【0006】
以下、図面を参照しながら本発明の実行可能な実施形態を説明する。
図4には、本発明の1つの実行可能な実施形態による、エンジンに燃料を噴射するための燃料噴射装置、特にディーゼルコモンレール式噴射システムにおける噴射装置が部分的に示されている。該燃料噴射装置は、組み立てられた制御弁及び噴射弁を含み、例えば、それらは、共用の噴射装置ケース8(詳細図示せず)中に組み立てられることができる。本発明の改良は、制御弁に関するため、
図4では制御弁に関連する部分のみを示している。噴射弁は、制御弁の前側(
図1における下側)に組み合わされ、エンジンの方向へ向けられている。制御弁は、開弁状態と閉弁状態との間で切り替えることができる。制御弁の開閉状態により、噴射弁の噴油動作が制御される。
該制御弁は、縦方向に延在する中心軸線Zを含み、且つ、その中に、縦方向に延在する弁孔2及び弁座面3と内周面7により限定される弁座内腔が形成される弁座1を含む。弁孔2の中心軸線は、縦方向中心軸線Zと重なり、且つ、弁孔2は、前端(
図1における下端)が噴射弁の噴射弁腔の中に通じ、後端(
図1における上端)が弁座内腔に開設される。噴射弁腔中に供給された高圧燃料は、弁孔2を介して流入弁座内腔中に流入されることができ、噴射弁腔の部分圧力逃しが実現される。弁座面3は、弁孔2と内周面7との間に位置する。弁座面3と内周面7は、いずれも円錐面であるが、弁座面3はテーパーが内周面7より大きい。
制御弁は、楕円が中心軸線Z回りに回転して形成される楕円体式のプランジャ4をさらに含み、プランジャ4は、弁座内腔中に位置し、座面3に面して、弁座面3と協働して弁孔2の開閉を実現する。弁座面3のテーパーは、プランジャ4のセンタリングを容易にする。該プランジャ4を構成する楕円体は、縦方向中心軸線Zに沿う短半径、及び縦方向中心軸線Zと垂直な横方向中心軸線X、Y方向に沿う長半径(この2つの長半径が等しい)を有することで、縦方向中心軸線Zに垂直に作られた正面図(
図5)及び側面図(
図6)において、同一の楕円形をなし、縦方向中心軸線Zに沿って作られた平面図(
図7)において、円形をなす。
制御弁は、保持ブロック5をさらに含み、この保持ブロック5は、軸方向に沿ってプランジャ4の後ろに位置し、且つ、プランジャ4の第一部分(略後半部)を収容するように、プランジャ4の第一部分の外形に対応する容槽が形成され、プランジャ4の第二部分(略前半部)が露出し弁座面3及び弁孔2に面する。プランジャ4のこの2つの部分は、一体に形成されてもよいし、単独に製作して組み立てられてもよい。
制御弁は、弁座1の後ろに配置される中間リング9及び中間リング9の後ろに配置されるガイド筒10をさらに含む。該ガイド筒10は、軸方向に延在する円筒部10a及び円筒部10aの前端径方向から外に延在するフランジ10bを含み、該フランジ10b中には、軸方向に貫通する複数の貫通孔10cが形成される。
制御弁は、フランジ10bの後ろに配置される組立スリーブ11をさらに含み、この組立スリーブ11は、ねじ山による噛み合わせ或いは他の手段により噴射装置ケース8中に固定される。組立スリーブ11と円筒部10aとの間に円環形空間が形成される。他に、弁座1の前端は、噴射装置ケース8中における相応の段差に押されて当接される。このように、弁座1、中間リング9、ガイド筒10は、組立スリーブ11により軸方向に沿って締め付けられる。
制御弁は、アーマチュアコア12をさらに含み、このアーマチュアコア12の主体は、軸方向に延在する円柱形であり、且つ主体の前端に近い部分に、径方向に突出する環状凸縁12aが形成される又は組み立てられる。アーマチュアコア12の主体は、軸方向に摺動可能な方式で円筒部10aの内孔を通り、環状凸縁12aは、フランジ10bの前に位置し、且つ中間リング9の内部空間中にほぼ位置する。貫通孔10cにより、中間リング9の内部空間と、組立スリーブ11と円筒部10aとの間の円環形空間とが連通され、中間リング9の内部空間がさらに弁座内腔と連通される。
アーマチュアコア12の主体の前端は、保持ブロック5の後端に貼り合わされる。アーマチュアコア12の主体の後端(図示せず)は、円筒部10aの後端から伸びる。圧縮バネ13は、組立スリーブ11と円筒部10aとの間の円環形空間中に設置され、且つ前端がフランジ10bの後端面に押されて当接され、後端が図示しない素子や構造によって、アーマチュアコア12の主体の後端に、軸方向における後ろへの推力を付勢する。
制御弁は、通電時にアーマチュアコア12において軸方向における前への推力を誘導するための図示しない電磁コイルをさらに含む。アーマチュアコア12が
図4に示す前進位置に位置するように、電磁コイルに生じる前への推力が圧縮バネ13に生じる後ろへの推力及び弁孔2中の燃料圧力に打ち勝つことで、保持ブロック5を介して、プランジャ4が弁座面3に押圧されて、弁孔2が密閉され、閉弁状態が実現される。この位置において、環状凸縁12aの後端面とフランジ10bの前端面との間は短い軸方向距離だけ離れている。明瞭に示すために、該軸方向距離は図の中で誇張されているが、実際には、該軸方向距離は非常に小さい。電磁コイルの電源が切断されると、電磁コイルに生じる前への推力が消え、環状凸縁12aの後端面がフランジ10bの前端面と接触するまで、アーマチュアコア12が圧縮バネ13の後ろへの推力及び弁孔2中の燃料圧力の作用により、軸方向に沿って後ろに移動する。プランジャ4も弁孔2中の燃料圧力作用により、アーマチュアコア12とともに軸方向に沿って後ろに移動することで、弁座面3から離れて開弁孔2が開き、開弁状態に達する。
上記で説明した制御弁の各構成素子はほぼ縦方向中心軸線Zをその中心軸線とする。
噴射弁は、その噴射弁腔中に配置される弁針(図示せず)を有し、該弁針の軸方向移動により噴射弁の開閉を制御して、燃料の噴射を実現する。制御弁中の電磁コイルが起動して制御弁が
図4に示す閉弁状態にある場合に、噴射弁腔中に供給された燃料(例えば、コモンレールから)が蓄圧状態にあり、噴射弁腔中の各部分がいずれも高圧に達するまで、噴射弁中の弁針により噴射弁が閉められる。その後、制御弁中の電磁コイルの電源が切断されて、制御弁が開弁状態に達し、これにより、噴射弁腔中の燃料の一部が弁孔2を介して制御弁に流入し、弁針後部の燃料圧力が低下して、弁針の前後両側に圧力差が生じ、該圧力差により、弁針が後ろに移動して噴射弁を開けることが実現され、噴油動作が実現される。弁孔2を介して制御弁に流入した燃料は、弁座内腔、中間リング9の内部空間、貫通孔10c、組立スリーブ11と円筒部10aとの間の円環形空間を順に流れ、そして燃料タンクに戻る。その後、制御弁中の電磁コイルが再び起動して、制御弁が再び閉弁状態に達し、噴射弁中において蓄圧状態に切り替わり、弁針前後両側の圧力が同一になり、この時、弁針は、そのリセット素子の作用により、噴射弁を閉める。その後、次の噴油動作を行うことができる。
上記で説明した例において、電磁コイル及びアーマチュアコア12により、保持ブロック5に作用する前への推力が生じる。これは、プランジャ4が弁座面2に押されて当接され、弁孔2が密閉されるように、他の形式の付勢機構を用いて、保持ブロック5に前への推力を付勢してもよい、と理解できる
また、上記で説明した例において、圧縮バネ13により、アーマチュアコア12をリセットさせて保持ブロック5に付勢した前への推力が解除される。これは、プランジャ4を弁座面3から離れさせて弁孔2が開くように、他の形式のリセット機構を用いて、付勢機構をその元の位置に強制的に後退させてもよい、と理解できる。
なお、アーマチュアコア12と保持ブロック5との間にはオイル膜があり、且つ保持ブロック5が常に弁孔2からの燃料圧力(直接に、又はプランジャ4から保持ブロック5に伝達される)を受けるため、アーマチュアコア12の移動時に、保持ブロック5は常にアーマチュアコア12との貼り付きを保持する。その両者間の正確な位置決めを確保するために、両者間の界面に、形状の合う位置決め構造を設置することもできる。
図8に示すように、本発明のプランジャ4は、縦方向中心軸線Z回りに回転して形成される楕円体であり、且つ保持ブロック5には、プランジャ4の形状に合う、その第一部分を収容するための容槽が設置されるので、プランジャ4は、図の矢印に示すように、保持ブロック5及び弁座1に対して縦方向中心軸線Z回りにゆっくりと回動する能力を有するが、その2本の横方向中心軸線X、Y回りには回動できない。
制御弁が閉弁状態から開弁状態に変化する際に、プランジャ4が軸方向に沿って後ろへ弁座面3を離れることに伴って、弁孔2を介して噴射弁から導入された高圧燃料は噴流の形式でプランジャ4に衝突することになる。該噴流は主に噴流中の気体形態の燃料であり、長期間の使用により、プランジャ4の弁孔2に面する部分が浸蝕してキャビテーション部位6の発生が引き起こされる(
図9参照)。しかしながら、プランジャ4がその横方向中心軸線X、Y回りに回動することができないため、プランジャ4が縦方向中心軸線Z回りに回動しても、該キャビテーション部位6は常に弁孔2に面し、弁座面3に面する位置に達することはできない。このように、たとえプランジャ4にキャビテーション部位6が生じても、弁孔2の密閉不良を引き起こすことはない。また、縦方向中心軸線Z回りの楕円体式のプランジャ4のような、縦方向中心軸線Z回りにしか回動できない能力により、それと弁座面3との間の接触部位は円形を保持するので、制御弁の閉弁状態における密閉を有効に確保でき、制御弁の機能が低下しない。
上記で説明したプランジャ4の例において、楕円体式のプランジャ4と保持ブロック5との間の協働により、プランジャ4のその横方向中心軸線回りに回動する能力が除去される。これは、プランジャ4が、同様な機能を実現するように、他の回転体形式を用いてもよい、と理解できる。
例えば、
図10に示す実行可能な実施形態において、プランジャ4は、保持ブロック5の中に嵌め込まれた半楕円体式の第一部分と保持ブロック5から露出した半円球体形式の第二部分とが組み合わされてなり、この2つの部分は、いずれも縦方向中心軸線Zを回転中心とする。半楕円体式の第一部分と保持ブロック5における合致する容槽との間の協働により、プランジャ4は、縦方向中心軸線Zまわりに回動する能力を有するが、横方向中心軸線まわりに回動する能力は有しない。
図11に示す実行可能な実施形態において、プランジャ4は、保持ブロック5の中に嵌め込まれた円錐台形式の第一部分と保持ブロック5から露出した半球体形式の第二部分とが組み合わされてなり、この2つの部分は、いずれも縦方向中心軸線Zを回転中心とする。円錐台形式の第一部分と保持ブロック5における合致する容槽との間の協働により、プランジャ4は、縦方向中心軸線Zまわりに回動する能力を有するが、横方向中心軸線まわりに回動する能力は有しない。
図12に示す実行可能な実施形態において、プランジャ4は、保持ブロック5の中に嵌め込まれた円柱体形式の第一部分と保持ブロック5から露出した半円球体形式の第二部分とが組み合わされてなり、この2つの部分は、いずれも縦方向中心軸線Zを回転中心とする。円柱体形式の第一部分と保持ブロック5における合致する容槽との間の協働により、プランジャ4は、縦方向中心軸線Zまわりに回動する能力を有するが、横方向中心軸線まわりに回動する能力は有しない。
上記機能を有する第一部分の他の形状(組み合わせた形状も含む)も考えられる。
前記説明した、プランジャ4と保持ブロック5との間の協働(プランジャ4と保持ブロック5との間の協働状態が常に維持されるため、静的協働と称してもよい。)により、プランジャ4の横方向中心軸線まわりに回動する能力を除去する方案の代わりに、プランジャ4と弁座面3との間の協働(プランジャ4と弁座面3との間の協働は制御弁が閉じている時にのみ発生するため、動的協働と称してもよい。)により、プランジャ4の横方向中心軸線まわりに回動する能力を除去することもできる。例えば、
図13に示す実行可能な実施形態において、プランジャ4の保持ブロック5の中に嵌め込まれる第一部分は、半円球体形式であり、保持ブロック5から露出した第二部分の主体は略円柱体であるが、前端周縁(円柱面と平坦な前端面との間の遷移部)に円錐面部4aが形成され、そのテーパーは弁座面3のテーパーと等しく、弁座面3と接触して密封される部位が構成される。制御弁が閉じている時に、保持ブロック5は、電磁コイルのアーマチュアコア12における感応した、軸方向に沿った前への推力をプランジャ4に伝達して、プランジャ4を強制的に弁座面3に押圧し、円錐面部4aと弁座面3との間の協働により、プランジャ4が自動的にセンタリングする。このようにすることで、プランジャ4の、発生する可能性のある横方向中心軸線まわりの如何なる微量な回動も除去されるため、プランジャ4の弁孔2に面する部位は横方向に沿ってずれることがない。
図14に示す実行可能な実施形態において、プランジャ4の保持ブロック5の中に嵌め込まれた第一部分は半円球体形式であり、保持ブロック5から露出した第二部分は略円錐体の形式である。また、弁座面3の、プランジャ4の第二部分に対応する部位のテーパーはプランジャ4の第二部分のテーパーと等しくなるように変更される。このように、プランジャ4の第二部分と弁座面3の対応する部位との間の動的協働により、プランジャ4の自動的なセンタリングが実現されることで、プランジャ4の、発生する可能性のある横方向中心軸線まわりの如何なる微量な回動も除去される。
上記機能を有する第二部分の他の形状(組み合わせた形状も含む)も考えられ、これによって、プランジャ4と弁座面3との間の動的協働によりプランジャ4の横方向中心軸線まわりの回動を防止する種々の方案が設計される。この場合にも、プランジャ4の縦方向中心軸線Zまわりに回動する能力は、依然として、プランジャ4の第一部分と保持ブロック5における合致する容槽との間の協働により実現される。
また、プランジャ4の横方向中心軸線まわりの回動を回避するように、プランジャ4と保持ブロック5との間の静的協働の方案と、プランジャ4と弁座面3との間の動的協働の方案とを組み合わせることができると想定できる。例えば、
図15に示す実行可能な実施形態において、プランジャ4の保持ブロック5の中に嵌め込まれた第一部分は円錐台形式(
図11中のものに類似する)であり、保持ブロック5から露出した第二部分の主体は略円柱体であるが、前端周縁に円錐面部4a(
図13中のものに類似する)が形成される。このようにすることで、プランジャ4の第一部分と保持ブロック5との間の静的協働により、プランジャ4の横方向中心軸線まわりに回動する能力を除去することができ、プランジャ4の第二部分と弁座面3との間の協働により、プランジャ4に自動センタリング機能が付与され、それが横方向中心軸線まわりに回動することをさらに防止することができる。他の、協働を組み合わせた方案も想定される。
以上のことから分かるように、縦方向中心軸線Zを回転中心とする回転体形式のプランジャ4を用いることで、プランジャ4に縦方向中心軸線まわりに回動する能力(これは制御弁の組立及び操作に柔軟性を与える)を有させるが、前記縦方向中心軸線Zを含む縦断面において、プランジャ4は非円形をなし、そして、プランジャ4と保持ブロック5との間の協働(静的協働)及び/又はプランジャ4と弁座面3との間の協働(動的協働)により、プランジャ4が横方向中心軸線まわりに回動することが防止される。このようにすることで、プランジャ4の弁孔2に面する部位は、横方向に沿ってずれなくなるので、弁座面3に面する位置に偏移することがない。たとえプランジャ4の弁孔2に面する部位が浸蝕しても、プランジャ4は常に、閉弁状態にある制御弁の弁孔の密閉を有効に確保することができ、制御弁の機能を確実に長期間維持することができる。これにより、制御弁乃至は燃料噴射装置全体の寿命を延長できる。
ここでは、具体的な実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明の範囲は示された詳細な内容に限られるものではなく、本発明の基本原理から逸脱しない範囲で、これらの詳細な内容に対して種々の変更を行うことができる。