(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
電動補助自転車において、配線等をダウンチューブ内に通す構成が採用される場合、ダウンチューブの前端部に開口部が形成され、この開口部から配線等がダウンチューブ内に通される。このような構成では、ダウンチューブの前端部の開口部からダウンチューブ内に、水が入ることがある。ダウンチューブ内に入った水を排出するための構成の例として、ブラケットの前壁部にダウンチューブが貫通するようなサイズの穴を設け、その穴から水を排出する構成が考えられる(この構成については、比較例の車体フレームとして後に詳述する)。しかしながら、そのような大きなサイズの穴をブラケットに形成すると、ブラケットの強度(つまり車体フレームの、駆動ユニットを懸架する部分の強度)が不足するおそれがある。
【0020】
これに対し、以下に説明するように、本発明の実施形態によれば、車体フレームの駆動ユニットを懸架する部分の強度を十分に向上させることができる。
【0021】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態による電動補助自転車を説明する。以下で参照する図面において、同一の構成要素には同一の参照符号を付すこととし、その構成要素についての説明は繰り返さない。また、各図中に示されている構成要素の寸法は、各構成要素の実際の寸法や、構成要素同士の実際の寸法比率を必ずしも忠実に表してはいない。なお、以下の説明および図面における、前、後、左、右、上、下は、それぞれ電動補助自転車のサドル(シート)に着座した乗員から見たときの前、後、左、右、上、下を意味する。言うまでもないが、本発明は以下に例示する実施形態に限定されるものではない。
【0022】
[電動補助自転車の概略構成]
図1および
図2を参照しながら、本実施形態における電動補助自転車1を説明する。
図1は、電動補助自転車1を模式的に示す左側面図である。
図2は、電動補助自転車1の車体フレーム10を模式的に示す左側面図である。
【0023】
電動補助自転車1は、
図1に示すように、前後方向に延びる車体フレーム10と、車体フレーム10に取り付けられた駆動ユニット20とを備える。
【0024】
車体フレーム10は、
図1および
図2に示すように、ヘッドパイプ11、ダウンチューブ12、シートチューブ13、ブラケット14、一対のチェーンステイ15および一対のシートステイ16を含む。車体フレーム10は、典型的には、金属材料(例えばアルミニウム合金)から形成されている。
【0025】
ヘッドパイプ11は、電動補助自転車1の前部に配置されている。ヘッドパイプ11には、ダウンチューブ12の前端部が接続されている。ダウンチューブ12は、ヘッドパイプ11から斜め下後方に延びている。ダウンチューブ12の後端部に、シートチューブ13が接続されている。シートチューブ13は、ダウンチューブ12の後端部から斜め上後方に延びている。
【0026】
ブラケット14は、
図2に示すように、ダウンチューブ12の後端部に取り付けられている。ブラケット14の後端部に、一対のチェーンステイ15が接続されている。一対のチェーンステイ15は、後輪3を左右から挟むように配置されている。各チェーンステイ15の後端部には、各シートステイ16の一方の端部が接続されている。一対のシートステイ16は、後輪3を左右から挟むように配置されている。各シートステイ16の他方の端部は、シートチューブ14の上端部に接続されている。
【0027】
ヘッドパイプ11には、ハンドルステム4が回転自在に挿入されている。ハンドルステム4の上端部には、ハンドル5が固定されている。ハンドルステム4の下端部には、フロントフォーク6が固定されている。フロントフォーク6の下端部には、前輪2が車軸2aによって回転可能に支持されている。また、ハンドルステム4の上端部には、前輪2の上方に位置するようにチャイルドシート(フロントチャイルドシート)50が取り付けられている。
【0028】
シートチューブ13は、円筒状である。シートチューブ13には、シートパイプ7が挿入されている。シートパイプ7の上端部には、シート8が取り付けられている。
【0029】
一対のチェーンステイ16の後端部には、後輪3が車軸3aによって回転可能に支持されている。後輪3の右方には、車軸3aと同軸に従動スプロケット32が配置されている。従動スプロケット32は、一方向クラッチ(不図示)を介して後輪3に連結されている。後輪3の上方には、リアキャリア60が設けられている。
【0030】
駆動ユニット20は、ブラケット14に懸架されている。駆動ユニット20は、例えば、締結金具(不図示)によってブラケット14に取り付けられている。駆動ユニット20は、電動モータ21と、電動モータ21を収容し、駆動ユニット20の外形を規定するハウジング22とを含む。駆動ユニット20は、さらに、電動モータ21を制御するコントローラ(モータ制御部:不図示)を含む。
【0031】
ハウジング22の前部には、クランク軸23が左右方向に貫通している。クランク軸23は、ハウジング22に対して複数の軸受け(不図示)を介して回転可能に支持されている。
【0032】
クランク軸23の両端には、クランクアーム24および25が取り付けられている。クランクアーム24および25の先端部には、ペダル26および27が取り付けられている。乗員がペダル26および27を踏み込むことにより、クランク軸23が回転する。
【0033】
クランク軸23と同軸に、駆動スプロケット31が配置されている。駆動スプロケット31と従動スプロケット32との間に、チェーン34が巻き掛けられている。また、チェーン34は、補助スプロケット33にも巻き掛けられている。駆動スプロケット31および補助スプロケット33は、チェーン34を介して、後輪3に駆動力を伝達する。具体的には、乗員がペダル26および27を踏み込むことにより発生するペダル踏力は、駆動スプロケット31を回転させ、チェーン34を介して、後輪3を前転方向に回転させる駆動力として後輪3に伝達される。また、電動モータ21が作動することにより発生する回転力は、補助スプロケット33を回転させ、チェーン34を介して、後輪3を前転方向に回転させる駆動力として後輪3に伝達される。これにより、乗員がペダル26および27を踏み込むことにより発生するペダル踏力を、電動モータ21から出力される駆動力によってアシストすることができる。
【0034】
車体フレーム10には、チェーンケース40が取り付けられている。チェーンケース40は、チェーン34および駆動ユニット20の右側を覆っている。
【0035】
シートチューブ13の後方には、バッテリユニット35が配置されている。バッテリユニット35は、駆動ユニット20の電動モータ21に電力を供給する。バッテリユニット35は、バッテリおよびバッテリ制御部(いずれも不図示)を有する。バッテリは、充放電可能な充電池である。バッテリ制御部は、バッテリの充放電を制御するとともに、バッテリの出力電流および残容量等を監視する。バッテリユニット35と駆動ユニット20との間に、バッテリから電動モータ21へ電力を供給する電力線が設けられる。
【0036】
電動補助自転車1は、さらに、ダウンチューブ12内を通る少なくとも1つの配線36を備える。少なくとも1つの配線36は、例えば、駆動ユニット20から延びる(つまり駆動ユニット20に電気的に接続された)配線および/またはバッテリユニット35から延びる(つまりバッテリユニット35に電気的に接続された)配線を含む。また、ここでは図示していないが、少なくとも1つのワイヤが、ダウンチューブ12内を通るように設けられてもよい。ワイヤは、例えば、後輪3を制動するためのブレーキ用のブレーキワイヤや、シフトワイヤである。
【0037】
これらの配線36およびワイヤは、
図2に示すように、ダウンチューブ12の前端部における下面に形成された開口部12xからダウンチューブ12内に通される。
図3に、配線36などを通すための開口部12xの例を示す。
図3は、ダウンチューブ12の前端部を下方から見た図である。
図3に示す例では、1つの配線36が開口部12xからダウンチューブ12内に通されているが、勿論、複数の配線36が開口部12xからダウンチューブ12内に通されてもよい。
【0038】
[車体フレームの駆動ユニットを懸架する部分の構造]
図2に加え、
図4から
図10も参照しながら、車体フレーム10のブラケット14周辺の構造をより具体的に説明する。
【0039】
図4および
図5は、それぞれブラケット14周辺を示す側面図および斜視図である。ブラケット14は、
図4および
図5に示すように、前壁部14aと、上壁部14bと、一対の側壁部14cとを有する。
【0040】
前壁部14aは、ブラケット14の前部に位置している。前壁部14aは、プレート状であり、ダウンチューブ12の後端面に当接する部分を含む。ダウンチューブ12の後端面は、前壁部14aに、例えば溶接によって接合されている。
【0041】
上壁部14bは、ブラケット14の上部に位置している。上壁部14bは、シートチューブ13の下端面に当接する部分を含む。シートチューブ13の下端面は、上壁部14bに、例えば溶接によって接合されている。
【0042】
一対の側壁部14cは、ブラケット14の側部(右側部および左側部)に位置している。一対の側壁部14cは、互いに対向しており、左右方向に所定の間隔で配置されている。それぞれの側壁部14cには、締結金具を通すための開口部14coが形成されている。なお、開口部14coの数や配置は、
図4および
図5などに示す例に限定されるものではない。
【0043】
車体フレーム10は、
図2、
図4および
図5に示すように、ダウンチューブ12の後端部とブラケット14の前壁部14aとを結合するガセット(補強部材)17と、ダウンチューブ12の後端部とシートチューブ13の下端部とを結合するガセット(補強部材)18とをさらに含む。以下では、前者のガセット17を「下側ガセット」と呼び、後者のガセット18を「上側ガセット」とも呼ぶ。
【0044】
下側ガセット17は、具体的には、ダウンチューブ12の後端部における下面と、ブラケット14の前壁部14aの、ダウンチューブ12の後端面よりも下方に(つまりダウンチューブ12の下面よりも下方に)位置する部分とを結合する。下側ガセット17は、典型的には金属材料(例えばアルミニウム合金)から形成されている。下側ガセット17は、ダウンチューブ12およびブラケット14に対して例えば溶接により接合されている。
【0045】
下側ガセット17は、左右方向および上下方向に平行な断面が略U字状となる形状を有しており(後述する
図8も参照されたい)、底部17aと、底部17aの左右方向における両端部からそれぞれ上方に延びる一対の側壁部17bとを含む。側壁部17bの高さは、前部から後部に向かうにつれて大きくなる。側壁部17bの上端面がダウンチューブ12に接合されている。また、底部17aおよび側壁部17bの後端面が、ブラケット14の前壁部14aに接合されている。
【0046】
上側ガセット18は、具体的には、ダウンチューブ12の後端部における上面と、シートチューブ13の下端部における外周面とを結合する。上側ガセット18は、典型的には金属材料(例えばアルミニウム合金)から形成されている。上側ガセット18は、ダウンチューブ12およびシートチューブ13に対して例えば溶接により接合されている。
【0047】
ここで例示する構成では、ブラケット14の前壁部14aと上壁部14cとの間に、円筒状の部材19が配置されており、ブラケット14、ダウンチューブ12およびシートチューブ13は、この部材19にも接合されている。部材19は、典型的には金属材料(例えばアルミニウム合金)から形成されている。部材19は、省略されてもよい。
【0048】
図6および
図7は、ダウンチューブ12の後端面とブラケット14の前壁部14aとの接合箇所周辺を示す斜視図である。
図6では、ダウンチューブ12の後端部における下面の形状を示すために、下側ガセット17の図示を省略している。
【0049】
図6に示すように、ダウンチューブ12の後端部は、下面に形成された開口部(以下では「第1開口部」と呼ぶ)12oを有する。
図6に示す例では、第1開口部12oは、下面の最後端に位置しており、2つの角を丸めた矩形状である。
【0050】
図7に示すように、下側ガセット17の下面には、開口部(以下では「第2開口部」と呼ぶ)17oが形成されている。
図7に示す例では、第2開口部17oは、下面の最後端に位置しており、2つの角を丸めた矩形状である。
【0051】
図8は、ダウンチューブ12の後端面とブラケット14の前壁部14aとの接合箇所周辺を示す図である。
図8では、ブラケット14の前壁部14aの形状を示すために、ダウンチューブ12の図示を省略している。
【0052】
図8に示すように、前壁部14aは、穴(貫通孔)14aoを有する。この穴14aoには、少なくとも1つの配線36が通される。
図8に示す例では、穴14aoは、前壁部14aの中央付近に形成されており、4つの角を丸めた矩形状である。
【0053】
図9は、前壁部14aをダウンチューブ12とは反対側から見た(
図4中の方向D1から見た)図である。
図9中には、ダウンチューブ12の後端面および下側ガセット17の後端面が破線で示されている。
【0054】
ダウンチューブ12および下側ガセット17の、前壁部14aに対する接合形状は、ダウンチューブ12の前壁部14aに接する部分(つまりダウンチューブ12の後端面)と、下側ガセット17の前壁部14aに接する部分(つまり下側ガセット17の後端面)とによって規定される。ここで、上記の接合形状は、具体的には、
図10に示すように、ダウンチューブ12の後端面12rsと下側ガセット17の後端面17rsとを合わせた形状のうちの、外周を規定する部分(図中にハッチングを付している部分)を意味している。
【0055】
図9および
図10に示すように、前壁部14aの穴14aoの面積は、ダウンチューブ12および下側ガセット17の前壁部14aに対する接合形状の内側の面積よりも小さい。また、
図9および
図10からわかるように、前壁部14aをその法線方向から見たとき、前壁部14aの穴14aoは、接合形状の内側に位置している。
【0056】
ここで、本実施形態における車体フレーム10の構成を採用することにより得られる利点を、比較例の車体フレームと比較しながら説明する。
図11および
図12に、比較例の車体フレーム910を示す。
図11は、車体フレーム910を示す右側面図であり、
図12は、車体フレーム910のブラケット914周辺を示す斜視図である。
【0057】
比較例の車体フレーム910は、
図11および
図12に示すように、ヘッドパイプ911、ダウンチューブ912、トップチューブ917、シートチューブ913、ブラケット914、一対のチェーンステイ915および一対のシートステイ916を含む。
【0058】
ヘッドパイプ911は、車体フレーム910の前部に配置されている。ヘッドパイプ911には、ダウンチューブ912の前端部が接続されている。ダウンチューブ912は、ヘッドパイプ911から斜め下後方に延びている。ダウンチューブ912の前端部には、配線等を通すための開口部912xが形成されている。ダウンチューブ912の後端部に、シートチューブ913が接続されている。シートチューブ913は、ダウンチューブ912の後端部から斜め上後方に延びている。ダウンチューブ912の上方に、トップチューブ917が設けられている。トップチューブ917の前端部は、ヘッドパイプ911に接続されている。トップチューブ917の後端部は、シートチューブ913の中央部付近に接続されている。
【0059】
ブラケット914は、ダウンチューブ912の後端部に取り付けられている。ブラケット914の後端部に、一対のチェーンステイ915が接続されている。各チェーンステイ915の後端部には、各シートステイ916の一方の端部が接続されている。各シートステイ916の他方の端部は、シートチューブ914の上端部に接続されている。
【0060】
ブラケット914は、ブラケット914の前部に位置する前壁部914a、ブラケット914の上部に位置している上壁部914b、および、ブラケット914の側部に位置する一対の側壁部914cを有する。
【0061】
図12に示すように、比較例の車体フレーム910では、ブラケット914の前壁部914aには、ダウンチューブ912の後端部が貫通するサイズの穴914aoが形成されており、ダウンチューブ912の外周面がブラケット914の穴914aoの内周面に当接する。つまり、ダウンチューブ912の外周面がブラケット914に接合されている。
図13には、ダウンチューブ912の外周面のうちのブラケット914の穴914aoに当接する部分(つまりブラケット914に接合される部分)912bを示している。
【0062】
図11および
図12に示す比較例の車体フレーム910では、ダウンチューブ912の前端部の開口部912xからダウンチューブ912内に入った水を、ブラケット914の前壁部914の穴914aoから排出することができる。
【0063】
しかしながら、比較例の車体フレーム910では、前壁部914にダウンチューブ912と同じサイズの開口部914aoが形成されているので、ブラケット914の強度(つまり車体フレーム910の駆動ユニットを懸架する部分の強度)が不足するおそれがある。
【0064】
これに対し、本実施形態の電動補助自転車1では、既に説明したように、ダウンチューブ12の後端面がブラケット14の前壁部14aに当接する。そのため、ブラケット14の前壁部14aに形成される穴(ダウンチューブ内に配置される配線36を通すための穴)は、比較例の車体フレーム910の場合とは異なり、ダウンチューブ12が貫通するようなサイズである必要はない。従って、前壁部14aの穴14aoを従来よりも小さくしてブラケット14の強度(つまり駆動ユニット20を懸架する部分の強度)を向上させることができる。また、ダウンチューブ12の外周面ではなく後端面をブラケット14の前壁部14aの前面に穴14aoの縁から径方向に距離を置いて当接させているので、ダウンチューブ12とブラケット14との接合部(溶接部)の断面形状がL字状でなくT字状となる。そのため、接合部に曲げモーメントが作用してもダウンチューブ12の後端面より内側の前壁部14aが抵抗となって穴14aoの縁が変形しにくくなるので、ダウンチューブ12とブラケット14との溶接部および溶接部周辺の強度を高くすることができる。もし接合部の断面形状がL字状であると、即ち、ダウンチューブ12が穴14aoの縁に接合されていると、曲げモーメントが作用したときに穴14aoは変形しやすい。
【0065】
さらに、本実施形態の電動補助自転車1は、ダウンチューブ12の後端部における下面と、ブラケット14の前壁部14aにおけるダウンチューブ12の後端面よりも下方に位置する部分(つまりダウンチューブ12の下面よりも下方に位置する部分)とを結合する下側ガセット17を備えているので、ダウンチューブ12とブラケット14との溶接部および溶接部周辺の強度をいっそう高くすることができる。
【0066】
また、上述したように、車体フレーム10における駆動ユニット20を懸架する部分(ブラケット14)の強度が向上したり、ダウンチューブ12とブラケット14との溶接部および溶接部周辺の強度が向上したりする結果、懸架部分周辺のフレーム剛性も向上する。
【0067】
また、本実施形態の電動補助自転車1では、ダウンチューブ12の後端部が、下面に形成された第1開口部12oを有しているので、ダウンチューブ12内に入った水をこの第1開口部12oから下側ガセット17内に落とし、下側ガセット17内を経由させて外部に排出することができる。
【0068】
本実施形態のように、下側ガセット17の下面に第2開口部17oが形成されていると、下側ガセット17内に落ちた水をこの第2開口部17oから外部に排出することができる。
【0069】
既に説明したように、ダウンチューブ12および下側ガセット17の、前壁部14aに対する接合形状は、ダウンチューブ12が前壁部14aに接する部分(つまりダウンチューブ12の後端面12rs)と、下側ガセット17が前壁部14aに接する部分(つまり下側ガセット17の後端面17rs)とによって規定される。前壁部14aの穴14aoの面積が、この接合形状の内側の面積よりも小さいと、ブラケット14の強度(車体フレーム10の駆動ユニット20を懸架する部分の強度)を十分に向上させることができる。前壁部14aの穴14aoの面積が小さいほど、ブラケット14の強度を向上させる効果が高くなる。ただし、前壁部14aの穴14aoの面積が小さすぎると、配線36やワイヤを穴14aoに通しにくくなることがある。そのため、前壁部14aの穴14aoの面積は、所望する強度向上効果の度合と、配線36および/またはワイヤの通し易さ(配線36およびワイヤの径、前壁部14aの角度等に依存する)とを考慮して決定されることが好ましい。
【0070】
駆動ユニット20を懸架する部分(ブラケット14)の強度向上の観点からは、前壁部14aをその法線方向から見たとき、前壁部14aの穴14aoは、
図9および
図10に示したように、接合形状の内側に位置していることが好ましい。前壁部14aの穴14aoの一部が接合形状の外側に位置していると、前壁部14aに対するダウンチューブ12および/または下側ガセット17の接合面積が小さくなる(つまり全周接合でなくなる)ので、懸架部分の強度が低下するおそれがある。これに対し、前壁部14の穴14aoが接合形状の内側に位置していると、そのような接合面積の減少がない(つまり全周接合となる)ので、懸架部分の強度を十分に高く維持することができる。本願明細書において、「前壁部14aの穴14aoが接合形状の内側に位置する」とは、
図14に示すように、前壁部14aの穴14aoの輪郭の一部が、接合形状の内周に重なる場合も含んでいる。
【0071】
前壁部14aの穴14aoの形状は、
図8などに示した形状に限定されない。穴14aoは、矩形状、円形状、楕円形状などであってもよい。
【0072】
なお、
図6には、ダウンチューブ12の第1開口部12oが、下面の最後端に位置している構成を例示したが、第1開口部12oの位置はこの例に限定されない。第1開口部12oは、
図15(a)に示すように、ダウンチューブ12の下面の最後端に位置する切り欠き部であってもよいし、
図15(b)に示すように、ダウンチューブ12の下面において最後端よりもやや前方に位置する穴であってもよい。
図15(a)に示す例では、第1開口部12oは、2つの角を丸めた矩形状であり、
図15(b)に示す例では、第1開口部12oは、4つの角を丸めた矩形状である。勿論、第1開口部12oの形状は、
図15(a)および(b)に示す例に限定されない。第1開口部12oは、矩形状、円形状、楕円形状などであってもよい。第1開口部12oのサイズ(面積)にも、特に制限はない。
【0073】
また、
図7には、下側ガセット17の第2開口部17oが、下面の最後端に位置している構成を例示したが、第2開口部17oの位置はこの例に限定されない。第2開口部17oは、
図16(a)に示すように、下側ガセット17の下面の最後端に位置する切り欠き部であってもよいし、
図16(b)に示すように、下側ガセット17の下面の略中央に位置する穴であってもよいし、
図16(c)に示すように、下側ガセット17の下面の前端に位置する切り欠き部であってもよい。
図16(a)および(c)に示す例では、第2開口部17oは、2つの角を丸めた矩形状であり、
図16(b)に示す例では、第2開口部17oは、4つの角を丸めた矩形状である。勿論、第2開口部17oの形状は、
図16(a)(b)および(c)に示す例に限定されない。第2開口部17oは、矩形状、円形状、楕円形状などであってもよい。第2開口部17oのサイズ(面積)にも特に制限はない。
【0074】
[チェーンケース]
図17および
図18を参照しながら、電動補助自転車1におけるチェーンケース40の好適な構成の例を説明する。
図17は、電動補助自転車1のチェーンケース40周辺を示す右側面図であり、
図18は、チェーンケース40を示す右側面図である。
【0075】
図17および
図18に示すように、チェーンケース40は、前部チェーンカバー(第1カバー)41と、後部チェーンカバー(第2カバー)42と、駆動ユニットカバー(第3カバー)43とを有する。前部チェーンカバー41、後部チェーンカバー42および駆動ユニットカバー43のそれぞれは、典型的には、樹脂材料から形成されている。
【0076】
前部チェーンカバー41は、
図17および
図18に示すように、前後方向に延びている。前部チェーンカバー41は、チェーンケース40の前部および中間部において、チェーン34を覆っている。また、前部チェーンカバー41は、駆動ユニット20の前部も覆っている。
【0077】
図19も参照しながら、前部チェーンカバー41をより具体的に説明する。
図19(a)、(b)および(c)は、それぞれ、前部チェーンカバー41を上方から見た図、右側方から見た図および下方から見た図である。
【0078】
前部チェーンカバー41は、
図19(a)、(b)および(c)に示すように、チェーンケース40の前部に位置する第1部分41p1と、第1部分41p1から後方に延び、チェーンケース40の中間部に位置する一対の第2部分41p2とから構成される。
【0079】
第1部分41p1は、チェーン34の、駆動スプロケット31に噛み合っている部分と、駆動ユニット20の前部とを覆っている。第1部分41p1には、クランク軸23が通る穴41hが形成されている。
【0080】
一対の第2部分41p2は、チェーン34の、駆動スプロケット31に噛み合っている部分から後方に延びている部分を覆っている。各第2部分41p2の後部には、開口部41poが形成されている。
【0081】
前部チェーンカバー41の外周縁41eは、内側(車体フレーム10側)に向かって屈曲している。以下では、前部チェーンカバー41の外周縁41eを、前部チェーンカバー41の「縁部」とも呼ぶ。縁部41eには、
図19(a)および(c)に示すように、2つの開口部41eoが形成されている。これらの開口部41eoは、前部チェーンカバー41を車体フレーム10に固定するために用いられる。具体的には、前部チェーンカバー41は、車体フレーム10に固定された取り付け金具(不図示)に、ネジで固定される。
【0082】
後部チェーンカバー42は、
図17および
図18に示すように、チェーンケース40の後部において、チェーン34を覆っている。
【0083】
図20も参照しながら、後部チェーンカバー42をより具体的に説明する。
図20(a)および(b)は、それぞれ、後部チェーンカバー42を右側方から見た図および前方から見た図である。
【0084】
後部チェーンカバー42は、
図20(a)および(b)に示すように、チェーンケース40の後部に位置する第1部分42p1と、第1部分42p1から前方に延びる一対の第2部分42p2とから構成される。
【0085】
第1部分42p1は、チェーン34の、従動スプロケット32に噛み合っている部分を覆っている。第1部分42p1には、後輪3の車軸3aが通る切り欠き部42cが形成されている。切欠き部42cを規定する端面は、円弧状の部分を含んでいる。
【0086】
一対の第2部分42p2は、チェーン34の、従動スプロケット32に噛み合っている部分から前方に延びている部分を覆っている。各第2部分42p2の前部には、開口部42poが形成されている。
【0087】
後部チェーンカバー42の外周縁42eは、内側(車体フレーム10側)に向かって屈曲している。以下では、後部チェーンカバー42の外周縁42eを、後部チェーンカバー42の「縁部」とも呼ぶ。
【0088】
図18に示すように、前部チェーンカバー41の第2部分41p2と、後部チェーンカバー42の第2部分42p2とは、互いに部分的に重なっている。また、前部チェーンカバー41の第2部分41p2の開口部41poと、後部チェーンカバー42の第2部分42p2の開口部42poとは、互いに重なっている。
図17および
図18に示すように、前部チェーンカバー41の第2部分41p2と、後部チェーンカバー42の第2部分42p2とは、これらの開口部41poおよび42poにおいて、チェーンステイ15(一対のチェーンステイ15のうちの右側のチェーンステイ15)に溶接された上下のブラケット15aにねじで固定されている。
【0089】
また、後部チェーンカバー42の第1部分42p1は、
図17に示すように、後輪3のハブ3bと、車体フレーム10の右側のリアエンド10re(右側のチェーンステイ15の端部と右側のシートステイ16の端部とが接続される部分)との間に配置されている。リアエンド10reの外側には、スタンド58が取り付けられている。
【0090】
駆動ユニットカバー43は、駆動ユニット20の後部を覆っている。
図21も参照しながら、駆動ユニットカバー43をより具体的に説明する。
図21(a)、(b)および(c)は、それぞれ、駆動ユニットカバー43を右側方から見た図、後方から見た図、および左側方から見た図である。
【0091】
駆動ユニットカバー43の外周縁43eは、内側(車体フレーム10側)に向かって屈曲している。以下では、駆動ユニットカバー43の外周縁43eを、駆動ユニットカバー43の「縁部」とも呼ぶ。
【0092】
駆動ユニットカバー43は、ネジによって、駆動ユニット20に固定されている。
【0093】
既に説明したように、チェーンケース40の後部(後部チェーンカバー42の第1部分42p1)は、ハブ3bとリアエンド10reとの間に配置されている。
図22(a)に示すように、後部チェーンカバー42には、外力Fが作用することがある。その場合、
図22(b)に示すように、後部チェーンカバー42が変形して、後部チェーンカバー42の縁部42eがチェーン34に当接してしまうおそれがある。
【0094】
図23および
図24に、このような問題の発生を防止し得る構成の例を示す。
図23および
図24は、それぞれ後部チェーンカバー42周辺を示す右側面図および斜視図である。
図23および
図24では、一部の構成要素の図示を省略している。
【0095】
図23および
図24に示す例では、後輪3の車軸3aと同軸に、後部チェーンカバー42の位置を規制する位置規制部材70が配置されている。以下、さらに
図25(a)および(b)も参照しながら、位置規制部材70を説明する。
図25(a)は、位置規制部材70を示す平面図である。
図25(b)は、位置規制部材70を示す断面図であり、
図25(a)中の25B−25B’線に沿った断面を示している。
【0096】
位置規制部材70は、
図25(a)および(b)に示すように、部材本体71と、フランジ部72とを有する。位置規制部材70は、例えば樹脂材料から形成されている。
【0097】
部材本体71は、円筒状であり、所定の外径d1を有する。部材本体71には、後輪3の車軸3aが通される。部材本体71の内周面には、複数の凸条部71aが形成されている。複数の凸条部71aは、ナット78に当接する。
【0098】
フランジ部72は、鍔状であり、部材本体71の一端から外側に突き出している。フランジ部72の外径d2は、部材本体71の外径d1よりも大きい。
【0099】
図24に示すように、位置規制部材70は、凸条部71aの端面が車軸23上に設けられた不図示の段部に当接することによって車幅方向位置が規制され、複数の凸条部71a間にナット78の六角の角部が係合することによって周方向の回動が規制される。位置規制部材70のフランジ部72は、従動スプロケット32と後部チェーンカバー42との間に位置している。また、位置規制部材70の部材本体71は、後部チェーンカバー42の第1部分42p1の切り欠き部42cから突出している。
【0100】
上述したような位置規制部材70が設けられている構成では、後部チェーンカバー42に外力Fが加わって後部チェーンカバー42が移動した場合、
図26に示すように、位置規制部材70の部材本体71の外周面が、後部チェーンカバー42に(より具体的には第1部分42p1の切り欠き部42cの端面に)当接する(
図26中の点線で囲った領域R参照)。そのため、後部チェーンカバー42のそれ以上の移動が妨げられる。つまり、位置規制部材70は、後部チェーンカバー42の位置を規制(後部チェーンカバー42の所定距離以上の移動を防止)する。
【0101】
[リアキャリア]
図27および
図28を参照しながら、電動補助自転車1におけるリアキャリア(荷台)60の好適な構成の例を説明する。
図27は、電動補助自転車1の後部(リアキャリア60周辺)を示す右側面図であり、リアキャリア60にチャイルドシート(リアチャイルドシート)51が取り付られた状態を示している。
図28(a)、(b)および(c)は、それぞれリアキャリア60を上方から見た図、右側方から見た図および前方から見た図である。
【0102】
リアキャリア60は、
図27、
図28(a)、(b)および(c)に示すように、キャリア枠61と、取付ステイ62と、一対の脚部63とを有する。リアキャリア60は、典型的には、金属材料(例えば鋼)から形成されている。
【0103】
キャリア枠61は、全体として略矩形状である。キャリア枠61には、荷物が載せ置かれる。あるいは、キャリア枠61には、
図27に示すように、チャイルドシート51が取り付けられる。
【0104】
取付ステイ62は、キャリア枠61の前端部に設けられている。取付ステイ62は、一対のシートステイ16に接続される。
【0105】
一対の脚部63は、キャリア枠62の後端部から斜め下前方に延びている。一対の脚部63は、それぞれリアエンド10reに接続される。
【0106】
キャリア枠61は、第1枠部64と、第2枠部65と、複数の接続部66とを有する。
【0107】
第1枠部64は、全体として略U字状である。第1枠部64は、キャリア枠61の前部において左右方向に延びる第1部分(左右方向延伸部)64aと、キャリア枠61の側部において前後方向に延びる一対の第2部分(前後方向延伸部)64bとを有する。一対の第2部分64bの前端部は、第1部分64aの右端部および左端部に連続している。
【0108】
第2枠部65は、全体として略U字状である。第2枠部65は、キャリア枠61の後部において左右方向に延びる第1部分(左右方向延伸部)65aと、前後方向に延びる一対の第2部分(前後方向延伸部)65bとを有する。一対の第2部分65bは、第1枠部64の一対の第2部分64bよりも内側に位置する。一対の第2部分65bの後端部は、第1部分65aの右端部および左端部に連続している。一対の第2部分65bの前端部は、第1枠部64の第1部分64aに接続されている。
【0109】
複数の(ここでは3つの)接続部66は、左右方向に延びている。各接続部66は、キャリア枠61の下部において、第1枠部64と第2枠部65とを接続している。
【0110】
キャリア枠61の前端は、第1枠部64の第1部分64aによって規定される。キャリア枠61の側端は、第1枠部64の一対の第2部分64bによって規定される。キャリア枠61の後端は、第2枠部65の第1部分65aによって規定される。
【0111】
取付ステイ62は、第2枠部65の第2部分65bの前端部に取り付けられている。一対の脚部63は、第1枠部64の一対の第2部分64bの後端部に連続している。
【0112】
ここで例示するリアキャリア60は、その上にチャイルドシート51が取り付けられた状態において、チャイルドシート51の前方に所定の長さLの領域61Rを有する。このような領域61Rが存在すると、チャイルドシート51が取り付けられた状態においても、この領域61Rに荷物を載せ置くことができるので、利便性が向上する。
【0113】
領域61Rの長さL(
図28(a)からわかるように前後方向に沿った長さである)に特に制限はない。
【0114】
また、例示するリアキャリア60では、第2枠部65の第1部分65aが、第1枠部64の一対の第2部分64bの後端よりも後方に位置している。つまり、キャリア枠61の後端部において、左右方向における中央部が、左右方向における両端よりも突出している。このような構成を採用すると、
図29(a)に示すように、キャリア枠61のうちでもっとも後端に位置する第2枠部65の第1部分65aを手で把持することにより、駐輪時のスタンド操作が容易となる。特に、
図29(b)からもわかるように、チャイルドシート51(
図29(b)中には二点鎖線でその外形を示している)がリアキャリア60に取り付けられた状態においても、リアキャリア60を把持する動作がチャイルドシート50によって妨げられることがないので、スタンド操作を簡単・確実に行うことができる。