(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6824740
(24)【登録日】2021年1月15日
(45)【発行日】2021年2月3日
(54)【発明の名称】デジタル印刷のための布地前処理剤
(51)【国際特許分類】
D06P 5/00 20060101AFI20210121BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20210121BHJP
C08L 79/02 20060101ALI20210121BHJP
C08L 101/02 20060101ALI20210121BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20210121BHJP
C09D 7/40 20180101ALI20210121BHJP
C09D 11/322 20140101ALI20210121BHJP
C09D 179/02 20060101ALI20210121BHJP
C09D 201/02 20060101ALI20210121BHJP
D06P 7/00 20060101ALI20210121BHJP
D21H 19/30 20060101ALI20210121BHJP
【FI】
D06P5/00 104
B41J2/01 121
B41J2/01 123
B41J2/01 125
C08L79/02
C08L101/02
C09D5/00 D
C09D7/40
C09D11/322
C09D179/02
C09D201/02
D06P7/00
D21H19/30
【請求項の数】14
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-540680(P2016-540680)
(86)(22)【出願日】2014年11月20日
(65)【公表番号】特表2017-511431(P2017-511431A)
(43)【公表日】2017年4月20日
(86)【国際出願番号】US2014066564
(87)【国際公開番号】WO2015094564
(87)【国際公開日】20150625
【審査請求日】2017年11月8日
【審判番号】不服2019-11828(P2019-11828/J1)
【審判請求日】2019年9月9日
(31)【優先権主張番号】61/917,446
(32)【優先日】2013年12月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506347528
【氏名又は名称】ルブリゾル アドバンスド マテリアルズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】パン, ユン−ロン
(72)【発明者】
【氏名】アンデルレ, ゲイリー エー.
(72)【発明者】
【氏名】ローデ, ステイシー エル.
【合議体】
【審判長】
村上 騎見高
【審判官】
黒川 美陶
【審判官】
冨永 保
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−150028(JP,A)
【文献】
特開2011−214185(JP,A)
【文献】
特開2013−194122(JP,A)
【文献】
特表2002−512314(JP,A)
【文献】
特開2011−168912(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC D06P, D06M, B41J, C09D, C08G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材前処理剤組成物であって、
a)0.1〜50重量パーセントの、アゼチジニウム官能化ポリマー、
b)0.1〜50重量パーセントの、(1)二酸化硫黄および(2)アリルアミンおよび/またはジアリルアミンの少なくとも部分的に四級化されたコポリマーであって、該少なくとも部分的に四級化されたコポリマーが、3,000〜200,000g/molの重量平均分子量であり、アリルアミンが、モノ、ジおよびトリアルキル(C1−C6)置換アリルアミンを包含し、ジアリルアミンが、モノおよびジアルキル(C1−C6)置換ジアリルアミンを包含する、少なくとも部分的に四級化されたコポリマー
を含み、該重量パーセントは100重量部の該基材前処理剤組成物に基づき、該基材前処理剤組成物が、基材上での使用のためのものであり、該基材が、ポリマーフィルムまたは織布基材もしくは不織布基材である、
基材前処理剤組成物。
【請求項2】
前記アゼチジニウム官能化ポリマーが、1ポリマー当たり平均で少なくとも5個のアゼチジニウム基を有し、5,000〜500,000g/molの数平均分子量であり、前記コポリマーが、1ポリマー当たり少なくも5個の四級化アミン基を有する、請求項1に記載の基材前処理剤組成物。
【請求項3】
0.2〜15重量パーセントの有機酸をさらに含む、請求項1または2に記載の基材前処理剤組成物。
【請求項4】
モノまたはポリヒドロキシC1〜C10アルコール、500g/mol未満の分子量のアルキレンオキシドオリゴマー、または界面活性剤の群から選択される表面張力調整剤をさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の基材前処理剤組成物。
【請求項5】
前記表面張力調整剤が、存在し、かつC1〜C10アルコールおよび500g/mol未満の分子量のアルキレンオキシドオリゴマーの両方を含む、請求項4に記載の基材前処理剤組成物。
【請求項6】
表面活性剤をさらに含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の基材前処理剤組成物。
【請求項7】
前記アゼチジニウム官能化ポリマーが、付与される前記基材前処理剤組成物の重量に基づいて0.2〜10重量%で存在する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の基材前処理剤組成物。
【請求項8】
(1)二酸化硫黄および(2)アリルアミンおよび/またはジアリルアミンの前記コポリマーが、付与される前記基材前処理剤組成物の重量に基づいて0.2〜10重量%で存在する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の基材前処理剤組成物。
【請求項9】
(1)二酸化硫黄および(2)アリルアミンおよび/またはジアリルアミンの前記コポリマーが、付与される前記基材前処理剤組成物の重量に基づいて1〜5重量%で存在する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の基材前処理剤組成物。
【請求項10】
テキスタイル基材を前処理し、該基材上に顔料含有デジタル付与インクで印刷する方法であって、
a)テキスタイル基材を準備する工程、
b)請求項1に記載の基材前処理剤組成物を付与する工程、
c)該基材前処理剤組成物上に、顔料含有インクでデジタル印刷する工程
を含む方法。
【請求項11】
請求項10に記載の、テキスタイル基材を前処理し、該基材上に顔料含有デジタル付与インクで印刷する方法であって、前記基材前処理剤組成物の付与と、前記基材前処理剤組成物上における顔料含有インクでのデジタル印刷との間に、乾燥工程をさらに含む方法。
【請求項12】
請求項10または11に記載の、テキスタイル基材を前処理し、該基材上に顔料含有デジタル付与インクで印刷する方法であって、該基材への結合を達成するために、該基材および基材前処理剤組成物を、100℃〜160℃の温度で少なくとも1分間加熱する工程をさらに含む方法。
【請求項13】
前記テキスタイル基材が、該テキスタイルの重量に基づいて少なくとも25wt.%のポリエステル繊維を含む、請求項10〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記テキスタイル基材が、該テキスタイルの重量に基づいて少なくとも25wt.%の綿繊維を含む、請求項10〜12のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、反応性アゼチジニウム(AZE)基を有する結合性ポリマーと、水溶性カチオン性アミンポリマーと、適切な湿潤剤と、場合により凝固性酸性添加剤とから誘導される、デジタル印刷用の基材前処理剤に関する。そのような前処理剤は、デジタルおよび/またはテキスタイル印刷を包含する種々のインク受容性用途に有用である。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
インクジェットを包含するデジタル印刷は、画像またはデータをコンピュータから直接的に、媒体上に、一般に従来基材上に、再生する方法である。インクが媒体に付与された際に、インクは堅い対称ドットに留まらなければならず、そうでなければ、インクのドットが受容媒体に浸透し始めるか、にじみ(feather)始めるかまたは不規則に広がり始めて、デジタルプリンター設計者が意図したよりわずかに広い面積を覆うことになる(ドットゲイン)。その結果、現れる画像またはデータが、特にオブジェクトおよびテキストの端において、低い色強度、不鮮明さ(カラーブリーディング、またはカラー・トゥ・カラー・ブリーディング)などを有する。
【0003】
E.I.Du Pont de Nemoursの欧州特許第1924658号は、高分子分散剤および架橋ポリウレタン結合剤添加剤(該高分子分散剤とは異なる)で分散させた二酸化チタン顔料が分散されている水性媒体(インク)を記載している。白色インクは、非白色テキスタイルに画像を印刷するのに特に有用であると考えられていた。
【0004】
E.I.Du Pont de Nemoursの米国特許出願公開第2008/0092309A1号は、非イオン性ラテックスポリマーおよび多価カチオン性塩を含む水性インクジェット印刷前処理剤を記載している。
【0005】
Kornitの米国特許出願公開第2007/0103528号は、洗濯において劣化せず、手触りが悪くなく、かつもろくない、高品質かつ耐久性の耐摩耗性画像を生じるデジタル印刷用のインクに関する。
【0006】
Kimberly−Clark Worldwide Inc.の欧州特許第1356155号は、吸収性溶液と共に使用されるインクジェット印刷用カチオン性ポリマー被覆剤配合物に関する。該吸収性溶液は、尿素(例えば、酸性染料系インク)またはアンモニウム塩、例えば、シュウ酸アンモニウムおよび酒石酸アンモニウムであることができる。一実施形態において、該配合物は、5〜95%のカチオン性ポリマーまたはコポリマー、および約5〜20%の布地柔軟剤を含有する。該カチオン性ポリマーは、該文献の
図1A〜1Cに示されており、例えばジアリルアンモニウムモノマーからのフリーラジカル重合ポリマーであると見られる。
【0007】
Kimberly−Clark Worldwide Inc.の欧州特許第1240383号は、カチオン性ポリマーまたはコポリマーのような基材処理用の吸収性溶液および布地柔軟剤を含む被覆剤配合物の改良に関する。それは、洗濯堅牢性(washfastness)を増加させる高分子ラテックス結合剤の能力も記載している。
【0008】
米国特許第6291023号は、下記の1つから選択される作用物質を含む被覆剤を教示している:a)アゼチジニウムポリマー、b)グアニジンポリマー、c)アゼチジニウムポリマーとグアニジンポリマーとの混合物、およびd)アゼチジニウムモノマーとグアニジンモノマーとのコポリマー。該被覆剤は、テキスタイルにおいて、反応性染料で印刷される場合に高品質印刷画像を与えるために使用される。
【0009】
国際公開第92/07124号は、イミダゾリン基およびアゼチジニウム基を担持するポリマーを使用する繊維の処理を開示している。国際公開第98/29530号は、外観利点を与えるための、ポリアミド−ポリアミンを含有する洗濯洗剤組成物を開示している。アジピン酸−ジエチレントリアミンとのエピクロロヒドリン反応生成物が要約書に開示されている。米国特許第7429558号は、アゼチジニウム修飾ポリマー、およびそれからの布地処理剤(汚れ固着および染料吸着を避ける)を開示している。
【0010】
米国特許第4954395号は、インク輸送層およびインク保持層を含む記録媒体を開示している。欧州特許第0947350号は、カチオン性樹脂を任意に含むインクジェット記録材料を開示している。米国特許出願公開第2004/0263598号は、Danfix(商標)723のような固着剤を含みうる前処理を含むテキスタイル印刷の方法を開示している。米国特許出願公開第2009/0191383号は、テキスタイル基材を着色する方法、および前処理浴を開示している。米国特許出願公開第2008/0024536号は、カチオン性有機化合物と共に、画像形成装置および方法を開示している。
前記文献は、様々な背景において画像の特性を向上させる種々の方法を教示している。ある方法はカチオン性ポリマーを必要とし、ある方法は布地柔軟剤を必要とし、ある方法は架橋粒子を必要とし、ある方法は二酸化チタン顔料を記載し、他の方法は反応性染料を使用している。それらは全て、良好な色強度、はっきりした鮮明明瞭な画像、およびテキスタイルの機械洗浄中の良好な色保持を有する、テキスタイル上の柔らかい手触りの画像を探求していると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】欧州特許第1924658号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2008/0092309A1号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2007/0103528号明細書
【特許文献4】欧州特許第1356155号明細書
【特許文献5】欧州特許第1240383号明細書
【特許文献6】米国特許第6291023号明細書
【特許文献7】国際公開第92/07124号
【特許文献8】国際公開第98/29530号
【特許文献9】米国特許第7429558号明細書
【特許文献10】米国特許第4954395号明細書
【特許文献11】欧州特許第0947350号明細書
【特許文献12】米国特許出願公開第2004/0263598号明細書
【特許文献13】米国特許出願公開第2009/0191383号明細書
【特許文献14】米国特許出願公開第2008/0024536号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の概要
本発明は、下記を含む基材前処理剤組成物に関する:アゼチジニウム官能化ポリマー、二酸化硫黄およびアリルアミンおよび/またはジアリルアミンの部分または完全四級化コポリマー、表面張力調整剤、ならびに場合により防腐剤(前処理剤が長期間貯蔵される場合)。前処理剤は、任意の高分子結合剤、粒子材料、および他の添加剤(前処理剤がよりよく機能するのを助け、かつデジタル印刷された後にその外観および色を維持するのを助ける添加剤)も含有することができる。前処理剤は、デジタル印刷画像が高い色強度、良好な布地手触り、洗濯耐久性(wash durability)、画像耐久性などを達成するのに役立つ。
【0013】
前処理剤は、綿繊維および/またはポリエステル繊維を有する淡色または白色テキスタイルに特に有用である。淡色および白色テキスタイルは、永久プレス、防しわ性、耐汚染性、および望ましい手触り感を与えるために既に付与された様々な前処理剤を有する場合が多い。これらの様々な前処理剤は、布地繊維におけるデジタルインクの接触角を変化させることができ(これにより、インクがテキスタイルに過浸透するかまたは浸透不足となる)、かつ布地繊維へのデジタルインクの直接的かつ結合性の接触を防ぐことによってデジタルインクの永久接着を妨げうる。テキスタイル上の高色強度デジタル印刷着色画像を促進し、その後に通常の洗濯工程中の色落ちに耐える、汎用白色前処理剤を有することが望ましい。高い色強度は、布地へのインクの浸透を最小限にして大部分のインクを布地の表面に保持することによって一般に達成される。色落ちの防止は、水性洗濯手順の間にインクが繊維から洗い落とされないように繊維とインクとの良好な結合を与えることによって一般に達成される。これは、水性洗濯工程中のインクの膨潤および軟化を防止するための、繊維へのインクの架橋またはインクの架橋を含みうる。
一実施形態において、例えば、以下の項目が提供される。
(項目1)
基材前処理剤物質であって、
a)0.1〜50重量パーセントの、アゼチジニウム官能化ポリマー、
b)約0.1〜50重量パーセントの、約3,000〜200,000g/molの分子量の、二酸化硫黄およびアリルアミンおよび/またはジアリルアミンの少なくとも部分的に四級化されたコポリマー、
c)任意に、モノまたはポリヒドロキシC1〜C10アルコール、500g/mol未満の分子量のアルキレンオキシドオリゴマー、または界面活性剤の群から選択される表面張力調整剤
を含み、該重量パーセントは100重量部の基材前処理剤に基づく、
基材前処理剤物質。
(項目2)
前記アゼチジニウム官能化ポリマーが、1ポリマー当たり平均で少なくとも5個のアゼチジニウム基を有し、約5,000〜500,000g/molの分子量であり、前記コポリマーが、1ポリマー当たり少なくも5個の四級化アミン基を有する、項目1に記載の基材前処理剤物質。
(項目3)
0.2〜15重量パーセントの有機酸をさらに含む、項目1または2に記載の基材前処理剤物質。
(項目4)
前記表面張力調整剤が、存在し、C1〜C10アルコールおよび500g/mol未満の分子量のアルキレンオキシドオリゴマーの両方を含む、項目1〜3のいずれか一項に記載の基材前処理剤物質。
(項目5)
表面活性剤をさらに含む、項目1〜4のいずれか一項に記載の基材前処理剤物質。
(項目6)
ペンダントアゼチジニウム基を有する前記ポリマーが、付与される前記基材前処理剤の重量に基づいて約0.2〜約10重量%で存在する、前記項目のいずれか一項に記載の基材前処理剤物質。
(項目7)
二酸化硫黄およびアリルアミンおよび/またはジアリルアミンの前記コポリマーが、付与される前記基材前処理剤の重量に基づいて約0.2〜約10重量%で存在する、前記項目のいずれか一項に記載の基材前処理剤物質。
(項目8)
ペンダントアゼチジニウム基を有する前記ポリマーが、付与される前記基材前処理剤の重量に基づいて約1〜約5重量%で存在する、前記項目のいずれか一項に記載の基材前処理剤物質。
(項目9)
二酸化硫黄およびアリルアミンおよび/またはジアリルアミンの前記コポリマーが、付与される前記基材前処理剤の重量に基づいて約1〜約5重量%で存在する、前記項目のいずれか一項に記載の基材前処理剤物質。
(項目10)
基材上の乾燥フィルム、表面処理剤または被覆剤としての、前記項目のいずれか一項に記載の基材前処理剤物質であって、該基材がポリマーフィルムまたは織布もしくは不織布基材(より望ましくは紙製品、カード用紙またはボール紙)を含む、基材前処理剤物質。
(項目11)
テキスタイル布または衣類の形態の項目10に記載の基材上の乾燥フィルム、表面処理剤または被覆剤としての、基材前処理剤物質。
(項目12)
項目10または11に記載の基材上の基材前処理剤であって、前記織布または不織布基材が、少なくとも25wt.%綿、より望ましくは少なくとも50wt.%綿、好ましくは少なくとも80wt.%綿である、基材前処理剤。
(項目13)
項目10または11に記載の基材上の基材前処理剤であって、前記織布または不織布基材が、少なくとも25wt.%ポリエステル、より望ましくは少なくとも50wt.%ポリエステル、一実施形態において好ましくは少なくとも80wt.%ポリエステルである、基材前処理剤。
(項目14)
項目10または11に記載の基材上の基材前処理被覆剤であって、該基材前処理被覆剤上の印刷画像(より望ましくは、該印刷画像は少なくとも1つの顔料を含有する)をさらに含む、基材上の基材前処理被覆剤。
(項目15)
任意に高分子結合剤を含有する項目10に記載の基材上の基材前処理剤であって、該基材が高分子フィルムである(一実施形態において、望ましくはポリエステル系基材である)、基材上の基材前処理剤。
(項目16)
テキスタイル基材を前処理し、該基材上に顔料含有デジタル付与インクで印刷する方法であって、
a)テキスタイル基材を準備する工程、
b)項目1に記載の基材前処理剤を付与する工程、
c)該基材前処理剤上に、顔料含有インクでデジタル印刷する工程
を含む方法。
(項目17)
項目16に記載の、テキスタイル基材を前処理し、該基材上に顔料含有デジタル付与インクで印刷する方法であって、前記前処理剤の付与と、前記基材前処理剤上における顔料含有インクでのデジタル印刷との間に、乾燥工程をさらに含む方法。
(項目18)
項目16または17に記載の、テキスタイル基材を前処理し、該基材上に顔料含有デジタル付与インクで印刷する方法であって、該基材への結合を達成するために、該基材、前処理剤および任意に1つまたはそれを超える顔料を含有するインクを、約100℃〜約160℃の温度で少なくとも1分間加熱する工程をさらに含む方法。
(項目19)
前記テキスタイル基材が、該テキスタイルの重量に基づいて少なくとも25wt.%のポリエステル繊維を含む、項目16〜18のいずれか一項に記載の方法。
(項目20)
前記テキスタイル基材が、該テキスタイルの重量に基づいて少なくとも25wt.%の綿繊維を含む、項目16〜18のいずれか一項に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】添付の図面は、市販のダイレクト・トゥ・ガーメント前処理剤上、または本開示の実施例Aの前処理剤上の、デジタル印刷画像におけるASTM E308−85の色結果からの色度図を示す。
【
図2】添付の図面は、市販のダイレクト・トゥ・ガーメント前処理剤上、または本開示の実施例Aの前処理剤上の、デジタル印刷画像におけるASTM E308−85の色結果からの色度図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明の詳細な説明
アゼチジニウム官能化ポリマーは、紙の湿潤強度の増強、および他の衣料品への永久プレス型機能で周知である。アゼチジニウム官能化ポリマーは、化学的に反応性であり、基材のような他の物質上のアミン、カルボキシル、ヒドロキシルおよびチオール官能基への結合を形成することが公知である。理論に縛られるものではないが、アゼチジニウム官能化ポリマーは、綿繊維、および後に付与されるインク中の結合剤の両方に結合し、処理された基材上の印刷画像において、洗濯手順の間に結合剤および色の保持を強化すると理論づけられる。好ましいアゼチジニウム官能化ポリマーは、エピクロロヒドリンを、第二級アミン基含有ポリマーと反応させることによって、またはモノマー上の第二級アミン基と反応させ、該モノマーを後に重合させるかまたは他のエチレン性不飽和モノマーと共重合させてコポリマーを形成することによって、形成される。2つの好ましい種類のアゼチジニウム官能化ポリマーは、ポリアミドとエピクロロヒドリンとの反応生成物(PAE樹脂として公知)、およびポリアミンとエピクロロヒドリンとの反応生成物(PAmE樹脂として公知)を含む。
【0016】
「アゼチジニウム官能化ポリマー」は、置換または非置換アゼチジン環(すなわち、4員窒素含有複素環)を含有するモノマーサブユニットから構成されるポリマーである。一般に、本発明に有用なアゼチジニウムポリマーは、下記の構造式(I)を有するモノマー単位から成る:
【化1】
【0017】
式中、Xは、通常、塩素であり、Yは、通常、OHであり、他のモノマーからの任意の他の反復単位を有する。ポリマーへ向かう破線結合は、アルキレン基に向かい、X
−は、アニオン性、有機または無機対イオンであり、Yは、水素、ヒドロキシル、ハロ、アルコキシ、C
1−C
6アルキル、アミノ、カルボキシ、アセトキシ、シアノおよびスルフヒドリルから成る群から選択される。各メチレン基は、独立に、ヒドロキシル、ハロ、アルコキシ、アルキル、アミノ、カルボキシ、アセトキシ、シアノ、C
1−C
6アルキルおよびスルフヒドリルから選択される基で置換されていてもよい。好ましいポリマーにおいて、X
−は、ハライド、アセテート、メタンスルホネート、スクシネート、シトレート、マロネート、フマレート、オキサレートおよびハイドロゲンスルフェートから成る群から選択され、前記構造のメチレン基は、独立に、非置換であるかまたはC
1−C
6アルキルで置換され、Yは水素またはヒドロキシルである。
【0018】
アゼチジニウムポリマーは、ホモポリマーであってもよく、または1つもしくはそれを超える非アゼチジニウムモノマー単位がポリマー構造に組み込まれているコポリマーであってもよい。任意の数のコモノマーを使用して、本発明に使用するのに好適なアゼチジニウムコポリマーを形成しうるが、特に好ましいアゼチジニウムコポリマーはアミノアミドアゼチジニウムである。さらに、アゼチジニウムポリマーは、本質的に直鎖であってもよく、または分岐もしくは架橋していてもよい。アゼチジニウムポリマーの量は、望ましくは、前処理剤の重量当たりの活性ポリマーの重量として、約0.1〜約50wt.%であり、より望ましくは約0.2〜約10、20または30wt.%である。
【0019】
ポリマー中の反応性アゼチジニウム基のパーセンテージは、ポリマー中の反応性基の数を適合するために制御された方法で調節することができる。アゼチジニウム基はpH変化に非感受性であるが、そのような基はアニオン性種および求核性種の存在に高感受性である。ある場合に、アゼチジニウムポリマーを調製するために使用される反応条件を調節して(例えば、pHを高くすることによって)ポリマー内にアニオン基を生成し、次に、該アニオン基が分子内架橋に参加することが望ましい場合がある。他の場合に(例えば、ポリマーが何週間または何カ月間も貯蔵される場合に)、pHを5、4または3より低く維持して、ポリマーを分子内架橋に対して安定化することが望ましい。
【0020】
望ましくは、これらのアゼチジニウム官能化ポリマーは、1ポリマー当たり少なくとも5個、10個または15個のアゼチジニウム基を有する。ポリマー主鎖は限られた数の第二級アミン基しか有することができず、第二級アミン基の数はポリマー上のアゼチジニウム基の数を制限するので、アゼチジニウム基の数には上限がある。官能化ポリマーのポリマーは、アゼチジニウム基での官能化の前に、一般に、約5,000〜約175,000g/molの数分子量を有する。当工業において、それらは5,000〜12,000の分子量を有する低分子量ポリマー、および125,000〜175,000g/molの分子量を有する高分子量ポリマーをさす。アゼチジニウム基での官能化の後に、ポリマーは分子内架橋することができ、該ポリマーの分子量をさらに増加させる。
【0021】
そのようなポリマーは市販されており、Georgia Pacific Resins,Inc.(アトランタ、Ga.)からの「AMRES(商標)」、Hercules,Inc.(ウィルミントン、Del.)からの「KYMENE(商標)」、およびHercules,Inc.および/またはAshland Chemicalからの「Polycup(商標)」を包含する。これらのアゼチジニウムポリマーは、一般に、ポリ(アミノアミド)エピクロロヒドリン(PAE)樹脂と称され、そのような樹脂は、一般に、第二級アミノ基を含有する水溶性ポリアミドをエピクロロヒドリンでアルキル化することによって調製される。他の好適なアゼチジニウムポリマーは、当業者に公知であり、ならびに/または関連するテキスト、特許文献および参考文献に記載されている。
【0022】
アゼチジニウム官能化ポリマーの作製の一例はUS5510004であり、該特許は、N,N−ジアリル−3−ヒドロキシアゼチジニウムおよび任意の他のコモノマーに関するアゼチジニウム官能化ポリマー(PAmE、ポリアミンエピクロロヒドリン)の作製について詳しく記載している。好ましいコモノマーは、アクリルアミド、ジアリルアミン、ジアリルアミンヒドロハライド、メチルジアリルアミン、メチルジアリルアミンヒドロハライド、ジメチルジアリルアンモニウムハライド、マレイン酸、ナトリウムビニルスルホネート、ナトリウムアクリレート、ナトリウムメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸のナトリウム塩、N−ビニル−2−ピロリジノン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、ビニルアセテート、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、4−スチレンスルホン酸、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、グリシジルアクリレートおよびグリシジルメタクリレートである。最も好ましいコモノマーは、N−ビニル−2−ピロリジノンである。前記文献におけるコポリマーに存在する不飽和コモノマーの好ましいレベルは、N,N−ジアリル−3−ヒドロキシアゼチジニウムハライド+不飽和コモノマーのモル分率として表わされ、約10〜約85モルパーセント、より好ましくは約30〜約65モルパーセント、最も好ましくは約45〜約55モルパーセントである。N,N−ジアリル−3−ヒドロキシアゼチジニウムクロリドとN−ビニル−2−ピロリジノンとのコポリマーの場合、好ましいモル比は、約50%N,N−ジアリル−3−ヒドロキシアゼチジニウムクロリドおよび約50%N−ビニル−2−ピロリジノンである。
【0023】
アゼチジニウム官能化ポリマー(PAE、ポリアミドエピクロロヒドリン)に関する他の論文は下記論文である:Characterization of Polyamideamine−Epichlorohydrin(PAE)Resins,Roles of Azetidinium Groups and Molar Mass on PAE in Wet Strength Development of Paper Prepared with PAE;Takao Obakataら、J.of Applied Polymer Science,Vol.97,Issue 6,June 28,2005,pp.2249−2255。該論文において、PAE樹脂の作製法を記載し、該作製法は、メチルアジペートおよびジエチレントリアミンを1:1のモル比で130〜140℃で5時間反応させて、該ジエチレントリアミンからの第二級アミン基を有するポリアミドを生成することによって行われる。該ポリマーを約30℃に冷却し、エピクロロヒドリンを30分間にわたって滴下して加え(エピクロロヒドリンと第二級アミン基との1.1:1のモル比)、水で20質量%に希釈し、次に、反応を4.5時間継続させる。次に、架橋を最小限にするためにpHを3より低く維持しながら、混合物を60℃に加熱して、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル基をアゼチジニウムに変換する。
【0024】
前処理剤溶液の第二成分は、カチオン性ポリマーである。カチオン性ポリマーは、後に付与されるデジタルインク中の結合剤および顔料が凝固するのを助けて、デジタル付与インクがその所望位置から移行するのを防ぐ。ポリエステルテキスタイルにおける黄色顔料インクの移行が、カチオン性ポリマーの使用によって部分的に制御されると考えられる。カチオン性ポリマーは、アゼチジニウム官能化ポリマーのアゼチジニウム基を架橋させるための反応性部位としても機能しうる。インク結合剤および顔料を凝固させることは、色強度を高めると考えられる(特にポリエステル繊維において)。本発明のカチオン性ポリマーは、濃色衣類用の前処理剤に広く使用されているカチオン性金属塩より良好な耐洗濯性(wash resistance)(水性洗濯操作後の色強度の安定性)を与えると考えられる。カチオン性金属塩は、おそらくはそれらの水溶性および染料固着の干渉により、着色インクと直接的にうまく機能しない傾向がある。本発明のカチオン性ポリマーは、さらに、アゼチジニウム官能性ポリマーと架橋し、繊維およびインク結合剤に結合する可能性がある。
【0025】
好ましいカチオン性ポリマーは、二酸化硫黄およびジアリルアミンおよび/またはアリルアミンコモノマーのコポリマー(単数または複数)である。ジアリルアミンは、モノおよびジアルキル(C
1−C
6)置換ジアリルアミン、ならびに特に、これらのモノマーの四級化アミン型を包含することを意味する。アリルアミンは、モノ、ジおよびトリアルキル(C
1−C
6)置換アリルアミン、ならびに特に、前記アリルアミンの四級化型を意味する。ジアリルアミンは、モノおよびジアルキル(C1−C6)置換ジアリルアミン(diallylyamine)、ならびに特に、前記ジアリルアミン(diallylyamine)の四級化型を意味する。少なくとも5wt.%の式−S(=O)
2−の反復単位、および40wt.%までのそれらの反復単位を有するコポリマーが好ましい。より好ましいのは、10〜35wt.%の式−S(=O)
2−の反復単位を有するコポリマーである。該コポリマーの残りの約60〜約95wt.%(または65〜90wt.%)は、アリルアミンまたはジアリルアミン(diallylyamine)反復単位か、またはそれらの反復単位と他のアミン含有モノマーまたはアミン基不含有モノマーとのブレンドであることができる。望ましくは、該コポリマーは、少なくとも5、10、15、20、30または40wt.%の、フリーラジカル重合性アリルアミンまたはジアリルアミン(または、両方が存在する場合はアリルアミンとジアリルアミン(diallylyamine)との組合せ)から誘導される反復単位を含有する。ポリマー重量平均分子量は、望ましくは、約3,000〜200,000g/molである。好ましいコポリマーは、CAS26470−16−6(約4000または5000g/molの分子量を有するジメチル−ジアリルアンモニウムクロリドと二酸化硫黄とのコポリマー)である。CAS26470−16−6は、Nittobo Medical Co.Ltd.(102−8489、日本国東京都千代田区九段北4−1−28、九段ファーストプレイス)から入手可能なDanfix(商標)303に対応すると考えられる。二酸化硫黄とのジアリルアミンコポリマーは、二酸化硫黄を有さないジアリルアミンコポリマーより黄色度が低いと考えられる。通常、四級化の間に、全ての第三級アミンが四級化されるわけではない。発明者らの使用のために、四級化アミンがより効果的であるが、効果を達成するために全てのアミン基が第三級でありかつ/または四級化される必要はない。望ましくは、二酸化硫黄およびアリルアミンおよび/またはジアリルアミンのコポリマーは、前処理剤の重量当たりの活性ポリマーの重量として0.1wt.%〜約50wt.%、より望ましくは約0.2〜約10、20または30wt.%の量で使用される。
【0026】
デジタルインクが中〜低表面張力を有する場合、少量の凝固性酸を添加して、黒色インクおよび他の色のインクの、所望上部テキスタイル表面からテキスタイル表面の下部への裏抜けを防止することが望ましい場合がある。望ましくは、このような凝固性酸は、有機酸、例えばカルボン酸またはそれらの組合せから選択される水溶性(望ましくは、25℃において、10g/lまたはそれを超える、より望ましくは25g/lまたはそれを超える、好ましくは50g/lまたはそれを超える濃度において水溶性)酸成分である。これらの水溶性酸は、それらの機能が前処理剤上に付与されたコロイド安定化インクを凝固させるのを助けるので、凝固性酸と呼ばれる。凝固性酸は、1つまたはそれより多いカルボン酸基を有することができる。それは一般に1〜20個の炭素原子、より好ましくは1〜10個の炭素原子を有する。好ましい有機凝固性酸は、ギ酸、酢酸、アジピン酸、クエン酸、酒石酸、イタコン酸、マレイン酸および/またはシュウ酸を包含する。好ましい有機酸は、イタコン酸および/またはポリイタコン酸を包含する。凝固性酸が使用される場合、望ましくは、100重量部の前処理剤に基づいて約0.2〜約15重量パーセント、より望ましくは約0.4〜約6、8または10重量パーセントの量で使用される。そのような酸は、ポリエステルにほとんど影響を与えないが、綿またはセルロース系繊維を劣化させうる(特に、高い酸濃度または高温において)。
【0027】
前処理剤の残部の大部分は水であり、該水は、前処理剤の約50重量パーセント〜約80、90、97.6、98または99重量パーセントで存在することができる。前処理剤は、より高い濃度で製造し、使用者に輸送しうるが、テキスタイル基材への付与前に、約1〜10重量パーセント活性成分に希釈し、残部が水性担体および特殊添加剤である場合に、一般により有効である。したがって、前処理剤は、後に付与されるインクから繊維を隔てうる被覆剤ではなく、繊維処理剤(繊維の表面を改質して、インクとの適切な表面相互作用および結合を促進することを意味する)として特徴づけられる。後の実験において、インクが付与される前に前処理剤が乾燥されたが、前処理剤は、第一インクが基材に付与される際にまだ湿潤状態でありうることが注目される。前処理剤付与のより洗練された方法は、より高い成分濃度も助長し、これによって乾燥時間が短縮される(より少ない水が付与されるため)。
【0028】
前処理剤組成物は、好ましくは、水性液体媒体中において提供されるが、表面張力を調節し、より良好な繊維湿潤を促進し、かつ泡制御を助けるために、少量の水溶性極性有機溶媒が存在しうる。水性液体媒体は一般に水であるが、水溶性または水混和性のいずれかの他の非有機化合物も包含しうる。代表的な極性溶媒は、下記を包含する:一価および多価アルコール、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール;200g/mol未満の分子量のモノおよびポリアルキレングリコール、例えば、ジエチレングリコール、プロピレングリコールなど;ならびに、200g/mol未満の分子量のモノおよびポリ(アルキレングリコール)エーテル、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル(DPnB)、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(EBA)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(DB)、エチレングリコールモノブチルエーテル(EB)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DPM)、およびジエチレングリコールモノメチルエーテル(DM)。一価アルコールは、存在する場合に、望ましくは約0.2〜約10重量パーセント、より望ましくは約0.3〜約5重量パーセントで存在する。モノおよびポリアルキレングリコールは、存在する場合に、望ましくは、前処理剤の約0.02〜約4重量パーセント、より望ましくは約0.04〜約1重量パーセントで存在する。
【0029】
変色、コロイド不安定化、pHシフト、またはそれ以外で前処理剤組成物を損傷させうる生物学的種の増殖を防ぐために、防腐剤、殺細菌剤および殺真菌剤も配合物に存在しうる。これらは、希薄水性処理溶液の保存の分野で当業者に公知の適切な量で存在する。
【0030】
他の実施形態において、前処理剤組成物は、アゼチジニウム官能化ポリマーと、二酸化硫黄およびアリルアミンおよび/またはジアリルアミンのコポリマーとの混合物を含む。2つのポリマーは、互いに対して任意の好適な比率で存在しうる。コポリマー対アゼチジニウム官能化ポリマーの相対量は、約0.05wt%コポリマー/99.95%アゼチジニウム官能化〜0.05%アゼチジニウム官能化ポリマー/99.95%コポリマーにわたることができる。コポリマーおよびアゼチジニウム官能化ポリマーの実際の相対量は、下記によって変化する:使用されるインクの組成(例えば、インク中の着色剤の性質)、テキスタイル基材の性質、およびポリマーの使用に影響を与える他の要素、例えば、各ポリマーの相対的市場価格。一般に、ほぼ等量のコポリマー/アゼチジニウム官能化ポリマーが好ましい場合がある(20wt.%:80〜80:20、または40:60〜60:40)。
【0031】
この実施形態において、水性媒体中にある間の前処理剤組成物のpHは、該組成物が塩基性pHにおいてゲル化する傾向があるので、酸性であるのが望ましい。したがって、pHが7.0未満、好ましくは約5.5未満、最も好ましくは約1.0または2.0〜5.5の範囲であることを確実にするために、必要であれば、酸を前処理剤組成物に添加すべきである。いったん前処理剤が乾燥すれば、pHはゲル化防止に関して重要ではない。いくつかの有機酸は、乾燥中に蒸発して、ゲル形成を促進する。
【0032】
本明細書に記載されている前処理剤組成物および被覆テキスタイル基材を調製するために、多くのアゼチジニウム官能化ポリマーならびに二酸化硫黄およびアリルアミンおよび/またはジアリルアミンのコポリマーのいずれかを使用しうることが認識されるが、好ましいポリマーは、ポリ(アミノアミド)−アゼチジニウムポリマー、例えばポリアゼチジニウムクロリド系ポリマー、例えばポリアミド−ポリアミン−エピクロロヒドリン樹脂である。
【0033】
本発明の前処理剤組成物は、付加的な被膜形成結合剤または樹脂を必要としない。そのような結合剤の添加は、色の洗濯堅牢性を助けることができるが、ある場合には、布地の色を変化させる(シャドウバックグラウンドを残す)傾向もある。「被膜形成結合剤」は、テキスタイル基材への付与後に、該テキスタイル基材の強度向上を与える物質を意味する。前処理剤が高分子フィルム基材用である場合、該基材に適合性の高分子結合剤が望ましい場合がある。
【0034】
付加的な前処理剤組成物成分は、下記を包含するが、必ずしもそれらに限定されない:
無機充填剤、湾曲防止剤、または当分野で一般に知られている付加的従来成分、例えば、界面活性剤、可塑剤、湿潤剤、UV吸収剤、耐光性強化剤、高分子分散剤、媒染剤、蛍光増白剤、布地柔軟剤またはレベリング剤。本発明のテキスタイル前処理剤組成物における使用に望ましい場合がある付加的成分は、当業者に公知であり、ならびに/または関連テキストおよび文献に記載されている。
【0035】
テキスタイル基材
一般に、本発明のテキスタイル前処理剤組成物および印刷方法は、そのような前処理剤組成物および印刷方法と共に使用するのに適した任意のテキスタイル基材と共に使用することができる。本発明と共に使用するのに好適なテキスタイル基材は、天然、合成、セルロース系もしくは非セルロース系繊維またはそれらの任意の組合せを有するテキスタイルを包含する。例示的テキスタイル基材は、下記を有するテキスタイルを包含するが、それらに限定されない:ヒドロキシ基含有繊維、例えば、天然または再生セルロース繊維(綿、レーヨンなど);窒素基含有繊維、例えば、ポリ(アクリロニトリル);天然または合成ポリアミド(羊毛、絹またはナイロンを包含する);および/または酸修飾ポリエステルおよびポリアミド基を有する繊維。テキスタイルは、一般に、複数繊維または複合繊維から成る糸または紐の使用に関連している。本明細書において使用されているテキスタイルは、望ましい外観または表面特徴を形成する材料を含有する糸を使用するカーペット、ラグ、窓処理材などを包含する。基材は、本発明の前処理剤組成物および方法に適合性の樹脂または他の物質を使用して、付加的に前処理または後処理することができ、仕上げまたは未仕上げにしうる。テキスタイル基材は、本発明の前処理剤組成物の付与前に、衣類に形成され、寸法処理され得る。または、本発明の前処理剤組成物を、外部寸法設定工程に組み込むことができ、それによって寸法設定および前処理が一段階で行われる。前処理剤はセルロース系繊維および綿系繊維と共にうまく機能するので、該前処理剤は、様々な紙製品、カード用紙およびボール紙において、色強度および色保持に役立つ。
【0036】
テキスタイル基材の繊維は、選択された印刷方法に適合性の任意の好適な形態、例えば、緩い糸、または布地でありうる。布地は、好都合かつ好ましい形態である。繊維は、本発明の前処理剤組成物での処理を受けやすい他の繊維、またはそのような処理をあまり受けにくいことが示される場合がある繊維とブレンドしうる。該方法は、適切な調整を行って、ポリエステルフィルムと共に使用することもできる。本発明に使用するための付加的な例示的基材は、ポリエステルフィルム、例えば「MYLAR」フレキシブルフィルム、ポリスルホン、セルローストリアセテートなどを包含する。被覆透明フィルムも意図される。
【0037】
本明細書に記載されている前処理剤は、白色および淡色のテキスタイルおよび布地用の汎用前処理剤として有利な特徴を有する。例えば、本明細書に記載されている前処理剤で前処理されたテキスタイル基材は、変色または黄変しない。さらに、該前処理剤組成物は様々なテキスタイルに適合性である。さらに、本明細書に記載されている前処理剤組成物で被覆されたテキスタイル基材は、市販されている前処理剤より良好に、デジタル印刷された場合に一貫した鮮やかな色を生じ、かつ水性洗濯操作中に退色に耐える。
【0038】
本発明は、さらに、本明細書に記載されている方法および前処理剤組成物を使用して製造される印刷され処理されたテキスタイル基材を特徴とする。本発明の処理テキスタイル基材は、任意の好適な印刷方法、例えば、従来の印刷方法、デジタル印刷、特にインクジェット印刷(ドロップオンデマンド印刷および連続ジェット印刷などを包含する)を使用して印刷することができる。特に関心がもたれる一実施形態において、処理テキスタイル基材はインクジェット印刷によって印刷される。一般に、印刷方法は、水性記録液を処理テキスタイル基材に画像パターンにおいて付与することを含む。インクジェット印刷法は、当分野において周知である。さらに、本発明に従って処理テキスタイル基材に印刷された画像は、耐洗剤性および/または洗剤堅牢性である。
【0039】
好ましいデジタルインク
本発明の布地前処理剤との組合せにおいて有用なインクは、インクジェット印刷の分野で一般に使用される着色剤を含む。顔料着色剤は、生じる印刷画像が光安定性であり、高着色を与え、長期洗濯サイクルに耐久性であるので、特に有用である。インクに使用される顔料粒子は、望ましくは、インクジェットプリントヘッドに使用される小さいノズルから充分に噴出するように粒度が小さくかつ粒度分布が狭い。顔料粒子の粒度は、望ましくは、当分野で公知の方法によって、一般にミリング操作によって、約200nm未満、より望ましくは100nm未満の平均粒度に減少される。本発明に有用な顔料粒子は、分散剤によるか、またはインクジェット印刷の分野で公知の方法による自己分散によって、安定化される。好ましくは、顔料粒子または分散剤上の安定化基は本質的にアニオン性であるが、いくつかの非イオン性安定剤を使用することができる。アニオン基は、本発明の前処理剤組成物と強く反応して、処理布地へのインク粒子の浸透を制限し、それによって鮮やかかつ洗濯堅牢性の色を対象布地に与える。
【0040】
顔料インクは、好ましくは、本発明の布地前処理剤と組み合わせて使用した場合に印刷画像の洗濯堅牢性および耐久性に寄与する結合剤を含有する。望ましい結合剤は、テキスタイル印刷の分野で使用される結合剤、例えば、ビニルアセテート、アクリル、ポリエステルおよびポリウレタン結合剤を包含する。高分子結合剤は、得られる印刷画像が、布地の通常使用で遭遇する物理的摩耗および引張りに耐えうるように、柔軟性および強靭性であるのが好ましい。インク結合剤は、約100%より高い、より好ましくは400%より高い、最低フィルム破断伸びを有するのが望ましい。有用な結合剤は、好ましくは、約20N/mm
2より高い引張り強度を有する。インク結合剤がインク組成物中において粒子形態である場合、結合剤粒子の平均粒度は小さく、粒度分布は狭いのが望ましい。約100nm未満、より好ましくは約50nm未満の平均粒度を有する結合剤粒子が望ましい。本発明に有用な顔料インクは、プリントヘッドからの顔料粒子の噴射を補助するため、および前処理布地との相互作用のために、界面活性剤も含有する。インクジェット印刷の分野で周知の任意の界面活性剤が使用されうると考えられ、好ましくは本質的にアニオン性または非イオン性である。アニオン安定化顔料粒子を含有するインクは、多くの供給業者によって市販されており、その例はDupont Artistri(商標)インクである。
【0041】
個々の顔料インク組成物は、シアン、マゼンタ、イエローおよびカーボンブラック顔料分散体を顔料源として使用して製造された。顔料分散体は、アニオン荷電高分子分散剤によって安定化され、顔料粒子の平均粒度は50〜160mmの範囲であった。水性顔料インク成分は、下記の配合範囲に従って組み合わされ、残部は脱イオン水を使用して合計100%にされた。
【表1A】
得られたインクをColman and CompanyによるDTG Digital Viperから、処理布地に印刷した。
【0042】
画像が抵抗性である洗剤は、様々な市販洗剤(例えば、アニオン性洗剤、カチオン性洗剤、非イオン性洗剤、両性洗剤など)を包含する。印刷され処理されたテキスタイル基材が抵抗性であるアニオン性洗剤は、下記を包含するが、必ずしもそれらに限定されない:アルキルアリールスルホネート(例えば、直鎖アルキルベンゼンスルホネート)、アルキルアリール縮合物(例えば、DDB(ドデシルベンゼン))、長鎖(脂肪)アルコールスルフェート(例えば、12〜18個の炭素原子の鎖を有する)、オレフィンスルフェートおよびスルホネート、アルファオレフィンスルフェートおよびスルホネート、スルフェートモノグリセリド、スルフェートエーテル、スルホスクシネート、アルカンスルホネート、リン酸エステル、アルキルイソチオネート、ならびにスクロースエステル。
【0043】
布地および衣類の前処理剤は一般に、様々な異なる着色の基材に付与できるように、低色度の白色または透明の被覆剤として所望される。衣類が着古される間、他の布地との摩耗接触を受ける間(例えば、洗濯機で洗浄される間)、または床、壁、カーペットなどと摩擦接触もしくは摩耗接触する間に、前処理剤およびデジタル付与インクは最終デジタル画像に耐摩耗性を与える必要がある。前処理剤(それは厚い被覆剤ではなく薄い表面処理剤であることに留意)ならびにデジタルインク画像は、望ましくは、布地または衣類の画像領域の柔軟性、可撓性、触感などを有意に変化させず、ならびに、基材の画像および非画像部分の異なる収縮率による布地または衣類のパッカリングを生じさせない。テキスタイル上の大部分の前処理剤(特に、より耐久性になる傾向がある架橋前処理剤)は、テキスタイルをより硬く(より低い柔らかさに)する。被覆テキスタイル上の画像の耐久性を強化しながら、被覆テキスタイルにおいて非被覆テキスタイルと同様の柔軟性を達成することは困難な課題である。
【0044】
重量%は、100重量部の組成物または材料(成分がその一部を構成する)当たりの成分の重量部の数値を意味する。いくつかの実施例において、発明者らは、製造業者から得た20〜90wt.%水でありうる材料ではなく、活性成分(通常、非水成分/不揮発性)の重量パーセントを示す。
【0045】
前処理剤において、1つの特に好ましい成分は、界面活性剤のような表面活性剤である。これは、一般に、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、および/または200g/molより高い分子量のポリ(アルキレンオキシド)である。これらの界面活性剤は、一般に、前処理剤の約0または0.001〜約1wt.%、より望ましくは約0.02〜約0.5wt.%(水を差し引いた活性成分として測定)の濃度で使用される。
【0046】
他のポリマーとのブレンド
本発明の前処理剤は、当業者に周知の方法によって、適合性のポリマーおよびポリマー分散体と組み合わすことができる。ポリマーまたはポリマー分散体を使用することができるが、アゼチジニウム官能化ポリマー、二酸化硫黄およびアリルアミドおよび/またはジアリルアミドのコポリマー、ならびに任意の有機酸の組合せは、大部分の綿またはポリエステルテキスタイル用の前処理剤に必要な結果の全てを達成するのに充分であると予期される。そのようなポリマー、ポリマー溶液および分散体は、A.S.Teot.「Resins,Water−Soluble」、Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology,John Wiley & Sons.3rd Ed.,Vol.20,H.F.Mark et al.Eds.,pp.207−230(1982)に記載されているものを包含し、その開示は参照により本明細書に組み入れられる。
【0047】
一実施形態において、本発明の前処理剤溶液は、一般に、前処理剤の重量に基づいて少なくとも約2、3、4または5wt.%の合計固形分(すなわち、105℃で1時間オーブン乾燥後の残留物)を有する。一実施形態において、前処理剤溶液は、1グラムの試料を102℃で1時間または恒量に達するまで乾燥した場合に基づいて50、40、30、20、15または10wt.%未満の合計固形分を有する。一実施形態において、前処理剤溶液の不揮発性部分(102℃で1時間での測定)は、望ましくは、該前処理剤溶液の約1または2〜約5または10wt.%である。一実施形態において、不揮発性部分は、前処理剤溶液の30、20または15wt.%未満である。
【0048】
本発明の分散体は、テキスタイル基材に付与されるまで過度の分子量増加(活性成分の架橋)を避けるように努めながら、成分をどのような順序でも混合することによって形成することができる。
【0049】
用途
本発明の組成物およびそれらの配合物は、デジタル画像印刷を強化するためのテキスタイルまたは衣類用の前処理剤として有用である。本発明を限定するものではないが、一般に、発明者らはテキスタイルまたは布地上の前処理剤を被覆剤と呼び、発明者らは、前処理剤が繊維または基材上に部分および/または完全被膜を形成することを意味し、必ずしも不浸透性フィルムを意味しない(不浸透性フィルムは、平滑な金属、プラスチックまたは木材を被覆した場合に生じる可能性が高い)。前処理剤は、多くの場合、吹付けまたはパディングによって付与される。前処理剤がパディングによって付与された場合、各繊維または繊維群を完全に包囲することに近づく。前処理剤は、吹付けによって付与された場合、全ての繊維を完全に覆わないことがある(特に、繊維がテキスタイルまたは布の深くにあるか、または繊維が互いに交差している場合)。パディングまたは吹付けによる前処理剤の均一付与は、ロール・トゥ・ロール・フォーマットにおける布地の工業的デジタル印刷に重要である。一般に、テキスタイルおよび布において、前処理後の基材が非処理基材と同様に水または空気を通すことが望ましい(これは、被覆テキスタイルが前処理後に多くの孔を有することを必要とする)。
【0050】
布地または衣類の前処理剤の大部分の工業用途において、前処理剤は、前処理機、例えばViper Gen1またはGen2前処理機を使用して、実物大のTシャツに付与される。実験室において、発明者らは、Viper(商標)Gen1またはGen2と同様に機能するWagner(登録商標)Power Sprayer モデル番号0417201を使用した。このタイプの市販前処理装置において、前処理溶液は、Tシャツの幅を覆うノズル配列から付与される。Tシャツ布地は、一般に、台に装着される。布地を前処理剤に曝露するために、その台がノズル配列を通過する。
【0051】
本開示の前処理剤に好ましい基材は、ラベル付け、装飾、広告などのために何らかの画像(好ましくはデジタル付与される)が所望される衣類またはテキスタイルである。好ましい基材はシャツであり、Tシャツおよびスポーツシャツが好適な用途である。基材は、旗、ポスター、広告などに使用でき、フィルム、織布または不職布であることができる合成ポリマーフィルムも包含する。一実施形態において、ポリマー基材またはフィルムは、ポリオレフィン、例えばポリプロピレン、またはポリエステルである。基材がポリマーフィルムである場合、ポリマーフィルム中に中〜高添加量の無機充填剤を有することが望ましい場合がある。一実施形態において、織布または不織布基材は、布地または基材の重量に基づいて少なくとも25、50または80wt.%綿である。他の実施形態において、織布または不織布基材は、望ましくは、布地または基材の重量に基づいて少なくとも25、50または80wt.%のポリエステルを有する。いくつかの用途において、基材はファイバーガラスおよび/または紙であることができる。
【実施例】
【0052】
実施例において、以下の試薬が使用される。
Polycup(商標)172は、Ashland−Hercules Water Technologiesから入手可能なポリアミド−エピクロロヒドリンアゼチジニウム官能化ポリマーである。
Polycup(商標)7360は、Ashland−Hercules Water Technologiesから入手可能なポリアミン−エピクロロヒドリンアゼチジニウム官能化ポリマーである。
Danfix(商標)303は、Nittoboから入手可能な、約4000または5000g/molの分子量を有する、N,N−ジメチルジアリルアンモニウムクロリドの第四級アンモニウム塩と二酸化硫黄とのコポリマーである。
BYK(登録商標)−347は、Byk Chemie(ヨーロッパ)から入手可能な界面活性剤である。
IPAは、イソプロピルアルコールである。
DPGは、ジプロピレングリコールである。
Acticide(商標)MVは、Thor GmbH(トランブル(Trumbell)、CT、USA)から入手可能な、10.6wt.%の5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン(isothizolin)−3−オンおよび3.5wt.%の2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンである。
カチオン性ポリウレタンの実施例
実施例A
前処理剤
【表1】
カチオン性ポリマーおよびアゼチジニウムポリウレタンを使用する前処理剤組成物ならびに対照前処理剤の調製法
前処理剤の調製手順
前処理剤を付与するためのパディング法
【0053】
ほとんどの実施例おいて、前処理剤を吹付け付与によって布地片に付与した(パディング法もテキスタイル工業において一般に使用されている)。前処理剤溶液を布地に、約3分間または布地が完全に飽和されるまで、浸した。次に、布地を、2ロール絞り機のゴム被覆下ロールおよび鋼上ロールによって形成される間隙に通して(30〜40psiにて)、過剰の前処理剤を布地から除去した。次に、試料を、加熱衣類プレス(Insta(商標)モデル番号715、セリトス、CA)で乾燥させ硬化させた。硬化指示は表2に示されている。
【表2】
【0054】
前処理剤含浸量(add−on)を、前処理剤付与のすぐ前および後に布地を秤量することによって求め、その結果を布地の湿潤g/in
2によって表わすか、または定温度/定湿度室(21℃(70°F)/50%RH)において一晩にわたって布地を状態調節して乾燥g/in
2を得ることによって表わす。次に、含浸量パーセンテージ(通常は乾燥gにて)を算出することができる。一般に、ポリエステルにおける前処理剤含浸量は30〜35%であり、ポリエステル/綿ブレンドにおいては20〜25%、綿においては15〜20%であった。
【0055】
前処理剤付与のための吹付け法
一実施例が吹付けによる前処理を示している場合、前処理剤が実物大のTシャツに吹付けによって付与された。BINKS(モデル番号2001、www.binks.com)からの従来型空気式エア・スプレーガンを使用しうる。付与ガイドラインについては表3を参照。硬化条件(前処理剤がどのように付与されたかに関係しない)は、前記表2に示されている。
【表3】
【0056】
顔料インク付与
白色または着色デジタルインクをデジタル的に付与した場合、DTG白色および着色インクを、DTGプリンター(Colman and CompanyによるDTG Digital Viper)を使用して印刷した。開示において使用されている白色および着色インクは(手での付与またはデジタル的付与のいずれの場合も)、下記のような会社からインターネットで購入することができる:DuPont(商品名Artistri(商標))、M&R Companies(グレンエリン、イリノイ州)、および販売会社、例えば、Belquette,Inc.(クリアウォータ、フロリダ州)、Atlas Screen Supply Co.(イリノイ州)、およびGarment Printer Ink(ニューヨーク、ニューヨーク州)。
【0057】
洗濯試験
GE Profile(商標)家庭洗濯用上部投入型洗濯機(モデル番号WPRE8100G)を家庭洗濯洗浄試験に使用した。設定は以下の通りであった:温水洗浄および冷水濯ぎ、超大荷重ならびにカジュアル強洗浄。布地試料を、5着の標準サイズ実験衣と一緒に洗濯機に入れた。標準洗濯サイクル(132°Fで45分間)を使用して、布地を5連続完全洗濯サイクルで洗濯した。使用した洗剤は、荷重に対する推奨使用量におけるTide Liquid洗剤であった。5回の家庭洗濯(すなわち、湿った衣類をさらに4回再洗濯した)の次に、American Motors Corp(モデル番号DE−840B−53)乾燥機を使用して1回のタンブル乾燥サイクル(オート・サイクル・パーマネント・プレスにて)を行った。
【0058】
インク保持および色値についての色度図
前処理剤A(本発明)またはDTG前処理剤(対照)後の布地(綿およびポリエステル)に、着色インクで印刷し、表2と同じ指示に従って硬化させた。GretagMacbeth社製の比色計(モデル番号Color i 7)を使用して、着色インクを有する面積においてxおよびy値を測定した。次に、布地を前記の5回家庭洗濯および1回乾燥サイクルにかけた。
【0059】
洗濯によるインクの色の損失(色度の損失)を、5回洗濯および1回乾燥サイクル後のxおよびyの単位によって測定する。
【0060】
印刷画像を140〜160℃で1〜2分間硬化させた。試料間の唯一の違いは、本発明の前処理剤Aの使用と、DuPontから入手可能な市販前処理剤DTG(対照)の使用であった。
【0061】
図1および
図2は、前処理剤Aまたは市販デジタル印刷前処理剤(DuPontからDTGとして入手可能)で処理された布地に、様々な標準市販色インクをデジタル付与した後の、前処理剤Aの前処理剤および市販DTG処理における色の結果の差異を色度図に示している。一般に、色度図内の面積が大きい程、色強度がより高い。xおよびy座標は、GretagMacbeth比色計を使用して、ASTM E308−85(これはL
*a
*b
*測定値も与える)に従って、直接的に測定することができる。
【0062】
特定の代表的実施形態および詳細が対象発明を例示するために示されているが、本発明の範囲を逸脱せずに、様々な変更および改変をそれらになしうることは当業者に明らかである。