特許第6824166号(P6824166)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6824166
(24)【登録日】2021年1月14日
(45)【発行日】2021年2月3日
(54)【発明の名称】水強化性火災抑制ヒドロゲル
(51)【国際特許分類】
   A62D 1/00 20060101AFI20210121BHJP
   A62C 35/02 20060101ALI20210121BHJP
【FI】
   A62D1/00
   A62C35/02 A
【請求項の数】15
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2017-528969(P2017-528969)
(86)(22)【出願日】2015年11月26日
(65)【公表番号】特表2017-536898(P2017-536898A)
(43)【公表日】2017年12月14日
(86)【国際出願番号】CA2015051235
(87)【国際公開番号】WO2016082041
(87)【国際公開日】20160602
【審査請求日】2018年11月26日
(31)【優先権主張番号】62/084,965
(32)【優先日】2014年11月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517184831
【氏名又は名称】ファイアーレイン インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】FIREREIN INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100114904
【弁理士】
【氏名又は名称】小磯 貴子
(74)【代理人】
【識別番号】100134636
【弁理士】
【氏名又は名称】金高 寿裕
(72)【発明者】
【氏名】マリアムフィライ,ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ユン
【審査官】 田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/055579(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0212251(US,A1)
【文献】 米国特許第08408323(US,B1)
【文献】 特表2008−518735(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0264509(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62D 1/00− 9/00
A62C 2/00−99/00
B01J 13/00
C08J 3/00− 3/28
C08J 99/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)10〜75重量%の少なくとも1つの増粘剤、
(b)15〜90重量%の少なくとも1つの液体媒体であって、前記少なくとも1つの液体媒体の各々が食用油である、液体媒体、及び、
(c)0〜10重量%の少なくとも1つの、界面活性剤、乳化剤、またはその両方であり得る懸濁化剤、を含む組成物であって、
前記組成物が、85重量%を超える食品グレード成分からなり、前記組成物と水または水溶液との混合が火災抑制水強化性(water−enhancing)ヒドロゲルを形成する、組成物。
【請求項2】
前記組成物が、最大で10重量%の前記少なくとも1つの懸濁化剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
1つ以上の添加剤を更に含み、その各々が非毒性かつ生分解性であり、前記1つ以上の添加剤が、塩、抗菌剤、抗真菌剤、酸化防止剤、着色剤、粘土、分散剤、またはこれらの任意の2つ以上の組み合わせを含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1つの増粘剤、懸濁化剤、及び液体媒体の各々が、非毒性かつ生分解性であり、
前記組成物が、CS−34スピンドルを有するBrookfield LVDVE粘度計を用いて6.0rpmで測定した場合に、≧1000cPの粘度を有し、
前記少なくとも1つの増粘剤及び懸濁化剤の各々が、周囲条件下で固体または液体である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1つの増粘剤が、ガム(ガムは、グアーガム、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、寒天、ローカストビーンガム、またはキサンタンガムとグアーガムの組み合わせのような、これらの組み合わせである。)、デンプン(デンプンは、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、タピオカ、コメデンプン、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、またはこれらの組み合わせである。)、またはガムとデンプンとの組み合わせを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
記懸濁化剤が、レシチン、リゾレシチン、ポリソルベート、カゼイン酸ナトリウム、モノグリセリド、脂肪酸、脂肪アルコール、糖脂質、もしくはタンパク質、またはレシチンと脂肪アルコールとの組み合わせのような、これらの組み合わせである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記食用油が、堅果油、種子油、植物油、野菜油、キャノーラ油、またはこれらの組み合わせである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が、キサンタンガム、グアーガム、トウモロコシデンプン、及びキャノーラ油を含むか、あるいは前記組成物が、
15〜25重量%のキサンタンガム、
10〜20重量%のグアーガム、
10〜20重量%のトウモロコシデンプン、
1〜5重量%のレシチン、及び
30〜64重量%のキャノーラ油、を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物が、>95重量%の食品グレード成分からなる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
約0.1〜30重量%の請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物と、
70〜99.9重量%の水または水溶液と、を含むヒドロゲルであって、
消火、火災抑制、及び/または防火に有用な水強化性火災抑制剤である、ヒドロゲル。
【請求項11】
前記組成物の重量百分率が、1〜10重量%であり、
前記ヒドロゲルの粘度が、Viscolite700粘度計で測定した場合、>150cPであり、
前記ヒドロゲルが、非ニュートン流体性、擬塑性、及び/またはチキソトロープ性挙動を示し、
前記ヒドロゲルが、それが適用される表面に接着し、および/または
前記ヒドロゲルが、燃焼表面に適用された場合に、火災を抑制及び/または消滅させるか、または前記ヒドロゲルが、非燃焼表面に適用された場合に、発火を防止する、請求項10に記載のヒドロゲル。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物を水または水溶液と組み合わせることと、
前記組成物及び水溶液を混合してヒドロゲルを得ることと、を含む、水強化性火災抑制ヒドロゲルを作製する方法。
【請求項13】
前記組成物の重量百分率が、1〜5重量%である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記組み合わせるステップが、前記組成物の手動添加または直接的な機械的注入を含み、
前記水または水溶液が、場合により車両または運搬可能な装置の外部のまたはそこに搭載されているタンク内に保持されており、および/または
手動攪拌、機械的攪拌、循環システム、またはせん断力の適用(例えば、消火ホース内での)を介して混合が行われる、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
容器内の請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物と、
請求項12〜14のいずれか1項に記載の方法を用いて、前記組成物からヒドロゲルを生成するための指示書と、を含むキット。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2014年11月26日に出願された米国仮出願第62/084,965号の優先権の利益を主張するものであり、その全体が本明細書に十分に説明されているかのように参照により本明細書によって組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本出願は、消火剤の分野に関する。より詳細には、本出願は、水強化性(water−enhancing)火災抑制ヒドロゲルに関する。
【背景技術】
【0003】
火災は、生命、財産、ならびに世界中の自然の、郊外の、及び都市の景観にとって脅威である。森林、雑木林、及び草原の火災は、毎年、多くの自然及び郊外の景観を破壊し、野火により失われたエーカーの総平均は1984年頃以来増加している(http://climatedesk.org/2014/06/this−is−how−much−america−spends−putting−out−wildfires/)。この破壊は、木材、野生生物、及び家畜の喪失に関するだけでなく、浸食、流域均衡の崩壊、自然環境における関連する問題におけるものでもある。郊外、都市、及び工業地域では、火災は、火災それ自体からだけでなく、それを消すために使用された水から、生命、財産、機器、及びインフラの喪失により数十億ドルの損失をもたらし得る。
【0004】
火災とその構成は、熱、酸素、燃料、及び結果として生じる連鎖反応を、火災の発生に必要な4つの構成として定義する「火災四面体(Fire Tetrahedron)」によってしばしば記述され、いずれか1つを取り除くと、火災が発生することが防止される。5つの火災クラスが存在する。木材、布などの一般的な可燃物を含むクラスA、ガソリン、溶媒などの可燃性の液体及びガスを含むクラスB、コンピュータなどの電気機器を含むクラスC、マグネシウム、リチウムなどの可燃性金属を含むクラスD、及び、調理油や脂肪などの調理用媒体を含むクラスK。水は、通常、所定のクラスの火災(例えば、クラスA)に対する第1防衛線であり、前記火災を消火するためだけでなく、その拡散を防止するためにも使用される。これは、その高い熱容量(4.186J/g℃)及び気化熱(40.68kJ/mol)を介して熱を吸収することにより表面を冷却する水の能力、ならびに、火災を取り囲む空気を物理的に移動させて火災に酸素を与えないその能力に少なくとも一部は起因する。
【0005】
しかしながら、火災に対処するため及び/または近くの構造物に拡散するのを防ぐために水を使用することには欠点がある。しばしば、構造物に向けられた水の大部分は、構造物それ自体を覆いまたは染み込んで防火性を更に提供させることはなく、むしろ流出して失われて浪費される。水が構造物に染み込むことは通常は最低限のことであり、吸収された水がすぐに蒸発するので提供される保護には限界がある。更に、火災に直接噴霧された水は、火災の上部レベルにおいて蒸発する傾向があり、その結果、消火するために火災の基部に浸透する水が著しく少なくなる。
【0006】
結果的に、炎を消すために燃焼構造物にまたは防火を提供するために近くの構造物に水を連続的に再適用するために、かなりの人的資源及びその土地の水資源が費やされ得る。
【0007】
消火資源としての水の限界を克服するために、火災を消火する水の能力を高めるための添加剤が開発されてきた。これらの添加剤の一部には、架橋アクリルまたはアクリルアミドポリマーなどの水膨潤性ポリマーが含まれ、水膨潤性ポリマーは、水中でそれらの重量の何倍も吸収してゲル状粒子を形成することができ、水中に分散させれば、これらの水を含んで重くなった粒子を火災に対して直接噴霧することができ、火災に対処するのに必要な時間及び水の量、ならびに流出する水の量が低減される(例えば、米国特許第7,189,337号及び同第4,978,460号参照)。
【0008】
他の添加剤として、水にチキソトロープ性質を付与するために使用されるポリエーテル誘導体で架橋されたアクリル酸コポリマーが挙げられる(例えば、米国特許第7,163,642号及び同第7,476,346号参照)。このようなチキソトロピー性混合物は、せん断力下では粘度が低下し、ホースから燃焼構造物または土地に噴霧することができる。それらのせん断力が取り除かれると、混合物は増粘し、表面に粘着して被覆し、炎を消し、火災が広がることまたは構造物が再発火するのを防止する。
【0009】
現在市販されている製品に採用されている添加剤は、天然由来ではなく、容易に生分解しない。これらのポリマー添加剤に関連する欠点は、消火作業中においてそれらの使用後にそれらが環境中に存続し得ること、及び/または生物蓄積し得るかまたは周囲の環境に悪影響を及ぼし得ることである。
【0010】
ハロゲン系/合成消火材料を代替し、それらの環境への影響を低減する取り組みにおいて、非毒性の、生分解性の、再生可能な、及び/または天然由来の材料の研究が増加している。変性デンプンまたはデンプン−コポリマーなどの熱可塑性デンプン(TPS)は、そのような非毒性の、生分解性の、再生可能な及び/または天然由来の材料の1つとして当業者によって提案されてきた。デンプンは室温では天然の熱可塑性物質ではないが、高温では水と混合した場合にヒドロゲルを形成し得る。代わりに、グリセロールなどの可塑剤と更にブレンドして、ヒドロゲルを形成することもできる[Wu,K.;el al.Ind.Eng.Chem.Res.2009,48,3150−3157]。TPSをポリビニルアルコール(PVA)[Bao,Z.;el al.Adv.Mater.Res.2012,518−523,817−820]またはポリラクチド(PLA)[Wu,K.;el al.Ind.Eng.Chem.Res.2011,50,713−720]とブレンドすることは、報告されているところによれば、TPSの親水性の性質を向上させることができ、TPSを膨張性(熱暴露時に膨潤する)難燃性材料に変える。TPSが生分解性天然繊維で強化される場合には[Katalin,B.;el al.Polimery,2013,58,385−394]、その可燃性を低減することができることも報告されている。あるいは、TPSを粘土とブレンドしてその可燃性を低減することができる。ナノサイズの粘土(Cloisite 30B)を、その熱安定性を改善するためにデンプンと溶媒ブレンドすることができる[Swain,S.k.;el al.Polym.Comp.2013、印刷前]。しかしながら、そのような変性デンプンの調製は、しばしば、化学試薬及び高度な合成を必要とする。
【0011】
次に、高吸水性ポリマーは、衛生製品、農業用アジュバント、及び医薬品などにおけるそれらの幅広い用途のため、多くの注目を集めている[Liu,L.S.;el al.Polym.2012,4,997−1011]。それらはまたヒドロゲル材料:相当量の水(最大99.9重量%)を前記水に溶解することなく膨潤させて保持する能力を有するポリマー材料である。合成ヒドロゲルは一般的に生分解性ではないので、トウモロコシデンプン[Kuang,J.;el al.Carbohydrate Polym.2011,83,284−290]、キトサン[Nanaki,S.G.;el al.Carbohydrate Polym.2012,1286−1294]、グアーガム[Bocchinfuso,G.;el al.J.Phy.Chem.B2010,114,13059−13068]、セルロース及びその誘導体[Sadeghi,M.el al.J.Appl.Polym.Sci.2008,108,1142−1151]、アルギネート及びその誘導体などの潜在的ヒドロゲルとして調査されている多くの天然デンプン資源がある。これらのデンプンのうち数種のみが市販されている(例えば、セルロース誘導体、ヒドロキシエチル−デンプン)。
【0012】
非毒性及び/または容易に生分解する天然由来及び/または消費者グレードである水強化性添加剤から作製される消火または難燃組成物の必要性が依然として存在する。
【0013】
上記の情報は、本発明と関連する可能性があると出願人により考えられた既知の情報を作製する目的のために提供される。前述の情報のいずれかが本発明に対する従来技術を構成することを認めることを必ずしも意図するものでもないし、解釈すべきものでもない。
【発明の概要】
【0014】
本発明の目的は、水強化性火災抑制ヒドロゲルを提供することにある。本出願の態様によれば、(i)少なくとも1つの増粘剤、(ii)少なくとも1つの液体媒体、及び、任意に、(iii)1つ以上の懸濁化剤を含む組成物であって、その組成物は75重量%を超える消費者グレード成分からなり、その組成物は、水または水溶液と混合して火災抑制水強化性ヒドロゲルを形成することができる濃縮物である、組成物が提供される。少なくとも1つの増粘剤、懸濁化剤、及び液体媒体の各々は、非毒性かつ生分解性であり得る。
【0015】
一実施形態では、組成物が、(i)10〜75重量%の少なくとも1つの増粘剤、(ii)0〜10重量%の少なくとも1つの懸濁化剤、及び(iii)15〜90重量%の少なくとも1つの液体媒体を含む、請求項1に記載の濃縮組成物。濃縮物は、1つ以上の添加剤を更に含んでよく、その各々が任意に非毒性かつ生分解性である。濃縮物に組み込まれてよい添加剤の例は、塩、抗菌剤、抗真菌剤、酸化防止剤、着色剤、粘土、分散剤である。これらの添加剤は、単独で、または任意の2つ以上の添加剤の任意の組み合わせで組み込むことができる。
【0016】
所定の実施形態では、濃縮組成物は、CS−34スピンドルを有するBrookfield LVDVE粘度計を用いて6.0rpmで測定した場合に、≧1000cP、≧2500cP、≧5000cP、または≧10000cPの粘度を有する。
【0017】
増粘剤は、周囲条件下で固体または液体であり得る。好適な増粘剤として、例えば、ガム、デンプン、または1つ以上のガムと1つ以上のデンプンとの組み合わせが挙げられる。好適なガムとして、グアーガム、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、寒天、もしくはローカストビーンガム、またはこれらの組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない。本濃縮物の具体的な例では、増粘剤は、キサンタンガム、グアーガム、またはこれらの組み合わせを含む。
【0018】
本濃縮物において増粘剤として使用することができる好適なデンプンとして、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、タピオカ、コメデンプン、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、またはこれらの組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない。本濃縮物の具体的な例では、増粘剤は、トウモロコシデンプンを含む。
【0019】
所定の実施形態では、濃縮組成物は、界面活性剤、乳化剤、またはその両方であり得る懸濁化剤を含む。例えば、濃縮物は、レシチン、リゾレシチン、ポリソルベート、カゼイン酸ナトリウム、モノグリセリド、脂肪酸、脂肪アルコール、糖脂質、もしくはタンパク質、またはこれらの組み合わせを含む懸濁化剤を含み得る。特定の例では、懸濁化剤はレシチンである。
【0020】
別の実施形態によれば、濃縮物における液体媒体は、食用油、グリセロール、もしくは低分子量ポリエチレングリコール(PEG)、またはこれらの組み合わせである。特定の実施形態では、PEGは、PEG200〜PEG400である。別の実施形態では、食用油は、堅果油、種子油、植物油、野菜油、もしくはキャノーラ油、またはこれらの組み合わせである。具体的な例では、濃縮物は、キャノーラ油である食用油を含む。
【0021】
特定の実施形態では、濃縮物は、(i)15〜25重量%のキサンタンガム、(ii)10〜20重量%のグアーガム、(iii)10〜20重量%のトウモロコシデンプン、(iv)1〜5重量%のレシチン、及び(v)30〜64重量%のキャノーラ油を含む。任意に、濃縮物は、0.1〜2.5%のオレイルアルコールなどの脂肪アルコールを追加的に含む。
【0022】
本濃縮組成物は、毒性及び悪い環境的影響を最小化するように配合される。したがって、所定の実施形態では、組成物は、>80重量%、>85重量%、>90重量%、>95重量%、>98重量%、または100重量%の消費者グレード成分からなる。
【0023】
別の態様によれば、約0.1〜30重量%の上述した濃縮組成物、及び70〜99.9重量%の水または水溶液を含むヒドロゲルであって、そのヒドロゲルが、消火、火災の抑制、及び/または防火に有用な水強化性火災抑制剤である、ヒドロゲルが提供される。所定の実施形態では、ヒドロゲルは、約0.1〜約1重量%、約1〜約5重量%、約5〜約10重量%、または約15〜約30重量%の重量百分率で濃縮組成物を含む。特定の実施形態では、ヒドロゲルにおける濃縮物の重量百分率は、1〜5重量%である。
【0024】
所定の実施形態では、ヒドロゲルの粘度は、Viscolite700粘度計で測定した場合、0.1〜1cP、1〜5cP、5〜10cP、10〜15cP、15〜30cP、30〜60cP、60〜90cP、90〜120cP、120〜150cP、または>150cPである。ヒドロゲルは、非ニュートン流体性、擬塑性、及び/またはチキソトロープ性挙動を示し得る。
【0025】
一実施形態では、粘度は、ストレスの適用で減少し、任意に、ストレスが終了した後または取り除かれた後に上昇する。粘度の上昇は、≦60秒、≦40秒、≦20秒、≦10秒、または≦5秒などの短時間にわたって生じ得る。
【0026】
一実施形態では、ヒドロゲルは、それが適用される表面に接着する。一例では、低下した粘度を有するヒドロゲルは、表面の摩耗及び/または隙間に流入、被覆、及び/または接着するために(例えば、噴霧により)塗布される。適用プロセスの仕上げの結果として、ヒドロゲルに対するストレスが停止し、ヒドロゲルの粘度が上昇することができ、これにより、現在使用されている火災抑制配合物と比較して、ヒドロゲルは、流出せずに、または最小限の流出でそれが適用された表面にとどまる。
【0027】
本明細書に記載されたヒドロゲルは、燃焼表面に適用された場合に火災を抑制及び/または消火する機能、または非燃焼表面に適用された場合に発火を防止する機能を果たす。
【0028】
別の態様によれば、(i)本明細書に記載された濃縮組成物を水または水溶液と組み合わせることと、(ii)濃縮物及び水溶液を混合して本質的に均質なヒドロゲルを得ることと、を含む水強化性火災抑制ヒドロゲルを作製する方法が提供される。一実施形態では、濃縮物の重量百分率は、ヒドロゲル中の特定の粘度及び/または表面接着を達成するように選択される。特定の例では、濃縮物は、最終ヒドロゲル中のその重量百分率が約1〜約5重量%となるように導入される。
【0029】
一実施形態では、組み合わせるステップは、濃縮物の手動添加または直接的な機械的注入を含む。使用される機器に応じて、水または水溶液は、消火作業に使用される乗り物または運搬可能な装置の外部のまたはそこに搭載されているタンク内に保持されている。
【0030】
一実施形態では、混合ステップは、手動攪拌、機械的攪拌、循環もしくはかき回し、またはせん断力の適用(例えば、消火ホースを介する加圧流からの)を含む。
【0031】
別の態様によれば、(i)濃縮組成物と水または水溶液との混合を可能にするまたは促進するのに好適な容器内の本明細書に記載された組成物と、(ii)濃縮組成物からヒドロゲルを生成するための指示書と、を含むキットが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
本発明ならびにその他の態様及び更なる特徴のより良好な理解のために、添付の図面と共に使用されるべき以下の説明を参照する。
【0033】
図1】ヒドロゲルが100フィートの消火ホースから排出されているときの、キャノーラ系ヒドロゲルの粘度の経時変化の図式的結果を表現している。
図2】3重量%のキャノーラ系液体濃縮物から形成されたヒドロゲルのガラス接着性試験の結果を表現している。
図3】ヒドロゲルが200フィートの消火ホースから排出されているときの、キャノーラ系ヒドロゲルの粘度の経時変化の図式的結果を表現している。
図4】ヒドロゲルが200フィートの消火ホースから排出されているときの、PEG300系ヒドロゲルの粘度の経時変化の図式的結果を表現している。
【0034】
表1は、更なる開発のために特定された選択した液体濃縮物の一般的配合を概説している。
【0035】
表2は、様々な濃縮物の増粘剤のスクリーニング結果を概説している。
【0036】
表3は、初期液体濃縮物の配合及び接着性試験の結果を概説している。
【0037】
表4は、塩添加剤を有するPEG/グリセロール系ヒドロゲルの接着性試験の結果を概説している。
【0038】
表5は、塩添加剤を有するキャノーラ系ヒドロゲルの接着性試験の結果を概説している。
【0039】
表6は、レシチン添加後の液体濃縮物の沈澱及びフロント流れ試験の結果を概説している。
【0040】
表7は、選択した液体濃縮物についての粘度及び接着性試験の結果を概説している。
【0041】
表8は、液体濃縮物の粘度及び接着性に対するデンプンの影響を概説している。
【0042】
表9は、粘度に対するキサンタンガムの粒子サイズの影響を概説している。
【0043】
表10は、粘度に対する液体濃縮物中の増加する固体含有量の影響を概説している。
【0044】
表11は、キャノーラ系液体濃縮物の20Lのバッチの粘度を概説している。
【0045】
表12は、PEG300系液体濃縮物の配合及びその粘度を概説している。
【0046】
表13は、初期ヒドロゲル配合を使用して行われた初期炎試験を概説している。
【発明を実施するための形態】
【0047】
他に定義しない限り、本明細書において使用される全ての技術的及び化学的用語は、この発明が属する技術における当業者により一般に理解されるものと同一の意味を有する。
【0048】
明細書及び特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が他に明らかに示さない限り、複数の言及を含む。
【0049】
本明細書で使用される「含む(comprising)」という用語は、後に続くリストが非網羅的であり、任意の他の追加的な好適な事項、例えば1つ以上の更なる特徴、成分、及び/または原料を必要に応じて含んでよいまたは含まないかもしれないことを意味することが理解されるであろう。
【0050】
本明細書で使用される場合、「消費者グレード成分」という用語は、食品グレード、個人的ケアグレード、及び/または医薬グレードの成分を指す。「食品グレード」という用語は、摂取が、利用可能な科学的証拠に基づいて、消費者の健康に対して安全性リスクをもたらさないような、食品における使用について安全であることを意味することを意図している。「個人的ケアグレード」という用語は、局所適用が、利用可能な科学的証拠に基づいて、消費者の健康に対して安全性リスクをもたらさないような局所適用での使用について安全であることを意味することを意図している。「医薬グレード」という用語は、投与が、利用可能な科学的証拠に基づいて、消費者の健康に対して安全性リスクをもたらさないような、適切な投与経路によって投与される医薬製品における使用について安全であることを意味することを意図している。
【0051】
本明細書で使用される場合、「非毒性」という用語は、無毒であり、無害であり、暴露が適度な量に限定されており、摂取していない場合に、ヒトの健康を害する可能性のある毒性の材料から構成されていないことを意味することを意図している。非毒性とは、摂取しなくても摂取しても、許容できる量でヒト及び動物に対して無害であることを含意することを意図しており、物質を摂取している人または動物に対して直ちに重大で有害な影響を引き起こさない。非毒性という用語は、動物、植物、または他の生物によって飲み込まれまたは注入されあるいは取り込まれることが可能であることを意味することを意図するものではない。非毒性という用語は、環境保護庁(EPA)、世界保健機関(WHO)、食品医薬品局(FDA)、カナダ保健省などによって物質が非毒性として分類されることを意味し得る。そのため、非毒性という用語は、長期間にわたって皮膚に曝されあるいは摂取された場合に、非刺激性であることまたは刺激を引き起こさないことを意味することを意図するものではない。
【0052】
本出願の濃縮物または結果として生じる火災抑制ヒドロゲルを説明するために使用される場合、非毒性という用語は、組成物が、火災を対処、抑制、及び/または防止する役剤としての効果的な使用に必要とされる濃度及び曝露レベルにおいて防具を必要とせずにヒトに対して非毒性であることを示す。
【0053】
本明細書で使用される「表面磨耗」という用語は、穴、亀裂、隙間、削られた溝、切れ目、擦り傷、ひびなど(これらに限定されない)の表面の構造的標準からの任意の逸脱を指す。
【0054】
本明細書で使用される場合、「表面接着」という用語は、組成物が任意の方向で表面に被覆及び/または接着する(例えば、垂直にくっつくこと)能力を指す。本出願のヒドロゲル組成物に言及する場合、「表面接着」という用語は、表面がヒドロゲルによって被覆されている結果、適正な火災の対処、抑制、及び/または保護ができるようにヒドロゲルが表面に接着する能力を更に指す。
【0055】
以下に詳述するように、本開示のヒドロゲル、及びそのヒドロゲルを調製するために使用される濃縮物は、非毒性でありかつ環境に優しいものとなるように配合されている。これは、水強化性火災抑制剤を調製するために消費者グレードの材料を首尾よく使用できるという現在の知見によって達成されている。したがって、本組成物は、非毒性の、生分解性の、再生可能な、及び/または天然由来の火災抑制剤への以前の試みに関連する欠点の多くを克服する。
【0056】
ヒドロゲルを形成する濃縮物及びそれらの成分
本出願は、>75%の非毒性の消費者グレード成分を含むヒドロゲルをその場で生成するのに使用するための濃縮組成物を提供する。所定の実施形態では、濃縮組成物の成分は、生分解性、再生可能、及び/または天然由来であってもよい。任意に、濃縮組成物は、>80%、>85%、>90%、>95%、または>98%の非毒性の消費者グレード成分を含む。
【0057】
一態様では、濃縮物は、少なくとも1つの増粘剤、液体媒体、及び少なくとも1つの懸濁化剤を含む液体濃縮物である。そのような液体濃縮物は、例えば、溶液、懸濁液、またはスラリーであり得る。あるいは、濃縮物は、少なくとも1つの増粘剤及び少なくとも1つの懸濁化剤を含む粉末または他の固体混合物である。いずれかの選択肢において、濃縮物は、水または水溶液と混合されて、火災抑制または難燃の性質を有するヒドロゲルを形成するように配合される。
【0058】
増粘剤
本明細書に記載されているヒドロゲル形成濃縮物は、ヒドロゲルの生成を助けるための増粘剤として作用する少なくとも1種を必要とする。増粘剤は、例えば、ポリマーであり得る。生分解性で天然由来のポリマーであるデンプンは、水及び熱の存在下でゲルを形成し得る。デンプン系ヒドロゲルは、それらの高い保水性及び表面接着能力のため、難燃剤として作用し得る[Ioanna G.Mandala(2012).Viscoelastic Properties of Starch and Non−Starch Thickeners in Simple Mixtures or Model Food,Viscoelasticity−From Theory to Biological Applications,Dr.Juan De Vicente (Ed.),ISBN:978−953−51−0841−2,InTech,DOI:10.5772/50221.http://www.intechopen.com/books/viscoelasticity−from−theory−to−biological−applications/viscoelastic−properties−of−starch−and−non−starch−thickeners−in−simple−mixtures−or−model−foodから入手可能]。天然デンプン系ヒドロゲル形成増粘剤の一例は、個人的潤滑剤、練り歯磨き、及びアイスクリームにおける増粘剤としての使用が見出されているカルボキシメチルセルロースナトリウム塩である。それは食品グレードであり、生分解性であり、水中で1%ほどの低い濃度で水を吸収することができる。本濃縮物に使用するために実行可能な他の種類のデンプンとして、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、タピオカ、及び/またはコメデンプンが挙げられるがこれらに限定されない。
【0059】
他の実行可能な天然由来の生分解性増粘剤として、グアーガム、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、寒天、及び/またはローカストビーンガム(これらに限定されない)などの天然ガムが挙げられ、これらの一部は、食品、医薬品、及び化粧品産業において増粘剤として使用される。例えば、グアーガムは主にグアー豆の基底胚乳から調達され、報告されているところによると、トウモロコシデンプンよりも高い水増粘効力を有する。キサンタンガムは、Xanthomonascamperstrisから生成される[Tako,M.et al.Carbohydrate Research,138(1985)207−213]。低濃度では、キサンタンガムまたはグアーガムは、水溶液に対する粘度の増加をもたらしうる。付与された粘度は、ガムのせん断減衰性または擬塑性挙動のため、どのようなせん断速度で溶液が曝されるかに応じて変化し得る。更に、キサンタン及びグアーガムの混合物は相乗的影響を示すことが確認されている。それらのせん断減衰性質に加えて、キサンタン及びグアーガムの混合物は、各々のガム単独の場合よりも高い粘度を水溶液に付与する。[Casas,J.A.,et al.J Sci Food Agric 80:1722−1727,2000]。
【0060】
液体媒体
上記のように、ヒドロゲル形成濃縮物は、固体成分の混合物(粉末など)、または液体懸濁液/溶液であり得る。固体または液体濃縮物のいずれかを水と混合して、水強化性火災抑制ヒドロゲルを形成することができるであろう。しかしながら、濃縮物の成分を液体媒体に事前溶解または事前懸濁することにより、水との混合を容易にすることができ、ヒドロゲルが形成する速度及び/または容易さを潜在的に高めることができることが当業者に理解されるであろう。非毒性の消費者グレードの液体媒体の例として、堅果/種子油、または野菜/植物油などの食用油、グリセロール、及び低分子量ポリエチレングリコール(PEG)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0061】
天然由来及び/または食品グレードであることに加えて、野菜油、グリセロール、及びPEGなどの液体媒体は、氷点下の温度における凍結に対して抵抗性である。そのため、このような液体媒体で形成された濃縮物は、冬及び/または北極条件下でヒドロゲルを形成するためのそれらの有用性を維持することができる。更に、グリセロール及びPEGなどのいくつかの液体媒体は水混和性であり、これにより、濃縮物が水と効果的に混合してヒドロゲルを形成する能力を高めることもできる。
【0062】
所定の実施形態では、濃縮物は、1つを超える液体媒体の混合物を含む。
【0063】
懸濁化剤
液体媒体(例えば、野菜油)に懸濁または溶解した固体成分(例えば、増粘剤)から形成されたヒドロゲル形成液体濃縮物は、経時的に固体成分の沈澱を示すことがある。そのような沈澱が起こった場合には、その成分を再懸濁または再溶解させるために、液体濃縮物を物理的に攪拌することができる。あるいは、懸濁化剤(例えば、界面活性剤または乳化剤)または懸濁化剤の組み合わせを液体濃縮物に添加して組成物を安定化させることができるか、または無期限にもしくはヒドロゲル形成のための濃縮物の実用性を維持するのに十分な時間の長さ、固体成分を液体媒体中で懸濁または溶解させておくのを促進することができる。
【0064】
非毒性の消費者グレードの界面活性剤及び/または乳化剤の例として、レシチン、リゾレシチン、ポリソルベート、カゼイン酸ナトリウム、モノグリセリド、脂肪酸、脂肪アルコール、糖脂質、及び/またはタンパク質が挙げられるがこれらに限定されない[Kralova、I.,et al.Journal of Dispersion Science and Technology,30:1363−1383,2009]。そのような界面活性剤は、固体または液体として提供することができる。界面活性剤または界面活性剤の組み合わせを濃縮物に添加することにより、濃縮物の粘度を増加させることができ、及び/または濃縮物の水での希釈後に形成されるヒドロゲルの粘度を増加させることができる。界面活性剤または界面活性剤の組み合わせのこの影響は、それらの懸濁作用の結果として、及び/または濃縮物または結果として生じるヒドロゲルに含まれ得る材料の量を増加させることにより生じる。
【0065】
所定の実施形態では、濃縮物に使用される界面活性剤は液体である。当業者に容易に理解されるであろうが、そのような液体界面活性剤は、固体界面活性剤よりも液体濃縮物の液体媒体とより容易に混合することができる。したがって、液体界面活性剤は、いくつかの例では、固体成分を懸濁液及び/または溶液中に維持するのにより有効であり得る。
【0066】
所定の実施形態では、濃縮物は1つを超える界面活性剤を含む。界面活性剤は、全ての固体界面活性剤、全ての液体界面活性剤、または液体及び固体界面活性剤の組み合わせであり得る。
【0067】
添加剤
濃縮物または濃縮物から形成されるヒドロゲルの1つ以上の性質に影響または変化を及ぼすために、他の成分、即ち、添加剤を濃縮物に添加することができる。適切な添加剤は、特定の用途のために必要に応じて組み込むことができる。例えば、濃縮物、及び/または結果として生じるヒドロゲルの粘度及び/または安定性に影響を及ぼすために添加剤を添加することができる。本濃縮物及びヒドロゲル組成物に組み込むことができる追加的な添加剤として、pH変更剤、分散剤(例えば、界面活性剤、乳化剤、粘土)、塩、抗菌剤、抗真菌剤、及び染料/着色剤が挙げられるがこれらに限定されない。非毒性の消費者グレードの添加剤の具体的な非限定例として、ヒドロゲルの粘度及び/または安定性に影響を及ぼすことができるナトリウム及びマグネシウム塩(例えば、ホウ砂、重炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム)[Kesavan,S.et al.,Macromolecules,1992,25,2026−2032;Rochefort,W.E.,J.Rheol.31,337(1987)]、抗菌剤として作用することができるキトサンまたはイプシロンポリリシン[Polimeros:Ciencia e Tecnologia,vol.19,no3,p.241−247,2009;http://www.fda.gov/ucm/groups/fdagov−public/@fdagov−foods−gen/documents/document/ucm 267372.pdf(2014年9月26日にアクセス)]、及びヒドロゲルの形成において助けとなり得るペクチンが挙げられる。
【0068】
当業者に容易に理解されるであろうが、濃縮物に添加剤を添加することができ、またはヒドロゲルの形成中に添加剤を添加することができ、またはヒドロゲルに添加剤を添加することができる。
【0069】
濃縮物は、典型的には周囲条件下で、任意の順序で成分を混合することにより調製される。各成分、特に増粘剤、液体剤、及び存在する場合には懸濁化剤の相対量は、濃縮物の所望の粘度に少なくとも部分的に基づいて選択される。一旦形成されると、濃縮物は約30日、1〜3ヶ月、3〜6ヶ月、6〜9ヶ月、9〜12ヶ月、12〜15ヶ月、15〜18ヶ月、18〜21ヶ月、21〜24ヶ月、または≧24ヶ月の保管期間を有する。
【0070】
水強化性火災抑制ヒドロゲル
本出願は、非毒性の消費者グレード成分を含む、上記濃縮物から形成された水強化性火災抑制ヒドロゲルを更に提供する。一実施形態では、ヒドロゲルは、熱、燃料、酸素、及び連鎖反応からなる「火災四面体」の少なくとも1つの構成概念を排除することによって家庭の、工業の、及び/または林野の火災に対処するために使用される。別の実施形態では、ヒドロゲルは、消火機器を介して、燃焼しているまたは火災の危険性がある構造物、例えば大建築物及び/または景観の構成要素(例えば、樹木、潅木、フェンス)に適用される。一実施形態では、本明細書に記載されているヒドロゲルは、クラスA火災(即ち、木材及び紙の火災)に対処するために使用することができる。別の実施形態では、前記ヒドロゲルは、クラスB火災(即ち、石油及びガス火災)に対抗するのに好適である。
【0071】
ヒドロゲルの形成及び適用
本明細書に記載されている水強化性火災抑制ヒドロゲルは、上述の濃縮物を水または水溶液と混合することにより形成することができる。消火機器を使用して適用する場合、濃縮物はその機器の給水と混合され、次いで、火災を消火、抑制、または防止するため、または火災から保護するために対象物体(構造物、大建築物、及び/または景観の構成要素など)に適用される。本出願のヒドロゲルを適用するのに有用な消火機器は、濃縮物を水または水溶液と混合するための手段と、結果として生じるヒドロゲルを対象物体に噴霧するための手段とを含む。一実施形態では、消火機器は、必要になるまで濃縮物を保持するための容器を含み、その容器は、濃縮物が容器から水または水溶液と混合するための混合手段に移動することができるように、混合手段と流体連通している。別の実施形態では、消火機器は、水または水溶液を混合手段または混合手段に流体的に接続した容器に導入するための手段を追加的に含み、これにより、水または水溶液は容器から濃縮物と混合するための混合手段に移動することができる。消火機器の非限定例として、噴霧ノズルを備えたバックパック、またはスプリンクラーシステムが挙げられる。消火機器は、車、飛行機、またはヘリコプターなどの乗り物の上または中に搭載することができる。
【0072】
ヒドロゲルが、消防車、または航空機を含む他の消火用乗り物を使用する消火に使用される一実施形態によれば、本明細書に記載されたヒドロゲルは、以下の非限定的なプロセスを介して形成され、使用される。ヒドロゲル形成濃縮物は、車の水で満たされたダンプタンク及び/または他の運搬可能なタンクに添加され、循環ホースまたはその同等物を介して水と混合される。形成されたヒドロゲルをタンクからポンプで汲み上げ、硬い吸引ホースまたはその同等な機器を介してヒドロゲルを対象物体(例えば、大建築物または景観の要素)に適用する。
【0073】
代替的な実施形態では、濃縮物は、手動または注入システムを介して乗り物の搭載された水タンクに直接加えられ、タンク内の循環を介して混合される。この実施形態の一例では、注入システムは「ポンプ後」システムを含み、これは、乗り物のポンプを通過して消火ホースに入ろうとしている水に特定の量の濃縮物を注入する。ホースを通って移動する水の摩擦は、濃縮物と水との混合の助けとなり、ホース内でヒドロゲルを生成する。別の特定の例では、注入システムは、濃縮物を専用リザーバからホースラインの直前の濃縮物を水に導入する注入パイプにポンプで送り込む。コンピュータ化されたシステムは、特別に設計されたクイルを介して必要量の濃縮物をパイプ及びホース流に注入するために、前記注入パイプ上の流量計を介して水流を計算する。
【0074】
更に、インライン注入システムを好適に備えた消火用乗り物は、濃縮物を水と共にインラインで直接添加することができ、次いでホース自体の内部において物理的攪拌及び/またはせん断力を介して混合することができる。
【0075】
当業者に容易に理解されるであろうが、上述のヒドロゲル形成のための方法は、特に、消防車のことを指し得るが、そのような方法は、飛行機またはヘリコプターなどの航空機を使用する消火にも同様に適用でき、その場合、水または他の水溶液は、航空機内に収容されている、または航空機によって吊り下げられているタンクから空中投下される。
【0076】
別の実施形態では、ヒドロゲル配合物は、消火用バックパックを使用して消火作業時に濃縮物から作製される。この実施形態では、濃縮物をバックパックの水で満たされたリザーバに直接加え、手動または機械的に振盪してヒドロゲルを形成することができる。ヒドロゲルは、形成すると、バックパックの噴霧ノズルを介して、必要な物体、または表面に適用することができる。
【0077】
別の実施形態では、熱、煙、及び/または火災検出の結果として起動すると、システムが、単に水だけ(現在の実務のように)ではなく、本明細書に記載されたヒドロゲルを噴霧するように、本明細書に記載された濃縮物をスプリンクラーシステムの水供給に添加することができる。一実施形態では、スプリンクラーシステムが起動すると、専用のポンプシステムがスプリンクラーの水システムに濃縮物を注入し、物体または領域(例えば、大建築物、部屋、または景観の領域)に適用される前に、スプリンクラーの流れ要件に適合する性質を有するヒドロゲルを生成する。別の実施形態では、スプリンクラーシステムは、物体または領域(例えば、大建築物、部屋、または景観の領域)にヒドロゲルを適用するための最適化された噴霧パターンを提供するように設計されたスプリンクラーヘッドを含む。
【0078】
更に別の実施形態では、本明細書に記載されたヒドロゲルを適用するためのスプリンクラーシステムは、スプリンクラーの水システムに本明細書に記載された濃縮物を注入するための専用のポンプと、ヒドロゲルの適用のための最適化された噴霧パターンを提供するように設計されたスプリンクラーヘッドと、水及び/またはヒドロゲルの流れを計算するコンピュータ化されたシステムと、ドライパイプ内の水の流れを検出する流量計と、スプリンクラーシステム及びその意図された用途に適合する方法で濃縮物を水に導入するように設計された注入点とを含む。
【0079】
ヒドロゲル消火性質
本明細書で提供される濃縮物から形成される本明細書で提供されるヒドロゲルは、それらの物理的及び/または化学的性質のため、消火剤としての使用に好適である。ヒドロゲルは、水より粘性があり、一般に、それらの水分を吸収し、粘度を増加させる成分のために、高温条件(例えば、火災)に曝された場合、蒸発、流出、及び/または燃焼に抵抗する。これらのヒドロゲルはまた、せん断減衰性、チキソトロピー性、擬塑性、及び/または非ニュートン性流体挙動を示し、これにより、それらがせん断応力などのストレスを受けた場合にそれらの粘度が減少し、それらの粘度はそれらのストレスが取り除かれたときに再度上昇する。
【0080】
結果的に、本ヒドロゲルは、一旦形成されると、水と同様の手法で燃焼物体(例えば、大建築物または景観の要素)にホース及び/または噴霧ノズルを介して噴霧することができる。ヒドロゲルがもはや噴霧されるストレスを受けなくなると、それらの粘度は上昇して水のものよりも高くなる。結果として、ヒドロゲルは、それらが適用される表面を実質的にあらゆる角度で被覆し、くっつくことができ、これにより、酸素を移動させ、表面を冷却することにより火災を消すことができ、火災のフラッシュオーバーを防止することができ、及び/または、更に、蒸発、流出、及び/または燃焼に対するヒドロゲルの一般的な抵抗性を介して表面が再発火することから保護することができる。
【0081】
更に、粘度の増加は瞬間的ではないので、ヒドロゲルは、大建築物または景観の要素における亀裂、穴、大建築物または景観のひび、穴、亀裂などの(これらに限定されない)表面の摩耗または構造的な隙間に「忍び込む」または「滲み出る」ことができ、蒸発または流出のために水またはフォームなどの他の消火剤で保護することが難しいであろう表面を被覆または保護する。これは、消防士の武器に浸透的消火作業の要素を付与するであろう。ヒドロゲルの粘度が増加すると、それは、前記ひび、表面摩耗、構造的隙間などの中、上、下、及び/または周囲に保護層を形成するであろう。また、ヒドロゲルの使用が、消火作業における水の直接的使用に置き換わるであろうから、本明細書に記載されたヒドロゲルの使用は、表面に対する水の損害を最小にすることができる。
【0082】
一例では、ヒドロゲルは、火災を断絶するものとしてまたは不動産(例えば、コテージ、家、または商業的もしくは地方自治体の建物)を保護するために、接近する火災の先端部に適用される。消防士は、ヒドロゲルの被覆により固められた周囲の内側において消防士を保護するための「被覆及びアプローチ」を介して前進することができ、これにより消防士は保護された退出ルートを作り出すことができる。
【0083】
本明細書に記載された発明のより良い理解を得るために、以下の実施例を記載する。これらの実施例は説明のためのものに過ぎないことを理解されたい。そのため、それらは本発明の範囲を決して限定するものではない。
【実施例】
【0084】
一般的実験
材料
ポリエチレングリコール(PEG200またはPEG300)及びグリセロールを除き、使用された全ての材料は天然由来であった。PEG200/300及びグリセロールは、毒性の低い非可燃性液体であり、食品/食品接触/個人的ケア/医薬添加物のいずれかである食品/個人的ケア/医薬グレードで入手可能である。実験は、化学的及び/または分析的グレードのポリエチレングリコール及びグリセロールを用いて行った。しかしながら、それらの化学的/物理的性質は、それらの食品グレードの形態と同等であると考えられた。新鮮な水道水を更に精製することなく直接使用した。全ての化学物質は、商業的供給者から受け取ったまま使用した。キサンタンガム(食品グレード、PO#DW−456270,Univar,17425 NE Union Hill Road,Redmond,WA、Bulk Barn Canada)、グアーガム(P.L.Thomas&Co.Inc.,119 Head Quarters Plaza,Morristown,NJ;Bulk Barn Canada)、トウモロコシデンプン(Bulk Barn Canada)、キャノーラ油(FreshCo,Kingston,ON,Canada)、PEG200(Sigma−Aldrich,Oakville,ON,Canada)、PEG300(Sigma−Aldrich,Oakville,ON,Canada)、及びグリセロールPEG200(Sigma−Aldrich,Oakville,ON,Canada)。
【0085】
液体濃縮物を生成するための一般的方法
液体濃縮物は、少なくとも4種類の材料:増粘剤(例えば、ガム)、デンプン、液体媒体、及び任意に、他の天然由来及び/または生分解性の添加剤(例えば、界面活性剤)から構成された。全ての乾燥原料(例えば、ガム、デンプンなど)を測定し、ビーカー内で組み合わせた。適度に均質な乾燥混合物が得られるまで、前記原料をスパチュラでゆっくりと混合した。必要量の選択液体媒体(例えば、キャノーラ油、PEGなど)を、メスシリンダーを使用して測定し、その後、前記乾燥混合物を含むビーカーに添加し、乾燥粉末または分離液体媒体が観察されなくなるまでスパチュラでゆっくりと攪拌した。その後、液体濃縮物は使用の準備ができていると考えられた。選択された液体濃縮物の一般的配合を表1に概説する。
【0086】
ヒドロゲルを生成するための一般的方法
前述の液体濃縮物からヒドロゲルを生成することは、150mLのビーカー内で液体濃縮物(3g)を新鮮な水道水(97g)と混合することを含んでいた。次いでIKA T25ホモジナイザーを使用して、成分を一緒に完全に混合し(8600rpmで10秒間)、その後ヒドロゲルが形成された。
【0087】
液体濃縮物及び/またはヒドロゲルを評価するための一般的試験方法
粘度試験
CS−34スピンドルを有するBrookfield LVDVE粘度計を使用して液体濃縮物の粘度を測定した。各サンプルを小さなサンプルアダプターに添加し、粘度を室温で6.0rpmで試験した。
【0088】
ガラスへの接着性
ヒドロゲルのガラス接着性を試験するために、3×1インチ(L×W)の顕微鏡ガラススライドを秤量した後、そのスライドをヒドロゲル中に1.5インチの深さまで60秒間浸漬した。ガラススライドをヒドロゲルから取り除いた後、それを10分間吊るした後、再度秤量した。スライドに接着したままのヒドロゲルの質量を前後の重量の差から計算した。
【0089】
沈澱試験
各液体濃縮物は懸濁液であり、そこから固体原料が時間の経過と共にゆっくりと沈澱することができ、その結果、上に液体層を有する二相混合物となる。前記液体濃縮物中の分離を定量するために、沈澱試験を使用した。試験された各液体濃縮物を100mLのメスシリンダーに添加した。シリンダー内で沈澱が生じたので、前記液体の頂部層の体積を沈澱が完了するまで連続的に記録することができた。試験結果は、液体濃縮物の総体積における頂部層の体積として示されている。
【0090】
フロント流れ試験
その後、沈澱試験からの各サンプルをフロント流れ試験において使用して、どのサンプルが良好な流れを維持しながら最小の沈澱を提供するのかを確立した。その後、沈澱について試験された液体濃縮物を、反転によって、予め計量したビーカー上で1分間空にした。次に、ビーカーに移された液体濃縮物の総質量を記録した。良好な流れ及び最小の沈澱を有する液体濃縮物は、更なる検討のために実行可能な配合と考えられた。
【0091】
実施例1:液体濃縮成分の初期スクリーニング
増粘剤スクリーニング
増粘剤の初期スクリーニングは、キサンタンガム、グアーガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、またはこれらの組み合わせを含んでいた。ヒドロゲルは、濃縮物を水と10秒間ブレンドすることにより(水99g中1gの液体濃縮物)、各増粘剤を単独でまたはこれらの組み合わせ(表2参照)を含む1重量%の液体濃縮物から調製した。
【0092】
グアーガムのヒドロゲルがキサンタンガムのものよりも粘性が低かったものの(表2)、キサンタンガム及びグアーガムは、非常に迅速に(8600rpmでホモジナイザーを使用して10秒以内に)ヒドロゲルを生成した。カルボキシメチルセルロースナトリウム塩は、10秒後にヒドロゲルを形成しなかったが、1時間後に透明なヒドロゲルが得られた。グアーガムとキサンタンガムとの組み合わせは、ヒドロゲル形成に関して相乗的影響、すなわち、以前に確認され、当業者によって文書化された影響を示した[Tako,M.et al.Carbohydrate Research,138(1985)207−213]。
【0093】
定性試験では、1重量%のグアーガム及びキサンタンガムから形成されたヒドロゲルは、それぞれ、1重量%のポリアクリル酸から形成されたヒドロゲルと同様の稠度及び/または粘度を有するように見えることが観察された。
【0094】
液体媒体スクリーニング
液体濃縮物における使用のため、キャノーラ油(これに限定されない)などの天然由来の及び/または生分解性の油は、それらの予期される低コスト及び相対存在量のために液体媒体と考えられた。しかしながら、このような油は、典型的には、水への溶解度が制限されており、そのようなものとして、PEG200、PEG300、及びグリセロール(これらに限定されない)などの水溶性の代替物も考えられる。
【0095】
初期液体濃縮物の配合
前述の増粘剤及び液体媒体を使用して、最小量の液体媒体を使用して4つの配合物を作成し、その各々をガラス接着性により評価した(表3参照)。
【0096】
表3に概説されているように、その液体媒体としてキャノーラ油を用いた配合物2から高い接着結果が得られた。配合物2は、市販製品TetraKO(商標)及びBarricade(商標)に対して、高いと言わないまでも匹敵するガラス接着性質を有していた。配合物3及び4は、他の配合物よりもより効率的にヒドロゲルを生成したことが観察された。理論に束縛されることを望むものではないが、これはPEG200とグリセロールの水混和性に起因するものと仮定された。更に、キサンタンガムの粘度及び安定性は、電解質(例えば、ナトリウムまたはマグネシウム塩)の添加に伴って増加することが当業者によって観察されている。そのようなものとして、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、及びホウ砂を添加剤として使用し、結果として生じたヒドロゲルを試験した(表4及び5参照)[Kesavan,S.et al.,Macromolecules,1992,25,2026−2032;Rochefort,W.E.,J.Rheol.31,337(1987)]。
【0097】
実施例2:液体濃縮物成分の更なるスクリーニング
垂直面に対するより大きなガラス接着性、及び濃縮物成分の沈澱の減少が望ましいと考えられた。理論に縛られることを望むものではないが、レシチン(これに限定されない)などの天然の界面活性剤は、濃縮物中での沈澱を遅らせ、増粘剤として作用することによって濃縮物の粘度を上昇させるであろうことが仮定された。結果的に、液体レシチン及び固体レシチンの両方が評価された(表6参照)。
【0098】
液体レシチンは各濃縮物の液体媒体に溶解し、固体レシチンは部分的に溶解した懸濁液を生成した。表6に示されるように、レシチンを含む濃縮物は、一般に、それを有しない濃縮物よりも沈澱が少ないことが経験された(配合9及び10参照)。PEG200をレシチンの存在下で液体媒体として使用した場合、液体濃縮物はゲル化した。3つの濃縮物(表6;配合3、5、及び6)は良好な流れを維持しつつ最小限の沈澱を経験した。これらの配合物を更なる試験のために選択した(表7参照)。
【0099】
キャノーラ油と液体レシチンとを混合すると、良好な接着性を有する液体濃縮物が生成され(配合3、表7)、それ故、液体濃縮物はトウモロコシデンプンで更に試験されたことが観察された(表8参照)。理論に縛られることを望むものではないが、トウモロコシデンプンは、高温においてヒドロゲルの粘性及び/または接着性を増加させるであろうことが予想された。表8の配合1は、(表7の液体濃縮物の配合3におけるキサンタンガムに対して)20%のトウモロコシデンプンを添加すると、粘度が>5000cP増加し、液体濃縮物の配合4及び5が良好な接着性を実証したことを示した。更に、キサンタンガムの粒子サイズの濃縮物の粘度に対する影響も調査した(表9参照)。
【0100】
実施例3:液体濃縮物の固体含有量の増加
表8の液体濃縮物の配合4の一般的配合(キサンタンガム:グアーガム:トウモロコシデンプン:液体大豆レシチン:液体ベース=1g:0.6g:0.6g:0.1g:2.5mLキャノーラ油)を更なる研究のために選択し、材料の含有量が増えると濃縮物の粘度に対してどのような影響を有するのか決定した(表10参照)。次に、消火用バックパック及び消防車のフィールドテストのために表10の液体濃縮物の配合3を選択した。消防車でヒドロゲルを生成する際の液体濃縮物の有効性を適切に試験するために、より大きなスケールの濃縮物が必要とされた。
【0101】
実施例4:消防車試験用の液体濃縮物のスケールアップ
キャノーラ系濃縮物
消防車試験のために、表10の液体濃縮物の配合3の60Lのバッチが必要とされた。この60Lの濃縮物バッチの調製は、10Lバッチ内で行い、2バッチ毎に組み合わせて20LのHDPEプラスチックバケツに保管した。
【0102】
10Lの液体濃縮物を調製するために、キサンタンガム、グアーガム、及びトウモロコシデンプンをきれいな20Lのバケツに加え、予備混合した。10Lの容器内で、キャノーラ油と液体レシチンを、小型ペイントミキサーを用いて一緒に混合した。小型ペイントミキサーは、オーバーヘッドスターラーによって制御され、その攪拌速度を変えて最良の混合有効性を達成した。液体レシチンの全てがキャノーラ油に溶解するまで混合プロセスを続けた。次に、液体混合物を乾燥混合物に加え、より大きなペイントミキサーを使用して、全ての乾燥原料を油媒体全体にわたって均一に分散させた。そのミキサーをハンドドリルに取り付け、最良の混合有効性を達成するために速度を変えた。まず、遅い速度を使用して、いかなる「フライ粉末」も発生させずに乾燥粉末を液体と混合し、次いで、より速い速度で、液体中で乾燥原料を分裂及び/または分散させた。いくつかの例では、根強く残る固体の塊を分裂させるためにより遅い速度及びより速い速度の組み合わせが必要とされた。乾燥原料の全てを液体原料と完全に混合して均質な液体濃縮物を生成するのに約15分かかった。2つの10Lのバッチを組み合わせて20Lのバッチを形成した場合、大きなペイントミキサーを再び使用して、各々の20Lのバケツにおいて2つのバッチを共に混合した。結果として生じた20Lの液体濃縮物に2時間を与えて、粘度を試験する前にせん断減衰性から安定化させて稠度を確保した(表11参照)。この手順を3回繰り返して、消防車試験に必要とされる液体濃縮物の60Lバッチを得た。各20Lのバッチについて測定された粘度は、より小さいサンプル(例えば、配合3、表10)について観察されたものよりも高かった。理論に束縛されることを望むものではないが、粘度の差は、10Lスケールに対して200gスケールで液体濃縮物を混合することに関与する異なるせん断速度によって引き起こされ得ることが仮定された。20Lのバッチの液体濃縮物をいかなる変性もせずに使用した。
【0103】
PEG300系濃縮物
キャノーラ系濃縮物の60Lのバッチについて上に概説したのと同じ手順に従って、PEG300系液体濃縮物の10Lのバッチも調製した。PEG系濃縮物の最終配合及び粘度を表12に概説する。
【0104】
実施例5:ラージスケールの液体濃縮物の消防車試験
キャノーラ系濃縮物
広々とした草で覆われた地面上で、毎分1500ガロン(毎分1500ガロンの水)のHaleポンプを有する86Hahnポンプ車を使用してフィールドでの消防車試験を完了した。液体濃縮物をポンプで汲み上げ、消防車システム内の水とインライン混合した。インライン混合後、接着性試験のために、結果として生じたヒドロゲルを消防車ホースから垂直のガラス表面に噴霧した。また、現場粘度試験のために4Lのビーカー内でホースからサンプルを直接収集した。
【0105】
200’ホースなどのより大きなホースを使用することができたであろうが、初期消防車試験には、結果として生じたヒドロゲルを100’ホースから噴霧することを含んでいた。ヒドロゲルをホースから噴霧して、Viscolite700粘度計を使用して10分間で毎分、粘度を試験した(図1参照)。液体濃縮物の含有量は、1重量%から3重量%に増加し、対応するヒドロゲルの粘度の増加が観察された。ヒドロゲルはガラス試験表面に接着し、縞を有する半透明膜を形成した(図2参照)。液体濃縮物の含有量が4重量%に増加したとき、粘度は減少した。しかしながら、ガラス接着試験の間、結果として生じたヒドロゲルは目に見える縞を含まない均一なフィルムを形成した。
【0106】
初期試験の後、より長いインライン混合時間の影響を観察するために200’ホースを使用した。液体濃縮物を3重量%、4重量%、及び5重量%で試験した(図3参照)。形成されたヒドロゲルの粘度は、最初の5分間に変化し、その後、同様の粘度に向かう傾向にあった。ガラス接着性試験の間、形成された各ヒドロゲルフィルムは均一で厚かった。
【0107】
PEG300系濃縮物
PEG300系液体濃縮物の消防車試験を、200フィートのホースを用いて3重量%で行った。ガラス接着性試験の間、結果として生じたヒドロゲルは、均一である一方でキャノーラ系ヒドロゲルについて観察されたものよりも薄いフィルムを形成した。更に、PEG300系ヒドロゲルの粘度は、キャノーラ系ヒドロゲルと比較して、より低いことが分かった(図4参照)。
【0108】
実施例6:初期液体濃縮物ヒドロゲルの初期炎試験
各炎試験のため、木製ペイント攪拌スティックを試験ヒドロゲルと共に使用した。木製攪拌スティックの端部をヒドロゲルで被覆し、その被覆された端部をプロパントーチからの炎に曝した。攪拌スティックが焦げる及び/または燃えるのにどのくらい時間がかかるかを記録した(表13参照)。
【0109】
実施例7:液体濃縮物/ヒドロゲルと現在市販されている製品との比較
本明細書に記載された液体濃縮物及びそれらの結果として生じたヒドロゲルと、100%の天然由来の及び/または生分解性材料から構成されていない2つの市販されているヒドロゲル(CAH):CAH1(Barricade(商標))及びCAH2(TetraOK(商標))とを比較するために定性試験を実施した。これらの比較試験を10〜15Lのリザーバを有し、手押しポンプの噴霧ノズルを備える消火用バックパック、及び毎分1500ガロン(毎分1500ガロンの水)のヘイルポンプを有する86Hahnポンプ車を用いて行った。
【0110】
濃縮物からヒドロゲルを形成することに関して、本明細書に記載された液体濃縮物は、ヒドロゲルを迅速かつ容易に形成することが観察された。濃縮物を水に添加すると、ヒドロゲルが数秒、典型的には10〜15秒以内で形成/固まるであろう。濃縮物を消火用バックパックの水で満たされたリザーバに添加した場合、バックパックを数回(例えば、約3〜4回)手動で振ることが、リザーバ内にハイドロゲルを形成するために、及び消火剤として使用する準備をするために十分である。濃縮物を消防車の外部のまたはそこに搭載されているタンクに添加した場合、一人で数分以内、典型的には<5分で消火ヒドロゲルを生成することができたことが観察され、その時間は液体濃縮物を水または水溶液に添加して混合し、ヒドロゲルが固まる時間を含んでいた。
【0111】
対照的に、CAH1は、一般に、その液体濃縮物からヒドロゲルを形成するのに15〜30分かかり、ヒドロゲルが形成すると、典型的には、水に対して5重量%の濃縮物の充填であっても低い粘度を示した。CAH2は、一般に、その固体の粉末濃縮物からヒドロゲルを形成するために、複数人が努力(約4人)して8〜10分にわたる大掛かりな混合が必要であった。しばしば、これにより、混合点から全ての方向で表面を被覆した微細な細粉である「フライ粉末」がもたらされた。このフライ粉末は、周辺の人々に健康被害をもたらす可能性がある。前記濃縮物で被覆された表面は、しばしば、大気からの水分の吸収を吸収するためにヒドロゲルで被覆された表面に変換されるであろう。更に、大掛かりな混合は、約110psiの圧力で200ft以上の長さを有する消火ホースから放出された場合であっても、しばしば、粉末濃縮物の未溶解の塊を含まない均質なヒドロゲルを生成することができないこと、及び、CAH2ヒドロゲルの不均一な特質は、しばしば、噴霧ノズルを有するバックパックなどの消火機器の妨害をもたらすことが観察された。
【0112】
本明細書に記載されたヒドロゲルは、燃焼試験の大建築物に適用された場合、CAH1及び2と比較して、向上した消火/防火性能を提供することが更に観察された。例えば、CAH1は非常に低い粘度を有し(すなわち、流れやすい)、適正な防火処理と考えられるのに十分に長い時間、表面に残らなかったことが判明した。
【0113】
対照的に、本明細書に記載されたヒドロゲルは、表面に適用すると、それらが適用された表面上に残っており、CAH1及び/またはCAH2について観察されたものほど急速には表面を焼き払わず、液垂れもしなかった。更に、本明細書に記載されたヒドロゲルは、適用されたときに大建築物のひび、亀裂、穴に「忍び込み」または「滲み出て」、その後そこにとどまる傾向があることが観察された。それは、数秒間(約12秒)粘度がより低いまま維持され、これにより、せん断力の欠如のためにその粘度が再び上昇する前に、大建築物の任意のひびまたは破損部に入ることが可能となる。そのような挙動により、本明細書に記載されたヒドロゲルを浸透的消火作業、火災封じ込め、及び/または防火のために使用することが可能となるであろう。この挙動は、例えば、燃焼している干し草で満たされた納屋を消火する際において助けとなり、この場合、大きなくすぶっている干し草の山に浸透して被覆することができる消火剤を有することが恐らく有益であろう。
【0114】
水を用いるかまたは僅かな霧を用いる(水の直線状のスチームからのパーセント偏差)消火作業において典型的に採用されているように、これらのヒドロゲルを表面に適用する際には、直線状のスチームを介して適用することができることが判明した。30〜40度の霧パターンが、ほとんどの表面へのヒドロゲルの均一な適用を提供することが判明し、浸透的消火作業はしばしば直線状のスチームで達成された。更に、本明細書に記載されたヒドロゲルでの火災の消火、抑制、及び防止に対する「被覆及びアプローチ」技術はしばしば成功であった。任意の未燃焼の領域をヒドロゲルで被覆してそれらに火がつくことを防止することは更に、退出の安全な手段を消防士に提供した。本明細書に記載されたヒドロゲルで表面を被覆することは、表面を厚く覆い、火災が燃焼するのに使用する可能性にある酸素を移動させることが判明し、また、表面を冷却することによって表面が潜在的な燃料源になることを防止することが判明した。
【0115】
[表1]
【0116】
[表2]
【0117】
[表3]
【0118】
[表4]
【0119】
[表5]
【0120】
[表6]
【0121】
[表7]
【0122】
[表8]
【0123】
[表9]
【0124】
[表10]
【0125】
[表11]
【0126】
[表12]
【0127】
[表13]
【0128】
この明細書で言及された全ての刊行物、特許、及び特許出願は、この発明が関係する当業者の技術水準を示しており、各々の個々の刊行物、特許、または特許出願が参照により組み込まれるために具体的にかつ個別的に示されているかのように同じ程度に本明細書に参照により組み込まれる。
【0129】
このように発明を説明したが、同じことは多くの方法で変更可能であることは明らかであろう。そのような変更は、本発明の趣旨及び範囲からの逸脱であるとみなされるべきではなく、当業者に明らかであろうそのような全ての改変は、以下の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。
図1
図2
図3
図4