(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術では、ブラケットに対する第1部材のぐらつきを抑制するためには、ブラケットに接触するかしめ片の幅を大きくする必要がある。だが、かしめ片を挿入孔に挿入するので、かしめ片の幅や形状の自由度が低く、ぐらつきを十分に抑制できないという問題点がある。
【0005】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、ブラケットに対する防振装置のぐらつきを抑制できる防振ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明の防振ユニットは、第1部材と第2部材とをゴム状弾性体から構成される防振基体で連結した防振装置と、前記第1部材が固定される第1ブラケットと、
振動源側または振動受側に取り付けられる取付部と、前記取付部に連結される挿入部とを有する第2ブラケットと、を備え、前記挿入部は、前記第1ブラケットによって第1方向と前記第1方向に直交する第2方向とから挟まれ
、前記第1方向へ
前記挿入部の外面が凹んで凹部が形成され
、前記第1ブラケットは、前記凹部の周囲におけ
る前記外面に接触する第1面部と、前記第1面部に連結される、前記第1面部に対して前記凹部内へ屈曲する屈曲部とを備え、前記第2ブラケットは、前記第1方向および前記第2方向に直交する第3方向の一方側へ向いて前記第1ブラケットが接触する第1接触面と、前記第3方向の他方側へ向いた前記凹部の内面であって前記屈曲部が接触する第2接触面とを備え
、前記第1面部に対して前記屈曲部が屈曲していない状態の前記第1ブラケットに前記第3方向の一方側へ挿入可能に前記挿入部が形成されている。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の防振ユニットによれば、第1ブラケットによって第2ブラケット
の挿入部が第1方向および第2方向から挟まれるので、第2ブラケットに対する第1ブラケットの第1方向および第2方向への移動を規制できる。さらに、
第1面部に対して屈曲部が屈曲していない状態の第1ブラケットに第3方向の一方側へ第2ブラケットの挿入部を挿入すると、第3方向の一方側へ向いた第2ブラケットの第1接触面に第1ブラケットが接触し、
第1面部に対して屈曲させた屈曲部が、第3方向の他方側へ向いた凹部の内面である第2接触面
に接触するので、第2ブラケットに対する第1ブラケットの第3方向への移動を規制できる。これらの結果、第2ブラケットに第1ブラケットを固定できる。
【0008】
第1面部は
挿入部の外面に接触するので、第1面部の形状や寸法の自由度を確保できる。そのため、第1面部の形状や寸法を適切に設定することで、第2ブラケットに対する第1ブラケットのぐらつきを抑制でき、第1ブラケットに固定される防振装置のぐらつきを抑制できる効果がある。
【0009】
請求項2記載の防振ユニットによれば、屈曲部は、第1面部に対して第3方向と直交する方向に屈曲
し、第1面部の第1方向または第2方向の縁に連結され、第3方向の側縁が第2接触面に接触する。これにより、屈曲部と第2接触面との接触に関して第1面部に対する屈曲部の屈曲角度の精度を無視できると共に、第2ブラケットから受けた荷重により屈曲部の屈曲角度が変化しても屈曲部と第2接触面との接触を維持でき、第2ブラケットに対する第1ブラケットの第3方向へのぐらつきを抑制できる。その結果、請求項1の効果に加え、第1ブラケットに対する第2ブラケットの第3方向への抜け防止の構成を簡易にできると共に、第2ブラケットに対する防振装置のぐらつきをより抑制できる効果がある。
【0010】
請求項3記載の防振ユニットによれば、第1ブラケットの第2面部と第1面部との間で
挿入部が第1方向に挟まれ、第1面部と第2面部とを連結する一対の第3面部の間で
挿入部が第2方向に挟まれる。これにより、屈曲部とは無関係に第1面部、第2面部および第3面部によって、第1ブラケットに対する第2ブラケットの第1方向および第2方向への移動を規制できる。そのため、第2ブラケットから屈曲部に荷重が入力されて、第1面部に対する屈曲部の屈曲角度が変化しても、第2ブラケットに対して第1ブラケットが第1方向および第2方向にぐらつくことを抑制できる。その結果、請求項1又は2の効果に加え、第2ブラケットに対する防振装置のぐらつきをより抑制できる効果がある。
【0011】
請求項4記載の防振ユニットによれば、第1面部が第2方向に離れてそれぞれ設けられ、互いに第2面部および第3面部を介して連結されるので、第1ブラケットを第2方向へ変形し易くできる。そのため、第1ブラケットの第1面部と第2面部との間、一対の第3面部の間に第2ブラケットを挿入するとき、第1ブラケットを第2方向へ変形させて第1ブラケットに第2ブラケットを挿入し易くできるので、防振ユニットの組み付けを容易にできる。
【0012】
また、第1ブラケットに第2ブラケットを挿入した後、第2方向に離れた第1面部にそれぞれ設けられる屈曲部を凹部内へ屈曲させることで、屈曲部の第2方向の外側の面が第2ブラケットの接触部に接触する。これにより、屈曲部の第2方向の外側への移動が接触部により妨げられるので、第1ブラケットを第2方向の外側へ変形し難くでき、第2ブラケットに対して第1ブラケットが第2方向へぐらつくことを抑制できる。よって、請求項3の効果に加え、防振ユニットの組み付けを容易にしつつ、第2ブラケットに対する防振装置のぐらつきをより抑制できる効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。まず、
図1及び
図2を参照して、本発明の第1実施の形態における防振ユニット1について説明する。
図1は防振ユニット1の斜視図であり、
図2は防振ユニット1の断面図である。
図1及び
図2では、矢印Zは第1方向Z、矢印Xは第2方向X、矢印Y1−Y2は第3方向Y1−Y2をそれぞれ示している。第1方向Zと第2方向Xと第3方向Y1−Y2とは互いに直交する(
図3〜8も同様)。なお、第3方向Y1と第3方向Y2とを区別しない場合には、第3方向Yと記載する。また、第1実施の形態では、第1方向Zを防振ユニット1の上下方向として説明するが、この上下方向は防振ユニット1の使用時の上下方向と必ずしも一致しない。
【0015】
図1に示すように、防振ユニット1は、エンジン等の振動源側(図示せず)から車体等の振動受側(図示せず)へ伝達される振動を防振装置10により低減する装置である。防振ユニット1は、防振装置10と、防振装置10を車体等の振動受側に取り付ける固定部材2と、防振装置10が固定される第1ブラケット20と、エンジン等の振動源側に取り付けられて第1ブラケット20を保持する第2ブラケット30とを備える。なお、固定部材2を振動源側に取り付け、第2ブラケット30を振動受側に取り付けることは可能である。
【0016】
図2に示すように、防振装置10は、第1部材11と、円筒状の第2部材12と、第1部材11及び第2部材12を連結するゴム状弾性体から構成される防振基体13とを備える。第1部材11は、第2部材12と同軸状で第2部材12よりも上方に配置される金属製の部材であり、第2部材12へ向かうにつれて外径が縮径する。
【0017】
第2部材12は、金属製の部材である。第1実施の形態における防振装置10は、第2部材12の内周側に形成される液室14にエチレングリコールなどの不凍性の液体が封入される液封入式防振装置である。なお、防振装置10は液封入式防振装置に限らず、液室14を有しない防振装置とすることが可能である。
【0018】
図1及び
図2に示すように、固定部材2は、第2部材12が軸方向(第1方向Z)に圧入される円筒状の金属製の部材である。固定部材2は、下端側から軸直方向(第2方向X)へ軸対称にフランジ部2aがそれぞれ張り出す。このフランジ部2aを第1方向Zに貫通してボルト孔2bが形成され、そのボルト孔2bに挿入したボルト(図示せず)を振動受側に締結することで、固定部材2が振動受側に取り付けられる。
【0019】
第1ブラケット20は、防振装置10を第2ブラケット30に固定するための金属製の部材である。第1ブラケット20は、第1部材11との一体成形品であり、第1部材11が固定される。なお、第1部材11と第1ブラケット20とをそれぞれ形成し、ボルト等を用いて第1部材11に第1ブラケット20を固定することは可能である。
【0020】
第1ブラケット20は、第1部材11が固定される板状の底面部21と、底面部21の第2方向X側の両側縁に立設される板状の一対の側面部22と、一対の側面部22の上端縁から互いへ向かって張り出す板状の一対の対向面部23と、対向面部23から底面部21側へ屈曲する板状の屈曲部24とを備える。
【0021】
第1ブラケット20は、底面部21と側面部22と対向面部23と屈曲部24とが互いに連結された一体成形品であり、第2ブラケット30の外面33,34,35に沿うように板材を曲げ加工して形成される。底面部21と対向面部23とが第1方向Zに互いに対向し、底面部21と対向面部23とで第2ブラケット30を第1方向Zに挟む。一対の側面部22が第2方向Xに互いに対向し、一対の側面部22で第2ブラケット30を第2方向Xに挟む。これにより、第2ブラケット30に対する第1ブラケット20の第1方向Z及び第2方向Xへの移動を規制できる。
【0022】
屈曲部24は、底面部21と対向面部23との間、及び、一対の側面部22の間で第2ブラケット30を挟んだ状態で、後述する第2ブラケット30の凹部36内へ屈曲する部位である。屈曲部24は、対向面部23に対して第3方向Yと直交する方向へ屈曲する。屈曲部24の幅(第3方向Yの寸法)は、対向面部23の幅(第3方向Yの寸法)よりも小さく設定される。屈曲部24の幅を小さく設定することで、対向面部23に対して屈曲部24を屈曲させ易くできる。
【0023】
第2ブラケット30は、金属製の部材であり、振動源側に取り付けられる取付部31と、取付部31に連結されて第1ブラケット20に挿入される挿入部32とを備える。取付部31には、取付部31を第1方向Zに貫通してボルト孔31aが形成され、そのボルト孔31aに挿入したボルト(図示せず)を振動源側に締結することで、第2ブラケット30が振動源側に取り付けられる。
【0024】
挿入部32は、取付部31から第3方向Y1へ延びて設けられる厚板状の部材であり、XZ断面が矩形状に形成される。挿入部32は、第1方向Zと交わる外面33,34と、第2方向Xと交わる外面35とを備える。なお、防振装置10側が外面33である。第1ブラケット20に挿入された挿入部32は、外面33が底面部21に接触し、外面34が対向面部23に接触し、外面35が一対の側面部22にそれぞれ接触する。
【0025】
挿入部32には、外面34から第1方向Z(外面33側)へ凹んで凹部36が形成される。凹部36は、屈曲部24が嵌まる部位であり、挿入部32の第2方向Xの全長に亘って形成される。凹部36の内面は、第3方向Yに互いに対向して第3方向Yと垂直な平面から構成され、その平面の取付部31側が第1接触面37であり、取付部31から離れた側が第2接触面38である。凹部36の底は底面39である。
【0026】
凹部36の第3方向Yの寸法、即ち、第1接触面37と第2接触面38との間の寸法は、屈曲部24の幅(第3方向Yの寸法)と同一に設定される。これにより、凹部36内へ屈曲した屈曲部24の側縁24a,24bが第1接触面37及び第2接触面38にそれぞれ接触するので、第2ブラケット30に対する第1ブラケット20の第3方向Yへの移動を規制できる。
【0027】
次に
図1に加えて
図3及び
図4を参照して第1ブラケット20と第2ブラケット30との固定方法について説明する。
図3は第1ブラケット20に第2ブラケット30を挿入する前の防振ユニット1の斜視図であり、
図4は第1ブラケット20に第2ブラケット30を挿入した防振ユニット1の斜視図である。
【0028】
第1ブラケット20は、
図3に示すように、第2ブラケット30の外面33,34,35の形状に沿って、第1ブラケット20の底面部21と対向面部23とが第1方向Zに対向し、一対の側面部22が第2方向Xに対向する。さらに、対向面部23と屈曲部24とが同一平面となるように、対向面部23に対して屈曲部24を屈曲させない状態とする。
【0029】
まず、第1ブラケット20の底面部21と対向面部23との間、及び、一対の側面部22の間に第2ブラケット30の挿入部32を挿入する。この挿入部32の挿入方向が第3方向Y1である。なお、挿入部32の第1方向Zの寸法が底面部21と対向面部23との距離よりも僅かに大きく、挿入部32の第2方向Xの寸法が一対の側面部22の距離よりも僅かに大きく設定されるので、挿入部32が第1ブラケット20に圧入される。これにより、第2ブラケット30に対する第1ブラケット20のぐらつきを抑制でき、第2ブラケット30に対する防振装置10のぐらつきを抑制できる。
【0030】
次いで、
図4に示すように、第1ブラケット20の屈曲部24と第2ブラケット30の凹部36との位置を合わせる。より詳細には、屈曲部24の側縁24aと凹部36の第1接触面37との第3方向Yの位置を合わせ、屈曲部24の側縁24bと凹部36の第2接触面38との第3方向Yの位置を合わせる。
【0031】
最後に、
図1に示すように、対向面部23に対して屈曲部24を凹部36内へ屈曲させる。これにより、第2ブラケット30に対する第1ブラケット20の移動は、底面部21及び対向面部23と外面33,34との接触により第1方向Zの移動が規制され、一対の側面部22と外面35との接触により第2方向Xの移動が規制され、屈曲部24と第1接触面37及び第2接触面38との接触により第3方向Yの移動が規制される。その結果、第2ブラケット30に第1ブラケット20を固定できる。
【0032】
第2ブラケット30に対する第1ブラケット20の第1方向Z及び第2方向Xの移動の規制は、屈曲部24とは無関係に、底面部21、側面部22及び対向面部23によって規制される。そのため、第2ブラケット30から屈曲部24に荷重が入力されて、対向面部23に対する屈曲部24の屈曲角度が変化しても、第2ブラケット30に対して第1ブラケット20(防振装置10)が第1方向Z及び第2方向Xにぐらつくことを抑制できる。
【0033】
屈曲部24が凹部36の底面39に接触するので、底面39から屈曲部24が第1方向Zの荷重を受け、その荷重により屈曲部24を介して対向面部23が押され、底面部21と対向面部23との距離が変化し、第2ブラケット30に対して第1ブラケット20が第1方向Zにぐらつくことがある。特に、対向面部23に対する屈曲部24の屈曲角度が90度に近い程、第1ブラケット20が第1方向Zにぐらつき易くなるおそれがある。
【0034】
これに対して第1実施の形態では、対向面部23に対する屈曲部24の屈曲角度が小さいので、底面39から屈曲部24が第1方向Zの荷重を受けても、屈曲部24の屈曲角度を変化させて、底面39からの第1方向Zの荷重を吸収できる。そのため、底面39から屈曲部24が第1方向Zの荷重を受けても、第2ブラケット30に対して第1ブラケット20が第1方向Zにぐらつくことを抑制できる。
【0035】
2つの対向面部23が第2方向Xに離れて設けられ、互いに底面部21及び側面部22を介して連結されるので、第1ブラケット20を第2方向Xへ変形させ易くできる。そのため、第1ブラケット20を第2方向Xへ変形させつつ第1ブラケット20に第2ブラケット30を挿入できるので、第2ブラケット30を挿入し易くでき、防振ユニット1の組み付けを容易にできる。
【0036】
なお、第1ブラケット20に第2ブラケット30を挿入する場合に限らず、第1ブラケット20の底面部21と側面部22と対向面部23とが同一平面である状態から、底面部21を第2ブラケット30の外面33に押し当て、底面部21に対して側面部22を屈曲させ、側面部22に対して対向面部23を屈曲させることが可能である。この場合には、第2ブラケット30に第1ブラケット20を押し当てつつ第1ブラケット20を曲げ加工するので、第1ブラケット20の曲げ加工後のスプリングバックによって第1ブラケット20と第2ブラケット30との間に隙間が比較的生じ易い。
【0037】
これに対して第1実施の形態では、予め第2ブラケット30の外面33,34,35に沿って形成した第1ブラケット20に第2ブラケット30を挿入(圧入)するので、第1ブラケット20と第2ブラケット30との間に隙間を生じ難くできる。その結果、第2ブラケット30に対する第1ブラケット20(防振装置10)のぐらつきを抑制できる。
【0038】
以上の防振ユニット1によれば、第2ブラケット30に対する第1ブラケット20の第3方向Yへの移動を規制するために、凹部36内へ屈曲部24を屈曲させるので、屈曲部24の形状や寸法が凹部36の形状や寸法に応じて制限される。一方、第2ブラケット30に対する第1ブラケット20の第1方向Z及び第2方向Xへの移動を規制するために、第2ブラケット30の外面33,34,35に底面部21、側面部22及び対向面部23をそれぞれ接触させるので、底面部21、側面部22及び対向面部23の形状や寸法の自由度を確保できる。屈曲部24の幅(第3方向Yの寸法)に対して、底面部21、側面部22及び対向面部23の幅(第3方向Yの寸法)を大きく設定する等、それらの形状や寸法を適切に設定することで、第2ブラケット30に対する第1ブラケット20のぐらつきを抑制できる。
【0039】
屈曲部24は、対向面部23に対して第3方向Yと直交する方向へ屈曲するので、屈曲部24が凹部36内に位置すれば、対向面部23に対する屈曲部24の屈曲角度に関わらず、屈曲部24と第1接触面37及び第2接触面38とが接触する。そのため、屈曲部24の屈曲角度の精度を無視できるので、第1ブラケット20に挿入した第2ブラケット30の第3方向Y2への抜け防止の構成を容易にできる。
【0040】
また、対向面部23に対して屈曲部24が第3方向Yと直交する方向へ屈曲するので、第2ブラケット30から屈曲部24が第3方向Yの荷重を受けても、屈曲部24の屈曲角度が変化することを防止できる。これにより、屈曲部24の屈曲角度が変化して第1ブラケット20に挿入した第2ブラケット30が第3方向Y2へ抜けることを防止できる。
【0041】
さらに、対向面部23に対して屈曲部24が第3方向Yと直交する方向へ屈曲するので、第2ブラケット30から屈曲部24が第1方向Zの荷重等を受けて屈曲部24の屈曲角度が変化しても、屈曲部24と第1接触面37及び第2接触面38との接触を維持できる。その結果、第2ブラケット30に対する第1ブラケット20の第3方向Yへのぐらつきを抑制できる。
【0042】
次に
図5、
図6(a)及び
図6(b)を参照して第2実施の形態における防振ユニット50について説明する。第1実施の形態では、凹部36が挿入部32の第2方向Xの全長に亘って形成される場合について説明した。これに対し第2実施の形態では、凹部58が挿入部57の第2方向Xの一部に設けられる場合について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
図5は第2実施の形態における第1ブラケット51に第2ブラケット56を挿入する前の防振ユニット50の斜視図である。
図6(a)は防振ユニット50の断面図であり、
図5(b)は
図6(a)におけるVIb−VIb線における防振ユニット50の断面図である。
【0043】
図5に示すように、防振ユニット50の第1ブラケット51は、第1部材11が固定される板状の底面部52と、底面部52の第2方向X側の両側縁に立設される板状の一対の側面部53と、一対の側面部53の上端縁から互いへ向かって張り出す板状の一対の対向面部54と、対向面部54に連結される板状の屈曲部55とを備える。
【0044】
対向面部54は、屈曲部55の第3方向Y側にそれぞれ張出部54cを備える。第1ブラケット51と第2ブラケット56とを組み付ける前は、対向面部54と屈曲部55とが同一平面に位置するので、対向面部54及び屈曲部55を構成する板材に、張出部54cと屈曲部55とを分割するスリット54dを設けることで、張出部54c及び屈曲部55が形成される。これにより、張出部54c及びスリット54dによって屈曲部55を容易に形成できる。
【0045】
防振ユニット50の第2ブラケット56の挿入部57は、第1ブラケット51に挿入される金属製の部位である。挿入部57は、取付部31から第3方向Y1へ延びて設けられる厚板状の部材であり、XZ断面が矩形状に形成される。挿入部57には、外面34から第1方向Zへ凹んで凹部58が形成される。凹部58は、対向面部54に対して屈曲させた屈曲部55が嵌まる部位である。挿入部57の凹部58よりも第2方向X側の部分は接触部59である。
【0046】
第1ブラケット51と第2ブラケット56とを組み付けるには、まず、対向面部54に対して屈曲部55を屈曲させてない状態の第1ブラケット51の底面部52と対向面部54との間および一対の側面部53の間に第2ブラケット56の挿入部57を挿入する。挿入部57の挿入後、
図6(a)に示すように、対向面部54に対して屈曲部55を凹部58内へ屈曲させる。これにより第2ブラケット56に第1ブラケット51が固定される。
【0047】
対向面部54に対する屈曲部55の屈曲角度を90度とすることで、屈曲部55の先端が凹部58の底面39に接触する。屈曲部55の先端と底面部52とで第2ブラケット56を第1方向Zに挟むことで、第2ブラケット56に対する第1ブラケット51のぐらつきをより抑制できる。
【0048】
屈曲部55が凹部58内に屈曲していない状態では、2つの対向面部54が第2方向Xに離れて設けられるので、第1ブラケット51を第2方向Xの外側へ変形させ易くできる。そのため、第1ブラケット51を第2方向Xの外側へ変形させつつ第1ブラケット51に第2ブラケット56を挿入できるので、第2ブラケット56を挿入し易くでき、防振ユニット50の組み付けを容易にできる。
【0049】
さらに、屈曲部55を凹部58内へ屈曲させた状態で、2つの屈曲部55の第2方向Xの外側の面55cを接触部59に接触させることで、第1ブラケット51を第2方向Xの外側へ変形し難くできる。その結果、第2ブラケット56に対して第1ブラケット51(防振装置10)が第2方向Xへぐらつくことを抑制できる。
【0050】
底面部52、側面部53、対向面部54及び屈曲部55は、曲げ加工した金属板52a,53a,54a,55aの外側の表面にゴム膜52b,53b,54b,55bを設けて形成される。金属板52a,53a,54a,55aは第1部材11との一体成形品である。ゴム膜52b,53b,54b,55bは防振基体13との一体成形品である。
【0051】
屈曲部55の先端までゴム膜55bが設けられるので、ゴム膜55bが底面39に接触する。これにより、第2ブラケット56から第1方向Zの荷重が屈曲部55に入力されても、その荷重をゴム膜55bにより低減できる。これにより、第2ブラケット56からの第1方向Zの荷重によって、屈曲部55の屈曲角度が変化したり、屈曲部55を介して対向面部54が第1方向Zに押されたりすることを抑制できる。
【0052】
図6(b)に示すように、屈曲部55の側縁24a,24bまでゴム膜55bが設けられるので、ゴム膜55bが凹部58の第1接触面37及び第2接触面38に接触する。屈曲部55の金属板55aと、第1接触面37及び第2接触面38との間でゴム膜55bが潰れるので、屈曲部55と第1接触面37及び第2接触面38とを密に接触させることができる。その結果、第2ブラケット56に対して第1ブラケット51が第3方向Yへぐらつくことをより抑制できる。
【0053】
次に
図7(a)及び
図7(b)を参照して第3実施の形態における防振ユニット60について説明する。第1実施の形態では、対向面部23に対して屈曲部24が第3方向Yと直交する方向に屈曲する場合について説明した。これに対し第3実施の形態では、対向面部23に対して屈曲部62,63が、第3方向Yと直交せずに第3方向Yと交わる方向に屈曲する場合について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
図7(a)は第3実施の形態における第1ブラケット61に第2ブラケット65を挿入する前の防振ユニット60の斜視図であり、
図7(b)は第1ブラケット61に第2ブラケット65を固定した防振ユニット60の斜視図である。
【0054】
図7(a)に示すように、防振ユニット60の第1ブラケット61は、第2方向Xに離れた一対の対向面部23から互いに向かってそれぞれ張り出す屈曲部62,63を備える。屈曲部62,63は、金属製の板材であり、対向面部23との一体成形品である。
【0055】
屈曲部62は、対向面部23の第3方向Y2側に連結され、対向面部23から第3方向Y1側へ向かって張り出す。屈曲部63は、対向面部23の第3方向Y1側に連結され、対向面部23から第3方向Y2側へ向かって張り出す。即ち、4つの屈曲部62,62は、第1方向Zから第3方向Yを上下として見たときに、X字状に配置される。
【0056】
防振ユニット60の第2ブラケット65の挿入部66は、第1ブラケット61に挿入される金属製の部位である。挿入部66は、取付部31から第3方向Y1へ延びて設けられる厚板状の部材であり、XZ断面が矩形状に形成される。挿入部66には、外面34から第1方向Zへ凹んで凹部67が形成される。挿入部66の凹部67よりも第2方向X側の部分は接触部68である。
【0057】
凹部67は、対向面部23に対して屈曲させた屈曲部62,63が内側に位置する部位である。凹部67は、第1方向Zから第3方向Yを上下として見たときに菱形状に形成される。凹部67の内面は、第3方向Y1側へ向いた2つの第1接触面67aと、第3方向Y2側へ向いた2つの第2接触面67bとを備える。
【0058】
第1ブラケット61と第2ブラケット65とを組み付けるには、まず、対向面部23に対して屈曲部62,63を屈曲させてない状態の第1ブラケット61の底面部21と対向面部23との間および一対の側面部22の間に第2ブラケット65の挿入部66を挿入する。挿入部66の挿入後、
図7(b)に示すように、対向面部23に対して屈曲部62,63を凹部67内へ屈曲させる。対向面部23に対する屈曲部62の屈曲角度を90度にして、屈曲部62を第1接触面67aに接触させ、屈曲部63を第2接触面67bに接触させる。これにより第2ブラケット65に第1ブラケット61が固定される。
【0059】
第3方向Yと垂直でなく第3方向Yと交わる第1接触面67a及び第2接触面67bに、第3方向Yと直交せずに第3方向Yと交わる方向に屈曲した屈曲部62,63がそれぞれ接触するので、屈曲部62が第2ブラケット65に第3方向Y2の力を加え、屈曲部63が第2ブラケット65に第3方向Y1の力を加える。そのため、第2ブラケット65に対して第1ブラケット61が第3方向Yへぐらつくことを抑制できる。
【0060】
また、第1接触面67a及び第2接触面67bに屈曲部62,63がそれぞれ接触するので、即ち、凹部67よりも第2方向X側の接触部68に屈曲部62,63がそれぞれ接触するので、2つの対向面部23が第2方向Xに離れた第1ブラケット61を第2方向Xの外側へ変形し難くできる。その結果、第2ブラケット65に対して第1ブラケット61が第2方向Xへぐらつくことを抑制できる。
【0061】
対向面部23の第3方向Y1側と第3方向Y2側とにそれぞれ屈曲部62,63が設けられるので、対向面部23の第3方向Yの寸法が大きくなる。対向面部23の第3方向Yの寸法が大きい程、第2ブラケット65に対する第1ブラケット61のぐらつきを抑制できるので、屈曲部62,63によって第3方向Yの寸法が確保された対向面部23により第1ブラケット61のぐらつきをより抑制できる。
【0062】
次に
図8(a)及び
図8(b)を参照して第4実施の形態における防振ユニット70について説明する。第1実施の形態では、底面部21と対向面部23とで第2ブラケット30が第1方向Zに挟まれる場合について説明した。これに対し第3実施の形態では、底面部21と屈曲部73とで第2ブラケット75が第1方向Zに挟まれる場合について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
図8(a)は第4実施の形態における第1ブラケット71に第2ブラケット75を挿入する前の防振ユニット70の斜視図であり、
図8(b)は第1ブラケット71に第2ブラケット75を固定した防振ユニット70の斜視図である。
【0063】
図8(a)に示すように、防振ユニット70の第1ブラケット71は、第1部材11が固定される板状の底面部21と、底面部21の第2方向X側の両側縁に立設される板状の一対の側面部72と、一対の側面部72の上端縁から第1方向Zにそれぞれ張り出す屈曲部73とを備える。第1ブラケット71は、底面部21と側面部72と屈曲部73とが互いに連結された一体成形品であり、第2ブラケット75の外面33,35に沿うように金属製の板材を曲げ加工して形成される。
【0064】
側面部72の底面部21からの高さは、第2ブラケット75の外面33から凹部36の底面39までの高さと同一である。屈曲部73は、第1ブラケット71に第2ブラケット75を挿入した状態で、側面部72に対して凹部36内へ屈曲する部位である。
【0065】
防振ユニット70の第2ブラケット75の挿入部76は、第1ブラケット71に挿入される金属製の部位である。挿入部76は、取付部31から第3方向Y1へ延びて設けられる厚板状の部材であり、XZ断面が矩形状に形成される。挿入部76には、外面34から第1方向Zへ凹んで凹部36が形成される。第2ブラケット75は、挿入部76の外面34から第2方向Xに張り出して第3方向Y1へ向いた第1接触面78と、凹部36の内面であって第3方向Y2へ向いた第2接触面38とを備える。
【0066】
第1ブラケット71と第2ブラケット75とを組み付けるには、まず、側面部72に対して屈曲部73を屈曲させてない状態の第1ブラケット71の一対の側面部72の間に第2ブラケット75の挿入部76を挿入する。次いで、
図8(b)に示すように、側面部72を第1接触面78に接触させた状態で、側面部72に対して屈曲部73を凹部36内へ屈曲させ、屈曲部73の側縁73bを第2接触面38に接触させる。さらに、側面部72に対する屈曲部73の屈曲角度を90度にして、屈曲部73を凹部36の底面39に接触させ、屈曲部73の側縁73bを第2接触面38に接触させる。
【0067】
これにより、第2ブラケット75に対する第1ブラケット71の移動は、底面部21及び屈曲部73により第1方向Zの移動が規制され、一対の側面部72により第2方向Xの移動が規制され、側面部72と第1接触面78との接触により第3方向Y2の移動が規制され、屈曲部73と第2接触面38との接触により第3方向Y1の移動が規制される。その結果、第2ブラケット75に第1ブラケット71を固定できる。
【0068】
第3方向Y1へ向いた凹部36の内面77と第2接触面38との距離は、屈曲部73の幅(第3方向Yの寸法)よりも大きく設定されるので、屈曲部73の側縁73aと内面77とを非接触にできる。これにより、屈曲部73を凹部36内へ屈曲させるとき、屈曲部73の側縁73aと凹部36の内面77とが擦れ合うことを防止でき、屈曲部73を屈曲させ易くできる。
【0069】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、防振装置10や第1ブラケット20,51,61,71、第2ブラケット30,56,65,75等の形状は一例であり、種々の形状を採用することは当然である。例えば、第2ブラケットの挿入部をXZ断面において楕円形状や多角形状に形成し、その第2ブラケットの形状に沿って第1ブラケットの形状を設定することが可能である。
【0070】
上記第1,2,3実施の形態では、2つの対向面部23,54が第2方向Xに離れて設けられる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、対向面部を第2方向Xに離さず、一対の側面部22,53を対向面部で連結することが可能である。この場合、第1ブラケットが第2方向Xに広がるように変形することを抑制できるので、第2ブラケット30,56,65に対して第1ブラケットが第2方向Xにぐらつくことを抑制できる。
【0071】
上記第1,2,3実施の形態では、凹部36,58,67が底面39を有する窪みである場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、凹部を底面39を有しない、第2ブラケット30,56,65を第1方向Zに貫通する貫通孔とすることは当然可能である。この場合、屈曲部24,55,62,63に底面39から第1方向Zの荷重が加わらないので、その荷重によって屈曲部24,55,62,63を介して対向面部23,54が押され、底面部21,52と対向面部23,54との距離の変化を防止できる。これにより、底面部21,52と対向面部23,54との距離の変化に起因して、第2ブラケット30,56,65に対して第1ブラケット20,51,61が第1方向Zにぐらつくことを抑制できる。また、屈曲部24,55,62,63と底面39とが接触しないように、屈曲部24,55,62,63や底面39の寸法を設定することで、同様に、第2ブラケット30,56,65に対して第1ブラケット20,51,61が第1方向Zにぐらつくことを抑制できる。
【0072】
上記第1,2実施の形態では、1つの屈曲部24,55の側縁24a,24bが1つの凹部36,58の対向する内面である第1接触面37及び第2接触面38に接触する場合について説明したが必ずしもこれに限られるものではない。第3方向Yに2つの屈曲部24,55を並べて設け、2つのうち一方の屈曲部24,55の側縁24aを第1接触面37に接触させ、2つのうち他方の屈曲部24,55の側縁24bを第2接触面38に接触させて、第2ブラケット30,56に対する第1ブラケット20,51の第3方向Yの移動を規制することが可能である。また、2つの屈曲部24,55にそれぞれ対応させて凹部36,58を複数設けることも可能である。
【0073】
上記第2実施の形態では、金属板52a,53a,54a,55aの外側の表面にゴム膜52b,53b,54b,55bを設けて底面部52、側面部53、対向面部54及び屈曲部55が形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。金属板52a,53a,54a,55aの内側にもゴム膜を設けることが可能である。これにより、金属板52a,53a,54a,55aと第2ブラケット56との間でゴム膜を潰して、第1ブラケット51と第2ブラケット56とを密に接触させることができるので、第2ブラケット56に対する第1ブラケット51のぐらつきを抑制できる。
【0074】
また、上記各実施の形態のいずれかの一部または全部を、他の実施の形態の一部または全部と組み合わせることは可能である。例えば、第1,2,3実施の形態における第2ブラケット30,56,65に第4実施の形態における第1接触面78を設けることが可能である。また、第1,3,4実施の形態における底面部21、側面部22,72、対向面部23及び屈曲部24,62,63,73を、第2実施の形態における、金属板52a,53a,54a,55aの外側の表面にゴム膜52b,53b,54b,55bを設けた底面部52、側面部53、対向面部54及び屈曲部55に置き換えることが可能である。