特許第6824049号(P6824049)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6824049
(24)【登録日】2021年1月14日
(45)【発行日】2021年2月3日
(54)【発明の名称】花留めの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/17 20060101AFI20210121BHJP
   A47G 7/02 20060101ALI20210121BHJP
【FI】
   B29C45/17
   A47G7/02 J
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-10211(P2017-10211)
(22)【出願日】2017年1月24日
(65)【公開番号】特開2018-118411(P2018-118411A)
(43)【公開日】2018年8月2日
【審査請求日】2019年10月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】309016050
【氏名又は名称】ゴールド化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106404
【弁理士】
【氏名又は名称】江森 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100184479
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】大澤 映夫
(72)【発明者】
【氏名】金銅 京子
(72)【発明者】
【氏名】大澤 宏次
(72)【発明者】
【氏名】渋川 浩
【審査官】 正 知晃
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−268932(JP,A)
【文献】 特開2016−216686(JP,A)
【文献】 特開2011−161785(JP,A)
【文献】 特開2003−135232(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00−45/84
A47G 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点または軟化点が130〜280℃の範囲である熱可塑性樹脂から構成された線条部材を、立体的に絡み合わせて塊体としてあるとともに、当該塊体の所定箇所に、少なくとも一つ以上のすきまを設けて、当該すき間に、花卉を圧入する花留めの製造方法であって、下記工程(1)〜(3)を含むことを特徴とする花留めの製造方法。

(1)前記熱可塑性樹脂を原材料として、射出成型装置を用いて、射出温度250〜300℃および射出速度0.01〜100mm/秒の条件下に、円形断面の平均直径が0.05〜5mmの範囲内の値であって、かつ、部分溶融状態の線条部材を作成する工程
(2)前記射出成型装置から取り出した、前記部分溶融状態の線条部材を、前記射出成型装置の出口に設けた金属製斜路を滑落させながら、冷却するとともに、立体的に絡み合わせて、塊体とする工程
(3)得られた線条部材の塊体を、200℃未満の温度条件でアニール処理を行う工程
【請求項2】
融点または軟化点が130〜280℃の範囲である熱可塑性樹脂から構成された線条部材を、立体的に絡み合わせて塊体としてあるとともに、当該塊体の所定箇所に、少なくとも一つ以上のすきまを設けて、当該すき間に、花卉を圧入する花留めの製造方法であって、下記工程(1)〜(3)を含むことを特徴とする花留めの製造方法。
(1)前記熱可塑性樹脂を原材料として、射出成型装置を用いて、射出温度250〜300℃および射出速度0.01〜100mm/秒の条件下に、円形断面の平均直径が0.05〜5mmの範囲内の値であって、かつ、部分溶融状態の線条部材を作成する工程
(2)前記射出成型装置から取り出した、前記部分溶融状態の線条部材を、別の射出成型装置のランナーにおいて冷却しながら、立体的に絡み合わせて、塊体とする工程
(3)得られた線条部材の塊体を、200℃未満の温度条件でアニール処理を行う工程
【請求項3】
前記工程(1)において、前記部分溶融状態の線条部材の長さを10〜100mmの範囲内の値とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の花留めの製造方法。
【請求項4】
前記工程(1)において、60〜150℃の温度に維持された射出成型金型を用いて、前記溶融状態の線条部材を作成することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の花留めの製造方法。
【請求項5】
前記工程(2)において、前記射出成型装置から取り出した、前記部分溶融状態の線条部材を、さらに水中に浸漬させて、前記線条部材からなる塊体とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の花留めの製造方法。
【請求項6】
前記工程(2)において、前記線条部材として、円形断面の平均直径、平均長さ、あるいは色の少なくとも一つが異なる2種類以上の線条部材を用いることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の花留めの製造方法。
【請求項7】
前記花留めが、発光素子としてのLEDと組み合わせてあることにより、当該発光素子から出射された光を、前記線条部材が導光性を発揮して、多色に発光させて、外部に視認させることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の花留めの製造方法。
【請求項8】
前記線条部材を構成する熱可塑性樹脂がポリカーボネート樹脂であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の花留めの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、花卉等を固定するための花留めの製造方法に関する。 特に、花卉等の固定の自由度に優れた、線条部材を立体的に絡み合わせてなる塊体としての花留めの効率的な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生け花等の花卉を固定するための花留めとして、いわゆる花器および剣山の組み合わせが多用されてきた。
しかしながら、かかる剣山等は重量物であって、かつ、花卉の固定方向が、事実上、鉛直方向に制限されるという問題があり、そのため、各種花留めが提案されている。
例えば、生け花を倒れないで花留めすべく、格子の間隔が1〜2cmの合成樹脂ネットを円筒状にした花留めであって、上底を同様の合成樹脂ネットで覆うとともに、下底を開放したマルチ花留めが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、図7に示されるように、自由に形づくれると共に、花卉等を容易に任意姿勢で固定できること等を目的とし、金属ワイヤを丸めて構成され、花器205に挿入して使用する線状束201も提案されている(例えば、特許文献2)。
より具体的には、線状束201を構成する金属ワイヤの断面に切欠き面が設けてあり、テーブル208の上に載置した花器205に対して、生け花206に適用する際には、切欠き面のエッジで生け花の茎203を押さえ込む構成の線条束(花留め)201である。
【0004】
さらにまた、図8(a)〜(b)に示されるように、形状記憶樹脂又は形状記憶合金を用いてなる剣山301であって、小さく丸めた状態で、口の狭い花瓶302の内部に矢印の方向から、落下収容した後、外部からの加熱処理によって、花瓶302の内部で元の形(例えば、ジャングルジム等)に戻して、剣山301として使用する方法も提案されている(例えば、特許文献3)。
【0005】
その上、本発明の出願人によって、花卉等の固定性に優れるとともに、所定発光素子と組み合わせた場合に、発色が変化する花留めを提供すべく、所定直径(0.5〜3mm)のポリカーボネート樹脂製の線状部材を、球状またはうずまき状とした花留めも提案されている(例えば、特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3036755号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献2】特開2003−135232号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献3】実開平2−88574号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献4】特開2010−268932号公報(特許請求の範囲等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されたマルチ花留めは、網目構造をもった合成樹脂製ネットの形状や大きさ、さらには、格子の大きさが限定的であって、それを設置するための花器の大きさや形状が過度に制限されるという問題が見られた。
しかも、花器が相対的に小さく、マルチ花留めである合成樹脂製ネットの大きさと合致しないような場合に、当該合成樹脂製ネットを無理やり花器の内部へ押し込もうとすると、マルチ花留めが破損したり、変形したり、更には、所定位置に収容しにくいという問題も見られた。
【0008】
また、特許文献2に開示された線条束(花留め)によれば、金属の線条部材の断面に設けられたエッジによって、線条束を花器の所定場所に素手で設置する際に、扱う人の手を傷つけたり、さらには、金属の線条部材の断面に設けられたエッジを利用して生花の茎を押さえつけるため、生け花の茎自体を傷つけたりするという問題が見られた。
一方、花器の所定場所に線条部材を固定する際や、生花を線条部材へ固定する際の柔軟性がそれぞれ不十分であって、さらには、所定の発光素子と組み合わせたとしても、多色に変化することはなく、装飾性に乏しいという問題が見られた。
【0009】
さらにまた、特許文献3に開示された剣山によれば、高価な形状記憶樹脂又は形状記憶合金を用いて構成する必要があって、経済的に不利であった。
その上、加熱処理によって、丸めた形状(例えば、球状等)を元の形(例えば、ジャングルジム等)に戻そうとしても、実際、形状記憶樹脂又は形状記憶合金の復元力はほとんど発揮されず、所定形状にした剣山を、所定場所に配置することは困難であるという問題点が見られた。
【0010】
一方、出願人が既に提案した、特許文献4に開示されたポリカーボネート樹脂製の線状部材からなる花留めは、花卉の固定性や柔軟性、さらには、装飾性等については十分であったものの、射出成型装置を用いて製造する際の環境温度が大きく変化したりすると、線状部材を構成するポリカーボネート樹脂の結晶性の制御が不安定になりやすいという問題が見られた。
したがって、線状部材の円形断面の平均直径等のばらつきが大きくなって、ひいては、花留めの製造における歩留まり(生産性)が低下しやすいという問題が見られた。
【0011】
そこで、本発明らは、製造する際の環境温度が変化したような場合であっても、花卉の固定の自由度等に優れた線条部材を立体的に絡み合わせてなる塊体としての花留めが安定的かつ効率的に得られる製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、融点または軟化点が130〜280℃の範囲である熱可塑性樹脂から構成された線条部材を立体的に絡み合わせて、塊体としてあるとともに、当該塊体の所定箇所に、少なくとも一つ以上のすきまを設けて、当該すき間に、花卉を圧入する花留めの製造方法であって、下記工程(1)および(2)を含むことを特徴とする花留めの製造方法が提供され、上述した問題点を解決することができる。
(1)熱可塑性樹脂を原材料として、射出成型装置を用いて、射出温度250〜350℃および射出速度0.01〜100mm/秒の条件下に、円形断面の平均直径が0.1〜5mmの範囲内の値であって、かつ、部分溶融状態の線条部材を作成する工程
(2)得られた部分溶融状態の線条部材を、冷却しながら、立体的に絡み合わせて、塊体とする工程
すなわち、このように花留めを製造することによって、線状部材を構成するポリカーボネート樹脂の結晶性を安定的に制御することができ、ひいては、線状部材の平均直径等のばらつきが小さくなって、花留めの製造における高い歩留まり(生産性)を得ることができる。
【0013】
また、本発明の花留めの製造方法を実施するにあたり、工程(1)において、部分溶融状態の線条部材の長さ(L1)を10〜1000cmの範囲内の値とすることが好ましい。
このように線条部材の長さを規定して、花留めを製造することによって、線状部材を構成する熱可塑性樹脂の結晶性や部分溶融状態を安定的に制御することができ、ひいては、線条部材が均一に絡み合ってなる塊体をさらに歩留まり高く、安定的に得ることができる。
【0014】
また、本発明の花留めの製造方法を実施するにあたり、工程(1)において、部分溶融状態の線条部材の温度(T2)を230〜280℃の範囲内の値とすることが好ましい。
このように線条部材の温度を規定して、花留めを製造することによって、線状部材を構成する熱可塑性樹脂の結晶性や部分溶融状態を安定的に制御することができ、ひいては、線条部材が均一に絡み合ってなる塊体をさらに歩留まり高く、安定的に得ることができる。
【0015】
また、本発明の花留めの製造方法を実施するにあたり、工程(1)において、60〜150℃の温度(T3)に維持した射出成型金型を用いて、溶融状態の線条部材を作成することが好ましい。
このように射出成型金型の温度を規定して、花留めを製造することによって、線状部材を構成する熱可塑性樹脂の結晶性や部分溶融状態を安定的に制御することができ、ひいては、線条部材が均一に絡み合ってなる塊体をさらに歩留まり高く、安定的に得ることができる。
【0016】
また、本発明の花留めの製造方法を実施するにあたり、工程(2)において、射出成型装置から取り出した、部分溶融状態の線条部材を、射出成型装置の出口に設けた金属製斜路を滑落させながら、冷却するとともに、立体的に絡み合わせて塊体とすることが好ましい。
このように塊体とする方法を規定することによって、各種熱可塑性樹脂に対応して、それらの結晶性や部分溶融状態を安定的に制御することができ、ひいては、線条部材が均一に絡み合ってなる塊体をさらに歩留まり高く、安定的に得ることができる。
【0017】
また、本発明の花留めの製造方法を実施するにあたり、工程(2)において、射出成型装置から取り出した、部分溶融状態の線条部材を、別の射出成型装置のランナーにおいて冷却しながら、線条部材からなる塊体とすることが好ましい。
このように塊体とする方法を規定することによって、各種熱可塑性樹脂に対応して、それらの結晶性や部分溶融状態を安定的に制御することができ、ひいては、線条部材が均一に絡み合ってなる塊体をさらに歩留まり高く、安定的に得ることができる。
【0018】
また、本発明の花留めの製造方法を実施するにあたり、工程(2)において、射出成型装置から取り出した、部分溶融状態の線条部材を、水中に浸漬させて、線条部材からなる塊体とすることが好ましい。
このように塊体とする方法を規定することによって、各種熱可塑性樹脂に対応して、それらの結晶性や部分溶融状態を安定的に制御することができ、ひいては、線条部材が均一に絡み合ってなる塊体をさらに歩留まり高く、安定的に得ることができる。
【0019】
また、本発明の花留めの製造方法を実施するにあたり、工程(2)において、線条部材として、円形断面の平均直径、平均長さ、あるいは色の少なくとも一つが異なる2種類以上の線条部材を用いて、塊体とすることが好ましい。
このように2種類以上の線条部材を用いて塊体とすることによって、線条部材が均一に絡み合ってなる塊体をさらに歩留まり高く、安定的に得ることができ、その上、花留めの柔軟性や装飾性についても、さらに改良することができる。
【0020】
また、本発明の製造方法を実施するにあたり、工程(2)の後に、工程(3)を設けて、得られた線条部材の塊体を、200℃以下の温度条件(T4)でアニール処理を行うことが好ましい。
このようにアニール処理をすることによって、得られた線条部材の塊体の形状保持性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、花留めの製造方法の一態様を説明するために供する図である。
図2図2は、花留めの構成を説明するために供する図(写真)である。
図3図3(a)〜(b)は、花留めの使用態様を説明するために供する図(写真)である。
図4図4(a)〜(b)は、花留めの内部に、装飾性樹脂成型品を配置してなる態様を説明するために供する図(写真)である。
図5図5(a)〜(b)は、花留めとしての塊体の製造方法の態様を説明するために供する図である。
図6図6は、別の花留めとしての塊体の製造方法の態様を説明するために供する図である。
図7図7は、従来の花留めを説明するために供する図である。
図8図8(a)〜(b)は、従来の別の花留めを説明するために供する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施態様は、図1に示すように、融点または軟化点が130〜280℃の範囲である熱可塑性樹脂から構成された線条部材を、立体的に絡み合わせて、塊体としてあるとともに、当該塊体の所定箇所に、少なくとも一つ以上の隙間を設けて、当該隙間に、花卉を圧入する花留めの製造方法であって、下記工程(1)および(2)を含むことを特徴とする花留めの製造方法である。
(1)熱可塑性樹脂を原材料として、射出成型装置(押し出し成型装置も含む。)を用いて、射出温度(T1)250〜350℃および射出速度(S1)0.01〜100mm/秒の条件下に、円形断面の平均直径(R1)が0.1〜5mmの範囲内の値であって、かつ、部分溶融状態の線条部材を作成する工程
(2)得られた部分溶融状態の線条部材を、冷却しながら、立体的に絡み合わせて、塊体とする工程
以下、花留めの製造方法の態様(S1〜S8)を、工程(1)および工程(2)等に分けて、それぞれ適宜図面に言及しながら具体的に説明する。
【0023】
1.花留め
(1)基本的態様
図2に示すように、花留めの基本的態様としては、融点または軟化点が130〜280℃の範囲である熱可塑性樹脂から構成された線条部材を、立体的に絡み合わせて、塊体としてあるとともに、当該塊体の所定箇所に、少なくとも一つ以上の隙間(挿入口)が設けてある態様である。
そして、図3(a)〜(b)に示すように、かかる塊体のすきまを利用して、当該すき間に、花卉等を圧入し、花卉等の茎を損傷することなく、所定方向に向いて固定配置することができる。
【0024】
また、図4(a)〜(b)に示すように、かかる塊体の隙間を利用して、当該隙間に、装飾性樹脂成型品を圧入することもできる。
例えば、図4(a)は、所定の線条部材からかなる花留め10と、その内部の所定位置に圧入してなる、ハート型の外形を有する装飾性樹脂成型品22とを含み、花器に使用する前の態様を示す図(写真)である。
また、図4(b)は、花器20の中に、所定の花留め10と、その内部の所定位置に圧入してなる、少なくとも6個以上、より好ましくは、8個以上の角部を有する多角体形の装飾性樹脂成型品22と、花卉(F)と、水と、を含む態様を示す図(写真)である。
したがって、塊体である花留めにおいて、装飾性樹脂成型品を圧入したとしても、残った隙間を利用して、花卉等の茎を圧入することもできるので、装飾性をさらに向上させつつ、花卉等を、所定方向に向かせて固定配置することができる。
【0025】
(2)線条部材
また、図2に示すように、所定の線条部材から、塊体としての花留めを構成してあることから、図3(a)〜(b)に示すように、花器等に絡み合わせて使用した場合に、花留めとしての優れた柔軟性や花卉の固定性を発揮することができる。
また、図示しないものの、所定の花留めと、所定の発光素子(LED等)と組み合わせることにより、所定の発光素子から出射された光を、所定の線条部材が優れた導光性を発揮して、多色に発光させて、外部に視認させることができる。
【0026】
(3)構成樹脂
図2に示す花留めの線条部材の構成樹脂として、融点または軟化点が130〜280℃の範囲である熱可塑性樹脂を用いることを特徴とする。
より具体的には、熱可塑性樹脂の融点または軟化点が130℃未満となると、耐熱性や機械的強度が著しく低下し、平均直径が所定範囲内の線条部材を作成した場合に、適度な柔軟性や固定性が得られない場合があるためである。
一方、熱可塑性樹脂の融点または軟化点が280℃を超えると、一般的な射出成型装置(押し出し成型装置も含む。)を用いて、所定温度、所定射出速度において、平均直径が所定範囲内の線条部材を作成することが困難となる場合があるためである。
【0027】
したがって、花留めの線条部材の構成樹脂として、熱可塑性樹脂の融点または軟化点を150〜270℃の範囲である熱可塑性樹脂を用いることが好ましく、160〜260℃の範囲である熱可塑性樹脂を用いることがより好ましく、180〜250℃の範囲である熱可塑性樹脂を用いることがさらに好ましい。
【0028】
なお、かかる熱可塑性樹脂の融点は、結晶領域を含む場合にそれが融解する温度と定義されが、JIS K 7121に準拠して、示差走査熱量計(DSC)や示差熱分析装置(DTA)を用いて測定することができる。
また、熱可塑性樹脂の軟化点(ガラス転移点と称する場合がある。)は、熱可塑性樹脂全体が軟化する温度と定義されるが、JIS K 7121に準拠して、熱分析装置(TMA)を用いて測定することができる。
【0029】
また、図2に示す線条部材の構成樹脂につき、好適な熱可塑性樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、フェノキシ樹脂等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
【0030】
特に、線条部材を構成する熱可塑性樹脂がポリカーボネート樹脂であれば、図2(a)〜(c)に示すように、所定の線条部材を構成した場合に、花留めとしての優れた柔軟性や花卉の固定性を得ることができる。
また、花留めと、所定の発光素子とを組み合わせた場合に、例えば、下方から入射してくる光を、優れた導光性を発揮して、外部に出射させ、多色に発光させることができる。
【0031】
一方、ポリカーボネート樹脂は、一般に結晶化が遅いことが知られていることから、結晶性樹脂、例えば、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、フェノキシ樹脂等を、併用することも好ましい。
その場合、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、結晶性樹脂の配合量を0.1〜100重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる結晶性樹脂の配合量が0.1重量部未満となると、添加効果が明確に発現しない場合があるためである。
一方、かかる結晶性樹脂の配合量が100重量部を超えると、ポリカーボネート樹脂の有する透明性、靭性、機械的強度等が著しく低下し、ひいては、得られる花留めとしての機能が低下する場合があるためである。
したがって、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、結晶性樹脂の配合量を1〜80重量部の範囲内の値とすることが好ましく、5〜30重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0032】
さらにまた、構成樹脂としてのポリカーボネート樹脂の結晶化を促進させる場合には、ポリエチレンオキサイドを、併用することも好ましい。
その場合、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、ポリエチレンオキサイドの配合量を0.1〜100重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかるポリエチレンオキサイドの配合量が0.1重量部未満となると、添加効果が明確に発現しない場合があるためである。
一方、かかるポリエチレンオキサイドの配合量が30重量部を超えると、ポリカーボネート樹脂の結晶性の制御が困難となったり、あるいは、ポリカーボネート樹脂の有する透明性、靭性、機械的強度等が著しく低下し、ひいては、得られる花留めとしての機能や生産性が低下したりする場合があるためである。
したがって、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、ポリエチレンオキサイドの配合量を0.5〜10重量部の範囲内の値とすることが好ましく、1〜8重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0033】
(4)塊体
また、図2に示すように、花留めとしての線条部材からなる塊体は、少なくとも1本または2本以上の線条部材を立体的に絡み合わせてなる成形物である。
すなわち、所定の線条部材を成形して、例えば、外形が、球状、楕円体状、渦巻状、四角柱体(立方体や直方方体を含む。)、六角柱体、円柱体等の少なくとも一つの塊体とすることによって、花留めとしての優れた柔軟性や花卉の固定性を得ることができる。
【0034】
(5)隙間
また、図2に示すように、花留めとしての塊体が所定の隙間を有することによって、花卉を任意角度で、固定配置することができる。
すなわち、少なくとも一本の線条部材を丸めて、花留めとした場合に、相互接触する複数の線条部材の間の円相当径として、0.1〜3mmを有する隙間を有することが好ましい。
この理由は、かかる隙間の円相当径が0.1mm未満となると、適用可能な花卉等の種類が過度に制限される場合があるためである。
一方、かかる隙間の円相当径が3mmを超えると、花卉等の固定性が不十分となって、任意角度に配置することが困難となる場合があるためである。
したがって、隙間の円相当径を0.3〜2mmの範囲内の値とすることが好ましく、0.5〜1mmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、隙間の円相当径は、花留めの外観写真において、少なくとも5か所の隙間の大きさを実測し、それから円相当径を算出しても良いし、あるいは、花留めの外観写真に対して画像処理を施し、それらから得られる画像処理データとして、円相当径を得ても良い。
【0035】
2.工程(1)
工程(1)は、図1に示す製造工程(S1〜S8)のうち、熱可塑性樹脂の射出成型工程(S3)であるが、射出成型装置(押し出し成型装置も含む。)を用いて、部分溶融状態の線条部材を作成する工程である。
すなわち、図5(b)に示すような、一般的に公知の射出成型装置50を用い、所定射出温度で、所定射出速度で、所定平均直径を有する、部分溶融状態の線条部材を作成する工程である。
なお、図1に示すように、工程(1)を実施する前に、通常、熱可塑性樹脂の準備工程(S1)および熱可塑性樹脂の秤量工程/ホッパーへの投入工程(S2)を実施することが好ましい。
【0036】
ここで、射出成型装置における射出温度(T1)を250〜350℃の範囲内の値とすることを特徴とする。
この理由は、かかる射出温度が250℃未満となると、適用可能な熱可塑性樹脂の種類が過度に制限されたり、あるいは、溶融性が不十分となったりして、均一な部分溶融状態の線条部材を作成することが困難となる場合があるためである。
一方、かかる射出温度が350℃を超えると、熱可塑性樹脂の種類にもよるが、結晶性の制御が困難となって、得られる花留めとしての機能や生産性が低下したりする場合があるためである。
したがって、かかる射出温度を260〜330℃の範囲内の値とすることが好ましく、280〜310℃の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、射出成型装置における射出温度は、射出成型装置における射出ノズルの先端部の温度とみなすことができ、熱電対やサーモグラフィを用いて測定することができる。
【0037】
また、射出成型装置における射出速度(S1)を0.01〜100mm/秒の範囲内の値とすることを特徴とする。
この理由は、かかる射出速度が0.01mm/秒未満となると、適用可能な熱可塑性樹脂の種類が過度に制限されたり、あるいは、製造の歩留まりが低下し、経済的に不利となったりする場合があるためである。
一方、かかる射出速度が100mm/秒を超えると、熱可塑性樹脂の種類にもよるが、結晶性の制御が困難となって、得られる花留めとしての機能や生産性が低下したりする場合があるためである。
したがって、かかる射出速度を0.1〜50mm/秒の範囲内の値とすることが好ましく、0.5〜30mm/秒の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0038】
また、工程(1)において、部分溶融状態の線条部材の長さ(L1)を10〜1000cmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる線条部材の長さが10cm未満となると、均一な立体的絡み合いによって、塊体を安定的に得ることが困難となる場合があるためである。
一方、かかる線条部材の長さが1000cmを超えると、熱可塑性樹脂の種類にもよるが、結晶性の制御が困難となって、立体的絡み合いによって、塊体を安定的に得ることが困難となる場合があるためである。
したがって、かかる線条部材の長さを30〜500cmの範囲内の値とすることが好ましく、80〜300cmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、かかる線条部材の長さは、ノギス等を用いて実測することもできるし、あるいは、線条部材の原材料量や平均直径、および線条部材の射出速度等をもとに算出することも可能である。
【0039】
また、工程(1)において、部分溶融状態の線条部材の温度(T2)を230〜280℃の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる線条部材の温度が230℃未満となると、熱可塑性樹脂の種類にもよるが、立体的絡み合いによって、塊体を安定的に得ることが困難となる場合があるためである。
一方、かかる線条部材の温度が280℃を超えると、耐熱性の関係で、使用可能な熱可塑性樹脂の種類が過度に制限される場合があるためである。
したがって、かかる線条部材の温度を240〜270℃の範囲内の値とすることが好ましく、250〜260℃の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、線条部材の温度は、射出成型装置における射出ノズルの先端部において、噴出された直後の線条部材の温度として、熱電対やサーモグラフィ等を用いて実測することができる。
【0040】
また、工程(1)において、冷却時の射出成型金型温度(T3)として、60〜150℃に加熱した射出成型金型を用いて、溶融状態の線条部材を作成することが好ましい。
この理由は、かかる射出成型金型の温度が60℃未満となると、熱可塑性樹脂の種類にもよるが、結晶性の制御が困難となって、立体的絡み合いによって、塊体を安定的に得ることが困難となる場合があるためである。
一方、かかる射出成型金型の温度が150℃を超えると、使用可能な熱可塑性樹脂の種類が過度に制限されたり、あるいは、結晶性の制御が困難となったりして、立体的絡み合いによって、塊体を安定的に得ることが困難となる場合があるためである。
したがって、かかる射出成型金型の温度を70〜120℃の範囲内の値とすることが好ましく、80〜100℃の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、射出成型金型の温度は、表面温度として、熱電対やサーモグラフィ等を用いて実測することができる。
【0041】
2.工程(2)
工程(2)は、図1の部分溶融状態の線条部材の冷却工程(S4)および塊体の作成工程(S5)の組み合わせ工程であって、得られた部分溶融状態の線条部材を、冷却しながら、立体的に絡み合わせて、塊体とする工程である。
なお、かかる部分溶融状態の線条部材の冷却工程(S4)および塊体の作成工程(S5)は、独立的に記載しているものの、通常は、同時期に実施することが好ましい。
【0042】
ここで、部分溶融状態の線条部材を冷却し、かつ、塊体とする方法は特に制限されるものでないが、下記方法が例示される。
【0043】
(1)塊体の形成方法1
図5(a)に示すように、部分溶融状態の線条部材12aを、射出成型装置50の出口に設けた金属製斜路70を滑落させながら、冷却するとともに、立体的に絡み合わせて、さらには、球状メッシュ容器74等を用いて成形し、線条部材12からなる塊体とする方法である。
より具体的には、図5(b)に示す射出成型装置50を準備し、それから、部分溶融状態の線条部材12aを噴出させる。 すなわち、かかる射出成型装置50は、噴射口52aを先端部に備えた筒状筐体52を有しており、その内部に、溶融樹脂を噴出させるためのシリンダー54、溶融樹脂が逆流しないための逆流防止弁56を有している。
そして、筒状筐体52の外側周囲には、加熱装置(ヒーター)58が設けてあり、ホッパー60から投入された樹脂を溶融するとともに、その温度管理や粘度管理を行っている。
さらに、筒状筐体52の後方には、押出し装置62およびそれを駆動するための駆動装置(モータ)62を有している。
【0044】
そして、図5(a)に示すように、噴出させた溶融樹脂を、水平方向に対して、支持部材72の高さ等を調整して、例えば、10〜60°、より好ましくは、20〜45°に傾斜させてなる金属製斜路70を滑落させながら冷却する。
よって、金属製斜路70の途中または最終箇所において、部分溶融状態の線条部材12aを、立体的に絡み合わせ、直接的、あるいは、間接的に、線条部材12からなる塊体とする形成方法である。
【0045】
なお、直接的に、線条部材12を巻き取って、塊体としても良く、あるいは、所定外形を有する容器、例えば、球状メッシュ容器に投入し、間接的に、線条部材12からなる塊体とする方法をとることも好ましい。
すなわち、球状メッシュ容器に投入し、間接的に塊体を形成することにより、各種大きさの塊体としての花留めを比較的安定的に得ることができる。
【0046】
(2)塊体の形成方法2
図6に示すように、部分溶融状態の線条部材を、矢印Aに示す方向から、金型100のランナー102に噴出させ、ランナー102の内部で冷却しながら、線条部材12からなる塊体として、矢印Bに示す方向から、取り出す手法である。
より具体的には、射出成型装置の出口に、複数の金型パーツ100a〜bからなる金型100を装着し、当該金型100のランナー102において冷却しながら、ランナー102の形状等に沿って流動させながら、直接的、あるいは、間接的に、線条部材12からなる塊体とする形成方法である。
なお、上述した塊体の形成方法1と同様であるが、直接的に、ランナー102から取り出した線条部材12を巻き取って、塊体としても良いが、所定外形を有する容器、例えば、球状メッシュ容器に投入し、間接的に、線条部材12からなる塊体とする方法をとれば、各種大きさの塊体を比較的安定的に得ることができる。
【0047】
(3)塊体の形成方法3
さらに、図示しないものの、部分溶融状態の線条部材を、水中に浸漬させて、冷却するとともに、立体的に絡み合わせて、塊体とする方法も好適である。
より具体的には、射出成型装置の出口下方に、流水貯留部を設けておき、その中の水に対して、部分溶融状態の線条部材を落下させ、冷却するとともに、立体的に絡み合わせて、塊体とする形成方法である。
【0048】
(4)塊体の形成方法4
その他、同様に図示しないものの、部分溶融状態の線条部材として、平均直径、断面形状、あるいは色の少なくとも一つが異なる2種類以上用いて、塊体とする方法も好適である。
より具体的には、射出成型装置を用いて一つの線条部材(第1の線条部材と称する場合がある。)を製造しておき、それとは平均直径、断面形状、あるいは色の少なくとも一つが異なる、もう一つの線条部材(第2の線条部材と称する場合がある。)を製造し、それらを機械的あるいは化学的に、立体的に絡み合わせて、塊体とする形成方法である。
【0049】
3.アニール処理
また、工程(2)の後に、S6で表される工程(3)を設けて、得られた線条部材の塊体を、200℃以下の温度条件(T4)でアニール処理を行うことが好ましい。
この理由は、所定温度に保持された恒温槽等において、得られた線条部材の塊体を所定容器に収容した状態で、所定温度でアニール処理をすることによって、得られた線条部材の結晶性や、塊体の形状保持性を変化させることができるためである。
また、アニール処理の処理温度や処理時間を適宜変更することによって、得られた塊体としての花留めの柔軟性や機械的強度等を適宜調整することも可能なためである。
【0050】
したがって、通常、アニール処理の処理温度を100〜180℃の温度範囲で実施することが好ましく、110〜170℃の温度範囲で実施することがより好ましく、120〜160℃の温度範囲で実施することがさらに好ましい。
なお、アニール処理の時間についても、得られた塊体としての花留めの柔軟性や機械的強度等を考慮して定めることができるが、通常、1〜480分の範囲内の値とすることが好ましく、10〜120分の範囲内の値とすることがより好ましく、20〜60分の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0051】
4.その他
(1)花器との組み合わせ
得られた塊体としての花留めは、そのまま単独使用することもでき、例えば、壁や家具等に接着固定させて、花卉等の一輪挿しとして使用することも好ましい。
一方、得られた塊体としての花留めを、各種花器の内部の所定位置に収容し、花卉等を任意方向に固定配置する支持部材として使用することも好ましい。
例えば、図3(a)〜(b)にそれぞれ示すように、透明ガラス容器や透明樹脂容器からなる花器20を準備し、その中に、花留め10および水を収容した後、花留め10の隙間10aに対して、花卉(F)の茎を挿入することによって、鉛直ばかりでなく、任意方向に固定配置することができる。
【0052】
(2)他の装飾部材との組み合わせ
また、図4(a)に例示するように、塊体としての花留め10を準備し、その隙間10aを利用して、外形が、ハート形状やクローバー形状の装飾性樹脂成型品22、あるいは、文字形状、数字形状、異種形状(多角体形状)等の装飾性樹脂成型品22を固定配置するとともに、それに対して、さらに花卉(F)を挿入することによって、任意方向に固定配置することができる。
すなわち、このように、塊体としての花留め10と、所定形状を有する装飾性樹脂成型品22とを組み合わせることによって、より優れた装飾性やデザイン性を有する組み合わせ型の花留め10´とすることができる。
その上、かかる装飾性樹脂成型品22を、蛍光材料や蓄光性材料を所定量、例えば、全体量に対して、0.1〜20重量%含んでなる透明性樹脂または不透明性樹脂から構成すると、基本的に透明性に優れた花留めと相俟って、それ自体、装飾品や電飾装置等としても使用可能な、組み合わせ型の花留め10´とすることができる。
【0053】
(3)発光素子との組み合わせ
また、図示しないものの、下部に発光素子(LED等)を配置してなる透明ケースからなる花器を準備し、その中に、花留めを収容した後、それに花卉等を任意方向に固定配置することができる。
そして、発光素子を適宜点灯することによって、優れた装飾性(多色発光性等)やデザイン性を有する花留めとすることができる。
【実施例】
【0054】
[実施例1]
(1)原材料の準備
原材料として、ポリカーボネート樹脂(表1中、PCと略記する。)のペレット(住友化学(株)製、300シリーズ(型番:301−4)、平均粒径:2mm)と、青色顔料をそれぞれ準備し、当該青色顔料の配合量が1重量%となるように、それぞれ秤量して、図5(b)に示す射出成型装置のホッパーに投入した。
【0055】
(2)原材料の射出成型(線条部材の作成)
次いで、射出成型装置を動作させ、射出温度290℃、射出速度2mm/秒の条件下に、噴射ノズルを調整して、円形断面の平均直径が2mmとなるようにして、ポリカーボネート樹脂製の部分溶融状態の線条部材(平均長さ:3m)を作成した。
なお、冬場の低温条件を想定し、射出成型装置の周囲における環境温度が5℃になるように設定した。
【0056】
(3)塊体の作成
次いで、得られたポリカーボネート樹脂製の部分溶融状態の線条部材を、冷却しながら、所定の塊体を作成した。
すなわち、射出成型装置から取り出した、部分溶融状態の線条部材を、80℃に保持された射出成型装置の噴出口の下方に設けたステンレス製斜路(水平方向に対して、45℃、長さ:1m、幅:50cm)を滑落させながら、約60℃まで冷却するとともに、立体的に絡み合わせて、粗い塊体を得た。
次いで、得られた粗い塊体を、スレンレス製の球状メッシュ容器の内部に収容して、回転振動させながら、平均直径が100mmである、外観が球状の塊体とした。
【0057】
(4)塊体のアニール処理
次いで、ギア式オーブンを用い、得られた塊体をスレンレス製の球状メッシュ容器内に収容したまま、アニール温度150℃、アニール時間30分の条件で、アニール処理を実施して、実施例1の球状の花留め(平均直径:100mm、隙間:2mm)とした。
【0058】
(5)評価工程
(5)−1 線条部材の直径のばらつき
得られた球状の花留めを構成する線条部材につき、ノギスを用いて、10箇所で太さ方向の直径を測定し、平均値を算出するとともに、下記基準に照らして、直径のばらつきを評価した。
◎:2mm±0.1mmの範囲内の値である。
○:2mm±0.5mmの範囲内の値である。
△:2mm±1.0mmの範囲内の値である。
×:2mm±1.0mmの範囲を超えた値である。
【0059】
(5)−2 柔軟性
得られた球状の花留めにつき、980N(=100kgf)の荷重をかけた後の損傷状態を目視観察し、下記基準に照らして、柔軟性を評価した。
◎:全く損傷がなく、元の球状の花留めに復元する。
○:ほとんど損傷がなく、元の球状の花留めに復元する。
△:一部損傷が見られるが、ほとんど元の球状の花留めに復元する。
×:顕著な損傷(折れ)が見られ、元の球状の花留めに復元することができない。
【0060】
(5)−3 引張強度
JIS K 7161に準拠して、引張速度100mm/分の条件下に、得られた球状の花留めの引張強度を測定し、下記基準に照らして評価した。
◎:50MPa以上である。
○:20MPa以上である。
△:5MPa以上である。
×:5MPa未満である。
【0061】
(5)−4 生産性
得られた球状の花留めの歩留まりを算出し、下記基準に照らして生産性を評価した。
◎:良品の歩留まりは、50個以上/時間である。
○:良品の歩留まりは、20個以上/時間である。
△:良品の歩留まりは、20個以上/時間である。
×:良品は5個未満/時間である。
【0062】
[実施例2]
実施例2においては、線条部材の直径を0.5mmとした以外は、実施例1と同様に、球状の花留めを作成し、評価した。
【0063】
[実施例3]
実施例3においては、線条部材の直径を0.3mmとした以外は、実施例1と同様に、球状の花留めを作成し、評価した。
【0064】
[実施例4]
実施例4においては、夏場の高温条件を想定し、射出成型装置の周囲における環境温度が50℃になるように設定するとともに、線条部材の直径を3mmとした以外は、実施例1と同様に、球状の花留めを作成し、評価した。
【0065】
[実施例5]
実施例5においては、夏場の過酷な高温条件を想定し、射出成型装置の周囲における環境温度が50℃になるように設定するとともに、線条部材の直径を5mmとした以外は、実施例1と同様に、球状の花留めを作成し、評価した。
【0066】
[実施例6]
実施例6においては、ポリカーボネート樹脂単独のかわりに、ポリカーボネート樹脂/エチレンオキサイド(表1中、EOと略記する。)の混合樹脂(配合重量比:100/10)を用いた以外は、実施例2と同様に、球状の花留めを作成し、評価した。
【0067】
[実施例7]
実施例7においては、ポリカーボネート樹脂単独のかわりに、ポリカーボネート樹脂/アクリル系樹脂(MMA、平均分子量:100万、表1中、MMAと略記する。)からなる混合樹脂(配合重量比:100/10)を用いた以外は、実施例1と同様に、球状の花留めを作成し、評価した。
【0068】
[実施例8]
実施例8においては、ポリカーボネート樹脂単独のかわりに、ポリカーボネート樹脂/ポリエステル樹脂(PET、平均分子量:15万、表1中、PETと略記する。)からなる混合樹脂(配合重量比:100/10)を用いた以外は、実施例1と同様に、球状の花留めを作成し、評価した。
【0069】
[比較例1]
比較例1においては、塊体の作成において、射出成型装置から取り出した、部分溶融状態の線条部材を、いきなりスレンレス製の球状メッシュ容器の内部に収容して、回転振動させながら、平均直径が100mmである球状の塊体とし、さらには、アニール処理を行わなかった以外は、実施例1と同様に、球状の花留めを作成し、評価した。
【0070】
[比較例2]
比較例2においては、ポリカーボネート樹脂単独のかわりに、ポリエステル樹脂単独(PET、平均分子量:15万)した以外は、比較例1と同様に、球状の花留めを作成し、評価した。
【0071】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明によれば、製造する際の環境温度(周囲温度)が変化し、射出成型温度がばらついたような場合であっても、所望の平均直径や長さを有する線条部材が安定的に得られるようになった。
すなわち、本発明によれば、立体的網目構造を有し、装飾性や固定性が高いフレキシブルな花留めとして、花卉の大小、茎の長短、太さ、種類等に関係なく、花器の内面に対して、所定位置や所定角度で固定配置可能な花留めが、安定的かつ効率的に製造できるようになった。
【0073】
そして、熱可塑性樹脂として、ポリカーボネート樹脂単独のみならず、各種熱可塑性樹脂や添加剤等との組み合わせが使用可能となって、それから得られた花留めによれば、線条部材の柔軟性を利用して、花器の形態等の相違に関係なく、立体的網目構造を有するフレキシブルな花留めとして、花器の内壁に対して、常に安定的にフィットすることが可能となった。
その上、安定的に得られた花留めによれば、所定発光素子や装飾性樹脂成形品と組み合わせた場合に、発色したり、装飾性や情報性にさらに優れた花留めを、効果的かつ経済的に提供できるようになった。
【符号の説明】
【0074】
10:花留め(塊体)
10a:隙間(立体的網目構造)
12:線条部材
20:花器
22:装飾性樹脂成型品
50:射出成型装置52:筒状筐体
52a:噴射口
54:シリンダー
56:逆流防止弁
58:加熱装置
60:ホッパー
62:押出し装置
64:駆動装置(モータ)
70:金属製斜路
72:支持部材
74:球状メッシュ容器
100:金型
100a〜c:金型パーツ
100d:金型固定部材
100e:金型固定孔
102:ランナー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8