【実施例】
【0020】
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。
<実施例1>(ベンゾオキサジン化合物「化合物1」の合成及び該化合物の重合)
工程(1):ジイミン化合物「化合物1B」の合成
第一級ジアミン化合物 「化合物1A」180g、酢酸エチル900gを2リッター四つ口フラスコに仕込み、室温でサリチルアルデヒド112gを滴下した。滴下後、酢酸エチル還流下で21時間撹拌した結果、撹拌中に結晶が析出した。反応終了液を4℃まで冷却後、ろ過して、分離した結晶を乾燥して、純度99.7%(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー分析法)のジイミン化合物「化合物1B」の結晶234gを得た。
収率 87.0%(「化合物1A」に対する収率)
融点 164℃(示差走査熱量測定法)
1H‐NMR(400MHz)測定(溶媒:CDCL3):6.93-7.14(m, 7H×2:b,c,e,f,g,i), 7.37-7.41(m, 3H×2:d,h,j), 7.91(d, 2H×2:a), 8.60(s, 1H×2:l), 12.94(s, 1H×2:k).
【化15】
工程(2):第二級ジアミン化合物「化合物1C」の合成
3リッター四つ口フラスコに工程(1)で得られたジイミン化合物「化合物1B」147g、エタノール1487gを仕込み、水素化ホウ素ナトリウム26.2gの粉末を2時間毎に3回に分けて室温で添加した。添加後、室温で22時間撹拌すると僅かに濁りのある黄色透明の溶液となった。この溶液を水1769gとエタノール282gとの混合液に滴下し生成した沈殿をろ別した。この沈殿を2463gの水に分散させ室温で3時間撹拌して、ろ別し、さらに1531gの水に分散し室温で3時間撹拌した後ろ別し、漏斗の上からろ液のpHが7になるまで水を掛けて洗浄した。
得られた粉体を乾燥して、純度93.7%(高速液体クロマトグラフィー分析法)の第二級ジアミン化合物「化合物1C」の粉末128gを得た。
収率 86.1%(ジイミン化合物「化合物1B」に対する収率)
1H‐NMR(400MHz)測定(溶媒:DMSO-d6):4.15(s, 2H×2:a), 6.21(ddd, 1H×2:b), 6.26(dd, 1H×2:c), 6.30(s, 1H×2:d), 6.48(ddd, 1H×2:e), 6.71(ddd, 1H×2:f), 6.78(dd, 1H×2:g), 7.02-7.13(m, 5H×2:h,i,j,k), 7.86(ddd, 2H×2:l).
【化16】
工程(3):ベンゾオキサジン化合物「化合物1」の合成
1リッター四つ口フラスコに工程(2)で合成した第二級ジアミン化合物「化合物1C」36g、酢酸エチル480gを仕込み、35%ホルマリン水溶液12gを40℃で滴下した。滴下終了後40℃で16.5時間撹拌すると、撹拌中に結晶が析出した。反応終了液を室温まで冷却した後、結晶をろ別し乾燥することにより、純度100%(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー分析法)のベンゾオキサジン化合物「化合物1」の結晶31.5gを得た。
収率 84.4%(第二級ジアミン化合物「化合物1C」に対する収率)
融点 139℃(示差走査熱量測定法)
1H‐NMR(400MHz)測定(溶媒:CDCl3):4.61(s, 2H×2:a), 5.32(s, 2H×2:b), 6.55(ddd, 1H×2:c), 6.77(dd, 1H×2:d), 6.80(dd, 1H×2:e), 6.87(ddd, 1H×2:f), 6.94(ddd, 1H×2:g), 6.98-7.01(m, 3H×2:h,i), 7.12(ddd, 1H×2:j), 7.26(t, 1H×2:k), 7.84(ddd, 2H×2:l).
【化17】
重合:ベンゾオキサジン化合物「化合物1」の重合
得られたベンゾオキサジン化合物「化合物1」を170℃で融解させ、オーブン中180℃で2時間、200℃で2時間硬化させた硬化物のガラス転移温度は、動的粘弾性測定のtanδ値で235℃であった。
【0021】
<実施例2>ベンゾオキサジン化合物「化合物2」の合成及び重合
工程(1):ジイミン化合物「化合物2B」の合成
第一級ジアミン化合物「化合物2A」585g、1,4−ジオキサン2925gを4リッター四つ口フラスコに仕込み、室温でサリチルアルデヒド427gを滴下した。滴下後60℃で30.5時間撹拌した。反応終了液を15℃まで冷却後、析出した結晶をろ別、乾燥して、純度100%(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー分析法)のジイミン化合物「化合物2B」の結晶498gを得た。
収率 54.3%(第一級ジアミン化合物「化合物2A」に対する収率)
融点 156℃(示差走査熱量測定法)
1H‐NMR(400MHz)測定(溶媒:CDCl3):6.97-7.07(m, 5H×2:a,b,c,d,e), 7.16(ddd, 2H×2:f), 7.40-7.43(m, 3H×2:g,h,i), 7.09(ddd, 2H×2:j), 8.63(s, 1H×2:k), 13.11(s, 1H×2:l).
【化18】
工程(2):第二級ジアミン化合物「化合物2C」の合成
3リッター四つ口フラスコに工程(1)で得られたジイミン化合物「化合物2B」 135g、エタノール1350gを仕込み、水素化ホウ素ナトリウム17.7gの粉末を2時間毎に3回に分けて30℃で添加した。添加後、30℃で19時間撹拌した後、水素化ホウ素ナトリウムを4.5g追加した。追加後30℃で9.5時間撹拌するとクリーム色のスラリー液となった。この液を5リッター四つ口フラスコへ移し水1350gを滴下した後、30℃で5.5時間撹拌し、析出物(粉体)をろ別した。この粉体を2669gの水に分散させ室温で2.5時間撹拌し、ろ別、さらに1350gの水に分散し室温で3時間撹拌した後、ろ別し、漏斗の上からろ液のpHが7になるまで水を掛けて洗浄した。得られた粉体を乾燥して、純度96.1%(高速液体クロマトグラフィー分析法)の第二級ジアミン化合物「化合物2C」の粉末111gを得た。
収率 82.1%(ジイミン化合物「化合物2B」に対する収率)
1H‐NMR(400MHz)測定(溶媒:DMSO-d6):4.16(d, 2H×2:a), 6.18(ddd, 1H×2:b), 6.24(t, 1H×2:c), 6.27(t, 1H×2:d), 6.39(ddd, 1H×2:e), 6.75(ddd, 1H×2:f), 6.81(dd, 1H×2:g), 7.01(ddd, 2H×2:h), 7.05(t, 2H×2:i,j), 7.17(dd, 1H×2:k), 7.59(ddd, 2H×2:l), 9.49(m, 1H×2:m).
【化19】
工程(3):ベンゾオキサジン化合物「化合物2」の合成
1リッター四つ口フラスコに工程(2)で合成した第二級ジアミン化合物「化合物2C」 100g、2−メトキシエタノール500gを仕込み、35%ホルマリン水溶液37gを40℃で滴下した。滴下終了後40℃で2時間、60℃で3.5時間撹拌したが、撹拌中に結晶が析出した。次いで2−メトキシエタノール12gを加え共沸脱水することにより反応を完結させた。反応終了液を室温まで冷却した後、析出した結晶をろ別、乾燥することにより、純度96.9%(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー分析法)のベンゾオキサジン化合物「化合物2」の結晶100.2gを得た。
収率 96.4%(第二級ジアミン化合物「化合物2C」に対する収率)
融点 211℃(示差走査熱量測定法)
1H‐NMR(400MHz)測定(溶媒:DMSO-d6):4.67(s, 2H×2:a), 5.45(s, 2H×2:b), 6.48(ddd, 1H×2:c), 6.76(d, 1H×2:d), 6.88-6.89(m, 2H×2:e,f), 6.95(ddd, 1H×2:g), 7.05(ddd, 2H×2:h), 7.08-7.13(m, 2H×2:i,j), 7.25(t, 1H×2:k), 7.64(ddd, 2H×2:l).
【化20】
重合:ベンゾオキサジン化合物「化合物2」の重合
得られたベンゾオキサジン化合物「化合物2」を240℃で融解させ、オーブン中200℃で2時間硬化させた硬化物のガラス転移温度は、動的粘弾性測定のtanδ値で238℃であった。
【0022】
<比較例1>下記化学式で表されるベンゾオキサジン化合物「比較化合物1」の合成及び重合
【化21】
工程(1):ジイミン化合物<ビス{4−{4−[2−(2−ヒドロキシフェニル)−1−アザビニル]フェノキシ}フェニル}スルホン>の合成
ビス{4−(4−アミノフェニルオキシ)フェニル}スルホン400g、1,4−ジオキサン2000gを5リッター四つ口フラスコに仕込み、60℃でサリチルアルデヒド249gを滴下した。滴下後60℃で22時間撹拌したが、撹拌中に結晶が析出した。反応終了液を15℃まで冷却後、ろ過、乾燥して、純度100%(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー分析法)のビス{4−{4−[2−(2−ヒドロキシフェニル)−1−アザビニル]フェノキシ}フェニル}スルホンの結晶575gを得た。
収率 97.0%(原料第一級ジアミン対する収率)
融点 209℃(示差走査熱量測定法)
1H‐NMR(400MHz)測定(溶媒:CDCl3):6.96(t, 1H×2:g), 7.03-7.07(m, 3H×2:b,e), 7.10(d, 2H×2:d), 7.30(d, 2H×2:c), 7.38-7.42(m, 2H×2: h,f), 7.90(d, 2H×2:a), 8.63(s, 1H×2:i), 13.10(s, 1H×2:j).
【化22】
工程(2):第二級ジアミン化合物<ビス{4−(4−{[(2−ヒドロキシフェニル)メチル]アミノ}フェノキシ)フェニル}スルホン>の合成
5リッター四つ口フラスコに工程(1)で得られたビス{4−{4−[2−(2−ヒドロキシフェニル)−1−アザビニル]フェノキシ}フェニル}スルホン300g、エタノール3000gを仕込み、水素化ホウ素ナトリウム53.3gの粉末を2時間毎に3回に分けて室温で添加した。添加後室温で27時間撹拌した後、水素化ホウ素ナトリウムの粉末を17.8g追加した。追加後、室温で23時間撹拌するとクリーム色のスラリー液となった。この液を5℃まで冷却し、析出物をろ別した後、この析出物を2186gの水に分散させ室温で3時間撹拌し、ろ別した。さらに1440gの水に分散し室温で1.5時間撹拌した後、ろ別し、漏斗の上からろ液のpHが8になるまで水を掛けて洗浄した。得られた析出物を乾燥して、純度91.4%(高速液体クロマトグラフィー分析法)のビス{4−(4−{[(2−ヒドロキシフェニル)メチル]アミノ}フェノキシ)フェニル}スルホンの粉末242gを得た。
収率 80.1%(ビス{4−{4−[2−(2−ヒドロキシフェニル)−1−アザビニル]フェノキシ}フェニル}スルホンに対する収率)
融点 143℃(示差走査熱量測定法)
工程(3):ベンゾオキサジン化合物「比較化合物」の合成
5リッター四つ口フラスコに工程(2)で合成したビス{4−(4−{[(2−ヒドロキシフェニル)メチル]アミノ}フェノキシ)フェニル}スルホン244g、1,4−ジオキサン1222gを仕込み、35%ホルマリン水溶液81gを40℃で滴下した。滴下終了後40℃で3.5時間撹拌した。
この液を68℃まで加熱し反応で析出した結晶を溶解した後、トルエン1221gを加え再度加熱した。この溶液を66.5℃から5℃まで冷却後、析出した結晶をろ別、乾燥することにより、純度100%(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー分析法)のベンゾオキサジン化合物「比較化合物」の結晶184gを得た。
収率 72.6%:ビス{4−(4−{[(2−ヒドロキシフェニル)メチル]アミノ}フェノキシ)フェニル}スルホンに対する収率
融点 188℃(示差走査熱量測定法)
1H‐NMR(400MHz)測定(溶媒:CDCl3):4.62(s, 2H×2:a), 5.34(s, 2H×2:b), 6.82(dd, 1H×2:c), 6.91-6.94(m, 5H×2:d,e,f), 7.02(dd, 1H×2:g), 7.12-7.14(m, 3H×2:h,i), 7.80(ddd, 2H×2:j).
【化23】
重合:ベンゾオキサジン化合物「比較化合物1」の重合
得られたベンゾオキサジン化合物「比較化合物1」を200℃で融解させ、オーブン中200℃で2時間硬化させた硬化物のガラス転移温度は、動的粘弾性測定のtanδ値で199℃であった。
【0023】
<比較例2>下記化学式で表されるベンゾオキサジン化合物「比較化合物2」の合成及び重合
なお、「比較化合物2」は、特許文献3の化合物(II-c)に相当する化合物である。
【化24】
工程(1):ジイミン化合物<ビス{4−{3−[2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−1−アザビニル]フェノキシ}フェニル}スルホン>の合成
ビス{4−(3−アミノフェニルオキシ)フェニル}スルホン36.2g、酢酸エチル204.4gおよび5−メチルサリチルアルデヒド25.1gを500ミリリッター四つ口フラスコに仕込んだ。酢酸エチル還流下で33.5時間撹拌した。途中、常圧下80℃で蒸留を行い、酢酸エチルを78.4g留出させた。結晶は反応中に析出した。反応終了液を4℃まで冷却後、ろ別して分離した結晶を乾燥して、純度99.7%(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー分析法)のビス{4−{3−[2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−1−アザビニル]フェノキシ}フェニル}スルホンの結晶54.0gを得た。
収率 96.4%(ビス{4−(3−アミノフェニルオキシ)フェニル}スルホンに対する収率)
融点 167.0℃(示差走査熱量測定法)
1H‐NMR(400MHz)測定(溶媒:CDCl3):2.34(s,3H×2:a), 6.94-6.99(m,3H×2:b,c,d), 7.09-7.24(m,5H×2:e,f,g,h), 7.45(t, 1H×2:i), 7.92(d, 2H×2:j), 8.57(s, 1H×2:k), 12.72(s, 1H×2:l).
【化25】
工程(2):第二級ジアミン化合物<ビス{4−(3−{[(2−ヒドロキシ-5-メチルフェニル)メチル]アミノ}フェノキシ)フェニル}スルホン>酢酸ブチル溶液の合成
1リッター四つ口フラスコに工程(1)で得られたビス{4−{3−[2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−1−アザビニル]フェノキシ}フェニル}スルホン54.0g、エタノール540.0gを仕込み、30〜32℃で水素化ホウ素ナトリウム6.11gの粉末を2時間毎に2回に分けて室温で添加した。添加後、30℃で23時間撹拌すると僅かに濁りのある黄色透明の溶液となった。この溶液を、2リッター四つ口フラスコに仕込んだ水648.0gとエタノール108.0gの混合液に滴下し、生成した沈殿をろ別、乾燥し、粉末62.8gを得た。この粉末62.8g、水125.6g、酢酸ブチル502.4gを1リッター四つ口フラスコに仕込み、室温〜30℃で溶解後、撹拌しながら酢酸5.3gで中和した。その後静置し中和分液水を分液し、水洗分液を2回繰り返し、ビス{4−(3−{[(2−ヒドロキシ-5-メチルフェニル)メチル]アミノ}フェノキシ)フェニル}スルホンの酢酸ブチル溶液554.3gを取得した。
純度 97.0%(酢酸ブチル除去値:高速液体クロマトグラフィー分析法)
溶液中の第二ジアミン化合物分子量 M+1:674 M-1:672(高速液体クロマトグラフィー質量分析)
工程(3):ベンゾオキサジン化合物「比較化合物2」の合成
1リッター四つ口フラスコに工程(2)で合成したビス{4−(3−{[(2−ヒドロキシ-5-メチルフェニル)メチル]アミノ}フェノキシ)フェニル}スルホンの酢酸ブチル溶液554.3gを仕込み、35%ホルマリン水溶液19.7gを40℃で滴下した。滴下終了後40℃で23.5時間撹拌して反応を完結させたが、撹拌中に結晶が析出した。反応終了液を5℃まで冷却した後、結晶をろ別し乾燥することにより、純度99.7%(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー分析法)のベンゾオキサジン化合物「比較化合物2」の結晶46.8gを得た。
収率 82.9%(ビス{4−{3−[2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−1−アザビニル]フェノキシ}フェニル}スルホンに対する収率)
融点 157℃(示差走査熱量測定法)
1H‐NMR(400MHz)測定(溶媒:CDCl3):2.27(s,3H×2a), 4.59(s, 2H×2:b), 5.32(s, 2H×2:c), 6.59(ddd, 1H×2:d), 6.77(d, 1H×2:e), 6.80(t, 1H×2:f), 6.83(d, 1H×2:g), 6.94-6.97(m, 2H×2:h,i), 7.01(ddd, 2H×2:j), 7.27(t, 1H×2:k), 7.85(ddd, 2H×2:l).
【化26】
重合:ベンゾオキサジン化合物「比較化合物2」の重合
得られたベンゾオキサジン化合物「比較化合物2」を180℃で融解させ、オーブン中180℃で2時間、200℃で2時間硬化させた硬化物のガラス転移温度は、動的粘弾性測定のtanδ値で203℃であった。