(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6824560
(24)【登録日】2021年1月15日
(45)【発行日】2021年2月3日
(54)【発明の名称】医療機器の筐体構造
(51)【国際特許分類】
A61B 5/24 20210101AFI20210121BHJP
A61B 5/318 20210101ALI20210121BHJP
G06F 1/16 20060101ALI20210121BHJP
G06F 1/18 20060101ALI20210121BHJP
G06F 1/26 20060101ALI20210121BHJP
G06F 1/28 20060101ALI20210121BHJP
【FI】
A61B5/04 R
A61B5/04 310A
G06F1/16 312E
G06F1/16 312K
G06F1/16 312Q
G06F1/18 E
G06F1/26
G06F1/28
【請求項の数】12
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-70904(P2017-70904)
(22)【出願日】2017年3月31日
(65)【公開番号】特開2018-171237(P2018-171237A)
(43)【公開日】2018年11月8日
【審査請求日】2020年3月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000112602
【氏名又は名称】フクダ電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(72)【発明者】
【氏名】宮野 博行
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】清水 雄介
(72)【発明者】
【氏名】木村 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】阿見 祥寿
(72)【発明者】
【氏名】矢野 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】取出 優
【審査官】
右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012-239887(JP,A)
【文献】
特開2013-39375(JP,A)
【文献】
特開2006-350396(JP,A)
【文献】
特開2016-178128(JP,A)
【文献】
特開2014-204109(JP,A)
【文献】
特開2017-33846(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/04
G06F 1/16
G06F 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信機能を追加するためのアダプタを接続可能な医療機器の筐体構造であって、
前記アダプタを着脱可能に接続するための第1の外部I/Fと、蓋とを備え、前記アダプタを収容する第1の収容部と、
前記第1の収容部とは異なる場所に配置され、前記第1の外部I/Fと同じ規格に準拠した第2の外部I/Fと、
を備えることを特徴とする医療機器の筐体構造。
【請求項2】
無線通信機能を追加するためのアダプタを接続可能な医療機器の筐体構造であって、
前記アダプタを着脱可能に接続するための第1の外部I/Fを備え、前記アダプタの少なくとも一部を筐体の外部から見えないように収容する第1の収容部と、
前記第1の収容部とは異なる場所に配置され、前記第1の外部I/Fと同じ規格に準拠した第2の外部I/Fと、
を備えることを特徴とする医療機器の筐体構造。
【請求項3】
前記第1の収容部は、前記筐体の外表面を構成し、開閉可能な蓋を有することを特徴とする請求項2に記載の医療機器の筐体構造。
【請求項4】
前記第2の外部I/Fは、前記筐体の外表面に露出するように配置されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の医療機器の筐体構造。
【請求項5】
前記アダプタとは異なる部材を着脱可能に収容する第2の収容部をさらに有し、
前記第1の収容部が前記第2の収容部の一部を拡張することによって形成され、前記第2の収容部に収容された前記部材によって前記アダプタの少なくとも一部が隠されることを特徴とする請求項1に記載の医療機器の筐体構造。
【請求項6】
前記第2の収容部は、前記筐体の外表面の一部を構成し、開閉可能な蓋を有することを特徴とする請求項5に記載の医療機器の筐体構造。
【請求項7】
前記部材が電池または記録紙であることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の医療機器の筐体構造。
【請求項8】
前記アダプタは前記第2の外部I/Fにも接続可能であることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の医療機器の筐体構造。
【請求項9】
前記第1の外部I/Fと前記第2の外部I/Fとに電力を供給する電源と、
前記電源が供給可能な最大供給電力の範囲内で、前記第1の外部I/Fと前記第2の外部I/Fに供給する電力量を制御する制御手段と、をさらに有し、
前記制御手段は、前記第2の外部I/Fよりも前記第1の外部I/Fを優先して電力を供給するように前記電力量を制御することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の医療機器の筐体構造。
【請求項10】
前記制御手段は、前記最大供給電力のうち、前記第1の外部I/Fが必要とする電力を除いた電力を前記第2の外部I/Fに供給するように制御することを特徴とする請求項9に記載の医療機器の筐体構造。
【請求項11】
前記第1の外部I/Fと前記第2の外部I/Fとに電力を供給する電源と、
前記電源が供給可能な最大供給電力の範囲内で、前記第1の外部I/Fと前記第2の外部I/Fに供給する電力量を制御する制御手段と、をさらに有し、
前記第2の外部I/Fに対する最大供給電力量よりも、前記第1の外部I/Fに対する最大供給電力量の方が大きいことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の医療機器の筐体構造。
【請求項12】
前記第1の外部I/Fに接続された部材の種別を検知する検知手段をさらに有し、
前記第1の外部I/Fに接続された部材の種別が前記アダプタでない場合、前記第1の外部I/Fに接続された部材を認識しないことを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の医療機器の筐体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医療機器の筐体構造に関し、特には着脱可能な無線通信アダプタの収容構造に関する。
【背景技術】
【0002】
心電計や血圧計などの医療機器には、パーソナルコンピュータや記憶装置などの外部機器を接続するための汎用インタフェースが設けられており、汎用インタフェースに外部機器を有線接続するためのコネクタが筐体に設けられている。特許文献1には、USBインタフェースに接続された解析装置と通信したり、USBメモリに生体信号を記録したりする生体信号記録装置が開示されている。
【0003】
そして、従来、外部機器を有線接続するためのコネクタは、ケーブルの着脱容易性を考慮して、筐体の外表面に露出した状態など、筐体外部から容易にアクセスできるように配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-124345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、機器が有するUSBなどの汎用外部インタフェース(外部I/F)に接続し、機器に無線通信機能を追加するアダプタ(無線通信アダプタ)が知られている。従来の医療機器の筐体は、外部I/Fのコネクタを筐体の側面などに設けた穴から露出させるように配置しており、無線通信アダプタを接続すると、無線通信アダプタの本体部分が筐体から飛び出た状態になる。そして、飛び出た本体部分に誤って(あるいは意図的に)力が加えられると、無線通信アダプタのみならず、無線通信アダプタが接続された外部I/Fも破損する可能性がある。また、破損に至らなくても、無線通信アダプタがコネクタから外れて外部機器との通信が途絶えてしまい、例えば計測中の生体情報の一部区間が外部機器で受信できないといった問題が生じうる。
【0006】
さらに、無線通信アダプタは記憶装置のようにデータを記録または再生している間だけ装着するものではなく、一度取り付けた後は取り外さないのが一般的であるため、いたずらや盗難に遭いやすいという問題もある。本体部分が小型の無線通信アダプタを用いることでこれらの問題はある程度抑制できるが、特に盗難やいたずらについての抑制効果は小さい。
【0007】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、無線通信アダプタを外付けすることによる問題を抑制可能な医療機器の筐体構造を提供することを一目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的は、無線通信機能を医療機器に追加するためのアダプタを接続可能な医療機器の筐体構造であって、アダプタを着脱可能に接続するための第1の外部I/Fと蓋とを備え、アダプタを収容する第1の収容部と、第1の収容部とは異なる場所に配置され、第1の外部I/Fと同じ規格に準拠した第2の外部I/Fと、を備えることを特徴とする医療機器の筐体構造によって達成される。
【発明の効果】
【0009】
このような構成により、本発明によれば、無線通信アダプタを外付けすることによる問題を抑制可能な医療機器の筐体構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る心電計の機能構成例を示すブロック図である。
【
図2】実施形態に係る心電計の筐体構造の例を示す図である。
【
図3】実施形態に係る心電計の外部I/Fに対する電力供給制御に関する図である。
【
図4】別の実施形態に係る心電計の筐体構造の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の例示的な実施形態について詳細に説明する。以下では、本発明を心電計の筐体構造に適用した実施形態を説明するが、心電計は本発明が適用可能な医療機器の単なる一例に過ぎない。本発明は、通信アダプタを接続可能な汎用外部インタフェースを有する医療機器全般の筐体構造に適用可能である。
【0012】
(心電計の構成)
図1は、本発明の実施形態に係る心電計100の構成例を示すブロック図である。
電極群110は、例えば四肢電極(4つ)および胸部電極(6つ)からなる。電極群110が有する電極の種類や数は、心電計100で計測する心電図信号(誘導)の種類および数によって決まる。
【0013】
電極群110(心電図電極)は心電計100の入力部111が備えるコネクタに接続される。入力部111は例えば保護回路、誘導選択器、増幅回路などを有し、予め設定された種類と数の心電図信号を出力する。
A/D変換部112は、入力部111から出力される心電図信号のそれぞれをデジタル化し、心電図波形データとして出力する。入力部111とA/D変換部112はアナログフロントエンド(AFE)とも呼ばれる。
【0014】
フィルタ処理部113は、A/D変換部112を通じて入力される心電図波形データに対し、制御部120からの設定に従ってノイズ除去フィルタを適用する。本実施形態において、フィルタ処理部113は、一例として、筋電ノイズ除去フィルタ、ACノイズ除去フィルタ、およびドリフトノイズ除去フィルタを選択的に適用可能であるものとするが、フィルタ処理の種類や数はこれらに限定されない。
スピーカ114は、制御部120が例えば警告音や音声メッセージを出力するために用いる。
【0015】
制御部120は例えばROM、RAMおよびプログラマブルプロセッサを含み、ROMに記憶された制御プログラムをRAMに展開してプログラマブルプロセッサが実行することにより、心電計100全体の動作を制御する。後述する無線通信アダプタ130のドライバソフトウェアもROMに記憶されている。ROMには制御プログラムのほか、各種の設定値やGUIデータなどが記憶されており、制御プログラムの実行時に適宜用いられる。また、ROMの少なくとも一部は書き換え可能であってよい。
【0016】
なお、例えばフィルタ処理部113は、制御部120が有するプログラマブルプロセッサがプログラムを実行することによって実現してもよいし、ASICやASSPなどのハードウェアで実現してもよい。フィルタ処理部113はハードウェアとソフトウェアの組み合わせにより実現してもよい。
【0017】
カードスロット116にはメモリカードを着脱可能であり、制御部120は装着されたメモリカードに心電図検査データを記録したり、装着されたメモリカードから記録済みの心電図検査データを読み出したりすることができる。
【0018】
操作部117はユーザ(医療関係者)が心電計100に各種設定や指示を入力する入力デバイスであり、ボタン、キー、タッチパネル(ソフトウェアキー)などが一般的に用いられるが、これらに限定されない。音声入力のような物理的な入力操作を必要としない入力方法がサポートされてもよい。
【0019】
表示部118は、LCDなどの表示装置であり、制御部120の制御に従い、計測中の心電図、あるいはカードスロット116に装着されたメモリカードに記憶された心電図検査データに基づく心電図および/または解析レポートや、メニュー画面などを表示する。
プリンタ119は、例えばサーマルプリンタであり、制御部120の制御に従い、心電図波形や解析レポートを所定のフォーマットで印刷出力する。
【0020】
電源部121は例えば二次電池や商用電源(ACアダプタ)である。
外部I/F電源制御部122は、外部I/F123A〜123Cへの電源供給を制御する。外部I/F電源制御部122も制御部120と同様、例えばROM、RAMおよびプログラマブルプロセッサを含み、ROMに記憶された制御プログラムをRAMに展開してプログラマブルプロセッサが実行することにより、後述する電源供給制御を実施することができる。なお、外部I/F電源制御部122の動作の少なくとも一部を、実体的には制御部120のプログラマブルプロセッサが実行してもよい。なお、外部I/F123A〜123C以外の構成要素に対しても電源部121から電源が供給されるが、その構成については省略する。
【0021】
外部I/F123A〜123C(まとめて外部I/F123と呼ぶ)は外部機器を有線接続するための汎用インタフェースであり、本実施形態では同じ規格に準拠したインタフェースである(コネクタの形状は同一でなくてもよい)。本実施形態では外部I/F123A〜123CはUSB2.0規格に準拠したインタフェースであるものとするが、他の規格に準拠した汎用インタフェースであってもよい。また、外部I/F123の数は3つでなくてもよい。
【0022】
本実施形態の心電計100は、3つの外部I/F123A〜123Cを有する。このうち、外部I/F123Aおよび123B(第2の外部I/F)は、筐体の側面や上面など、心電計100の使用時にアクセスが容易な位置にコネクタが配置されている。一方、外部I/F123C(第1の外部I/F)は、取り付けられた無線通信アダプタ130を実質的に外部から見えないように収容する、筐体に設けられた収容部(後述)にコネクタが配置されている。
【0023】
外部I/F123A、123BにはUSB接続可能な任意の外部機器200(例えばUSBメモリやパーソナルコンピュータ)を接続可能である。なお、無線通信アダプタ130を外部I/F123Aまたは123Bに接続することもできるが、推奨されない。例えば外部I/F123Aまたは123Bに無線通信アダプタ130が接続されたことが検出された場合、制御部120は表示部118やスピーカ114を通じて、専用の外部I/F123Cへの接続を促すメッセージを出力してもよい。あるいは、またはそれに加えて、外部I/F123Aまたは123Bに無線通信アダプタ130が接続されたことが検出された場合、制御部120が無線通信アダプタ130のドライバソフトウェアを動作させないことで、接続を無効とする(認識しない)ように構成してもよい。
【0024】
同様に、外部I/F123Cに無線通信アダプタと異なる種別の外部機器(例えばUSBメモリ)が接続されたことが検出された場合、制御部120が接続された外部機器のドライバソフトウェアを動作させないことで、接続を無効とする(認識しない)ように構成してもよい。この場合も、制御部120は表示部118やスピーカ114を通じて、外部I/F123Cが無線通信アダプタ専用であることや、外部I/F123Aか123Bに接続するように促すメッセージを出力してもよい。なお、外部I/F123に接続された外部機器の種別は、接続検知時の初期処理において取得する外部機器の情報から判別することができる。
【0025】
無線通信アダプタ130は、外部I/F123Cに接続され、心電計100に無線通信機能を追加する。無線通信アダプタ130が提供する無線通信の仕様に特に制限はないが、例えば無線LAN(IEEE 802.11x)やBluetooth(登録商標)規格に準拠した無線通信機能を提供するものであってよい。無線通信アダプタ130は外部I/F123Cのコネクタに嵌合するコネクタ部と、無線送受信機およびアンテナなどを備える本体部とを有し、外部I/F123Cのコネクタを通じて供給される電力で動作する。また、無線通信アダプタ130の動作に必要なドライバソフトウェアは予め制御部120のROMに用意されているものとする。
【0026】
このような構成を有する心電計100を用いて例えば心電図信号の計測及び記録を行う場合、心電計100の電源がONの状態で、被検者の体表面の所定の位置に電極群110の一端に設けられた電極パッドや電極クリップを取り付け、電極群110の他端に設けられたコネクタを入力部111に接続する。
【0027】
入力部111に電極群110が接続されると、検出された心電図信号が入力部111に入力され、A/D変換部112、フィルタ処理部113などの処理を経て心電図波形データとして制御部120に入力される。制御部120は内部のRAMの一部をバッファとして用い、直近の所定秒数分の心電図波形データを一時的に蓄積する。また、制御部120は、バッファ内の心電図波形データを用いて、表示部118への心電図の表示を開始する。
【0028】
操作部117から記録開始指示が入力されると、制御部120は、記録開始指示の入力時点から所定の記録時間分の心電図波形データがバッファに蓄積されるまで計測を行う。そして、制御部120は、バッファに蓄積された記録期間分の心電図波形データについて自動解析処理を実行する。制御部120は、心電図波形データとその自動解析結果のデータ、被検者情報のデータを含んだ検査データを生成し、カードスロット116に装着されたメモリカードあるいは外部I/F123Aまたは123Bに接続された外部機器200に記録する。また、制御部120は、記録期間の心電図波形とその自動解析結果とを所定のフォーマットで表示部118および/またはプリンタ119に出力する。なお、ここで説明した動作は単なる例示であり、計測モードなどの設定に応じて他の動作を実行することもできる。
【0029】
図2は、心電計100の筐体構造の例を示す図であり、(a)は底面を斜め上から見た斜視図、(b)は右側面(
図2(a)での左側面)図である。
心電計100の筐体は略直方体形状を有する。筐体には無線通信アダプタを収容する収容部180が設けられており、収容部180には外部I/F123Cのコネクタが設けられている。収容部180は一般的な無線通信アダプタの全体を収容できる大きさに形成されている。なお、
図2(a)では収容部180の中が見えるように蓋を外した状態を示しているが、実際にはねじ穴182にネジで固定される開閉可能な蓋が取り付けられる。従って、無線通信アダプタ130のコネクタを外部I/F123Cのコネクタに嵌合させたのち、蓋を取り付けることにより、無線通信アダプタ130は心電計100の筐体外部から隠された状態になる。なお、蓋や収容部の側面には無線通信アダプタのごく一部が見える程度の穴、切り欠き、スリットなどが設けられてもよい。
【0030】
収容部180にアクセスするための蓋が設けられている底面は、心電計100が通常設置される状態において隠れているため、心電計100の外部から収容部180の存在を知ることができない。また、収容部180にアクセスするには心電計100を裏返し、さらにねじ止めされている蓋を外す必要があるため、例えば通りがかりに目に付いた無線通信アダプタを盗むといった発作的な盗難から無線通信アダプタを守る効果は高いと考えられる。また、蓋を固定するネジを専用ネジのような特殊ネジとするなど、プラスもしくはマイナスドライバーのような一般的な工具で回せないように構成すれば、盗難抑制効果を更に高めることができる。
【0031】
一方で、外部I/F123A,123Bは筐体の側面にコネクタが露出した状態で配置されており、USBメモリやパーソナルコンピュータ等の外部機器の着脱は容易に行うことができる。なお、外部I/F123A,123Bのコネクタの防塵や防水を目的としたカバーが設けられてもよい。
【0032】
次に、本実施形態の外部I/F電源制御部122(以下、単に電源制御部122と呼ぶ)の構成および動作について
図3(a)を用いて説明する。
図3(a)は
図1に示した心電計100の構成のうち、外部I/F123A〜123Cへの給電制御に関する構成を模式的に示した機能ブロック図である。
【0033】
電源制御部122は、無線通信アダプタ用の外部I/F123Cに流れる電流を検出する電流検出部1223と、外部I/F123A,123Bへ供給する電流量を電流検出部1223の検知結果に応じて制御する電流制御部1221,1222とを有する。電流制御部1221,1222は同一構成を有する。なお、一般的に汎用インタフェースの給電電圧は規格上一定であるため、電流量の制御は実質的には電力量の制御に等しい。
【0034】
無線通信アダプタ130は電波を送受信するため、比較的大きな電力を必要とする。また、必要な電力量は一定でなく、時間とともに変動する。無線通信アダプタが必要とする電力が供給されないと、無線通信が途切れる原因となる。例えば外部機器に計測中の心電図信号をリアルタイムに送信している場合、無線通信が途切れると心電図信号が取得できない期間が生じるだけでなく、外部機器が正しく動作できなくなる可能性がある。
【0035】
そのため本実施形態では、外部I/F123A〜123Cのうち、無線通信アダプタ用の外部I/F123Cに対する電力供給を残りの外部I/F123A,123Bよりも優先させる。具体的には電流検出部1223で外部I/F123Cに流れる電流量を検出し、電流制御部1221および1222に通知する。電流制御部1221および1222は、通知された電流量に応じて外部I/F123A,123Bに対して供給する最大電流量を制御する。
【0036】
例えばUSB2.0では1ポートあたりの給電電力の最大値がバスパワー時では5V100mA、セルフパワー時では5V500mAと定められている。しかし、これら最大電力の供給能力を有することは規格上必須ではないため、接続された外部機器が必要とする電力が規格上の最大供給電力の範囲内であったとしても、必要とする電力を供給できるとは限らない。本実施形態では電源部121から複数の外部I/F123A〜123Cの全体に供給可能な総電力(最大供給電力)を、外部I/F123Cに優先的に割り振り、残りの電力を残りの外部I/F123A,123Bに対して供給するようにする。
【0037】
ここでは機器の最大供給電力から外部I/F123Cに供給した残りの電力を外部I/F123A,123Bで等分するように電流制御部1221および1222が制御するものとするが、外部I/F123A,123Bのうち一方にのみ外部機器が接続されている場合には、外部機器が接続されている外部I/Fに残りの電力の全体を割り当ててもよい。
【0038】
なお、例えば電源部121の能力が外部I/F123A〜123Cに接続される機器が必要とする電力を十分にまかなえる能力がある場合(例えば電源部121がACアダプタである場合)には、外部I/F123A〜123Cに供給する電力を独立して制御してもよい。
【0039】
この場合、例えば
図3(b)に示すように、電源制御部122’が外部I/F123A〜123Cそれぞれに対して独立した電流制御部1221、1222、1224を有するように構成することができる。そして、外部I/F123Cに供給する電力を制御する電流制御部1224は、外部I/F123A,Bに供給する電力を制御する電流制御部1221、1222よりも供給可能な最大電流量を大きくしておく。ここで、電流制御部1224が供給可能な最大電流量は、無線通信アダプタが必要としうる最大電力を供給できるように設定する。これにより、外部I/F123Cに対する最大供給電力量を、外部I/F123Aおよび123Bに対する最大供給電力量よりも多くすることができ、無線通信アダプタが必要な電力を十分に供給することができる。
【0040】
以上説明したように本実施形態によれば、無線通信アダプタを装着可能な医療機器の筐体に、無線通信アダプタを着脱可能に接続するためのコネクタを備え、コネクタに接続された無線通信アダプタを筐体の外部から見えないように収容する収容部を設けた。そのため、接続されている無線通信アダプタが筐体外部に飛び出すこともなく、また無線通信アダプタが接続されていること自体が外観から判別できない。そのため、筐体から飛び出た無線通信アダプタに衝撃が加わることにより無線通信アダプタや医療機器が破損したり、無線通信アダプタが盗難に遭ったりするといった事態を抑制することができる。
【0041】
(他の実施形態)
上述の実施形態では、収容部の蓋が筐体の外表面(底面)の一部である構成(すなわち、蓋を外せばすぐに収容部にアクセスできる構成)であった。しかし、例えば電池や記録紙のように着脱可能に筐体内に収容される他の部材(通信アダプタとは異なる部材)の収容部(第2の収容部)の一部を拡張することにより、通信アダプタの収容部(第1の収容部)を設けることもできる。
図4は、電池の収容部190の底面192の一部をさらに掘り下げて通信アダプタの収容部180を形成した例を示す斜視図である。心電計100の使用時には電池の収容部190にねじ193,194によって蓋が取り付けられる。この場合、筐体外部からは電池の収容部に見えるため、通信アダプタが存在する場所を一層特定しづらくなり、盗難防止効果が高まることが期待される。さらに、通常は電池が収容部190に収容されているため、電池によって通信アダプタの収容部180の少なくとも一部が隠される。そのため、電池の収容部190の蓋が外されても、通信アダプタの存在が目立たず、さらなる盗難防止効果が期待される。
【符号の説明】
【0042】
100…心電計、120…制御部、123A、123B、123C…外部I/F、180…収容部