(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6824616
(24)【登録日】2021年1月15日
(45)【発行日】2021年2月3日
(54)【発明の名称】可搬型バックアップ電源装置
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20210121BHJP
H02J 7/02 20160101ALI20210121BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20210121BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20210121BHJP
【FI】
H02J7/00 B
H02J7/02 J
H01M10/44 P
H01M10/48 P
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-57909(P2016-57909)
(22)【出願日】2016年3月23日
(65)【公開番号】特開2017-175744(P2017-175744A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2019年1月16日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)刊行物名:パンフレット「どこへでも 行ける。サバイバル電源」 発行日:平成27年12月10日 (2)ウェブサイトのアドレス:http://www.exeo.co.jp/news/16/news20160121.pdf ウェブサイトの掲載日:平成28年1月21日 (3)刊行物名:プレスリリース「EXEO News Release 自然災害などによる停電時や非常時、屋外での利用や施設などのバックアップ用に必要な時に必要な場所での電源供給が可能な可搬型スマート電源『サバイバル電源』販売開始〜独自のユニット分割構造で、中容量バッテリー相当の電力が歩いて自由に持ち運び可能〜」 発行日:平成28年1月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000162593
【氏名又は名称】株式会社協和エクシオ
(74)【代理人】
【識別番号】100081271
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 芳春
(74)【代理人】
【識別番号】100162189
【弁理士】
【氏名又は名称】堀越 真弓
(72)【発明者】
【氏名】金井 康通
(72)【発明者】
【氏名】上林 久美子
(72)【発明者】
【氏名】塚田 久子
(72)【発明者】
【氏名】遠原 秀基
【審査官】
坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−124064(JP,A)
【文献】
特開2013−078242(JP,A)
【文献】
特開2004−304983(JP,A)
【文献】
特開2003−209932(JP,A)
【文献】
特開2000−032683(JP,A)
【文献】
特開2003−037946(JP,A)
【文献】
特開2009−089486(JP,A)
【文献】
特開2015−156793(JP,A)
【文献】
特開2016−034170(JP,A)
【文献】
特開2004−260905(JP,A)
【文献】
特開平11−191933(JP,A)
【文献】
特開2006−345660(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0262121(US,A1)
【文献】
登録実用新案第3172514(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H01M 10/44
H01M 10/48
H02J 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに並列接続された複数の電池ユニットと、前記複数の電池ユニットに接続されていると共に充電電流を該複数の電池ユニットに供給する充電ユニットと、前記複数の電池ユニットに接続されていると共に該複数の電池ユニットからの放電電流を受け取る放電ユニットと、前記充電ユニット及び前記放電ユニットに接続されており、前記複数の電池ユニットから前記放電ユニット方向への電流のみを流すように、前記複数の電池ユニット及び前記放電ユニット間に接続された複数のダイオードと、前記複数の電池ユニットに定電流を流すように、前記充電ユニット及び前記複数の電池ユニット間に接続されており出力電流値を調整可能な複数の定電流回路と、前記複数の電池ユニットが前記充電ユニット及び前記放電ユニットに接続された後、前記複数の電池ユニットの各々についてアドレスを付与するアドレス付与回路とを備えており、
前記アドレス付与回路は、前記複数の電池ユニットを順次通信可能とし、前記複数の電池ユニットのうちの通信可能となった電池ユニットに順次アドレスを付与し、前記複数の電池ユニットのうちの終端の電池ユニットにアドレスが付与されたことを知り、該付与されたアドレスで前記複数の電池ユニットを管理するように構成されており、前記アドレス付与回路は、アドレス付与用制御線(GPIO1〜GPIO4)を介してバス管理部のコンピュータに接続された前記複数の電池ユニットのアドレス付与用の複数のD型フリップフロップを備えており、該複数のD型フリップフロップのQ出力が順次レベル「1」となった際に該当する電池ユニットに前記バス管理部のコンピュータから順次アドレスが付与され、終端の電池ユニットにアドレスが付与された際に、前記アドレス付与用制御線(GPIO4)がレベル「0」からレベル「1」となることにより、全ての電池ユニットにアドレスが付与されたことを知るように構成されていることを特徴とする可搬型バックアップ電源装置。
【請求項2】
前記複数の電池ユニットの電池残量を検出する回路と、該回路によって検出された電池残量に応じて前記複数の定電流回路の出力電流値を指示する回路とをさらに含んでいることを特徴とする請求項1に記載の可搬型バックアップ電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池ユニットを分割式とした可搬型バックアップ電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
可搬型バックアップ電源装置において、その電池ユニットを分割式とすれば、分割した個々のユニットを小寸法かつ軽量とすることができ、その結果、例えば災害時においても人力で容易に運搬することが可能となる。また、予算に応じて少ない数のユニットを初期導入し、後日、追加して容量を増大することが可能となる。
【0003】
しかしながら、電池ユニットを分割式とすると、電池残量の互いに異なる電池ユニットや、新旧の入り交じった電池ユニット等の不特定の電池ユニットが相互に接続される可能性がある。電池残量の互いに異なる電池ユニットが互いに並列に接続されると、残量の少ない電池ユニットに大電流が流れて発熱や発火の生じるおそれがある。また、新旧の入り交じった電池ユニットが混在していると、電池ユニットの個体識別が困難となり、無償修理保証や事故解析時に不都合が生じる。さらに、何台の電池ユニットが接続されているのか把握できない場合がある。
【0004】
互いに並列接続した複数の電池ユニットのうちの一部の電池ユニットに大電流が流れてしまうことを防止できる蓄電池システムが、特許文献1に開示されている。この蓄電池システムにおいて、複数の蓄電池モジュールは複数のグループに分割され、各グループに属する蓄電池モジュールの電流路は1つに並列結合されて複数のグループ電流路が形成されている。複数のグループ電流路は1つに並列結合されて充放電装置に接続されている。複数のグループ電流路には、遮断器の複数の開閉部がそれぞれ挿入され、これら開閉器は1つが開くと残りも開くように構成されている。これにより、特許文献1に開示の蓄電池システムによれば、蓄電池モジュールの1つのグループに過電流が流れた場合に他のグループの蓄電池モジュールに電流が集中し定格容量オーバーを起こすことを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開WO2014/049655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された蓄電池システムによると、並列接続された複数の蓄電池モジュールのうちの1つに過電流が流れると、全ての蓄電池モジュールが遮断されてしまうため、このようなシステムを、非常時等に電源供給が必須とされるバックアップ電源装置として用いることには大きな問題があった。
【0007】
従って本発明の目的は、バックアップ電源装置として使用可能であり、不特定の電池ユニットが互いに並列接続されている場合にも、その一部の電池ユニットに大電流が流れてしまうことを確実に防止できる可搬型バックアップ電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、可搬型バックアップ電源装置は、互いに並列接続された複数の電池ユニットと、複数の電池ユニットに接続されていると共に充電電流をこれら複数の電池ユニットに供給する充電ユニットと、複数の電池ユニットに接続されていると共にこれら複数の電池ユニットからの放電電流を受け取る放電ユニットと、充電ユニット及び放電ユニットに接続されており、複数の電池ユニットに均等に充電電流を流すと共に複数の電池ユニットから均等に放電電流を流すための均等化回路とを備えている。
【0009】
均等化回路によって、複数の電池ユニットに均等に充電電流が流され、複数の電池ユニットから均等に放電電流が流されるため、電池残量の互いに異なる電池ユニットが接続されている場合にも、その一部の電池ユニットに大電流が流れてしまうことを確実に防止することができる。
【0010】
均等化回路が、複数の電池ユニットから放電ユニット方向への電流のみを流すように、複数の電池ユニット及び前記放電ユニット間に接続された複数のダイオードを含んでいることが好ましい。
【0011】
均等化回路が、充電ユニットから複数の電池ユニット方向への電流のみを流すように、充電ユニット及び複数の電池ユニット間に接続された複数のダイオードを含んでいることも好ましい。
【0012】
また、均等化回路が、複数の電池ユニットに定電流を流すように、充電ユニット及び複数の電池ユニット間に接続されており出力電流値を調整可能な複数の定電流回路を含んでいることも好ましい。
【0013】
この場合、均等化回路が、複数の電池ユニットの電池残量を検出する回路と、この回路によって検出された電池残量に応じて複数の定電流回路の出力電流値を指示する回路とをさらに含んでいることがより好ましい。
【0014】
複数の電池ユニットが充電ユニット及び放電ユニットに接続された後、複数の電池ユニットの各々についてアドレスを付与するアドレス付与回路をさらに備えており、複数の電池ユニットをこのように付与されたアドレスで管理するように構成されていることも好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電池残量の互いに異なる電池ユニットが接続されている場合にも、その一部の電池ユニットに大電流が流れてしまうことを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の可搬型バックアップ電源装置の一実施形態におけるシステム構成を概略的に示すブロック図である。
【
図2】
図1の可搬型バックアップ電源装置における均等化回路の機能を概略的に説明する図である。
【
図3】
図1の可搬型バックアップ電源装置における均等化回路の構成を概略的に説明するブロック図である。
【
図4】本発明の可搬型バックアップ電源装置の他の実施形態におけるシステム構成を概略的に示すブロック図である。
【
図5】
図4の可搬型バックアップ電源装置における均等化回路の機能を概略的に説明する図である。
【
図6】
図4の可搬型バックアップ電源装置における均等化回路の構成を概略的に示すブロック図である。
【
図7】
図4の可搬型バックアップ電源装置における通信バスを用いた通信回路構成の一例を概略的に示すブロック図である。
【
図8】
図7の通信回路構成におけるアドレス付与回路の構成を概略的に示すブロック図である。
【
図9】
図8のアドレス付与回路におけるアドレス付与動作のタイムチャート及びフローを示す図である。
【
図10】充電及び制御ユニット並びに電池ユニット間の通信バスを用いた通信動作のフローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は本発明の可搬型バックアップ電源装置の一実施形態におけるシステム構成を概略的に示しており、
図2はこの可搬型バックアップ電源装置における均等化回路の機能を概略的に説明しており、
図3はこの均等化回路の構成を概略的に示している。
【0018】
図1に示すように、本実施形態の可搬型バックアップ電源装置は、各ユニットが約0.55kWhの容量を有するリチウムイオン電池で構成され、互いに並列接続された電池ユニット10a〜10hと、これら電池ユニット10a〜10hに接続された充電ユニット11及び放電ユニット12とを備えている。同図に示すように、本実施形態では、4つの電池ユニット10a〜10dを互いに積み重ねて配置されており、また、4つの電池ユニット10e〜10hを互いに積み重ねて配置されている。図には示されていないが、積み重ねられた電池ユニット10a〜10dの上にAC100Vの商用電源をAC/DC変換して充電電流を供給する充電ユニット11が載置されており、積み重ねられた電池ユニット10e〜10hの上に電池ユニットの出力をDC/AC変換してAC100Vの放電電流を出力する放電ユニット12が載置されている。
【0019】
充電ユニット11は、商用電源入力端子の他に、DC12V又は24Vの入力端子及び太陽電池出力の入力端子を有していても良い。単なる一例であるが、電池ユニット10a〜10hの各々は幅約320mm、長さ約506mm、高さ約64mm、重量約12.0kgであり、充電ユニット11は幅約320mm、長さ約512mm、高さ約126.5mm、重量約10.5kgであり、放電ユニット12は幅約320mm、長さ約542mm、高さ約126.5mm、重量約12.0kgである。
【0020】
図2及び
図3に示されているように、本実施形態においては、充電ユニット11と電池ユニット10a〜10cとの間にダイオード16a、16c及び16eからなる均等化回路がそれぞれ接続されており、電池ユニット10a〜10cと放電ユニット12との間にダイオード16b、16d及び16fからなる均等化回路がそれぞれ接続されている。
図3に示すように、ダイオード16a、16c及び16eは、充電ユニット11から電池ユニット10a〜10cの方向への電流のみを流すようにその向きが設定されており、ダイオード16b、16d及び16fは電池ユニット10a〜10cから放電ユニット12の方向への電流のみを流すようにその向きが設定されている。このようなダイオードを接続することにより、電池残量に起因して電池ユニット間で大電流が流れることを防止できる。即ち、充電側回路及び放電側回路にこのような向きのダイオードを接続することにより、電池電圧の高い電池ユニット10aから電池電圧の低い電池ユニット10bへ大電流が流れることを防止できる。また、電池残量が小さく電池電圧が低い電池ユニット(電池ユニット10b)の充電電流は大きくなり、電池残量が大きく電池電圧が高い電池ユニット(電池ユニット10a)の充電電流は小さくなる。
【0021】
なお、
図2及び
図3においては、一部の電池ユニット10a〜10cのみが示されているが、その他の電池ユニット10d〜10hにも同様に均等化回路が接続されており、同様の作用効果が得られる。
【0022】
以上詳細に説明したように、本実施形態によれば、充電ユニット11と電池ユニット10a〜10cとの間に均等化回路としてダイオード16a、16c及び16eが充電ユニット11から電池ユニット10a〜10cの方向への電流のみを流すようにその向きが設定されてそれぞれ接続されており、電池ユニット10a〜10cと放電ユニット12との間に均等化回路としてダイオード16b、16d及び16fが電池ユニット10a〜10cから放電ユニット12の方向への電流のみを流すようにその向きが設定されてそれぞれ接続されているため、電池電圧の高い電池ユニットから電池電圧の低い電池ユニットへ大電流が流れることを確実に防止でき、安全性が非常に高まる。
【0023】
図4は本発明の可搬型バックアップ電源装置の他の実施形態におけるシステム構成を概略的に示しており、
図5はこの可搬型バックアップ電源装置における均等化回路の機能を概略的に説明しており、
図6はこの均等化回路の構成を概略的に示している。
【0024】
図4には示されていないが、本実施形態においても、
図1の実施形態の場合と同様の形態で、互いに並列接続された電池ユニット10a〜10hと、これら電池ユニット10a〜10hに接続された充電及び制御ユニット11′並びに放電ユニット12とが設けられている。これら電池ユニット10a〜10h及び放電ユニット12の構成は、以下に説明する均等化回路を除いて、
図1の実施形態の場合と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0025】
本実施形態においては、さらに、外部通信モジュール13が設けられており、これら電池ユニット10a〜10h、充電及び制御ユニット11′、放電ユニット12及び外部通信モジュール13は、給電バス14及びユニット間通信バス15に並列に接続されている。また、例えば燃料電池等からなる新たな電池ユニット10iを追加で接続可能となっている。
【0026】
本実施形態における充電及び制御ユニット11′は、
図1の実施形態における充電ユニット11にバス管理部を設けて構成されており、電池ユニット10a〜10iには、ユニット間通信バス15を介してこのバス管理部と通信する通信用回路がそれぞれ設けられている。後述するように、電池ユニット10a〜10iにはこの可搬型バックアップ電源装置の起動時に実行されるアドレス付与モードにおいて、初めてアドレスが付与されるように構成されている。
【0027】
図4及び
図5に示されているように、本実施形態においては、充電及び制御ユニット11′と電池ユニット10a〜10cとの間に定電流コンバータ56a、56c及び56eからなる均等化回路がそれぞれ接続されており、電池ユニット10a〜10cと放電ユニット12との間にダイオード56b、56d及び56fからなる均等化回路がそれぞれ接続されている。
図5に示すように、定電流コンバータ56a、56c及び56eは、充電及び制御ユニット11′に設けられたコンピュータ57から通信回線58(ユニット間通信バス15)を介して指示された電流値に電池ユニット10a〜10cへの充電電流をそれぞれ制御する。コンピュータ57は、電池ユニット10a〜10cの電池残量を、ユニット間通信バス15を介した通信によって把握しており、その電池残量に応じて電流値を決定し指示する。ダイオード56b、56d及び56fは電池ユニット10a〜10cから放電ユニット12の方向への電流のみを流すようにその向きが設定されている。このような定電流コンバータ及びダイオードを接続することにより、電池残量に起因して電池ユニット間で大電流が流れることを防止できる。即ち、充電側回路に電流値制御される定電流コンバータを接続することにより、電池ユニットの電池残量が互いに等しくなるように制御され、また、電池電圧の高い電池ユニット10aから電池電圧の低い電池ユニット10bへ大電流が流れることを防止できる。また、電池残量が小さく電池電圧が低い電池ユニット(電池ユニット10b)の充電電流は大きくなり、電池残量が大きく電池電圧が高い電池ユニット(電池ユニット10a)の充電電流は小さくなる。さらに、放電側回路に上述のような向きのダイオードを接続することにより、電池電圧の高い電池ユニット10aから電池電圧の低い電池ユニット10bへ大電流が流れることを防止できる。さらにまた、電池残量が小さく電池電圧が低い電池ユニット(電池ユニット10b)の放電電流は小さくなり、電池残量が大きく電池電圧が高い電池ユニット(電池ユニット10a)の放電電流は大きくなる。
【0028】
なお、
図4及び
図5においては、一部の電池ユニット10a〜10cのみが示されているが、その他の電池ユニット10d〜10hにも同様に均等化回路が接続されており、同様の作用効果が得られる。
【0029】
均等化回路として、定電流コンバータを用いることにより、ダイオードを用いた場合の順方向降下電圧(0.5〜1.0V程度)による損失を防ぐことができる。
【0030】
なお、放電側の均等化回路として、電流値制御される定電流コンバータを設けても良いことはもちろんである。
【0031】
図7は本実施形態の可搬型バックアップ電源装置における通信バスを用いた通信回路構成の一例を概略的に示しており、
図8はこの通信回路構成におけるアドレス付与回路の構成を概略的に示しており、
図9はこのアドレス付与回路におけるアドレス付与動作のタイムチャート及びフローを示している。
【0032】
図7に示すバス管理部70は充電及び制御ユニット10′内に設けられており、このバス管理部70と、例えば電池ユニット10aの通信用回路72とはユニット間通信バス15のデータ送受用バス71を介してデータの送受信を行えるように構成されている。バス管理部70には、コンピュータ57の基板70aと、全二重方式のドライバ70bとが設けられており、コンピュータ57は基板70a及びドライバ70bを介してデータ送受用バス71に接続されている。電池ユニット10aの通信用回路72には、全二重方式のドライバ72aと、コンピュータ72bと、電池ユニット10aの電池残量を検出する回路に相当する電池電圧測定部72cと、アドレス付与用のフリップフロップ72dとが設けられている。電池ユニット10bの通信用回路73には、全二重方式のドライバ73aと、コンピュータ73bと、電池ユニット10bの電池電圧測定部73cと、アドレス付与用のフリップフロップ73dとが設けられている。他の電池ユニットにおいても、同様の通信用回路が設けられている。
【0033】
前述したように、本実施形態における電池ユニット10a〜10iはあらかじめ決められた固有アドレスを持っておらず、これら電池ユニット10a〜10iは、給電バス14及びユニット間通信バス15に接続された後、充電及び制御ユニット11′のバス管理部70によってアドレスが付与される。アドレスが付与された後、これら電池ユニット10a〜10iは付与されたアドレスを用いてデータの送受信を行う。また、このアドレス付与により、バス管理部70は、電池ユニットが何台接続されているかも含めて、接続されている電池ユニットを確実に把握することができる。
【0034】
次に、各電池ユニットのアドレス付与動作について説明する。
【0035】
図8に示すように、ユニット間通信バス15のアドレス付与用制御線77は、基板70aのGPIO1〜GPIO4端子に接続されており、このアドレス付与用制御線77には、各電池ユニットのアドレス付与用のフリップフロップ72d〜76dが接続されている。
【0036】
図9(A)に示すように、バス管理部70のコンピュータ57は、GPIO1〜GPIO3端子の電圧を制御して各電池ユニットのアドレス付与用のフリップフロップ(D型フリップフロップ)72d〜76dのQ出力EN1〜EN5を順次レベル「1」として行く。Q出力がレベル「1」となるとその電池ユニットはバス管理部70と通信することが可能となる。例えば、Q出力EN1がレベル「1」となるとその電池ユニット10aの通信用回路72は、基板70aのDI、DO、RO及びR/E端子に接続されている接続データ送受用バス71を使用してバス管理部70と通信することが可能となる。この状態で、バス管理部70からその電池ユニットについてアドレスが付与される。同様にして全ての電池ユニットに対してアドレスが付与され、終端の電池ユニットにアドレスが付与されると、GPIO4端子の制御線がレベル「0」からレベル「1」となるため、バス管理部70は、全ての電池ユニットにアドレスが付与されたことを知ることができ、また、接続されている電池ユニットの数を知ることができる。
【0037】
図9(B)は以上述べたアドレス付与の処理フローを説明している。即ち、電池ユニットnのQ出力ENnがレベル「1」(High)の間にこの電池ユニットnがアドレス付与を請求し、バス管理部70がアドレスを付与し、電池ユニットnがアクノレッジ(ACK)を行うという手順でアドレス付与が行われる。
【0038】
次に、以上のごとくしてアドレスが付与された電池ユニットnとバス管理部70との間の、例えば電池残量、定電流コンバータの設定電流値等のデータの送受信について、
図10を参照して説明する。通信プロトコルとしては、例えば、非同期のスタートストップ方式が用いられる。
【0039】
図10(A)はバス管理部70から電池ユニットnへのデータ送信の処理フローを示している。まず、バス管理部70から電池ユニットnへアドレスnとコマンドとを送付し、電池ユニットnはACKを返す。次いで、バス管理部70から電池ユニットnへmバイトのデータ、例えばその電池ユニットの定電流コンバータの設定電流値データを送付し、電池ユニットnはACKを返す。
【0040】
図10(B)はバス管理部70から電池ユニットnへのデータ請求の処理フローを示している。まず、バス管理部70から電池ユニットnへアドレスnとコマンドとを送付し、電池ユニットnはACKを返す。次いで、電池ユニットnからバス管理部70へmバイトのデータ、例えばその電池ユニットの電池残量データを送付し、バス管理部70はACKを返す。
【0041】
図10(C)は電池ユニットnからバス管理部70へのデータ送信の処理フローを示している。まず、電池ユニットnからバス管理部70へアドレス0と送付データ数とを送付し、バス管理部70はACKを返す。次いで、電池ユニットnからバス管理部70へmバイトのデータ、例えばその電池ユニットの電池残量データを送付し、バス管理部70はACKを返す。その後、電池ユニットnからバス管理部70へ1バイトのチェックサムを送付し、バス管理部70はACK又はNACKを返す。
【0042】
なお、以上の説明では、ユニット間通信バス72のドライバ70b、71aとして全二重方式のドライバを用いているが、これに代えて半二重方式のドライバを用いても良いことは明らかである。
【0043】
以上詳細に説明したように、本実施形態によれば、充電及び制御ユニット11′と電池ユニット10a〜10cとの間に均等化回路として電池残量によって電流値が設定される定電流コンバータ56a、56c及び56eがそれぞれ接続されており、電池ユニット10a〜10cと放電ユニット12との間に均等化回路としてダイオード16b、16d及び16fが電池ユニット10a〜10cから放電ユニット12の方向への電流のみを流すようにその向きが設定されてそれぞれ接続されているため、電池電圧の高い電池ユニットから電池電圧の低い電池ユニットへ大電流が流れることを確実に防止でき、安全性が非常に高まる。さらに、定電流コンバータ56a、56c及び56eにより、充電時は電池残量がそろうように均等化充電される。また、本実施形態によれば、電池ユニットは固有アドレスを有しておらず、接続された後にアドレス付与が行われるため、電池ユニットが何台接続されているかも含めて、接続されている電池ユニットを確実に把握することができる。
【0044】
以上述べた実施形態は全て本発明を例示的に示すものであって限定的に示すものではなく、本発明は他の種々の変形態様及び変更態様で実施することができる。従って本発明の範囲は特許請求の範囲及びその均等範囲によってのみ規定されるものである。
【符号の説明】
【0045】
10a〜10i 電池ユニット
11 充電ユニット
11′ 充電及び制御ユニット
12 放電ユニット
13 外部通信モジュール
14 給電バス
15 ユニット間通信バス
16a〜16f、56b、56d、56f ダイオード
56a〜56c 定電流コンバータ
57、72b、73b コンピュータ
58 通信回線
70 バス管理部
71 データ送受用バス
70a 基板
70b、72a、73a 全二重方式のドライバ
72 通信用回路
72c、73c 電池電圧測定部
72d〜76d フリップフロップ
77 アドレス付与用制御線