特許第6824500号(P6824500)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6824500
(24)【登録日】2021年1月15日
(45)【発行日】2021年2月3日
(54)【発明の名称】発電構造、熱光起電力発電方法
(51)【国際特許分類】
   H02S 10/30 20140101AFI20210121BHJP
   F23G 5/46 20060101ALI20210121BHJP
【FI】
   H02S10/30
   F23G5/46 ZZAB
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-177203(P2017-177203)
(22)【出願日】2017年9月14日
(65)【公開番号】特開2019-54637(P2019-54637A)
(43)【公開日】2019年4月4日
【審査請求日】2019年7月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000136804
【氏名又は名称】株式会社プランテック
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100084630
【弁理士】
【氏名又は名称】澤 喜代治
(74)【代理人】
【識別番号】100127764
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 泰州
(72)【発明者】
【氏名】鮫島 良二
(72)【発明者】
【氏名】山田 裕史
(72)【発明者】
【氏名】清水 信
(72)【発明者】
【氏名】湯上 浩雄
【審査官】 桂城 厚
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/056806(WO,A1)
【文献】 特開平07−071209(JP,A)
【文献】 特開2011−101492(JP,A)
【文献】 特開平05−288011(JP,A)
【文献】 特開2006−228821(JP,A)
【文献】 特開2010−002903(JP,A)
【文献】 特開2015−103589(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0027673(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02S 10/30
H01L 31/04−31/078
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼却炉と、
前記焼却炉の炉壁に配置されたエミッタと、
前記エミッタの光放出面の有効面積を増減させるシャッターと、
炉外に設置された光電変換ユニットと、
を具備してなり、
前記焼却炉の燃焼熱によって加熱された前記エミッタの光放出面から発する熱ふく射光を、前記光電変換ユニットの受光面に受光させることによって熱光起電力発電することを特徴とする発電構造。
【請求項2】
請求項に記載の発電構造において、
更に、炉内温度に応じて前記シャッターを開閉する制御装置が設けられてなる発電構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の発電構造において、
前記焼却炉の炉出口に、更に、廃熱ボイラが設けられてなる発電構造。
【請求項4】
請求項1ないしのいずれか1項に記載の発電構造において、
前記焼却炉が、1日あたり百トン未満の処理能力の小型炉である発電構造。
【請求項5】
熱源から生じる熱エネルギーによってエミッタを加熱し、前記エミッタから発する熱ふく射光を光電変換セルにて電気エネルギーに光電変換する熱光起電力発電方法において、
前記熱源として焼却炉の燃焼熱を用い、
前記エミッタの光放出面の有効面積を増減させることによって炉内温度を調節することを特徴とする熱光起電力発電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼却炉の燃焼熱を熱源とする発電構造、及び熱光起電力発電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
我が国では、一般廃棄物の約80%が焼却処理されており、従来、焼却処理に伴って発生する余熱の利用を促進すべく、余熱をボイラにて蒸気回収し、タービンを回すことによって発電する廃棄物発電が行われていた(例えば、下記特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−71209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
廃棄物発電は、焼却処理される廃棄物をエネルギーとして回収するので、効率的なエネルギー利用といえる。しかしながら、現在、我が国にある一般廃棄物焼却施設のうち約30%に発電設備が備えられているが、処理能力1日あたり百トン未満の小型炉に対しては、数%しか発電設備が備えられていない。
【0005】
この理由としては、係る小型炉に水管等を配することが困難である点、小型の蒸気タービンは効率が低く費用対効果が見込めない点、が挙げられる。
【0006】
又、小型炉本体をボイラ構造とするが困難であるため、炉内の過熱に伴うクリンカの発生を防止すべく、炉内に水を噴霧したり冷却空気を混合したりすることによって炉内温度を1000℃以下にする必要がある。しかしながら、多くの発電量がみこめない小型炉では、水の噴霧や冷却空気の混合のために駆動された動力によって熱回収率や発電効率が低下する。
【0007】
本発明は前記技術的課題に鑑みて開発されたものであり、焼却炉の燃焼熱を熱源とする新規な発電構造、及び熱光起電力発電方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記技術的課題を解決するために、本発明の発電構造は、焼却炉と、前記焼却炉の炉壁に配置されたエミッタと、炉外に設置された光電変換ユニットと、を具備してなり、前記焼却炉の燃焼熱によって加熱された前記エミッタの光放出面から発する熱ふく射光を、前記光電変換ユニットの受光面に受光させることによって熱光起電力発電することを特徴とする(以下、「本発明発電構造」と称する。)。
【0009】
前記本発明発電構造においては、更に、前記エミッタの光放出面の有効面積を増減させるシャッターが設けられてなるものが好ましい態様となる。
【0010】
前記本発明発電構造においては、更に、炉内温度に応じて前記シャッターを開閉させる制御装置が設けられてなるものが好ましい態様となる。
【0011】
前記本発明発電構造においては、前記焼却炉の炉出口に、更に、廃熱ボイラが設けられてなるものが好ましい態様となる。
【0012】
前記本発明発電構造においては、前記焼却炉が、1日あたり百トン未満の処理能力の小型炉であるものが好ましい態様となる。
【0013】
前記技術的課題を解決する本発明の熱光起電力発電方法は、熱源から生じる熱エネルギーによってエミッタを加熱し、前記エミッタから発する熱ふく射光を光電変換セルにて電気エネルギーに光電変換する熱光起電力発電方法において、前記熱源として焼却炉の燃焼熱を用いることを特徴とする(以下、「本発明発電方法」と称する。)。
【0014】
前記本発明発電方法においては、前記エミッタの光放出面の有効面積を増減させることによって炉内温度を調節することが好ましい態様となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、焼却炉の燃焼熱を熱源とする発電を行うことができる。又、記エミッタの光放出面の有効面積を増減させれば炉内温度を制御することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明発電構造を断面状態にて示す正面図(a)と、断面状態にて示す上面図(b)である。
図2図2は、エミッタの光放出面を拡大して示す斜視図である。
図3図3は、実施形態1に係る本発明方法を模式的に示す概要図である。
図4図4は、実施形態2に係る本発明方法を模式的に示す概要図である。
図5図5は、制御装置を示すブロック図である。
図6図6は、前記制御装置による制御手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0018】
[実施形態1]
<本発明発電構造1>
図1に、実施形態1に係る本発明発電構造1を示す。前記本発明発電構造1は、焼却炉2と、エミッタ3と、光電変換ユニット4と、を具備する。
【0019】
‐焼却炉2‐
本発明において、前記焼却炉2の燃焼方式、処理能力等は特に限定されない。本実施形態においては、前記焼却炉2として、一般に「竪型ごみ焼却炉」と称されるものを用いた。この焼却炉2は、竪型の炉内に廃棄物Wを厚く積み、垂直方向に廃棄物Wを移動させながら燃焼させる燃焼方式を採用している。前記廃棄物Wの燃焼に伴い発生する可燃ガスは、燃焼室21において燃やされ、炉出口22を通じて排出される。なお、本実施形態において用いた「竪型ごみ焼却炉」では、前記廃棄物Wの燃焼に伴い発生する可燃ガスにつき、まず、主燃焼室211において燃やし、次いで、整流装置23を通過したガスを再燃焼室212において燃やしている。
【0020】
−エミッタ3−
前記エミッタ3は、前記焼却炉2の炉壁に配置される。前記エミッタ3は、熱エネルギーを光エネルギーに変換する素子である。本実施形態においては、前記エミッタ3として、図2に示すような、二次元矩形構造(穴サイズ:1.0×1.0μm、深さ0.8μm)の光放出面31を有する単結晶タングステンからなる平板状の選択エミッタを用いた。又、本実施形態においては、前記焼却炉2の炉壁に複数の開口を開け、各開口に前記エミッタ3をはめ込むことによって、前記エミッタ3を前記焼却炉2の炉壁に配置した。
【0021】
‐光電変換ユニット4‐
前記光電変換ユニット4は、前記焼却炉2の炉外に設置される。前記光電変換ユニット4は、光エネルギーを電気エネルギーに変換する素子である。本実施形態においては、前記光電変換ユニット4として、太陽電池セルとして用いられるInSbセルを用いた。又、前記光電変換ユニット4は、前記燃焼室21の周囲を囲むようにして、炉外の常温域に複数枚設置した。この際、各光電変換ユニット4の受光面41が、各エミッタ3の光放出面31にそれぞれ対向するようにした。
【0022】
<本発明発電方法>
以下、前記構成を有する本発明発電構造1を用いた本発明発電方法を説明する。図3に示すように、前記本発明方法では、熱源としての前記焼却炉2から生じる熱エネルギーによって前記エミッタ3を加熱し、前記エミッタ3から発する熱ふく射光を前記光電変換ユニット4にて電気エネルギーに光電変換する。
【0023】
更に詳しく説明すると、前記本発明発電構造1の前記焼却炉2を稼働させれば、焼却熱に起因する熱エネルギーが前記エミッタ3に伝達される。熱エネルギーが伝達された前記エミッタ3は、光放出面31から熱ふく射光を放出する。前記エミッタ3から放出された熱ふく射光は、前記光電変換ユニット4の受光面41に入射し、光起電効果によって電気エネルギーに光電変換される。
【0024】
即ち、本発明発電方法(本発明発電構造1)では、熱源として、前記焼却炉2の燃焼熱を利用する。発電時における前記エミッタ3の光放出面31の温度を900℃とすると、前記エミッタ3は、100±20kW/mの熱量を吸収でき、前記光電変換ユニット4を通じて、10±2kW/mの発電量となることが確認されている。
【0025】
又、本発明発電方法(本発明発電構造1)によれば、発電の際、前記焼却炉2の炉壁に配した前記エミッタ3が炉内の熱を吸収するため、炉内の過熱が抑制される。
【0026】
更に、前記エミッタ3は、任意の形状、大きさに加工できるため、前記焼却炉2の炉壁に対し容易に配置することができる。そのため、1日あたり百トン未満の処理能力の小型炉に対しても容易に配置することができる。
【0027】
なお、本実施形態においては、前記焼却炉2の炉出口22を通じて排出される排ガスについての利用はなされていないが、前記炉出口22に廃熱ボイラを設ければ、熱光発電とボイラ発電との組合せからなる高効率発電構造を構築することができる。
【0028】
[実施形態2]
図4に、実施形態2に係る本発明発電構造1を示す。本実施形態に係る本発明発電構造1は、前記実施形態1に係る本発明発電構造1と同様、焼却炉2と、エミッタ3と、光電変換ユニット4と、を具備する(図1参照)。
【0029】
そして、本実施形態に係る本発明発電構造1には、更に、シャッター5と、制御装置6が設けられている。
【0030】
‐シャッター5‐
前記シャッター5は、前記エミッタ3の光放出面31の有効面積を増減させる役割を担う。本実施形態においては、前記シャッター5は、炉の外壁に配置されている複数の前記エミッタ3の各々に取り付けられており、前記シャッター5の開度により、前記光放出面31を覆う閉状態から前記光放出面31を全開にする全開状態までを採り得る仕組みとなされている。
【0031】
‐制御装置6‐
前記制御装置6は、炉内温度に応じて前記シャッターを開閉させる役割を担う。図5に示すように、本実施形態において、前記制御装置6は、炉内温度(T)を測定する測定手段61と、最適な炉内温度としてあらかじめ設定された設定温度(Ts)を記憶する記憶手段62と、炉内温度(T)と設定温度(Ts)を比較する演算手段63と、炉内温度(T)に応じて前記シャッター5の開閉を命令する制御手段64と、を具備する。
【0032】
図6のフローチャートに示すように、前記制御装置6は、本発明発電構造1の稼働開始から一定時間経過した後(S1)、前記測定手段61にて炉内温度(T)を測定する(S2)。
【0033】
前記演算手段63は、前記記憶手段62に記憶された設定温度(Ts)と、測定された炉内温度(T)とを比較する(S3)。
【0034】
炉内温度(T)が所定の温度より高い場合(本実施形態においては、炉内温度(T)が設定温度(Ts)より10℃以上高くなった場合)、前記制御手段64は、閉状態にある前記シャッター5の一部に対し、開状態を採る命令を与える(S4)。複数設置されている前記エミッタ3のうち、前記シャッター5が開状態となされたものの割合が増えれば、その分、炉内の熱エネルギーが前記エミッタ3を通じて放出され、もって、炉内温度(T)が低下する。
【0035】
一方、炉内温度(T)が所定の温度より低い場合(本実施形態においては、炉内温度(T)が設定温度(Ts)より10℃以上低くなった場合)、前記制御手段64は、開状態にある前記シャッター5の一部に対し、閉状態を採る命令を与える。複数設置されている前記エミッタ3のうち、前記シャッター5が閉状態となされたものの割合が増えれば、その分、炉内の熱エネルギーの放出が制限され、もって、炉内温度(T)が上昇する。
【0036】
なお、炉内温度(T)が所定の温度範囲内にある場合(本実施形態においては、炉内温度(T)が設定温度(Ts)の±10℃の範囲内にある場合)、前記シャッター5に対する開閉命令は与えられず(S4)、所定時間経過した後(S1)、再度炉内温度(T)が測定され(S2)、炉内温度(T)と設定温度(Ts)との比較がなされる。又、前記シャッター5に対する開閉命令が与えられた場合も(S4、S5)、所定時間経過した後(S1)、再度炉内温度(T)が測定され(S2)、炉内温度(T)と設定温度(Ts)との比較がなされる。
【0037】
即ち、本実施形態に係る本発明発電方法(本発明発電構造1)によれば、前記エミッタ3の光放出面31の有効面積を増減させることによって炉内温度を調節することができる。これより、従来、炉内温度調節のために行っていた水の噴霧や冷却空気の混合が不必要ないし小規模なものとすることができ、その分、熱回収率や発電効率が向上する。
【0038】
その余は、前記実施形態1において説明した事項と同様であり、繰り返しを避けるべく、ここでは説明を省略する。
【0039】
なお、本発明は、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形態で実施することができる。そのため、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には何ら拘束されない。更に、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、すべて本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、焼却炉の燃焼熱を熱源とした発電システムとして好適に用いられる。
【符号の説明】
【0041】
1 本発明発電構造(発電構造)
2 焼却炉
21 燃焼室
211 主燃焼室
212 再燃焼室
22 炉出口
23 整流装置
3 エミッタ
31 光放出面
4 光電変換ユニット
41 受光面
5 シャッター
6 制御装置
61 測定手段
62 記憶手段
63 演算手段
64 制御手段
W 廃棄物

図1
図2
図3
図4
図5
図6