(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記炉内突出部の前記先端側領域は、前記炉内突出部の全長の半分の位置よりも前記先端部側に位置することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のバーナ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1〜3では、上述したようにバーナ本体を冷却管で取り囲むことにより、燃焼炉の運転時の熱負荷からバーナ装置の炉内突出部を保護している。しかしながら、運転時において炉内は非常に高温となるため、炉内の火炎による輻射や熱気流、炉内で生じる溶融スラグなどによって炉内突出部に設けられた冷却管が次第に減耗し、冷却管の内部を流通する冷却媒体が炉内に漏出する場合がある。そして、冷却管から炉内に漏出する冷却媒体の漏出量が多くなると、冷却管あるいはバーナ装置等の交換のために燃焼炉を停止せざるを得ず、燃焼炉(プラント)の稼働率を低下させてしまう。
【0007】
そこで、燃焼炉の稼働率の低下をできるだけ抑制するために、冷却管における冷却媒体の流通量を絞る(減らす)ことにより、冷却媒体の炉内への漏出量の低減を図ることも本発明者らには考えられた。この手法によれば、燃焼炉の運転の停止を即座に行わずに先延ばしすることができるので、先延ばししている間に、交換品等の手配などといったメンテナンス作業の準備を行うことができる。このため、実際のメンテナンス作業に必要な時間のみ燃焼炉を停止すれば良いので、運転の停止時間の短縮により稼働率の低下を抑制することはできるが、減耗した冷却管のみならず、バーナ本体といったバーナ装置全体の損傷を引き起こす可能性がある。
【0008】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、バーナ本体の損傷を回避しつつ、バーナ装置のメンテナンスによる燃焼炉の稼働率の低下を抑制可能なバーナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係るバーナ装置は、
燃焼炉の炉壁から炉内に突出される炉内突出部を有するバーナ本体と、
前記炉内突出部の外周面の先端部を含む先端側領域を取り囲むように設けられた、前記バーナ本体を冷却するための冷却媒体が流通する先端側冷却管と、
前記炉内突出部の外周面の基端部と前記先端側領域との間の基端側領域を取り囲むように設けられた、前記冷却媒体が流通する基端側冷却管と、
前記先端側冷却管に前記冷却媒体を供給するための第1冷却媒体供給管と、
前記基端側冷却管に前記冷却媒体を供給するための第2冷却媒体供給管と、を備える。
【0010】
燃焼炉の運転時には、炉内の火炎による輻射や熱気流、炉内で生じる溶融スラグなどによって冷却管が減耗し、穴があくなどして破損する結果、冷却管から冷却媒体が炉内に漏出する場合があるところ、本発明者らによって、炉内突出部の先端側領域を取り囲む冷却管に破損(穴)が生じやすいことが見出された。
上記(1)の構成によれば、バーナ本体の炉内突出部には、その先端側領域を冷却するための冷却系統(先端側冷却管および第1冷却媒体供給管)、および、基端側領域を冷却するための冷却系統(基端側冷却管および第2冷却媒体供給管)の2つの冷却系統が設けられている。このように、バーナ本体の炉内突出部に2以上の複数の冷却系統を設けることによって、複数の冷却系統の各々を構成する複数の冷却管の各々における冷却媒体の流通状態(流通実行状態、流通停止状態)を、それぞれ独立に制御することが可能である。
【0011】
よって、例えば、炉内状況の情報などに基づいて冷却管からの冷却媒体の漏出が判定された場合には、破損の可能性の高い先端側冷却管への冷却媒体の供給のみを停止することによって炉内への冷却媒体の漏出の停止を図りつつ、基端側冷却管によるバーナ本体の冷却を継続することができる。換言すれば、基端側冷却管による冷却によってバーナ本体の焼損を回避することにより、燃焼炉の運転の停止を即座に行わずに先延ばしすることができる。さらに、燃焼炉の運転の停止を先延ばししている間にメンテナンス作業の準備をすることにより、その分だけ燃焼炉の停止時間を短縮することが可能となる。このように燃焼炉の停止時間を短縮することによって、上述したようにバーナ本体の損傷を回避しつつ、バーナ装置のメンテナンスによる燃焼炉の稼働率の低下を抑制することができる。
【0012】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記基端側冷却管は、前記炉内突出部の外周面に巻回されている。
上記(2)の構成によれば、基端側冷却管を炉内突出部の外周面に巻回させることにより、基端側冷却管をバーナ本体に設置することができる。
【0013】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記基端側冷却管は、前記冷却媒体が流通するための、前記基端側領域を覆う円筒状の流路を形成する。
上記(3)の構成によれば、基端側領域を覆う円筒状の流路として基端側冷却管を形成することで、基端側冷却管をバーナ本体に設置することができる。
【0014】
(4)幾つかの実施形態では、上記(3)の構成において、
前記第1冷却媒体供給管は、前記基端側冷却管により形成される前記流路の内部に設置される。
上記(4)の構成によれば、第1冷却媒体供給管を基端側冷却管の外部に設置するよりも、バーナ装置をコンパクト化することができる。
【0015】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(4)の構成において、
前記燃焼炉の炉壁は、炉外側に向かって曲成されることによって前記炉外に向かって窪むよう形成された窪み部を有し、
前記炉内突出部は、前記窪み部の底部から突出されている。
上記(5)の構成によれば、燃焼炉の炉壁の窪み部から炉内突出部が突出することにより、窪み部による炉内突出部の主に基端側領域の保護を図ることができる。また、冷却管の減耗箇所を先端側領域により絞るように図ることができる。
【0016】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(5)の構成において、
前記炉内突出部の前記先端側領域は、前記炉内突出部の全長の半分の位置よりも前記先端部側に位置する。
上記(6)の構成によれば、減耗による破損(穴)が生じやすい領域に先端側冷却管を確実に配置することができると共に、減耗がしにくい領域に基端側冷却管を確実に配置することができる。
【0017】
(7)本発明の少なくとも一実施形態に係るバーナ装置の冷却媒体制御方法は、
上記(1)〜(6)のいずれか1項に記載のバーナ装置に対する冷却媒体の供給を制御するバーナ装置の冷却媒体制御方法であって、
前記第1冷却媒体供給管から前記先端側冷却管に前記冷却媒体を供給する先端側領域冷却ステップと、
前記第2冷却媒体供給管から前記基端側冷却管に前記冷却媒体を供給する基端側領域冷却ステップと、
前記先端側冷却管あるいは前記基端側冷却管の少なくとも一方からの前記冷却媒体の漏出を判定する冷却媒体漏出判定ステップと、
前記冷却媒体漏出判定ステップによって前記冷却媒体の漏出を検出した場合に、前記先端側冷却管への前記冷却媒体の供給のみ停止する先端側領域冷却停止ステップと、を備える。
【0018】
上記(7)の構成によれば、冷却管(先端側冷却管あるいは基端側冷却管)から炉内への冷却媒体の漏出が判定された場合には、本発明者らによって炉内突出部の先端側領域を取り囲む冷却管に破損(穴)が生じやすいことが見出されたため、先端側冷却管への冷却媒体の供給のみが停止される。これによって、燃焼炉の炉内への冷却媒体の漏出の停止を図りつつ、基端側冷却管によるバーナ本体の冷却を継続することができる。これによって、基端側冷却管による冷却によってバーナ本体の焼損を回避することにより、燃焼炉の運転の停止を即座に行わずに先延ばしすることができる。さらに、この燃焼炉の運転停止を先延ばししている間にメンテナンス作業の準備をすることにより、その分だけ燃焼炉の停止時間を短縮することが可能となる。このように燃焼炉の停止時間を短縮することによって、上述したようにバーナ本体の損傷を回避しつつ、バーナ装置のメンテナンスによる燃焼炉の稼働率の低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、バーナ本体の損傷を回避しつつ、バーナ装置のメンテナンスによる燃焼炉の稼働率の低下を抑制可能なバーナ装置が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係るバーナ装置1を備える燃焼炉7の断面概略図である。
図1に示される燃焼炉7は石炭をガスに転換するガス化炉となっている。
図1に示される実施形態のガス化炉は、
図1に示されるように、コンバスタ部7cとリダクタ部7rを有している。コンバスタ部7cには、微粉炭バーナ12及びチャーバーナ14が設けられ、リダクタ部7rにはガス化バーナ16が設けられている。微粉炭バーナ12には、炭素含有燃料として微粉状にされた石炭(微粉炭)を供給する微粉炭供給経路81と、酸化剤としての酸素含有ガス(例えば空気)を供給する酸化剤供給経路82とが接続される。また、チャーバーナ14にはチャー(未燃粒子)を供給するチャー供給流路83が接続される。ガス化バーナ16には、上述した微粉炭供給経路81が接続される。
【0023】
そして、ガス化炉の運転時において、コンバスタ部7cに投入された空気と石炭が燃焼して例えば1800℃などの高温となり、石炭中の灰は溶けて溶融スラグ(液相)となって流れ落ち、コンバスタ部7cで燃焼して生成した高温の可燃性ガスは上昇する。この高温の可燃性ガスは、リダクタ部7rにおいて新たに投入された石炭と反応し、これによって、効率良く石炭をガスに転換することが可能となっている。なお、溶融スラグは、燃焼炉7の炉壁71の内面を伝って排出口72から排出される。排出口72から排出された溶融スラグは、燃焼炉7の底部に貯留された水と接触して水砕スラグとなり、炉外に排出される。
【0024】
次に、本発明の一実施形態に係るバーナ装置1について、
図2A〜
図4Dを用いて説明する。
図2Aは、
図1の燃焼炉7におけるバーナ装置1の設置位置を拡大した概略図であり、バーナ装置は窪み部73から突出している。
図2Bは、
図2Aを矢印Aの方向から見た図である。
図3は、本発明の一実施形態に係るバーナ装置1の設置位置を拡大した概略図であり、バーナ装置1は窪み部73ではない炉壁71から突出している。
図4Aは、本発明の一実施形態に係るバーナ装置1の設置位置を拡大した概略図であり、冷却管3は円筒状の流路を形成している。
図4Bは、
図4Aを矢印Aの方向から見た図である。
図4Cは、
図4Aのaa断面を示す図である。また、
図4Dは、
図4Aのbb断面を示す図である。
【0025】
図2A〜
図4Dに示されるように、バーナ装置1は、燃焼炉7の炉壁71に形成された開口部を貫通するようにして設置される装置であり、バーナ本体2と、先端側冷却管31および基端側冷却管32を含む冷却管3と、第1冷却媒体供給管41および第2冷却媒体供給管42を含む冷却媒体供給管4と、を備える。
以下、バーナ装置1が備える上記の各々を説明する。なお、以下の説明では、上述した微粉炭バーナ12を例としてバーナ装置1を説明するが、他の幾つかの実施形態では、バーナ装置1は、冷却管3を備えるものであれば、燃焼炉7に用いられる微粉炭バーナ12やチャーバーナ14、ガス化バーナ16などのバーナであっても良い。
【0026】
バーナ本体2は、燃焼炉7の炉壁71に形成された開口部を貫通して設置される部分であり、バーナ本体2が前述の開口部に設置された際に、燃焼炉7の炉壁71から炉内に突出する部分となる炉内突出部22を有する(
図2A、
図3、
図4A参照)。つまり、炉内突出部22は、バーナ本体2における、燃焼炉7の炉壁71の位置(根元)を含む基端部22bから先端部22tまでの部分となる。また、炉内突出部22の外周面は、後述するように、突出する方向の先端側と基端側との間で先端側領域R1および基端側領域R2に分けられる。そして、炉内突出部22は燃焼炉7の炉内に位置することから、燃焼炉7の運転時には、炉内の火炎による輻射や熱気流に晒されるだけでなく、溶融スラグの付着、剥離等により大きな熱負荷を受ける。このため、後述する冷却管3によって冷却されるようになっている。なお、
図2A〜
図4Dに示される実施形態では、燃焼炉7の炉外側には、開口部を覆うように耐火材(例えばアルミナ、SiC)が充填されたシールボックス(不図示)が設けられており、開口部において炉壁71とバーナ装置1との隙間が耐火材75で埋められている。
【0027】
また、
図2A〜
図4Dに示される実施形態では、バーナ本体2は円筒状の形状を有している。また、
図2A〜
図4Dに示されるように、円筒状のバーナ本体2の内部には、その中心部分に円筒状の形状を有する燃料供給管部26が設けられている。そして、円筒状の燃料供給管部26の内部によって燃料供給路24が形成されており、燃料供給路24は、上述した微粉炭供給経路81に連通されることにより、微粉炭が通過するよう構成されている。また、バーナ本体2の内部においては、円筒状の外壁から離間するように円筒状の燃料供給管部26が設けられることによって、円筒状の燃料供給管部26の管壁と円筒状のバーナ本体2の外壁との間に、酸化剤供給路25となる円筒状の空間を形成している。そして、酸化剤供給路25は、上述した酸化剤供給経路82に連通しており、酸素含有ガスが通過するよう構成されている。
【0028】
冷却管3は、バーナ本体2を冷却するための冷却媒体Wが流通するよう構成されており、バーナ本体2を冷却するために、バーナ本体2(炉内突出部22)に接触した状態で設けられる。また、
図2A〜
図4Dに示されるように、冷却管3は、炉内突出部22の外周面の先端部22tを含む先端側領域R1を取り囲むように設けられた先端側冷却管31と、炉内突出部22の外周面の基端部22bと先端側領域R1との間の基端側領域R2を取り囲むように設けられた基端側冷却管32の2つの管からなっている。先端側冷却管31および基端側冷却管32は互いに独立した異なる管となっており、互いに独立した冷却系統で冷却媒体Wを流通させるよう構成される。つまり、先端側冷却管31および基端側冷却管32の各々は、冷却媒体Wの入口および出口をそれぞれ有しており、例えば、先端側冷却管31の出口31eと基端側冷却管32の入口32iとが直接連結されていないし、基端側冷却管32の出口32eと先端側冷却管31の入口31iとが直接連結されてもいない。なお、
図2A〜
図4Dに示される実施形態では、基端側冷却管32は、炉内突出部22の基端側領域R2のみならず、燃焼炉7の炉壁71の開口部に位置するバーナ本体2の部分も共に取り囲むように構成されている。
【0029】
また、上述した先端側領域R1は、後述するように、燃焼炉7の運転時の熱負荷によって破損が特に生じやすい冷却管3の部分領域を含む領域であり、基端側領域R2は、先端側領域R1を除いた部分から構成される領域となる。幾つかの実施形態では、炉内突出部22の先端側領域R1は、炉内突出部22の全長(
図2A、
図3、
図4Aにおいて、R1とR2で示される長さを足した長さに相当する長さ)の半分の位置よりも先端部22t側に位置する。上記の構成によれば、減耗による破損(穴)が生じやすい領域に先端側冷却管31を確実に配置することができると共に、減耗がしにくい領域に基端側冷却管32を確実に配置することができる。また、幾つかの実施形態では、先端側冷却管31および基端側冷却管32は同じ材料で形成されていても良いし、他の幾つかの実施形態では、減耗の特に生じやすい先端側冷却管31を基端側冷却管32よりも耐摩耗性や耐熱性に優れた材料で形成しても良い。
【0030】
冷却媒体供給管4は、冷却管3に冷却媒体Wを供給するための流路を形成する管状の部材であり、冷却管3に接続されるよう構成される。より詳細には、第1冷却媒体供給管41は、先端側冷却管31に冷却媒体Wを供給するための冷却媒体供給管4であり、先端側冷却管31に接続されることにより、その入口31i側から先端側冷却管31に冷却媒体Wを供給するよう構成される。そして、先端側冷却管31に供給された冷却媒体Wは、先端側冷却管31を通過した後に、その出口31eに接続される第1冷却媒体排出管51を通って、例えば炉外に排出される。
他方、第2冷却媒体供給管42は、基端側冷却管32に冷却媒体Wを供給するための冷却媒体供給管4であり、基端側冷却管32に接続されることにより、その入口32i側から基端側冷却管32に冷却媒体Wを供給するよう構成される。そして、基端側冷却管32に供給された冷却媒体Wは、基端側冷却管32を通過した後に、その出口32eに接続される第2冷却媒体排出管52を通って、例えば炉外に排出される。このように、炉内突出部22の先端部22t側から基端部22b側に向けて冷却媒体Wを流通させることで、より低温の冷却媒体Wによる先端部22t側の効率的な冷却を図っている。ただし、この実施形態には限定されず、他の幾つかの実施形態では、炉内突出部22の基端部22b側から先端部22t側に向けて冷却媒体Wを流通させても良い。
【0031】
図2A〜
図4Dに示される実施形態では、第1冷却媒体供給管41および第2冷却媒体供給管42への冷却媒体Wの供給は、冷却媒体供給装置9を用いて行われている。冷却媒体供給装置9は、例えば燃焼炉7の炉外などに設置された貯水タンク91からポンプ92などを用いて冷却媒体Wを供給するように構成されていても良い。また、
図2A〜
図4Dに示される実施形態では、第1冷却媒体排出管51および第2冷却媒体排出管52を用いて冷却管3から排出された冷却媒体Wは、冷却後に、再度、第1冷却媒体供給管41および第2冷却媒体供給管42にそれぞれ供給されることで、冷却媒体Wを循環させるシステムとなっている。この際、
図2A、
図3、
図4Aに示されるように、第1冷却媒体排出管51から先端側冷却管31に循環される流路と、第2冷却媒体排出管52からから先端側冷却管31に循環される流路とが、それぞれ個別のライン(管)によって形成されても良い。あるいは、他の幾つかの実施形態では、共通化された循環流路の、例えば貯水タンク91の上流側やポンプ92の上流側などの適切な位置に設けられた分岐部から、第1冷却媒体供給管41および第2冷却媒体供給管42に分岐するように構成されていても良い。また、
図2A〜
図4Dに示される実施形態では、2系統の冷却系統を有しているが、1以上の冷却系統が、先端側領域R1および基端側領域R2の少なくとも一方に設けられることで、バーナ装置1は、3以上の複数の冷却系統を有していても良い。
【0032】
すなわち、
図2A〜
図4Dに示される実施形態では、バーナ本体2の炉内突出部22には、その先端側領域R1を冷却するための冷却系統(先端側冷却管31および第1冷却媒体供給管41)、および、基端側領域R2を冷却するための冷却系統(基端側冷却管32および第2冷却媒体供給管42)の2つの冷却系統が設けられている。このように、バーナ本体2の炉内突出部22に2以上の複数の冷却系統を設けることによって、複数の冷却系統の各々を構成する複数の冷却管3の各々における冷却媒体Wの流通状態(流通状態、流通停止状態)を、それぞれ独立に制御することが可能となっている。
【0033】
このようにバーナ装置1を構成したのは、炉内突出部22に設けられた冷却管3は、炉内突出部22が燃焼炉7の炉内に位置することから、炉内の火炎による輻射や熱気流、炉内で生じる溶融スラグなどによって減耗し、穴があくなどして破損する結果、冷却管3を流通する冷却媒体Wが炉内に漏出する場合があるところ、本発明者らによって、炉内突出部22の先端側領域R1を取り囲む冷却管3に破損(穴)が生じやすいことが見出されたことによる。
【0034】
そして、上記の構成によれば、炉内突出部22の冷却管3は先端側領域R1と基端側領域R2との各々に別系統で設けられているので、例えば、炉内状況の情報などに基づいて冷却管3からの冷却媒体Wの漏出が判定された場合には、破損の可能性の高い先端側冷却管31への冷却媒体Wの供給のみを停止することが可能である。つまり、この場合には、破損の可能性の高い先端側冷却管31への冷却媒体Wの供給を停止することにより炉内への冷却媒体Wの漏出の停止を図りつつ、基端側冷却管32によるバーナ本体2の冷却を継続することができる。換言すれば、基端側冷却管32による冷却によってバーナ本体2の焼損を回避することにより、燃焼炉7の運転の停止を即座に行わずに先延ばしすることができる。さらに、燃焼炉7の運転の停止を先延ばししている間にメンテナンス作業の準備をすることにより、その分だけ燃焼炉7の停止時間を短縮することが可能となる。このように燃焼炉の停止時間を短縮することによって、上述したようにバーナ本体2の損傷を回避しつつ、バーナ装置1のメンテナンスによる燃焼炉7の稼働率の低下を抑制することができる。
【0035】
また、幾つかの実施形態では、
図2A〜
図2Bに示されるように、燃焼炉7の炉壁71は、炉外側に向かって曲成されることによって炉外に向かって窪むよう形成された窪み部73を有している。そして、炉内突出部22は、窪み部73の底部73bから突出されている。このように、燃焼炉7の炉壁71の窪み部73から炉内突出部22が突出することにより、窪み部73による炉内突出部22の主に基端側領域R2の保護を図ることができる。また、冷却管3の減耗箇所を先端側領域R1により絞るように図ることができる。
他の幾つかの実施形態では、
図3に示されるように、燃焼炉7の炉壁71は上述した窪み部73は形成されておらず、炉内突出部22は、重力の方向に沿って平坦状に形成された炉壁71から突出されていても良い。
【0036】
次に、冷却管3の構造に関する幾つかの実施形態について、説明する。
幾つかの実施形態では、
図2A〜
図3に示されるように、基端側冷却管32は、炉内突出部22の外周面に巻回されている。換言すれば、管状の基端側冷却管32が、炉内突出部22の基端側領域R2において螺旋状に複数回巻き回されている。一方、先端側冷却管31は、
図2A〜
図3に示される実施形態では、管状の基端側冷却管32が一周分だけ巻かれることによって先端側領域R1をカバーしている。ただし、本実施形態に限定されず、他の幾つかの実施形態では、先端側冷却管31が複数回巻かれることによって先端側領域R1をカバーしても良い。このように、基端側冷却管32を炉内突出部22の外周面に巻回させることにより、基端側冷却管32をバーナ本体2に設置することができる。
【0037】
また、他の幾つかの実施形態では、
図4A〜
図4Dに示されるように、基端側冷却管32は、冷却媒体Wが流通するための、基端側領域R2を覆う円筒状の流路を形成する。詳述すると、バーナ装置1は、バーナ本体2の外周面を取り囲む(覆う)ように設けられた円筒状の形状を有する外周管46を、さらに備えている。そして、外周管46によって炉内突出部22が取り囲まれることによって、バーナ本体2の外壁と外周管46との間に円筒状の空間が形成されている(
図4A、
図4C、
図4D参照)。さらに、この、バーナ本体2と外周管46とにより形成された上記の円筒状の空間は、円筒状の形状を有する内部壁33によって、バーナ本体2側の円筒状の内側空間と、その外周側に位置する円筒状の外側空間とに分割されている。また、バーナ本体2の外壁と上記の内部壁33との間に形成された円筒状の内側空間と、内部壁33と外周管46との間に形成された円筒状の外側空間は、炉内突出部22の先端側領域R1と基端側領域R2との境界において領域境界隔壁47で閉じられると共に、領域境界隔壁47に沿ってその基端部22b側に形成された連通路48によって互いに連通されている。そして、上述のようにして形成された円筒状の内側空間に、第2冷却媒体供給管42から冷却媒体Wが供給されるように構成される。
【0038】
すなわち、炉内突出部22の外周面の基端側領域R2と、その外周側に位置する上記の内部壁33と、領域境界隔壁47とによって、炉内突出部22の外周面の基端側領域R2を取り囲む基端側冷却管32が形成されている。このように、基端側領域R2を覆う円筒状の流路として基端側冷却管32を形成することで、基端側冷却管32をバーナ本体2に設置することができる。また、上記の内部壁33と、その外周側に位置する外周管46と、領域境界隔壁47とによって、第2冷却媒体排出管52が形成されている。このため、
図4Aに示されるように、第2冷却媒体供給管42から供給された冷却媒体Wは、炉内突出部22の基端側領域R2を取り囲む基端側冷却管32によって形成された円筒状の流路を、基端部22b側から先端部22t側に向けて流れる。その後、連通路48通って、この基端側冷却管32の外側に沿って形成された第2冷却媒体排出管52に流入し、先端部22tの側から基端部22bの側に向かって第2冷却媒体排出管52を流れる。
【0039】
一方、
図4A〜
図4Dに示される実施形態では、炉内突出部22の外周側に位置する上述した外周管46は、上記の領域境界隔壁47を越えて炉内突出部22の先端部22tまで伸びており、外周管46の先端と炉内突出部22の先端部22tとは、円筒状の炉内突出部22の径方向に延在する封止壁49によって連結されることで、閉じられている。すなわち、炉内突出部22の外周面の先端側領域R1と、その外周側に位置する外周管46と、領域境界隔壁47と、封止壁49とによって、先端側領域R1を取り囲む環状の先端側冷却管31が形成されている(
図4A〜
図4B参照)。
【0040】
また、
図4Cに示されるように、環状に形成された先端側冷却管31の内部は、隔壁31sによって内部が分割されている。このため、第1冷却媒体供給管41を介して入口31iから流入した冷却媒体Wは、先端側冷却管31の内部において、この隔壁31sを迂回するように流れることで、出口31eに向かう。
図4A〜
図4Dに示される実施形態では、
図4Cに示されるように、先端側冷却管31の入口31iと出口31eとは隔壁31sを挟んで隣接するように設けられているため、冷却媒体Wは、炉内突出部22の外周を一周するようにして、先端側冷却管31を入口31iから出口31eに流れる。
【0041】
そして、
図4A、
図4C〜
図4Dに示されるように、第1冷却媒体供給管41は、基端側冷却管32により形成される流路の内部に設置されている。つまり、第1冷却媒体供給管41は、基端側冷却管32の内部において、炉内突出部22の基端部22b側から先端部22t側まで延在しており、先端部22t側の端部において先端側冷却管31に接続している。また、第1冷却媒体排出管51も、基端側冷却管32により形成される流路の内部に設置されている。これによって、第1冷却媒体供給管41や第1冷却媒体排出管51を基端側冷却管32の外部に設置するよりも、バーナ装置1をコンパクト化することができる。
【0042】
以上、本発明の幾つかの実施形態に係るバーナ装置1について説明した。次に、上述した構成を備えるバーナ装置1の冷却管3(先端側冷却管31および基端側冷却管32)に対する冷却媒体Wの供給を制御するバーナ装置の冷却媒体制御方法について、
図5を用いて説明する。
図5は、本発明の一実施形態に係るバーナ装置1の冷却媒体制御方法を示すフロー図である。
図5に示されるように、バーナ装置1の冷却媒体制御方法は、先端側領域冷却ステップ(S1)と、基端側領域冷却ステップ(S2)と、冷却媒体漏出判定ステップ(S3〜S4)と、先端側領域冷却停止ステップ(S5)と、を備える。以下、
図5のフローに沿って、本発明の一実施形態に係るバーナ装置1の冷却媒体制御方法を説明する。
【0043】
図5のステップS1において先端側領域冷却ステップが実行される。先端側領域冷却ステップ(S1)は、第1冷却媒体供給管41から先端側冷却管31に冷却媒体Wを供給するステップである。換言すれば、先端側領域冷却ステップ(S1)は、先端側領域R1の冷却を開始するステップである。また、ステップS2において基端側領域冷却ステップ実行される。基端側領域冷却ステップ(S2)は、第2冷却媒体供給管42から基端側冷却管32に冷却媒体Wを供給するステップである。換言すれば、基端側領域冷却ステップ(S2)は、基端側領域R2の冷却を開始するステップである。具体的には、幾つかの実施形態では、第1冷却媒体供給管41および第2冷却媒体供給管42に冷却媒体Wを流すためのポンプ92を起動させても良い。他の幾つかの実施形態では、ポンプ92の起動と共に、第1冷却媒体供給管41および第2冷却媒体供給管42にそれぞれ設置された、冷却媒体Wの流量を制御することが可能な流量制御弁(94、95)をそれぞれ開けることによって、行っても良い。なお、これらのステップ(S1〜S2)は、燃焼炉7の運転の開始と共に実行されても良い。先端側領域冷却ステップ(S1)および基端側領域冷却ステップ(S2)は同時に実行されても良いし、基端側領域冷却ステップ(S2)の後に、先端側領域冷却ステップ(S1)を実行しても良い。
【0044】
その後、ステップS3〜ステップS4において冷却媒体漏出判定ステップが実行される。冷却媒体漏出判定ステップ(S3)は、先端側冷却管31あるいは基端側冷却管32の少なくとも一方の冷却管3からの冷却媒体Wの漏出(漏出の有無)を判定するステップである。例えば、炉内状況の変化に基づいて上記の判定を実行しても良い。具体的には、冷却管3の破損によって冷却管3から冷却媒体Wが漏出すると、例えばコンバスタ部7cなどの炉内の温度が下がるので、燃焼炉7の排出口72などにおいて溶融スラグの流れが悪くなるとう現象が生じる。また、リダクタ部7rから上へ上昇するガス化ガスの成分が変化するという現象が生じる。例えば、冷却媒体Wの漏出時には、ガス化ガスの一成分となる水素や二酸化炭素、水の成分が正常時と比べると増加し、逆に、一酸化炭素が正常時と比べると低下する。このため、このような炉内状況を監視することによって、溶融スラグの流れが悪くなるという現象や、ガス化ガスの成分の変動を検出することにより、冷却管3から冷却媒体Wしたことを検知することができる。あるいは、冷却管3の破損を直接的に検出しても良い。
【0045】
したがって、ステップS3において炉内状況を監視することにより、冷却管3(先端側冷却管31および基端側冷却管32からなる冷却管3)からの冷却媒体Wの漏出を監視(判定)する。そして、ステップS4において、監視(判定)の結果、冷却管3からの冷却媒体Wの漏出は発生していないと判定された場合には、ステップS3に再び戻る。逆に、ステップS4において、冷却管3からの冷却媒体Wの漏出が発生したと判定された場合には、ステップS5において、先端側領域冷却停止ステップを実行する。先端側領域冷却停止ステップ(S5)は、冷却媒体漏出判定ステップ(S3〜S4)によって冷却媒体Wの漏出を検出した場合に、先端側冷却管31への冷却媒体Wの供給のみを停止するステップである。つまり、先端側冷却管31への冷却媒体Wの供給を停止する一方で、基端側冷却管32への冷却媒体Wの供給を継続する。具体的には、例えば、幾つかの実施形態では、先端側冷却管31に接続される第1冷却媒体供給管41へ冷却媒体Wを供給するためのポンプ92を停止しても良い。他の幾つかの実施形態では、第1冷却媒体供給管41に設置された流量制御弁94を閉じることによって、先端側冷却管31への冷却媒体Wの供給を停止しても良い。
【0046】
そして、上記のステップS5の後に
図5のフローを終了する。なお、ステップS5の後には、先端側冷却管31への冷却媒体Wの供給が停止され、かつ、基端側冷却管32への冷却媒体Wの供給が継続されつつ、燃焼炉7の運転が継続されている状況となる。このような運転状況の間に、交換部材の調達、作業員の手配などといったメンテナンス作業の準備が行われる。そして、この準備が整った後に、燃焼炉7の運転を停止し、実際のメンテナンス作業を実行する。
【0047】
上記の構成によれば、冷却管3(先端側冷却管31あるいは基端側冷却管32)から炉内への冷却媒体Wの漏出が判定された場合には、先端側冷却管31への冷却媒体Wの供給のみが停止される。これによって、燃焼炉7の炉内への冷却媒体Wの漏出の停止を図りつつ、基端側冷却管32によるバーナ本体2の冷却を継続することができる。これによって、基端側冷却管32による冷却によってバーナ本体2の焼損を回避することにより、燃焼炉7の運転の停止を即座に行わずに先延ばしすることができる。さらに、この燃焼炉7の運転停止を先延ばししている間にメンテナンス作業の準備をすることにより、その分だけ燃焼炉7の停止時間を短縮することが可能となる。このように燃焼炉の停止時間を短縮することによって、上述したようにバーナ本体2の損傷を回避しつつ、バーナ装置1のメンテナンスによる燃焼炉7の稼働率の低下を抑制することができる。
【0048】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
例えば、上述した実施形態では燃焼炉7をガス化炉として説明したが、燃焼炉7は、ガス化溶融炉、産業廃棄物の溶融プラントに設置される溶融炉など、溶融スラグを内部に収容する湿式炉であっても良い。また、上述した実施形態では、バーナ装置1は、石炭燃料をガス化するガス化炉に備えられているものを例に説明したが、バーナ装置1は、バイオマス燃料などの他の燃料をガス化するためのガス化炉(燃焼炉7)が備えるものであっても良い。