特許第6824089号(P6824089)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6824089
(24)【登録日】2021年1月14日
(45)【発行日】2021年2月3日
(54)【発明の名称】作業車
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/20 20060101AFI20210121BHJP
   F16D 1/02 20060101ALI20210121BHJP
   F16D 1/04 20060101ALI20210121BHJP
   F16D 1/06 20060101ALI20210121BHJP
【FI】
   B62D1/20
   F16D1/02 100
   F16D1/02 120
   F16D1/04 200
   F16D1/06 244
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-59614(P2017-59614)
(22)【出願日】2017年3月24日
(65)【公開番号】特開2018-161939(P2018-161939A)
(43)【公開日】2018年10月18日
【審査請求日】2019年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】正円 茂夫
【審査官】 鈴木 貴晴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−129061(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/008754(WO,A1)
【文献】 特開2010−105412(JP,A)
【文献】 特開平11−115769(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/20
F16D 1/02
F16D 1/04
F16D 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングハンドルに連結されたハンドル軸と、
前記ハンドル軸と同一の回動軸心上に配置され、ステアリング機構を操作するステアリング軸と、
前記ハンドル軸と前記ステアリング軸とに対して異形嵌合して、前記ハンドル軸と前記ステアリング軸とを前記回動軸心周りに一体回動するように連結するカップリング機構と、が備えられ、
前記カップリング機構に、前記ハンドル軸と前記ステアリング軸とに亘って設けられ、前記ハンドル軸の軸端部及び前記ステアリング軸の軸端部とが挿通される筒状のボス部材と、前記ボス部材と前記ハンドル軸とに亘る状態で取り付けられる第一キー部材と、前記ボス部材と前記ステアリング軸とに亘る状態で取り付けられる第二キー部材と、が備えられ、
前記ハンドル軸における異形嵌合部の外周部に第一係合凹部が形成されると共に前記ボス部材における前記第一係合凹部に対応する箇所に前記ボス部材の内外に亘る第一貫通孔が形成され、前記第一係合凹部と前記第一貫通孔とが連通することで、前記第一キー部材の外周形状に対応する挿通孔が構成され、
前記第一キー部材は、前記第一係合凹部及び前記第一貫通孔に挿通されて、前記第一係合凹部と前記第一貫通孔との両方に係合して前記回動軸心方向における前記ボス部材と前記ハンドル軸との相対移動を規制し、
前記ステアリング軸における異形嵌合部の外周部に第二係合凹部が形成されると共に前記ボス部材における前記第二係合凹部に対応する箇所に前記ボス部材の内外に亘る第二貫通孔が形成され、前記第二係合凹部と前記第二貫通孔とが連通することで、前記第二キー部材の外周形状に対応する挿通孔が構成され、
前記第二キー部材は、前記第二係合凹部及び前記第二貫通孔に挿通されて、前記第二係合凹部と前記第二貫通孔との両方に係合して前記回動軸心方向における前記ボス部材と前記ステアリング軸との相対移動を規制し、
前記第一係合凹部は、前記ハンドル軸の外周部全周に亘る周溝であり、かつ、前記第二係合凹部は、前記ステアリング軸の外周部全周に亘る周溝である作業車。
【請求項2】
前記ボス部材は、周方向において切れ目を有するC型形状の断面に構成され、
前記第一キー部材及び前記第二キー部材は、前記切れ目を挟んで一方側から他方側に挿通されて締め付け固定される締結具である請求項1に記載の作業車。
【請求項3】
前記第一係合凹部及び前記第一貫通孔は、前記第一係合凹部と前記第一貫通孔とが連通することで前記ハンドル軸における異形嵌合部の外周部に接線状に延びる挿通孔が形成されるように構成され、
前記第二係合凹部及び前記第二貫通孔は、前記第二係合凹部と前記第二貫通孔とが連通することで前記ステアリング軸における異形嵌合部の外周部に接線状に延びる挿通孔が形成されるように構成されている請求項1又は2に記載の作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリングハンドルに連結されたハンドル軸と、ハンドル軸と同一の回動軸心上に配置され、ステアリング機構を操作するステアリング軸と、が備えられた作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の作業車が例えば特許文献1に記載されている。同文献の作業車には、ハンドル軸とステアリング軸(同文献では「入力軸」)とに対して異形嵌合して、ハンドル軸とステアリング軸とを回動軸心周りに一体回動するように連結する連結機構が備えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−129061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の技術では、連結機構においてハンドル軸とステアリング軸とが回動軸心方向に沿って相対移動しうる構造になっているため、対地作業による振動等の負荷が長期間に亘って繰り返しかかると、ハンドル軸の異形嵌合部やステアリング軸の異形嵌合部が摺動で摩耗し、ハンドル軸とステアリング軸との間にガタつきを生じるおそれがあった。
【0005】
上記実情に鑑み、本発明は、ハンドル軸とステアリング軸との間にガタつきが生じ難い作業車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の作業車は、
ステアリングハンドルに連結されたハンドル軸と、
前記ハンドル軸と同一の回動軸心上に配置され、ステアリング機構を操作するステアリング軸と、
前記ハンドル軸と前記ステアリング軸とに対して異形嵌合して、前記ハンドル軸と前記ステアリング軸とを前記回動軸心周りに一体回動するように連結するカップリング機構と、が備えられ、
前記カップリング機構に、前記ハンドル軸と前記ステアリング軸とに亘って設けられ、前記ハンドル軸の軸端部及び前記ステアリング軸の軸端部とが挿通される筒状のボス部材と、前記ボス部材と前記ハンドル軸とに亘る状態で取り付けられる第一キー部材と、前記ボス部材と前記ステアリング軸とに亘る状態で取り付けられる第二キー部材と、が備えられ、
前記ハンドル軸における異形嵌合部の外周部に第一係合凹部が形成されると共に前記ボス部材における前記第一係合凹部に対応する箇所に前記ボス部材の内外に亘る第一貫通孔が形成され、前記第一係合凹部と前記第一貫通孔とが連通することで、前記第一キー部材の外周形状に対応する挿通孔が構成され、
前記第一キー部材は、前記第一係合凹部及び前記第一貫通孔に挿通されて、前記第一係合凹部と前記第一貫通孔との両方に係合して前記回動軸心方向における前記ボス部材と前記ハンドル軸との相対移動を規制し、
前記ステアリング軸における異形嵌合部の外周部に第二係合凹部が形成されると共に前記ボス部材における前記第二係合凹部に対応する箇所に前記ボス部材の内外に亘る第二貫通孔が形成され、前記第二係合凹部と前記第二貫通孔とが連通することで、前記第二キー部材の外周形状に対応する挿通孔が構成され、
前記第二キー部材は、前記第二係合凹部及び前記第二貫通孔に挿通されて、前記第二係合凹部と前記第二貫通孔との両方に係合して前記回動軸心方向における前記ボス部材と前記ステアリング軸との相対移動を規制し、
前記第一係合凹部は、前記ハンドル軸の外周部全周に亘る周溝であり、かつ、前記第二係合凹部は、前記ステアリング軸の外周部全周に亘る周溝であるものである。
【0007】
本発明によれば、カップリング機構をハンドル軸とステアリング軸とに対して異形嵌合することにより、ハンドル軸とステアリング軸とが回動軸心周りに一体回動するようになっている。
そして、ハンドル軸における異形嵌合部の外周部に形成される挿通孔に第一キー部材を挿通してあることでボス部材とハンドル軸とが回動軸心方向に移動することが規制され、ステアリング軸における異形嵌合部の外周部に形成される挿通孔に第二キー部材を挿通してあることでハンドル軸とステアリング軸とが回動軸心方向に移動することが規制される。
これにより、ハンドル軸とステアリング軸とは、カップリング機構を介した連結により、回動軸心周りに相対移動せず、かつ、回動軸心方向に相対移動し難くなっている。このため、対地作業による振動等の負荷が繰り返しかかっても、ハンドル軸における異形嵌合部やステアリング軸における異形嵌合部の摩耗が生じ難くなる。
よって、本発明であれば、ハンドル軸とステアリング軸との間にガタつきが生じ難いものとなる。
【0008】
【0009】
上記構成によれば、例えば、異形嵌合部がスプライン機構である場合には、ステアリング軸にハンドル軸を組み付ける際に、ステアリング軸とハンドル軸との位相関係によらず、第一キー部材をハンドル軸における周溝である第一係合凹部に挿通でき、第二キー部材をステアリング軸における周溝である第二係合凹部に挿通できる。このため、ステアリング軸に対してハンドル軸を組み付け易くなる。
【0010】
本発明において、
前記ボス部材は、周方向において切れ目を有するC型形状の断面に構成され、
前記第一キー部材及び前記第二キー部材は、前記切れ目を挟んで一方側から他方側に挿通されて締め付け固定される締結具であると好適である。
【0011】
上記構成によれば、第一キー部材及び第二キー部材を締め付けることにより、切れ目が狭まってボス部材が縮径し、ボス部材の内面がハンドル軸の外面とステアリング軸の外面を押圧する押圧力が作用する。この押圧力により、ボス部材とハンドル軸との回動軸心周りと回動軸心方向の相対移動、及び、ボス部材とハンドル軸との回動軸心周りと回動軸心方向の相対移動をしっかりと規制できるものとなる。
【0012】
本発明において、
前記第一係合凹部及び前記第一貫通孔は、前記第一係合凹部と前記第一貫通孔とが連通することで前記ハンドル軸における異形嵌合部の外周部に接線状に延びる挿通孔が形成されるように構成され、
前記第二係合凹部及び前記第二貫通孔は、前記第二係合凹部と前記第二貫通孔とが連通することで前記ステアリング軸における異形嵌合部の外周部に接線状に延びる挿通孔が形成されるように構成されていると好適である。
【0013】
上記構成によれば、例えば、第一係合凹部及び第一貫通孔により形成される挿通孔が法線状に延びる態様や第二係合凹部及び第二貫通孔により形成される挿通孔が法線状に延びる態様と比較して、第一係合凹部によるハンドル軸の欠損や第二係合凹部によるステアリング軸の欠損を少なくできる。このため、カップリング機構における剛性の低下が抑えられるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】トラクタの全体側面図である。
図2】ハンドルポスト内の断面構造、及び、ステアリング操作系の概略を示す図である。
図3】カップリング機構の周辺の軸方向断面を示す断面図である。
図4】ハンドル軸、ボス部材の周辺の径方向断面を示す断面図である。
図5】ステアリング軸、ボス部材の周辺の径方向断面を示す断面図である。
図6】ハンドル軸、ステアリング軸、ボス部材、第一キー部材、第二キー部材の組み付け方を説明する分解図である。
図7】別実施形態におけるハンドル軸、ボス部材の周辺の径方向断面を示す断面図である。
図8】別実施形態におけるステアリング軸、ボス部材の周辺の径方向断面を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に示すように、トラクタ(「作業車」の一例)の走行機体は、左右一対の前輪11及び左右一対の後輪12からなる走行装置により走行可能に構成されている。左右の前輪11は、前後方向に沿って延びる機体フレームの前部に配置され、駆動及び操向操作自在となっている。左右の後輪12は、機体フレームの後部に配置され、駆動自在となっている。つまり、このトラクタは、四輪駆動型に構成されている。走行機体の後部には、対地作業を行う作業装置(図示なし)を連結するための連結装置13が備えられている。なお、図1の矢印Fが、走行機体の前進方向である「前」であり、図1の矢印Bが、走行機体の後進方向である「後」である。
【0016】
走行機体の前後中央部から後部に至る箇所には、操縦者が運転操作を行う運転部14が備えられている。運転部14には、操縦者が着座可能な運転座席15、前輪11の操向操作を行うホイール式のステアリングハンドル16、転倒防止用のロプスフレーム17等が備えられている。
【0017】
走行機体には、エンジン18を取り付け可能な搭載フレーム19、エンジン18の後部側に一体連結されたクラッチハウジング20、後部側のミッションケース21、クラッチハウジング20とミッションケース21とを連結する伝動ケース22等が備えられている。エンジン18は、開閉可能なボンネット18Aで覆われている。エンジン18の動力に基づいて、左右の前輪11と後輪12、及び、作業装置(図示なし)を駆動できる。
【0018】
〔前輪の操向操作について〕
図1図2に示すように、走行機体には、左右の前輪11を操向操作するナックルアーム23が備えられており、左右のナックルアーム23に亘ってタイロッド24が接続されている。左右一方のナックルアーム23には、ステアリングロッド25が連動連結されている。ステアリングロッド25は、ステアリングハンドル16の操作が伝達される操作アーム26に連動連結されている。
【0019】
図2等に示すように、機体フレームには、ボックス状の支持台27が支持されている。
支持台27には、ステアリング機構28が内蔵されている。支持台27の上部には、斜め後ろ上がりに延びるハンドルポスト29が支持されている。ハンドルポスト29には、支持台27に連結されるブラケット30と、ブラケット30の上部に支持される側面視で門型の支持フレーム31と、支持フレーム31の上部に支持される中空状の中空フレーム32と、が備えられている。中空フレーム32は、機体フレームから立設される板状の支持部材33を介して、ボンネット18Aの後部の立設フレーム33Aに連結支持されている。中空フレーム32の上端部は開放されている。
【0020】
図2図3に示すように、ステアリング操作用のステアリング軸34は、支持台27の上部よりも上方に突出し、ハンドルポスト29の内部(支持フレーム31内の空間)に入り込むように延ばされている。ステアリング機構28を操作するステアリング軸34は、ステアリングハンドル16を連結固定しているハンドル軸35と同一の回動軸心X上に配置されている。
【0021】
図2図5に示すように、ハンドル軸35とステアリング軸34との連結部位には、ハンドル軸35とステアリング軸34とに対して異形嵌合して、ハンドル軸35とステアリング軸34とを回動軸心X周りに一体回動するように連結するカップリング機構36が備えられている。
【0022】
〔カップリング機構について〕
図2図5に示すように、カップリング機構36には、ハンドル軸35とステアリング軸34とに亘って設けられ、ハンドル軸35の軸端部37及びステアリング軸34の軸端部38とが挿通される筒状のボス部材39と、ボス部材39とハンドル軸35とに亘る状態で取り付けられる第一キー部材40と、ボス部材39とステアリング軸34とに亘る状態で取り付けられる第二キー部材41と、が備えられている。
【0023】
図3図6等に示すように、ボス部材39は、回動軸心X方向に長い筒状の部材となっている。ボス部材39の内周部には、ハンドル軸35に対応する第一雌スプライン部42と、ステアリング軸34に対応する第二雌スプライン部43と、が備えられている。第一雌スプライン部42と第二雌スプライン部43とは、一続きの雌スプライン部となっている。ボス部材39は、周方向において切れ目44を有するC型形状の断面に構成されている。ボス部材39は、ハンドル軸35やステアリング軸34とは異なる素材で構成されている。例えば、ボス部材39は、ダクタイル鋳鉄(FCD)製である。ボス部材39の鍔部には、ハンドル軸35側に位置する一対の第一貫通孔45と、ステアリング軸34側に位置する一対の第二貫通孔46と、が備えられている。一対の第一貫通孔45と一対の第二貫通孔46とは、回動軸心X方向に並べて配置されている。
【0024】
図3図4に示すように、一対の第一貫通孔45のうちの一方はネジ切りされた第一雌ネジ孔47になっており、一対の第一貫通孔45のうちの他方はネジ切りされていない第一丸孔48になっている。一対の第二貫通孔46のうちの一方はネジ切りされた第二雌ネジ孔49になっており、一対の第二貫通孔46のうちの他方はネジ切りされていない第二丸孔50になっている。
【0025】
図3図4図6に示すように、ハンドル軸35の軸端部37には、ハンドル軸35の外周外端部よりも引退した第一係合凹部51が設けられている。第一係合凹部51は、ハンドル軸35における異形嵌合部52の外周部に形成されている。異形嵌合部52には、ボス部材39の第一雌スプライン部42に嵌合する第一雄スプライン部53が備えられている。第一係合凹部51は、回動軸心X方向において第一雌スプライン部42の中途部に設けられている。言い換えれば、第一係合凹部51は、回動軸心X方向において異形嵌合部52の雄スプライン同士の間に挟まれている。第一係合凹部51は、ハンドル軸35の外周部全周に亘る周溝である。ボス部材39の内外に亘る第一貫通孔45は、ボス部材39における第一係合凹部51に対応する箇所に設けられている。
【0026】
図3図4に示すように、第一係合凹部51と第一貫通孔45とが連通することで、第一キー部材40の外周形状に対応するハンドル軸35側に位置する挿通孔54が構成される。説明を加えると、第一係合凹部51と第一貫通孔45とが連通することでハンドル軸35における異形嵌合部52の外周部に接線状に延びる挿通孔54が形成される。
【0027】
図2図4図6に示す第一キー部材40は、第一係合凹部51及び第一貫通孔45に挿通されて、第一係合凹部51と第一貫通孔45との両方に係合して回動軸心X方向におけるボス部材39とハンドル軸35との相対移動を規制するようになっている。また、第一キー部材40は、ボス部材39における切れ目44を挟んで一方側から他方側に挿通されて締め付け固定される締結具となっている。第一キー部材40には、第一頭部55と、第一頭部55に連設される第一軸部56と、が設けられている。第一軸部56には、第一雌ネジ孔47に螺合可能な第一雄ネジ部57が設けられている。第一キー部材40は、第一雄ネジ部57を第一雌ネジ孔47に螺合することで、第一頭部55との挟み込みにより、切れ目44を狭めて、ボス部材39を縮径させる接線方向に沿った締結力を作用させるようになっている。
【0028】
図3図5図6に示すように、ステアリング軸34の軸端部38には、ステアリング軸34の外周外端部よりも引退した第二係合凹部58が設けられている。第二係合凹部58は、ステアリング軸34における異形嵌合部59の外周部に形成されている。異形嵌合部59には、ボス部材39の第二雌スプライン部43に嵌合する第二雄スプライン部60が備えられている。第二係合凹部58は、回動軸心X方向において第二雄スプライン部60の中途部に設けられている。言い換えれば、第二係合凹部58は、回動軸心X方向において異形嵌合部59の雄スプライン同士の間に挟まれている。第二係合凹部58は、ステアリング軸34の外周部全周に亘る周溝である。ボス部材39の内外に亘る第二貫通孔46は、ボス部材39における第二係合凹部58に対応する箇所に設けられている。
【0029】
図3図5に示すように、第二係合凹部58と第二貫通孔46とが連通することで、第二キー部材41の外周形状に対応するステアリング軸34側に位置する挿通孔61が構成される。説明を加えると、第二係合凹部58と第二貫通孔46とが連通することで、ステアリング軸34における異形嵌合部59の外周部に接線状に延びる挿通孔61が形成される。
【0030】
図2図3図5図6に示す第二キー部材41は、第二係合凹部58及び第二貫通孔46に挿通されて、第二係合凹部58と第二貫通孔46との両方に係合して回動軸心X方向におけるボス部材39とステアリング軸34との相対移動を規制するようになっている。第二キー部材41は、ボス部材39における切れ目44を挟んで一方側から他方側に挿通されて締め付け固定される締結具となっている。第二キー部材41には、第二頭部62と、第二頭部62に連設される第二軸部63と、が設けられている。第二軸部63には、第二雌ネジ孔49に螺合可能な第二雄ネジ部64が設けられている。第二キー部材41は、第二雄ネジ部64を第二雌ネジ孔49に螺合することで、第二頭部62との挟み込みにより、切れ目44を狭めて、ボス部材39を縮径させる接線方向に沿った締結力を作用させるようになっている。
【0031】
なお、図2に示すように、ハンドル軸35における中空フレーム32の上端部付近には、ハンドル軸35と中空フレーム32との間に介在される例えばゴム製の防振部材65が介在されている。防振部材65の上側には環状の上規制部材66が備えられている。防振部材65の下側には下規制部材67が備えられている。上規制部材66の上側には上止め輪68が中空フレーム32の内周部に着脱可能に取り付けられている。下規制部材67の下側には下止め輪69がハンドル軸35の外周部に着脱可能に取り付けられている。上止め輪68、上規制部材66、防振部材65、下規制部材67、下止め輪69により、中空フレーム32に対してハンドル軸35が上方へ抜けることが防止されている。
【0032】
〔ステアリング軸に対するハンドル軸の組み付けについて〕
図2に示すように、カップリング機構36についての操作は、中空フレーム32の開放部70から行うことができる。まず、図6に示すように、ステアリング軸34の軸端部38にボス部材39を上方からスプライン嵌合させる。そして、ボス部材39の第一貫通孔45とステアリング軸34の第二係合凹部58とに亘って第二キー部材41を挿入し、第二キー部材41の第二雄ネジ部64を第二雌ネジ孔49に螺合する。次に、ボス部材39にハンドル軸35の軸端部37を上方からスプライン嵌合させる。そして、ボス部材39の第二貫通孔46とハンドル軸35の第一係合凹部51とに亘って第一キー部材40を挿入し、第一キー部材40の第一雄ネジ部57を第一雌ネジ孔47に螺合する。この際、ステアリング軸34とボス部材39、及び、ボス部材39とハンドル軸35を、夫々、スプライン嵌合で連結してあり、かつ、第一係合凹部51及び第二係合凹部58を周溝としている。このため、ステアリング軸34とボス部材39との位相関係、ボス部材39とハンドル軸35との位相関係を、ある程度自由に選択可能となるので、ステアリング軸34に対するハンドル軸35の組み付けが行い易くなる。
【0033】
図4図5から理解されるように、第一キー部材40及び第二キー部材41の螺合により、ボス部材39の切れ目44が縮まり、ボス部材39が縮径する。この際、ボス部材39の外周部における切れ目44に接線方向に締結力が作用するので、ボス部材39が均等に縮係し、ボス部材39とステアリング軸34との間、及び、ボス部材39とハンドル軸35との間に、締結による隙間が生じ難くなっている。
【0034】
〔別実施形態〕
以下、上記実施形態に変更を加えた別実施形態について説明する。各別実施形態は、矛盾が生じない限り、複数選択して上記実施形態に適用できる。なお、本発明の範囲は、各実施形態に示した内容に限られるものではない。
【0035】
(1)上記実施形態では、異形嵌合部52の外周部に接線状に延びる挿通孔54が形成されているものを例示しているが、これに限られない。例えば、図7に示すように、異形嵌合部52において法線方向に延びる挿通孔154が形成されていてもよい。この場合、ハンドル軸35には、第一貫通孔45と共に挿通孔154を構成する丸孔状の第一係合凹部135が設けられ、第一キー部材40が、その第一係合凹部135を貫通するものとなる。なお、この場合、第一係合凹部135は、丸孔ではなく、雌ネジ孔であってもよい。
【0036】
(2)上記実施形態では、異形嵌合部59の外周部に接線状に延びる挿通孔61が形成されているものを例示しているが、これに限られない。例えば、図8に示すように、異形嵌合部59の外周部に法線方向に延びる挿通孔161が形成されていてもよい。この場合、ステアリング軸34には、第二貫通孔46と共に挿通孔161を構成する丸孔状の第二係合凹部134が設けられ、第二キー部材41が、その第二係合凹部134を貫通するものとなる。この場合、第二係合凹部134は、丸孔ではなく、雌ネジ孔であってもよい。
【0037】
(3)上記実施形態では、第一キー部材40の第一雄ネジ部57が、第一キー部材40の軸部の略全長に亘っているものを例示しているが、これに限られない。例えば、第一キー部材40の第一雄ネジ部57が、ボス部材39の第一雌ネジ孔47に相当する長さ部分にのみ形成されていてもよい。
【0038】
(4)上記実施形態では、第一キー部材40が締結具であるものを例示しているが、これに限られない。例えば、第一キー部材40が第一雄ネジ部57の設けられていない頭付きピンであってもよい。この場合、頭付きピンの先端に係合片を差し込むなどして抜け止めを図ることができる。
【0039】
(5)上記実施形態では、第二キー部材41の第二雄ネジ部64が、第二キー部材41の軸部の略全長に亘っているものを例示しているが、これに限られない。例えば、第二キー部材41の第二雄ネジ部64が、ボス部材39の第二雌ネジ孔49に相当する長さ部分にのみ形成されていてもよい。
【0040】
(6)上記実施形態では、第二キー部材41が締結具であるものを例示しているが、これに限られない。例えば、第二キー部材41が第二雄ネジ部64の設けられていない頭付きピンであってもよい。この場合、頭付きピンの先端に係合片を差し込むなどして抜け止めを図ることができる。
【0041】
(7)上記実施形態では、一対の第一貫通孔45のうちの一方はネジ切りされた第一雌ネジ孔47になっており、一対の第一貫通孔45のうちの他方はネジ切りされていない第一丸孔48になっているものを例示しているが、これに限られない。例えば、一対の第一貫通孔45が両方ともネジ切りされていない丸孔になっていてもよい。この場合、第一雄ネジ部57を螺合するためのナットがボス部材39の外側に別途設けられる。
【0042】
(8)上記実施形態では、一対の第二貫通孔46のうちの一方はネジ切りされた第二雌ネジ孔49になっており、一対の第二貫通孔46のうちの他方はネジ切りされていない第二丸孔50になっているものを例示しているが、これに限られない。例えば、一対の第二貫通孔46が両方ともネジ切りされていない丸孔になっていてもよい。この場合、第二雄ネジ部64を螺合するためのナットがボス部材39の外側に別途設けられる。
【0043】
(9)上記実施形態では、第一雌スプライン部42と第二雌スプライン部43とが、一続きの雌スプライン部となっているものを例示しているが、これに限られない。例えば、第一雌スプライン部42と第二雌スプライン部43とが、位相が互いに異なる一続きの雌スプライン部であってもよい。
【0044】
(10)上記実施形態では、ステアリング軸34における異形嵌合部59に第二雄スプライン部60が備えられているものを例示しているが、これに限られない。ステアリング軸34とボス部材39との間の異形嵌合は、別の態様であってもよい。例えば、ステアリング軸34における異形嵌合部59が、非円形断面になっており、ボス部材39において、その異形嵌合部59に嵌合させる部位が設けられていてもよい。この場合の非円形断面には、小判型、四角型等の様々なものを採用できる。
【0045】
(11)上記実施形態では、ハンドル軸35における異形嵌合部52に第一雄スプライン部53が備えられているものを例示しているが、これに限られない。ハンドル軸35とボス部材39との間の異形嵌合は、別の態様であってもよい。例えば、ハンドル軸35における異形嵌合部52が、非円形断面になっており、ボス部材39において、その異形嵌合部52に嵌合させる部位が設けられていてもよい。この場合の非円形断面には、小判型、四角型等の様々なものを採用できる。
【0046】
(12)上記実施形態では、第一係合凹部51が、回動軸心X方向において異形嵌合部52の雄スプライン同士の間に挟まれているものを例示しているが、これに限られない。例えば、第一係合凹部51が、回動軸心X方向において異形嵌合部52の雄スプラインに挟まれない箇所に設けられていてもよい。
【0047】
(13)上記実施形態では、第二係合凹部58が、回動軸心X方向において異形嵌合部59の雄スプライン同士の間に挟まれているものを例示しているが、これに限られない。例えば、第二係合凹部58が、回動軸心X方向において異形嵌合部59の雄スプライン同士の間に挟まれない箇所に設けられていてもよい。
【0048】
(14)上記実施形態では、ボス部材39が、ダクタイル鋳鉄製であるものを例示しているが、これに限られない。例えば、ボス部材39が、ハンドル軸35やステアリング軸34と同じ素材やそれ以外の素材で構成されていてもよい。
【0049】
(15)上記実施形態では、中空フレーム32の上端部が開放されているものを例示しているが、これに限られない。例えば、中空フレーム32の上端部を閉塞する蓋部材を備え、中空フレーム32内への塵埃や雨水等の侵入を防止するようにしてもよい。
【0050】
(16)上記実施形態では、ロプスフレーム17が備えられているものを例示しているが、これに限られない。例えば、ロプスフレーム17に代えて、操縦者の搭乗空間を覆うキャビンが備えられていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、上記トラクタの他、コンバイン、田植機等の様々な作業車に利用できる。
【符号の説明】
【0052】
16 :ステアリングハンドル
28 :ステアリング機構
34 :ステアリング軸
35 :ハンドル軸
36 :カップリング機構
37 :ハンドル軸の軸端部
38 :ステアリング軸の軸端部
39 :ボス部材
40 :第一キー部材
41 :第二キー部材
44 :切れ目
45 :第一貫通孔
46 :第二貫通孔
51 :第一係合凹部
52 :ハンドル軸における異形嵌合部
54 :ハンドル軸側の挿通孔
58 :第二係合凹部
59 :ステアリング軸における異形嵌合部
61 :ステアリング軸側の挿通孔
X :回動軸心
図1
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図8