特許第6824265号(P6824265)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6824265非環状C5化合物を環状C5化合物に転化する方法およびそれに使用する触媒組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6824265
(24)【登録日】2021年1月14日
(45)【発行日】2021年2月3日
(54)【発明の名称】非環状C5化合物を環状C5化合物に転化する方法およびそれに使用する触媒組成物
(51)【国際特許分類】
   C07C 5/373 20060101AFI20210121BHJP
   C07C 13/15 20060101ALI20210121BHJP
   B01J 29/62 20060101ALN20210121BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20210121BHJP
【FI】
   C07C5/373
   C07C13/15
   !B01J29/62 M
   !C07B61/00 300
【請求項の数】9
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-522785(P2018-522785)
(86)(22)【出願日】2016年10月7日
(65)【公表番号】特表2019-500321(P2019-500321A)
(43)【公表日】2019年1月10日
(86)【国際出願番号】US2016056023
(87)【国際公開番号】WO2017078897
(87)【国際公開日】20170511
【審査請求日】2018年5月2日
(31)【優先権主張番号】16153721.2
(32)【優先日】2016年2月2日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】62/250,681
(32)【優先日】2015年11月4日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509004675
【氏名又は名称】エクソンモービル ケミカル パテンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100137626
【弁理士】
【氏名又は名称】田代 玄
(72)【発明者】
【氏名】イアチーノ ラリー エル
(72)【発明者】
【氏名】ベダード ジェレミー ダブリュー
(72)【発明者】
【氏名】シュトロマイヤー カール ジー
(72)【発明者】
【氏名】メルテンス マハテルト エム ダブリュー
(72)【発明者】
【氏名】カー ロバート ティー
(72)【発明者】
【氏名】チェン ジェーン シー
【審査官】 早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】 特表平03−501942(JP,A)
【文献】 特表2018−534299(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 5/333
C07C 13/15
B01J 29/62
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非環状C5供給材料を、シクロペンタジエンを含む環状C5化合物を含む生成物に転化する方法であって、非環状C5転化条件下、触媒組成物の存在下で前記供給材料および任意で水素を接触させて前記生成物を形成するステップを含み、前記触媒組成物は、
5以下の拘束指数を有する微孔質結晶性アルミノシリケート、
1族アルカリ金属および/または2族アルカリ土類金属と組み合わせた10族金属、および
任意で11族金属
を含み、
前記微孔質結晶性アルミノシリケートはゼオライトLである、方法。
【請求項2】
非環状C5供給材料を、シクロペンタジエンを含む環状C5化合物を含む生成物に転化する方法であって、非環状C5転化条件下、触媒組成物の存在下で前記供給材料および任意で水素を接触させて前記生成物を形成するステップを含み、前記触媒組成物は、
(a)1族アルカリ金属および/または2族アルカリ土類金属を含み、5以下の拘束指数を有する微孔質結晶性アルミノシリケートを用意するステップ;
(b)前微孔質結晶性アルミノシリケートをpH7以上の酸で処理して、前記微孔質結晶性アルミノシリケートの表面積を増大させ、かつ酸処理アルミノシリケートを形成するステップ;ならびに
(c)ステップ(b)の前記酸処理アルミノシリケートを、10族金属の供給源、および任意で11族金属の供給源と接触させて前記触媒組成物を形成するステップであって、それによって前記触媒組成物に前記10族金属、および/または任意で前記11族金属を堆積させるステップ
を含む方法によって製造され、
前記微孔質結晶性アルミノシリケートはゼオライトLである、方法。
【請求項3】
前記触媒組成物が、触媒組成物の質量に対して0.005質量%〜10質量%の範囲の10族金属含有率を有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記10族金属が、白金であり、前記11族金属が銅または銀である、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記10族金属が、白金であり、白金の前記供給源は、硝酸白金、塩化白金酸、二塩化白金、白金アミン化合物、白金アセチルアセトネート、テトラアミン白金水酸化物、およびそれらの2種以上の混合物からなる群から選択され、ならびに/または、前記11族金属が銅であり、銅の前記供給源は、硝酸銅、亜硝酸銅、酢酸銅、水酸化銅、銅アセチルアセトネート、炭酸銅、乳酸銅、硫酸銅、リン酸銅、塩化銅、およびそれらの2種以上の混合物からなる群から選択され、ならびに/または、前記11族金属が銀であり、および/もしくは銀の前記供給源は、硝酸銀、亜硝酸銀、酢酸銀、水酸化銀、銀アセチルアセトネート、炭酸銀、乳酸銀、硫酸銀、リン酸銀、およびそれらの2種以上の混合物からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記1族アルカリ金属および/または前記2族アルカリ土類金属が、酸化物として存在する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記1族アルカリ金属が、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、およびそれらの2種以上の混合物からなる群から選択される、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記2族アルカリ土類金属が、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、およびそれらの2種以上の混合物からなる群から選択される、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記微孔質結晶性アルミノシリケートが、少なくとも2のSiO2/Al23モル比を有する、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本発明は、2015年11月4日に出願された米国特許出願第62/250,681号、および2016年2月2日に出願された欧州出願第16153721.2号の優先権および利益を主張する。
本発明は、非環状C5供給材料を、例えばシクロペンタジエンなどの環状C5化合物を含む生成物に転化する方法、およびそのような方法に使用される触媒組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
シクロペンタジエン(CPD)およびその二量体、ジシクロペンタジエン(DCPD)は、例えばポリマー材料、ポリエステル樹脂、合成ゴム、溶媒、燃料、燃料添加剤などの、化学工業の全体にわたって広範囲の製品に使用される、非常に望まれる原材料である。さらに、シクロペンタンおよびシクロペンテンは溶媒として有用であり、シクロペンテンは、ポリマーを製造するモノマーおよび他の高価な化学品用の出発材料として使用されてもよい。
シクロペンタジエン(CPD)は、現在のところ、液体で供給される水蒸気分解の重要でない副生成物である(例えば、ナフサおよびより重質の供給原料)。既存および新規の水蒸気分解設備が軽質供給原料に移るにつれて、CPDの需要が増しているのにかかわらず、CPDの生産は減少している。供給の制約による高コスト化は、ポリマーにおいてCPDの潜在的な末端製品の使用に影響する。束縛されない割合で、また好ましくは水蒸気分解からの回収より低いコストで、追加のCPDを製造することができるなら、より多くのCPDベースポリマー製品および他の高価値製品を製造することができよう。シクロペンタンおよびシクロペンテンはまた、溶媒として高価値であるが、シクロペンテンは、ポリマーを生成するためのコモノマーとして、他の高価値化学品の出発材料として用いることができる。
【0003】
軽質(C4-)副生成物の生成を最小限にしながら、CPDを生成するための触媒系を用いて、豊富なC5供給材料からの主な生成物として、CPDを含む環状C5化合物を生成することができるのは有利なことであろう。水素含量の低い供給材料(例えば、環状物、アルケン、ジアルケン)は、反応吸熱が低減し転化での熱力学的制約が改善されるので好ましいにもかかわらず、非飽和の供給材料は、飽和のものより高価である。反応化学的性質と、分枝C5より直鎖状C5が低価値である(オクタン価の差による)こととの両方によって、直鎖状C5骨格構造は分枝C5骨格構造より好ましい。従来なかったガスおよびシェール油から、その上また厳しい燃料規制によって自動車燃料の使用が低減したことからも、豊富なC5が入手可能になっている。C5供給材料はまたバイオ供給原料に由来する場合もある。
脱水素技術は、現在のところ、環状モノオレフィンまたは環状ジオレフィンではなく、C3およびC4アルカンからモノオレフィンおよびジオレフィンを製造するために使用されている。典型的な方法では、活性触媒としてアルミナ担持のPt/Snを使用する。別の有用な方法はクロミア/アルミナを使用する。B.V.Vora, ”Development of Dehydrogenation Catalysts and Processes,” Topics in Catalysis, vol.55, pp.1297-1308, 2012;およびJ.C.Bricker, ”Advanced Catalytic Dehydrogenation Technologies for Production of Olefins”, Topics in Catalysis, vol.55, pp.1309-1314, 2012を参照のこと。
【0004】
なお別の一般的な方法では、プロパンを脱水素化するためにアルミン酸Zn担持および/またはアルミン酸Ca担持のPt/Snを使用する。この方法はアルカンをうまく脱水素化するが、CPDの製造に重要な環化を行わない。Pt−Sn/アルミナおよびPt−Sn/アルミン酸塩触媒は、n−ペンタンの中程度の転化率を示すが、しかしこのような触媒は環状C5生成物に対して選択性および収率が不十分である。
【0005】
塩素化アルミナ(chlorided alumina)触媒に担持されたPtを用いて、低オクタンナフサをベンゼンおよびトルエンなどの芳香族に改質する。US3,953,368(Sinfelt)、”Polymetallic Cluster Compositions Useful as Hydrocarbon Conversion Catalysts.”を参照のこと。これらの触媒は、C6および高級アルカンを脱水素化、環化してC6芳香環を形成するのに有効であるが、非環状C5を環状C5に転化するにはそれほど有効でない。これらの、塩化アルミナ触媒上のPtは、環状C5の低い収率を示し、生産して初めの2時間以内に失活を示す。C6およびC7アルカンの環化は芳香環の形成によって助けられるが、C5環化は起こらない。この効果は、一部には、環状C6ベンゼンおよび環状C7トルエンと比較して、環状C5CPDへのはるかに大きい生成熱が原因となっている可能性がある。このことは、塩化アルミナ担持のPt/IrおよびPt/Snによっても示されている。これらのアルミナ触媒はC6+種の脱水素化および環化の両方を行ってC6芳香環を形成するが、種々の触媒が非環状C5を環状C5に転化するために必要である。
【0006】
Gaを含有するZSM−5触媒は、軽質パラフィンから芳香族を製造する方法に使用される。Kanazirevらによる検討は、n−ペンタンがGa23/HZSM−5上で容易に転化されることを示した。Kanazirev et al. , ”Conversion of C8 aromatics and n-pentane over Ga2O3/H-ZSM-5 mechanically mixed catalysts,”Catalysis Letters, vol. 9, pp. 35-42, 1991を参照のこと。報告によると、440℃および1.8時間-1WHSVで6質量%以上の芳香族が生成したが、環状C5の生成はなかった。Mo/ZSM−5触媒も、パラフィン、特にメタンを脱水素化および/または環化することが示された。Y. Xu, S. Liu, X. Guo, L. Wang, and M. Xie, ”Methane activation without using oxidants over Mo/HZSM-5 zeolite catalysts,” Catalysis Letters, vol. 30, pp. 135-149, 1994。Mo/ZSM−5を使用してn−ペンタンの高い転化率が示されたが、環状C5の生成はなく、クラッキング生成物が高収率で得られたことが実証された。これは、ZSM−5ベース触媒はパラフィンをC6環に転化することができるが、必ずしもC5環は生成しないことを示す。
【0007】
US5,254,787(Dessau)は、パラフィンの脱水素化で使用されるNU−87触媒を紹介した。この触媒は、C2-5およびC6+を脱水素化してそれらの不飽和類似体を生成することが示された。C2-5アルカンとC6+アルカンとの間の相違はこの特許において明白になった。C2-5アルカンの脱水素化は、直鎖状または分枝モノオレフィンまたはジオレフィンを生成するが、C6+アルカンの脱水素化は芳香族を得る。US5,192,728(Dessau)は同様の化学現象を含んでいるが、しかしスズを含有する結晶質微孔性物質を用いている。NU−87触媒と同様に、C5脱水素化は直鎖状または分枝、モノオレフィンまたはジオレフィンを生成し、CPDは生成しないとのみ示されている。
【0008】
US5,284,986(Dessau)は、n−ペンタンからシクロペンタンおよびシクロペンテンを製造する2段階の方法を紹介した。実行された一例では、第1の段階は、n−ペンタンから、パラフィン、モノオレフィンおよびジオレフィンならびにナフテンのミックスへのPt/Sn−ZSM−5触媒上での脱水素化および脱水素環化を含んでいた。次いで、この混合物はPd/Sn−ZSM−5触媒からなる第2の段階の反応器に導入され、そこで、ジエン、特にCPDがオレフィンおよび飽和物に転化された。シクロペンテンは、この方法においては望まれる生成物だが、CPDは望ましくない副生成物であった。
【0009】
US2,438,398、US2,438,399、US2,438,400、US2,438,401、US2,438,402、US2,438,403、およびUS2,438,404(Kennedy)は、様々な触媒上での1,3−ペンタジエンからのCPDの製造を開示している。この方法は、運転圧力が低く、一回通過転化率が低く、選択性が低いので望ましくない。加えて、1,3−ペンタジエンはn−ペンタンと異なり、容易に入手可能な供給材料ではない。また、Kennedy et al. , ”Formation of Cyclopentadiene from 1,3-Pentadiene,” Industrial & Engineering Chemistry, vol. 42, pp. 547-552, 1950.も参照のこと。
【0010】
Fel’dblyumらは”Cyclization and dehydrocyclization of C5 hydrocarbons over platinum nanocatalysts and in the presence of hydrogen sulfide,” Doklady Chemistry, vol. 424, pp. 27-30, 2009の中で、1,3−ペンタジエン、n−ペンテンおよびn−ペンタンからのCPDの製造を報告した。CPDの収率は、600℃、2%Pt/SiO2で1,3−ペンタジエン、n−ペンテンおよびn−ペンタンの転化に対してそれぞれ53%、35%および21%もの高さであった。CPDは初期には生成が観察されたが、反応の最初の数分以内に劇的な触媒失活が観察された。Pt含有シリカで行われた実験では、Pt−Sn/SiO2上でn−ペンタンの中程度の転化を示すが、環状C5生成物については、選択性が不十分で収率が悪かった。1,3−ペンタジエン環化促進剤としてのH2Sの使用が、以下のようにFel’dblyumによって、ならびにMarcinkowski、”Isomerization and Dehydrogenation of 1,3-Pentadiene,” M. S. , University of Central Florida, 1977.の中で提示された。Marcinkowskiは、700℃でH2Sを用いて1,3−ペンタジエンの80%の転化率と、CPDに対して80%の選択性を示した。高温で、供給材料に制約があり、生成物が含有する硫黄を後で洗浄する必要がありそうであるので、この方法は望ましくなくなる。
【0011】
Lopezらは、”n-Pentane Hydroisomerization on Pt Containing HZSM-5, HBEA and SAPO-11,” Catalysis Letters, vol. 122, pp. 267-273, 2008で、H−ZSM−5を含むPt含有ゼオライトでのn−ペンタンの反応を検討した。中位の温度(250〜400℃)で、彼らは、Pt−ゼオライトでのn−ペンタンの効果的な水素化異性化を報告したが、シクロペンテン形成の考察はなかった。上で論じたように、分枝C5が環状C5を直鎖状C5ほど効率的に生成しないので、この有害な化学現象を回避することは望ましい。
Liらは、”Catalytic dehydroisomerization of n-alkanes to isoalkenes,” Journal of Catalysis, vol. 255, pp. 134-137, 2008で、また、AlがFeで異種同形で置換されたPt含有ゼオライトでのn−ペンタン脱水素化を調査した。これらのPt/[Fe]ZSM−5触媒はn−ペンタンを効果的に脱水素化し異性化するが、しかし、使用される反応条件下では、環状C5は生成されず、望ましくない骨格異性化が生じた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
当分野のこの状態を考慮して、非環状C5供給材料を非芳香族環状C5炭化水素、すなわちCPDに好ましくは実用的な率および条件で転化する方法に対する必要性が残されている。さらに、豊富なC5供給原料から高い収率でシクロペンタジエンを生じ、C4-クラッキング生成物の生産過剰がなく、かつ触媒老化特性が受容できる、シクロペンタジエンの製造の目標とされる触媒プロセスに対する必要性がある。本発明はこれらの必要性を満たすものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1の態様において、本発明は、非環状C5供給材料、特にCPDを、環状C5化合物を含む生成物に転化する方法に関する。この方法は、非環状C5転化条件下、本発明の触媒組成物の存在下で前記供給材料および任意で水素を接触させて前記生成物を形成するステップを含む。
第2の態様において、本発明は非環状C5転化プロセスで使用される触媒組成物に関する。この触媒組成物は、1族アルカリ金属および/または2族アルカリ土類金属と組み合わせて、5以下の拘束指数を有する微孔質結晶性アルミノシリケート、10族金属、および任意で11族金属を含む。5以下の範囲の拘束指数を有する微孔質結晶性アルミノシリケートは、好ましくはゼオライトベータ、モルデナイト、フォージャサイト、ゼオライトL、およびそれらの2種以上の混合物からなる群から選択される。10族金属には白金が好ましく、より好ましくは触媒組成物の質量に対して少なくとも0.005質量%の量である。11族金属には、銅または銀が好ましい。1族アルカリ金属にはカリウムが好ましい。
【0014】
結晶性アルミノシリケートは、少なくとも2、好ましくは約2〜最大約20の範囲のSiO2/Al23モル比を有する。
触媒組成物は、少なくとも275m2/gの、または約275m2/gより大きく約400m2/g未満の範囲のBET表面積を有する。
前記触媒組成物の11族金属含量は、触媒組成物のそれぞれのモル量に基づいて10族金属に対して少なくとも0.01のモル比である。
前記1族アルカリ金属および2族アルカリ土類金属の総量のAlに対するモル比は、少なくとも0.5である。
触媒組成物は、(i)上記非環状C5供給材料の少なくとも20%転化率、ならびに/または(ii)等モルのH2を伴うn−ペンタン供給材料、約450℃の温度、n−ペンタン分圧約5psia(35kPa−a)、および約2時間-1のn−ペンタン毎時質量空間速度を含む、非環状C5転化条件下で、少なくとも約20%の、環状C5化合物に対する炭素選択性をもたらす。
【0015】
第3の態様において、本発明は触媒組成物を製造する方法に関する。触媒組成物を製造する方法は、
(a)1族アルカリ金属および/または2族アルカリ土類金属を含み、5以下の拘束指数を有する結晶性アルミノシリケートを用意するステップ;
(b)任意で、前記結晶性アルミノシリケートをpH7以上の酸で処理して、前記結晶性アルミノシリケートの表面積を増大させ、かつ酸処理アルミノシリケートを形成するステップ;ならびに
(c)ステップ(b)の前記酸処理アルミノシリケートを、10族金属の供給源、および/または任意で前記11族金属の供給源と接触させて前記触媒組成物を形成するステップであって、それによって前記触媒組成物に前記10族金属、および/または任意で前記11族金属を堆積させるステップ
を含む。
第4の態様において、本発明は、本発明の手法のいずれか1つによって製造される触媒組成物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
定義
本明細書および添付された特許請求の範囲のために、以下の用語が定義される。
用語「飽和物」は、アルカンおよびシクロアルカンを含むがこれらに限定されない。
用語は「非飽和物」は、アルケン、ジアルケン、アルキン、シクロアルケンおよびシクロジアルケンを含むがこれらに限定されない。
用語「環状C5」または「cC5」は、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロペンタジエンおよびそれらの2種以上の混合物を含むがこれらに限定されない。用語「環状C5」または「cC5」は、また、前述のいずれかのアルキル化類似体、例えばメチルシクロペンタン、メチルシクロペンテンおよびメチルシクロペンタジエンを含む。本発明の目的のために、周囲温度および周囲圧力を含む条件の範囲でシクロペンタジエンは自発的に経時的に二量化してディールス−アルダー縮合によってジシクロペンタジエンを形成することが認識されるべきである。
用語「非環状」は、直鎖状および分枝の飽和物および非飽和物を含むがこれらに限定されない。
【0017】
用語「芳香族」は、例えば、ベンゼンなどの共役二重結合を有する平坦な環状ヒドロカルビルを意味する。本明細書に使用される場合、芳香族という用語は、ベンゼン、トルエンおよびキシレンを含むがこれらに限定されない1種または複数の芳香環、ならびにナフタレン、アントラセン、クリセンおよびそれらのアルキル化版を含む多核芳香族(PNA)を含む化合物を包含する。用語「C6+芳香族」は、ベンゼン、トルエンおよびキシレンを含むがこれらに限定されない、6以上の環原子を有する芳香環ベースの化合物、ならびにナフタレン、アントラセン、クリセンおよびそれらのアルキル化版を含む多核芳香族(PNA)を含む。
用語「BTX」は、ベンゼン、トルエンおよびキシレン(オルトおよび/またはメタおよび/またはパラ)の混合物を含むがこれらに限定されない。
用語「コークス」は、触媒組成物に吸着された、水素含量の低い炭化水素を含むがこれらに限定されない。
用語「Cn」は、nが正の整数である、1分子当たりn個の炭素原子を有する炭化水素を意味する。
【0018】
用語「Cn+」は、1分子当たり少なくともn個の炭素原子を有する炭化水素を意味する。
用語「Cn-」は、1分子当たりn個以下の炭素原子を有する炭化水素を意味する。
用語「炭化水素」は、炭素に結合した水素を含有する化合物のクラスを意味し、種々のn値を有する炭化水素化合物の混合物を含む、(i)飽和炭化水素化合物、(ii)不飽和炭化水素化合物、および(iii)炭化水素化合物(飽和および/または不飽和の)の混合物を包含する。
用語「C5供給材料」は、例えば主に通常のペンタンおよびiso−ペンタン(またメチルブタンとも称される)であり、より少ない留分のシクロペンタンおよびネオペンタン(また2,2−ジメチルプロパンとも称される)を含む供給材料などの、n−ペンタンを含有する供給材料を含む。
【0019】
元素周期表についての数字および参照はすべて、他に明示しない限り、Chemical and Engineering News, 63(5), 27,(1985)で述べられている新しい表記に基づく。
用語「10族金属」は、周期表の10族の元素を意味し、ニッケル、パラジウム、白金を含むがこれらに限定されない。
用語「11族金属」は、周期表の11族の元素を意味し、銅、銀、金、およびそれらの2種以上の混合物を含むがこれらに限定されない。
【0020】
用語「1族アルカリ金属」は、周期表の1族の元素を意味し、水素以外の、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、およびそれらの2種以上の混合物を含むがこれらに限定されない。
用語「2族アルカリ土類金属」は、周期表の2族の元素を意味し、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、およびそれらの2種以上の混合物を含むがこれらに限定されない。
用語「拘束指数」は、US3,972,832およびUS4,016,218に定義され、その両方が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0021】
本明細書に使用される場合、用語「モレキュラーシーブ」は、用語「微孔質結晶物質」およびゼオライトと同義的に使用される。
本明細書に使用される場合、用語「炭素選択性」は、転化されたペンタン中の炭素の合計モルで除して得られる、それぞれの環状C5、CPD、C1およびC2-4中の炭素のモルを意味する。語句「少なくとも20%の、環状C5に対する炭素選択性」とは、環状C5中の少なくとも20モルの炭素が、転化されたペンタン中の炭素100モル当たりで形成されたことを意味する。
本明細書に使用される場合、用語「転化率」とは、生成物に転化された非環状C5供給材料中の炭素のモルを意味する。語句「前記非環状C5供給材料から前記生成物への少なくとも20%の転化率」とは、前記非環状C5供給材料のモルの少なくとも20%が生成物に転化されたことを意味する。
本明細書に使用される場合、用語「反応器システム」とは、1つまたは複数の反応器、およびシクロペンタジエンの製造に使用されるすべての任意の装置を含むシステムを指す。
【0022】
本明細書に使用される場合、用語「反応器」とは、化学反応が生じる任意の容器を指す。反応器は、別個の反応器、ならびに単一の反応装置内の反応ゾーンの両方を含み、該当する場合、複数の反応器にまたがる反応ゾーンを含む。例えば、単一反応器には複数の反応ゾーンがあってもよい。説明が第1および第2の反応器を指す場合、当業者は、そのような言及が、2つの反応器、ならびに第1および第2の反応ゾーンを有する単一の反応容器を含むことを容易に認識する。同様に、第1の反応器流出物および第2の反応器流出物は、単一の反応器の第1の反応ゾーンおよび第2の反応ゾーンからの流出物をそれぞれ含むと認識される。
反応器/反応ゾーンは、断熱的な反応器/反応ゾーンまたは非断熱的な反応器/反応ゾーンであってもよい。本明細書に使用される場合、用語「断熱」とは、プロセス流体を流すことによる以外に系に加熱投入が本質的にない反応ゾーンを指す。伝導および/または放射により避けられない消失を有する反応ゾーンはまた、本発明の目的にとっては断熱であると考えられる。本明細書に使用される場合、用語「非断熱的」とは、プロセス流体の流動によってもたらされる熱以外の手段によって熱が供給される反応器/反応ゾーンを指す。
【0023】
本明細書に使用される場合、用語「移動床」反応器とは、固体床の空隙率を約95%未満に維持するために、ガス空搭速度(U)が固体粒子の希釈相空送に必要な速度未満となるように、固体(例えば触媒粒子)とガス流を接触させるゾーンまたは容器を指す。移動床反応器において、固体(例えば、触媒物質)は、反応器の中をゆっくり移動してもよく、反応器の底部から除去され、反応器の頂部に加えられてもよい。移動床反応器は、下記の幾つかの流れ様式で運転されてよい。沈降または移動充填床様式(U<Umf)、気泡様式(Umf<U<Umb)、スラグ様式(Umb<U<Uc)、遷移および乱流動様式(Uc<U<Utr)、および高速流動様式(U>Utr)、ここで、Umfは最小流動化速度であり、Umbは最小気泡速度であり、Ucは圧力変動がピークに達する速度であり、trは輸送速度である。これらの異なる流動様式は、例えばKunii, D., Levenspiel, O. , Chapter 3 of Fluidization Engineering, 2nd Edition, Butterworth-Heinemann, Boston, 1991およびWalas, S. M. , Chapter 6 of Chemical Process Equipment, Revised 2nd Edition, Butterworth-Heinemann, Boston, 2010に記載されており、これらは参照によって組み込まれる。
【0024】
本明細書に使用される場合、用語「沈降床」反応器とは、反応ゾーンの少なくとも一部において、ガス空搭速度(U)が固体粒子(例えば触媒粒子)を流動させるために必要な最小速度未満であり、最低流動化速度(Umf)に関しU<Umfで、粒子とガス流を接触させるか、および/または、最低流動化速度を超える速度で、気−固の逆混合を最小にするために、反応器内壁を使用して、ガスおよび/または固体粒子の特性(温度、ガスまたは固体の組成など)の変化率を反応床の垂直上方に沿って維持しながら運転するゾーンまたは容器を指す。最低流動化速度は、例えば、Kunii, D., Levenspiel, O., Chapter 3 of Fluidization Engineering, 2nd Edition, Butterworth-Heinemann, Boston, 1991およびWalas, S. M. , Chapter 6 of Chemical Process Equipment, Revised 2nd Edition, Butterworth-Heinemann, Boston, 2010に記載されている。沈降床反応器とは、「循環沈降床反応器」であってもよく、これは、反応器を通る固体(例えば、触媒物質)の運動および固体(例えば触媒物質)の少なくとも部分的な再循環を有する沈降床を指す。例えば、固体(例えば、触媒物質)は、反応器から除去、再生、再加熱されてもよく、および/または、生成物流から分離され、次いで、反応器へ戻されてもよい。
【0025】
本明細書に使用される場合、用語「流動床」反応器とは、固体床の空隙率を約95%未満に維持するために、ガス空搭速度(U)が固体粒子を流動化するのに十分となり(すなわち最低流動化速度Umfを超える)、かつ固体粒子の希釈相空送に必要な速度未満となるように、固体(例えば触媒粒子)とガス流を接触させるゾーンまたは容器を指す。本明細書に使用される場合、用語「転送流動床」は、1つの流動床から別の流動床へ固体またはガスが転送されたときに、ガスおよび/または固体の特性(温度、固気組成、圧力など)が変化できるようにした、各流動床の連続的な配列を意味する。最低流動化速度の位置は、例えば、Kunii, D., Levenspiel, O., Chapter 3 of Fluidization Engineering, 2nd Edition, Butterworth-Heinemann, Boston, 1991およびWalas, S. M. , Chapter 6 of Chemical Process Equipment, Revised 2nd Edition, Butterworth-Heinemann, Boston, 2010のに示される。流動床反応器は、「循環流動床反応器」などの移動式流動床反応器であってもよく、これは、反応器を通る固体(例えば触媒物質)の運動および固体(例えば触媒物質)の少なくとも部分的な再循環を伴う流動床を指す。例えば、固体(例えば、触媒物質)は、反応器から除去、再生、再加熱されてもよく、および/または、生成物流から分離され、次いで、反応器へ戻されてもよい。
【0026】
本明細書に使用される場合、用語「上昇流」反応器(また輸送反応器としても知られる)とは、高速流動様式または空送流動様式で、固体(例えば触媒物質)を全体に上方へ輸送するために使用される、ゾーンまたは容器(垂直な円筒状パイプなど)を指す。高速流動および空送流動様式は、ガス空搭速度(U)が輸送速度(Utr)より大きいことを特徴とする。高速流動域と空送流動域は、また、Kunii, D. , Levenspiel, O. , Chapter 3 of Fluidization Engineering, 2nd Edition, Butterworth-Heinemann, Boston, 1991およびWalas, S. M. , Chapter 6 of Chemical Process Equipment, Revised 2nd Edition, Butterworth-Heinemann, Boston, 2010に記載されている。循環流動床反応器などの流動床反応器は上昇流反応器として運転されてもよい。
本明細書に使用される場合、用語「焼成管」反応器とは、炉の放射部内に位置する炉および平行な反応管を指す。反応管は、触媒物質(例えば触媒粒子)を含有し、生成物を形成するために反応体と接触させる。
【0027】
本明細書に使用される場合、用語「対流加熱管」反応器とは、触媒物質を含有し、エンクロージャ内に位置する平行反応管を含む転化システムを指す。任意の公知の反応管構造またはエンクロージャが使用されてもよいが、好ましくは、転化システムは、対流伝熱エンクロージャ内に複数の平行反応管を備える。好ましくは、反応管は、エンクロージャの中でコイル状または曲がった経路ではなく(蛇管または屈曲管が使用されてもよいが)、直管である。加えて、管の断面は、円形、楕円、矩形、および/または他の公知の形状であってもよい。管は、酸素を含む圧縮ガスを用いるタービン焼成燃料ガスによって得られるタービン排気流を優先的に用いて加熱される。他の態様において、反応管は、炉、ボイラーまたは過剰トーチランプ中の燃焼によって生み出される高温のガスを含む対流によって加熱される。しかし、タービン排気を用いて反応管を加熱することは、他の利点のうちでも軸動力の共同生産のため好ましい。
【0028】
本明細書に使用される場合、用語「固定床」または「充填床」反応器とは、ゾーンまたは容器(垂直または水平、円筒パイプまたは球状の容器などの)を指し、ガスの横断(また直交流としても知られる)、軸流および/またはガスの放射状流を含んでもよく、ここで、固体(例えば触媒粒子)は反応器内に実質的に固定され、空搭速度(U)が固体粒子を流動化するのに必要とする速度未満(すなわち最低流動化速度Umf未満)であり、および/または、ガスは固体粒子の流動化が不可能となるように下方へ動くようにガスは流動する。
【0029】
用語「周期的」とは、周期によって生じる定期的な再発または繰り返しの事象を指す。例えば、反応器(例えば、循環状固定床)は、反応間隔、再加熱間隔および/または再生間隔を有するように周期的に運転されてもよい。間隔段階の継続時間および/または順序は経時的に変化してよい。
本明細書に使用される場合、用語「並流」とは、実質的に同じ方向の2つの流れ(例えば、流れ(a)、流れ(b))の流動を指す。例えば、流れ(a)が少なくとも1つの反応ゾーンの頂部から底部に流動し、流れ(b)が少なくとも1つの反応ゾーンの頂部から底部に流動する場合、流れ(a)の流動は流れ(b)の流動に対して並流と考えられる。反応ゾーン内の小規模域については、流動が必ずしも並流でない領域があってもよい。
本明細書に使用される場合、用語「向流」とは、実質的に反対方向の2つの流れ(例えば流れ(a)、流れ(b))の流動を指す。例えば、流れ(a)が少なくとも1つの反応ゾーンの頂部から底部に流動し、流れ(b)は少なくとも1つの反応ゾーンの底部から頂部に流動する場合、流れ(a)の流動は流れ(b)の流動について向流と考えられる。反応ゾーン内の小規模域については、流動が必ずしも向流でないゾーンがあってもよい。
【0030】
供給材料
本明細書において有用な環状C5供給材料は、粗製油または天然ガス凝縮物から得られ、精製、ならびに流体接触分解(FCC)、改質、水素化分解、水素処理、コークス化および水蒸気分解などの化学プロセスにより得られる、クラッキングされたC5(アルケン、ジアルケン、アルキンのような様々な不飽和度の)を含むことができる。
本発明の方法において有用な非環状C5供給材料は、ペンタン、ペンテンおよびペンタジエン、およびそれらの2種以上の混合物を含む。好ましくは、非環状C5供給材料は、少なくとも約50質量%、もしくは60質量%、もしくは75質量%、もしくは90質量%のn−ペンタン、または約50質量%〜約100質量%の範囲のn−ペンタンを含む。
【0031】
非環状C5供給材料は、任意で、ベンゼン、トルエンまたはキシレン(オルト、メタまたはパラ)を含まず、好ましくは、ベンゼン、トルエンまたはキシレン(オルト、メタまたはパラ)化合物は、5質量%未満、好ましくは1質量%未満存在し、好ましくは0.01質量%未満、好ましくは0質量%存在する。
非環状C5供給材料は、任意で、C6+芳香族化合物を含まず、好ましくはC6+芳香族化合物は、5質量%未満、好ましくは1質量%未満存在し、好ましくは0.01質量%未満、好ましくは0質量%存在する。
非環状C5供給材料は、任意で、C4-化合物を含まず、任意のC4-化合物は、5質量%未満、好ましくは1質量%未満存在し、好ましくは0.01質量%未満、好ましくは0質量%存在する。
【0032】
非環状C5の転化プロセス
本発明の第1の態様は、非環状C5供給材料を、環状C5化合物を含む生成物に転化する方法である。本方法は、非環状C5転化条件下、本発明の触媒組成物のいずれか1つの存在下で、前記供給材料および任意で水素を接触させて前記生成物を形成するステップを含む。触媒組成物は、1族アルカリ金属および/または2族アルカリ土類金属と組み合わせて、約5未満の拘束指数を有する微孔質結晶性アルミノシリケート、10族金属、および任意で11族金属を含む。
【0033】
本発明の第1の態様は、また非環状C5供給材料を、環状C5化合物を含む生成物に転化する方法であって、非環状C5転化条件下、本発明の手法のいずれか1つによって製造された触媒組成物のいずれか1つの存在下で、前記供給材料および任意で水素を接触させて前記生成物を形成するステップを含む方法である。
非環状C5転化プロセスは、以下を含む広範囲の反応器構造中で行うことができる:対流加熱管(2015年11月4日に出願された米国特許出願第62/250,674号に記載されている)、焼成管(2015年11月4日に出願された米国特許出願第62/250,693号に記載されている)、上昇流反応器(2015年11月4日に出願された米国特許出願第62/250,682号に記載されている)、向流で循環する流動床または向流で循環する沈降床(2015年11月4日に出願された米国特許出願第62/250,680号に記載されている)、および循環状流動床反応器または循環状固定床反応器(2015年11月4日に出願された米国特許出願第62/250,677号に記載されている)。さらに、C5転化プロセスは単一反応ゾーン、または、断熱反応ゾーンとその後の非断熱的反応ゾーンなどの複数の反応ゾーンにおいて行うことができる(2015年11月4日に出願された米国特許出願第62/250,697号に記載されている)。
【0034】
典型的には、C5供給材料中に含まれる非環状C5炭化水素は、触媒が装填された第1の反応器に供給され、ここで、非環状C5炭化水素は、転化条件下で触媒と接触し、そこで、非環状C5炭化水素分子の少なくとも一部はCPD分子に転化され、CPDおよび任意で他の環状炭化水素(例えばシクロペンタンおよびシクロペンテンなどのC5環状炭化水素)を含有する反応生成物は、第1の反応器炭化水素流出物として第1の反応器を出る。好ましくは、水素および任意でC1−C4炭化水素などの軽質炭化水素を含む水素共供給材料もまた、第1の反応器に供給される。好ましくは、水素共供給材料の少なくとも一部は、第1の反応器に供給される前にC5供給材料と混合される。供給原料が最初に触媒と接触する、入口位置での供給原料混合物中に水素が存在すると、触媒粒子上でのコークスの形成を防止または低減させる。
非環状C5供給材料を転化する方法の生成物は、環状C5化合物を含む。環状C5化合物は1種または複数のシクロペンタン、シクロペンテン、シクロペンタジエンを含み、それらの混合物を含む。環状C5化合物は、少なくとも約20質量%、もしくは30質量%、もしくは40質量%、もしくは50質量%のシクロペンタジエン、または約10質量%〜約80質量%、代替として10質量%〜80質量%の範囲のシクロペンタジエンを含む。
【0035】
非環状C5の転化条件には、少なくとも温度、分圧および毎時質量空間速度(WHSV)が含まれる。その温度は、約450℃〜約650℃の範囲、または約500℃〜約600℃の範囲、好ましくは約545℃〜約595℃の範囲にある。分圧は、約3psia〜約100psia(21〜689kPa−a)の範囲、または約3psia〜約50psia(21〜345kPa−a)の範囲、好ましくは約3psia〜約20psia(21〜138kPa−a)の範囲にある。毎時質量空間速度は、約1時間-1〜約50時間-1の範囲、または約1時間-1〜約20時間-1の範囲にある。そのような条件は、約0〜3(例えば0.01〜3.0)の範囲、または約0.5〜約2の範囲の、任意の水素共供給原料の非環状C5炭化水素に対するモル比を含む。そのような条件は、また、非環状C5供給原料と共に共供給原料C1-4炭化水素を含んでもよい。
【0036】
任意の実施形態において、本発明は、n−ペンタンをシクロペンタジエンに転化する方法であって、本明細書に記載された触媒組成物を含むがこれらに限定されない1種または複数の触媒組成物を用いて、400℃〜700℃の温度、3psia〜約100psia(21〜689kPa−a)の分圧、および1時間-1〜約50時間-1の毎時質量空間速度で、n−ペンタンおよび任意で水素(存在する場合、典型的には、H2は、0.01〜3.0の、水素のn−ペンタンに対するモル比で存在する)を接触させてシクロペンタジエンを形成するステップを含む方法に関する。
【0037】
触媒の存在下で、幾つかの望ましい副反応と望ましくない副反応が起こる場合がある。反応の正味の影響は、水素の生成、および合計体積の増加(全体の圧力を一定と仮定して)である。特に望ましい全体反応(すなわち、示されない中間反応段階)の1つは、
n−ペンタン→CPD+3H2
である。
さらなる全体反応は、以下を含むがこれらに限定されない:
n−ペンタン→1,3−ペンタジエン+2H2
n−ペンタン→1−ペンテン+H2
n−ペンタン→2−ペンテン+H2
n−ペンタン→2−メチル−2−ブテン+H2
n−ペンタン→シクロペンタン+H2
シクロペンタン→シクロペンテン+H2、または
シクロペンテン→CPD+H2
【0038】
第1の反応器の内部の流体は、基本的に気相である。第1の反応器の出口で、第1の反応器の炭化水素流出物は、好ましくは気相で得られる。第1の反応器の炭化水素流出物は、とりわけ以下の炭化水素の混合物を含んでもよい:多環状芳香族などの8個を超える炭素原子を含む重質成分;単環状芳香族などのC8、C7およびC6炭化水素;CPD(望ましい生成物);n−ペンタンなどの未反応C5供給材料物質;C5副生成物、例えばペンテン(例えば1−ペンテン、2−ペンテン)、ペンタジエン(例えば1,3−ペンタジエン、1,4−ペンタジエン)、シクロペンタン、シクロペンテン、2−メチルブタン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,2−ジメチルプロパンなど;C4副生成物、例えばブタン、1−ブテン、2−ブテン、1,3−ブタジエン、2−メチルプロパン、2−メチル−1−プロペンなど;C3副生成物、例えばプロパン、プロペンなど;C2副生成物、例えばエタンおよびエテン、メタンおよび水素。
【0039】
第1の反応器の炭化水素流出物は、第1の反応器の炭化水素流出物中のC5炭化水素の総質量に対してC(CPD)1質量%の濃度でCPDを含んでもよく、a1≦C(CPD)1≦a2であり、ここで、a1およびa2は、a1<a2である限り、独立して15、16、18、20、22、24、25、26、28、30、32、34、35、36、38、40、45、50、55、60、65、70、75、80または85であってもよい。
第1の反応器の炭化水素流出物は、第1の反応器の炭化水素流出物中のC5炭化水素の総質量に対してC(ADO)1質量%の総濃度で非環状ジオレフィンを含んでもよく;b1≦C(ADO)1≦b2であり、ここで、b1およびb2は、b1<b2である限り、独立して20、18、16、15、14、12、10、8、6、5、4、3、2、1または0.5であってもよい。好ましくは0.5≦C(ADO)≦10である。
【0040】
第1の反応器中での触媒の使用、および反応条件の選択の結果として、第1の反応器の炭化水素流出物中のCPDと非環状ジオレフィンの高いモル比は、C(CPD)1/C(ADO)1≧1.5、好ましくは1.6、1.8、2.0、2.2、2.4、2.5、2.6、2.8、3.0、3.2、3.4、3.5、3.6、3.8、4.0、5.0、6.0、8.0、10、12、14、15、16、18または20となるように達成することができる。C(CPD)1/C(ADO)1の高い比は、その後の加工段階におけるCPDと非環状ジエンとの間のディールス−アルダー反応の結果としてのCPD消失を著しく低減させ、そのため、本発明の方法は、続いて生成されるDCPD留分にとって、高いDCPD収率および高いDCPD純度を達成することを可能にする。
【0041】
望ましくは、第1の反応器の炭化水素流出物の全体絶対圧および温度は、DCPDを形成するCPDの二量化が実質的に回避され、CPDと非環状ジエンとの間のディールス−アルダー反応が実質的に阻害されるレベルに維持されるべきである。
非環状C5炭化水素からCPDおよび水素への全体の転化が実質的な体積の増加をもたらす(全体の系圧力を一定と仮定して)ので、CPDの分圧が低くおよび/または反応混合物中の水素の分圧が低いと、非環状C5炭化水素の転化を促進する。出口での第1の反応器の流出物中のC5炭化水素および水素の合計分圧は、周囲の圧力より低いことが望ましい。したがって、不十分なC1−C4炭化水素の共供給材料または他の共供給材料が第1の反応器に導入される場合、非環状C5炭化水素からCPDへの満足すべき転化のレベルを達成するためには、第1の反応器の流出物の全体の合計圧力が大気圧より低いことが望ましい。しかし、大気圧より低い流れを直接分離することには、システムへの潜在的な酸素/空気進入の欠点があり、CPDおよび他の炭化水素の酸化、および系内の望ましくない種の形成を引き起こす。したがって、第1の反応器の炭化水素流出物が、その分離の前により高い合計圧力に処理されることが望ましい。その目的にエダクターシステムを使用することができる(2015年11月4日に出願された米国特許出願第62/250,708号に記載されている)。
【0042】
触媒組成物
本発明の第2の態様は、非環状C5供給材料および任意で水素を、シクロペンタジエンを含む環状C5化合物を含む生成物に転化するための触媒組成物である。触媒組成物は、1族アルカリ金属および/または2族アルカリ土類金属と組み合わせて、約5未満の拘束指数を有する微孔質結晶性アルミノシリケート、および10族金属、および任意で11族金属を含む。
好適な、5以下の拘束指数を有するアルミノシリケートは、ゼオライトベータ、モルデナイト、フォージャサイト、ゼオライトL、およびそれらの2種以上の混合物を含み、またはそれらからなる群から選択される。好ましくは、5以下の拘束指数を有する結晶性アルミノシリケートは、ゼオライトLである。拘束指数およびそれを測定する方法は、上記に参照した、US4,016,218に記載されている。
【0043】
ゼオライトLは、様々な結晶形態で合成することができ、チャンネル方向が結晶の短軸に平行である「ホッケーパック(hockey puck)」形態が好まれる。US5,491,119を参照されたい。ゼオライトLはUS3,216,789に記載されている。ゼオライトベータはUS3,308,069および再発行米国特許第28,341号に記載されている。モルデナイトは、天然に存在する材料であるが、TEA−モルデナイト(すなわち、テトラエチルアンモニウム指向剤を含む反応混合物から調製された合成モルデナイト)などの合成形態でも利用可能である。TEA−モルデナイトは、US3,766,093およびUS3,894,104に開示されている。フォージャサイトは、天然に存在する材料であるが、ゼオライトY、超安定Y(ultrastable Y)(USY)、脱アルミニウムY(Deal Y)、超疎水性Y(UHP−Y)、および希土類交換Y(REY)などの合成形態でも利用可能である。低ナトリウム超安定Yモレキュラーシーブ(low sodium ultrastable Y molecular sieve)(USY)は、US3,293,192およびUS3,449,070に記載されている。脱アルミニウムYゼオライト(Deal Y)は、US3,442,795で明らかにされた方法によって調製することができる。超疎水性Y(UHP−Y)は、US4,401,556に記載されている。希土類交換Y(REY)は、US3,524,820号に記載されている。前述の特許のそれぞれの全内容は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0044】
微孔質結晶性アルミノシリケートは、少なくとも約2より大きい、または少なくとも約3より大きい、または好ましくは約2〜約20の範囲の、SiO2/Al23モル比を有する。
結晶性アルミノシリケートは、少なくとも275m2/gの、または約275m2/gより大きく約400m2/g未満の範囲のBET表面積を有する。
10族金属は、ニッケル、パラジウムおよび白金、好ましくは白金を含み、またはこれらからなる群から選択される。前記触媒組成物の10族金属含有率は、触媒組成物の質量に対して少なくとも0.005質量%である。あるいは、10族の含有率は、触媒組成物の質量に対して約0.005質量%〜約10質量%の範囲、または約0.005質量%〜最大約1.5質量%の範囲である。
1族アルカリ金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムおよびそれらの2種以上の混合物、好ましくはカリウムを含み、またはそれらからなる群から選択される。
2族アルカリ土類金属は、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムおよびそれらの2種以上の混合物を含み、またはそれらからなる群から選択される。
【0045】
前記1族アルカリ金属と前記2族アルカリ土類金属の総量のAlに対するモル比は、少なくとも約0.5、または少なくとも約0.5〜最大約2の範囲、好ましくは少なくとも約1、より好ましくは少なくとも約1.5である。
あるいは、1族アルカリ金属および/または前記2族アルカリ土類金属は、酸化物として存在する。1族アルカリ金属酸化物は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、およびそれらの2種以上の混合物の酸化物である。2族アルカリ土類金属酸化物は、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、およびそれらの2種以上の混合物の酸化物である。
本発明の触媒組成物の使用は、等モルのH2を伴うn−ペンタン含有供給材料、400℃〜約500℃の範囲の温度、または約450℃、反応器入口でn−ペンタン分圧約5psia(35kPa−a)、もしくは約7psia(48kPa−a)、または約4psia〜約6psia(28〜41kPa−a)、および約2時間-1、または1時間-1〜5時間-1の間のn−ペンタン毎時質量空間速度の、非環状C5転化条件下、前記非環状C5供給材料の少なくとも約10%、もしくは少なくとも約20%、もしくは少なくとも約30%、または約20%〜約50%の範囲の転化率をもたらす。
【0046】
本発明の触媒組成物のいずれか1つの使用は、等モルのH2を伴うn−ペンタン供給材料、約400℃〜約500℃の範囲の温度、または約450℃、n−ペンタン分圧3psia〜10psiaの間(21〜69kPa−a)、および10時間-1から20時間-1の間のn−ペンタン毎時質量空間速度を含む非環状C5転化条件下、少なくとも約10%、もしくは少なくとも約20%、もしくは少なくとも約30%、または約20%〜約50%の範囲の、環状C5化合物に対する炭素選択性をもたらす。
【0047】
本発明の触媒組成物のいずれか1つの使用は、等モルのH2を伴うn−ペンタン供給材料、約550℃〜約600℃の範囲の温度、n−ペンタン分圧約7psia(48kPa−a)、もしくは約5psia(35kPa−a)、または約4psia〜約6psia(28〜41kPa−a)、および2時間-1、または1時間-1から5時間-1の間のn−ペンタン毎時質量空間速度を含む非環状C5転化条件下、少なくとも約20%、もしくは少なくとも約30%、もしくは少なくとも約40%、もしくは少なくとも約50%、または約30%〜約50%の範囲の、シクロペンタジエンに対する炭素選択性をもたらす。
本発明の触媒組成物は、炭化水素の転化用途に使用される際にさらされる、消耗に対して耐性になり条件の苛酷さにより耐性になるように、マトリックスまたは結合材料と合わせることができる。組み合わせた組成物は、本発明のマトリックス(結合剤)および物質の総質量に対して、本発明の物質の1質量%〜99質量%を含むことができる。ゼオライト結晶性物質およびマトリックスの相対的な割合は、約1質量%〜約90質量%の範囲、およびより普通には、特に複合材がビーズの形態で調製される場合、複合材の約2質量%〜約80質量%の範囲の結晶含有率を含み、広く変化してもよい。
本発明のプロセス触媒組成物の使用中に、コークスは触媒組成物に堆積し得るので、それによってそのような触媒組成物は、その触媒活性の一部を失い、失活する。失活した触媒組成物は、触媒組成物上のコークスの高圧水素処理および酸素含有ガスを用いる燃焼を含む従来の技法によって再生されてもよい。
【0048】
触媒組成物を製造する方法
本発明の第3の態様において、触媒組成物を製造する方法は、
(a)1族アルカリ金属および/または2族アルカリ土類金属を含み、5以下の拘束指数を有する結晶性アルミノシリケートを用意するステップ;
(b)任意で、前記結晶性アルミノシリケートをpH7以上の酸で処理して、前記結晶性アルミノシリケートの表面積を増大させ、かつ酸処理アルミノシリケートを形成するステップ;ならびに
(c)ステップ(b)の前記酸処理アルミノシリケートを、10族金属の供給源と接触させて前記触媒組成物を形成するステップであって、それによって前記触媒組成物に前記10族金属、および/または任意で前記11族金属を堆積させるステップ
を含む。
10族金属が、任意の適切な10族金属化合物として結晶性モレキュラーシーブの合成中または合成後、触媒組成物に添加されてもよい。
【0049】
10族金属の1つは白金であり、白金の供給源は、1種または複数の白金塩、例えば、硝酸白金、塩化白金酸、二塩化白金、白金アミン化合物、特にテトラアミン白金水酸化物、およびそれらの2種以上の混合物を含むがこれらに限定されない。代替として、白金の供給源は、塩化白金酸、二塩化白金、白金アミン化合物、特にテトラアミン白金水酸化物、およびそれらの2種以上の混合物からなる群から選択される。
11族金属の供給源は、銅または銀の供給源である。銅の供給源は、硝酸銅、亜硝酸銅、酢酸銅、水酸化銅、銅アセチルアセトネート、炭酸銅、乳酸銅、硫酸銅、リン酸銅、塩化銅、およびそれらの2種以上の混合物からなる群から選択される。銀の供給源は、硝酸銀、亜硝酸銀、酢酸銀、水酸化銀、銀アセチルアセトネート、炭酸銀、乳酸銀、硫酸銀、リン酸銀、およびそれらの2種以上の混合物からなる群から選択される。10族および/または11族金属が合成後に添加される場合、それらは、初期湿潤法、噴霧塗布、溶液交換、および化学気相成長法によって、または当業界で公知の他の手段によって添加されてもよい。
【0050】
前記10族金属および/または前記11族金属に堆積させた量は、触媒組成物の質量に対して少なくとも0.005質量%であり、または触媒組成物の質量に対して0.005質量%〜10質量%の範囲である。
本発明の第4の態様において、触媒組成物は本発明の方法によって製造される。
【0051】
産業上の利用可能性
環状、分枝および直鎖状C5炭化水素を含有し、任意で、水素、C4および軽質副生成物、またはC6および重質副生成物の任意の組み合わせを含有する、非環状C5の転化プロセス中に得られる第1の炭化水素反応器流出物は、本来、それ自体で価値のある生成物である。好ましくは、CPDおよび/またはDCPDは、反応器流出物から分離して精製された生成物流を得ることができ、様々な高い価値の生産物の製造に有用である。
例えば、50質量%以上、または好ましくは60質量%以上のDCPDを含む精製された生成物流は、炭化水素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂およびエポキシ材料を得るのに有用である。80質量%以上、または好ましくは90質量%以上のCPDを含有する精製された生成物流は、以下の反応スキーム(I)によって形成されるディールス−アルダー反応生成物を得るのに有用である:
【0052】
【化1】
(式中、Rは、ヘテロ原子または置換ヘテロ原子、置換または非置換のC1−C50ヒドロカルビルラジカル(多くの場合二重結合を含有するヒドロカルビルラジカル)、芳香族ラジカルまたはそれらの任意の組み合わせである)。好ましくは、置換ラジカルまたは基は、13〜17族から、好ましくは15族または16族、より好ましくは窒素、酸素または硫黄からの1種または複数の元素を含む。スキーム(I)に描かれたモノオレフィンのディールス−アルダー反応生成物に加えて、80質量%以上、または好ましくは90質量%以上のCPDを含む精製された生成物流を用いて、1つまたは複数の、別のCPD分子、共役ジエン、アセチレン、アレン、二置換オレフィン、三置換オレフィン、環状オレフィンおよび前述の置換体を含むCPDのディールス−アルダー反応生成物を形成することができる。好ましいディールス−アルダー反応生成物には、下記の構造に示されるように、ノルボルネン、エチリデンノルボルネン、置換ノルボルネン(酸素含有ノルボルネンを含む)、ノルボルナジエン、およびテトラシクロドデセンが含まれる:
【0053】
【化2】
前述のディールス−アルダー反応生成物は、エチレンなどのオレフィンと共重合した環状オレフィンのポリマーおよびコポリマーを製造するのに有用である。結果として得られる環状オレフィンコポリマーおよび環状オレフィンポリマー生成物は、様々な用途、例えば包装フィルムに有用である。
99質量%以上のDCPDを含む精製された生成物流は、例えば開環メタセシス重合(ROMP)触媒を使用するDCPDポリマーを製造するのに有用である。DCPDポリマー生成物は、物品、特に成形品、例えば風力タービンブレード、自動車部品を形成するのに有用である。
【0054】
追加の成分も反応器流出物から分離され、高い価値の生成物の形成に使用されてもよい。例えば、分離されたシクロペンテンは、スキーム(II)に描かれるように、ポリペンテナマーとしても知られるポリシクロペンテンを製造するのに有用である。
【化3】
分離されたシクロペンタンは、発泡剤および溶媒として有用である。直鎖状および分枝C5生成物は、高級オレフィンおよび高級アルコールに転化するのに有用である。環状および非環状C5生成物は、任意で水素化後、オクタン強化剤および輸送燃料ブレンド成分として有用である。
【実施例】
【0055】
以下の実施例は本発明を例証する。多くの変更および変形が可能であり、添付された特許請求の範囲内で、本明細書に具体的に記載される以外に、本発明が実施され得ることは理解されるはずである。
BETによる総表面積の測定
全BETは、350℃で4時間か焼したゼオライト粉体を脱気した後、Micromeritics Tristar II 3020装置を用いて窒素吸着/脱着によって測定した。この手法に関するさらなる情報は、例えば、”Characterization of Porous Solids and Powders: Surface Area, Pore Size and Density”, S. Lowell et al. , Springer, 2004に見つけることができる。
【0056】
X線回折パターン
X線回折データ(粉末XRDまたはXRD)は、銅K−アルファ線を使用し、VÅNTECの多チャンネル検出器を備えたBruker D4Endeavor回折システムを用いて収集した。回折データは、0.018度2シータ(シータはブラッグ角である)を用いる走査モードによって、各ステップに約30秒の有効計数時間を使用して記録した。
【0057】
(例1)
ゼオライトL触媒組成物合成
組成物のゼオライト合成ゲル3K2O:Al23:9SiO2:135H2Oを、初めにアルミン酸カリウム溶液を生成することによって調製した。蒸留水1750mlに、KOH・1/2H2O(KOH 86.8%)1450.3gおよびAl23・3H2O(ALCOA C−31)1166.7gを加えた。混合物を、アルミナが溶解するまで撹拌しながら加熱して穏やかに沸騰させた。次いで、混合物を室温まで冷却した。混合物の最終質量は3991gであった。ミョウバン溶液は、Al2(SO43・17H2O 1820.1gを蒸留水2672ml中に溶解することによって調製した。次いで、12種のゼオライトスラリーは、Kasil−6ケイ酸カリウム(PQ Corp.K2O 12.5%、SiO2 26.3%)1762g、アルミン酸カリウム溶液332g、ミョウバン溶液374g、および蒸留されたH2O 532mlを1ガロンのホバートミキサーへ撹拌しながらゆっくりと加えることによって調製した。次いで、混合物を研究室ブレンダーで完全に均質化し、2個の6ガロンHDPEプラスチック容器に移した。プラスチック容器を、密閉し、100℃のオーブン内に3日間置いた。生成物を真空濾過によって回収し、蒸留水で完全に洗浄し、次いで、125℃のオーブンで乾燥させた。粉末X線回折の分析によれば、生成物は純粋なゼオライトLであった。収量=6.0Kg、Si/Al=2.65、K/Al=1.04、結晶サイズ(SEM)=0.2〜0.1μm、BET表面積=291m2/g。
【0058】
酸洗浄ゼオライトLの一部を圧縮し、粉砕し、20/40メッシュにふるいにかけた。次いで乾燥させ、ふるいにかけたゼオライト98.3gを28cmカラムに加えた。Pt(NH34Cl2・H2O 1.539gおよびKCl 0.783gの脱イオン水190ml中溶液を調製し、カラムに加えた。溶液を、蠕動ポンプを用いて底部から頂部まで75分間循環させた。初期のpH=6.78、温度=24.0℃。最終のpH=8.31、温度=27.0℃。次いで、溶液およびゼオライトを50℃で3日間エージングした。試料を過剰の液体から分離し、20℃/時間の昇温で、50℃で1時間、70℃で1時間、90℃で1時間、空気乾燥させた。次いで、試料を100℃の炉内に置いてか焼し、空気流量500cc/分で、200℃まで2時間かけて、350℃まで3時間かけて昇温した。Pt含有率は、測定され、全触媒質量の0.5質量%であると決定された。
【0059】
(例2)
触媒組成物の性能評価
例1の上記材料を、性能について評価した。触媒組成物(0.25g、20〜40メッシュ)を、石英(6.5g、60〜80メッシュ)と物理的に混合し、反応器に装填した。触媒組成物をH2(200mL/分、50psia(345kPa−a)、250℃)下で1時間乾燥させ、次いでH2(200mL/分、50psia(345kPa−a)、500℃)下で5時間還元した。次いで、触媒組成物は、n−ペンタン、H2、および残部Arを供給されて、典型的には451℃で、C512 7.0psia(48kPa−a)、1.0モルH2:C512、WHSV1.9時間-1および19.9時間-1、ならびに50psia(345kPa−a)で、性能に関して試験した。触媒組成物の安定性および再生性は、初めの試験の後、650℃でH2(200mL/分、50psia(345kPa−a))で5時間処理し、次いで451℃で性能を再度試験することによって試験された。
【0060】
シクロペンタジエンおよび水素3当量は、n−ペンタンの転化によって生成される(式1)。これは、高温で、固体状態の、Pt含有触媒組成物にn−ペンタンに流すことによって成される。例1のゼオライトL(Si/Al=2.65Si)/0.5%Ptの性能は、n−ペンタン転化、環状C5生成(cC5)、クラッキング収率、および安定性に基づいて評価された。


【0061】
【数1】
【表1】
【表2】
【0062】
表1Aおよび表1Bに、空間速度(それぞれの空間速度の平均値)を変化させた、環状C5、CPD、C1、およびC2-4のクラッキング生成物の、n−ペンタンの転化率、および選択性、および収率を示す。
表1Aにおいて、選択性および収率は、形成された炭化水素のそれぞれの環状C5、CPD、C1およびC2-4に対してモル百分率基準で表す。すなわち、モル選択性は、転化されたペンタンの合計モルで除して得られる、それぞれの環状C5、CPD、C1およびC2-4のモルである。表1Bにおいて、選択性および収率は、形成された炭化水素のそれぞれの環状C5、CPD、C1およびC2-4に対して炭素百分率基準で表す。すなわち、炭素選択性は、転化されたペンタン中の炭素の合計モルで除して得られる、それぞれの環状C5、CPD、C1およびC2-4のモル炭素である。表1Aのデータセットは、表1Bのデータセットに対応する。
【0063】
このように、表1Aおよび表1Bは、環状C5およびCPDの平衡近傍の収率はWHSV 1.9で可能であることを示す。油(データセット1対3およびデータセット4対6)で、環状収率がいくらか減少するが、650℃のH2暴露により、環化活性の少なくとも一部を再生することができ(コークスの除去によると仮定される)、650℃のH2暴露には、分解生成物への選択性を低減するさらなる有利な効果があり、そのため環状生成物の熱力学的に拘束された収率(thermodynamic constrained yield)が増加することが実証される。この性能は、アルミナおよびアルミン酸塩などの、他の脱水素触媒よりも大いに優れている。
【0064】
特定の実施形態および特色を、一組の上限値および一組の下限値を用いて記載してきた。特に断らない限り、任意の下限から任意の上限までの範囲が企図されることは認識されるべきである。特定の下限、上限および範囲は、以下の1つまたは複数の特許請求の範囲に見られる。すべての数値は、当業者が予想するような実験誤差および変動を考慮している。
【0065】
いかなる優先権書類および/または試験手順も含む、本明細書に記載された文書はすべて、本文と矛盾しない限り、参照によって本明細書に組み込まれる。前述の全体的な記載および特定の実施形態から明らかなように、本発明の形態が図示され記載されたが、本発明の趣旨および範囲から離れることなく、様々な変更を行うことができる。したがって、本発明がそれによって限定されることは意図されない。同様に、用語「含む(comprising)」は、用語「含む(including)」と同義であると考えられる。同様に、組成物、要素または要素群が、移行句「含む(comprising)」を伴って先行する場合は常に、また、「〜から本質的になる」、「〜からなる」、「〜からなる群から選択される」または「〜である」という移行句を伴う、同じ組成物または要素群が、組成物要素または要素の同じ記載に先行すること、および逆もまた真なることを本発明者らは企図することが理解される。