(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について図に基づいて説明する。
まず、本開示の一実施の形態における作業車両の構成について説明する。以下、本開示の思想を適用可能な作業車両の一例としてホイールローダについて
図1を用いて説明する。なお本開示はホイールローダ以外に油圧ショベル、ブルドーザ、クレーンなどの作業車両にも適用可能である。
【0011】
本例においては、キャブ10内の運転席14に着座したオペレータを基準として各部の位置関係について説明する。前後方向とは、運転席に着座したオペレータの前後方向をいう。左右方向(幅方向)とは、運転席に着座したオペレータの左右方向をいう。上下方向とは、運転席に着座したオペレータの上下方向をいう。
【0012】
運転席に着座したオペレータに正対する方向が前方向であり、前方向に対向する方向が後方向である。運転席に着座したオペレータが正面に正対したときの右側、左側がそれぞれ右方向、左方向である。運転席に着座したオペレータの足元側が下側、頭上側が上側である。
【0013】
図1は、一実施の形態における作業車両の例としてホイールローダの構成を示す概略側面図である。
図1に示されるように、本実施の形態のホイールローダ50は、前部フレーム42と、後部車体44と、作業機30とを主に有している。前部フレーム42の両側部の各々には前輪43aが取付けられている。後部車体44の両側部の各々には後輪43bが取付けられている。
【0014】
前部フレーム42と後部車体44とは、センタピン(図示せず)により左右に作動自在に取付けられている。前部フレーム42と後部車体44とは、アーティキュレート構造を構成している。
【0015】
具体的には前部フレーム42と後部車体44とは、左右一対のステアリングシリンダ(図示せず)により連結されている。この左右のステアリングシリンダが伸縮することにより、前部フレーム42と後部車体44とはセンタピンを中心として左右に作動し、操向する。前部フレーム42と後部車体44とによりホイールローダ50の車体が構成されている。
【0016】
前部フレーム42の前方には作業機30が取付けられている。作業機30は、一対のブーム31と、バケット32と、一対のブームシリンダ33とを有している。
【0017】
後部車体44にはエンジン室44bが配置されている。
後部車体44は、エンジン室44bの前方に、キャブ(運転室)10を有している。キャブ10は、オペレータが内部に入ってホイールローダ50を操作するための空間を構成している。
【0018】
次に、上記キャブ10の構成について
図2〜
図7を用いて説明する。
図2および
図3は、
図1に示すホイールローダにおけるキャブの構成を示す側面図でおよび平面図である。
図4は、
図2のIV−IV線に沿う概略断面図である。
図5は、
図1に示すホイールローダにおけるキャブの構成を示す底面図である。
図6および
図7の各々は、
図1に示すホイールローダにおけるキャブ内の構成を示す図である。
【0019】
図2に示されるように、本実施の形態のキャブ10は、床板1と、複数のピラー2A、2Bと、屋根部分3と、前方部分4と、左右1対の前方側壁5と、左右1対の中央側壁6と、左右1対の後方側壁7と、後方部分8と、空気調和ユニット12と、運転席14と、前方コンソール15Fとを主に有している。
【0020】
複数のピラー2A、2Bは、左右1対のフロントピラー2Aと、左右1対のリアピラー2Bとを含んでいる。左右1対のフロントピラー2Aと左右1対のリアピラー2Bとは、床板1上に立設されている。左右1対のフロントピラー2Aと左右1対のリアピラー2Bとの各々は、長手方向が上下方向に延びるように配置されている。フロントピラー2Aおよびリアピラー2Bは、キャブ10の前方から後方に向けてこの順番で並んで配置されている。
【0021】
屋根部分3は、キャブ10の上部に配置されており、複数のピラー2A、2Bにより床板1に対して支持されている。梁部材(図示せず)が、フロントピラー2Aの上端部とリアピラー2Bの上端部との各々に接続されており、屋根部分3に接続されている。
【0022】
前方部分4は、キャブ10の前方に配置されている。前方部分4は、前窓4aと、外装パネル4bとを有している。前窓4aは外装パネル4bの上側に配置されている。後方部分8は、キャブ10の後方に配置されている。後方部分8は、後窓8aと、外装パネル8bとを有している。後窓8aは外装パネル8bの上側に配置されている。
【0023】
中央側壁6は、フロントピラー2Aとリアピラー2Bとの間に配置されている。中央側壁6は、乗降用ドアであってもよい。中央側壁6が乗降用ドアである場合、その乗降用ドア6はたとえばリアピラー2Bに開閉可能に支持されている。乗降用ドア6は、ホイールローダ50を操作するオペレータの乗降口である。また中央側壁6はフロントピラー2Aとリアピラー2Bとの間に嵌め込まれて固定(嵌め殺し)されていてもよい。
【0024】
前方側壁5は、フロントピラー2Aから前方に延びている。前方側壁5は、フロントピラー2Aと前方部分4との間に配置されている。後方側壁7は、リアピラー2Bから後方に延びている。後方側壁7は、リアピラー2Bと後方部分8との間に配置されている。前方部分4と前方側壁5とは、前方壁を形成している。
【0025】
空気調和ユニット12、運転席14および前方コンソール15Fの各々は、キャブ10の内部に配置されている。前方コンソール15Fは、運転席14の前方に配置されている。前方コンソール15Fは、前面操作パネル(前面操作部)を有している。前面操作パネルは、たとえばパーキングブレーキスイッチ、ECSS(Electronic Controlled Suspension System)スイッチ、作業灯スイッチ、ワイパスイッチなどを有している。
【0026】
空気調和ユニット12は、運転席14の前方であって、前方コンソール15Fの下側に配置されている。空気調和ユニット12は、内外気切替ドア、ファン、エバポレータ、ヒータコアなどを有している。ファンが内気および外気を空気調和ユニット内に取り入れ、エバポレータおよびヒータコアに送った後に運転室の内部空間に送出する。これにより、キャブ10の内部空間における空気が調和される。
【0027】
前方部分4の前窓4aは、前方コンソール15Fの上面よりも上方に配置されている。また後方部分8の後窓8aは、後方部分8の上側に配置されている。前窓4aおよび後窓8aの各々は、キャブ10の内部から外部を透視可能な透明部材(たとえばガラス)よりなっている。これにより運転席14に着座したオペレータは、前窓4aを通してホイールローダ50の前方を、後窓8aを通してホイールローダ50の後方をそれぞれ視認することができる。
【0028】
左右1対の中央側壁6の各々は、キャブ10の内部から外部を透視可能に構成されている。具体的には左右1対の中央側壁6の各々は、たとえばフレーム6aと、透明部材6bとを有している。透明部材6bはフレーム6a内に嵌め込まれている。透明部材6bは、キャブ10の内部から外部を透視可能に構成されており、たとえばガラスよりなっている。
【0029】
この透明部材6bは、中央側壁6の上端から下端までの高さ方向のほぼ全体に亘って配置されていてもよい。この場合、前方コンソール15Fの下端位置(図中一点鎖線L)よりも下側に位置する中央側壁6の部分は、キャブ10の内部から外部を透視可能な窓部(第2窓部)として透明部材6bを有することになる。
【0030】
また
図1に示されるように中央側壁6の透明部材6bが、フレーム6aによって上部分6baと下部分6bbとに分けられていてもよい。この場合、透明部材6bの下部分6bbは、前方コンソール15Fの下端位置(図中一点鎖線L:
図2)よりも下側に位置している。この場合、前方コンソール15Fの下端位置(図中一点鎖線L)よりも下側に位置する下部分6bbは、キャブ10の内部から外部を透視可能な窓部(第2窓部)である。これにより運転席14に着座したオペレータは、中央側壁6の透明部材6bを通してホイールローダ50の側方下方および側方上方を視認することができる。
【0031】
上記において前方コンソール15Fの下端位置(図中一点鎖線L)とは、アクセルペダルまたはブレーキペダルの上に位置する前方コンソール15Fの下面のうち最も低い位置を意味する。
【0032】
図2に示されるように、左右1対の前方側壁5の各々は、上窓5Uと、下窓5L(第1窓部)とを有している。上窓5Uは前方コンソール15Fの上面より上側に位置している。下窓5Lは前方コンソール15Fの下端位置(図中一点鎖線L:
図2)よりも下側に位置している。下窓5Lは、運転席14の前方、かつ空気調和ユニット12の側方に配置されている。ここで空気調和ユニット12の側方とは、少なくとも床板1を基準とした空気調和ユニット12の高さ位置と同じ高さ位置の範囲内における側方を意味する。
【0033】
上窓5Uおよび下窓5Lの各々は、キャブ10の内部から外部を透視可能な透明部材(たとえばガラス)よりなっている。これにより運転席14に着座したオペレータは、上窓5Uを通してホイールローダ50の斜め前方上方を、下窓5Lを通してホイールローダ50の斜め前方下方をそれぞれ視認することができる。
【0034】
左右1対の前方側壁5の双方は、下窓5Lを有している。また上窓5Uと下窓5Lとは、互いに分離されておらず、1つの窓(一繋がりの窓)を構成していてもよい。また上窓5Uおよび下窓5Lの各々は、たとえばガラスのような透明部材が嵌め込まれていてもよく、また透明部材が嵌め込まれておらずキャブ10の内部と外部とが上窓5Uおよび下窓5Lの各々を通じて繋がっていてもよい。
【0035】
左右1対の後方側壁7の各々は、窓7aと、外装パネル7bとを有している。窓7aは、外装パネル7bの上に配置されている。窓7aは、キャブ10の内部から外部を透視可能な透明部材(たとえばガラス)よりなっている。これにより運転席14に着座したオペレータは、窓7aを通してホイールローダ50の斜め後方を視認することができる。
【0036】
後方側壁7は、外気吸引口7cを有している。具体的には、左右1対の後方側壁7の一方における外装パネル7bは、外気吸引口7cを有している。外気吸引口7cは、空気調和ユニット12に空気(外気)を供給するためのものである。外気吸引口7cは、たとえば複数個のスリット7caにより構成されている。複数のスリット7caの各々は、外装パネル7bを貫通している。外気吸引口7cは、前方コンソール15Fの下端位置(図中一点鎖線L:
図2)よりも下側に位置する部分を有している。
【0037】
後方側壁7の外装パネル7bは、後方部分8の外装パネル8bと一体化していてもよい。また後方側壁7の外装パネル7bは、後方部分8の外装パネル8bに対して開閉可能なカバーであってもよい。この場合、外装パネル7bを開くことにより、ホイールローダ50の外部からフィルタ9が交換可能であることが好ましい。これによりフィルタ9の交換作業が容易となる。
【0038】
図3に示されるように、平面視において、左右1対の前方側壁5の間の間隔Wは後方から前方に向かうにつれて小さくなっている。ここで平面視とは、屋根部分3の上面または床板1の上面に対して直交する方向から屋根部分3または床板1を見る視点を意味する。平面視において左右1対の前方側壁5の各々は、中央側壁6に対して傾斜している。
【0039】
図4に示されるように、外装パネル7bの外気吸引口7cの内側にはフィルタ9が配置されている。フィルタ9は、たとえば不織布シートよりなっている。フィルタ9は、外気吸引口7cを通じて吸引された空気から塵埃などを除去することで空気を清浄にするためのものである。フィルタ9は、外装パネル7bに沿って配置されている。フィルタ9は、外気吸引口7cとダクト11との間に配置されている。
【0040】
ダクト11は、外気吸引口7cから空気調和ユニット12へ外気を導くためのものである。ダクト11は、室内ダクト11aと、室外ダクト11bとを有している。室内ダクト11aは、キャブ10の内部に配置されている。室内ダクト11aの一方の開口端はフィルタ9によって覆われている。室内ダクト11aの他方の開口端は床板1に支持されている。
【0041】
室内ダクト11aの他方の開口端を支持している床板1の部分には貫通孔が設けられている。ダクト11の少なくとも一部(室外ダクト11b)は、キャブ10の外部であって、床板1の下に配置されている。室外ダクト11bの一方の開口端は床板1に支持されている。室外ダクト11bの内部流路と室内ダクト11aの内部流路とは、床板1に設けられた貫通孔を通じて互いに連通している。
【0042】
図5に示されるように、室外ダクト11bは、床板1の下面に支持されている。室外ダクト11bはキャブ10の後方位置から前方位置へ延びて、空気調和ユニット12の真下に達している。室外ダクト11bの内部流路は、床板1の貫通孔を通じて空気調和ユニット12の外気導入路に連通している。これにより、外気吸引口7cから取り込まれた外気は、フィルタ9で浄化された後、ダクト11を通じて空気調和ユニット12へ供給される。
【0043】
図6に示されるように、キャブ10は、左右1対のアームレスト14R、14Lと、側方コンソール15Sと、コントローラ16とをさらに有している。アームレスト14Rは、運転席14のたとえば右側に配置されている。アームレスト14Lは、運転席14のたとえば左側に配置されている。
【0044】
側方コンソール15Sは、運転席14のたとえば右側に配置されている。側方コンソール15Sは、作業機を操作するための作業機レバー(操作装置)などを有している。側方コンソール15Sは、たとえばキックダウンスイッチ、トランスミッションカットオフスイッチ、ホーンスイッチ、前後進切り替えスイッチ、リモートポジショナスイッチなどを有している。
【0045】
コントローラ16は、側方コンソール15Sの真下に配置されている。コントローラ16は、ホイールローダ50の各部の動作を制御するためのものである。コントローラ16は、たとえば中央演算処理装置、記憶部などを有している。
【0046】
コントローラ16は、床板1の上面に横置きに配置されている。具体的にはコントローラ16は、床板1の上面からの高さ方向の厚みよりも、その高さ方向に直交する面内における横方向の寸法が長くなるような態様で床板1の上面に支持されている。
【0047】
下窓5Lおよび外気吸引口7cは、運転席14に対して側方コンソール15Sが配置された側方と同じ側方に位置している。具体的には、運転席14のたとえば右側に側方コンソール15Sが配置されている場合には、下窓5Lおよび外気吸引口7cの双方も運転席14に対して右側に配置されている。
【0048】
図7に示されるように、キャブ10は、操作部13をさらに有している。操作部13はキャブ10の内部においてフロントピラー2Aに設けられている。この操作部13は、前方コンソール15Fの上面よりも上方に配置されていることが好ましい。またフロントピラー2Aからキャブ10の内部へ突き出すように操作部13が設けられていることが好ましい。
【0049】
より具体的には、操作部13は、フロントピラー2Aから運転席14側に向けて突き出すように設けられていることが好ましい。これによりオペレータは、運転席14に着座した姿勢で、フロントピラー2Aに設けられた操作部13を容易に操作することが可能となる。
【0050】
次に、本実施の形態の作用効果について、
図8に示す比較例のキャブ110の構成と対比して説明する。
【0051】
図8に示されるように、比較例のキャブ110においては、前方側壁105は、窓部105aと、その窓部105aの下に配置された外装パネル105bとを有している。この外装パネル105bには、空気調和ユニットに外気を供給するための外気吸引口107cが設けられている。外気吸引口107cは、複数個のスリット107caより構成されている。また中央側壁106は、窓部106bと、その窓部106bの下に配置された外装パネル106cとを有している。
【0052】
このような比較例のキャブ110では、運転席に着座したオペレータは、前方側壁105の外装パネル105bにより、ホイールローダの斜め前方下方を視認することができない。またオペレータは、中央側壁106の外装パネル106cにより、ホイールローダの側方下方を視認することもできない。
【0053】
これに対して本実施の形態においては、
図2に示されるように外気吸引口7cは後方側壁7の外装パネル7bに設けられている。このため前方側壁5において前方コンソール15Fの下端位置(図中一点鎖線L:
図2)よりも下側に下窓5Lを配置することが可能となる。これによりキャブ10内で運転席14に着座したオペレータは、前方側壁5の下窓5Lを通してホイールローダ50の斜め前方下方を視認することが可能となり、視界性が良好となる。
【0054】
また本実施の形態においては、中央側壁6において前方コンソール15Fより下側の部分は、キャブ10の内部から外部を透視可能な透明部材6bを有している。このためキャブ10内で運転席14に着座したオペレータは、中央側壁6の透明部材6bを通してホイールローダ50の側方下方を視認することが可能となり、視界性がさらに良好となる。
【0055】
また本実施の形態においては、
図7に示されるようにフロントピラー2Aに操作部13が設けられている。このように本来、
図6の側方コンソール15Sに配置すべき操作部の一部がフロントピラー2Aに設けられることにより、側方コンソール15Sに設けられる操作部の数を減少させることができる。これにより側方コンソール15Sのサイズを縮小することができる。側方コンソール15Sのサイズが小さくなった分だけ、運転席14に着座したオペレータの視界が側方コンソール15Sにより遮られにくくなり、オペレータはより広い範囲のキャブ10の外部を視認することができる。よってオペレータの視界性はさらに良好となる。
【0056】
また本実施の形態においては、
図4および
図5に示されるように、ダクト11の少なくとも一部(室外ダクト11b)は床板1の下に配置されている。これによりキャブ10の室内空間のうちダクト11により占有される空間を減少させることができる。ダクト11の占有空間を減少させた分だけ、キャブ10の室内空間にダクト11以外の他の構成部品を配置することが可能となり、キャブ10の室内空間を有効に活用することが可能となる。
【0057】
また本実施の形態においては、
図6に示されるようにコントローラ16は、側方コンソール15Sの真下に配置されている。これにより今までデッドスペースであった側方コンソール15Sの真下領域を有効活用することができる。またコントローラ16を側方コンソール15Sの真下に配置することにより、外気吸引口7cを後方側壁7の外装パネル7bに設けることが可能となる。またコントローラ16を側方コンソール15Sの真下領域に配置することにより、コントローラ16が運転席14に着座したオペレータの視界を遮ることを抑制できる。
【0058】
またコントローラ16が横置きに配置されているため、床板1の上面から突き出すコントローラ16の高さを低くすることができる。このためコントローラ16が運転席14に着座したオペレータの視界を遮ることをさらに抑制することができる。
【0059】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。