、総インク消費量の算出が行われる(ステップS780)。総インク消費量は、ステップS50(インク消費量算出処理)で算出されたインク消費量とステップS770で算出されたインク使用量とを加算することによって求められる。ステップS780の終了後、処理は上述したステップS80(
図5参照)に進む。
【0089】
<4.効果>
本実施形態によれば、印刷が行われる際のインクの吐出量を印刷に使用されるインクジェット印刷装置毎に調整するためのデータである調整データDAが印刷ジョブに含まれるジョブ情報DJに応じて取得され、その調整データDAを用いて印刷対象の画像データD1が補正される。これにより、印刷対象の画像データD1が、実際に印刷が実行されるときと同じように補正される。そして、補正後の画像データD2に基づいて、印刷に要するインクの量が見積もられる。このように、調整データDAを考慮して、インク消費量の見積もりが行われる。従って、インクジェット印刷装置で印刷が行われる際のインクの消費量が従来よりも高い精度で見積もられる。
【0090】
また、フラッシングが行われることになっている印刷ジョブの実行に基づくインク消費量の見積もりが行われるときには、フラッシングに基づくインク使用量も算出される。そして、画像の印刷に基づくインク使用量とフラッシングに基づくインク使用量との合計が、実際に消費される総インク量として算出される。このように、フラッシングによって消費されるインクの量も考慮されるので、インク消費量の見積もりが充分に高い精度で行われる。
【0091】
以上のようにインク消費量の見積もり精度が向上する結果、印刷途中でのインク不足に起因するインクや基材などの無駄の発生が抑制される。また、印刷に要するコストを充分に高い精度で事前に見積もることが可能となる。
【0092】
なお、上記実施形態においては、色調整データとして、各色のトーンを調整するためのトーン調整データと、前記インクジェット印刷装置の各ノズルから吐出されるインクの量を調整するためのシェーディング調整データと、各色の濃度を調整するための濃度調整データとを用いているが、これら以外のデータを用いることもできる。例えば、ノズルヘッドの駆動電圧を調整するような場合にはそのデータを用いてもよい。また、インクジェット印刷装置の設定によっては、それらのデータの一部のみ使用する設定であってもよい。例えば、トーン調整データだけを使用して調整して印刷する設定であってもよい。この場合には、インクジェット印刷装置はシェーディング調整データと、濃度調整データとに関しては、調整そのものを行わないで印刷を行うように動作する。ここで、「調整そのものを行わない」とは、それぞれの調整データを初期値すなわちリニアテーブルとして、調整と同じ動作を行うことを意味する。そしてこの設定がなされた場合のインク消費量の見積もりは、上述の印刷動作を行う場合と同じ条件で、シェーディング調整データと、濃度調整データとを初期値として、その初期値で調整して上述と同じ見積もり動作をおこなうことになる。またあるいは、トーン調整データとシェーディング調整データと濃度調整データのすべてを調整せず、初期値を用いて調整と同じ動作を行って印刷を行う場合であってもよい。これにより、インクジェット印刷装置の設定と同じ条件でインク消費量を見積もることができ、インク消費量の見積もり精度が向上する。
【0093】
<5.変形例>
上記実施形態の変形例について説明する。同じ画像データを用いて印刷が行われる場合であっても、ジョブの設定(印刷速度など)や調整データDAによってインクの消費量は変化する。従って、インク消費量の見積もりが行われた後にジョブの設定や調整データDAに変更があった場合、再度インク消費量の見積もりが行われなければ、実際の印刷によって消費されるインクの量を正しく把握することはできない。しかしながら、上記実施形態においては、インク消費量見積もり処理はオペレータ(ユーザー)の指示によって実行されることを前提としている。従って、ジョブ情報DJや調整データDAに変更があった場合、予測されるインク消費量を正しく把握するためには、印刷制御装置310で再びインク消費量見積もり処理が実行されるよう、オペレータによる再度の操作が必要となる。そこで、本変形例においては、ジョブ情報DJや調整データDAに変更があった場合にオペレータによる操作を介することなく自動的にインク消費量見積もり処理が再実行されるよう印刷制御装置310が構成されている。
【0094】
図20は、本変形例における印刷制御装置310で実現される機能の構成を示す機能ブロック図である。本変形例における印刷制御装置310には、機能的な構成要素として、上記実施形態における構成要素(
図4参照)に加えて、ジョブ情報監視手段570と調整データ監視手段580とが設けられている。
【0095】
ジョブ情報監視手段570は、印刷ジョブに含まれているジョブ情報DJを監視する。そして、ジョブ情報監視手段570は、ジョブ情報DJの内容に変更があると、印刷ジョブ取得手段510と調整データ取得手段520と画像データ補正手段530とインク消費量算出手段540とフラッシング見積もり手段550とによって構成されるインク消費量見積もり部500に対して、変更後のジョブ情報DJを用いてインクの消費量を見積もる旨の指示コマンドを与える。これにより、上述したインク消費量見積もり処理がステップS20(
図5参照)から再実行される。このとき、フラッシングフラグがオンであれば、調整データ取得手段520と画像データ補正手段530とインク消費量算出手段540とフラッシング見積もり手段550とによってインク消費量の算出が行われ、フラッシングフラグがオフであれば、調整データ取得手段520と画像データ補正手段530とインク消費量算出手段540とによってインク消費量の算出が行われる。このように、ジョブ情報監視手段570によってジョブ情報DJの内容の変更が検知されると、オペレータによる操作を介することなく、変更後のジョブ情報DJに応じたインク消費量が見積もられる。
【0096】
調整データ監視手段580は、調整データDAの変更の有無を監視する。そして、調整データ監視手段580は、調整データDAに変更があると、上述のインク消費量見積もり部500に対して、変更後の調整データDAを用いてインクの消費量を見積もる旨の指示コマンドを与える。調整データDAは見積もり範囲決定処理には影響を及ぼさないので、上述したインク消費量見積もり処理がステップS40(
図5参照)から再実行される。このとき、フラッシングフラグがオンであれば、画像データ補正手段530とインク消費量算出手段540とフラッシング見積もり手段550とによってインク消費量の算出が行われ、フラッシングフラグがオフであれば、画像データ補正手段530とインク消費量算出手段540とによってインク消費量の算出が行われる。このように、調整データ監視手段580によって調整データDAの変更が検知されると、オペレータによる操作を介することなく、変更後の調整データDAに応じたインク消費量が見積もられる。
【0097】
以上のように、本変形例によれば、ジョブ情報DJや調整データDAに変更があると、自動的にインク消費量見積もり処理が再実行される。このため、ユーザーは、ジョブ情報DJや調整データDAの変更を意識することなく、印刷によって消費されるインクの量(見積もり値)を常に精度良く把握することができる。
【0098】
<6.その他>
上記実施形態(変形例を含む)では、インクジェット印刷装置300に含まれる印刷制御装置310でインク消費量見積もり処理が行われていたが、本発明はこれに限定されない。インクジェット印刷装置300とは独立した装置でインク消費量見積もり処理が行われる場合にも、本発明を適用することができる。