(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、火災発生時に二酸化炭素やハロンガス等の消火ガスを放出して火災を消火するガス系消火設備にあっては、水損や汚損を嫌う機器を設置している室内において、消火による機器損失を最小限に抑えつつ迅速な消火を行うことを可能とする。
【0003】
このようなガス系消火設備は、制御盤に自動モードを設定していた場合には、防護区画に設置した2系統に接続された2台の火災感知器からの火災発報(2系統のAND発報)があった場合に、ガス放出する起動条件が成立したと判断して所定時間のカウントダウンを開始し、カウントダウンが終了すると、制御盤から起動装置に起動信号を出力して動作し、起動装置から二酸化炭素等の開放ガスを防護区画に対応したガス供給配管に設けた選択弁に供給して開くと共に消火ガス貯蔵容器の栓を開け、噴射ヘッドから消火ガスを放出する。
【0004】
また制御盤に手動モードを設定していた場合には、監視員が目視又は火災感知器の発報によって火災を発見し、防護区画に設置した操作箱の扉を開いて起動スイッチを押した場合にガス放出する起動条件が成立したと判断して制御盤がカウントダウンを開始し、カウントダウンが終了すると同様にして消火ガスを放出する。
【0005】
また、二酸化炭素ガスを放出する設備には、危険性を考慮して2系統の火災感知器からの火災発報信号によって自動で消火ガスを放出させているが、既存のハロンガスを放出する設備では、1系統の火災感知器からの火災発報信号によって消火ガスを自動で放出させている。
【0006】
このため消火ガスが異なっている場合にも同一の制御盤を用いることができるようにしており、この制御盤は、1系統の火災発報信号による移報出力を2系統目に擬似的な火災発報信号として入力することにより自動起動させている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、1系統の火災発報信号の移報出力を2系統目に入力して自動起動させるようにした制御盤にあっては、点検時に制御盤を移報停止状態にしていると、1系統目の火災発報信号が入力しても移報出力が得られないため起動信号が出力されず、点検時に起動と放出の動作確認が行えない問題がある。
【0009】
本発明は、1系統目の火災発報信号の移報出力を2系統目に入力して自動起動させるようにした制御盤で、点検時に移報停止を行っていても1系統目の火災発報信号の入力により自動起動を可能とするガス系消火設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(ガス系消火設備
1)
本発明は
、複数系統の信号
を受信可能なガス系消火設備
であって、
第1系統の信号を受信した場合に検出信号と移報信号を出力する第1手段と、
第2系統の信号として第1手段からの移報信号が入力した場合に検出信号を出力する第2手段と、
第1手段及び第2手段から検出信号が入力した場合に起動信号を出力する起動制御手段と、
第1手段からの移報信号の出力を停止する移報停止手段と、
移報停止手段による移報信号の出力停止状態で、第1手段の移報信号の出力停止を解除する連動停止解除手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0011】
(ガス系消火設備2)
本発明は、複数系統の信号を受信可能なガス系消火設備であって、
第1系統の信号を受信して第1検出信号を出力する第1受信部と、
第2系統の信号を受信して第2検出信号を出力する第2受信部と、
第1検出信号により動作して移報信号を出力し、当該移報信号を
第2系統の信号
として第2受信部に入力
する第1移報部と
、
所定の移報停止操作により第1移報部
の移報停止を指示する移報停止スイッチと、
所定の連動停止解除操作により第1移報部の移報停止を解除させる連動停止解除スイッチと、
第1検出信号と第2検出信号の両方が得られた場合に起動信号を出力
する起動制御部と
、
を備え、
起動制御部は、移報停止スイッチの移報停止操作を検出して第1移報部
の移報動作を停止している状態で、連動停止解除スイッチの連動停止解除操作を検出した場合に
、第1移報部の移報停止を解除し、第1検出信号による第1移報部の移報動作による移報信号を第2受信部に入力
して第2検出信号を出力させることで起動信号を出力
することを特徴とする。
【0012】
(移報リレー対応)
第1移報部は
、電源供給されているときに移報信号を出力する第1移報リレーであり
、
移報停止スイッチは、非移報停止位置に操作されている場合は第1移報リレー
に電源供給
し、移報停止位置に操作されている場合は第1移報リレー
の電源供給を行わないものであり、
連動停止解除スイッチは、連動停止解除位置に操作された場合に、第1移報リレーに電源を供給する
。
(連動操作)
移報停止スイッチが非移報停止位置に操作された場合に、連動停止解除スイッチが非連動停止解除位置に連動して操作され、移報停止スイッチが移報停止位置に操作された場合に、連動停止解除スイッチが連動停止解除位置に連動して操作されるように構成する。
【0013】
(ガス系消火設備3)
本発明は、複数系統の信号入力が可能なガス系消火設備であって、
複数の信号入力により起動信号を出力する起動制御部と、
非点検時は1系統の信号入力があると複数の信号を前記起動制御部に出力し、点検時は1系統の信号入力があっても複数の信号を起動制御部に出力しない制御部と、
を備え、
制御部は、点検時であっても、1系統の信号入力により複数の信号を前記起動制御部に出力する状態に設定可能なことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
(基本的な効果)
本発明は、複数系統の信号
を受信可能なガス系消火設備に於いて、
第1系統の信号を受信した場合に検出信号と移報信号を出力する第1手段と、第2系統の信号として第1手段からの移報信号が入力した場合に検出信号を出力する第2手段と、第1手段及び第2手段から検出信号が入力した場合に起動信号を出力する起動制御手段と、第1手段からの移報信号の出力を停止する移報停止手段と、移報停止手段による移報信号の出力停止状態で、第1手段の移報信号の出力停止を解除する連動停止解除手段と、を備えるようにしたため、
第1系統の火災発報信号の移報出力を第2系統に入力して自動起動させるようにした場合に、点検時に移報停止を行っていても、第1系統の火災発報信号の入力により自動起動を可能とする。
【0015】
(ガス系消火設備の効果)
第1系統の信号を受信して第1検出信号を出力する第1受信部と、
第2系統の信号を受信して第2検出信号を出力する第2受信部と、第1検出信号により動作して移報信号を出力し、当該移報信号を
第2系統の信号
として第2受信部に入力
する第1移報部と
、所定の移報停止操作により第1移報部
の移報停止を指示する移報停止スイッチと、所定の連動停止解除操作により第1移報部の移報停止を解除させる連動停止解除スイッチ
と、第1検出信号と第2検出信号の両方が得られた場合に起動信号を出力
する起動制御部と、を備え、起動制御部は、移報停止スイッチの移報停止操作を検出して第1移報部
の移報動作を停止している状態で、連動停止解除スイッチの連動停止解除操作を検出した場合に第1移報部の移報停止を解除し、第1検出信号による第1移報部の移報動作による移報信号を第2受信部に入力
して第2検出信号を出力させることで起動信号を出力
するようにしたため、設備の点検時に、移報停止スイッチを操作して移報停止を行っていても、連動停止解除スイッチを操作しておくことで、
第1系統の火災発報信号の入力により第1移報部が動作して、
第2系統の火災発報信号に代えて移報信号を入力させることができ、
第1系統と
第2系統の火災発報信号が実質的に入力されることで、起動信号が出力され、起動及び放出動作を確認することができる。
【0016】
(移報リレー対応による効果)
また、第1移報部は
、電源供給されているときに移報信号を出力する第1移報リレーであり
、移報停止スイッチは、非移報停止位置に操作されている場合は第1移報リレー
に電源供給
し、移報停止位置に操作されている場合は第1移報リレー
の電源供給を行わないものであり、連動停止解除スイッチは、連動停止解除位置に操作された場合に、第1移報リレーに電源を供給するように構成したため、設備の点検時に、移報停止スイッチを操作して移報停止を行っていても、連動停止解除スイッチを操作しておくことで、
第1系統の火災発報信号の入力により第1移報リレーが動作して、
第2系統の火災発報信号に代えて移報リレー接点のオン信号を入力させることができ、
第1系統と
第2系統の火災発報信号が実質的に入力されることで、起動信号が出力され、起動及び放出動作を確認することができる。
【0017】
(連動操作による効果)
また、移報停止スイッチ
が非移報停止位置に操作
された場合に連動停止解除スイッチが
非連動停止解除位置に連動して操作され、移報停止スイッチ
が移報停止位置に操作
された場合に連動停止解除スイッチが連動停止解除位置に連動して操作されるように
構成したため、移報停止スイッチにより移報停止操作を行うと、連動して連動停止解除スイッチが連動停止解除操作され、各スイッチ個別に操作することなく、点検時に移報を停止し、且つ、移報信号を利用した
第2系統の火災発報信号の入力による起動信号の出力が簡単に実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[ガス系消火設備の概要]
図1は本発明によるガス系消火設備の概要を示した説明図であり、消火ガスとしてハロンガスを使用した設備を例にとっている。なお、
図1の設備構成は一例であり、必要に応じて適宜の構成をとることができる。
【0020】
図1に示すように、ガス系消火設備にはガス系の消火設備を一括制御する制御盤10を設け、また防護区画A,Bとなる各部屋の外に操作箱12を設置している。制御盤10には防護区画A,B毎に回線ユニットが設けられ、各回線ユニットから引き出された伝送路に、防護区画A,B毎に設置した操作箱12を接続して信号伝送を行うようにしている。
【0021】
操作箱12は起動スイッチと起動スイッチを保護する扉を備え、手動モードを設定している場合、人が火災を発見したときには、扉を開けて起動スイッチを操作することにより制御盤10に起動信号を送信し、消火剤としての消火ガスを放出させる。放出表示灯15は監視区域内に消火ガスが放出されていることを表示し、室内に入らないことを知らせる。
【0022】
噴射ヘッド14は消火ガスを室内に放出する。スピーカ13は消火ガスが放出されることを示す注意警報と退避警報を放送し、人が警戒区域内に存在する場合は直ちに避難することを促す。消火ガス貯蔵容器16は消火ガスを貯蔵する。
【0023】
本実施形態にあっては、複数の防護区画A,Bについて火災想定を1箇所としており、このため消火ガス貯蔵容器16は複数の防護区画A,Bに対する共通設備として設けており、1防護区画の消火に必要な量の消火ガスを充填している。
【0024】
起動装置18は防護区画A,Bに対応して設け、制御盤10から消火ガス放出用の起動信号を受けて内蔵したソレノイドの通電により開弁して二酸化炭素などの開放ガスを放出し、開放ガスにより選択弁17を開放させると共にハロンガスが充填されている消火ガス貯蔵容器16の栓を開ける。選択弁17は起動装置18の起動による開放ガスを受けて開き、火災の生じた防護区画A又はBの噴射ヘッド14に消火ガスを供給して噴射させる。
【0025】
火災感知器11は、消火ガスとしてハロンガスを使用していることから1系統の感知器回線で各防護区画A,Bの火災を監視している。なお、消火ガスとして二酸化炭素を使用している場合には、火災感知器11は2系統の感知器回線の各々に接続して火災を監視する。
【0026】
圧力スイッチ21は消火ガス貯蔵容器16から消火ガスが放出されたことを検出し、制御盤10に検出信号を送り、火災の発生した監視区域に対応した放出表示灯15を点滅させる。ピストンレリーザ19は消火ガスが部屋に放出されたとき消火ガスを室外に漏れないようにダンパーで排煙口を閉じる。閉止弁23は消火ガス貯蔵容器16からの消火ガスの供給を手動で閉止する。
【0027】
このようなガス系消火設備において、制御盤10に自動モードを設定していた場合には、1系統目に接続された火災感知器11からの火災発報があった場合に、移報出力を2系統目の火災発報として入力することで、擬似的に2回線発報のAND条件によるガス放出の起動条件が成立したと判断し、所定時間のカウントダウンを開始すると共にスピーカ13は消火ガスが放出されることを示す注意警報と退避警報を放送する。
【0028】
制御盤10及び操作箱12には2桁表示の7セグメント表示器を設けており、通常はカウントダウン初期値として所定の秒数を表示しており、カウントダウンを開始すると、残り時間の秒数を順次表示し、カウントダウン終了で零秒を表示する。
【0029】
制御盤10のカウントダウンが終了すると、制御盤10から起動装置18にガス放出信号を出力して動作し、起動装置18から二酸化炭素等の開放ガスを選択弁17に供給して開くと共に消火ガス貯蔵容器16の栓を開け、ガス供給配管を介して噴射ヘッド14から火災検知した防護区画の室内に消火ガスとしてハロンガスを放出させる。
【0030】
また制御盤10に手動モードを設定していた場合には、監視員が目視又は火災感知器11の発報によって例えば防護区画Aの火災を発見し、防護区画Aの外側に設置している操作箱12の扉を開いて起動スイッチを押すことで起動信号を制御盤10に送信し、制御盤10は起動信号の受信によりガス放出の起動条件が成立したと判断して起動権及びスピーカの鳴動権を獲得し、カウントダウンを開始すると共にスピーカ13は消火ガスが放出されることを示す注意警報と退避警報を放送し、カウントダウンが終了すると、自動モードの場合と同様にして防護区画の噴射ヘッド14から消火ガスとしてハロンガスを放出させる。
【0031】
[ガス系消火設備の機能構成]
図2はガス系消火設備における機能構成の概要を示したブロック図である。
図2に示すように、制御盤10は例えば2つの防護区画に対応して回線ユニット26−1,26−2を備えている。
【0032】
回線ユニット26−1,26−2に対しては、消火ガスとして二酸化炭素を使用する場合には2系統の火災感知器11,11aが信号線接続されるが、本実施形態は消火ガスとしてハロンガスを使用していることから1系統の火災感知器11が信号線接続される。また、回線ユニット26−1,26−2に対しては、操作箱12、スピーカ13及び起動装置18を信号線接続している。なお、以下の説明で回線ユニット26−1,26−2を区別する必要がない場合は、回線ユニット26という場合がある。
【0033】
回線ユニット26−1,26−2から引き出された伝送路24−1,24−2には、各防護区画に設けた4台の操作箱12を接続しており、4台の操作箱12には、伝送路24−1,24−2単位に、アドレスA1〜A4が予め設定されている。
【0034】
回線ユニット26−1,26−2に対しては共通ユニット28として、操作部30、表示部32、移報操作部34、スピーカ駆動部36を設け、相互に信号線接続している。
【0035】
移報操作部34には、全ての防護区画での動作モードを一括して自動モード又は手動モードに切替えるキースイッチ、カウントダウン中にガス放出を停止させる非常停止スイッチ、警報を停止させる警報停止スイッチ、移報を停止させる移報停止スイッチ等を設け、各スイッチからの操作信号を回線ユニット26−1,26−2に並列出力するように信号線接続している。
【0036】
表示部32には、電源状態を示す電源灯、火災発生を示す火災灯、手動モードの設定を示す手動モード表示灯、自動モードの設定を示す自動モード表示灯、ガス放出動作の起動を示す放出起動灯、ガス放出されたことを示す放出灯、カウントダウンに使用する7セグメント表示器等を設けており、回線ユニット26−1,26−2から各表示信号をOR入力して表示駆動するように信号線接続している。
【0037】
移報操作部34には、移報停止スイッチと連動停止解除スイッチが設けられている。移報停止スイッチは、設備点検時等に操作することで、回線ユニット26−1,26−2の移報動作を停止させる。連動停止解除スイッチは、移報停止スイッチの操作による移報停止状態で、火災感知器11からの1系統目の火災発報信号による移報停止動作を解除させ、移報停止が行われていても、1系統目の火災発報による移報出力を2系統目に入力させ、点検時に起動信号を出力可能とする。この連動停止解除スイッチによる連動停止解除の詳細は、後の説明で明らかにされる。
【0038】
スピーカ駆動部36には、消火ガスの放出を行う警報放送の音源とパワーアンプを設けており、回線ユニット26−1,26−2に対し放送信号を並列的に入力するように信号線接続している。
【0039】
[制御盤回路構成の第1実施形態]
(制御盤の機能構成)
図3は制御盤における回路構成の第1実施形態を示した回路ブロック図であり、
図2に示した移報操作部34と回線ユニット26の一部の機能を取り出して示している。
【0040】
図3に示すように、制御盤の回線ユニット26には第1受信部40、第2受信部42、第1移報リレー52、第2移報リレー58、起動制御部60及びそれぞれの付帯回路が設けられている。
【0041】
第1受信部40からは第1感知器接続端子44a,44bを介して引き出された感知器回線に火災感知器11が接続され、第1受信部40は火災感知器11からの1系統目の火災発報信号を受信すると第1検出信号を出力し、抵抗48を介してトランジスタ50のオンにより、第1移報リレー52を動作させ、その移報リレー接点52a,52bをオンさせる。
【0042】
第2受信部42からは、消火ガスとして二酸化炭素ガスを使用する場合には、第2感知器接続端子46a,46bを介して感知器回線が引き出されて火災感知器11aを接続しているが、本実施形態は消火ガスとしてハロンガスを使用していることから、2系統目の火災感知器11aは接続されておらず、これに代えて第1移報リレー52の移報リレー接点52bを第2感知器接続端子46a,46bに接続している。
【0043】
このため火災感知器11から1系統目の火災発報信号が第1受信部40で受信されて第1移報リレー52が動作されると、その移報リレー接点52bのオンにより、第2受信部42に擬似的な2系統目の火災発報信号が入力することとなり、これにより第2受信部42は第2検出信号を出力し、抵抗54を介してトランジスタ56のオンにより、第2移報リレー58を動作させ、その移報リレー接点58aをオンさせる。
【0044】
起動制御部60はAND回路62とドライバ(駆動部)64を備えており、第1受信部40からの第1検出信号と第2受信部42からの第2検出信号が入力すると、両者の論理積によりHレベル出力を生じ、ドライバ64から起動信号としてガス放出信号を、ソレノイドを備えた起動装置に出力している。なお、起動制御部60による起動信号の出力制御は、AND回路62からのHレベル出力で所定時間のカウントダウンを開始し、カウントダウンの終了で起動信号としてガス放出信号を起動装置18に出力するが、
図3にあっては、その機能は省略して示している。
【0045】
移報操作部34に設けられた移報停止スイッチ70はロックスイッチであり、定位位置aと移報停止位置bに切り替えられる。移報停止スイッチ70のスイッチ接片側は電源Vcラインに接続されており、定位位置a側はダイオード66を介して第1移報リレー52のプラス側に接続され、また第2移報リレー58のプラス側に直接接続されている。なお、第2移報リレー58のプラス側に直接接続されている移報停止スイッチ70からの信号線は他の回線ユニットに引き出され、同様に、第1移報リレーと第2移報リレーに対する接続が行われている。
【0046】
移報停止スイッチ70は、通常時は、定位位置a側に閉じていることから、移報停止スイッチ70を介して第1移報リレー52及び第2移報リレー58に電源を供給して動作可能としている。また、移報停止スイッチ70が移報停止位置b側に切り替えられると、第1移報リレー52及び第2移報リレー58に対する電源供給が停止され、移報停止となる。
【0047】
移報操作部34に設けられた連動停止解除スイッチ72はロックスイッチであり、定位位置aと連動停止解除位置bとに切り替えられる。連動停止解除スイッチ72のスイッチ接片側は電源Vcラインに接続されており、定位位置a側は開放されており、連動停止解除位置b側は、第1移報リレー52のプラス側に接続されている。
【0048】
連動停止解除スイッチ72は、通常時は、定位位置aに閉じており、点検時等に移報停止スイッチ70が移報停止位置bへの切り替えられたとき、連動停止解除スイッチ72は連動停止解除位置bに切り替えられると、第1移報リレー52に連動停止解除スイッチ72を介して電源を供給するため、移報停止スイッチ70を移報停止位置bに切り替えていても、第1移報リレー52の動作を可能とする。なお、ダイオード66は、連動停止解除スイッチ72を連動停止解除位置bに切り替えた場合に第2移報リレー58が動作可能とならないようにしている。
【0049】
(点検時の起動制御)
ガス系消火設備を点検する場合には、制御盤10の移報操作部34に設けられた移報停止スイッチ70を移報停止位置bに切り替え、また、連動停止解除スイッチ72を連動停止解除位置bに切り替える。
【0050】
移報停止スイッチ70を移報停止位置bに切り替えると、第1移報リレー52の第1受信部40からの第1検出信号の出力による移報動作、及び、第2移報リレー58の第2受信部42からの第2検出信号の出力による移報動作の両方が停止される。
【0051】
この状態で連動停止解除スイッチ72を連動停止解除位置bに切り替えると、第1移報リレー52に対し電源が供給され、第1受信部40からの第1検出信号の出力による第1移報リレー52の移報動作が可能となる。
【0052】
このため点検時に、火災感知器11を試験発報させて1系統目の火災発報信号が第1受信部40に入力すると、第1検出信号の出力により第1移報リレー52が動作して移報リレー接点52a,52bがオンし、移報リレー接点52bのオンにより第2受信部42に対する擬似的な2系統目の火災発報信号が入力され、第2検出信号が出力されるが、第2移報リレー58は移報停止スイッチ70の移報停止位置bへの切り替えで動作せず、移報停止が行われている。
【0053】
この結果、移報停止スイッチ70を移報停止位置bに切り替えていても、連動停止解除スイッチ72を連動停止解除位置bに切り替えておくことで、火災感知器11から1系統目の火災発報信号が入力されると、起動制御部60のAND回路62に第1受信部40からの第1検出信号と第2受信部42からの第2検出信号の両方が入力し、AND回路62の出力がHレベルとなり、所定時間のカウントダウン後に起動装置18に起動信号としてガス放出信号を出力させることができる。
【0054】
[制御盤回路構成の第2実施形態]
(制御盤の機能構成)
図4は制御盤における回路構成の第2実施形態を示した回路ブロック図であり、起動制御部をコンピュータ回路によるプログラムの実行で実現したことを特徴とする。
【0055】
図4は、
図2に示した移報操作部34と回線ユニット26の一部の機能を取り出して示しており、制御盤の回線ユニット26には第1受信部40、第2受信部42、第1移報リレー52、第2移報リレー58、起動制御部74及びそれぞれの付帯回路が設けられている。
【0056】
起動制御部74は、CPU、メモリ、各種の入出力ポートを備えたコンピュータ回路で構成されており、プログラムの実行により起動制御を行う。起動制御部74に対しては、移報操作部34に設けられた移報停止スイッチ70と連動停止解除スイッチ72が接続され、移報停止スイッチ70をオン操作すると移報停止信号が起動制御部74に入力され、連動停止解除スイッチ72をオン操作すると、連動停止解除信号が起動制御部74に入力される。
【0057】
起動制御部74は、移報停止スイッチ70及び連動停止解除スイッチ72がオフしている通常時は、火災感知器11から1系統目の火災発報信号が入力すると、第1受信部40から出力される第1検出信号に基づき、第1移報リレー52を動作させ、第1移報リレー接点52bのオンにより2系統目の火災発報信号を擬似的に入力させ、第2受信部42から出力される第2検出信号に基づき、第2移報リレー58を動作させ、第1検出信号と第2検出信号の両方が得られたことを検出し、ドライバ64を介して起動信号としてガス放出信号を起動装置18に出力させる制御を行う。
【0058】
また、点検時には、移報停止スイッチ70及び連動停止解除スイッチ72の両方がオン操作されていることから、起動制御部74は、火災感知器11を試験発報させて1系統目の火災発報信号の第1受信部40への入力により第1検出信号が出力されると、第1移報リレー52を動作し、移報リレー接点52bのオンにより第2受信部42に対し擬似的な2系統目の火災発報信号を入力させ、これにより第2検出信号を出力させ、第1検出信号と第2検出信号の両方が得られたことで、所定時間のカウントダウン後にドライバ64を介して起動装置18に起動信号としてガス放出信号を出力させる制御を行う。このとき点検のために起動装置18に対する信号線は取り外しており、起動装置18の動作によりハロンガスが放出されることはない。
【0059】
(起動制御)
図5は
図4の起動制御部の制御動作を示したフローチャートである。
図5に示すように、起動制御部74はステップS1で1系統目の火災発報信号の受信による第1受信部40からの第1検出信号の有無を判別しており、第1検出信号ありを判別するとステップS2に進み、移報停止スイッチ70はオンか否か判別し、通常時はオフであることからステップS3に進み、第1移報リレー52を動作させ、ステップS4で第1移報リレー52の動作による移報リレー接点52bのオンに基づく第2受信部42からの第2検出信号の有無を判別している。
【0060】
起動制御部74はステップS4で第2検出信号ありを判別するとステップS5に進み、第2移報リレー58を動作させ、続いてステップS6に進み、第1検出信号と第2検出信号の両方が得られていることから、所定時間のカウントダウン後に起動信号を出力してハロンガスの放出を行わせる。
【0061】
続いて、起動制御部はステップS7で所定の消火ガス放出監視処理を行っており、その間にステップS8で復旧を判別すると制御動作を終了する。
【0062】
一方、ガス系消火設備の点検時には、移報停止スイッチ70及び連動停止解除スイッチ72がオン操作されていることから、起動制御部74は、ステップS1で第1検出信号ありを判別してステップS2に進むと、ステップS2で移報停止スイッチ70のオンを判別してステップS9に進み、ステップS9で第1移報リレー52と第2移報リレー58を動作停止状態とする。
【0063】
続いて、起動制御部74はステップS10に進み、連動停止解除スイッチ72のオンを判別するとステップS11に進み、第1移報リレー52の動作停止を解除して動作させる。このとき第2移報リレー58は依然として動作停止となっている。続いて、起動制御部74はステップS12に進み、第1移報リレー52の動作でオンした移報リレー接点52bにより第2受信部42から出力される第2検出信号ありを判別するとステップS6に進み、起動信号を出力させる。
【0064】
[本発明の変形例]
(移報停止スイッチと連動停止解除スイッチの連動)
上記の実施形態は、移報停止スイッチと連動停止解除スイッチを個別に操作しているが、点検時には、両方を操作する必要があることから、移報停止スイッチと連動停止解除スイッチを連動するように構成しても良い。
【0065】
このスイッチ連動は、
図3の実施形態では、移報停止スイッチ70を定位位置aに操作した場合に連動停止解除スイッチ72が定位位置aに連動して操作され、移報停止スイッチ70を移報停止位置bに操作した場合に連動停止解除スイッチ72が連動停止解除位置bに連動して操作されるように構成する。
【0066】
また、
図4の実施形態では、移報停止スイッチ70のオン、オフ操作に連動して連動停止解除スイッチ72がオン、オフ操作されるよう構成する。
【0067】
また、上記の実施形態は、点検時専用の動作モードを有していないが、点検時専用の動作モードを有するようにしても良い。具体的には、制御盤10内に点検時モードかどうかを切り替えるスイッチ等を設け、点検時モードの場合は、手動モード・移報停止スイッチをオン、連動停止解除スイッチをオンとする。点検時は、起動信号出力をしてもガス放出をしてほしくない場合が考えられる。上記、点検時モードの場合、起動装置まで起動信号が出力されるが、手動モードのためガスは放出されない。起動装置まで出力される起動信号を検出して表示灯などで報知することで、起動信号が出力されることを点検することもできる。また、点検中に実火災が発生した場合でも、点検モードを解除するか、操作箱12の起動スイッチを押すことで、消火ガスを放出させることが出来る。
【0068】
(その他)
また、上記の実施形態は、第1移報部の出力信号を第2受信部に入力することで、第2受信部より信号を出力させていたが、第2受信部を経由せず、第2受信部の信号出力に相当する部分に第1移報部の出力信号を出力するようにしても良い。また、前記処理をCPU内で行い、第2受信部に信号入力を行わないようにしても良い。
【0069】
また、上記の実施形態は、ガス系消火設備での実施となっているが、例えば水幕発生装置など2系統の信号入力により動作する防災機器に用いても良い。
【0070】
また、本発明は上記の実施形態に限定されず、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。