(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記再構成部は、前記部分データに対応するシステム行列方程式の重み付けられた内積である第1のコスト関数項と正則化項である第2のコスト関数項とを含むコスト関数を最小化することにより、前記断層画像を再構成する、請求項1に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
前記第1のコスト関数項の前記重み付けられた内積は、重み付け行列の対角線に沿って前記重み付け係数と前記フェザリング係数とを備える前記重み付け行列を有する、請求項2に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
前記第1のコスト関数項の前記重み付けられた内積は、前記重み付け係数および前記フェザリング係数に関する対角行列と、前記部分データの不確定さを表す統計的な重み付け行列との積を備える重み付け行列を有する、請求項2または3に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
前記重み付け係数および前記フェザリング係数は、Taguchi重み付け法、Parker重み付け法、Katsevich重み付け法、およびFeldkamp重み付け法のうち1つの重み付け方法を用いて決定される、請求項1乃至4のうちいずれか一項に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
前記コスト関数は、勾配検索法、アフィン投影法、主双対最適化法、前方後方近接分離法、Douglas−Rachford分離法、乗数の交互方向法、Korpelevich extragradient法、Arrow−Hurwicz法、Nesterov’s smoothing法、およびChambolle−Pock主双対法のうち1つの最適化法を用いて最小化される、請求項2乃至4のうちいずれか一項に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
前記正則化項は、凸集合上の投影正則化項、全変動最小化正則化項、2次正則化項、エッジ保存正則化項、ガウスマルコフ確率場正則化項のうちの1つである、請求項2に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
投影データの収集に伴って取得されたゲート信号に基づいて、前記ゲート信号のうち所定範囲に対応するビュー角の角度範囲に含まれる前記投影データのうちの部分データを特定し、前記角度範囲に基づいて、前記部分データに付与する重み付け係数と、前記角度範囲の端部における前記部分データに付与されるフェザリング係数とを決定する決定部と、
前記重み付け係数と前記フェザリング係数とを用いて前記部分データに対して逐次再構成法を実行することにより、断層画像を再構成する再構成部と、を具備し、
前記決定部は、前記複数のビュー角のうちの第1ビュー角における投影データに付与される第1重み付け係数および第1フェザリング係数とを合成した重みと、前記第1ビュー角と対向する第2ビュー角における投影データに付与される第2重み付け係数および第2フェザリング係数とを合成した重みとの和が一定値となるように、重みを決定する、医用画像処理装置。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ断層撮影(CT)システムおよび方法は広く使用されており、特に医用撮像および診断に対して使用されている。CTシステムは、概して、被験者の体を通る1つまたは複数の断面スライスの画像を作成する。X線源などの放射線源が、体を一方の側から照射する。概してX線源に隣接するコリメータは、X線ビームの角度的な広がりを制限し、したがって、被検体に当たる放射線は、被検体の画像ボリュームを画定するコーンビーム/ファンビーム領域(すなわち、X線投影ボリューム)に実質的に制限される。被検体の反対側にある少なくとも1つの検出器(および一般に多くの複数の検出器)は、実質的に投影ボリューム内の体を通して送られた放射線を受け取る。被検体を通過した放射線の減衰は、検出器により受け取られた電気信号を処理することにより測定される。
【0003】
被検体を通る一連の様々な投影角度で投影測定を行うことにより、1つの軸に沿った検出器アレイの空間次元、および他方の軸に沿った時間/角度次元を備えたサイノグラムが、投影データから構成され得る。平行ビームCTでは、被検体内の特定ボリュームから得られる減衰は、サイノグラムの空間次元に沿って振動する正弦波を描くことになり、その正弦波は、中心がCTシステムに対する回転軸上にある。
【0004】
3次元オブジェクトの2次元測定平面への(または2次元オブジェクトの1次元測定平面への)X線投影測定のプロセスは、数学的にラドン変換として、すなわち、
【0005】
【数1】
として表すことができ、式中、g(X,Y)は検出器アレイに沿った位置の関数としての投影データであり、f(x,y,z)は、位置の関数としてのオブジェクトの減衰であり、またR[ ]はラドン変換である。複数の角度で投影データを測定することにより、画像再構成問題は、投影データの逆ラドン変換を計算することによって表現され得る、すなわち、
【0006】
【数2】
であり、式中、R
−1[ ]は逆ラドン変換であり、またθは投影データが収集された投影角である。実際には、投影データg(X,Y,θ)から画像f(x,y,z)を再構成するためには多くの方法がある。
【0007】
画像再構成問題はしばしば、行列方程式
【数3】
として公式化され、式中、gは、オブジェクトOBJを含むオブジェクト空間を通して送られたX線の投影測定を表し、Aは、オブジェクト空間を通るX線の離散化された線積分(すなわちラドン変換)を記述するシステム行列であり、またfは、オブジェクトOBJの画像である(すなわち、システム行列方程式を解くことにより求められる量)。画像fは、位置の関数としての減衰のマップである。画像再構成は、行列Aの逆行列、または疑似逆行列をとることにより行われ得る。しかし、これが画像を再構成するための最も効率的な方法であることはまれである。より従来的な手法は、フィルタ補正逆投影法(FBP)と呼ばれるものであり、それは、名前と一致して、投影データをフィルタリングし、次いでフィルタ補正された投影データを画像空間へと逆投影することを含み、
【数4】
により表現され、式中、F
Ramp(X,Y)はランプフィルタ(「ランプフィルタ」という名前は、空間周波数領域におけるその形状から生じている)であり、記号*は畳み込みを示しており、またBP[ ]は逆投影関数である。
【0008】
心臓は、他の臓器と異なり、血液の循環を維持するように絶えずポンプ送りしているため、心臓CTは特有の課題を提示する。したがって、心臓のほぼ静止した画像を取り込むために、短時間の分解能でCTを実施する特別な方法が開発されてきた。例えば、マルチスライスCT(最高で320スライス)と組み合わされた1秒未満の回転速度の出現は、高分解能および高速CT撮像を同時に達成できるようにしており、冠状動脈の優れた撮像を可能にしている(心臓CT血管撮影法)。
【0009】
第2の例として、より高い時間分解能を有する画像が、遡及的(retrospective)ECGゲートを用いて形成され得る。この技法では、心臓の各部分は、ECGトレースが記録されている間に複数回撮像される。ECGは、次いで、CTデータを、心収縮のその対応する位相と関係付けるために使用される。この相関が完了した後、心臓が運動中である間(心収縮期)に記録されたすべてのデータが無視され、心臓が休止している間(心拡張期)に収集された残りのデータから画像が作成され得る。このように、心臓CT検査における個々のフレームは、最短の回転時間よりも良好な時間分解能を有し、ハーフスキャン回転時間よりもさらに短くなり得る。
【0010】
ECGゲートのない場合であっても、心臓CTの時間的分解能は、断層撮影画像を再構成するために、完全な回転に対応する投影データを必要としないショートスキャン再構成法を開発することにより支援されてきている。例えば、良好な時間分解能時間は、ハーフスキャン再構成を用いて達成され得るが、それは、180°+2γにわたる投影角のスキャンを使用し、式中、γは、コーンビーム/ファンビームのハーフファン角度である。ハーフスキャンCT再構成のための画像再構成法は、概して、撮像されたオブジェクトを通る投影放射線に対する不均等なデータ冗長性に起因して、フルスキャンCT再構成とは異なる。フルスキャンCT画像再構成は、すべての投影角には等しい重みが与えられる従来のFBPを使用するが、ショートスキャンCT画像再構成は、測定された放射線による画像オブジェクトの不均等なサンプリング、すなわち、不均等なデータ冗長性を補償するために、各投影角を特有の形で重み付けする。再構成プロセスにおける投影データのこの重み付けは、
【数5】
として表現され、式中、w(X,Y,θ)は重み付け関数である。データの冗長性の変動を補償するためには、Dreike−Boyd平行リビニングアルゴリズム、相補的なリビニングアルゴリズム、Parker(パーカー)重みなどの適切な重み付け関数をサイノグラムに適用すること、およびハイブリッド技法を含む様々な手法がある。
【0011】
ショートスキャン再構成と同様に、ECGゲートを用いて断層撮影画像を再構成することはまた、データにおける不均等な冗長性を補償するために、投影データを重み付けすることを含み得る。
【0012】
ショートスキャンおよびECGゲート再構成が、良好な時間分解能において有利であったとしても、ショートスキャンおよびECGゲート再構成の従来の方法はまた、バインディングアーチファクト(banding artifact)、およびコーンビーム再構成で一般に見られる低周波のシェーディングアーチファクト(shading artifact)、ならびに低下した信号対ノイズ比(SNR)など、いくつかのアーチファクトを受ける可能性がある。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示のより完全な理解は、添付の図面と併せて検討したとき、以下の詳細な説明を参照することにより提供される。
【0018】
一実施形態では、(1)複数の検出器で検出された放射線の放射照度を表し、また放射線源の複数の投影角に対応する投影データを取得すること、(2)ゲート信号を取得すること、(3)ゲート信号により示されたゲート投影角に対応するゲートされた投影データとなる投影データのサブセット(部分データ)を選択すること、ゲート投影角に従って重み付けおよびフェザリング係数を決定すること、および(4)正則化項を含む逐次再構成法を用いて、また重み付けおよびフェザリング係数を用いて、ゲートされた投影データから断層撮影画像を再構成することを行うように構成された処理回路を備える画像処理装置が提供される。
【0019】
関連技術の問題を克服するために、重み付けられた投影データを用いる逐次再構成(IR:iterative Reconstruction)の方法が、ゲートされた投影データから断層撮影画像を再構成するために使用され得る。これらの再構成された画像は、改善された信号対ノイズ比(SNR:signal to noise ratio)と、バインディングアーチファクト(banding artifact)の最小化と、低周波のシェーディングアーチファクト(shading artifact)の最小化とを含む、従来の再構成法に対していくつかの改善点を有する。いくつかの実施形態では、方法は、滑らかな遷移関数(例えば、連続的に微分可能な関数など)を用いることにより、ゲートされた投影データとゲートされない投影データとの間の遷移をフェザリングすることを含む。さらにいくつかの実施形態では、方法は、投影データが、サンプリングされたボリューム全体を通して、一様なデータ冗長性を生成するように重み付けされることを含む。さらにいくつかの実施形態では、逐次画像再構成法は、例えば、全変動(TV:total−variation)最小化正則化項とすることのできる正則化項を含むコスト関数を最小化することを含む。
【0020】
次に、同様な参照数字がいくつかの図を通して同一の、または対応する部分を指定する諸図面を参照すると、
図1は、X線コンピュータ断層撮影(CT:computed tomography)装置またはスキャナに含まれるX線撮影ガントリの実装形態を示している。
図1で示すように、X線撮影ガントリ100は、側面から示されており、またX線管101と、環状フレーム102と、多列もしくは2次元アレイタイプのX線検出器103とをさらに含む。X線管101およびX線検出器103は、回転軸RAの周りで回転可能に支持された環状フレーム102上に、オブジェクトOBJを横断して正反対に取り付けられている。回転装置107は、0.4秒/回転などの高速で環状フレーム102を回転させるが、オブジェクトOBJは、示されたページの中または外へと軸RAに沿って長手方向に移動される。
【0021】
X線コンピュータ断層撮影装置は、例えば、X線管およびX線検出器が共に、検査されるべきオブジェクトの周囲を回転する回転/回転タイプ装置、および多くの検出素子が、リングもしくは平面の形に配列され、検査されるべきオブジェクトの周囲をX線管だけが回転する静止/回転タイプ装置など、様々なタイプの装置を含むことに留意されたい。本実施形態は、いずれのタイプにも適用され得る。この場合、現在主流である回転/回転タイプが例示される。
【0022】
マルチスライスX線CT装置は、X線管101がX線を生成するように、スリップリング108を介してX線管101に印加される管電圧を生成する高電圧発生器109をさらに含む。X線は、円で横断面域が表されているオブジェクト(被検体)OBJに向けて放射される。X線検出器103は、オブジェクトOBJを通して送られた放射X線を検出するために、オブジェクトOBJを横断してX線管101とは反対側に位置する。X線検出器103は、個々の検出器素子またはモジュールをさらに含む。
【0023】
CT装置は、X線検出器103から検出された信号を処理するための他のデバイスをさらに含む。データ収集回路、またはデータ収集システム(DAS:Data Acquisition System)104は、各チャネルに対するX線検出器103から出力された信号を電圧信号へと変換し、信号を増幅し、また信号をデジタル信号へとさらに変換する。例えば、データ収集回路は、X線検出器からの出力に基づいて、複数のビュー角に対応する投影データを収集する。X線検出器103およびDAS104は、1回転当りの所定の全投影数(TPPR)を処理するように構成される。TPPRの例は、これだけに限らないが、800TPPR、900TPPR、900〜1800TPPR、および900〜3600TPPRを含む。
【0024】
上記で述べたデータは、非接触データ転送器105を介して、X線撮影ガントリ100の外にあるコンソールに収容された前処理デバイス(前処理部)106に送られる。前処理デバイス106は、生データに対する感度補正など、いくつかの補正を行う。メモリ(記憶部)112は、再構成処理の直前の段階で、投影データとも呼ばれる得られたデータを記憶する。メモリ112は、再構成デバイス(再構成部)114、入力デバイス(入力部)115、およびディスプレイ(表示部)116と共に、データ/制御バス111を介して、システムコントローラ(制御部)110に接続される。システムコントローラ110は、CTシステムを駆動するのに十分なレベルに電流を制限する電流レギュレータ113を制御する。
【0025】
検出器は、CTスキャナシステムの様々な世代の中で、患者に対して回転され、および/または固定される。一実装形態では、上記で述べたCTシステムは、第3世代の幾何学的配置システムと第4世代の幾何学的配置システムとが組み合わされた例とすることができる。第3世代システムでは、X線管101およびX線検出器103は、環状フレーム102上で反対側に取り付けられ、環状フレーム102が回転軸RAの周りで回転されると、オブジェクトOBJの周りで回転される。第4世代の幾何学的配置システムでは、検出器が患者の周りに固定的に配置され、X線管が患者の周りで回転する。代替の実施形態では、X線撮影ガントリ100は、Cアームおよびスタンドにより支持された環状フレーム102上に配置された複数の検出器を有する。
【0026】
メモリ112は、X線検出器ユニット103でX線の放射照度を表す測定値を記憶することができる。さらにメモリ112は、例えば、本明細書で論ずるCT画像再構成法300などを実行する専用のプログラムを記憶することができる。
【0027】
再構成デバイス114は、本明細書で論ずるCT画像再構成法300を実行することができる。さらに再構成デバイス114は、必要に応じてボリュームレンダリング処理および画像差処理などの画像処理である事前の再構成処理を実行することができる。前処理デバイス106により実施される投影データの事前の再構成処理は、検出器の較正、検出器の非線形性、極性効果、ノイズバランシング、および物質分離に対して補正することを含むことができる。再構成デバイス114により実施される再構成後の処理は、必要に応じて、画像のフィルタリングおよび平滑化、ボリュームレンダリング処理、ならびに画像差処理を含むことができる。画像再構成プロセスは、フィルタ補正逆投影法(FBP)、逐次画像再構成法、または確率的画像再構成法を用いて実施され得る。再構成デバイス114は、例えば、投影データ、再構成画像、較正データおよびパラメータ、ならびにコンピュータプログラムなどを記憶するためにメモリ112を使用することができる。
【0028】
再構成デバイス114は、特定用途向けIC(ASIC)、書替え可能ゲートアレイ(FPGA)、または他の結合プログラム可能論理回路(CPLD:Complex Programmable Logic Device)など、ディスクリートの論理ゲートとして実施され得るCPUを含むことができる。FPGAまたはCPLD実装形態は、VHDL、Verilog、または任意の他のハードウェア記述言語でコーディングすることができ、またコードは、FPGAもしくはCPLD内の電子メモリに直接、または別個の電子メモリとして記憶され得る。さらにメモリ112は、ROM、EPROM、またはフラッシュメモリなどの不揮発性のものとすることができる。メモリ112はまた、スタティックもしくはダイナミックRAMなどの揮発性のものとすることができ、またマイクロコントローラもしくはマイクロプロセッサなどのプロセッサは、電子メモリを、ならびにFPGAもしくはCPLDとメモリの間の対話を管理するために提供され得る。
【0029】
代替的に、再構成デバイス114におけるCPUは、本明細書で述べられる機能を実施する1組のコンピュータ可読命令を含むコンピュータプログラムを実行することができ、プログラムは、上記で述べられた非一時的な電子メモリ、および/またはハードディスクドライブ、CD、DVD、フラッシュドライブのいずれか、または任意の他の知られた記憶媒体に記憶される。さらにコンピュータ可読命令は、ユーティリティアプリケーション、バックグラウンドデーモン、もしくはオペレーティングシステムのコンポーネント、またはそれらの組合せとして提供され、当業者に知られたオペレーティングシステムと共に実行される。さらにCPUは、命令を実施するために協動して並列に動作する複数のプロセッサとして実施され得る。
【0030】
一実装形態では、再構成された画像は、ディスプレイ116上で表示され得る。ディスプレイ116は、LCDディスプレイ、CRTディスプレイ、プラズマディスプレイ、OLED、LED、または当業界で知られた任意の他のディスプレイとすることができる。
【0031】
メモリ112は、ハードディスクドライブ、CD−ROMドライブ、DVDドライブ、フラッシュドライブ、RAM、ROM、または当業界で知られた任意の他の電子記憶装置とすることができる。
【0032】
図2Aは、X線管101からX線検出器103への放射線のコーンビーム幾何形状を示している。概して、放射線の投影測定は線積分として、すなわち、
【数6】
【数7】
として表すことができ、式中、f(r)は再構成するオブジェクト、Rはらせん軌道の半径、Hはらせんピッチ(回転当りのテーブル送り)、(β,γ,α)は投影角、放射線角、および円錐角(
図1を参照のこと)をそれぞれ示しており、φ
β,γ,αは、βにおいて、X線焦点s(β)から、円筒形の検出器表面上の点(γ,α)に向けられた単位ベクトルを示しており、ここで、
【数8】
である。
【0033】
β=0で、焦点は、投影β
0においてz=z
0の対象平面内にあり、Tは転置である。
【0034】
図2Bは、撮像されるオブジェクトOBJの周りでX線管のらせん状経路の例を示す。いくつかの実装形態では、オブジェクトOBJは、X線管101およびX線検出器103が、各円形の経路に沿って回転すると、直線的に平行移動されるテーブル上に配置されることになり、したがって、X線管101の経路は、オブジェクトOBJに対するらせん状経路を旋回する。いくつかの実装形態では、投影角βは式
【数9】
により、変数の時間tおよび位置zに関連付けられ、したがって、対象とするスライスz
0に線源があるとき、t=β=0である。
【0035】
図2Bの破線は、撮像されるオブジェクトOBJに対するX線源(例えば、X線管101)のらせん状経路を示している。実線は、ECGゲートシナリオを例示しており、ここにおいて、実線は、
図4で示される心電図ゲート信号から取得され得るものなど、ゲート信号に対応するX線管位置のサブセットを示している。いくつかの実装形態では、ゲートされた投影データは、投影角のすべてに及ばない可能性がある。ゲートされた投影データが投影角のすべてに及ばない場合であっても、再構成画像は、いくつかの事前定義の条件(例えば、後に論ずるTuyの条件)が満たされたとき、ゲートされた投影データから再構成され得る。
【0036】
一実装形態では、投影データは、X線管101およびX線検出器103に対して撮像されるオブジェクトOBJを平行移動させることなく収集される。円形(らせんとは対照的に)の軌道のシナリオは、H=0を設定することにより、解析を簡単化することになる。
図2Aで示された放射線に対する用語は、概して、コーンビームとファンビームとを含むすべてのX線ビームに適用可能である。ファンビーム幾何形状(例えば、X線が、1つの次元で発散し、他の次元では平行になる平行なファンビームなど)では、解析は、α=0に設定することにより簡単化され得る。
【0037】
図3は、ゲート信号に従って、投影データをゲートすることによって断層撮影画像を再構成する方法300の流れ図(フローチャート)を示している。
【0038】
方法(フローチャート)300の第1ステップ310は、ゲートされた投影データを選択することである。
図4は、ECG信号の例を示す。ECG信号の下にある帯が、投影データの2つの完全な回転が収集される時間の例を示している。第1の回転は、0から2πの範囲のものとして示され、また第2の回転は、2πから4πの範囲のものとして示されている。各心拍の期間中に、心拍の一部が、
図4のECG信号の太い部分であるゲート信号として選択される。このゲート信号を用いて、ゲート信号に対応する投影データのサブセット(部分データ)が、ゲートされた投影データとして選択される。
【0039】
前処理デバイス106は、投影データの収集に伴って取得されたゲート信号に基づいて、ゲート信号のうち所定範囲に対応するビュー角の角度範囲に含まれる投影データのうちの部分データを特定(選択)する。ゲート信号は、心電図信号から導出される。投影データは、コーンビームおよび平行ファンビームの一方の放射照度を表している。所定の範囲とは、例えば、R波から所定時間遅延後であって、心臓の動きが小さい時間間隔に対応する心臓の位相である。なお、部分データとの特定(選択)は、制御部110または再構成部114において実行されてもよい。
図2Bは、ヘリカルスキャンに対するゲートされた投影データの他の例を示す。
図2Bでは、X線源の位置は、破線としてオブジェクトOBJに対して示されており、ゲートされた投影データは実線で示されている。
【0040】
各セグメント(すなわち、連続する投影データのサブセット)の幅は、例えば、ECG信号の形状、心拍数、および画像が、心収縮期、心拡張期、または心臓サイクルの他の部分であるかどうかを含む様々な因子に依存する可能性がある。ゲート信号付近で投影角のより狭いサブセットを選択することは、心拍間の変化が最小であると想定すると、再構成画像の時間的な分解能を改善する。
【0041】
他方で、各セグメントの幅を増加させることは、より少ない心拍で、投影角の最小範囲を含めることを可能にする。心拍の期間と、CT装置の回転期間とが異なる場合、その後のCT回転は、前にサンプリングされていないゲート投影角を含むことになる。したがって、各スキャンは、ゲートされた投影データの投影角範囲を増加し、したがって、CT装置の反復されるスキャン/回転は、結果として、投影角の最小の範囲を満たすゲートされた投影データを生ずる。回転数が大きい場合、少なくとも1つのCT回転の間に動くリスクもまた大きくなる。CT回転間に動くリスクを最小化するために、CT回転の数は、小さく維持されるべきである。いくつかの実装形態では、最小の範囲を達成するために必要な回転数は、各ゲート信号に対応する投影角の範囲を増加させることにより減少され得る。しかし、各ゲート信号に対応する投影角の範囲を増加させることはまた、時間的な分解能を減少させる結果となる。
【0042】
方法(フローチャート)300の第2のステップ320では、ゲートされた投影データに対する重み値が決定される。
図5は、
図4で示された3つのゲートされたセグメントに適用され得る重み値の例を示している。
図5で示されたこれらの重み値は、円形スキャン(すなわち、ヘリカルスキャンではない)のためのコーンビームの中心スライスのためのものである。
図5では、1回転が、水平軸に沿って示されている800ビュー(すなわち、1回転当り800投影角)に相当する。水平軸に沿って、ビュー数の下にさらに示されているのは、ラジアンで与えられた投影角βである。第3のセグメントは、第2の回転中に生じ、投影角のモジュロ2πをとることにより、第1および第2のセグメント上に重畳されて描かれている。
【0043】
図5で示されたものなどの重み値を使用することは、各投影角を等しく重み付けすることに対していくつかの利点を有する。ゲートされた投影データのすべてが等しく重み付けされた場合、再構成画像中にいくつかのアーチファクトが現れてくる。これらのアーチファクトは、所定の基準に従って投影データを重み付けすることにより軽減され得る。例えば、各セグメントのエッジ部で、ゲートされた投影データをフェザリングすることにより、バインディングアーチファクトが軽減され得る。フェザリングとは、各セグメントのエッジ部で急に遷移することを、フェザリング領域における
図5で示された滑らかな遷移など、滑らかな遷移で置き換えることを指す。滑らかな遷移は、例えば、連続的に微分可能な関数を含む。
【0044】
前処理デバイス106は、角度範囲に基づいて、部分データに付与する重み付け係数と、角度範囲の端部における部分データに付与されるフェザリング係数とを決定する。なお、前処理デバイス106における上記処理は、制御部110または再構成部114において実行されてもよい。前処理デバイス106は、決定部に相当する。
【0045】
重み付け値の第2の態様は、ゲート信号の統計的な制御できない品質(例えば、心拍数の変動など)から生じた不均一なデータの冗長性に起因して、撮像されたオブジェクトの不均等なサンプリングを補正することである。不均等なデータの冗長性がどのように補正されるかは、重み付け値の対称性で観察され得る。
図6は、
図5で示されたセグメントに対する重み付け値の重畳を示している。これらの重み付け値は、どのビューが、撮像されたオブジェクトOBJのどの部分をサンプリングしているかに従って、重み値が、データ冗長性を釣り合わせることから生ずる対称性を示している。
図7は、この対称性をより明確に示しており、4つの領域(すなわち、領域I、II、III、およびIV)が識別されている。領域Iおよび領域IIが重ね合わされて加算されたとき、2つの領域は、加えられて一定値である1となる(すなわち、領域IIが垂直に反射された場合、それは領域IIIと同一になるはずである)。この対称性は、他の対称的に反対の投影角の過小評価を補償するために、いくつかの投影角の重み付けを増加させることにより、データ冗長性における不均等に対する補正を補償する例である。
【0046】
図5で示された重み付け方式は、唯一の可能な重み付け方式ではない。例えば、不均等なデータ冗長性を補償することは、ショートスキャンFBP再構成法の文脈で論じられることが多い。本明細書に参照によりその全体が組み込まれる米国特許第7,751,524号で論じられるように、また本明細書に参照によりその全体が組み込まれる米国特許第6,907,100号で論じられるように、ショートスキャンのコーンビーム(CB)CTに対する画像再構成は、フルスキャンのCB CTに対するFBP法と同様の方法を用いて実施することができ、その差は、ショートスキャンCTに対する投影データが、投影角に従って重み付けられることである。投影データのこの重み付けは、ショートスキャンデータの不均等なデータ冗長性を補正する。例えば、特にParker重みが、ハーフスキャン(すなわち、180°+2γのスキャン、γはハーフファン角)に対して使用され得る。
【0047】
一実装形態では、Feldkamp法が、CB CT投影データから画像を再構成するために使用される。Feldkamp法は、1組の2次元投影から、3次元密度関数の直接再構成を行うために、畳み込み−逆投影の式が使用される。Feldkampの手法は、古典的な2次元ファンビーム再構成法のヒューリスティックな一般化として導出された。1980年代の初期に、解析的なCB再構成理論におけるいくつかの重要な進展が見られた。進歩は、主として、Tuy、Smithの貢献により、また特にGrangeatの貢献により進められた。
【0048】
3次元CB画像再構成のコンテキストで1つの重要な問題は、どのような状況下で、画像fの正確な再構成が可能であるかということである。この問題へのいくつかの貢献の中で、CBデータの十分性基準に関するTuyの式が、最も関心を得てきている。Tuyの十分性基準は、(x,y,z)を通るほとんどすべての平面が、線源軌道と少なくとも1つの交差点を有する場合であり、その場合に限って、点(x,y,z)において、理論的に正確な、安定したCB再構成が可能であると述べている。
【0049】
Tuyの十分条件を満たすデータからの正確なCB再構成のための数値的なアルゴリズムは、例えば、Grangeatにより開発された修正を用いて、上記で論じたFeldkamp法を直接実施することにより構成され得る。Grangeatの式を収集された各CB投影に適用することは、3次元Radon領域の全体を通して中間的なRadon関数を連続的に提供する。
【0050】
その後の研究は、あらゆるCB投影が、測定された後直ちに処理され得る、実際的なFBP方式に続くCB再構成アルゴリズムを導出することに焦点が置かれた。ClackおよびDefrise、さらにKudoおよびSaitoは共に、様々な線源軌道に対して、このようなFBPタイプのCB再構成アルゴリズムを見出すための方式を示唆した。これらの方式における1つの重要な要素は、重み付け関数であり、それは、検討される線源軌道に適合される必要があり、また所与のCBデータセットから得られた中間的なRadon関数における冗長性を補償する。得られた数値的なCB再構成アルゴリズムは、シフトバリアントなフィルタリングステップと、フィルタされたデータのその後の3次元で重み付けされたCB逆投影とに基づいており、これらのFBP法は、検討されるCBデータが短縮化されておらず、またTuyの十分条件を満たしている限り、正確な再構成を可能にする。さらに、これらの方式を完全な円形の線源軌道に適用することは、Feldkampにより示唆されたものと一致するアルゴリズムを生じ、したがって、そのヒューリスティックに導出された方法をしっかりした理論的なフレームワークへと設定することが示されてきた。
【0051】
CB再構成理論における他の進展は、Katsevichにより達成され、Katsevichは、Tuyの十分条件を満たすCBデータから、理論的に正確な再構成のための画像再構成アルゴリズムを導出する新規の一般的な方式を示唆した。この方式は、所与の線源軌道に対して実際的なアルゴリズムを見出すために、冗長性重み付け関数の適正な定義をさらに必要とする前の段落で述べられたものに関連している。それとは対照的に、Katsevichの方法は、多くの実際に関連するシナリオに対してFBPアルゴリズムの構成を可能にする。これらのFBPアルゴリズムは、特定のフィルタ方向に沿って、シフトインバリアントな1次元畳み込みを行うことにより、データフィルタリングを達成する。したがって、これらのFBPアルゴリズムは、従来のアルゴリズムよりもより効率的であり、一般に、必要なフィルタ方向に応じて、CBデータの切捨てに関してより柔軟性がある。近年、そのいくつかだけを挙げると、らせん形の線源軌道、円プラス弧の軌道、および楕円プラス斜線軌道を含む、様々な魅力的な再構成アルゴリズムが、Katsevichの一般的理論から導出されてきた。
【0052】
概して、上記で論じたショートスキャン再構成および重み付け方式は、
図4を参照して述べられたゲート法と矛盾しないように一般化され得る。このように、ゲートされた投影データの、自然に生ずる不均等なデータ冗長性が補償され、補正され得る。
【0053】
さらに、本明細書にその全体が参照により組み込まれる米国特許出願第11/094468号で論じられるように、Taguchiの重みはまた、データの冗長性を補償し、補正するために使用され得る。例えば、Taguchiは、コーンビームに対して、画像は、式
【数10】
を用いて再構成され得ることを開示しており、式中、β
mおよびγ
mは積分角度に対する制限であり、wn(β,γ,α)は重み値であり、g(β,γ,α)は投影データであり、h(γ−γ’)はフィルタ関数(例えば、ランプフィルタ、Ram−Lakフィルタ、またはShepp−Loganフィルタなど)であり、Rは軌道の半径であり、またL(x,y,β)はβにおける焦点から(x,y)におけるピクセルへの距離を指す。離散化された形態では、上記の積分は、行列方程式
【数11】
として表すことができ、式中、A-1は逆投影行列(Aの前方投影行列の逆である)であり、A
−1はAの逆行列を計算するのではなく、上記の積分を用いて直接計算され得る。再構成された画像の改善された画像品質は、いくつかの条件(例えば、Tuyの十分条件など)が満たされたとき、達成され得る。さらに、コーンビームの再構成に関しては、重み付け値wnが、
【数12】
を満たすべきであり、式中、
【数13】
【数14】
【数15】
【数16】
【数17】
【数18】
である。本明細書で論ずるTaguchi重み付け法は、例としてヘリカルスキャンを使用する。しかし、これは決して限定するものではなく、スキャンモードもしくは軌道の選択は任意である。例えば、Taguchi重み付け法はまた、連続的な円形スキャン(β>2π)を用いて使用され得る。円形スキャンの場合、上式はH=0に設定することにより簡単化され得る。
【0054】
一実施形態によれば、重み値は、各セグメントのエッジにフェザリング技法を適用することにより決定され得る。例えば、投影データのゲートされたセグメントの間隔が均等であり、それぞれが投影角の等しい幅を有する場合(例えば、第1のセグメントは0°から60°の範囲であり、第2のセグメントは120°から180°の範囲であり、また第3のセグメントは240°から300°の範囲である場合)を考える。これらの対称的なセグメントは、パッチ(patches)と呼ばれ得る。フェザリングのいくつかの例は、パッチの非限定的な例を用いて本明細書で論じられる。
【0055】
例えば、各パッチは、滑らかな関数を用いて遷移することができる。時間tで(したがって、投影角βで、ここにおいて、時間tおよび投影角βは、前に述べた関係により関連付けられている)一定の幅を有する、各ゲート点を中心においた時間ウィンドウもしくは「パッチ」を定義する。Npatchを、2β
m内のパッチ数を示すものとする、ここで、2β
mは、画像を再構成するために使用されるデータ範囲であり、またipを、0からNpatch−1のパッチインデックスとする。心臓時間ウィンドウ関数c(ip,β)は、各ip番目のパッチに対して定義され得る。対称な時間ウィンドウ関数は、幅2t
sz(ip)を有するゲート点t
gt(ip)に中心がある。投影角に関して、ゲート点は、β
gt(ip)と定義され、またウィンドウ幅は、2β
sz(ip)である。c(ip,β)の非ゼロ値は、βがパッチipの内側にあることを示している。
【0056】
2次元画像再構成では、以下の条件D−1およびD−2が満たされたとき、β’=mod(β,2π)であるβ’に対して、投影(パッチ)の接続が解除された場合であっても、正確な再構成が、ランプフィルタリングで重み付けられたFBPにより実施され得る。条件(D−1)は、オブジェクトを通るすべての2D放射線の合計が、主放射線または相補的な放射線のいずれかとして少なくとも1回取得されることである。また、条件(D−2)は、重みは、サンプルの冗長性を正規化し、またフィルタリングステップにおける数値的なエラーを回避するように十分滑らかであることである。ここで、主放射線は対象とする放射線であり、相補的な放射線は、xy平面上に投影された経路が、主放射線の経路と一致するものを指す。
【0057】
一実装形態では、心臓時間ウィンドウ関数は、
【数19】
【数20】
として定義することができ、式中、βs(ip)およびβe(ip)は、それぞれ、セグメントipの開始と終了に対応する角度であり、またβ
fはフェザリングの角度範囲である。
【0058】
代替的に、3次元では、
【数21】
を使用することができ、式中、
【数22】
である。さらに、そこで使用されるtriangle(三角形)関数は、例に過ぎないが、例えば、Gaussian(ガウス)関数、trapezoid(台形)関数、または他の関数もまた使用され得る。正規化された重みは、次いで、
【数23】
を用いて計算される。
【0059】
他の実装形態では、trapezoid関数がまた、フェザリングに対して使用され得る。例えば、trapezoid関数は、次のように定義され得る。
【0061】
各パッチの重みおよび幅は、有効範囲(D−1)基準とデータ冗長性(D−2)基準とを満たすように調整され得る。例えば、サイズおよび重みにおける各パッチの「比」は、次いで、
【数25】
および
【数26】
により独立して定義することができ、式中、βwは、それぞれ、β軸に沿ったtrapezoid関数の底部の幅であり、awおよびasは、それぞれ、切断点(またはtrapezoidの平坦な領域の肩部)を定義するパラメータであり、またβ
p(ip)は、焦点スポットが、セグメントipの中心にある投影角である。次いで、スライスの再構成に寄与する複数のパッチのサイズを、wSize(ip)、wSize(ip+1)、wSize(ip+2)、・・・とする。これは、各ゲート点におけるゼロ幅パッチを開始し、上記の比にパッチ拡大増分を調整し、また最小の範囲またはTuyの十分条件が満たされるまで、逐次パッチ拡大を反復することにより達成され得る。
【0062】
コーンビーム幾何形状では、正規化された重み値が、
【数27】
により与えられる。同様に、ファンビーム幾何形状では、正規化された重み値が、
【数28】
により与えられる。
【0063】
上記の論議で分かるように、不均等なデータ冗長性を補償し、補正するための重み付け値を決定するためには多くの方法がある。従来これらの重み付け方式は、FBP再構成法に適用されてきた。当業者であれば、断層撮影画像を再構成するために、多くの異なるフェザリング関数および重み付け値が使用され得ることを認識されよう。概して、フェザリング関数は、投影データのゲートされたセグメントのエッジで滑らかな遷移を提供すべきである。さらに重み付け関数は、ゲートされた投影データに含まれる不均等なデータ冗長性を補償し、釣り合わせるべきである。
【0064】
上述したように、決定部は、重み付け係数およびフェザリング係数を、Taguchiによる重み付け法、Parkerによる重み付け法、Katsevichによる重み付け法、およびFeldkampによる重み付け法のうち1つの重み付け方法を用いて決定してもよい。
【0065】
方法(フローチャート)300の第3のステップ330は、IR法を用いて断層撮影画像を再構成することである。再構成デバイス(再構成部)114は、重み付け係数とフェザリング係数とを用いて部分データに対して逐次再構成法を実行することにより、断層画像を再構成する。一実装形態では、画像再構成問題は、コスト関数最小化問題へと変えることができ、その場合、コスト関数は、
【数29】
として表され、式中、g=Afは、上記で論じたように、CT投影測定に対するシステム行列方程式(第1のコスト関数項)であり、RT(f)は正則化項(第2のコスト関数項)である。すなわち、第1のコスト関数項は、部分データに対応するシステム行列方程式の重み付けられた内積である。例えば、第1のコスト関数項の重み付けられた内積は、重み付け行列の対角線に沿って前記重み付け係数とフェザリング係数とを備える重み付け行列を有する。なお、第1のコスト関数項の重み付けられた内積は、重み付け係数およびフェザリング係数に関する対角行列と、部分データの不確定さを表す統計的な重み付け行列との積を備える重み付け行列を有していてもよい。例えば、正則化項は、凸集合上の投影正則化項、全変動最小化正則化項、2次正則化項、エッジ保存正則化項、ガウスマルコフ確率場正則化項のうちの1つである。
【0066】
【数30】
の記号表示は、x
TWxの形の重み付けられた内積を意味する。正則化項の選択は、撮像問題の詳細の基づくことができる。正則化項は、負吸収制約(例えば、凸集合上の投影(POCS)など)、2次正則化、エッジ保存正則化(例えば、ガウスマルコフ確率場正則化、または全変動(TV)最小化正則化など)のうちの1つとすることができる。
【0067】
コスト関数最小化問題は、コスト関数を最小化する引数(argument)fを解くものとして表現され得る、すなわち、
【数31】
である。一実装形態では、重み行列Wは、各投影データの不確定さを表す統計的な重み付け行列である(例えば、各ピクセルで測定された放射照度の標準偏差)。各ピクセル上のノイズが、他のピクセルおよび投影角と相関がない場合、統計的な重み付け行列は対角線になる。他方で、投影データ中のノイズに相関がある場合、統計的な重み付け行列は、非対角になる。非対角である統計的な重み付け行列は、例えば、非対角の項をゼロに設定することにより、対角化され得る。非対角の統計的な行列を対角行列で置き換えることにより、最適化問題は、最大尤度問題から、最小二乗問題へと変換される。最大事後確率(MAP)ソリューションの良好な画像品質をあきらめる代わりに、最小二乗法の式は、通常、従来の逐次最適化法を使用した場合にMAPの式よりも速く収束することになる。
【0068】
一実装形態では、重み行列Wは、データ冗長性の重み付け値wn(β,γ,α)を表す。例えば、重み行列Wは、対角線に沿った、ゲートされた投影データに対応する各重み付け値wn(β,γ,α)を有する対角行列とすることができる。
【0069】
一実装形態では、重み行列Wは、冗長性の重み付け行列と統計的な重み付け行列との積を表す。
【0070】
コスト関数を最小化するためには多くの方法がある。例えば、コスト関数は、勾配降下法、Levenberg−Marquardt(レベンバーグ−マーカート)法、Nelder−Mead法、ガウス−ニュートン法など、任意の知られた多次元最小化法を用いて最小化され得る。さらにコスト関数は、従来の主双対アルゴリズムのうちの1つを用いて最小化され得る。これらの従来の主双対アルゴリズムは、前方後方近接分離法、Douglas−Rachford分離法、乗数の交互方向法、Korpelevich extragradient法、Arrow−Hurwicz(アローハーヴィッツ)法、Nesterov’s smoothing法、およびChambolle−Pock主双対法を含む。最小化問題はまた、拡張ラグランジュ乗数法を用いて解くこともできる。
【0071】
例えば、再構成部114は、勾配検索法、アフィン投影法、主双対最適化法、前方後方近接分離法、Douglas−Rachford分離法、乗数の交互方向法、Korpelevich extragradient法、Arrow−Hurwicz法、Nesterov’s smoothing法、およびChambolle−Pock主双対法のうち1つの最適化法を用いてコスト関数を最小化することにより、再構成を実行する。
【0072】
方法300の完了ステップ330の後、コスト関数の最小に対応する引数が、再構成された画像である。再構成された画像は、次いで、画像からの情報をユーザに直感的に提示するために、画像処理とボリュームレンダリング法とを用いて後処理される。さらに、再構成された画像は、後で使用するために記憶され得る。
【0073】
図8Aは、Taguchi重み付け値とFBPとを用いて作成された再構成画像の例を示す。再構成画像は、512×512のピクセル格子上に描かれる。
図8Aで画像を再構成するために使用される投影データは、コーンビーム投影に対応し、また
図8Aは、コーンビームの中心スライス(すなわち、320の合計スライス中のスライス番号160)を示している。FBP画像との比較のため、
図8Bは、コーンビームの同じ中心スライスに対応するIR再構成画像を示している。IR画像は、データ忠実度の項とTV正則化項とを含むコスト関数を最小化することにより再構成された。FBP画像と同様に、IR画像を再構成するために、Taguchi重み付け値が使用された。具体的には、データ忠実度の項は、システム行列方程式の重み付けられた内積を含み、対角重み付け行列は、
図8Aで示された画像を計算するのに使用された同じTaguchi重み付け値を含む。
図8Aと
図8Bとを比較することにより分かるように、
図8Bを得るために使用されたIR法は、
図8Aを得るために使用されたFBP法に対していくつかの利点を有する。例えば、ほぼ一定の吸収値を有する比較領域が、
図8Aと
図8Bの両方で、白の四角形の領域として選択されている。この比較領域内では、標準偏差は、各画像に対して計算され、
図8Aでは24.6HUの値に、
図8Bでは8.5HUの値となり、IR法が使用されたとき、ノイズレベルがほぼ3倍低減されることが分かる。
【0074】
図9Aおよび
図9Bは、FBPとIRとをそれぞれ使用して再構成された320スライスのうちの60番目のスライスの再構成画像を示している。
図9Aおよび
図9Bの比較領域内の標準偏差は、それぞれ、36.9および12.9であり、再度、FBP再構成法に対してIR法が、ほぼ3倍のノイズ改善を示している。さらに
図9Aは、コーンビーム再構成画像における中心から離れたスライスで一般に観察される低周波のシェーディングアーチファクトを示している。IR法を使用することはまた、これらの低周波のシェーディングアーチファクトを軽減する。
【0075】
図8A、
図8B、
図9A、および
図9Bは、再構成された3次元画像のXY平面を示している。FBP法に対するIR画像を再構成法の改善を視覚化するためには、XZおよびYZ平面で画像を比較することがさらに役に立つ。
図10Aおよび
図10Bは、それぞれ、FBP法とIR法とを用いて得られたYZ平面画像を示している。これらの図は、512×320のピクセル格子上に描かれている。YZ平面において、FBP画像(すなわち、
図10A)で、低周波のシェーディングアーチファクトが観察できるが、低周波のシェーディングアーチファクトは、IR画像(
図10Bで示された)で著しく低減されている。
【0076】
同様に、
図11Aおよび
図11Bは、XZ平面を示しており、IR法が、FBP画像で観察される低周波のシェーディングアーチファクトとノイズとを克服することを例示している。
【0077】
本明細書の例は、主としてコーンビームCTを対象としている。しかし、この選択は、非限定的なものであり、方法300はまた、例えば、積層/平行ファンビームに対しても適用可能である。さらに、ゲート信号は、ECG信号に限定されず、例えば、心臓または呼吸運動に関連する信号など、任意の信号とすることもできる。
【0078】
いくつかの実装形態が述べられてきたが、これらの実装形態は、例として提示されているに過ぎず、本開示の教示を限定するようには意図されていない。実際に、本明細書で述べられた新規の方法、装置、およびシステムは、様々な他の形態で実施することができ、さらに、本明細書で述べられた方法、装置、およびシステムの形態における様々な除外、置き換え、および変更は、本開示の趣旨から逸脱することなく行われ得る。
【0079】
本実施形態におけるX線コンピュータ断層撮影装置の技術的思想を医用画像処理装置で実現する場合には、例えば
図1の構成図におけるシステムコントローラ110、前処理デバイス106、メモリ112、再構成デバイス114、入力デバイス115、ディスプレイ116等を有する。このとき、投影データおよび部分データは、メモリ112に記憶される。また、本実施形態に係る各機能は、当該処理を実行する医用画像処理プログラムをワークステーション等のコンピュータにインストールし、これらをメモリ上で展開することによっても実現することができる。このとき、コンピュータに当該手法を実行させることのできるプログラムは、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CD−ROM、DVDなど)、半導体メモリなどの記憶媒体に格納して頒布することも可能である。
【0080】
以上述べた実施形態および少なくとも一つの変形等のX線コンピュータ断層撮影装置によれば、セグメント化された投影データを用いて高い時間分解能を有する医用画像を逐次近似的に再構成することができる。
【0081】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。