特許第6824097号(P6824097)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6824097-草刈装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6824097
(24)【登録日】2021年1月14日
(45)【発行日】2021年2月3日
(54)【発明の名称】草刈装置
(51)【国際特許分類】
   A01D 34/64 20060101AFI20210121BHJP
   A01D 34/66 20060101ALI20210121BHJP
【FI】
   A01D34/64 B
   A01D34/66 A
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-80010(P2017-80010)
(22)【出願日】2017年4月13日
(65)【公開番号】特開2018-174813(P2018-174813A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2019年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】千田 遼太郎
(72)【発明者】
【氏名】上本 健介
【審査官】 中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2003/0051457(US,A1)
【文献】 米国特許第05465564(US,A)
【文献】 特開2000−004638(JP,A)
【文献】 特開2006−109763(JP,A)
【文献】 特開2014−100126(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 34/63 − 34/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈り刃ハウジングと、
前記刈り刃ハウジングの内部に前記刈り刃ハウジングの上下向きの軸芯を回転中心にして回転可能に設けられ、草を刈り取る刈り刃と、
前記刈り刃ハウジングの内部に設けられると共に前記刈り刃ハウジングの上下方向視において前記刈り刃の回転範囲を囲うマルチングバッフルプレートと、が備えられ、
前記刈り刃は、刈り刃部と、前記刈り刃部の先端部から立ち上がる起風部とを備え、
前記マルチングバッフルプレートのうち、前記回転中心よりも前記刈り刃ハウジングの後方側に位置する後プレート部における下端が前記刈り刃部よりも上方に位置し
前記回転範囲のうち、前記回転中心よりも前記刈り刃ハウジングの前方側に位置する部位に設けられ、刈り草を下向きに流下案内する案内部材を備え、
前記案内部材には、下端側ほど前記刈り刃の回転方向下手側に位置する傾斜案内面が備えられている草刈装置。
【請求項2】
前記後プレート部における前記下端が前記起風部よりも上方に位置している請求項1に記載の草刈装置。
【請求項3】
前記マルチングバッフルプレートのうち、前記回転中心よりも前記刈り刃ハウジングの前方側に位置する前プレート部における下端が前記刈り刃部よりも下方に位置している請求項1又は2に記載の草刈装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刈り刃ハウジングと、前記刈り刃ハウジングの内部に前記刈り刃ハウジングの上下向きの軸芯を回転中心にして回転可能に設けられ、草を刈り取る刈り刃と、が備えられた草刈装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記した草刈装置として、刈り刃ハウジングの内部に設けられると共に刈り刃ハウジングの上下方向視において刈り刃の回転範囲を囲うマルチングバッフルプレートが備えられたものがある。この草刈装置は、刈り刃によって刈り取られた刈り草が、マルチングバッフルプレートの内部において、刈り刃による切断によって細片化されることを可能にされたものである。
【0003】
この種の草刈装置としては、従来、例えば特許文献1に記載されたものがある。特許文献1に記載されたものでは、刈り刃の回転範囲の前側周囲に位置する刈り草ガイド部材、及び、刈り刃の回転範囲の後側周囲に位置する後部バッフルプレートが備えられ、刈り草ガイド部材及び後部バッフルプレートによってマルチングバッフルプレートが構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−195206号公報(図5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した草刈装置において、マルチングバッフルプレートの内部に多量の刈り草が滞留すると、詰まりの原因になる。刈り草が詰まってしまうと、刈取り不良が生じる。
【0006】
本発明は、マルチングバッフルプレート内における刈り草の詰まりを防止することが刈り刃による草刈りに悪影響を及ぼすことを回避しつつ、マルチングバッフルプレート内における刈り草の詰まりを防止できる草刈装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による草刈装置は、
刈り刃ハウジングと、
前記刈り刃ハウジングの内部に前記刈り刃ハウジングの上下向きの軸芯を回転中心にして回転可能に設けられ、草を刈り取る刈り刃と、
前記刈り刃ハウジングの内部に設けられると共に前記刈り刃ハウジングの上下方向視において前記刈り刃の回転範囲を囲うマルチングバッフルプレートと、が備えられ、
前記刈り刃は、刈り刃部と、前記刈り刃部の先端部から立ち上がる起風部とを備え、
前記マルチングバッフルプレートのうち、前記回転中心よりも前記刈り刃ハウジングの後方側に位置する後プレート部における下端が前記刈り刃部よりも上方に位置し
前記回転範囲のうち、前記回転中心よりも前記刈り刃ハウジングの前方側に位置する部位に設けられ、刈り草を下向きに流下案内する案内部材を備え、
前記案内部材には、下端側ほど前記刈り刃の回転方向下手側に位置する傾斜案内面が備えられている。
【0008】
本構成によると、マルチングバッフルプレートのうちの後プレート部の地上高さが刈り刃における刈り刃部の地上高さよりも高くなるので、マルチングバッフルプレートの内部に位置する刈り草が後プレート部と地面との隙間から刈り刃回転範囲の後方に抜け出易く、マルチングバッルプレート内に多量の刈り草が滞留することを防止できる。
また、刈り草が案内部材による流下案内を受けてマルチングバッフルプレートの下端側に向かって流動するので、刈り草が後プレート部と地面との隙間に至って刈り刃回転範囲の後方に抜け出易くなる。
刈り刃回転範囲の後方に抜け出た刈り草は、草刈りの跡地に落ちるので、刈り刃による草刈りの障害物にならない。
【0009】
従って、マルチングバッフルプレート内に刈り草が詰まり難いと共にマルチングバッルプレートから抜け出た刈り草が草刈りの障害物にならず、草刈り作業を能率よくできる。
【0010】
本発明においては、前記後プレート部における前記下端が前記起風部よりも上方に位置していると好適である。
【0011】
本構成によると、後プレート部の地上高さがより高くなり、後プレート部と地面との隙間がより広くなるので、刈り草が刈り刃回転範囲の後方へより抜け出易くなる。
【0012】
本発明においては、前記マルチングバッフルプレートのうち、前記回転中心よりも前記刈り刃ハウジングの前方側に位置する前プレート部における下端が前記刈り刃部よりも下方に位置していると好適である。
【0013】
本構成によると、前プレート部の地上高が刈り刃部の地上高よりも低くなり、前プレート部と地面との隙間が狭くなるので、刈り草が刈り刃回転範囲の前方に抜け出して刈り刃による草刈りの障害物になることを防止できる。
【0014】
【0015】
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】乗用型草刈機の全体を示す左側面図である。
図2】草刈装置を示す底面図である。
図3】草刈装置を示す縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。図1は、乗用型草刈機の全体を示す左側面図である。図1に示す[F]の方向が走行車体の前方向、[B]の方向が走行車体の後方向、紙面表側の方向が走行車体の左方向、紙面裏側の方向が走行車体の右方向と定義する。
【0018】
〔乗用型草刈機の全体の構成〕
図1に示すように、乗用型草刈機は、左右一対の前車輪1が遊転可能に装備され、かつ、左右一対後車輪2が駆動可能に装備された走行車体を備えている。左右一対の前車輪1は、キャスタ型の車輪によって構成されている。左右一対の後車輪2は、一対の静油圧式の無段変速装置(図示せず)から各別に伝達される動力によって駆動される。走行車体の前部に運転部3が設けられている。運転部3には、運転座席4、左右一対の操縦レバー5が備えられている。走行車体の後部に、原動部6が設けられている。原動部6には、無段変速装置などに動力を出力するエンジン7が備えられている。走行車体の前後輪間に、草刈装置8が設けられている。草刈装置8は、リンク機構9を介して車体フレーム10に支持されている。草刈装置8は、リンク機構9が昇降操作されることにより、ゲージ輪11が地面に接地した下降作業状態と、ゲージ輪11が地面から浮上した上昇非作業状態とにわたって昇降操作される。
【0019】
乗用型草刈機においては、左右一対の操縦レバー5を揺動操作することにより、一対の無段変速装置を各別に変速操作でき、左右の後車輪2の駆動速度及び駆動方向が各別に変更されて、走行車体を操向操作できる。草刈装置8を下降作業状態にして走行車体を走行させることにより、芝や草を草刈装置8によって刈り取ることができる。
【0020】
〔草刈装置8の構成〕
図1,2,3に示すように、草刈装置8は、刈り刃ハウジング12を備えている。刈り刃ハウジング12は、天板部13、天板部13の前縁部から下向きに延出された前壁部14、天板部13の左右の縁部から下向きに延出された左右の横壁部15を備えている。
【0021】
刈り刃ハウジング12の内部に、刈り刃ハウジング12の横幅方向に並ぶ3つの刈り刃16が設けられている。各刈り刃16は、回転支軸17を介して天板部13に支持され、回転支軸17の軸芯を回転中心Pにして回転可能となっている。回転支軸17は、カバー18によって覆われている。回転支軸17の軸芯は、刈り刃ハウジング12の上下方向に沿った方向に延びている。天板部13の上面側に駆動部19が設けられている。エンジン7からの動力が回転軸19a(図1参照)を介して駆動部19に入力され、入力された動力によって回転支軸17が駆動されることにより、刈り刃16が回転方向F(図2参照)に駆動される。
【0022】
図2,3に示すように、3つの刈り刃16は、長手方向での中間部が回転支軸17に支持された刈り刃部16aを備えている。刈り刃部16aの両方の先端部にエッジ16b及び起風部16cが備えられている。起風部16cは、刈り刃部16aの先端部から刈り刃部16aの上面側に立ち上がっている。刈り刃16が駆動されることにより、起風部16cが刈り刃部16aと共に回転し、起風部16cによって搬送風が起こされる。
【0023】
図2,3に示すように、刈り刃ハウジング12の内部に、3つのマルチングバッフルプレート20が設けられている。3つのマルチングバッフルプレート20は、刈り刃ハウジング12の上下方向視において、3つの刈り刃16の回転範囲を各別に囲う状態で設けられている。各マルチングバッフルプレート20は、天板部13から下向きに延出され、天板部13に支持されている。隣り合うマルチングバッフルプレート20における一方のマルチングバッフルプレート20と、他方のマルチングバッフルプレート20とが交錯する部位において、一方のマルチングバッフルプレート20におけるプレート部分20aが他方のマルチングバッフルプレート20におけるプレート部分を構成している。
【0024】
図2に示すように、マルチングバッフルプレート20のうち、刈り刃16の回転中心Pよりも刈り刃ハウジング12の後方側に位置する後プレート部20Rは、後プレート部20Rの下端RTが刈り刃16のうちの起風部16cよりも上方に位置する状態で構成されている。草刈装置8が下降作業状態に下降された状態において、後プレート部20Rと地面との間に広い隙間が形成される。
【0025】
図2に示すように、マルチングバッフルプレート20のうち、刈り刃16の回転中心Pよりも刈り刃ハウジング12の前方側に位置する前プレート部20Fは、前プレート部20Fの下端FTが刈り刃16のうちの刈り刃部16aよりも下方に位置する状態で構成されている。草刈装置8が下降作業状態に下降された状態において、前プレート部20Fと地面との間に形成される隙間が狭くなる。
【0026】
図2に示すように、刈り刃16の回転範囲のうち、刈り刃16の回転中心Pよりも刈り刃ハウジング12の前方側に位置する部位に案内部材21が設けられている。案内部材21は、マルチングバッフルプレート20に支持されている。案内部材21には、下端側ほど刈り刃回転方向下手側に位置する傾斜案内面21aが備えられている。起風部16cによって起こされた搬送風の作用によってマルチングバッフルプレート20の内部を回転するように流動する刈り草が案内部材21の傾斜案内面21aに当接し、マルチングバッフルプレート20の内部を下方に向って流動するように傾斜案内面21aによって流下案内される。
【0027】
草刈装置8においては、草刈り作業のとき、刈り刃16によって刈り取られた刈り草が起風部16cによる搬送風を受けてマルチングバッフルプレート20の内部を回転するよう流動しつつマルチングバッフルプレート20の内部に滞留し、刈り刃16によって細片化処理される。マルチングバッフルプレート20の内部を流動する刈り草が刈り刃16の回転範囲の前方に抜け出ることを前プレート部20Fと地面との隙間が狭いことによって防止しつつ、刈り草の細片化処理を行なわせられる。マルチングバッフルプレート20の内部を流動する刈り草が案内部材21によって流下案内されて後プレート部20Rと地面との隙間に向い、後プレート部20Rと地面との広い隙間から刈り刃16の回転範囲の後方に抜け出ることにより、マルチングバッフルプレート20の内部に多量の刈り草が滞留することを防止しつつ、刈り草の細片化処理を行なわせられる。
【0028】
〔別実施形態〕(1)上記した実施形態では、マルチングバッフルプレート20のうちの後プレート部20Rにおける下端RTが刈り刃16のうちの起風部16cよりも上方に位置するよう構成された例を示したが、刈り刃16のうちの刈り刃部16aよりも上方で、起風部16cよりも下方に位置するよう構成して実施してもよい。
【0029】
(2)上記した実施形態では、マルチングバッフルプレート20のうちの前プレート部20Fにおける下端FTが刈り刃16のうちの刈り刃部16aよりも下方に位置するよう構成された例を示したが、刈り刃16のうちの起風部16cよりも下方で、刈り刃部16aよりも上方に位置するよう構成して実施してもよい。
【0030】
(3)上記した実施形態では、案内部材21が設けられた例を示したが、案内部材21を設けないで実施してもよい。
【0031】
(4)上記した実施形態では、3つの刈り刃16が備えられた例を示したが、2つ以下、4つ以上の刈り刃を備えて実施してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、前車輪よりも前方に装備される草刈装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0033】
12 刈り刃ハウジング
16 刈り刃
16a 刈り刃部
16c 起風部
20 マルチングバッフルプレート
20R 後プレート部
20F 前プレート部
21 案内部材
FT 前プレート部の下端
RT 後プレート部の下端
図1
図2
図3