【文献】
古河電気工業株式会社、2015.10.09,半導体用テープ,2017年 3月28日,インターネット,URL,http://www.furukawa.co.jp/product/catalogue/pdf/uvtape_j_p061.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記熱膨張剤は、加熱によってガス化する成分と、当該成分を封入して当該成分のガス化によって膨張および/または破断を生じ得る殻とを備える、熱膨張性微小球である、請求項3に記載の造形ステージ用粘着シート。
前記電気剥離型粘着剤層における前記電解質の含有量は、前記粘着剤100質量部に対して0.5〜30質量部である、請求項10または11に記載の造形ステージ用粘着シート。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、本発明の一の実施形態に係る造形ステージ用粘着シートたる粘着シートX1の部分断面図である。粘着シートX1は、基材S1および粘着剤層11,12を含む積層構造を有する両面粘着シートである。
【0024】
粘着シートX1の基材S1は、粘着シートX1において支持体として機能するための部位である。そのような基材S1をなすための材料としては、例えば、紙材、不織布、およびプラスチックフィルムが挙げられる。基材S1をなすための紙材としては、例えば、和紙、クレープ紙、クラフト紙、グラシン紙、および合成紙が挙げられる。基材S1をなすための不織布の素材としては、例えば、麻パルプや木材パルプ等のパルプ、レーヨン、アセテート繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維、およびポリビニルアルコール繊維が挙げられる。不織布繊維どうしを結合させるためには、例えば、バインダー樹脂が繊維体に含浸される。基材S1をなすためのプラスチックフィルムとしては、例えば、ポリオレフィンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリウレタンフィルム、ポリイミド系樹脂フィルム、ポリアミド系樹脂フィルム、軟質塩化ビニル系樹脂フィルム、および酢酸ビニル系樹脂フィルムが挙げられる。ポリオレフィンフィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、および、エチレン-プロピレン共重合体からなるフィルムが挙げられる。ポリエステルフィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレートフィルムが挙げられる。粘着シートX1の基材S1は、一種類の材料からなってもよいし、二種類以上の材料からなってもよい。基材S1は、構成材料の異なる複数の層からなる積層体であってもよい。また、基材S1における粘着剤層11側表面および/または粘着剤層12側表面は、隣接する粘着剤層との密着性の向上のための表面処理が施されていてもよい。そのような表面処理としては、コロナ処理やプラズマ処理等の物理的処理、および、下塗り処理等の化学的処理が、挙げられる。このような基材S1について、厚さは例えば10〜300μmである。
【0025】
粘着シートX1の粘着剤層11は、加熱(粘着力低下措置)に因って粘着力が低下可能な熱剥離型粘着剤層(粘着力低下可能層)であって、粘着面11aを有する。そのような熱剥離型粘着剤層である粘着剤層11は、例えば常温からの加熱によって有意に粘着力の低下する粘着剤組成物よりなるところ、当該粘着剤組成物ないし粘着剤層11は、本実施形態では粘着剤および熱膨張剤を含有する。熱膨張剤とは、加熱によって膨張および/または発泡し得る微小粒であるところ、このような熱膨張剤を含む粘着剤層11は、当該熱膨張剤を膨張・発泡させる加熱を受けると、膨張し、粘着面11aを含む表面にて凹凸形状を生じる。粘着面11aが被着体に貼着している状態で粘着剤層11がそのような加熱を受けると、膨張する粘着剤層11の粘着面11aにて凹凸形状を生じて被着体に対する粘着剤層11ないし粘着面11aの接着面積が低減し、当該被着体に対する粘着剤層11の粘着力が低下することとなる。
【0026】
粘着剤層11に含まれる粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤としてのアクリル系ポリマー、天然ゴム、各種の合成ゴム、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、およびウレタン系粘着剤が挙げられる。粘着剤層11について良好な粘着力や、コストの抑制、高い生産性の実現という観点からは、粘着剤層11に含まれる粘着剤としてはアクリル系粘着剤が好ましい。アクリル系粘着剤ないしアクリル系ポリマーとは、アクリル酸アルキルエステルおよび/またはメタクリル酸アルキルエステルに由来するモノマーユニットを、質量比で最も多い主たるモノマーユニットとして含む重合体である。
【0027】
粘着剤層11がアクリル系粘着剤としてのアクリル系ポリマーを含む場合、当該アクリル系ポリマーは、主たるモノマーユニットとして、例えば、炭素数22以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来するユニットを含む。主たるモノマーユニットとは、当該アクリル系ポリマーにおいて最も大きな質量割合を占めるモノマーユニットとする。「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」および/または「メタクリル」を意味する。炭素数22以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、2-エチルヘキシル基、イソオクチル基、イソデシル基、ドデシル基、ラウリル基、トリデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、およびドコシル基が挙げられる。粘着剤層11に含まれるアクリル系ポリマーの形成のためには、一種類の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが用いられてもよいし、二種類以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが用いられてもよい。
【0028】
粘着剤層11がアクリル系粘着剤としてのアクリル系ポリマーを含む場合、当該アクリル系ポリマーは、粘着剤層11において凝集力や耐熱性等を改質するという観点から、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共に重合される他の種類のモノマーに由来するモノマーユニットを含んでもよい。そのような共重合性モノマーとしては、例えば、カルボキシ基含有モノマー、水酸基含有モノマー、スルホン酸基含有モノマー、アミド系モノマー、(メタ)アクリル酸アルキルアミノ系モノマー、マレイミド系モノマー、ビニル系モノマー、シアノアクリレートモノマー、エポキシ基含有アクリル系モノマー、および多官能モノマーが挙げられる。カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、およびクロトン酸が挙げられる。水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシラウリル、および(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレートが挙げられる。スルホン酸基含有モノマーとしては、例えば、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、および(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸が挙げられる。アミド系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、およびN-メチロールプロパン(メタ)アクリルアミドが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルアミノ系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル、および(メタ)アクリル酸t-ブチルアミノエチルが挙げられる。マレイミド系モノマーとしては、例えば、N-シクロヘキシルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド、N-ラウリルマレイミド、N-フェニルマレイミドが挙げられる。ビニル系モノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N-ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン、N-ビニルカルボン酸アミド類、スチレン、およびα-メチルスチレン、およびN-ビニルカプロラクタムが挙げられる。シアノアクリレートモノマーとしては、例えば、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルが挙げられる。エポキシ基含有アクリル系モノマーとしては、例えば(メタ)アクリル酸グリシジルが挙げられる。多官能モノマーとしては、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、およびジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。粘着剤層11に含まれるアクリル系ポリマーの形成のためには、一種類の共重合性モノマーが用いられてもよいし、二種類以上の共重合性モノマーが用いられてもよい。
【0029】
以上のようなアクリル系ポリマーは、原料モノマー成分を重合して得ることができる。重合手法としては、例えば、溶液重合、乳化重合、および塊状重合が挙げられる。溶液重合を行うに際しては、溶媒として、例えば、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、脂環式炭化水素類、エステル類、およびケトン類を用いることができる。アクリル系ポリマーを得るために原料モノマー成分を重合する際には、重合開始剤を用いることができる。重合反応の種類に応じて、例えば、光重合開始剤や熱重合開始剤を用いることができる。また、アクリル系ポリマーを得るために原料モノマー成分を重合する際には、連鎖移動材を用いてもよい。
【0030】
加熱によって膨張等し得る上述の熱膨張剤としては、例えば、無機系発泡剤および有機系発泡剤を用いることができる。無機系発泡剤としては、例えば、水、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、水素化ホウ素ナトリウム、および黒鉛が挙げられる。有機系発泡剤としては、例えば、塩フッ化アルカン、アゾ系化合物、ヒドラジン系化合物、セミカルバジド系化合物、トリアゾール系化合物、およびN-ニトロソ系化合物が挙げられる。塩フッ化アルカンとしては、例えば、トリクロロモノフルオロメタンおよびジクロロモノフルオロメタンが挙げられる。アゾ系化合物としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボンアミド、およびバリウムアゾジカルボキシレートが挙げられる。ヒドラジン系化合物としては、例えば、パラトルエンスルホニルヒドラジド、ジフェニルスルホン-3,3'-ジスルホニルヒドラジド、4,4'-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、およびアリルビス(スルホニルヒドラジド)が挙げられる。セミカルバジド系化合物としては、例えば、ρ-トルイレンスルホニルセミカルバジドおよび4,4'-オキシビス(ベンゼンスルホニルセミカルバジド)が挙げられる。トリアゾール系化合物としては、例えば、5-モルホリル-1,2,3,4-チアトリアゾールが挙げられる。N-ニトロソ系化合物としては、例えば、N,N'-ジニトロソペンタメチレンテトラミンおよびN,N'-ジメチル-N,N'-ジニトロソテレフタルアミドが挙げられる。
【0031】
加熱によって膨張等し得る上述の熱膨張剤としては、加熱によってガス化する成分と、これを封入して当該成分のガス化によって膨張および/または破断を生じ得る殻とを備える、熱膨張性微小球を用いるのが好ましい。熱膨張性微小球は、例えば、加熱によって容易にガス化して膨張し得る低沸点の液体等の物質が、弾性を有する殻内に封入されている構成を有する。殻内に封入される物質としては、例えば、イソブタン、プロパン、およびペンタンが挙げられる。殻は、例えば、熱膨張剤を膨張および/または発泡させるための加熱によって溶融し得る熱溶融性物質や、封入物質の加熱膨張ないしガス化によって膨張し得る或いは破断され得る物質および厚さで形成される。殻を形成するための物質として、例えば、塩化ビニリデン-アクリロニトリル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、およびポリスルホンが挙げられる。熱膨張性微小球は、例えば、コアセルベーション法や界面重合法などによって製造することができる。以上のような熱膨張性微小球の平均粒径は、例えば5〜100μmである。熱膨張性微小球を含む粘着剤層において良好な熱剥離性を発現させるという観点からは、熱膨張性微小球の体積膨張倍率は、例えば5倍以上、好ましくは7倍以上、より好ましくは10倍以上である。また、粘着剤層11における熱膨張性微小球の含有量は、粘着剤100質量部に対して例えば5〜200質量部である。
【0032】
粘着剤層11は、上述の成分に加えて他の成分を含んでもよい。そのような他の成分としては、例えば、架橋剤、粘着付与剤、可塑剤、軟化剤、充填剤、老化防止剤、シランカップリング剤、界面活性剤、および、顔料や染料などの着色剤が、挙げられる。これら成分を含んでもよいことについては、後述の他の粘着剤層についても同様である。
【0033】
粘着シートX1の粘着剤層11の厚さは、粘着剤層11において良好な粘着性を実現するという観点から、好ましくは1〜1000μmである。粘着剤層11の厚さの下限は、より好ましくは3μm、より好ましくは5μm、より好ましくは8μmである。粘着剤層11の厚さの上限は、より好ましくは500μm、より好ましくは100μm、より好ましくは30μmである。このような粘着剤層の厚さ範囲については、後述の他の粘着剤層においても同様である。
【0034】
粘着シートX1の一粘着面をなす粘着面11aについては、良好な接着力ないし粘着力を実現するという観点から、粘着力低下措置前の粘着力において、その180°剥離粘着力(対SUS304板,引張速度300mm/分,剥離温度23℃)が0.1N/10mm以上に設定されるのが好ましい。180°剥離粘着力については、JIS Z 0237に準じて測定することができる。このような粘着力については、後述の他の粘着力低下可能層の粘着力低下措置前の粘着力、および、粘着力低下可能層ではない後述の粘着剤層の粘着力においても同様である。
【0035】
粘着シートX1における熱剥離型粘着剤層(粘着力低下可能層)たる粘着剤層11においては、加熱によって膨張および/または発泡し得る熱膨張剤を含有して加熱起因の粘着力低下が実現可能とされている上述の構成のほか、加熱によってガラス結晶化する成分を含有して加熱起因の粘着力低下が実現可能とされている構成、加熱によって融解して粘着剤バルクの凝集力を低下せしめる結晶性成分を粘着剤ポリマー主成分に加えて含有して加熱起因の粘着力低下が実現可能とされている構成、加熱によって架橋反応ないし硬化反応を生ずる成分を含有して加熱起因の粘着力低下が実現可能とされている構成、加熱によって相分離を引き起こす組成を有して加熱起因の粘着力低下が実現可能とされている構成、または、加熱によって一部の相が溶融し得る複数の相を含む相分離組織を生じさせる組成を有して加熱起因の粘着力低下が実現可能とされている構成が採用されてもよい。或いは、粘着剤層11においては、これらから選択される複数の構成が組み合わされて採用されてもよい。粘着剤層11の構成に関するこれらの点については、粘着シートX1に関する後述の変形例の粘着剤層11においても同様である。
【0036】
粘着シートX1の粘着剤層12は、主剤として粘着剤を含み、粘着面12aを有する。主剤とは、構成成分中で最も大きな質量割合を占める成分とする。粘着剤層12に含まれる粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤としてのアクリル系ポリマー、天然ゴム、各種の合成ゴム、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、およびウレタン系粘着剤が挙げられる。粘着剤層12について良好な粘着力や、コストの抑制、高い生産性の実現という観点からは、粘着剤層12に含まれる粘着剤としてはアクリル系粘着剤が好ましい。また、粘着剤層12は、組成の異なる複数の粘着剤層からなる多層構造を有してもよい。
【0037】
粘着シートX1は、上述の基材S1および粘着剤層11,12に加えて他の層を含む積層構造を有してもよい。他の層としては、例えば、基材S1と熱剥離型の粘着剤層11との間の粘着力を高めるための下塗り層が挙げられる。下塗り層の構成材料としては、例えば、合成ゴムや、ゴム弾性を有する合成樹脂が挙げられる。合成ゴムとしては、ニトリル系合成ゴム、ジエン系合成ゴム、およびアクリル系合成ゴムが挙げられる。ゴム弾性を有する合成樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、熱可塑性エラストマー、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン、ポリブタジエン、および軟質ポリ塩化ビニルが挙げられる。下塗り層の厚さは、例えば0.1〜100μmである。基材S1と粘着剤層11との間にこのような下塗り層が設けられる構成は、粘着剤層11における加熱起因の粘着力低下を粘着面11aにて生じさせるのに適する。これに対し、基材S1と粘着剤層11との間に下塗り層が設けられない構成や、基材S1における粘着剤層11側表面に剥離処理が施される構成は、粘着剤層11における加熱起因の粘着力低下を基材S1側表面にて生じさせるのに適する。また、粘着剤層11および粘着剤層12のそれぞれについての厚さや硬さの設定によっては、基材S1がなくとも粘着シートX1にとっての充分な破断強度を確保することができる場合があるところ、そのような場合には、粘着シートX1において基材S1を設けない構成を採用してもよい。
【0038】
以上のような粘着シートX1については、例えば次のようにして製造することができる。まず、粘着剤層11形成用の粘着剤組成物(第1の粘着剤組成物)、および、粘着剤層12形成用の粘着剤組成物(第2の粘着剤組成物)を、それぞれ調製する。第1の粘着剤組成物は、少なくとも粘着剤および熱膨張剤を含有する。第2の粘着剤組成物は、少なくとも粘着剤を含有する。次に、表面に剥離処理の施されている第1の剥離ライナーないし剥離フィルム上にて、第1の粘着剤組成物を塗布して第1の粘着剤組成物層を形成した後、その層を乾燥させる。これにより、第1の剥離ライナー上に粘着剤層11が形成される。一方、表面に剥離処理の施されている第2の剥離ライナーないし剥離フィルム上にて、第2の粘着剤組成物を塗布して第2の粘着剤組成物層を形成した後、その層を乾燥させる。これにより、第2の剥離ライナー上に粘着剤層12が形成される。そして、粘着剤層11を基材S1の一方の面の側に貼り合わせ、且つ、粘着剤層12を基材S1の他方の面の側に貼り合わせる。その後、必要に応じて粘着剤層11,12について更に乾燥させ、或いは架橋反応を進行させる。後述の実施形態に係る造形ステージ用粘着シートについても、形成すべき粘着剤層のための粘着剤組成物の調製、当該組成物からの粘着剤組成物層の形成、当該粘着剤組成物層からの目的粘着剤層の形成、および、当該粘着剤層の基材への貼り合わせ等を経て、製造することができる。
【0039】
上述のようにして製造される粘着シートX1は、粘着剤層11の表面(粘着面11a)を被覆するように設けられるセパレーター(剥離ライナー)または粘着剤層12の表面(粘着面12a)を被覆するように設けられるセパレーター(剥離ライナー)を伴って、ロール状に巻き回された形態をとってもよい。また、粘着シートX1には、粘着面11a,12aを被覆するように一対のセパレーター(剥離ライナー)が設けられていてもよい。セパレーターは、粘着シートX1を被着体に貼り合わせる際に粘着シートX1から剥がされる。剥離ライナーを伴う以上の構成に関しては、後述の実施形態に係る造形ステージ用粘着シートについても同様である。
【0040】
粘着シートX1は、例えば
図2に示すように、造形物を形成するための積層造形装置の具備する造形ステージ100において使用されるものである。具体的には、造形物形成開始前に、
図2(a)に示すように、粘着シートX1は、造形ステージ100の造形物形成面101に貼り合わせられる。粘着シートX1はその粘着剤層を介して造形物形成面101に貼り合わせられるところ、具体的には、粘着シートX1の粘着剤層11側または粘着剤層12側が造形物形成面101に貼着される。装置稼動時の造形物形成過程では、積層造形装置において採用されているアディティブマニュファクチャリング技法に応じた所定のプロセスを経て、
図2(b)に示すように、表面に粘着シートX1を伴う造形ステージ100上に目的の造形物Wが次第に形作られる。アディティブマニュファクチャリング技法としては、例えば、熱溶解積層法、インクジェット法、光造形法、シート積層法等が挙げられる。このような造形物形成過程では、粘着シートX1は造形ステージ100の造形物形成面101に貼着し、且つ、形成途中の造形物Wは造形ステージ100上の粘着シートX1に定着している。すなわち、形成途中の造形物Wは、造形ステージ100に対し、粘着シートX1を介して定着した状態にある。そして、
図2(c)に示すような造形物形成過程終了後には、造形ステージ100上の粘着シートX1に対して粘着力低下措置が行われる。本実施形態において、粘着力低下措置は、粘着シートX1の有する粘着力低下可能層たる粘着剤層11の加熱である。例えば造形ステージ100にヒーターが内蔵されている場合、当該ヒーターによって造形ステージ100上の粘着シートX1を加熱することが可能である。加熱温度は、例えば、粘着剤層11中の熱膨張剤を膨張および/または発泡させ得る温度であって70〜200℃である。このような粘着力低下措置たる加熱に因り、粘着剤層11の粘着力は低下し、造形ステージ100に対する造形物Wの、粘着シートX1を介した定着状態は、解除される。その結果、造形ステージ100から造形物Wを取り外しやすくなる。造形物形成開始前に粘着シートX1がその粘着剤層11側で造形ステージ100に貼り合わせられる場合には、粘着シートX1について、加熱に因って粘着力の低下した粘着剤層11の例えば粘着面11aにて造形ステージ100から剥離する作業を行うことに伴って、造形ステージ100上から造形物Wを取り外すことが可能となる。造形物形成開始前に粘着シートX1がその粘着剤層12側で造形ステージ100に貼り合わせられる場合には、造形物Wは粘着シートX1の粘着剤層11上に形成されるところ、加熱に因って粘着力の低下した粘着剤層11から造形物Wを引き離すことによって、造形ステージ100上から造形物Wを取り外すことが可能となる。
【0041】
以上のように、造形ステージ用の粘着シートX1は、積層造形装置の具備する造形ステージ100上で形成される造形物Wについて、造形中には造形ステージ100上に定着させ且つ造形後には造形ステージ100上から取り外しやすくするのに適するのである。加えて、このような粘着シートX1を、積層造形装置による造形物Wの形成に際して上述のように使用する場合、造形ステージ100上から造形物Wを取り外すうえで、鋭利な先端を有するスクレーパー等の道具の使用を回避することが可能である。したがって、造形ステージ用の粘着シートX1の使用は、造形ステージ100上から造形物Wを取り外すに際して造形物Wや造形ステージ100の破損を回避ないし抑制するのに資する。
【0042】
図3(a)は、
図1に示す造形ステージ用の粘着シートX1の一の変形例たる粘着シートX1aを表す。粘着シートX1aは、基材S1および粘着剤層11,11を含む積層構造を有する両面粘着シートであり、粘着剤層12に代えて熱剥離型の粘着剤層11を備える点において上述の粘着シートX1と異なる。
図3(b)は、造形ステージ用の粘着シートX1の一の変形例たる粘着シートX1bを表す。粘着シートX1bは、基材S1および粘着剤層11を含む積層構造を有する片面粘着シートであり、粘着剤層12を備えない点において上述の粘着シートX1と異なる。このような粘着シートX1bは、その粘着剤層11側が造形ステージ100の造形物形成面101に貼着されて使用される。積層造形装置によって積層造形される造形物のステージ側端面が造形物形成面に例えば融着して定着し得る場合には、造形物側に粘着剤層のない粘着シートX1bを使用することも可能である。
図3(c)は、造形ステージ用の粘着シートX1の一の変形例たる粘着シートX1cを表す。粘着シートX1cは、粘着剤層11,12を含む積層構造を有する両面粘着シートであり、基材S1を備えない点において上述の粘着シートX1と異なる。このような粘着シートX1cは、その粘着剤層11側または粘着剤層12側が造形ステージ100の造形物形成面101に貼着されて使用される。粘着剤層11および粘着剤層12のそれぞれについての厚さや硬さの設定によっては、基材S1がなくとも造形ステージ用粘着シートにとっての充分な破断強度を確保することができる場合があるところ、そのような場合には、基材S1を設けない構成を採用してもよい。
図3(d)は、造形ステージ用の粘着シートX1の一の変形例たる粘着シートX1dを表す。粘着シートX1dは、熱剥離型の粘着剤層11からなる両面粘着シートであり、基材S1および粘着剤層12を備えない点において上述の粘着シートX1と異なる。粘着剤層11の厚さや硬さの設定によっては、基材S1および粘着剤層12がなくとも造形ステージ用粘着シートにとっての充分な破断強度を確保することができる場合があるところ、そのような場合には、基材S1および粘着剤層12を設けない構成を採用してもよい。これら造形ステージ用の粘着シートX1a,X1b,X1c,X1dは、それぞれ、粘着シートX1に関して上述したのと同様に使用することが可能であり、従って、積層造形装置の具備する造形ステージ100上で形成される造形物Wについて、造形中には造形ステージ100上に定着させ且つ造形後には造形ステージ100上から取り外しやすくするのに適する。
【0043】
図4は、本発明の一の実施形態に係る造形ステージ用粘着シートたる粘着シートX2の部分断面図である。粘着シートX2は、基材S1および粘着剤層21,22を含む積層構造を有する両面粘着シートである。
【0044】
粘着シートX2の粘着剤層21は、冷却(粘着力低下措置)に因って粘着力が低下可能な冷却剥離型粘着剤層(粘着力低下可能層)であって、粘着面21aを有する。冷却剥離型粘着剤層である粘着剤層21は、例えば常温からの冷却によって有意に粘着力の低下する粘着剤組成物よりなるところ、当該粘着剤組成物ないし粘着剤層21は、本実施形態では、主剤たる粘着剤として或いは主剤たる粘着剤に加えて側鎖結晶性ポリマーを含有する。粘着面21aが被着体に貼着している状態で、粘着剤層21内の側鎖結晶性ポリマーの例えば融点未満にまで粘着剤層21が冷却されると、粘着剤層21において、当該側鎖結晶性ポリマーが結晶化し、当該被着体に対する粘着力が低下することとなる。粘着剤層21の粘着力は、−30℃では例えば6.5Nである。そのような冷却剥離型粘着剤層は、例えば、特開2013−173912号公報に記載されているように、直鎖状または分岐鎖状の炭素数10〜13のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル等を含み且つカルボキシ基含有モノマーを実質的に含まない原料モノマー成分の重合物たるアクリル系ポリマー、または、当該原料モノマー成分の部分重合物、を含む粘着剤組成物から、形成することが可能である。また、冷却剥離型粘着剤層を冷却するための冷却剤としては、例えば、−30〜10℃に冷却された二酸化炭素ガスや窒素ガス、および、冷却用温度とされた水やいわゆる不凍液が挙げられる。
【0045】
粘着シートX2の冷却剥離型粘着剤層(粘着力低下可能層)たる粘着剤層21においては、冷却によって結晶化し得る側鎖結晶性ポリマーを含有して冷却起因の粘着力低下が実現可能とされている上述の構成のほか、冷却によって収縮する組成を有して冷却起因の粘着力低下が実現可能とされている構成、または、冷却によって相分離を引き起こす組成を有して冷却起因の粘着力低下が実現可能とされている構成が採用されてもよい。或いは、粘着剤層21においては、これらから選択される複数の構成が組み合わされて採用されてもよい。粘着剤層21の構成に関するこれらの点については、粘着シートX2に関する後述の変形例の粘着剤層21においても同様である。
【0046】
粘着シートX2の粘着剤層22は、主剤として粘着剤を含み、粘着面22aを有する。粘着剤層22に含まれる粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤としてのアクリル系ポリマー、天然ゴム、各種の合成ゴム、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、およびウレタン系粘着剤が挙げられる。粘着剤層22について良好な粘着力や、コストの抑制、高い生産性の実現という観点からは、粘着剤層22に含まれる粘着剤としてはアクリル系粘着剤が好ましい。また、粘着剤層22は、組成の異なる複数の粘着剤層からなる多層構造を有してもよい。
【0047】
粘着シートX2は、粘着シートX1と同様、例えば
図2に示すように、造形物を形成するための積層造形装置の具備する造形ステージ100において使用されるものである。具体的には、造形物形成開始前に、
図2(a)に示すように、粘着シートX2は、造形ステージ100の造形物形成面101に貼り合わせられる。粘着シートX2はその粘着剤層を介して造形物形成面101に貼り合わせられるところ、具体的には、粘着シートX2の粘着剤層21側または粘着剤層22側が造形物形成面101に貼着される。装置稼動時の造形物形成過程では、
図2(b)に示すように、表面に粘着シートX2を伴う造形ステージ100上に目的の造形物Wが次第に形作られる。このような造形物形成過程では、形成途中の造形物Wは、造形ステージ100に対し、粘着シートX2を介して定着した状態にある。そして、
図2(c)に示すような造形物形成過程終了後には、造形ステージ100上の粘着シートX2に対して粘着力低下措置が行われる。本実施形態において、粘着力低下措置は、粘着シートX2の有する粘着力低下可能層たる粘着剤層21の冷却である。冷却手法としては、例えば、粘着シートX2ないし粘着剤層21に対する冷却剤の噴霧等による供給が挙げられる。冷却温度は、例えば、粘着剤層21内の側鎖結晶性ポリマーを結晶化させる温度であって−60〜−20℃である。このような粘着力低下措置たる冷却に因り、粘着剤層21の粘着力は低下し、造形ステージ100に対する造形物Wの、粘着シートX2を介した定着状態は、解除される。その結果、造形ステージ100から造形物Wを取り外しやすくなる。造形物形成開始前に粘着シートX2がその粘着剤層21側で造形ステージ100に貼り合わせられる場合には、粘着シートX2について、冷却に因って粘着力の低下した粘着剤層21の例えば粘着面21aにて造形ステージ100から剥離する作業を行うことに伴って、造形ステージ100上から造形物Wを取り外すことが可能となる。造形物形成開始前に粘着シートX2がその粘着剤層22側で造形ステージ100に貼り合わせられる場合には、造形物Wは粘着シートX2の粘着剤層21上に形成されるところ、冷却に因って粘着力の低下した粘着剤層21から造形物Wを引き離すことによって、造形ステージ100上から造形物Wを取り外すことが可能となる。
【0048】
以上のように、造形ステージ用の粘着シートX2は、積層造形装置の具備する造形ステージ100上で形成される造形物Wについて、造形中には造形ステージ100上に定着させ且つ造形後には造形ステージ100上から取り外しやすくするのに適するのである。加えて、このような粘着シートX2を、積層造形装置による造形物Wの形成に際して上述のように使用する場合、造形ステージ100上から造形物Wを取り外すうえで、鋭利な先端を有するスクレーパー等の道具の使用を回避することが可能である。したがって、造形ステージ用の粘着シートX2の使用は、造形ステージ100上から造形物Wを取り外すに際して造形物Wや造形ステージ100の破損を回避ないし抑制するのに資する。
【0049】
図5(a)は、
図4に示す造形ステージ用の粘着シートX2の一の変形例たる粘着シートX2aを表す。粘着シートX2aは、基材S1および粘着剤層21,21を含む積層構造を有する両面粘着シートであり、粘着剤層22に代えて冷却剥離型の粘着剤層21を備える点において上述の粘着シートX2と異なる。
図5(b)は、造形ステージ用の粘着シートX2の一の変形例たる粘着シートX2bを表す。粘着シートX2bは、基材S1および粘着剤層21を含む積層構造を有する片面粘着シートであり、粘着剤層22を備えない点において上述の粘着シートX2と異なる。このような粘着シートX2bは、その粘着剤層21側が造形ステージ100の造形物形成面101に貼着されて使用される。積層造形装置によって積層造形される造形物のステージ側端面が造形物形成面に例えば融着して定着し得る場合には、造形物側に粘着剤層のない粘着シートX2bを使用することも可能である。
図5(c)は、造形ステージ用の粘着シートX2の一の変形例たる粘着シートX2cを表す。粘着シートX2cは、粘着剤層21,22を含む積層構造を有する両面粘着シートであり、基材S1を備えない点において上述の粘着シートX2と異なる。このような粘着シートX2cは、その粘着剤層21側または粘着剤層22側が造形ステージ100の造形物形成面101に貼着されて使用される。粘着剤層21および粘着剤層22のそれぞれについての厚さや硬さの設定によっては、基材S1がなくとも造形ステージ用粘着シートにとっての充分な破断強度を確保することができる場合があるところ、そのような場合には、基材S1を設けない構成を採用してもよい。
図5(d)は、造形ステージ用の粘着シートX2の一の変形例たる粘着シートX2dを表す。粘着シートX2dは、冷却剥離型の粘着剤層21からなる両面粘着シートであり、基材S1および粘着剤層22を備えない点において上述の粘着シートX2と異なる。粘着剤層21の厚さや硬さの設定によっては、基材S1および粘着剤層22がなくとも造形ステージ用粘着シートにとっての充分な破断強度を確保することができる場合があるところ、そのような場合には、基材S1および粘着剤層22を設けない構成を採用してもよい。これら造形ステージ用の粘着シートX2a,X2b,X2c,X2dは、それぞれ、粘着シートX2に関して上述したのと同様に使用することが可能であり、従って、積層造形装置の具備する造形ステージ100上で形成される造形物Wについて、造形中には造形ステージ100上に定着させ且つ造形後には造形ステージ100上から取り外しやすくするのに適する。
【0050】
図6は、本発明の一の実施形態に係る造形ステージ用粘着シートたる粘着シートX3の部分断面図である。粘着シートX3は、基材S1および粘着剤層31,32を含む積層構造を有する両面粘着シートである。
【0051】
粘着シートX3の粘着剤層31は、紫外線などの電磁波の照射(粘着力低下措置)に因って粘着力が低下可能な電磁波剥離型粘着剤層(粘着力低下可能層)であって、粘着面31aを有する。粘着剤層31は、電磁波の照射によって硬化する粘着剤組成物よりなるところ、当該粘着剤組成物ないし粘着剤層31は、本実施形態では、粘着剤ポリマーおよび電磁波硬化性成分を含有する。電磁波硬化性成分とは、例えば、電磁波の照射を受けて硬化反応を開始および進行させ得るモノマーやオリゴマーである。粘着面31aが被着体に貼着している状態で粘着剤層31が電磁波の照射を受けると、粘着剤層31において当該照射によって誘発される電磁波硬化性成分の反応が進行して粘着剤層31が硬化して収縮し、当該粘着剤層31と被着体との界面においてせん断力が生ずる。本実施形態では、粘着剤層31について、被着体との界面にてこのようにして生ずるせん断力を利用して、被着体に対する粘着力が低下するように構成されている。このような粘着剤層31における電磁波硬化性成分の含有量は、粘着剤層31内の粘着剤ポリマー100質量部に対して、例えば5〜500質量部であり、好ましくは10〜200質量部、より好ましくは10〜100質量部である。
【0052】
粘着シートX3における電磁波剥離型粘着剤層(粘着力低下可能層)たる粘着剤層31においては、電磁波照射を受けることによって硬化反応を開始および進行させる電磁波硬化型オリゴマーを含有して電磁波照射起因の粘着力低下が実現可能とされている上述の構成のほか、電磁波照射を受けることによって光触媒反応が誘発されてガスを発生して発泡し得るアゾ化合物やアジド化合物等の成分を含有して電磁波照射起因の粘着力低下が実現可能とされている構成、または、電磁波照射に応答して構造変化を生ずる液晶等を含有して電磁波照射起因の粘着力低下が実現可能とされている構成が採用されてもよい。或いは、粘着剤層31においては、これらから選択される複数の構成が組み合わされて採用されてもよい。粘着剤層31の構成に関するこれらの点については、粘着シートX3に関する後述の変形例の粘着剤層31においても同様である。
【0053】
粘着シートX3の粘着剤層32は、主剤として粘着剤を含み、粘着面32aを有する。粘着剤層32に含まれる粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤としてのアクリル系ポリマー、天然ゴム、各種の合成ゴム、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、およびウレタン系粘着剤が挙げられる。粘着剤層32について良好な粘着力や、コストの抑制、高い生産性の実現という観点からは、粘着剤層32に含まれる粘着剤としてはアクリル系粘着剤が好ましい。また、粘着剤層32は、組成の異なる複数の粘着剤層からなる多層構造を有してもよい。
【0054】
粘着シートX3は、粘着シートX1と同様、例えば
図2に示すように、造形物を形成するための積層造形装置の具備する造形ステージ100において使用されるものである。具体的には、造形物形成開始前に、
図2(a)に示すように、粘着シートX3は、造形ステージ100の造形物形成面101に貼り合わせられる。粘着シートX3はその粘着剤層を介して造形物形成面101に貼り合わせられるところ、具体的には、粘着シートX3の粘着剤層31側または粘着剤層32側が造形物形成面101に貼着される。装置稼動時の造形物形成過程では、
図2(b)に示すように、表面に粘着シートX3を伴う造形ステージ100上に目的の造形物Wが次第に形作られる。このような造形物形成過程では、形成途中の造形物Wは、造形ステージ100に対し、粘着シートX3を介して定着した状態にある。そして、
図2(c)に示すような造形物形成過程終了後には、造形ステージ100上の粘着シートX3に対して粘着力低下措置が行われる。本実施形態において、粘着力低下措置は、粘着シートX3の有する粘着力低下可能層たる粘着剤層31に対する電磁波照射である。粘着剤層31が当該電磁波照射を受けると、例えば、粘着剤層31において当該照射によって誘発される化学反応が進行して粘着剤層31が硬化して収縮し、当該粘着剤層31とその被着体との界面においてせん断力が生じ、当該被着体に対する粘着剤層31の粘着力が低下することとなる。このようにして、造形ステージ100に対する造形物Wの、粘着シートX3を介した定着状態は、解除される。その結果、造形ステージ100から造形物Wを取り外しやすくなる。造形物形成開始前に粘着シートX3がその粘着剤層31側で造形ステージ100に貼り合わせられる場合には、粘着シートX3について、電磁波照射に因って粘着力の低下した粘着剤層31の例えば粘着面31aにて造形ステージ100から剥離する作業を行うことに伴って、造形ステージ100上から造形物Wを取り外すことが可能となる。造形物形成開始前に粘着シートX3がその粘着剤層32側で造形ステージ100に貼り合わせられる場合には、造形物Wは粘着シートX3の粘着剤層31上に形成されるところ、電磁波照射に因って粘着力の低下した粘着剤層31から造形物Wを引き離すことによって、造形ステージ100上から造形物Wを取り外すことが可能となる。
【0055】
以上のように、造形ステージ用の粘着シートX3は、積層造形装置の具備する造形ステージ100上で形成される造形物Wについて、造形中には造形ステージ100上に定着させ且つ造形後には造形ステージ100上から取り外しやすくするのに適するのである。加えて、このような粘着シートX3を、積層造形装置による造形物Wの形成に際して上述のように使用する場合、造形ステージ100上から造形物Wを取り外すうえで、鋭利な先端を有するスクレーパー等の道具の使用を回避することが可能である。したがって、造形ステージ用の粘着シートX3の使用は、造形ステージ100上から造形物Wを取り外すに際して造形物Wや造形ステージ100の破損を回避ないし抑制するのに資する。
【0056】
図7(a)は、
図6に示す造形ステージ用の粘着シートX3の一の変形例たる粘着シートX3aを表す。粘着シートX3aは、基材S1および粘着剤層31,31を含む積層構造を有する両面粘着シートであり、粘着剤層32に代えて電磁波剥離型の粘着剤層31を備える点において上述の粘着シートX3と異なる。
図7(b)は、造形ステージ用の粘着シートX3の一の変形例たる粘着シートX3bを表す。粘着シートX3bは、基材S1および粘着剤層31を含む積層構造を有する片面粘着シートであり、粘着剤層32を備えない点において上述の粘着シートX3と異なる。このような粘着シートX3bは、その粘着剤層31側が造形ステージ100の造形物形成面101に貼着されて使用される。積層造形装置によって積層造形される造形物のステージ側端面が造形物形成面に例えば融着して定着し得る場合には、造形物側に粘着剤層のない粘着シートX3bを使用することも可能である。
図7(c)は、造形ステージ用の粘着シートX3の一の変形例たる粘着シートX3cを表す。粘着シートX3cは、粘着剤層31,32を含む積層構造を有する両面粘着シートであり、基材S1を備えない点において上述の粘着シートX3と異なる。このような粘着シートX3cは、その粘着剤層31側または粘着剤層32側が造形ステージ100の造形物形成面101に貼着されて使用される。粘着剤層31および粘着剤層32のそれぞれについての厚さや硬さの設定によっては、基材S1がなくとも造形ステージ用粘着シートにとっての充分な破断強度を確保することができる場合があるところ、そのような場合には、基材S1を設けない構成を採用してもよい。
図7(d)は、造形ステージ用の粘着シートX3の一の変形例たる粘着シートX3dを表す。粘着シートX3dは、電磁波剥離型の粘着剤層31からなる両面粘着シートであり、基材S1および粘着剤層32を備えない点において上述の粘着シートX3と異なる。粘着剤層31の厚さや硬さの設定によっては、基材S1および粘着剤層32がなくとも造形ステージ用粘着シートにとっての充分な破断強度を確保することができる場合があるところ、そのような場合には、基材S1および粘着剤層32を設けない構成を採用してもよい。これら造形ステージ用の粘着シートX3a,X3b,X3c,X3dは、それぞれ、粘着シートX3に関して上述したのと同様に使用することが可能であり、従って、積層造形装置の具備する造形ステージ100上で形成される造形物Wについて、造形中には造形ステージ100上に定着させ且つ造形後には造形ステージ100上から取り外しやすくするのに適する。
【0057】
図8は、本発明の一の実施形態に係る造形ステージ用粘着シートたる粘着シートX4の部分断面図である。粘着シートX4は、基材S2および粘着剤層41,42を含む積層構造を有する両面粘着シートである。
【0058】
基材S2は、粘着シートX4において支持体として機能するとともに、後述の電圧印加のための一端子として機能する部位である。基材S2は、例えば、ベース主材とその表面に設けられた導電層とを含む積層構造を有する。ベース主材としては、例えば、プラスチック系基材、繊維系基材、または紙系基材である。導電層は、導電性を有する層であり、例えば、金属や導電性ポリマーよりなる。導電層の厚さは、例えば10〜1000μmである。このような導電層は、ベース主材上においてメッキ法、化学蒸着法、またはスパッタリング法によって形成することができる。基材S2における導電層側に上述の粘着剤層41は貼着し、粘着剤層41と導電層とは電気的に接続している。本実施形態の基材S2は、その面広がり方向において粘着剤層41よりも延びて露出する延出部を有する。このような構成においては、電圧印加デバイスないし直流電源デバイスの一方の端子と基材S2ないしその導電層との電気的接続について、当該延出部を介して実現しやすい。また、本実施形態において、基材S2について、ベース主材と導電層とを含む積層構造を有するのに代えて、導電性の基材であってもよい。そのような基材S2は、例えば、金属や導電性ポリマーよりなる。以上のような構成の基材S2の厚さは、例えば10〜1000μmであり、好ましくは30〜500μmであり、より好ましくは50〜300μmである。
【0059】
粘着シートX4の粘着剤層41は、電圧印加(粘着力低下措置)に因って粘着力が低下可能な電気剥離型粘着剤層(粘着力低下可能層)であって、粘着面41aを有する。粘着剤層41は、例えば、粘着剤および電解質を含有する。粘着剤層41の厚さ方向に電位差が生じるように粘着剤層41に対して直流電圧を印加すると、粘着剤層41内の電解質において配向変化や層の厚さ方向への移動が生じて粘着剤層41表面の組成が変化し得るところ、粘着面41aが被着体に貼着している状態で粘着剤層41が電圧印加を受ける場合に粘着面11aに生ずるそのような組成変化を利用して、粘着面41aの粘着力を低下させることが可能である。
【0060】
粘着剤層41に含有される粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤たるアクリル系ポリマー、ゴム系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、フッ素系粘着剤、およびエポキシ系粘着剤が挙げられる。粘着剤層41をなすためには、一種類の粘着剤を用いてもよいし、二種類以上の粘着剤を用いてもよい。粘着剤層41に含有される粘着剤としては、コストの抑制や高い生産性の実現という観点からは、アクリル系粘着剤が好ましい。アクリル系粘着剤としてのアクリル系ポリマーの組成および重合方法については、粘着シートX1の粘着剤層11に含有されるアクリル系粘着剤としてのアクリル系ポリマーについて上述したのと同様である。
【0061】
粘着剤層41に含有される電解質は、アニオンとカチオンとに電離可能な物質であり、そのような電解質としては、イオン液体や、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等が挙げられる。粘着剤層41において良好な電気剥離性を実現するという観点からは、粘着剤層41に含有される電解質としては、イオン液体が好ましい。イオン液体は、室温(約25℃)で液体の塩であってアニオンとカチオンとを含む。粘着剤層41がイオン液体を含有する場合、当該イオン液体のアニオンは、例えば、(CF
3SO
2)
2N
-,(CF
3CF
2SO
2)
2N
-,(CF
3SO
2)
3C
-,Br
-,AlCl
4-,Al
2Cl
7-,NO
3-,BF
4-,PF
6-,CH
3COO
-,CF
3COO
-,CF
3CF
2CF
2COO
-,CF
3SO
3-,CF
3(CF
2)
3SO
3-,AsF
6-,およびSbF
6-からなる群より選択される少なくとも一種を含有する。粘着剤層41がイオン液体を含有する場合、当該イオン液体のカチオンは、例えば、イミダゾリウム系カチオン、ピリジニウム系カチオン、ピロリジニウム系カチオン、およびアンモニウム系カチオンからなる群より選択される少なくとも一種を含有する。粘着剤層41に含有されるイオン液体の市販品としては、例えば、広栄化学工業株式会社製の「IL-A series」「IL-P series」「IL-C series」「IL-IM series」「IL-AP series」が挙げられる。
【0062】
粘着剤層41における電解質の含有量は、粘着剤層41において電気剥離性を付与するために例えば0.1質量%以上である。粘着剤層41において良好な電気剥離性を実現するという観点からは、粘着剤層41における電解質の含有量は、粘着剤層41内の粘着剤100質量部に対し、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは0.6質量部以上、より好ましくは0.8質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上、より好ましくは1.5質量部以上である。粘着剤層41について良好な粘着力と電気剥離性とをバランス良く実現するという観点からは、粘着剤層41における電解質の含有量は、粘着剤層41内の粘着剤100質量部に対し、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。
【0063】
粘着シートX4における電気剥離型粘着剤層(粘着力低下可能層)たる粘着剤層41においては、直流電圧の印加によって偏在し得る電解質を粘着剤ポリマーに加えて含有して電圧印加起因の粘着力低下が実現可能とされている上述の構成のほか、直流電圧の印加によって電気泳動し得る荷電粒子や分子を粘着剤ポリマーに加えて含有して電圧印加起因の粘着力低下が実現可能とされている構成、または、電場応答性を有する低分子量の液晶成分を粘着剤ポリマーに加えて含有することによって交流電圧の印加によって相分離し得て電圧印加起因の粘着力低下が実現可能とされている構成が採用されてもよい。或いは、粘着剤層41においては、これらから選択される複数の構成が組み合わされて採用されてもよい。粘着剤層41の構成に関するこれらの点については、粘着シートX4に関する後述の変形例の粘着剤層41においても同様である。
【0064】
粘着シートX4の粘着剤層42は、主剤として粘着剤を含み、粘着面42aを有する。粘着剤層42に含まれる粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤としてのアクリル系ポリマー、天然ゴム、各種の合成ゴム、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、およびウレタン系粘着剤が挙げられる。粘着剤層42について良好な粘着力や、コストの抑制、高い生産性の実現という観点からは、粘着剤層42に含まれる粘着剤としてはアクリル系粘着剤が好ましい。また、粘着剤層42は、組成の異なる複数の粘着剤層からなる多層構造を有してもよい。
【0065】
粘着シートX4は、粘着シートX1と同様、例えば
図2に示すように、造形物を形成するための積層造形装置の具備する造形ステージ100において使用されるものである。具体的には、造形物形成開始前に、
図2(a)に示すように、粘着シートX4は、造形ステージ100の造形物形成面101に貼り合わせられる。本実施形態では、造形物形成面101および/または造形物は導電性を有する。例えば、非導電材料よりなる造形ステージ本体の表面に導電材料よりなる導電プレートを固定するか、或いは、導電材料よりなる造形ステージ本体を採用することによって、導電性を有する造形物形成面101を伴う造形ステージ100とすることが可能である。例えば、造形物形成過程で造形ステージ100上に供給されるモデル材(造形物形成材料)が導電フィラー含有樹脂組成物である場合には、導電性を有する造形物を形成することが可能である。造形物形成開始前に粘着シートX4はその粘着剤層を介して造形物形成面101に対して貼り合わせられるところ、例えば、造形物形成面101が導電性を有する場合には、電気剥離型の粘着剤層41が造形物形成面101に貼着され、造形物が導電性を有する場合には、粘着剤層42が造形物形成面101に貼着される。装置稼動時の造形物形成過程では、
図2(b)に示すように、表面に粘着シートX4を伴う造形ステージ100上に目的の造形物Wが次第に形作られる。このような造形物形成過程では、形成途中の造形物Wは、造形ステージ100に対し、粘着シートX4を介して定着した状態にある。そして、
図2(c)に示すような造形物形成過程終了後には、造形ステージ100上の粘着シートX4に対して粘着力低下措置が行われる。本実施形態において、粘着力低下措置は、粘着シートX4の有する粘着力低下可能層たる粘着剤層41に対する電圧印加である。具体的には、粘着剤層41に対し、その厚さ方向に電位差が生じるように電圧が印加される。造形物形成面101が導電性を有する場合、粘着剤層41に対する電圧の印加は、電圧印加デバイスないし直流電源デバイスの一対の端子を粘着シートX4の基材S2ないしその導電層と造形ステージ100の造形物形成面101とに電気的に接続したうえで行うことが可能である。造形物が導電性を有する場合、粘着剤層41に対する電圧の印加は、電圧印加デバイスないし直流電源デバイスの一対の端子を粘着シートX4の基材S2ないしその導電層と造形物とに電気的に接続したうえで行うことが可能である。これら電圧印加は、例えば、電圧印加デバイスにおけるプラス極端子を基材S2ないしその導電層に接触させ、且つ、マイナス極端子を他方の導電部である導電性を有する造形物形成面101または導電性を有する造形物に接触させ、行う(粘着シートX4に関する後記の変形例において、その電気剥離型の粘着剤層41に対して導電性を有する造形物形成面101と導電性を有する造形物とを介して電圧印加可能である場合には、電圧印加デバイスの一対の端子を当該造形物形成面101と当該造形物とに電気的に接続したうえで電圧印加を行ってもよい)。このような電圧印加がなされると、粘着剤層41の厚さ方向に電位差が生じ、粘着剤層41内の電解質において配向変化や層の厚さ方向への移動が生じて粘着剤層41の表面(電気剥離性粘着面)の組成が変化し、これによって、粘着剤層41の表面の粘着力が低下する。このとき、粘着剤層41が電解質として上述のイオン液体を含有する場合には、粘着剤層41内のイオン液体のカチオンおよびアニオンにおいて配向変化や層の厚さ方向への移動が生じる。カチオンは電位の低いマイナス極の側に移動し、アニオンは電位の高いプラス極の側に移動する。イオン液体においては、アニオンよりもカチオンの方が拡散係数が大きくて速く移動する傾向があるところ、イオン液体を含有する粘着剤層41に対する上記方向の電圧印加によって、粘着剤層41のプラス極側表面での組成変化(アニオンの偏在)よりもマイナス極側表面での組成変化(カチオンの偏在)の方が先行して生じ、粘着剤層41において造形物形成面101に対する粘着力が先行して有意に低下する。電圧印加時間が長いほど、粘着剤層41ないしその粘着面41aの粘着力は低下する傾向にある。粘着剤層41に対する印加電圧は、好ましくは1〜100Vである。また、粘着剤層41に対する電圧の印加時間は、例えば60秒以内である。以上のような粘着力低下措置たる電圧印加に因り、造形ステージ100に対する造形物Wの、粘着シートX4を介した定着状態は、解除される。その結果、造形ステージ100から造形物Wを取り外しやすくなる。造形物形成開始前に粘着シートX4がその粘着剤層11側で導電性の造形物形成面101に貼り合わせられる場合には、粘着シートX4について、電圧印加に因って粘着力の低下した粘着剤層41の例えば粘着面41aにて造形ステージ100から剥離する作業を行うことに伴って、造形ステージ100上から造形物Wを取り外すことが可能となる。造形物形成開始前に粘着シートX4がその粘着剤層42側で造形物形成面101に貼り合わされて粘着シートX4の粘着剤層41上に導電性の造形物Wが形成される場合には、電圧印加に因って粘着力の低下した粘着剤層41から造形物Wを引き離すことによって、造形ステージ100上から造形物Wを取り外すことが可能となる。
【0066】
以上のように、造形ステージ用の粘着シートX4は、積層造形装置の具備する造形ステージ100上で形成される造形物Wについて、造形中には造形ステージ100上に定着させ且つ造形後には造形ステージ100上から取り外しやすくするのに適するのである。加えて、このような粘着シートX4を、積層造形装置による造形物Wの形成に際して上述のように使用する場合、造形ステージ100上から造形物Wを取り外すうえで、鋭利な先端を有するスクレーパー等の道具の使用を回避することが可能である。したがって、造形ステージ用の粘着シートX4の使用は、造形ステージ100上から造形物Wを取り外すに際して造形物Wや造形ステージ100の破損を回避ないし抑制するのに資する。
【0067】
図9(a)は、
図8に示す造形ステージ用の粘着シートX4の一の変形例たる粘着シートX4aを表す。粘着シートX4aは、基材S2および粘着剤層41,41を含む積層構造を有する両面粘着シートであり、粘着剤層42に代えて電気剥離型の粘着剤層41を備える点において上述の粘着シートX4と異なる。
図9(b)は、造形ステージ用の粘着シートX4の一の変形例たる粘着シートX4bを表す。粘着シートX4bは、基材S2および粘着剤層41を含む積層構造を有する片面粘着シートであり、粘着剤層42を備えない点において上述の粘着シートX4と異なる。このような粘着シートX4bは、その粘着剤層41側が造形ステージ100の造形物形成面101に貼着されて使用される。粘着シートX4b用の造形ステージ100の造形物形成面101は、導電性を有する。積層造形装置によって積層造形される造形物のステージ側端面が造形物形成面に例えば融着して定着し得る場合には、造形物側に粘着剤層のない粘着シートX4bを使用することも可能である。
図9(c)は、造形ステージ用の粘着シートX4の一の変形例たる粘着シートX4cを表す。粘着シートX4cは、粘着剤層41,42を含む積層構造を有する両面粘着シートであり、基材S2を備えない点において上述の粘着シートX4と異なる。このような粘着シートX4cは、その粘着剤層41側が造形ステージ100の造形物形成面101に貼着されて使用されるか(この場合、造形物形成面101は導電性を有する)、或いは、その粘着剤層42側が造形物形成面101に貼着されて使用される(この場合、粘着シートX4cないし粘着剤層41の上に形成される造形物Wは導電性を有する)。粘着剤層41および粘着剤層42のそれぞれについての厚さや硬さの設定によっては、基材S2がなくとも造形ステージ用粘着シートにとっての充分な破断強度を確保することができる場合があるところ、そのような場合には、基材S2を設けない構成を採用してもよい。
図9(d)は、造形ステージ用の粘着シートX4の一の変形例たる粘着シートX4dを表す。粘着シートX4dは、電気剥離型の粘着剤層41からなる両面粘着シートであり、基材S2および粘着剤層42を備えない点において上述の粘着シートX4と異なる。粘着シートX4d用の造形ステージ100の造形物形成面101は導電性を有し、且つ、粘着シートX4dないし粘着剤層41の上に形成される造形物Wは導電性を有する。粘着剤層41の厚さや硬さの設定によっては、基材S2および粘着剤層42がなくとも造形ステージ用粘着シートにとっての充分な破断強度を確保することができる場合があるところ、そのような場合には、基材S2および粘着剤層42を設けない構成を採用してもよい。これら造形ステージ用の粘着シートX4a,X4b,X4c,X4dは、それぞれ、粘着シートX4に関して上述したのと同様に使用することが可能であり、従って、積層造形装置の具備する造形ステージ100上で形成される造形物Wについて、造形中には造形ステージ100上に定着させ且つ造形後には造形ステージ100上から取り外しやすくするのに適する。
【0068】
図10は、本発明の一の実施形態に係る造形ステージ用粘着シートたる粘着シートX5の部分断面図である。粘着シートX5は、基材S1および粘着剤層51,52を含む積層構造を有する両面粘着シートである。
【0069】
粘着シートX5の粘着剤層51は、液体供給(粘着力低下措置)に因って粘着力が低下可能な液体剥離型粘着剤層(粘着力低下可能層)であって、粘着面51aを有する。液体剥離型粘着剤層である粘着剤層51は、本実施形態では、粘着力低下措置に使用される液体との親和性の高い粘着剤を含み、粘着力低下措置に使用される液体が水または水溶液である場合には水溶性粘着剤を含む。水溶性粘着剤としては、例えば、水溶性アクリル系粘着剤および水溶性ポリビニルエーテル系粘着剤が挙げられる。水溶性アクリル系粘着剤としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルと、カルボキシ基含有(メタ)アクリルモノマーと、N-ビニルピロリドン等の塩基性モノマーとを共重合させてなるアクリル系粘着剤が挙げられる。水溶性ポリビニルエーテル系粘着剤としては、ビニルエチルエーテルや、ビニルブチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルをモノマーユニットとして含むポリビニルエーテル系粘着剤が挙げられる。粘着剤層51が水溶性粘着剤を含む場合、粘着面51aが被着体に貼着している状態で粘着剤層51に水分供給がなされると、粘着剤層51内の水溶性粘着剤の少なくとも一部が当該水分に溶解したり膨潤して粘着剤層51に体積変化が生じて粘着面51aが劣化し、当該被着体に対する粘着剤層51の粘着力が低下することとなる。
【0070】
粘着シートX5における液体剥離型粘着剤層(粘着力低下可能層)たる粘着剤層51においては、液体供給によって粘着剤層成分の一部が溶解したり膨潤する組成を有して液体供給起因の粘着力低下が実現可能とされている上述の構成のほか、液体供給後の乾燥を経ると体積変化を生ずる組成を有して液体供給起因の粘着力低下が実現可能とされている構成が採用されてもよい。或いは、粘着剤層51においては、これら構成が併用されてもよい。粘着剤層51の構成に関するこれらの点については、粘着シートX5に関する後述の変形例の粘着剤層51においても同様である。
【0071】
粘着シートX5の粘着剤層52は、主剤として粘着剤を含み、粘着面52aを有する。粘着剤層52に含まれる粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤としてのアクリル系ポリマー、天然ゴム、各種の合成ゴム、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、およびウレタン系粘着剤が挙げられる。粘着剤層52について良好な粘着力や、コストの抑制、高い生産性の実現という観点からは、粘着剤層52に含まれる粘着剤としてはアクリル系粘着剤が好ましい。また、粘着剤層52は、組成の異なる複数の粘着剤層からなる多層構造を有してもよい。
【0072】
粘着シートX5は、粘着シートX1と同様、例えば
図2に示すように、造形物を形成するための積層造形装置の具備する造形ステージ100において使用されるものである。具体的には、造形物形成開始前に、
図2(a)に示すように、粘着シートX5は、造形ステージ100の造形物形成面101に貼り合わせられる。粘着シートX5はその粘着剤層を介して造形物形成面101に貼り合わせられるところ、具体的には、粘着シートX5の粘着剤層51側または粘着剤層52側が造形物形成面101に貼着される。装置稼動時の造形物形成過程では、
図2(b)に示すように、表面に粘着シートX5を伴う造形ステージ100上に目的の造形物Wが次第に形作られる。このような造形物形成過程では、形成途中の造形物Wは、造形ステージ100に対し、粘着シートX5を介して定着した状態にある。そして、
図2(c)に示すような造形物形成過程終了後には、造形ステージ100上の粘着シートX5に対して粘着力低下措置が行われる。本実施形態において、粘着力低下措置は、粘着シートX5の有する粘着力低下可能層たる粘着剤層51への液体供給である。粘着剤層51が液体供給を受けると、粘着剤層51内の粘着剤の少なくとも一部が当該液体に溶解したり膨潤して粘着剤層51に体積変化を生じて粘着面51aが劣化し、粘着剤層51の粘着力が低下することとなる。これにより、造形ステージ100に対する造形物Wの、粘着シートX5を介した定着状態は、解除される。その結果、造形ステージ100から造形物Wを取り外しやすくなる。造形物形成開始前に粘着シートX5がその粘着剤層51側で造形ステージ100に貼り合わせられる場合には、粘着シートX5について、液体供給に因って粘着力の低下した粘着剤層51の例えば粘着面51aにて造形ステージ100から剥離する作業を行うことに伴って、造形ステージ100上から造形物Wを取り外すことが可能となる。造形物形成開始前に粘着シートX5がその粘着剤層52側で造形ステージ100に貼り合わせられる場合には、造形物Wは粘着シートX5の粘着剤層51上に形成されるところ、液体供給に因って粘着力の低下した粘着剤層51から造形物Wを引き離すことによって、造形ステージ100上から造形物Wを取り外すことが可能となる。
【0073】
以上のように、造形ステージ用の粘着シートX5は、積層造形装置の具備する造形ステージ100上で形成される造形物Wについて、造形中には造形ステージ100上に定着させ且つ造形後には造形ステージ100上から取り外しやすくするのに適するのである。加えて、このような粘着シートX5を、積層造形装置による造形物Wの形成に際して上述のように使用する場合、造形ステージ100上から造形物Wを取り外すうえで、鋭利な先端を有するスクレーパー等の道具の使用を回避することが可能である。したがって、造形ステージ用の粘着シートX5の使用は、造形ステージ100上から造形物Wを取り外すに際して造形物Wや造形ステージ100の破損を回避ないし抑制するのに資する。
【0074】
図11(a)は、
図10に示す造形ステージ用の粘着シートX5の一の変形例たる粘着シートX5aを表す。粘着シートX5aは、基材S1および粘着剤層51,51を含む積層構造を有する両面粘着シートであり、粘着剤層52に代えて液体剥離型の粘着剤層51を備える点において上述の粘着シートX5と異なる。
図11(b)は、造形ステージ用の粘着シートX5の一の変形例たる粘着シートX5bを表す。粘着シートX5bは、基材S1および粘着剤層51を含む積層構造を有する片面粘着シートであり、粘着剤層52を備えない点において上述の粘着シートX5と異なる。このような粘着シートX5bは、その粘着剤層51側が造形ステージ100の造形物形成面101に貼着されて使用される。積層造形装置によって積層造形される造形物のステージ側端面が造形物形成面に例えば融着して定着し得る場合には、造形物側に粘着剤層のない粘着シートX5bを使用することも可能である。
図11(c)は、造形ステージ用の粘着シートX5の一の変形例たる粘着シートX5cを表す。粘着シートX5cは、粘着剤層51,52を含む積層構造を有する両面粘着シートであり、基材S1を備えない点において上述の粘着シートX5と異なる。このような粘着シートX5cは、その粘着剤層51側または粘着剤層52側が造形ステージ100の造形物形成面101に貼着されて使用される。粘着剤層51および粘着剤層52のそれぞれについての厚さや硬さの設定によっては、基材S1がなくとも造形ステージ用粘着シートにとっての充分な破断強度を確保することができる場合があるところ、そのような場合には、基材S1を設けない構成を採用してもよい。
図11(d)は、造形ステージ用の粘着シートX5の一の変形例たる粘着シートX5dを表す。粘着シートX5dは、液体剥離型の粘着剤層51からなる両面粘着シートであり、基材S1および粘着剤層52を備えない点において上述の粘着シートX5と異なる。粘着剤層51の厚さや硬さの設定によっては、基材S1および粘着剤層52がなくとも造形ステージ用粘着シートにとっての充分な破断強度を確保することができる場合があるところ、そのような場合には、基材S1および粘着剤層52を設けない構成を採用してもよい。これら造形ステージ用の粘着シートX5a,X5b,X5c,X5dは、それぞれ、粘着シートX5に関して上述したのと同様に使用することが可能であり、従って、積層造形装置の具備する造形ステージ100上で形成される造形物Wについて、造形中には造形ステージ100上に定着させ且つ造形後には造形ステージ100上から取り外しやすくするのに適する。
【0075】
図12は、本発明の一の実施形態に係る造形ステージ用粘着シートたる粘着シートX6の部分断面図である。粘着シートX6は、基材S3および粘着剤層61,62を含む積層構造を有する両面粘着シートである。
【0076】
粘着シートX6の基材S3は、粘着シートX6において支持体として機能するための部位であり、且つ、伸張性を有するフィルム状の基材(伸張性基材)である。このようなフィルム状の基材S3は、例えば300%以上、好ましくは500%以上、より好ましくは700%以上の破断時伸びを示す伸張性を有する。破断時伸びについては、JIS K 7311-1995に記載の「伸び」の測定方法に準拠して測定することができる。フィルム状の基材S3は、例えば、樹脂フィルム、織布フィルム、または不織布フィルムである。基材S3が樹脂フィルムである場合、基材S3の構成材料としては、例えば、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリエステル、およびポリカーボネートが挙げられる。ポリウレタンとしては、例えば、エーテル系ポリウレタン、エステル系ポリウレタン、およびカーボネート系ポリウレタン挙げられる。ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびエチレン-プロピレン共重合体が挙げられる。ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、およびポリブチレンナフタレートが挙げられる。好ましくは、基材S3は、ポリウレタンを主剤として含有するポリウレタン系樹脂フィルムである。ポリウレタン系樹脂フィルムは、降伏点を実質的に示さない材料から構成されていることが多く、従って、基材S3としてのポリウレタン系樹脂フィルムの採用は、比較的に大きな破断時伸びや破断強度を示す基材ひいては造形ステージ用粘着シートを実現するうえで好適である。このような、粘着シートX6の基材S3は、一種類の材料からなってもよいし、二種類以上の材料からなってもよい。基材S3は、構成材料の異なる複数の層からなる積層体であってもよい。また、基材S3における粘着剤層61側表面および/または粘着剤層62側表面は、隣接する粘着剤層との密着性の向上のための表面処理が施されていてる。そのような表面処理としては、コロナ処理やプラズマ処理等の物理的処理、および、下塗り処理等の化学的処理が、挙げられる。このような基材S3について、厚さは例えば10〜300μmである。
【0077】
粘着シートX6の粘着剤層61,62は、それぞれ、粘着シートX6の延伸(粘着力低下措置)に因って粘着力が低下可能な延伸剥離型粘着剤層(粘着力低下可能層)である。粘着剤層61は、主剤として粘着剤を含み、例えば造形ステージに対して貼着するための粘着面61aを有する。粘着剤層62は、主剤として粘着剤を含み、粘着面62aを有する。粘着剤層61,62のそれぞれに含まれる粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤としてのアクリル系ポリマー、天然ゴム、各種の合成ゴム、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、およびウレタン系粘着剤が挙げられる。粘着剤層61,62について良好な粘着力や、コストの抑制、高い生産性の実現という観点からは、粘着剤層61,62に含まれる粘着剤としてはアクリル系粘着剤が好ましい。また、粘着剤層61および/または粘着剤層62は、組成の異なる複数の粘着剤層からなる多層構造を有してもよい。このような粘着シートX6において、粘着剤層61ないし粘着面61aが被着体に貼着している状態で粘着シートX6が延伸されると、当該粘着剤層61と被着体との界面において当該延伸方向にせん断力が生じ、被着体に対する粘着面61aのそれまでの貼着状態が解除または緩和され、当該被着体に対する粘着面61aの粘着力が低下することとなる。また、粘着剤層62ないし粘着面62aが被着体に貼着している状態で粘着シートX6が延伸されると、当該粘着剤層62と被着体との界面において当該延伸方向にせん断力が生じ、被着体に対する粘着面62aのそれまでの貼着状態が解除または緩和され、当該被着体に対する粘着面62aの粘着力が低下することとなる。
【0078】
粘着シートX6は、粘着シートX1と同様、例えば
図2に示すように、造形物を形成するための積層造形装置の具備する造形ステージ100において使用されるものである。具体的には、造形物形成開始前に、
図2(a)に示すように、粘着シートX6は、造形ステージ100の造形物形成面101に貼り合わせられる。本実施形態では、粘着シートX6における粘着剤層61側が造形物形成面101に貼着される。装置稼動時の造形物形成過程では、
図2(b)に示すように、表面に粘着シートX6を伴う造形ステージ100上に目的の造形物Wが次第に形作られる。このような造形物形成過程では、形成途中の造形物Wは、造形ステージ100に対し、粘着シートX6を介して定着した状態にある。そして、
図2(c)に示すような造形物形成過程終了後には、造形ステージ100上の粘着シートX6に対して粘着力低下措置が行われる。本実施形態において、粘着力低下措置は、粘着シートX6の延伸である。粘着シートX6において造形物Wの定着していない例えば端部を、粘着シートX6の面広がり方向に引っ張ることにより、粘着シートX6を延伸することができる。例えばこのようにして粘着シートX6が延伸されると、粘着シートX6の粘着剤層61と造形ステージ100との界面において当該延伸方向にせん断力が生じ、造形ステージ100に対する粘着面61aのそれまでの貼着状態が解除または緩和され、造形ステージ100に対する粘着面61aの粘着力が低下することとなる。これとともに、粘着シートX6が延伸されると、粘着シートX6の粘着剤層62とそれに定着している造形物Wとの界面において当該延伸方向にせん断力が生じ、造形物Wに対する粘着面62aのそれまでの貼着状態が解除または緩和され、造形物Wに対する粘着面62aの粘着力が低下することとなる。以上のようにして、造形ステージ100に対する造形物Wの、粘着シートX6を介した定着状態は、解除される。その結果、造形ステージ100から造形物Wを取り外しやすくなる。具体的には、粘着シートX6について、粘着力の低下した粘着剤層61の粘着面61aにて造形ステージ100から剥離する作業を行うことに伴って、造形ステージ100上から造形物Wを取り外すことが可能となる。また、粘着力の低下した粘着剤層62の粘着面62aから造形物Wを引き離すことによって、造形ステージ100上から造形物Wを取り外すことも可能となる。
【0079】
以上のように、造形ステージ用の粘着シートX6は、積層造形装置の具備する造形ステージ100上で形成される造形物Wについて、造形中には造形ステージ100上に定着させ且つ造形後には造形ステージ100上から取り外しやすくするのに適するのである。加えて、このような粘着シートX6を、積層造形装置による造形物Wの形成に際して上述のように使用する場合、造形ステージ100上から造形物Wを取り外すうえで、鋭利な先端を有するスクレーパー等の道具の使用を回避することが可能である。したがって、造形ステージ用の粘着シートX6の使用は、造形ステージ100上から造形物Wを取り外すに際して造形物Wや造形ステージ100の破損を回避ないし抑制するのに資する。
【0080】
図13は、造形ステージ用の粘着シートX6の一の変形例たる粘着シートX6aを表す。粘着シートX6aは、基材S3および粘着剤層61を含む積層構造を有する片面粘着シートであり、粘着剤層62を備えない点において上述の粘着シートX6と異なる。このような粘着シートX6aは、その粘着剤層61側が造形ステージ100の造形物形成面101に貼着されて使用される。積層造形装置によって積層造形される造形物のステージ側端面が造形物形成面に例えば融着して定着し得る場合には、造形物側に粘着剤層のない粘着シートX6aを使用することも可能である。このような造形ステージ用の粘着シートX6aは、粘着シートX6に関して上述したのと同様に使用することが可能であり、従って、積層造形装置の具備する造形ステージ100上で形成される造形物Wについて、造形中には造形ステージ100上に定着させ且つ造形後には造形ステージ100上から取り外しやすくするのに適する。
【0081】
本発明の造形ステージ用粘着シートは、磁場印加(粘着力低下措置)に因って粘着力が低下可能な磁気剥離型粘着剤層(粘着力低下可能層)を有してもよい。そのような磁気剥離型の粘着剤層は、例えば、粘着剤に加えて磁性イオン液体等の磁性液体を含有する。このような磁気剥離型の粘着剤層に対して磁場を印加すると、当該粘着剤層内の磁性液体において配向変化や移動が生じて粘着剤層表面の組成が変化し得るところ、当該粘着剤層の粘着面が被着体に貼着している状態で当該粘着剤層が磁場印加を受ける場合に当該粘着面に生ずるそのような組成変化を利用して、磁気剥離型粘着剤層の粘着面の粘着力を低下させることが可能である。
【0082】
本発明の造形ステージ用粘着シートは、圧力変化(粘着力低下措置)に因って粘着力が低下可能な圧力剥離型粘着剤層(粘着力低下可能層)を有してもよい。そのような圧力剥離型の粘着剤層については、例えば、加圧によって相分離を引き起こす組成を有して昇圧起因の粘着力低下が実現可能とされている構成や、加圧または減圧によって発泡し得る組成を有して圧力変化起因の粘着力低下が実現可能とされている構成を採用することができる。
【0083】
本発明の造形ステージ用粘着シートは、上述の熱剥離型粘着剤層、冷却剥離型粘着剤層、電磁波剥離型粘着剤層、電気剥離型粘着剤層、液体剥離型粘着剤層、延伸剥離型粘着剤層、電磁剥離型粘着剤層、および圧力剥離型粘着剤層からなる群より選択される二種以上の粘着剤層を有する構成を備えてもよい。例えば、本発明の造形ステージ用粘着シートは、基材を伴って或いは伴わずに、これら熱剥離型粘着剤層、冷却剥離型粘着剤層、電磁波剥離型粘着剤層、電気剥離型粘着剤層、液体剥離型粘着剤層、延伸剥離型粘着剤層、電磁剥離型粘着剤層、および圧力剥離型粘着剤層からなる群より選択される一つを造形ステージ側粘着面をなすための粘着剤層として有し、且つ、当該群より選択される他の一つを造形物側粘着面をなすための粘着剤層として有してもよい。
【0084】
図14は、本発明の一の実施形態に係る積層造形装置Y1の部分構成図である。積層造形装置Y1は、熱溶解積層法や、インクジェット法、光造形法、シート積層法等のアディティブマニュファクチャリング技法によって造形物を形成するための装置であって、造形ステージ100および加熱ユニット110(粘着力低下手段)を備える。造形ステージ100は、伝熱可能な材料よりなり、立体的な造形物がその上に形成されることとなる造形物形成面101を有する。加熱ユニット110は、造形ステージ100に貼り合わされた造形ステージ用の粘着シートを加熱するためのユニットであって、例えば、造形ステージ100に内蔵された発熱可能なヒーター111を有する。積層造形装置Y1が、熱溶解積層法やインクジェット法のように造形物形成過程で造形ステージ100上に順次にモデル材(造形物形成材料)を供給するアディティブマニュファクチャリング技法を実行可能な場合、積層造形装置Y1は、モデル材を吐出可能なノズルを有する供給ユニット(図示略)を更に備える。モデル材を吐出可能なノズルを有する供給ユニットを更に具備する場合があることについては、後述の積層造形装置についても同様である。
【0085】
積層造形装置Y1においては、熱剥離型の粘着剤層11を有する上述の粘着シートX1を使用して、立体的な造形物を造形ステージ100上に形成することが可能である。粘着シートX1の使用方法については、粘着シートX1に関して
図2を参照しつつ上述したとおりであり、積層造形装置Y1の稼動時における造形物形成過程では、
図2(b)に示すように、形成途中の造形物Wは、造形ステージ100に対し、粘着シートX1を介して定着した状態にある。積層造形装置Y1の稼動時における、例えば
図2(c)に示す造形物形成過程終了後には、造形ステージ100上の粘着シートX1に対して粘着力低下措置としての加熱を行うことが可能である。具体的には、造形物形成過程終了後に加熱ユニット110が稼動して発熱すると、その熱が造形ステージ100を伝わって粘着シートX1ないしその粘着剤層11に至る。上述のように、粘着剤層11が当該加熱を受けると、その粘着力が低下して、造形ステージ100に対する造形物Wの、粘着シートX1を介した定着状態は、解除される。その結果、粘着シートX1の使用態様に関して
図2を参照しつつ上述したように、造形ステージ100から造形物Wを取り外しやすくなる。例えば、粘着シートX1について、粘着力の低下した粘着剤層11のなす所定界面にて剥離する作業を行うことに伴って、造形ステージ100上から造形物Wを取り外すことが可能となる。以上のように、積層造形装置Y1によると、造形ステージ100上の造形物Wに関する定着と取り外しについて、粘着シートX1の粘着剤層11に係る熱剥離技術を利用して適切に実現することが可能である。これと同様の技術的効果は、粘着シートX1に代えて上述の粘着シートX1a,X1b,X1c,X1dを使用する場合においても享受することができる。
【0086】
図15は、本発明の一の実施形態に係る積層造形装置Y2の部分構成図である。積層造形装置Y2は、熱溶解積層法や、インクジェット法、光造形法、シート積層法等のアディティブマニュファクチャリング技法によって造形物を形成するための装置であって、造形ステージ100および冷却ユニット120(粘着力低下手段)を備える。造形ステージ100は、立体的な造形物がその上に形成されることとなる造形物形成面101を有する。冷却ユニット120は、造形ステージ100に貼り合わされた造形ステージ用の粘着シートを冷却するためのユニットであって、造形ステージ100内に埋設された冷却管121(一部図示略)を有する。冷却管121は、図外の冷却剤貯留器に連結され、その冷却剤貯留器から供給される冷却剤が通流可能に構成されている。冷却剤としては、例えば、二酸化炭素ガス、窒素ガス、水、および不凍液を用いることができる。
【0087】
積層造形装置Y2においては、冷却剥離型の粘着剤層21を有する上述の粘着シートX2を使用して、立体的な造形物を造形ステージ100上に形成することが可能である。粘着シートX2の使用方法については、粘着シートX2に関して
図2を参照しつつ上述したとおりであり、積層造形装置Y2の稼動時における造形物形成過程では、
図2(b)に示すように、形成途中の造形物Wは、造形ステージ100に対し、粘着シートX2を介して定着した状態にある。積層造形装置Y2の稼動時における、例えば
図2(c)に示す造形物形成過程終了後には、造形ステージ100上の粘着シートX2に対して粘着力低下措置としての冷却を行うことが可能である。具体的には、造形物形成過程終了後に冷却ユニット120が稼動して冷却管121を冷却剤が通流すると、造形ステージ100ひいては粘着シートX2ないしその粘着剤層21が降温して冷却される。上述のように、粘着剤層21が当該冷却を受けると、その粘着力が低下して、造形ステージ100に対する造形物Wの、粘着シートX2を介した定着状態は、解除される。その結果、粘着シートX2の使用態様に関して
図2を参照しつつ上述したように、造形ステージ100から造形物Wを取り外しやすくなる。例えば、粘着シートX2について、粘着力の低下した粘着剤層21のなす所定界面にて剥離する作業を行うことに伴って、造形ステージ100上から造形物Wを取り外すことが可能となる。以上のように、積層造形装置Y2によると、造形ステージ100上の造形物Wに関する定着と取り外しについて、粘着シートX2の粘着剤層21に係る冷却剥離技術を利用して適切に実現することが可能である。これと同様の技術的効果は、粘着シートX2に代えて上述の粘着シートX2a,X2b,X2c,X2dを使用する場合においても享受することができる。
【0088】
図16は、本発明の一の実施形態に係る積層造形装置Y3の部分構成図である。積層造形装置Y3は、熱溶解積層法や、インクジェット法、光造形法、シート積層法等のアディティブマニュファクチャリング技法によって造形物を形成するための装置であって、造形ステージ100および電磁波照射ユニット130(粘着力低下手段)を備える。造形ステージ100は、電磁波透過性の材料よりなり、立体的な造形物がその上に形成されることとなる造形物形成面101を有する。電磁波照射ユニット130は、造形ステージ100に貼り合わされた造形ステージ用の粘着シートに対して電磁波を照射するためのユニットであって、所定のタイミングで電磁波を照射し得る電磁波照射源を具備する。この電磁波照射源は、例えば紫外線ランプである。
【0089】
積層造形装置Y3においては、電磁波剥離型の粘着剤層31を有する上述の粘着シートX3を使用して、立体的な造形物を造形ステージ100上に形成することが可能である。粘着シートX3の使用方法については、粘着シートX3に関して
図2を参照しつつ上述したとおりであり、積層造形装置Y3の稼動時における造形物形成過程では、
図2(b)に示すように、形成途中の造形物Wは、造形ステージ100に対し、粘着シートX3を介して定着した状態にある。積層造形装置Y3の稼動時における、例えば
図2(c)に示す造形物形成過程終了後には、造形ステージ100上の粘着シートX3に対して粘着力低下措置としての電磁波照射を行うことが可能である。具体的には、造形物形成過程終了後に電磁波照射ユニット130が稼動すると、当該ユニットの電磁波照射源から電磁波が発せれ、その電磁波が造形ステージ100を透過して粘着シートX3ないしその粘着剤層31に照射される。電磁波照射源が紫外線ランプである場合には、紫外線が造形ステージ100を透過して粘着シートX3ないしその粘着剤層31に照射される。上述のように、粘着剤層31が当該電磁波照射を受けると、その粘着力が低下して、造形ステージ100に対する造形物Wの、粘着シートX3を介した定着状態は、解除される。その結果、粘着シートX3の使用態様に関して
図2を参照しつつ上述したように、造形ステージ100から造形物Wを取り外しやすくなる。例えば、粘着シートX3について、粘着力の低下した粘着剤層31のなす所定界面にて剥離する作業を行うことに伴って、造形ステージ100上から造形物Wを取り外すことが可能となる。以上のように、積層造形装置Y3によると、造形ステージ100上の造形物Wに関する定着と取り外しについて、粘着シートX3の粘着剤層31に係る電磁波剥離技術を利用して適切に実現することが可能である。これと同様の技術的効果は、粘着シートX3に代えて上述の粘着シートX3a,X3b,X3c,X3dを使用する場合においても享受することができる。
【0090】
図17は、本発明の一の実施形態に係る積層造形装置Y4の部分構成図である。積層造形装置Y4は、熱溶解積層法や、インクジェット法、光造形法、シート積層法等のアディティブマニュファクチャリング技法によって造形物を形成するための装置であって、造形ステージ100および電圧印加ユニット140(粘着力低下手段)を備える。造形ステージ100は、立体的な造形物がその上に形成されることとなる造形物形成面101を有する。積層造形装置Y4においては、造形ステージ100ないしその造形物形成面101、および/または、形成される造形物は、導電性を有する。電圧印加ユニット140は、造形ステージ100に貼り合わされた造形ステージ用の粘着シートの有する電気剥離型粘着剤層に対して電圧を印加するためのユニットであって、所定のタイミングで電圧印加を実行可能な電源を有する。また、電圧印加ユニット140は、造形物形成面101が導電性を有する場合には当該造形物形成面101、造形ステージ100に貼り合わされて使用される造形ステージ用粘着シートが電気剥離型粘着剤層に加えてこれに電気的に接続している導電部を有する場合には当該導電部、および、造形物が導電性を有する場合には当該造形物、から選択される二つの導電部を介して、電気剥離型粘着剤層に対する電圧印加を実行可能に構成されている。
図17には、造形物形成面101と粘着シート内の導電部とを介して電圧印加を実行する場合を例示する。
【0091】
積層造形装置Y4においては、電気剥離型の粘着剤層41を有する上述の粘着シートX4を使用して、立体的な造形物を造形ステージ100上に形成することが可能である。粘着シートX4の使用方法については、粘着シートX4に関して
図2を参照しつつ上述したとおりであり、積層造形装置Y4の稼動時における造形物形成過程では、
図2(b)に示すように、形成途中の造形物Wは、造形ステージ100に対し、粘着シートX4を介して定着した状態にある。積層造形装置Y4の稼動時における、例えば
図2(c)に示す造形物形成過程終了後には、造形ステージ100上の粘着シートX4に対して粘着力低下措置としての電圧印加を行うことが可能である。造形物形成過程終了後に電圧印加ユニット140が稼動すると、粘着シートX4の粘着剤層41においてその厚さ方向に電位差が生じ、その後、上述のように粘着剤層41の表面の粘着力が低下することとなり、造形ステージ100に対する造形物Wの、粘着シートX4を介した定着状態は、解除される。その結果、粘着シートX4の使用態様に関して
図2を参照しつつ上述したように、造形ステージ100から造形物Wを取り外しやすくなる。例えば、粘着シートX4について、粘着力の低下した粘着剤層41のなす所定界面にて剥離する作業を行うことに伴って、造形ステージ100上から造形物Wを取り外すことが可能となる。以上のように、積層造形装置Y4によると、造形ステージ100上の造形物Wに関する定着と取り外しについて、粘着シートX4の粘着剤層41に係る電気剥離技術を利用して適切に実現することが可能である。これと同様の技術的効果は、粘着シートX4に代えて上述の粘着シートX4a,X4b,X4c,X4dを使用する場合においても享受することができる。
【0092】
図18は、本発明の一の実施形態に係る積層造形装置Y5の部分構成図である。積層造形装置Y5は、熱溶解積層法や、インクジェット法、光造形法、シート積層法等のアディティブマニュファクチャリング技法によって造形物を形成するための装置であって、造形ステージ100および液体供給ユニット150(粘着力低下手段)を備える。造形ステージ100は、立体的な造形物がその上に形成されることとなる造形物形成面101を有する。液体供給ユニット150は、造形ステージ100に貼り合わされた造形ステージ用の粘着シートへと液体を供給するためのユニットであって、本実施形態では、造形ステージ100に埋設された液体供給用の主管151(一部図示略)を有する。主管151の壁面には側出孔(図示略)が開設されており、造形ステージ100は、主管151の壁面ないし側出孔から造形物形成面101にわたる、使用液体が通過可能な多孔質の構造を有する。液体供給ユニット150については、このような構成に代えて、液体を噴霧可能な噴霧装置を採用してもよい。
【0093】
積層造形装置Y5においては、液体剥離型の粘着剤層51を有する上述の粘着シートX5を使用して、立体的な造形物を造形ステージ100上に形成することが可能である。粘着シートX5の使用方法については、粘着シートX5に関して
図2を参照しつつ上述したとおりであり、積層造形装置Y5の稼動時における造形物形成過程では、
図2(b)に示すように、形成途中の造形物Wは、造形ステージ100に対し、粘着シートX5を介して定着した状態にある。積層造形装置Y5の稼動時における、例えば
図2(c)に示す造形物形成過程終了後には、造形ステージ100上の粘着シートX5に対して粘着力低下措置としての液体供給を行うことが可能である。具体的には、造形物形成過程終了後に液体供給ユニット150が稼動して、粘着剤層51の粘着力を低下させ得る液体が、主管151を通流し、その一部が主管151の側出孔を介して主管151から溢出し、造形ステージ100内の上述の多孔質構造内を進んで造形ステージ100上の粘着シートX5ないしその粘着剤層51に至る。液体供給ユニット150として上記の噴霧装置を採用する場合には、造形物形成過程終了後に液体供給ユニット150たる当該噴霧装置が稼動して、粘着剤層51の粘着力を低下させ得る液体が粘着剤層51に向けて噴霧される。上述のように、粘着剤層51が当該液体供給を受けると、その粘着力が低下して、造形ステージ100に対する造形物Wの、粘着シートX5を介した定着状態は、解除される。その結果、粘着シートX5の使用態様に関して
図2を参照しつつ上述したように、造形ステージ100から造形物Wを取り外しやすくなる。例えば、粘着シートX5について、粘着力の低下した粘着剤層51のなす所定界面にて剥離する作業を行うことに伴って、造形ステージ100上から造形物Wを取り外すことが可能となる。以上のように、積層造形装置Y5によると、造形ステージ100上の造形物Wに関する定着と取り外しについて、粘着シートX5の粘着剤層51に係る液体剥離技術を利用して適切に実現することが可能である。これと同様の技術的効果は、粘着シートX5に代えて上述の粘着シートX5a,5b,X5c,X5dを使用する場合においても享受することができる。
【0094】
図19は、本発明の一の実施形態に係る積層造形装置Y6の部分構成図である。積層造形装置Y6は、熱溶解積層法や、インクジェット法、光造形法、シート積層法等のアディティブマニュファクチャリング技法によって造形物を形成するための装置であって、造形ステージ100および延伸ユニット160(粘着力低下手段)を備える。造形ステージ100は、立体的な造形物がその上に形成されることとなる造形物形成面101を有する。延伸ユニット160は、造形ステージ100に貼り合わされた造形ステージ用の粘着シートを自動延伸するためのユニットである。
【0095】
積層造形装置Y6においては、伸張性基材たる基材S3を有する延伸剥離型の上述の粘着シートX6を使用して、立体的な造形物を造形ステージ100上に形成することが可能である。粘着シートX6の使用方法については、粘着シートX6に関して
図2を参照しつつ上述したとおりであり、積層造形装置Y6の稼動時における造形物形成過程では、
図2(b)に示すように、形成途中の造形物Wは、造形ステージ100に対し、粘着シートX6を介して定着した状態にある。積層造形装置Y6の稼動時における、例えば
図2(c)に示す造形物形成過程終了後には、造形ステージ100上の粘着シートX6に対して粘着力低下措置としての延伸を行うことが可能である。具体的には、造形物形成過程終了後に延伸ユニット160が稼動して、粘着シートX6が面広がり方向に自動的に延伸される。上述のように、粘着シートX6が延伸されると、粘着シートX6の各粘着剤層と被着体との界面において当該延伸方向にせん断力が生じ、被着体に対する当該粘着剤層表面(粘着面)のそれまでの貼着状態が解除または緩和され、被着体に対する当該粘着面の粘着力が低下することとなる。造形物形成開始前に粘着シートX6の粘着剤層61側が造形物形成面101に貼着される場合には例えば、粘着シートX6が延伸されると、粘着シートX6の粘着剤層61と造形ステージ100との界面において当該延伸方向にせん断力が生じ、造形ステージ100に対する粘着面61aのそれまでの貼着状態が解除または緩和され、造形ステージ100に対する粘着面61aの粘着力が低下することとなる。これにより、造形ステージ100に対する造形物Wの、粘着シートX6を介した定着状態は、解除される。その結果、粘着シートX6の使用態様に関して
図2を参照しつつ上述したように、造形ステージ100から造形物Wを取り外しやすくなる。例えば、粘着シートX6について、粘着力の低下した粘着剤層61の粘着面61aにて造形ステージ100から剥離する作業を行うことに伴って、造形ステージ100上から造形物Wを取り外すことが可能となる。以上のように、積層造形装置Y6によると、造形ステージ100上の造形物Wに関する定着と取り外しについて、粘着シートX6の粘着剤層に係る延伸剥離技術を利用して適切に実現することが可能である。これと同様の技術的効果は、粘着シートX6に代えて上述の粘着シートX6aを使用する場合においても享受することができる。
【0096】
図20は、本発明の一の実施形態に係る積層造形装置Y7の部分構成図である。積層造形装置Y7は、熱溶解積層法や、インクジェット法、光造形法、シート積層法等のアディティブマニュファクチャリング技法によって造形物を形成するための装置であって、造形ステージ100および磁場印加ユニット170(粘着力低下手段)を備える。造形ステージ100は、立体的な造形物がその上に形成されることとなる造形物形成面101を有する。磁場印加ユニット170は、造形ステージ100に貼り合わされた造形ステージ用の粘着シートに対して磁場を印加するためのユニットであって、例えば、造形ステージ100に内蔵された通電可能なコイル171を有する。
【0097】
積層造形装置Y7においては、磁気剥離型の粘着剤層を有する上述の粘着シート(
図20では粘着シートX7)を使用して、立体的な造形物を造形ステージ100上に形成することが可能である。積層造形装置Y7の稼動時における造形物形成過程では、
図2(b)に示すように、形成途中の造形物Wは、造形ステージ100に対し、粘着シートX7を介して定着した状態にある。積層造形装置Y7の稼動時における、例えば
図2(c)に示す造形物形成過程終了後には、造形ステージ100上の粘着シートX7に対して粘着力低下措置としての磁場印加を行うことが可能である。具体的には、造形物形成過程終了後に、磁場印加ユニット170が稼動して粘着シートX7の磁気剥離型の粘着剤層に対して磁場を印加する。上述のように、磁気剥離型の粘着剤層が磁場印加を受けると、その粘着力が低下して、造形ステージ100に対する造形物Wの、粘着シートX7を介した定着状態は、解除される。その結果、造形ステージ100から造形物Wを取り外しやすくなる。例えば、粘着シートX7について、粘着力の低下した磁気剥離型粘着剤層のなす所定界面にて剥離する作業を行うことに伴って、造形ステージ100上から造形物Wを取り外すことが可能となる。以上のように、積層造形装置Y7によると、造形ステージ100上の造形物Wに関する定着と取り外しについて、粘着シートX7の磁気剥離型粘着剤層に係る磁気剥離技術を利用して適切に実現することが可能である。
【実施例】
【0098】
〔合成例1:アクリル系ポリマーA1〕
環流冷却器と、窒素ガス導入管と、攪拌機と、温度計とを備えた反応容器内で、60質量部のアクリル酸エチルと、30質量部のアクリル酸2-エチルヘキシルと、5質量部のメタクリル酸メチルと、5質量部のアクリル酸ヒドロキシエチルと、重合開始剤たる0.2質量部の過酸化ベンゾイルと、重合溶媒たる100質量部のトルエンとを含む混合物について、窒素ガスを導入しながら60℃にて6時間の重合反応を行った。これにより、実施例1の熱剥離型粘着剤層形成用のアクリル系ポリマー(アクリル系ポリマーA1)を含有する溶液(アクリル系ポリマー溶液S1)を得た。
【0099】
〔合成例2:アクリル系ポリマーA2〕
環流冷却器と、窒素ガス導入管と、攪拌機と、温度計とを備えた反応容器内で、92質量部のアクリル酸ブチルと、3質量部のメタクリル酸メチルと、5質量部のアクリル酸と、重合開始剤たる0.2質量部の2,2'-アゾビスイソブチロニトリルと、重合溶媒たる100質量部の酢酸エチルとを含む混合物について、窒素ガスを導入しながら60℃にて6時間の重合反応を行った。これにより、粘着剤層形成用のアクリル系ポリマー(アクリル系ポリマーA2)を含有する溶液(アクリル系ポリマー溶液S2)を得た。
【0100】
〔合成例3:アクリル系ポリマーA3〕
環流冷却器と、窒素ガス導入管と、攪拌機と、温度計とを備えた反応容器内で、55質量部のアクリル酸2-エチルヘキシルと、40質量部のアクリル酸メチルと、5質量部のアクリル酸2-ヒドロキシエチルと、重合開始剤たる0.2質量部の過酸化ベンゾイルと、重合溶媒たる100質量部のトルエンとを含む混合物について、窒素ガスを導入しながら60℃にて6時間の重合反応を行った。これにより、実施例2の熱剥離型粘着剤層形成用のアクリル系ポリマー(アクリル系ポリマーA3)を含有する溶液(アクリル系ポリマー溶液S3)を得た。
【0101】
〔合成例4:アクリル系ポリマーA4〕
環流冷却器と、窒素ガス導入管と、攪拌機と、温度計とを備えた反応容器内で、40質量部のベヘニルアクリレートと、35質量部のステアリルアクリレートと、20質量部のアクリル酸メチルと、5質量部のアクリル酸と、連鎖移動剤たる5質量部のドデシルメルカプタンと、重合開始剤たる0.5質量部の過酸化ベンゾイルと、重合溶媒たる100質量部のトルエンとを含む混合物について、窒素ガスを導入しながら80℃にて6時間の重合反応を行った。これにより、実施例2の熱剥離型粘着剤層形成用の側鎖結晶性アクリル系ポリマー(アクリル系ポリマーA4)を含有する溶液(アクリル系ポリマー溶液S4)を得た。
【0102】
〔合成例5:アクリル系ポリマーA5〕
環流冷却器と、窒素ガス導入管と、攪拌機と、温度計とを備えた反応容器内で、60質量部のベヘニルアクリレートと、35質量部のイソボニルメタクリレートと、5質量部のメタクリル酸と、重合開始剤たる0.5質量部の過酸化ベンゾイルと、重合溶媒たる100質量部の酢酸エチルとを含む混合物について、窒素ガスを導入しながら60℃にて6時間の重合反応を行った。これにより、実施例3の冷却剥離型粘着剤層形成用の側鎖結晶性アクリル系ポリマー(アクリル系ポリマーA5)を含有する溶液(アクリル系ポリマー溶液S5)を得た。
【0103】
〔合成例6:アクリル系ポリマーA6〕
環流冷却器と、窒素ガス導入管と、攪拌機と、温度計とを備えた反応容器内で、35質量部のアクリル酸2-エチルヘキシルと、45質量部のアクリル酸ブチルと、20質量部のアクリル酸2-ヒドロキシエチルと、重合開始剤たる0.2質量部の2,2'-アゾビスイソブチロニトリルと、重合溶媒たる100質量部のトルエンとを含む混合物について、窒素ガスを導入しながら60℃にて6時間の重合反応を行ってアクリル系ポリマーA6'を得た。続いて、アクリル系ポリマーA6'を含有する当該反応溶液に20質量部の2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを加え、空気雰囲気下、50℃にて48時間の付加反応を行った。これにより、実施例4の電磁波硬化型粘着剤層形成用の電磁波硬化型アクリル系ポリマー(アクリル系ポリマーA6,ポリマー分子内側鎖に炭素−炭素二重結合が導入されている)を含有する溶液(アクリル系ポリマー溶液S6)を得た。
【0104】
〔合成例7:アクリル系オリゴマーA7〕
環流冷却器と、窒素ガス導入管と、攪拌機と、温度計とを備えた反応容器内で、50質量部のアクリル酸2-エチルヘキシルと、45質量部のアクリル酸ブチルと、5質量部のアクリル酸2-ヒドロキシエチルと、重合溶媒たる100質量部のトルエンとを含む混合物について、窒素ガスを導入しながら60℃にて8時間の重合反応を行った。これにより、実施例5の電磁波剥離型粘着剤層形成用の電磁波硬化型アクリル系オリゴマー(アクリル系オリゴマーA7)を含有する溶液(アクリル系ポリマー溶液S7)を得た。
【0105】
〔合成例8:アクリル系ポリマーA8〕
環流冷却器と、窒素ガス導入管と、攪拌機と、温度計とを備えた反応容器内で、90質量部のアクリル酸n-ブチル(BA)と、5質量部のメタクリル酸メチル(MMA)と、5質量部のアクリル酸(AA)と、重合溶媒たる186質量部の酢酸エチルとを含む混合物について、窒素ガスを導入しながら1時間の撹拌を行った。次に、このようにして重合系内の酸素を除去した後、反応容器内の溶液について、63℃で10時間の反応を行った。その後、当該溶液について冷却し、比較例1,2の粘着剤層形成用のアクリル系ポリマー(アクリル系ポリマーA8,BAとMMAとAAとの共重合体)を含有する溶液(アクリル系ポリマー溶液S8)を得た。アクリル系ポリマー溶液S8の固形分濃度は35質量%であった。
【0106】
〔下塗り剤U1〕
上述のアクリル系ポリマー溶液S1に、この溶液S1中の固形分(アクリル系ポリマーA1)100質量部に対して4質量部のイソシアネート系架橋剤(商品名「コロネートL」,ポリイソシアネート化合物,東ソー株式会社製)を加えて混合し、下塗り剤U1を調製した。
【0107】
〔下塗り剤U2〕
メタクリル酸メチルが重合してなる天然ゴム(商品名「MMAグラフト天然ゴム MG30」,マレーシアゴム研究所製)100質量部と、イソシアネート系架橋剤(商品名「コロネートL」,ポリイソシアネート化合物,東ソー株式会社製)50質量部と、トルエン900質量部とを混合して下塗り剤U2を調製した。
【0108】
〔PET基材B1〕
厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(商品名「ルミラー S-10」,東レ株式会社製)の片面に、上述の下塗り剤U1を塗布した後に乾燥して下塗り層(厚さ5μm)を形成した。このようにして、下塗り剤U1から形成された下塗り層を片面に有するPET基材(PET基材B1)を作製した。
【0109】
〔PET基材B2〕
厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(商品名「ルミラー S-10」,東レ株式会社製)をPET基材B2として用意した。
【0110】
実施例1〜7は参考例として記載するものである。
〔実施例1〕
〈造形ステージ用粘着シートの作製〉
上述のアクリル系ポリマー溶液S1に、この溶液S1中の固形分(上述のアクリル系ポリマーA1)100質量部に対して4質量部のイソシアネート系架橋剤(商品名「コロネートL」,ポリイソシアネート化合物,東ソー株式会社製)と30質量部の熱膨張性微小球(商品名「マツモトマイクロスフェアー F-50D」,120℃膨張タイプ,松本油脂製薬株式会社製)とを配合して、熱剥離型粘着剤層形成用の組成物(粘着剤組成物C1)を作製した。また、上述のアクリル系ポリマー溶液S2に、この溶液S2中の固形分(上述のアクリル系ポリマーA2)100質量部に対して5質量部のイソシアネート系架橋剤(商品名「コロネートL」,ポリイソシアネート化合物,東ソー株式会社製)を配合して、粘着剤層形成用の組成物(粘着剤組成物C2)を作製した。次に、上述のPET基材B1において下塗り剤U1が塗布されていない面(即ち、下塗り層が設けられていない側の面)に粘着剤組成物C2を塗布して粘着剤組成物層を形成し、PET基材B1上の当該粘着剤組成物層を覆うように剥離フィルムを張り合わせた。次に、PET基材B1において下塗り剤U1が塗布されている面(即ち、下塗り層側の面)に上述の粘着剤組成物C1を塗布して粘着剤組成物層を形成した。次に、これら粘着剤組成物層について加熱によって乾燥させ且つ架橋反応を生じさせて、粘着剤組成物C2由来の厚さ25μmの粘着剤層、および、粘着剤組成物C1由来の厚さ30μmの熱剥離型粘着剤層を、形成した。このときの加熱温度は100℃であり且つ加熱時間は5分間である。以上のようにして、[粘着剤層(非熱剥離型)/PET基材B1/熱剥離型粘着剤層]の積層構造を有する実施例1の造形ステージ用の粘着シート(両面粘着シート)を作製した。
【0111】
〈造形ステージ用粘着シートの使用〉
以上のようにして作製された粘着シートを、当該粘着シートにシワも部分的な浮きも生じさせずにその熱剥離型粘着剤層を介して3Dプリンタ(商品名「BS01+」,ボンサイラボ株式会社製)の造形ステージの造形物形成面に貼り合わせた。そして、3Dプリンタを稼動させて造形物を形成した。具体的には、3Dプリンタの備えるモデル材吐出用ノズルから造形ステージに向けてモデル材を吐出供給して、表面に造形ステージ用の粘着シートを伴う造形ステージの上に平板形状の造形物(100mm×100mm,厚さ2mm)を形成した。モデル材としては、断面直径1.75mmのABS樹脂フィラメント(商品名「プラシル」,ホワイトカラータイプ,プラシル社製)を用いた。造形物形成過程において、造形ステージの造形物形成面の温度は90℃とし、モデル材吐出用ノズルの内部でのモデル材加熱温度は240℃とした。造形物は、造形ステージ表面の粘着シートの非熱剥離型粘着剤層に強固に定着した状態で、形成された。造形物形成過程を終えて造形物を放冷した後、造形ステージの造形物形成面を120℃に昇温させて当該表面の粘着シートの熱剥離型粘着剤層を加熱し、当該粘着剤層中の熱膨張性微小球を膨張させて当該粘着剤層の粘着力を低下させた(これにより、造形ステージに対する造形物の、粘着シートを介した定着状態は、解除された)。その後、造形ステージ表面の粘着シートについて、加熱に因って粘着力の低下した熱剥離型粘着剤層を造形ステージ表面から離す剥離作業を行い、これに伴って造形ステージ上から造形物を取り外した。そして、当該造形物から粘着シートを剥がした。
【0112】
〔実施例2〕
〈造形ステージ用粘着シートの作製〉
上述のアクリル系ポリマー溶液S3に、上述のアクリル系ポリマー溶液S4およびアルミキレート架橋剤(商品名「ALCH-TR」,川研ファインケミカル株式会社製)を、溶液S3中の固形分(上述のアクリル系ポリマーA3)100質量部に対して溶液S4中の固形分(側鎖結晶性アクリル系ポリマーたる上述のアクリル系ポリマーA4)が5質量部およびアルミキレート架橋剤が1質量部となる量比で配合して、熱剥離型粘着剤層形成用の組成物(粘着剤組成物C3)を作製した。次に、上述のPET基材B2の一方の面に粘着剤組成物C2を塗布して粘着剤組成物層を形成し、PET基材B2上の当該粘着剤組成物層を覆うように剥離フィルムを張り合わせた。次に、PET基材B2の他方の面に上述の粘着剤組成物C3を塗布して粘着剤組成物層を形成した。次に、これら粘着剤組成物層について加熱によって乾燥させ且つ架橋反応を生じさせて、粘着剤組成物C2由来の厚さ25μmの粘着剤層、および、粘着剤組成物C3由来の厚さ30μmの熱剥離型粘着剤層を、形成した。このときの加熱温度は130℃であり且つ加熱時間は3分間である。以上のようにして、[粘着剤層(非熱剥離型)/PET基材B2/熱剥離型粘着剤層]の積層構造を有する実施例2の造形ステージ用の粘着シート(両面粘着シート)を作製した。
【0113】
〈造形ステージ用粘着シートの使用〉
以上のようにして作製された粘着シートを、当該粘着シートにシワも部分的な浮きも生じさせずにその熱剥離型粘着剤層を介して3Dプリンタ(商品名「BS01+」,ボンサイラボ株式会社製)の造形ステージの造形物形成面に貼り合わせた。そして、3Dプリンタを稼動させて造形物を形成した。具体的には、3Dプリンタの備えるモデル材吐出用ノズルから造形ステージに向けてモデル材を吐出供給して、表面に造形ステージ用の粘着シートを伴う造形ステージの上に平板形状の造形物(100mm×100mm,厚さ2mm)を形成した。モデル材としては、断面直径1.75mmのポリ乳酸フィラメント(商品名「Polyplus」,ナチュラルカラータイプ,Polymaker社製)を用いた。造形物形成過程において、造形ステージの造形物形成面の温度は30℃とし、モデル材吐出用ノズルの内部でのモデル材加熱温度は220℃とした。造形物は、造形ステージ表面の粘着シートの非熱剥離型粘着剤層に強固に定着した状態で、形成された。造形物形成過程を終えて造形物を放冷した後、造形ステージの造形物形成面を60℃に昇温させて当該表面の粘着シートの熱剥離型粘着剤層を加熱し、当該粘着剤層中のアクリル系ポリマーA4(側鎖結晶性ポリマー)の有する結晶性側鎖の結晶化状態を解いて当該粘着剤層の粘着力を低下させた(これにより、造形ステージに対する造形物の、粘着シートを介した定着状態は、解除された)。その後、造形ステージ表面の粘着シートについて、加熱に因って粘着力の低下した熱剥離型粘着剤層を造形ステージ表面から離す剥離作業を行い、これに伴って造形ステージ上から造形物を取り外した。そして、当該造形物から粘着シートを剥がした。
【0114】
〔実施例3〕
〈造形ステージ用粘着シートの作製〉
上述のアクリル系ポリマー溶液S5に、この溶液S5中の固形分(上述のアクリル系ポリマーA5)100質量部に対して1質量部のアルミキレート架橋剤(商品名「ALCH-TR」,川研ファインケミカル株式会社製)を配合して、冷却剥離型粘着剤層形成用の組成物(粘着剤組成物C4)を作製した。次に、上述のPET基材B2の一方の面に粘着剤組成物C2を塗布して粘着剤組成物層を形成し、PET基材B2上の当該粘着剤組成物層を覆うように剥離フィルムを張り合わせた。次に、PET基材B2の他方の面に上述の粘着剤組成物C4を塗布して粘着剤組成物層を形成した。次に、これら粘着剤組成物層について加熱によって乾燥させ且つ架橋反応を生じさせて、粘着剤組成物C2由来の厚さ25μmの粘着剤層、および、粘着剤組成物C4由来の厚さ30μmの冷却剥離型粘着剤層を、形成した。このときの加熱温度は130℃であり且つ加熱時間は3分間である。以上のようにして、[粘着剤層(非熱剥離型)/PET基材B2/冷却離型粘着剤層]の積層構造を有する実施例3の造形ステージ用の粘着シート(両面粘着シート)を作製した。
【0115】
〈造形ステージ用粘着シートの使用〉
以上のようにして作製された粘着シートを、当該粘着シートにシワも部分的な浮きも生じさせずにその冷却剥離型粘着剤層を介して3Dプリンタ(商品名「BS01+」,ボンサイラボ株式会社製)の造形ステージの造形物形成面に貼り合わせた。そして、実施例1に関して上述したのと同様の条件で3Dプリンタを稼動させて、造形ステージ上に平板形状の造形物(100mm×100mm,厚さ2mm)を形成した。造形物は、造形ステージ表面の粘着シートの非熱剥離型粘着剤層に強固に定着した状態で、形成された。造形物形成過程を終えて造形物を放冷した後、造形ステージの造形物形成面を5℃に降温させて当該表面の粘着シートの冷却剥離型粘着剤層を冷却し、当該粘着剤層中のアクリル系ポリマーA5(側鎖結晶性ポリマー)の有する結晶性側鎖を結晶化させて当該粘着剤層の粘着力を低下させた(これにより、造形ステージに対する造形物の、粘着シートを介した定着状態は、解除された)。その後、造形ステージ表面の粘着シートについて、冷却に因って粘着力の低下した冷却剥離型粘着剤層を造形ステージ表面から離す剥離作業を行い、これに伴って造形ステージ上から造形物を取り外した。そして、当該造形物から粘着シートを剥がした。
【0116】
〔実施例4〕
〈造形ステージ用粘着シートの作製〉
上述のアクリル系ポリマー溶液S6に、この溶液S6中の固形分(上述のアクリル系ポリマーA6)100質量部に対して5質量部のイソシアネート系架橋剤(商品名「コロネートL」,ポリイソシアネート化合物,東ソー株式会社製)と5質量部の光重合開始剤(商品名「イルガキュア651」,BASF社製)とを配合して、電磁波剥離型粘着剤層形成用の組成物(粘着剤組成物C5)を作製した。次に、上述のPET基材B2の一方の面に上述の粘着剤組成物C2を塗布して粘着剤組成物層を形成し、PET基材B2上の当該粘着剤組成物層を覆うように剥離フィルムを張り合わせた。次に、PET基材B2の他方の面に粘着剤組成物C5を塗布して粘着剤組成物層を形成した。次に、これら粘着剤組成物層について加熱によって乾燥させ且つイソシアネート架橋剤による架橋反応を生じさせて、粘着剤組成物C5由来の厚さ20μmの電磁波剥離型粘着剤層、および、粘着剤組成物C2由来の厚さ25μmの粘着剤層を、形成した。このときの加熱温度は130℃であり且つ加熱時間は3分間である。以上のようにして、[電磁波剥離型粘着剤層/PET基材B2/粘着剤層(非電磁波剥離型)]の積層構造を有する実施例4の造形ステージ用の粘着シート(両面粘着シート)を作製した。
【0117】
〈造形ステージ用粘着シートの使用〉
以上のようにして作製された粘着シートを、当該粘着シートにシワも部分的な浮きも生じさせずにその非電磁波剥離型粘着剤層を介して3Dプリンタ(商品名「BS01+」,ボンサイラボ株式会社製)の造形ステージの造形物形成面に貼り合わせた。そして、実施例1に関して上述したのと同様の条件で3Dプリンタを稼動させて、造形ステージ上に平板形状の造形物(100mm×100mm,厚さ2mm)を形成した。造形物は、造形ステージ表面の粘着シートの電磁波剥離型粘着剤層に強固に定着した状態で、形成された。造形物形成過程を終えて造形物を放冷した後、造形ステージ(紫外線透過性を有する)の表面の粘着シートに対してステージ側から紫外線照射を行い、当該粘着シートの電磁波剥離型粘着剤層の粘着力を低下させた(これにより、造形ステージに対する造形物の、粘着シートを介した定着状態は、解除された)。この紫外線照射は、紫外線照射装置として高圧水銀灯を使用して、出力75Wによる照射強度150mW/cm
2および紫外線照射積算光量500mJ/cm
2の照射条件で行った。そして、電磁波照射に因って粘着力の低下した電磁波剥離型粘着剤層から造形物を引き離すことによって、造形ステージ上から造形物を取り外した。造形物が取り外された後、造形ステージ表面から粘着シートを剥離した。
【0118】
〔実施例5〕
〈造形ステージ用粘着シートの作製〉
上述のアクリル系ポリマー溶液S7に、この溶液S7中の固形分(上述のアクリル系オリゴマーA7)100質量部に対して30質量部の電磁波硬化性ウレタンアクリレート(商品名「KAYARAD DPHA」,日本化薬株式会社製)と、5質量部のイソシアネート系架橋剤(商品名「コロネートL」,ポリイソシアネート化合物,東ソー株式会社製)と、5質量部の光重合開始剤(商品名「イルガキュア651」,BASF社製)とを配合して、電磁波剥離型粘着剤層形成用の組成物(粘着剤組成物C6)を作製した。次に、上述のPET基材B2の一方の面に上述の粘着剤組成物C2を塗布して粘着剤組成物層を形成し、PET基材B2上の当該粘着剤組成物層を覆うように剥離フィルムを張り合わせた。次に、PET基材B2の他方の面に粘着剤組成物C6を塗布して粘着剤組成物層を形成した。次に、これら粘着剤組成物層について加熱によって乾燥させ且つイソシアネート架橋剤による架橋反応を生じさせて、粘着剤組成物C6由来の厚さ20μmの電磁波剥離型粘着剤層、および、粘着剤組成物C2由来の厚さ25μmの粘着剤層を、形成した。このときの加熱温度は130℃であり且つ加熱時間は3分間である。以上のようにして、[電磁波剥離型粘着剤層/PET基材B2/粘着剤層(非電磁波剥離型)]の積層構造を有する実施例5の造形ステージ用の粘着シート(両面粘着シート)を作製した。
【0119】
〈造形ステージ用粘着シートの使用〉
以上のようにして作製された粘着シートを、当該粘着シートにシワも部分的な浮きも生じさせずにその非電磁波剥離型粘着剤層を介して3Dプリンタ(商品名「BS01+」,ボンサイラボ株式会社製)の造形ステージの造形物形成面に貼り合わせた。そして、実施例1に関して上述したのと同様の条件で3Dプリンタを稼動させて、造形ステージ上に平板形状の造形物(100mm×100mm,厚さ2mm)を形成した。造形物は、造形ステージ表面の粘着シートの電磁波剥離型粘着剤層に強固に定着した状態で、形成された。造形物形成過程を終えて造形物を放冷した後、実施例4に関して上述したのと同様にして、造形ステージ(紫外線透過性を有する)の表面の粘着シートに対してステージ側から紫外線照射を行い、当該粘着シートの電磁波剥離型粘着剤層の粘着力を低下させた(これにより、造形ステージに対する造形物の、粘着シートを介した定着状態は、解除された)。そして、電磁波照射に因って粘着力の低下した電磁波剥離型粘着剤層から造形物を引き離すことによって、造形ステージ上から造形物を取り外した。造形物が取り外された後、造形ステージ表面から粘着シートを剥離した。
【0120】
〔実施例6〕
〈伸張性基材の作製〉
ポリ塩化ビニル(商品名「TH-1300」,信越化学工業株式会社製)100質量部と、塩素化ポリエチレン(商品名「エラスレン302NA」,昭和電工株式会社製)10質量部と、アジピン酸系ポリエステル可塑剤(商品名「ポリサイザー W-2310」,DIC株式会社製)50質量部と、亜鉛石鹸としてのラウリン酸亜鉛(三津和化学薬品株式会社製)0.5質量部と、アルカリ土類金属石鹸としてのステアリン酸カルシウム(キシダ化学株式会社製)0.5質量部と、ハイドロタルサイト(商品名「アルカマイザー」,協和化学工業株式会社製)2質量部と、黒色顔料 2質量部とを混合して、ポリ塩化ビニル(PVC)組成物を調製した。このPVC組成物から、カレンダー成形機を使用してPVCフィルム(厚さ100μm)を作製した。このPVCフィルムの片面にて、上述の下塗り剤U2を塗布してこれを乾燥させ、下塗り層(約1g/m
2)を形成した。以上のようにして、片面に下塗り層を有する伸張性基材を作製した。
【0121】
〈造形ステージ用粘着シートの作製〉
スチレン-ブタジエンゴム(商品名「SBR1013」,結合スチレン量43質量%,JSR株式会社製)50質量部と、天然ゴム(商品名「RSS1級」,野村貿易株式会社製)50質量部と、テルペン樹脂(商品名「YSレジン PX1150」,軟化温度115℃,ヤスハラケミカル株式会社製)50質量部と、アルキルフェノール樹脂(商品名「タッキロール201」,田岡化学工業株式会社製)10質量部と、有機金属化合物アルミキレート(商品名「ALCH」,川研ファインケミカル株式会社製」7質量部と、フェノール系老化防止剤(商品名「イルガノックス1010」,BASF社製)1質量部と、溶媒としてのトルエンとを混合して、粘着剤層形成用の固形分濃度20質量%の組成物(粘着剤組成物C7)を作製した。次に、伸張性基材における、下塗り層が形成されている側の面にて、粘着剤組成物C7を塗布してこれを乾燥させ、厚さ10μmの粘着剤層を形成した。以上のようにして、[伸張性基材/ゴム系粘着剤層]の積層構造を有する実施例6の造形ステージ用の粘着シート(片面粘着シート)を作製した。
【0122】
〈造形ステージ用粘着シートの使用〉
以上のようにして作製された粘着シートを、当該粘着シートにシワも部分的な浮きも生じさせずにその粘着剤層を介して3Dプリンタ(商品名「BS01+」,ボンサイラボ株式会社製)の造形ステージの造形物形成面に貼り合わせた。そして、実施例1に関して上述したのと同様の条件で3Dプリンタを稼動させて、造形ステージ上に平板形状の造形物(100mm×100mm,厚さ2mm)を形成した。造形物は、造形ステージ表面の粘着シートの伸張性基材に定着した状態で、形成された。造形物形成過程を終えて造形物を放冷した後、粘着シートの端部を当該粘着シートの面広がり方向に引っ張ることによって粘着シートを延伸し、粘着剤層の造形ステージ表面に対する粘着力を低下させた(これにより、造形ステージに対する造形物の、粘着シートを介した定着状態は、解除された)。その後、造形ステージ表面の粘着シートについて、粘着力の低下した粘着剤層を造形ステージ表面から離す剥離作業を行い、これに伴って造形ステージ上から造形物を取り外した。そして、当該造形物から粘着シートを剥がした。
【0123】
〔実施例7〕
〈造形ステージ用粘着シートの作製〉
上述のアクリル系ポリマー溶液S2に、この溶液S2中の固形分(上述のアクリル系ポリマーA2)100質量部に対して5質量部のイソシアネート系架橋剤(商品名「コロネートL」,ポリイソシアネート化合物,東ソー株式会社製)と、20質量部の粘着付与剤(商品名「スミライトレジン PR12603」,住友デュレズ株式会社製)と、20質量部のロジンエステル(商品名「エステルガムAT」,荒川化学工業株式会社製)とを配合して、粘着剤層形成用の組成物(粘着剤組成物C8)を作製した。マニラ麻の不織布基材(厚さ50μm,坪量20g/m
2)の両面にて、粘着剤組成物C8を塗布して乾燥させ、厚さ55μmの粘着剤層を形成した。以上のようにして、[粘着剤層/不織布基材/粘着剤層]の積層構造を有する粘着シートを作製した。一方、上述のアクリル系ポリマー溶液S2に、この溶液S2中の固形分(上述のアクリル系ポリマーA2)100質量部に対して5質量部のイソシアネート系架橋剤(商品名「コロネートL」,ポリイソシアネート化合物,東ソー株式会社製)と100質量部の熱膨張性微小球(商品名「マツモトマイクロスフェアー F-50D」,120℃膨張タイプ,松本油脂製薬株式会社製)とを配合して、熱剥離型粘着剤層形成用の組成物(粘着剤組成物C9)を作製した。次に、厚さ25μmのポリエステルフィルムの片面を剥離処理して得た剥離フィルムの剥離処理面に、粘着剤組成物C9を塗布して粘着剤組成物層を形成した。次に、剥離フィルム上で当該粘着剤組成物層について加熱によって乾燥させ且つ架橋反応を生じさせて、厚さ50μmの熱剥離型粘着剤層を形成した。このときの加熱温度は100℃であり且つ加熱時間は5分間である。そして、粘着剤組成物C8から形成された粘着剤層を両面に有する上記粘着シートの片面の粘着剤層と当該熱剥離型粘着剤層とを貼り合せた。以上のようにして、[粘着剤層(非熱剥離型)/不織布基材/粘着剤層(非熱剥離型)/熱剥離型粘着剤層]の積層構造を有する実施例7の造形ステージ用の粘着シート(両面粘着シート)を作製した。
【0124】
〈造形ステージ用粘着シートの使用〉
以上のようにして作製された粘着シートを、当該粘着シートにシワも部分的な浮きも生じさせずにその熱剥離型粘着剤層を介して3Dプリンタ(商品名「BS01+」,ボンサイラボ株式会社製)の造形ステージの造形物形成面に貼り合わせた。そして、実施例1に関して上述したのと同様の条件で3Dプリンタを稼動させて、造形ステージ上に平板形状の造形物(100mm×100mm,厚さ2mm)を形成した。造形物は、造形ステージ表面の粘着シートの非熱剥離型粘着剤層に強固に定着した状態で、形成された。造形物形成過程を終えて造形物を放冷した後、造形ステージの造形物形成面を120℃に昇温させて当該表面の粘着シートの熱剥離型粘着剤層を加熱し、当該粘着剤層中の熱膨張性微小球を膨張させて当該粘着剤層の粘着力を低下させた(これにより、造形ステージに対する造形物の、粘着シートを介した定着状態は、解除された)。その後、造形ステージ表面の粘着シートについて、加熱に因って粘着力の低下した熱剥離型粘着剤層を造形ステージ表面から離す剥離作業を行い、これに伴って造形ステージ上から造形物を取り外した。そして、当該造形物から粘着シートを剥がした。
【0125】
〔実施例8〕
〈造形ステージ用粘着シートの作製〉
上述のPET基材B1の一方の面(下塗り層が設けられていない側の面)に電磁波剥離型粘着剤層形成用の上述の粘着剤組成物C5を塗布して粘着剤組成物層を形成した。次に、当該粘着剤組成物層について加熱によって乾燥させ且つイソシアネート架橋剤による架橋反応を生じさせて、厚さ20μmの電磁波剥離型粘着剤層を形成した。このときの加熱温度は130℃であり且つ加熱時間は3分間である。一方、厚さ25μmのポリエステルフィルムの片面を剥離処理して得た剥離フィルムの剥離処理面に、熱剥離型粘着剤層形成用の上述の粘着剤組成物C9を塗布して粘着剤組成物層を形成した。次に、剥離フィルム上で当該粘着剤組成物層について加熱によって乾燥させ且つ架橋反応を生じさせて、厚さ50μmの熱剥離型粘着剤層を形成した。このときの加熱温度は100℃であり且つ加熱時間は5分間である。そして、粘着剤組成物C5から形成された電磁波剥離型粘着剤層を一方の面の側に伴う上記PET基材B1の他方の面(下塗り層側の面)の側に、当該熱剥離型粘着剤層を貼り合せた。以上のようにして、[電磁波剥離型粘着剤層/PET基材B1/熱剥離型粘着剤層]の積層構造を有する実施例8の造形ステージ用の粘着シート(両面粘着シート)を作製した。
【0126】
〈造形ステージ用粘着シートの使用〉
以上のようにして作製された粘着シートを、当該粘着シートにシワも部分的な浮きも生じさせずにその熱剥離型粘着剤層を介して3Dプリンタ(商品名「BS01+」,ボンサイラボ株式会社製)の造形ステージの造形物形成面に貼り合わせた。そして、実施例1に関して上述したのと同様の条件で3Dプリンタを稼動させて、造形ステージ上に平板形状の造形物(100mm×100mm,厚さ2mm)を形成した。造形物は、造形ステージ表面の粘着シートの電磁波剥離型粘着剤層に強固に定着した状態で、形成された。造形物形成過程を終えて造形物を放冷した後、造形ステージ(紫外線透過性を有する)の表面の粘着シートに対してステージ側から紫外線照射を行い、当該粘着シートの電磁波剥離型粘着剤層の粘着力を低下させた(これにより、造形ステージに対する造形物の、粘着シートを介した定着状態は、解除された)。この紫外線照射は、紫外線照射装置として高圧水銀灯を使用して、出力75Wによる照射強度150mW/cm
2および紫外線照射積算光量500mJ/cm
2の照射条件で行った。そして、電磁波照射に因って粘着力の低下した電磁波剥離型粘着剤層から造形物を引き離すことによって、造形ステージ上から造形物を取り外した。次に、造形ステージの造形物形成面を120℃に昇温させて当該表面の粘着シートの熱剥離型粘着剤層を加熱し、当該粘着剤層中の熱膨張性微小球を膨張させて当該粘着剤層の粘着力を低下させ、当該粘着シートを造形ステージ表面から剥がした。
【0127】
〔比較例1〕
〈粘着シートの作製〉
上述のアクリル系ポリマー溶液S8と、四官能エポキシ系架橋剤(商品名「TETRAD-C」,三菱瓦斯化学株式会社製)と、重合ロジンエステル(商品名「ペンセルD-135」,荒川化学工業株式会社製)とを、溶液S8が100質量部、四官能エポキシ系架橋剤が0.02質量部、および重合ロジンエステルが40質量部の量比で配合して、粘着剤層形成用の組成物(粘着剤組成物C11)を作製した。次に、表面に剥離処理の施された厚さ38μmのポリエステルフィルム(剥離フィルム)上に、粘着剤組成物C11を塗布して粘着剤組成物層を形成した。次に、剥離フィルム上で当該粘着剤組成物層について乾燥させ且つ架橋反応を生じさせて、厚さ65μmの粘着剤層を形成した。このときの加熱温度は100℃であり、加熱時間は3分間である。このような手法により、剥離フィルム付きの粘着剤層(厚さ65μm)を二つ形成した。次に、マニラ麻の不織布基材(厚さ50μm,坪量20g/m
2)の両面のそれぞれに当該粘着剤層を貼り合せた。以上のようにして、[粘着剤層/不織布基材/粘着剤層]の積層構造を有する比較例1の粘着シート(両面粘着シート)を作製した。
【0128】
〈造形ステージの使用〉
以上のようにして作製された粘着シートを、当該粘着シートにシワも部分的な浮きも生じさせずにその一方の粘着剤層を介して3Dプリンタ(商品名「BS01+」,ボンサイラボ株式会社製)の造形ステージの造形物形成面に貼り合わせた。そして、実施例1に関して上述したのと同様の条件で3Dプリンタを稼動させて、造形ステージ上に平板形状の造形物(100mm×100mm,厚さ2mm)を形成した。造形物は、造形ステージ表面の粘着シートの他方の粘着剤層に定着した状態で、形成された。造形物形成過程を終えて造形物を放冷した後、造形ステージ表面の粘着シートについて、粘着剤層を造形ステージ表面から離す剥離作業を試み、これに伴って造形ステージ上から造形物を取り外した。そして、当該造形物から粘着シートを剥がした。
【0129】
〔比較例2〕
〈粘着シートの作製〉
不織布基材の代わりに上記のPET基材B1を用いたこと、および、粘着剤組成物C11から厚さ65μmの粘着剤層の代わりに厚さ30μmの粘着剤層を形成したこと以外は比較例1と同様にして、比較例2の粘着シート(両面粘着シート)を作製した。比較例2の粘着シートは、[粘着剤層/PET基材B1/粘着剤層]の積層構造を有する。
【0130】
〈造形ステージ用粘着シートの使用〉
以上のようにして作製された粘着シートを、当該粘着シートにシワも部分的な浮きも生じさせずにその一方の粘着剤層を介して3Dプリンタ(商品名「BS01+」,ボンサイラボ株式会社製)の造形ステージの造形物形成面に貼り合わせた。そして、実施例1に関して上述したのと同様の条件で3Dプリンタを稼動させて、造形ステージ上に平板形状の造形物(100mm×100mm,厚さ2mm)を形成した。造形物は、造形ステージ表面の粘着シートの他方の粘着剤層に定着した状態で、形成された。造形物形成過程を終えて造形物を放冷した後、造形ステージ表面の粘着シートについて、粘着剤層を造形ステージ表面から離す剥離作業を試み、これに伴って造形ステージ上から造形物を取り外した。そして、当該造形物から粘着シートを剥がした。
【0131】
〔造形後の造形物の取り外し〕
実施例1〜8および比較例1,2の各粘着シートについて、3Dプリンタを稼働して平板形状の造形物を造形する上記造形物形成過程の終了後の、造形ステージ上からの造形物の取り外しやすさを調べた。実施例1〜3,6,7の各粘着シートについては、上述のように、粘着シートに対応した粘着力低下措置を経た後に、造形ステージからの当該粘着シートの剥離作業に伴って造形物を造形ステージ上から取り外した。実施例4,5,8の各粘着シートについては、上述のように、粘着シートに対応した粘着力低下措置を経た後に、表面に粘着シートを伴う造形ステージ上から造形物を取り外した。比較例1,2の各粘着シートについては、上述のように、造形ステージからの当該粘着シートの剥離作業を試みることによって造形物を造形ステージ上から取り外した。造形ステージ上からの造形物の取り外しに関し、容易に造形物を取り外すことができる場合を非常に取り外しやすい(◎)と評価し、取り外すためには、非常に取り外しやすい場合よりも有意に大きな力を要する場合を取り外しにくい(△)と評価し、鋭利な先端を有するスクレーパー等の道具を使用せずには取り外しが困難である場合を取り外し困難(×)と評価した。その結果を表1〜3に掲げる。
【0132】
〔造形物の取り外しに要する剥離力〕
実施例6の粘着シートについて、造形ステージ上からの造形物の取り外しに要する剥離力、即ち、造形物を伴いつつ造形ステージ表面から粘着シートを剥離するために要する外力を測定した。具体的には、まず、粘着シートを、積層造形装置たる熱溶解積層方式3Dプリンタ(商品名「BS01+」,ボンサイラボ株式会社製)の造形ステージの造形物形成面に貼り合わせた。貼合せにおいては、粘着シートにシワも造形ステージからの部分的な浮きも生じさせずに、当該粘着シートの熱剥離型粘着剤層側を造形物形成面に貼着させた。次に、3Dプリンタを稼動させて造形物を形成した。具体的には、3Dプリンタの備えるモデル材吐出用ノズルから造形ステージに向けて、ノズル内部で240℃に加熱されたモデル材たるABS樹脂フィラメント(商品名「プラシル」,断面直径1.75mm,ホワイトカラータイプ,プラシル社製)を吐出供給して、表面に造形ステージ用の粘着シートを伴う造形ステージの上に造形物を形成した。造形物形成過程中の造形ステージの造形物形成面の温度は100℃とした。形成した造形物は、
図21に示すような本体部201および壁部202を有する。本体部201は、平面視矩形の平板形状(100mm×100mm,厚さ2mm)を有する。壁部202は、本体部201の縁端に位置して本体部201の一辺の全体に沿って延び、7mmの高さ及び2mmの厚さを有する。また、壁部202は、直径2mmの孔(図示略)を伴う形状で形成された部位である。この孔は、壁部202の延び方向における中央に位置し、且つ、壁部202を厚さ方向に貫通する。次に、造形物形成過程終了の後に造形ステージが30℃まで降温したところで、粘着シートの端部を当該粘着シートの面広がり方向に4.5kg重の力で引っ張ることによって粘着シートを延伸し、その粘着剤層の造形ステージ表面に対する粘着力を低下させた。そして、造形物の壁部202にその孔を利用して一端を結び付けたストリングを
図21中の矢印Dで示す方向に引っ張ることによって造形ステージ上から造形物を取り外すのに要する外力(最大値)を、剥離力として、当該ストリングの他端が結び付けられたプッシュプルゲージ(商品名「PS(Max. Capacity 5kg)」,株式会社今田製作所製)を使用して測定した。本測定における測定値は0kg重であった。すなわち、取り外し対象の造形物は、実質的には、粘着シートの上述の延伸によって造形ステージ上から既に取り外された状態にあった。
【0133】
実施例7の粘着シートについて、造形ステージ上からの造形物の取り外しに要する剥離力、即ち、造形物を伴いつつ造形ステージ表面から粘着シートを伴って剥離するために要する外力を測定した。具体的には、造形物形成過程中の造形ステージの造形物形成面の温度を100℃に代えて90℃としたこと、および、粘着力低下措置として粘着シートの延伸の代わりに熱剥離型粘着剤層の加熱を行ったこと以外は実施例6に関して上述したのと同様にして、剥離力測定を行った。熱剥離型粘着剤層の加熱は、造形ステージの造形物形成面を120℃に昇温させて行い、当該加熱により、熱剥離型粘着剤層中の熱膨張性微小球を膨張させて当該粘着剤層の粘着力を低下させた。本測定における測定値は0.05kg重であった。
【0134】
比較例1の粘着シートについて、造形ステージ上からの造形物の取り外しに要する剥離力、即ち、造形物を伴いつつ造形ステージ表面から粘着シートを伴って剥離するために要する外力を測定した。具体的には、造形物形成過程終了の後に造形ステージが30℃まで降温したところで剥離作業を行ったこと以外は実施例6に関して上述したのと同様にして、剥離力測定を行った。各測定における測定値は、使用したプッシュプルゲージの測定限界(5kg重)以上であった。
【0135】
【表1】
【0136】
【表2】
【0137】
【表3】
【0138】
[評価]
本発明の構成を具備する実施例1〜8の造形ステージ用粘着シートによると、表1,2における“造形後の造形物の取り外し”の項目に評価結果を示すとおり、造形物形成過程終了後に造形ステージ上から造形物を容易に取り外すことが可能である。上述の測定方法によって測定される、造形物の取り外しに要する力は、実施例6の粘着シートでは0kg重であり、実施例7の粘着シートでは0.05kg重であり、共に非常に小さい。これに対し、比較例1,2の粘着シートによると、表3における“造形後の造形物の取り外し”の項目に評価結果を示すとおり、造形物形成過程終了後に造形ステージ上から造形物を容易に取り外すことはできなかった。上述の測定方法によって測定される、造形物の取り外しに要する力は、比較例1の粘着シートでは測定限界以上、即ち5kg重以上であった。