特許第6824013号(P6824013)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋ゴム工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6824013-空気入りタイヤ 図000003
  • 特許6824013-空気入りタイヤ 図000004
  • 特許6824013-空気入りタイヤ 図000005
  • 特許6824013-空気入りタイヤ 図000006
  • 特許6824013-空気入りタイヤ 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6824013
(24)【登録日】2021年1月14日
(45)【発行日】2021年2月3日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/01 20060101AFI20210121BHJP
   B60C 11/13 20060101ALI20210121BHJP
【FI】
   B60C11/01 B
   B60C11/13 B
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-230992(P2016-230992)
(22)【出願日】2016年11月29日
(65)【公開番号】特開2018-86921(P2018-86921A)
(43)【公開日】2018年6月7日
【審査請求日】2019年9月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吹田 晴信
【審査官】 増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−016025(JP,A)
【文献】 特開平09−071108(JP,A)
【文献】 特許第3320837(JP,B2)
【文献】 米国特許第8074690(US,B2)
【文献】 米国特許第8851128(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/01
B60C 11/01
B60C 11/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ周方向に沿って延びるショルダー陸部 を含むトレッドを備え、
前記ショルダー陸部には、前記タイヤ周方向に沿って延びる細溝が設けられ、
前記ショルダー陸部は、前記細溝のタイヤ幅方向外側に位置する犠牲陸部を含み、
タイヤ幅方向断面における前記犠牲陸部の輪郭は、前記犠牲陸部の頂に、第1円弧と前記第1円弧のタイヤ幅方向内側に位置する第2円弧とを含み、
前記第1円弧の両端は、第1端と、前記第1端のタイヤ幅方向内側かつタイヤ径方向外側に位置する第2端とからなり、
前記第2円弧の両端は、第1端と、前記第1端のタイヤ幅方向内側かつタイヤ径方向内側に位置する第2端とからなり、
前記第1円弧の曲率半径は、前記第2円弧の曲率半径より大きく、
前記ショルダー陸部は、前記細溝のタイヤ幅方向内側に位置する本体陸部をさらに含み、
前記タイヤ幅方向断面における前記本体陸部の輪郭は、前記細溝の壁面の一部を構成する本体陸部線分を含み、
前記細溝は、前記本体陸部線分に沿って延びる第1領域と、前記タイヤ径方向で前記第1領域より奥に位置する第2領域とを含み、
前記第2領域は、前記タイヤ幅方向断面において、奥にすすむほどタイヤ赤道面に近づく湾曲状をなす、
空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記タイヤ幅方向断面における前記第2領域の輪郭は角を含まない、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記犠牲陸部の輪郭が、前記第2円弧の前記第2端からタイヤ径方向に対して傾斜なしで延びる線分、または前記第2円弧の前記第2端からタイヤ径方向に対して7°以下の傾斜でタイヤ赤道面に近づくように延びる線分を含む、請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ディフェンス グルーブ(以下、「細溝」という。)が設けられた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
走行中の空気入りタイヤでは、一般にトレッド面におけるショルダー陸部の接地端近傍において接地圧が高く、トレッド面における他の陸部に比べて、ショルダー陸部の接地端近傍は摩耗量が大きくなる。
【0003】
このような偏摩耗を防止するために、ショルダー陸部に、タイヤ周方向に延び、タイヤ幅方向断面でタイヤ径方向に沿って直線で延びる細溝を設けることがある。細溝は、ショルダー陸部を、細溝のタイヤ幅方向内側の本体陸部と、細溝のタイヤ幅方向外側の犠牲陸部とに分け、本体陸部の摩耗を抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開第3320837号
【特許文献2】特開2002−46418
【特許文献3】特開第5222239号
【特許文献4】特開2005−81918
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような細溝をタイヤに設ける場合、タイヤ幅方向断面において、犠牲陸部の頂輪郭を、本体陸部の頂輪郭を構成する円弧と同じ曲率の円弧で構成することがある。
【0006】
しかしながら、このような形状の犠牲陸部を有するタイヤにおいては、犠牲陸部における細溝側肩の接地圧が高く、タイヤ転動における犠牲陸部の圧縮歪・引張歪が大きく、歪エネルギーが高いため、溝底や、犠牲陸部を構成する両壁にクラックが発生しやすい。
【0007】
本開示は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、溝底と犠牲陸部とにおける耐クラック性を向上した空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の空気入りタイヤは、
タイヤ周方向に沿って延びるショルダー陸部 を含むトレッドを備え、
ショルダー陸部には、タイヤ周方向に沿って延びる細溝が設けられ、
ショルダー陸部は、細溝のタイヤ幅方向外側に位置する犠牲陸部を含み、
タイヤ幅方向断面における犠牲陸部の輪郭は、犠牲陸部の頂に、第1円弧と第1円弧のタイヤ幅方向内側に位置する第2円弧とを含み、
第1円弧の両端は、第1端と、第1端のタイヤ幅方向内側かつタイヤ径方向外側に位置する第2端とからなり、
第2円弧の両端は、第1端と、第1端のタイヤ幅方向内側かつタイヤ径方向内側に位置する第2端とからなり、
第1円弧の曲率半径は、第2円弧の曲率半径より大きい。
【0009】
本開示では、第1円弧と、第1円弧のタイヤ幅方向内側に位置し、第1円弧の曲率半径より小さい曲率半径を有する第2円弧とで犠牲陸部の頂の輪郭を構成することにより犠牲陸部における細溝側肩の接地圧下げ幅を犠牲陸部におけるショルダー陸部端側肩の接地圧下げ幅よりも大きくとり、犠牲陸部の接地圧を最適化することが可能である。よって、溝底と犠牲陸部とにおける耐クラック性を向上できる。
【0010】
本開示の空気入りタイヤにおいて、ショルダー陸部が、細溝のタイヤ幅方向内側に位置する本体陸部をさらに含み、
タイヤ幅方向断面における本体陸部の輪郭は、細溝の壁面の一部を構成する本体陸部線分を含み、
細溝は、本体陸部線分に沿って延びる第1領域と、タイヤ径方向で第1領域より奥に位置する第2領域とを含み、
第2領域は、タイヤ幅方向断面において、奥にすすむほどタイヤ赤道面に近づく湾曲状をなすことが好ましい。本体陸部の細溝に近い部分の接地圧を低減し耐偏摩耗性を向上できるからである。
【0011】
本開示の空気入りタイヤにおいて、タイヤ幅方向断面における第2領域の輪郭は角を含まないことが好ましい。溝底の歪み集中を分散し、耐溝底クラック性を向上できるからである。
【0012】
本開示の空気入りタイヤにおいて、犠牲陸部の輪郭が、第2円弧の第2端からタイヤ径方向に対して傾斜なしで延びる線分、または第2円弧の第2端からタイヤ径方向に対して7°以下の傾斜でタイヤ赤道面に近づくように延びる線分を含むことが好ましい。線分が、タイヤ径方向に対して傾斜をもつ場合、犠牲陸部の剛性を向上できるとともに、溝底の歪み集中を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態1の空気入りタイヤにおけるショルダー陸部のタイヤ幅方向断面図である。
図2】変形例1の空気入りタイヤにおけるショルダー陸部のタイヤ幅方向断面図である。
図3】変形例2の空気入りタイヤにおけるショルダー陸部のタイヤ幅方向断面図である。
図4】実施例1テストタイヤにおけるショルダー陸部のタイヤ幅方向断面図である。
図5】比較例1テストタイヤにおけるショルダー陸部のタイヤ幅方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施形態1について説明する。図1において、91はタイヤ幅方向を示す。タイヤ幅方向は、タイヤ赤道面に対して直角をなす方向である。92はタイヤ径方向を示す。「タイヤ幅方向断面」は、タイヤ回転軸の両端を通るように空気入りタイヤをまっすぐ切断した場合の断面である。
【0015】
図1に示すように、実施形態1の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に沿って延びるショルダー陸部11 を含むトレッド1を備える。ショルダー陸部11には、タイヤ周方向に沿って延びる細溝12が設けられている。図1には示していないものの、トレッド1には、ショルダー陸部11のタイヤ幅方向内側で、タイヤ周方向に沿って延びる主溝が設けられている。主溝の幅は、細溝12の幅より大きい。主溝の幅は、たとえば5mm〜20mmである。
【0016】
ショルダー陸部11は、細溝12のタイヤ幅方向外側に位置する犠牲陸部112を含む。タイヤ幅方向断面における犠牲陸部112の輪郭は、犠牲陸部112の頂に、第1円弧42と第1円弧42のタイヤ幅方向内側に位置する第2円弧44とを含む。犠牲陸部112の輪郭は、犠牲陸部112の頂に、第3円弧43をさらに含む。犠牲陸部112の輪郭は、線分45、第4円弧46および第5円弧41をさらに含む。
【0017】
第1円弧42の両端は、第1端421と、第1端421のタイヤ幅方向内側かつタイヤ径方向外側に位置する第2端422とからなる。第1円弧42は、犠牲陸部112の肩を徐々に下げるように、第3円弧43と第5円弧41とをつなぐ。第1円弧42の曲率半径は、第2円弧44の曲率半径より大きい。第1円弧42の曲率半径は、たとえば0.5mm以上である。第1円弧42における曲率半径の上限は、たとえば3mmである。第1円弧42の長さは、たとえば0.3mm以上である。第1円弧42の長さ上限は、たとえば2.6mmである。第1円弧42の曲率中心は、第1円弧42の第1端421を通ってタイヤ幅方向に沿って延びる仮想直線のタイヤ径方向内側に位置することができる。
【0018】
第2円弧44の両端は、第1端441と、第1端441のタイヤ幅方向内側かつタイヤ径方向内側に位置する第2端442とからなる。第2円弧44は、犠牲陸部112の肩を徐々に下げるように、第3円弧43と線分45とをつなぐ。第2円弧44の曲率半径は、たとえば0.2mm以上である。第2円弧44における曲率半径の上限は、たとえば1.5mmである。第2円弧44の長さは、たとえば0.3mm以上である。第2円弧44の長さ上限は、たとえば2.5mmである。第2円弧44の曲率中心は、第2円弧44の第2端442を通ってタイヤ幅方向に沿って延びる仮想直線のタイヤ径方向内側に位置することができる。第2円弧44の曲率中心は、そこに位置するのではなく、第2円弧44の第2端442を通ってタイヤ幅方向に沿って延びる仮想直線上に位置することも可能である。
【0019】
第3円弧43は、直線ではないもののそれに近い円弧状をなし、タイヤ幅方向に沿って延びる。第3円弧43は、第1円弧42と第2円弧44とをつなぐ。第3円弧43の曲率半径は、たとえば400mm以上である。第3円弧43の長さは、たとえば0.5mm以上である。第3円弧43の長さ上限は、たとえば2.7mmである。第3円弧43の曲率中心は、第3円弧43をタイヤ赤道面まで延長した仮想線のタイヤ径方向内側に位置することができる。
【0020】
犠牲陸部112の輪郭は線分45を含む。線分45は、細溝12の壁面の一部を構成する。線分45は、第2円弧44の第2端442から、タイヤ径方向に対して7°以下の傾斜でタイヤ赤道面に近づくように延びることができる。いっぽう、線分45は、タイヤ径方向に対して傾斜なしで、第2円弧44の第2端442から延びることも可能である。線分45の長さはたとえば
5mm以上である。線分45の長さ上限は、たとえば10mmである。
【0021】
犠牲陸部112の輪郭は第4円弧46を含む。第4円弧46は、細溝12の壁面の一部を構成する。第4円弧46は、線分45のタイヤ径方向内側端から、タイヤ赤道面に近づくように延びる。第4円弧46の曲率半径は、たとえば5mm以上である。第4円弧46における曲率半径の上限は、たとえば9mmである。第4円弧46の長さは、たとえば4mm以上である。第4円弧46の長さ上限は、たとえば6mmである。第4円弧46の曲率中心は、細溝12のタイヤ径方向最奥点1221を通ってタイヤ径方向に沿って延びる仮想直線のタイヤ幅方向内側に位置することができる。
【0022】
犠牲陸部112の輪郭は第5円弧41を含む。第5円弧41は、第1円弧42の第1端421から、タイヤ赤道面から離れるように延びる。第5円弧41の曲率半径は、たとえば30mm以上である。第5円弧41における曲率半径の上限は、たとえば60mmである。第5円弧41の曲率中心は、第1円弧42の第1端421を通ってタイヤ径方向に沿って延びる仮想直線のタイヤ幅方向内側に位置することができる。
【0023】
第1円弧42の第1端421を通ってタイヤ幅方向に沿って延びる仮想直線と、第1円弧42の第2端422を通ってタイヤ幅方向に沿って延びる仮想直線との距離Waは、たとえば0.2mm〜1.5mmである。
【0024】
第2円弧44の第1端441を通ってタイヤ幅方向に沿って延びる仮想直線と、第2円弧44の第2端442を通ってタイヤ幅方向に沿って延びる仮想直線との距離Wbは、たとえば0.1mm〜1.5mmである。
【0025】
第1円弧42の第1端421を通ってタイヤ径方向に沿って延びる仮想直線と、第2円弧44の第2端442を通ってタイヤ径方向に沿って延びる仮想直線との距離Wcは、たとえば2mm〜5mmである。
【0026】
ショルダー陸部11は、細溝12のタイヤ幅方向内側に位置する本体陸部111をさらに含む。タイヤ幅方向断面における本体陸部111の輪郭は、第1円弧31、線分32および第2円弧33を含む。
【0027】
本体陸部111の輪郭は、本体陸部111の頂に第1円弧31を含む。第1円弧31は、トレッド1のトレッド面の一部を構成する。第1円弧31は、直線ではないもののそれに近い円弧状をなし、タイヤ幅方向に沿って延びる。第1円弧31は、第3円弧43のオフセット線であることが好ましい。これは、第1円弧31を犠牲陸部112の上方まで延長した仮想線と第3円弧43との両者が交わらないことを少なくとも意味する。第1円弧31の両端は、第1端と、第1端のタイヤ幅方向外側に位置する第2端312とからなる。第1円弧31における曲率半径の好適範囲は、第3円弧43のそれと同じである。第1円弧31の長さは、たとえば30mm以上である。第1円弧31の長さ上限は、たとえば60mmである。第1円弧31の曲率中心は、第1円弧31をタイヤ赤道面まで延長した仮想線のタイヤ径方向内側に位置することができる。
【0028】
本体陸部111の輪郭は線分32を含む。線分32は、細溝12の壁面の一部を構成する。線分32は、第1円弧31と第2円弧33とをつなぐ。線分32は、第1円弧31の第2端312から、タイヤ径方向に対して傾斜なしで延びることができる。いっぽう、線分32は、タイヤ径方向に対して7°以下の傾斜でタイヤ赤道面に近づくように第1円弧31の第2端312から延びることも可能である。線分32は、線分45と平行であることが好ましい。線分32が線分45と平行である場合、線分32と線分45との距離は、たとえば1mm〜5mmである。線分32の長さはたとえば3mm以上である。線分32の長さ上限は、たとえば8mmである。
【0029】
本体陸部111の輪郭は第2円弧33を含む。第2円弧33は、線分32のタイヤ径方向内側端から、タイヤ赤道面に近づくように延びる。第2円弧33の曲率半径は、第4円弧46の曲率半径より小さいことが好ましい。第2円弧33の曲率半径は、第4円弧46の曲率半径と同じであることも可能である。第2円弧33の曲率半径は、たとえば2mm以上である。第2円弧33における曲率半径の上限は、たとえば8mmである。第2円弧33の長さは、たとえば2.5mm以上である。第2円弧33の長さ上限は、たとえば7mmである。第2円弧33の曲率中心は、細溝12のタイヤ幅方向最奥点1220を通ってタイヤ径方向に沿って延びる仮想直線のタイヤ幅方向内側に位置することができる。
【0030】
細溝12は、線分32に沿って延びる第1領域121と、タイヤ径方向で第1領域121より奥に位置する第2領域122とを含む。第2領域122は、タイヤ幅方向断面において、奥にすすむほどタイヤ赤道面に近づく湾曲状をなす。第2領域122は、奥にすすむほど幅が広がる部分を有することが好ましい。タイヤ幅方向断面における第2領域122の輪郭は、角を含まないことが好ましい。さらに、タイヤ幅方向断面における細溝12の底の輪郭は、丸みをおびていることが好ましく、ひとつの円弧で構成されることがより好ましい。
【0031】
第1円弧31の第2端312を通ってタイヤ径方向に沿って延びる仮想直線と、第2領域122のタイヤ幅方向最奥点1220との最短距離Wdは、たとえば1mm以上である。Wdの上限は、たとえば5mmである。
【0032】
第1円弧31の第2端312を通ってタイヤ幅方向に沿って延びる仮想直線と、細溝12のタイヤ径方向最奥点1221を通ってタイヤ幅方向に沿って延びる仮想直線との距離Wfは、たとえば10mm〜16mmである。Wfは、主溝深さと同じか、それに近い値とすることができる。
【0033】
実施形態1の空気入りタイヤは、重荷重用空気入りタイヤとして用いられることが好ましい。
【0034】
図2に示すように、変形例1の空気入りタイヤは、細溝12が第2領域122を含まないこと以外は、実施例1のそれと同じである。タイヤ幅方向断面における細溝12の底の輪郭は、角を含まない。細溝12の底の輪郭は、丸みをおびていることが好ましく、ひとつの円弧49で構成されることがより好ましい。
【0035】
図3に示すように、変形例2の空気入りタイヤは、犠牲陸部112の輪郭が、第3円弧43を含まないこと以外は、実施例1のそれと同じである。
【実施例】
【0036】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例などについて説明する。
【0037】
実施例1
図4に示す形状のテストタイヤ(295/75R22.5)である。第1円弧42の曲率半径は2mm、第2円弧44の曲率半径は1mmであった。線分45の傾斜角度は−2°であった。「傾斜角度−2°」とは、線分45が、第2円弧44の第2端442から、タイヤ径方向に対して2°の傾斜でタイヤ赤道面から離れるように延びることを意味する。
【0038】
実施例2
図1に示す形状のテストタイヤ(295/75R22.5)である。第1円弧42の曲率半径は2mm、第2円弧44の曲率半径は1mmであった。線分45の傾斜角度は3°であった。「傾斜角度3°」とは、線分45が、第2円弧44の第2端442から、タイヤ径方向に対して3°の傾斜でタイヤ赤道面に近づくように延びることを意味する。
【0039】
比較例1
図5に示す形状のテストタイヤ(295/75R22.5)である。第1円弧42と第2円弧44とを除いたこと以外は、比較例1のテストタイヤは、実施例1のそれと同じである。
【0040】
比較例2
第1円弧42の曲率半径を1mm、第2円弧44の曲率半径を2mmに変更したこと以外は、実施例1と同じテストタイヤである。
【0041】
耐溝底クラック性
テストタイヤを、リムサイズ22.5×8.25のホイールに組み付け、空気圧760kPa、速度60km/h、荷重21.8kNの条件でドラム試験を実施した。15000km走行後に、溝底クラック幅を測定した。比較例1の測定値を100とした指数で、各例の測定値を示した。値が大きいほど、クラック幅が小さく、耐溝底クラック性に優れる。
【0042】
耐ウォールクラック性
15000km走行後のディフェンス グルーブ ウォール(犠牲陸部112) クラック幅を測定した。比較例1の測定値を100とした指数で、各例の測定値を示した。値が大きいほど、クラック幅が小さく、耐ウォールクラック性に優れる。
【0043】
【表1】
【0044】
第2円弧44と第2円弧44の曲率半径より大きい第1円弧42とで犠牲陸部112の頂の輪郭を構成することで、耐溝底クラック性・耐ウォールクラック性が向上した。
図1
図2
図3
図4
図5