(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御電流供給電極は、前記第2の深さを有する第2導電型の第1の不純物層と、第1の不純物層の表面に設けられ、前記第1の深さを有し、前記第1の不純物層よりも高濃度の第2の不純物層とを含むことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
前記半導体層および前記電極分離拡散層の表面は、前記第1及び第2の制御電流供給電極及び前記ホール電圧出力電極が設けられている領域を除いて絶縁膜で覆われていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の半導体装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の構造では、以下のような問題が生じる。
上述のとおり、二つの制御電流供給電極間に電流を供給すると、電流のほぼ全てが基板表面と平行な方向に流れるが、この電流は、磁気感受部となる半導体基板内において、コンタクト領域間の最短経路となる部分に特に集中して流れることとなる。したがって、コンタクト領域より下の磁気感受部における基板裏面に近い領域には、電流がほとんど流れない状態となる。また、制御電流供給電極を構成する導電体が埋め込まれたトレンチの内側面には絶縁膜が形成されているため、電流は、二つのトレンチの側壁間の磁気感受部にもほとんど流れない。したがって、基板と平行な方向に流れる電流の基板の深さ方向における幅が狭くなる。
【0008】
ホール素子の磁気感度は、流れる電流の幅に比例して高くなることが知られているが、特許文献1の構造では、上述のとおり、基板と平行な方向に流れる電流の幅が狭くなってしまうため、結果として、感度をあまり高くすることができないという問題がある。
【0009】
また、ホール素子においては、磁界が印加されていないときでも、いわゆるオフセット電圧が出力されることが知られており、磁気センサとして用いる場合には、オフセット電圧を除去する必要がある。
【0010】
オフセット電圧を除去する方法として知られているスピニングカレント法を用いて、縦型ホール素子においてオフセット電圧の除去(オフセットキャンセル)を行うには、直線上に並べられた複数の電極を、制御電流供給電極とホール電圧出力電極との役割を交互に入れ替えて使用できるようにし、且つ、電流を流す方向を切り替える必要がある。
【0011】
しかし、特許文献1の構造では、制御電流供給電極は、上述のとおり、トレンチ内に絶縁膜を介して埋め込まれた導電体とその底部に接続されたコンタクト領域とから構成されている一方、ホール電圧出力電極は、半導体基板の表面に形成されたコンタクト領域により構成されている。
【0012】
かかる構成では、制御電流供給電極とホール電圧出力電極との役割を交互に入れ替えて使用しようとすると、半導体基板の表面に形成されたコンタクト領域である二つの制御電流供給電極間には、トレンチ内に絶縁膜を介して埋め込まれた導電体とその底部に接続されたコンタクト領域とから構成されホール電圧出力電極のトレンチ部分が存在することになる。このトレンチの内側面には絶縁膜が形成されていることから、半導体基板の表面の制御電極間に電流を流そうとしても、トレンチ内の絶縁膜によって電流の流れが阻止されてしまう。したがって、特許文献1の構造では、スピニングカレント法によるオフセットキャンセルを行うことは非常に困難である。
【0013】
したがって、本発明は、基板と平行な方向に流れる電流による感度を向上させるとともに、スピニングカレント法によるオフセットキャンセルが可能な縦型ホール素子を有する半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の半導体装置は、第1導電型の半導体基板と、前記半導体基板上に設けられた縦型ホール素子とを有する半導体装置であって、前記縦型ホール素子は、前記半導体基板上に設けられた第2導電型の半導体層と、前記半導体層の表面において、第1の制御電流供給電極と、ホール電圧出力電極と、第2の制御電流供給電極とが第1の方向に延びる直線上にこの順に配置された第1の電極セットと、前記第1の電極セットと同一の構成を有し、前記第1の方向に垂直な第2の方向に伸びる直線上に前記第1の電極セットに並んで設けられた第2乃至第5の電極セットと、前記半導体層の表面において前記第1乃至第5の電極セットの内の隣接する電極セット間をそれぞれ分離するように設けられた四つの第1導電型の電極分離拡散層とを備え、前記ホール電圧出力電極は、第1の深さを有し、前記第1及び第2の制御電流供給電極は、前記第1の深さ及び前記電極分離拡散層の深さよりも深い第2の深さを有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、第2導電型の半導体層中に、制御電流供給電極がホール電圧出力電極及び電極分離拡散層よりも深く設けられているため、二つの制御電流供給電極間に電流を流したとき、その電流は、基板と平行な方向に流れ、且つ半導体層内を深さ方向に幅広く、すなわち、電極分離拡散層の底部から駆動電流供給電極の底部までの間の領域全体に亘って流れることとなる。したがって、ホール素子の磁気感度を高くすることが可能となる。
【0016】
また、第2の方向に延びる直線上に並んで設けられた第1乃至第5の電極セットの各々が、第1の制御電流供給電極と、ホール電圧出力電極と、第2の制御電流供給電極とが第2の方向と垂直な第1の方向に延びる直線上にこの順に配置された構成となっていることにより、例えば、以下のようにして、スピニングカレント法により、オフセットキャンセルを行うことができる。
【0017】
すなわち、中央の電極セットの第1及び第2の制御電流供給電極と両端に位置する二つの電極セットそれぞれの第1及び第2の制御電流供給電極との間に一方向と反対方向に電流を供給したときに、端から2番目の電極セットのホール電圧出力電極と当該端から4番目の電極セットのホール電圧出力電極との間に発生する一方向と反対方向の電流それぞれに対応する電圧を二つの出力電圧として得、さらに、端から2番目の電極セットの第1及び第2の制御電流供給電極と当該端から4番目の電極セットの第1及び第2の制御電流供給電極との間に一方向と反対方向に電流を供給したときに、中央の電極セットのホール電圧出力電極と両端に位置する二つの電極セットのホール電圧出力電極との間に発生する一方向と反対方向の電流それぞれに対応する電圧を二つの出力電圧として得ることができる。こうして得られた四つの出力電圧を加減算することにより、オフセット電圧を除去することが可能となる。
このように、高感度且つオフセットキャンセルが可能な縦型ホール素子を有する半導体装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態の縦型ホール素子100を有する半導体装置を説明するための図であり、
図1(a)は、平面図、
図1(b)は、
図1(a)のL−L’線に沿った断面図、(c)は、(a)のM−M’線に沿った断面図である。
【0020】
図1に示すように、本実施形態の半導体装置は、P型(第1導電型)の半導体基板10と、半導体基板10上に設けられた縦型ホール素子100と、縦型ホール素子100の周囲を取り囲むように設けられたP型の素子分離拡散層70とを備えている。
【0021】
縦型ホール素子100は、半導体基板10上に設けられたN型(第2導電型)の半導体層20と、N型半導体層20の表面に設けられ、X方向(「第2の方向」ともいう)に延びる直線上に順に並べられたN型の不純物領域からなる制御電流供給電極及びホール電圧出力電極をそれぞれ含む電極セットES1〜ES5と、電極セットES1〜ES5の内の隣接する電極セット間をそれぞれ分離するP型の電極分離拡散層51〜54とを備えて構成されている。
【0022】
電極セットES1においては、制御電流供給電極31
1と、ホール電圧出力電極41と、制御電流供給電極31
2とがY方向(「第1の方向」ともいう)に延びる直線上にこの順に配置されている。
【0023】
なお、制御電流供給電極31
1と制御電流供給電極31
2とには、動作時、同一の電圧が印加されて一つの制御電流供給電極31として機能するため、以下の説明では、まとめて制御電流供給電極31とも呼ぶ。
【0024】
制御電流供給電極31は、
図1(b)及び(c)に示すように、ホール電圧出力電極41及び電極分離拡散層51〜54のいずれの深さよりも深く形成されている。
また、制御電流供給電極31の濃度とホール電圧出力電極41の濃度とは、略同等である。
電極セットES2〜ES5については、いずれも電極セットES1と同一の構成を有しているため、詳細な説明は省略する。
【0025】
さらに、縦型ホール素子100においては、N型半導体層20の表面の制御電流供給電極電極31〜35及びホール電圧出力電極41〜45が設けられている領域を除く領域を覆うように、絶縁膜として、例えばSiO
2膜60が設けられている。これにより、N型半導体層20表面において、半導体基板10と平行に流れる電流を抑制することができる。
【0026】
素子分離拡散層70は、N型半導体層20の底よりも深く、P型の半導体基板10に達するように形成されている。これにより、縦型ホール素子100を半導体基板10上の他の領域(図示せず)から電気的に分離している。
【0027】
なお、本縦型ホール素子100において、P型電極分離拡散層51〜54は、例えば、N型半導体層20内にP型の不純物を選択的に拡散することにより形成される。
また、駆動電流供給電極31〜35及びホール電圧出力電極41〜45は、例えば、以下のようにして形成される。
【0028】
まず、P型電極分離拡散層51〜54形成後に、P型電極分離拡散層51〜54上を覆い、駆動電流供給電極31〜35及びホール電圧出力電極41〜45を形成する領域を残すように、SiO
2膜60を例えばLOCOS法により形成し、これをマスクとしてN型不純物を導入することにより、ホール電圧出力電極41〜45が形成される。このとき、駆動電流供給電極31〜35を形成する領域にもホール電圧出力電極41〜45と同じ深さのN型の不純物領域が形成される。ここで、ホール電圧出力電極41〜45の深さは、P型電極分離拡散層51〜54の深さより浅くなるように形成される。
【0029】
続いて、駆動電流供給電極31〜35を形成する領域に開口を有し、ホール電圧出力電極41〜45上を覆うレジストを形成し、これをマスクとしてN型不純物を深く導入することにより、駆動電流供給電極31〜35が形成される。
【0030】
次に、本実施形態の半導体装置における縦型ホール素子100において、半導体基板10と平行な方向の磁界成分を検知する原理について、
図2及び
図3を用いて説明する。
【0031】
図2(a)は、
図1(a)のN−N’線に沿った断面図であり、
図2(b)は、本実施形態の縦型ホール素子100において、駆動電流供給電極33から駆動電流供給電極31及び35へ電流が流れるように、駆動電流供給電極31、33及び35に駆動電流を供給したときに流れる電流のうち、ホール電圧出力電極42と44の下部及びその近辺に流れる電流の様子を模式的に表した図である。
磁界は、半導体基板10と平行な方向に、
図2(a)において、紙面の奥側から手前側へかかっているものとする。
【0032】
駆動電流供給電極33から駆動電流供給電極31及び35へ電流が流れるように駆動電流供給電極31、33及び35に駆動電流を供給すると、電流は、磁気感受部となるN型半導体層20において、駆動電流供給電極33(33
1、33
2)から駆動電流供給電極31(31
1、31
2)及び35(35
1、35
2)へ向かって、それぞれ半導体基板10と平行な方向に流れる。
【0033】
このとき、ホール電圧出力電極42と44の下部及びその近辺においては、電流は、
図2(a)に点線で示しているP型電極分離拡散層51〜54の底部から、駆動電流供給電極31、33、35の底部までの間の領域に亘って流れることとなる。すなわち、電流は、深さ方向に幅広く流れることとなる。
【0034】
さらに
図2(b)を参照して説明すると、駆動電流供給電極33から駆動電流供給電極31及び35へ電流が流れるように駆動電流を供給した場合、電流は、駆動電流供給電極33
1から31
1へ、33
1から31
2へ、33
2から31
1へ、33
2から31
2へ、及び駆動電流供給電極33
1から35
1へ、33
1から35
2へ、33
2から35
1へ、33
2から35
2へと流れる。これら各方向に流れる電流成分のうち、主に、ホール電圧出力電極42と44それぞれの下部及びその近辺に流れる
図2(b)に破線矢印IP1で示すような電流成分に対し、磁界の作用により、電流と磁界の双方に垂直な方向に起電力が発生する。
【0035】
詳細には、駆動電流供給電極33から31へ向かって半導体基板10と平行な方向に流れる電流に対しては、半導体基板10からホール電圧出力電極42へ向かう方向(上方向)に、駆動電流供給電極33から35へ向かって半導体基板10と平行な方向に流れる電流に対しては、ホール電圧出力電極44から半導体基板10へ向かう方向(下方向)にそれぞれローレンツ力が発生する。
これにより、ホール電圧出力電極42と44との間に電位差が生じ、この電位差によって磁界を検知することができる。
【0036】
また、電流を流す方向を逆方向にした場合、つまり、制御電流供給電極31及び35から制御電流供給電極33へ電流が流れるように駆動電流を供給した場合にも、上記と同様にして、磁界を検知することができる。
【0037】
すなわち、主に、
図2(b)の破線矢印IP1と反対方向に流れる電流成分に対し、磁界の作用により、電流と磁界の双方に垂直な方向に起電力が発生し、これにより、ホール電圧出力電極42と44との間に、
図2(b)の場合と反対の電位差が生じ、この電位差によって、磁界を検知することができる。
【0038】
図3(a)は、
図1(a)のO−O’線に沿った断面図であり、
図3(b)は、本実施形態の縦型ホール素子100において、駆動電流供給電極32から駆動電流供給電極34へ電流が流れるように、駆動電流供給電極32及び34に駆動電流を供給したときに流れる電流のうち、ホール電圧出力電極43の下部及びその近辺に流れる電流の様子を模式的に表した図である。
【0039】
磁界は、半導体基板10と平行な方向に、
図3(a)において、紙面の奥側から手前側へかかっているものとする。
また、ホール電圧出力電極41、45は、いずれも基準電圧に接続されているものとする。
【0040】
駆動電流供給電極32から駆動電流供給電極34へ電流が流れるように駆動電流供給電極32及び34に駆動電流を供給すると、電流は、磁気感受部となるN型半導体層20において、駆動電流供給電極32(32
1、32
2)から駆動電流供給電極34(34
1、34
2)へ向かって、半導体基板10と平行な方向に下部を流れる。
【0041】
このとき、ホール電圧出力電極43のの下部及びその近辺においては、電流は、
図3(a)に点線で示しているP型電極分離拡散層52、53の底部から、駆動電流供給電極32、34の底部までの間の領域に亘って流れることとなる。すなわち、電流は、深さ方向に幅広く流れることとなる。
【0042】
さらに
図3(b)を参照して説明すると、駆動電流供給電極32から駆動電流供給電極34へ電流が流れるように駆動電流を供給した場合、電流は、駆動電流供給電極32
1から34
1へ、32
1から34
2へ、32
2から34
1へ、32
2から34
2へと流れる。これら各方向に流れる電流成分のうち、主に、ホール電圧出力電極43の下部及びその近辺に流れる
図3(b)に破線矢印IP2で示すような電流成分に対し、磁界の作用により、電流と磁界の双方に垂直な方向に起電力が発生する。
【0043】
詳細には、駆動電流供給電極32から34へ向かって半導体基板10と平行な方向に流れる電流に対しては、ホール電圧出力電極43から半導体基板10へ向かう方向(下方向)にローレンツ力が発生する。
これにより、ホール電圧出力電極43とホール電圧出力電極41及び45との間に電位差が生じ、この電位差によって磁界を検知することができる。
【0044】
また、電流を流す方向を逆方向にした場合、つまり、制御電流供給電極34から制御電流供給電極32へ電流が流れるように駆動電流を供給した場合にも、上記と同様にして、磁界を検知することができる。
【0045】
すなわち、主に、
図3(b)の破線矢印IP2と反対方向に流れる電流成分に対し、磁界の作用により、電流と磁界の双方に垂直な方向に起電力が発生し、これにより、ホール電圧出力電極43とホール電圧出力電極41及び45との間に、
図3(b)の場合と反対の電位差が生じ、この電位差によって、磁界を検知することができる。
【0046】
このように、本実施形態によれば、駆動電流供給電極33と駆動電流供給電極31及び35へ電流との間に電流を流した場合にも、駆動電流供給電極32と駆動電流供給電極34との間に電流を流した場合にも、半導体基板10と平行な方向に流れる電流の深さ方向における幅を広くすることができる。
【0047】
ホール素子の磁気感度は、流れる電流の幅に比例することから、本実施形態によれば、高い磁気感度を得ることが可能となる。このため、N型半導体層20の厚さは、厚いほど好ましい。
【0048】
なお、本実施形態においては、
図2(a)及び
図3(a)に破線で示した領域全体に亘って電流が均一に流れることが望ましい。そのため、N型半導体層20は、濃度分布が一定であることが好ましい。N型半導体層20の濃度分布を一定にするには、例えば、N型半導体層20をエピタキシャル層とすることで実現できる。
【0049】
さらに、ホール素子の磁気感度は、移動度にも比例して高くなることが知られていることから、磁気感受部であるN型半導体層20の濃度は低いほど好ましく、例えば、1×10
15〜1×10
17atoms/cm
3程度であることが好ましい。
以上のとおり、本実施形態によれば、磁気感度を高くすることが可能となる。
【0050】
次に、本実施形態の縦型ホール素子100を有する半導体装置において、スピニングカレント法によりオフセット電圧を除去する方法について説明する。
まず、
図2を用いて説明したように、駆動電流供給電極33から駆動電流供給電極31及び35へ電流が流れるように駆動電流を供給することにより、ホール電圧出力電極42と44との間に生じた電圧を出力電圧Vout1として得る。また、電流を流す方向を逆方向にする、すなわち、制御電流供給電極31及び35から制御電流供給電極33へ電流が流れるように駆動電流を供給することにより、ホール電圧出力電極42と44との間に生じた電圧を出力電圧Vout2として得る。
【0051】
次に、
図3を用いて説明したように、制御電流供給電極32から制御電流供給電極34へ電流が流れるように駆動電流を供給することにより、ホール電圧出力電極43とホール電圧出力電極41及び45との間の電圧を出力電圧Vout3として得る。また、電流を流す方向を逆方向にする、すなわち、制御電流供給電極34から制御電流供給電極32へ電流が流れるように駆動電流を供給することにより、ホール電圧出力電極43とホール電圧出力電極41及び45との間の電圧を出力電圧Vout4として得る。
そして、これら出力電圧Vout1〜Vout4を加減算することにより、オフセット電圧を除去することができる。
【0052】
このように、本実施形態によれば、制御電流供給電極間に流す電流の幅を広くすることができ、これにより、縦型ホール素子100の磁気感度を向上させることが可能となるとともに、スピニングカレント法によるオフセットキャンセルを行うことも可能となる。
したがって、本実施形態の縦型ホール素子100を用いることにより、高精度な磁気センサを提供することが可能となる。
【0053】
次に、
図4に、本実施形態の縦型ホール素子100の変形例を示す。
図4(a)は、
図2(a)の断面図に対応した図であり、
図4(b)は、
図3(a)の断面図に対応した図である。
【0054】
図4(a)及び(b)に示すように、本変形例では、駆動電流供給電極31〜35の深さをN型半導体層20の深さと略同等としている。これにより、電流が半導体層20と半導体基板との界面付近まで流れられるようになり、
図2(a)及び
図3(a)に示す例よりも、半導体基板と平行な方向に流れる電流の深さ方向における幅を広くすることができる。
【0055】
また、本変形例では、電極分離拡散層51〜54の深さをホール電圧出力電極41〜45の深さと略同等としている。これにより、電流がホール電圧出力電極42〜44の近傍まで流れられるようになり、電流の深さ方向における幅をさらに広くすることができる。
【0056】
このように、駆動電流供給電極31〜35は、半導体層20の厚さの範囲内で深いほど好ましく、電極分離拡散層51〜54は、各電極間を分離できる範囲において浅いほど好ましい。
このように、本変形例によれば、磁気感度をさらに向上させることが可能となる。
【0057】
[第2の実施形態]
上記第1の実施形態においては、制御電流供給電極31〜35の濃度がホール電圧出力電極41〜45の濃度と略同等であり、深さが異なる例を示した。
本実施形態では、制御電流供給電極を上記第1の実施形態の制御電流供給電極とは異なる構成とした例について説明する。
【0058】
説明をわかりやすくするために、
図1に示す第1の実施形態の縦型ホール素子100において、制御電流供給電極31〜35を本実施形態による構成の制御電流供給電極に置き換えた例を説明する。
【0059】
図5は、本発明の第2の実施形態の縦型ホール素子200を有する半導体装置を説明するための図であり、
図5(a)は、平面図、
図5(b)は、
図5(a)のL2−L2’線に沿った断面図、
図5(c)は、
図5(a)のM2−M2’線に沿った断面図である。
なお、
図1に示す縦型ホール素子100を有する半導体装置と同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0060】
図5(b)に示すように、縦型ホール素子200においては、駆動電流供給電極31
1〜35
1は、それぞれ、N型不純物層31
1a及び31
1b、N型不純物層32
1a及び32
1b、N型不純物層33
1a及び33
1b、N型不純物層34
1a及び34
1b、N型不純物層35
1a及び35
1bによって構成されている。図示しないが、駆動電流供給電極31
2〜35
2も同様である。
【0061】
N型不純物層31
1a〜35
1aは、N型不純物層31
1b〜35
1bの表面に設けられ、ホール電圧出力電極41(及び42〜45)と略同一濃度且つ略同一深さを有している。
N型不純物層31
1b〜35
1bは、ホール電圧出力電極41(及び42〜45)及び電極分離拡散層51〜54のいずれの深さよりも深く形成されている。
また、N型不純物層31
1b〜35
1bは、N型不純物層31
1a〜35
1aよりも濃度が低く、且つ広い幅を有している。
【0062】
一方、P型素子分離拡散層70によって縦型ホール素子200と電気的に分離された半導体基板10上の他の領域(図示せず)には、縦型ホール素子200からの出力信号を処理する、あるいは縦型ホール素子200へ信号を供給するための回路を構成するトランジスタ等の素子が設けられる。かかる素子を形成するために、当該領域の少なくとも一部には、Nウェルが形成される。
【0063】
したがって、N型不純物層31
1b〜35
1b(及び31
2b〜35
2b)は、上記Nウェルと共通の工程で形成することができる。これにより、当該Nウェルは、N型不純物層31
1b〜35
1b(及び31
2b〜35
2b)と略同一の深さ及び略同一の濃度分布を有することとなる。
【0064】
このように、本実施形態によれば、製造プロセスを増加させることなく、N型不純物層31
1a〜35
1a(及び31
2a〜35
2a)及びN型不純物層31
1b〜35
1b(及び31
2b〜35
2b)からなる駆動電流供給電極31〜35を形成することができる。
【0065】
なお、本実施形態における駆動電流供給電極31〜35も、電流の深さ方向における幅をさらに広くするために、
図4に示した第1の実施形態の縦型ホール素子100の変形例における駆動電流供給電極31〜35と同様、深いほど好ましい。この場合、N型不純物層31
1a〜35
1a(及び31
2a〜35
2a)の深さは変えずに、N型不純物層31
1b〜35
1b(及び31
2b〜35
2b)の深さを深くすることが好ましい。
【0066】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは言うまでもない。
例えば、上記実施形態においては、第1導電型をP型、第2導電型をN型として説明したが、導電型を入れ替えて、第1導電型をN型、第2導電型をP型としても構わない。
【0067】
また、上記実施形態においては、縦型ホール素子100及び200がそれぞれ5つの駆動電流供給電極31〜35及び5つのホール電圧出力電極41〜45を備える例を示したが、スピニングカレント法は、駆動電流供給電極とホール電圧出力電極の数はそれぞれ5つに限らず、それぞれ5つ以上の電極があれば実施することが可能である。