(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、補正用センサの製造および設置にコストがかかるといった問題や、補正用センサが故障した場合に燃料噴射量を適正に制御できないといった問題がある。
【0006】
本発明の目的は、コストをかけることなく燃料噴射
量を適正に制御できる燃料噴射制御装置および燃料噴射制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の燃料噴射制御装置は、インジェクタから気筒へ噴射される燃料の噴射量を制御する燃料噴射制御装置であって、吸入空気の温度と、前記吸入空気の湿度とに基づいて、前記吸入空気に含まれる水蒸気圧を算出し、該水蒸気圧と、前記吸入空気の圧力とに基づいて、前記吸入空気に含まれる乾燥空気の割合である補正係数を算出し、該補正係数と、前記吸入空気の流量と、
前記燃料噴射制御装置から前記インジェクタへ指示される前記燃料の目標噴射量と、予め設定された理論空燃比とに基づいて、第1ラムダ値を算出する計算部と、
排気管に設けられたラムダセンサにより検知された第2ラムダ値と、前記第1ラムダ値との偏差比率に基づいて、前記燃料の噴射量を制御する制御部と、を備
え、前記制御部は、前記偏差比率が所定値より小さいとき、前記燃料の噴射量を減少させ、前記偏差比率が所定値より大きいとき、前記燃料の噴射量を増加させる。
【0008】
本発明の燃料噴射制御方法は、インジェクタから気筒へ噴射される燃料の噴射量を制御する燃料噴射制御方法であって、吸入空気の温度と、前記吸入空気の湿度とに基づいて、前記吸入空気に含まれる水蒸気圧を算出し、該水蒸気圧と、前記吸入空気の圧力とに基づいて、前記吸入空気に含まれる乾燥空気の割合である補正係数を算出し、該補正係数と、前記吸入空気の流量と、
前記インジェクタへ指示される前記燃料の目標噴射量と、予め設定された理論空燃比とに基づいて、第1ラムダ値を算出し、
排気管に設けられたラムダセンサにより検知された第2ラムダ値と、前記第1ラムダ値との偏差比率に基づいて、前記燃料の噴射量を制御
し、前記偏差比率が所定値より小さいとき、前記燃料の噴射量を減少させ、前記偏差比率が所定値より大きいとき、前記燃料の噴射量を増加させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、コストをかけることなく燃料噴射
量を適正に制御できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
本発明の実施の形態に係る燃料噴射制御装置およびエンジンの構成について、
図1を用いて説明する。
図1は、本実施の形態に係る燃料噴射制御装置1およびエンジン2の構成例を示す図である。
【0014】
エンジン2は、4つの気筒3を有するディーゼルエンジンである。なお、エンジン2は、4気筒以外の多気筒エンジンでもよいし、単気筒エンジンでもよい。
【0015】
インジェクタ(燃料噴射弁ともいう)4は、各気筒3に対応して設けられており、コモンレール5から供給される燃料を各気筒3の燃焼室内に噴射する。インジェクタ4の燃料噴射量および燃料噴射時期は、燃料噴射制御装置1により制御される。例えば、燃料噴射制御装置1から電磁ソレノイド(図示略)に入力される制御信号の通電パルス幅(時間幅)に応じて芯弁がリフトされ、ノズル先端の噴射孔が開閉される。
【0016】
エアフィルタ6には、吸気管7の上流端が接続されている。吸気管7の下流端は、ターボチャージャ8のコンプレッサ9の入口に接続されている。コンプレッサ9の出口には、高圧側吸気管11が接続されている。高圧側吸気管11は、EGR(Exhaust Gas Recirculation)管15の下流端と接続されている。また、高圧側吸気管11は、吸気マニホールド12に接続されている。
【0017】
このような構成により、エアフィルタ6から取り込まれた大気からの空気(以下、吸入空気という)は、吸気管7を経て、コンプレッサ9より圧縮され、高圧の吸入空気となる。そして、コンプレッサ9から高圧側吸気管11へ流入した吸入空気は、EGR管15からのEGRガスと混合し、吸気マニホールド12を経て各気筒3の燃焼室へ流入する。
【0018】
排気マニホールド13には、高圧側排気管14が接続されている。高圧側排気管14には、EGR管15が接続されている。EGR管15には、EGRガスを冷却するEGRクーラ16と、高圧側吸気管11へ流入するEGRガスの流量を調節するEGRバルブ17とが設けられている。なお、本実施の形態において、「流量」は、質量流量を意味するものとする。
【0019】
また、高圧側排気管14には、ターボチャージャ8のタービン10の入口が接続されている。タービン10の出口には、排気管18が接続されている。排気管18には、排気ガス浄化装置19が設置されている。
【0020】
このような構成により、各気筒3の燃焼室からの排気ガスは、排気マニホールド13から高圧側排気管14へ流入する。この排気ガスの一部は、EGR管15を介して高圧側吸気管11へ流入する。一方、タービン10へ流入した排気ガスは、排気管18を経て、排気ガス浄化装置19へ流入する。排気ガス浄化装置19にて浄化された排気ガスは、車両外へ排出される。
【0021】
吸気管7には、吸入空気の流量を検知するエアフローセンサ20と、吸入空気の温度を検知する温度センサ21と、吸入空気の湿度を検知する湿度センサ22とが設けられている。本実施の形態では、吸入空気の温度を大気の温度とみなす。
【0022】
なお、
図1では、エアフローセンサ20、温度センサ21、および湿度センサ22を吸気管7に設ける場合を例に挙げたが、それらのセンサの設置場所は、吸気管7に限定されない。ただし、温度センサ21と湿度センサ22は、同じ場所に設けられる必要がある。また、
図1では、温度センサ21と湿度センサ22とを分けて図示したが、温度センサ21と湿度センサ22は、1つのセンサで構成されてもよい。
【0023】
排気管18には、排気中の酸素濃度(ラムダ値)を検知するラムダセンサ23が設けられている。本実施の形態では、ラムダセンサ23により検知される値を「検知ラムダ」(第2ラムダ値の一例)という。
【0024】
エアフローセンサ20、温度センサ21、湿度センサ22、およびラムダセンサ23の各検知結果は、燃料噴射制御装置1へ出力される。
【0026】
次に、燃料噴射制御装置1について説明する。
【0027】
燃料噴射制御装置1は、大気圧センサ24、計算部100、および、制御部101を有する。燃料噴射制御装置1は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、制御プログラムを格納したROM(Read Only Memory)等の記憶媒体、RAM(Random Access Memory)等の作業用メモリ、および、入出力ポートを有する。計算部100および制御部101の各機能は、CPUが制御プログラムを実行することにより実現される。
【0028】
大気圧センサ24は、吸入空気の圧力を検知する。なお、大気圧センサ24は、吸気管7に設けられてもよい。本実施の形態では、吸入空気の圧力を大気圧とみなす。
【0029】
計算部100は、エアフローセンサ20、温度センサ21、湿度センサ22、および、大気圧センサ24の各検知結果に基づいて、吸入空気中の水蒸気を除いた場合における排気中の酸素濃度(ラムダ値)を計算する。本実施の形態では、計算部100により算出される値を「計算ラムダ」(第1ラムダ値の一例)という。計算ラムダの具体的な算出方法については、後述する。
【0030】
制御部101は、検知ラムダと計算ラムダとの偏差比率に基づいて、燃料の噴射量を制御する。例えば、偏差比率が所定値であるときを燃焼室内の空気に過不足が無い理想的な燃焼状態とする場合、制御部101は、偏差比率が所定値より小さいとき、実噴射量が過剰であると判定して燃料の噴射量を減少させ、偏差比率が所定値より大きいとき、実噴射量が不足していると判定して燃料の噴射量を増加させる。この処理は公知であるので、ここでの詳細な説明は省略する。
【0031】
以上、燃料噴射制御装置1およびエンジン2の構成について説明した。
【0032】
次に、本発明の実施の形態に係る燃料噴射制御装置1の動作について、
図2を用いて説明する。
図2は、本実施の形態に係る燃料噴射制御装置1の動作例を示す図である。
【0033】
まず、計算部100は、下記計算式(1)に基づいて、吸入空気に含まれる水蒸気圧P
steamを算出する(ステップS101)。計算式(1)において、T
airは、温度センサ21により検知された温度であり、HMD
sensorは、湿度センサ22により検知された湿度である。
【0035】
次に、計算部100は、下記計算式(2)に基づいて、吸入空気に含まれる乾燥空気の割合である補正係数C
HMD[−]を算出する(ステップS102)。計算式(2)において、P
airは、大気圧センサ24により検知された大気圧である。
【0037】
次に、計算部100は、下記計算式(3)に基づいて、計算ラムダλ
HMD,Compを算出する(ステップS103)。計算式(3)において、m
airは、エアフローセンサ20により検知された吸入空気の流量であり、m
fuelは、燃料噴射制御装置1からインジェクタ4へ指示される目標噴射量(「目標の燃料の流量」と換言してもよい)であり、K
LST[−]は、予め設定された理論空燃比である。
【0039】
次に、制御部101は、
ラムダセンサ23から受け取った検知ラムダと、計算式(3)により算出された計算ラムダ
との偏差比率に基づいて、燃料の噴射量を制御する(ステップS104)。
【0040】
以上、燃料噴射制御装置1の動作について説明した。
【0041】
本実施の形態の燃料噴射制御装置1によれば、計算部100が吸入空気中の水蒸気を除いた場合における計算ラムダを計算する。よって、特許文献1のような補正用センサを設ける必要がないため、コストをかけることなく燃料噴射
量を適正に制御できる。
【0042】
また、燃料噴射制御装置1によれば、計算部100は、流入空気の水蒸気圧を算出し、その水蒸気圧に基づいて補正係数を算出し、その補正係数に基づいて計算ラムダを算出する。よって、燃料噴射量の補正の精度をより向上させることができる。
【0043】
以上、本発明の実施の形態について詳述してきたが、本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変形して実施することが可能である。
【0044】
例えば、実施の形態では、エンジン2がEGR管15、EGRクーラ16、およびEGRバルブ17を備える場合を例に挙げて説明したが、エンジン2は、EGR管15、EGRクーラ16、およびEGRバルブ17を備えなくてもよい。
【0045】
また、例えば、実施の形態では、エンジン2がターボチャージャ8を備える場合を例に挙げて説明したが、エンジン2は、ターボチャージャ8を備えなくてもよい。
【0046】
<本開示のまとめ>
本発明の燃料噴射制御装置は、インジェクタから気筒へ噴射される燃料の噴射量を制御する燃料噴射制御装置であって、吸入空気の温度と、前記吸入空気の湿度とに基づいて、前記吸入空気に含まれる水蒸気圧を算出し、該水蒸気圧と、前記吸入空気の圧力とに基づいて、前記吸入空気に含まれる乾燥空気の割合である補正係数を算出し、該補正係数と、前記吸入空気の流量と、
前記燃料噴射制御装置から前記インジェクタへ指示される前記燃料の目標噴射量と、予め設定された理論空燃比とに基づいて、第1ラムダ値を算出する計算部と、
排気管に設けられたラムダセンサにより検知された第2ラムダ値と、前記第1ラムダ値との偏差比率に基づいて、前記燃料の噴射量を制御する制御部と、を備
え、前記制御部は、前記偏差比率が所定値より小さいとき、前記燃料の噴射量を減少させ、前記偏差比率が所定値より大きいとき、前記燃料の噴射量を増加させる。
【0047】
なお、上記燃料噴射制御装置において、前記計算部は、下記計算式(1)に基づいて、前記水蒸気圧を算出してもよい。
【数4】
P
steam:前記水蒸気圧
T
air:前記吸入空気の温度
HMD
sensor:前記吸入空気の湿度
【0048】
また、上記燃料噴射制御装置において、前記計算部は、下記計算式(2)に基づいて、前記補正係数を算出してもよい。
【数5】
C
HMD[−]:前記補正係数
P
air:前記吸入空気の圧力
P
steam:前記水蒸気圧
【0049】
また、上記燃料噴射制御装置において、前記計算部は、下記計算式(3)に基づいて、前記
第1ラムダ値を算出してもよい。
【数6】
λ
HMD,Comp 前記
第1ラムダ値
C
HMD[−]:前記補正係数
m
air:前記吸入空気の流量
m
fuel:前記燃料噴射制御装置から前記インジェクタへ指示される目標噴射量
K
LST[−]:前記理論空燃比
【0050】
本発明の燃料噴射制御方法は、インジェクタから気筒へ噴射される燃料の噴射量を制御する燃料噴射制御方法であって、吸入空気の温度と、前記吸入空気の湿度とに基づいて、前記吸入空気に含まれる水蒸気圧を算出し、該水蒸気圧と、前記吸入空気の圧力とに基づいて、前記吸入空気に含まれる乾燥空気の割合である補正係数を算出し、該補正係数と、前記吸入空気の流量と、
前記インジェクタへ指示される前記燃料の目標噴射量と、予め設定された理論空燃比とに基づいて、第1ラムダ値を算出し、
排気管に設けられたラムダセンサにより検知された第2ラムダ値と、前記第1ラムダ値との偏差比率に基づいて、前記燃料の噴射量を制御
し、前記偏差比率が所定値より小さいとき、前記燃料の噴射量を減少させ、前記偏差比率が所定値より大きいとき、前記燃料の噴射量を増加させる。